JP5210150B2 - 永久磁石式回転電機、エレベータ装置、及び永久磁石式回転電機の製造方法 - Google Patents
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Description
永久磁石式回転電機は、トルク脈動、電磁騒音を防止するために、段スキューを行うことができ、例えば、特許文献1,2には、永久磁石を段スキューする方法が開示されている。特許文献1,2に開示された永久磁石式回転電機は、磁束分布の高調波を低減させるため、複数の永久磁石を、各回転子鉄心の磁石貼付け面上に互いに回転子の軸方向及び周方向にずらされて配設した構成をなしている。
特に、特許文献2には、コギングトルクは正弦波状に発生するので、波形を1/2周期分だけずらして足しあわせれば2つのコギングトルクが打ち消しあって合成コギングトルクを小さくできる旨が記載されている。
この、段スキューを行うことで問題となるのが回転子鉄心の磁石貼付け面の加工によるコストの上昇である。その例として特許文献1の永久磁石回転電機は、回転子鉄心の磁石貼付け面のフライス加工において、回転子の軸方向及び周方向に段スキューされた溝形状で切削される。すなわち、矩形状の永久磁石を用いる場合、周方向及び軸方向に複数の矩形状の複数の底面を溝に形成しなければならない。また、コギングトルクを正弦波状に発生させるために、この溝の各々の底面は径方向に垂直の接平面に平行にした方がコギングトルクを低減できるとされている。
このため、複数の永久磁石を周方向及び径方向ににずらして配置する場合には、この溝は、磁極数によって定まる角度で交わる複数の底面が形成されるのが通常であった。
すなわち、1つの溝を形成するため、各々の底面をフライス加工する必要が有り、切削加工に手間がかかりコスト上昇につながる。
また、永久磁石の回転子鉄心側の面が平面状に形成され、溝の側面、及び底面が平面状であるので、回転子の軸方向に沿ってストレートに切削加工することができ、コストが抑えられる。
図1の横断面図を用いて、本発明の一実施形態である永久磁石式回転電機について説明する。
図1において、永久磁石式回転電機1は、円柱状の固定子2と、この固定子2の外周側に空隙33を介して対向配置されている円筒状の回転子3とを同軸状に備えた外転型の回転電機である。永久磁石式回転電機1は、固定子2が回転磁界を発生し、回転子3と固定子2との磁気的相互作用により回転子3が回転するように構成されている。
本実施形態は外転型の永久磁石式回転電機1を示しているが、本発明は内転型の永久磁石式回転電機も同様に実施することができる。なお、内転型の永久磁石式回転電機(図11(b)(d)参照)は、外転型と同様に固定子と回転子を備えているが、固定子と回転子との対向配置が逆になっており、回転子が固定子の内周側に空隙33を介して回転可能なように、固定子に対向配置されている。
固定子鉄心4は、板状の磁性部材(電磁鋼板)を打ち抜いて形成した複数の板状の成型部材を軸方向に積層することにより形成される。この積層構造により、渦電流損が低減し、発熱が減少する。
図2は、永久磁石式回転電機1の回転子3の構成を示す部分斜視図である。図3,4は、回転子3を固定子2側から径方向外側に視た部分展開図である。図5は永久磁石6を取り付ける溝31を凹設するためフライス加工で切削する方法を示す回転子3を固定子2側から視た部分図である。図6は、回転子鉄心7から永久磁石6を取り外したときの回転子鉄心7の斜視図である。図7は、回転子鉄心7から永久磁石6を取り外したときの回転子鉄心7を固定子2側から径方向外側に視た部分展開図である。
図4において、永久磁石6は、幅がXpmであり、ピッチ幅がXppであり、溝31は、幅がXであるとすると、Xpm、Xpp、及びXの関係は、
Xpm<X<Xpp ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)式
となっている。
このとき、永久磁石6をずらす角度は、コギングトルク一周期の角度の1/2であることが好ましい。
また、図2,3は、永久磁石6a,6bの双方を径方向に垂直な接平面から傾斜させているが、永久磁石6a,6bの何れか一方を接平面に平行にして、他方を傾斜させてもよい。
なお、外転型であっても回転子3がお椀状のものについては、このような加工法は困難となるため、回転子3の側面部と回転子3の径方向外周部とを分離するなどの工夫が必要である。
0<Xs≦X−Xpm ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)式
である。ただし、(X−Xpm)の値がスキュー角より小さい場合は本発明は適用できない。
