JP5207084B2 - ステータの冷却構造 - Google Patents

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Description

本発明は、ステータコアと当該ステータコアの軸方向端部から突出するコイルエンド部とを備えるステータの前記コイルエンド部に冷媒を供給し、当該コイルエンド部を冷却する回転電機のステータの冷却構造に関する。
上記ステータの冷却構造の従来例として、例えば、下記の特許文献1に記載された技術がある。特許文献1に開示されている構成では、当該文献の図2、図3等に示されるように、底板28bに複数の冷却液供給口36が形成されているとともに両端が開口端28eとなっている樋28が、コイルエンド部24の外周24eに沿って配置される。そして、樋28に供給された冷媒(冷却液)が、冷却液供給口36や開口端28e(以下、これらをまとめて「冷媒吐出用開口」という。)からコイルエンド部24に向けて吐出され、当該コイルエンド部24の冷却が行われる。
特開2004−180376号公報(図2、図3等)
ところで、コイルエンド部を効率的に冷却するためには、樋28に供給された冷媒が所望の分配割合で複数の冷媒吐出用開口に分配されることが望ましい。しかしながら、上記特許文献1に記載の構成では、樋28の頂部位置28tから開口端28eに至る冷媒の流下経路に沿って複数の冷却液供給口36が形成されているだけであるため、冷媒を所望の分配割合で分配するのは容易ではない。また、樋28に対する冷媒供給量によっては、冷媒が端まで届かない可能性がある。
そこで、複数の冷媒吐出用開口に対して、冷媒供給量の多少にかかわらず、所望の分配割合で冷媒を分配することが可能なステータの冷却構造の実現が望まれる。
本発明に係る、ステータコアと当該ステータコアの軸方向端部から突出するコイルエンド部とを備えるステータの前記コイルエンド部に冷媒を供給し、当該コイルエンド部を冷却する回転電機のステータの冷却構造の特徴構成は、前記コイルエンド部に冷媒を供給するための冷媒吐出用開口が複数形成されているとともに、導入された冷媒を複数の前記冷媒吐出用開口に分配するための冷媒分配経路が形成されている冷媒分配部材を、前記コイルエンド部の冷媒供給対象部位に対して上方に備え、前記冷媒分配経路は、隔壁により区画された複数の室と、前記隔壁に形成されるとともに互いに隣接する前記室の間を連通する室間連通路と、を有し、前記冷媒分配部材は、前記複数の室として、室内に導入された冷媒を複数の前記室間連通路に分配することで前記冷媒分配経路を分岐する冷媒分配室を少なくとも一つ備えるとともに、前記冷媒吐出用開口が形成された冷媒吐出室を複数備え、更に、前記冷媒分配経路が前記冷媒分配室からの分岐後に合流することがないように形成されており、一つの前記冷媒分配室を囲む前記隔壁に形成された、それぞれ異なる下流側の室に連通する複数の前記室間連通路に関して、底面部の高さが互いに等しく形成されているとともに、異なる前記室間連通路同士の開口幅の比が、それぞれの前記室間連通路の下流にある全ての前記冷媒吐出用開口の開口断面積の和の比に応じて設定されている点にある。
上記の特徴構成によれば、冷媒分配経路を分岐するための冷媒分配室が、隔壁により区画された室として形成されている。そして、冷媒分配室に導入された冷媒は、当該冷媒分配室を囲む隔壁に形成された複数の室間連通路を介して下流側の複数の室に分配される。ここで、冷媒分配経路は冷媒分配室からの分岐後に合流することがないように形成されているとともに、一つの冷媒分配室を囲む隔壁に形成された、それぞれ異なる下流側の複数の室に連通する複数の室間連通路は、底面部の高さが互いに等しく形成されている。よって、冷媒分配室に導入された冷媒は、当該複数の室間連通路の開口幅に応じて定まる分配割合で、下流側の複数の室へ分配される。そして、下流側の室が冷媒分配室である場合には、当該冷媒分配室に導入された冷媒は、同様に、下流側の複数の室へ更に分配される。そして、最終的には、冷媒吐出用開口が形成された複数の冷媒吐出室のそれぞれには、各冷媒吐出室の上流側にある全ての室間連通路の開口幅に応じた分配割合で冷媒が分配される。よって、各室間連通路の開口幅を適切に設定することで、複数の冷媒吐出用開口に対して、所望の分配割合で冷媒を分配することが可能となる。
ここで、上記の特徴構成によれば、一つの冷媒分配室を囲む隔壁に形成された、それぞれ異なる下流側の室に連通する複数の室間連通路に関して、異なる室間連通路同士の開口幅の比が、それぞれの室間連通路の下流にある全ての冷媒吐出用開口の開口断面積の和の比に応じて設定されている。従って、複数の冷媒吐出室のそれぞれには、当該室に形成されている全ての冷媒吐出用開口の開口断面積の和に応じた量の冷媒が供給される。これにより、複数の冷媒吐出用開口の夫々に対して、冷媒分配室への冷媒の供給量にかかわらず、各冷媒吐出用開口の開口断面積に応じた量の冷媒を供給することが可能となる。
ここで、前記複数の室は、上方に開口する槽状に形成され、前記室間連通路は、前記隔壁の上部の一部を切り欠いて形成されていると好適である。
この構成によれば、冷媒分配部材に対して上方から冷媒を導入することができるため、冷媒分配部材に対して冷媒を供給するための構成を簡素なものとすることができる。また、室間連通路が切り欠き状であるため、所望の開口幅を有する室間連通路の形成工程を簡素なものとすることができ、冷媒分配部材の製造コストを低く抑えることができる。