図9は、本発明の第2実施形態の永久磁石式回転電機1aの回転子3aの構成を示す斜視図であり、図10は、永久磁石式回転電機1aの構成を示す横断面図である。
第2実施形態の永久磁石式回転電機1は、永久磁石6がかまぼこ形状でなく、直方体形状であることが特徴である。また、第1実施形態の永久磁石式回転電機1は、外転型を原則とし、内転型も適用可能であったが、この第2実施形態の永久磁石式回転電機1aは、外転型に限定される。
また、直方体形状の永久磁石は、加工数が少ないので、コスト低減につながる。逆に、内転型に直方体形状の永久磁石を適用すると、逆にトルク脈動は上昇するため本実施形態は外転型に限られる。
図11は、外転型の回転子鉄心7の溝に直方体状の永久磁石16a,16bを貼設した場合と、内転型の回転子鉄心15に直方体状の永久磁石16c,16dを貼設した場合とを比較するための説明図である。
図11(a)に示される外転型の場合、回転子鉄心7の内周に沿って、同極の永久磁石16a,16bが周方向にずらされて、回転子鉄心7に貼設されるので、永久磁石16a,16bの磁極の方向Pa,Pbと、合成磁極の方向Peとは中心軸方向を向いて、固定子磁極と対向している。このため、永久磁石16a,16bの磁極の方向Pa,Pbは、互いに内向きとなっている。回転子鉄心7と固定子磁極との間の空隙の幅は磁石中央下では小さく、端下は大きくなる。磁気回路で考えると、磁石中央下は磁気抵抗が小さく、端下は磁気抵抗が大きい。従って、空隙中の台形状の磁束分布が正弦波分布に近づく。
したがって、磁極の方向が内向きの外転型の方が、内転型よりも磁束分布が正弦波に近づく。また、磁極の方向が内向きの外転型の方が、合成磁極Peの大きさが、内転型の合成磁極Pfの大きさよりも大きい。
図11(c)に示される外転型の場合、永久磁石16a,16bの磁極の方向は何れもPeであり、磁束分布は正弦波状に近づかないが、溝31の周方向中心の深さを永久磁石6a,6bの厚さに一致させて、回転子鉄心7の内周面と永久磁石16a,16bの周方向中心の表面とが一致したとき、永久磁石16a,16bの周方向端部の表面と回転子鉄心7の内周面との間で段差d1が生じる。
したがって、外転型の場合は周方向にずらされて貼設された永久磁石の周方向中心の表面が回転子鉄心7の内周表面に一致するが、内転型の場合は、永久磁石の端部の表面が外周表面に一致し、永久磁石の周方向中心に段差d2ができる。
また、図11(a)及び図11(b)のように、溝の底面が永久磁石16a、16b,16c,16dの底面にあわせて研削する場合、1つの溝に、周方向及び軸方向に複数の矩形状の底面を形成する必要があるが、図11(c)及び図11(d)のように前記各実施形態の場合には、1つの溝に1つの底面を軸方向に沿ってストレートに形成すればよい。
次に、図12を用いて、2極3スロットモータのトルク脈動について説明すると共に、このトルク脈動が段スキューにより打ち消されることを説明する。
図12(a)は、2極3スロットモータの概念図であり、回転子の周方向にN極とS極との永久磁石が配設され、径方向に対向して、T字状の固定子突極が3極形成されている。
一般にコギングトルクの周期数は、突極数と磁極数との最小公倍数になることが知られている。突極数3、磁極数2の最小公倍数は6であり、図12(b)に示すように、電気角360度だけ回転子が回転すると大きなコギングトルクの変動が6回生じる。すなわち、1つの変動は、電気角にすると360度/6=60度である。
図13(a)において、永久磁石6a,6bが軸方向に2段に配設されており、周方向に1/2周期分ずらしたスキュー角は、電気角で30度である。図13(b)において、永久磁石6aのトルク脈動(実線)と、永久磁石6bのトルク脈動(破線)とは正弦波状を呈しており、互いに位相が反転している。したがって、永久磁石6a,6bを周方向に1/2周期だけずらすことにより、トルク脈動は打ち消される。
前記各実施形態の永久磁石式回転電機1,1aをエレベータ装置に適用した場合の巻上機の構成について、図12を用いて説明する。
図14において、巻上機9は、永久磁石式回転電機1と、永久磁石式回転電機1が生み出す動力をロープに伝達するシーブ10と、回転子3に制動力を与えるブレーキ11と、シャフト8を支えるベアリング13と、これらを支えるハウジング12を備え、永久磁石式回転電機1とシーブ10とが一体となって構成されている。なお、前記したように、永久磁石式回転電機1は、固定子2と回転子3とシャフト8とを備えている。また、ブレーキ11は、径の大きな回転子3を制動することができるので、シャフト8を制動する内転型よりも強い制動力を与えることができる。
2 固定子
3 回転子
4 固定子鉄心
5 固定子巻線
6,6a,6b,6c 永久磁石
7 回転子鉄心
8 シャフト
9 巻上機
10 シーブ
11 ブレーキ
12 ハウジング
13 ベアリング
14 固定子鉄心(内転型)
15 回転子鉄心(内転型)
16 永久磁石
31 溝
32 離間部
33 空隙
34 相巻線
41 ヨーク部(コアバック)
42 固定子突極(ティース)
43 固定子突起物
44 固定子スロット(スロット)
Claims (11)
- 複数の固定子突極が径方向に突出した固定子鉄心と、互いに隣接する前記固定子突極の間に形成されたスロットに収納された固定子巻線とを備える固定子と、
回転子鉄心と、この回転子鉄心の周方向に等間隔で配置された複数の永久磁石とを備える回転子と、
を有する永久磁石式回転電機において、
前記回転子鉄心は、前記永久磁石より幅が長く、外周側面に開口した溝が周方向に複数形成され、
前記永久磁石は、回転子鉄心側の面が平面状に形成され、周方向にずれて複数個が各々の前記溝に配設され、
前記溝の側面及び底面は、平面状であって、前記回転子の軸方向に沿った一方向のフライス研削により形成されていることを特徴とする永久磁石式回転電機。 - 前記永久磁石は、直方体形状であることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石式回転電機。
- 前記永久磁石は、かまぼこ形状であることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石式回転電機。
- 前記永久磁石は、一の端面が前記溝の側面に当接していることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の永久磁石式回転電機。
- 前記回転子が前記固定子の外周部に配置された外転型として構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の永久磁石式回転電機。
- 前記固定子突極の先端部は、周方向の突起物がない全開スロットとして構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の永久磁石式回転電機。
- 前記永久磁石の数と前記固定子鉄心のスロット数との組み合わせは、前記永久磁石の数10と前記スロット数12とを基本単位とすることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の永久磁石式回転電機。
- 前記回転子鉄心は、前記永久磁石との間で磁路として機能することを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の永久磁石式回転電機。
- 複数の固定子突極が径方向に突出した固定子鉄心と、前記固定子突極の間に形成されたスロットに収納された固定子巻線とを備える固定子と、
回転子鉄心の周方向に等間隔で配置された複数の永久磁石を備える回転子と、
を有する永久磁石式回転電機において、
前記回転子鉄心は、前記永久磁石より幅が長く、外周側面に開口した溝が周方向に複数形成され、
前記永久磁石は、直方体形状であり、
前記回転子が前記固定子の外周部に配置された外転型であり、
前記固定子突極の先端部は、周方向の突起物がない全開スロットとして構成され、
前記永久磁石の数と前記固定子鉄心のスロット数との組み合わせは、前記永久磁石の数10と前記スロット数12とを基本単位とし、
前記永久磁石は、回転子鉄心側の面が平面状に形成され、周方向にずれて複数個が各々の前記溝に配設され、
前記溝の側面及び底面は、平面状であって、前記回転子の軸方向に沿った一方向のフライス研削により形成されていることを特徴とする永久磁石式回転電機。 - 請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の永久磁石式回転電機を用いることを特徴とするエレベータ装置。
- 複数の固定子突極が径方向に突出した固定子鉄心と、互いに隣接する前記固定子突極の間に形成されたスロットに収納された固定子巻線とを備える固定子と、回転子鉄心と、この回転子鉄心の周方向に等間隔で配置された複数の永久磁石とを備える回転子と、を有する永久磁石式回転電機の製造方法において、
前記永久磁石は、回転子鉄心側の面が平面状に形成され、
前記回転子鉄心が前記永久磁石より幅が長く、外周側面に開口した溝が周方向に複数形成される溝形成工程と、
前記永久磁石が周方向にずれて複数個が各々の前記溝に配設される磁石配設工程とを備え、
前記溝形成工程は、前記溝の側面及び底面が平面状であって、前記回転子の軸方向に沿った一方向のフライス研削により形成されることを特徴とする永久磁石式回転電機の製造方法。
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