また、前記コイルエンド部は、軸心が鉛直方向に対して交差する方向に延びる円筒状に形成されており、前記冷媒分配部材は、前記コイルエンド部の軸方向から見て円弧状に形成されているとともに、当該コイルエンド部の外周面に沿って配置されており、前記冷媒分配室であって前記冷媒分配部材の外部から冷媒が導入される室である冷媒導入室は、前記冷媒分配部材内における最上部に位置する室であると好適である。
この構成によれば、冷媒導入室が、冷媒分配部材内における最上部に位置する室であるため、冷媒導入室から各冷媒吐出室に向かう冷媒分配経路を、上方に向かう部分を有さないものとすることができる。よって、ポンプ等を備えなくとも重力を利用して冷媒分配経路に沿って冷媒を流下させることが容易となり、冷媒分配部材の構成を簡素なものとすることができる。また、冷媒分配部材が、コイルエンド部の外周面に沿って配置されるため、コイルエンド部の外周面とケースとの間の隙間を利用して冷媒分配部材を配置することができる。よって、限られた空間であっても冷媒分配部材を配置して本発明に係るステータの冷却構造を実現することができる。
ここで、上記のように、前記コイルエンド部が、軸心が鉛直方向に対して交差する方向に延びる円筒状に形成されており、前記冷媒分配部材が、前記コイルエンド部の軸方向から見て円弧状に形成されているとともに、当該コイルエンド部の外周面に沿って配置されている構成において、前記冷媒分配部材は、前記冷媒分配室を複数備えるとともに、複数の前記冷媒分配室が前記コイルエンド部の周方向に沿って隣接して配置された冷媒分配室部と、複数の前記冷媒吐出室が前記コイルエンド部の周方向に沿って隣接して配置された冷媒吐出室部とが、前記コイルエンド部の軸方向に並んで配置されている部分を有すると好適である。
この構成によれば、冷媒分配室と冷媒吐出室とが規則的に配置されるため、冷媒分配経路を簡素なものとすることができるとともに、冷媒分配部材の大型化を抑制することができる。また、冷媒吐出室がコイルエンド部の周方向に沿って配置されるため、冷媒をコイルエンド部に対して周方向の広い範囲に供給することができる。
また、前記冷媒分配部材は、前記コイルエンド部の少なくとも最上部を覆うように形成されていると好適である。
この構成によれば、コイルエンド部の最上部及びその周辺に対して冷媒を供給することができる。そして、重力を利用してコイルエンド部の全体に比較的容易に冷媒を供給することができる。よって、コイルエンド部を適切に冷却することができる。
また、前記冷媒分配部材の下面における前記冷媒吐出用開口の開口部の周囲に、溝状の引退部が形成されていると好適である。
この構成によれば、冷媒吐出用開口から下方に向けて吐出される冷媒が、冷媒分配部材の下面を伝うことを抑制することができる。よって、冷媒吐出用開口から吐出される冷媒を、当該冷媒吐出用開口の下方に位置するコイルエンド部の冷媒供給対象部位により確実に供給することができ、コイルエンド部を適切に冷却することができる。なお、溝状の引退部を設けることによって冷媒分配部材の上下方向の体格は大きくならないので、冷媒分配部材の配置に関して大きな問題は生じない。
また、複数の前記冷媒吐出用開口の開口断面積のそれぞれは、前記コイルエンド部における対応する冷媒供給部位の発熱量に応じて設定されていると好適である。
この構成によれば、コイルエンド部における温度が高い部分により多くの冷媒を供給することができる。よって、コイルエンド部の冷却効率を高めることができる。
また、一つの前記冷媒分配室を囲む前記隔壁に形成された、それぞれ異なる下流側の室に連通する複数の前記室間連通路に関して、異なる前記室間連通路同士の開口幅の比が、それぞれの前記室間連通路の下流にある全ての前記冷媒吐出用開口の開口断面積の和の比に等しく設定されていると好適である。
この構成によれば、各冷媒分配室から当該冷媒分配室の下流にある各冷媒吐出用開口の吐出可能な冷媒量に応じて、適切に各冷媒吐出用開口に冷媒を供給することができる。そして、異なる冷媒吐出用開口同士の冷媒吐出量の比は、開口断面積の比にほぼ等しくなる。よって、コイルエンド部を効率的に冷却することが容易になる。
本発明の実施形態に係るステータの斜視図である。 本発明の実施形態に係るステータを軸方向一方側から見た図である。 本発明の実施形態に係る冷媒分配部材の斜視図である。 本発明の実施形態に係る冷媒分配部材に形成された室間連通路の開口幅の設定を説明するための図である。 本発明の別実施形態に係るステータの一部を軸方向一方側から見た図である。 本発明の別実施形態に係る冷媒分配部材の斜視図である。 本発明の別実施形態に係る冷媒分配部材の斜視図である。 本発明の別実施形態に係る冷媒分配部材の斜視図である。 本発明の別実施形態に係る冷媒分配部材の斜視図である。
本発明に係るステータの冷却構造の実施形態について、図面を参照して説明する。ここでは、本発明を、軸心が水平方向(鉛直方向に対して交差する方向の一例)になるようにケース内に配置されたステータに適用した場合を例として説明する。本実施形態に係るステータの冷却構造は、ステータ1が備えるコイルエンド部3に冷媒を適切に供給するために、図1に示すような冷媒分配部材4を備える点、特に、冷媒分配部材4に形成される室間連通路50の開口幅の設定方法に特徴を有する。このような冷媒分配部材4を備えることで、冷媒分配部材4への冷媒の供給量にかかわらず、当該冷媒分配部材4に形成された複数の冷媒吐出用開口60に対して、冷媒を所望の分配割合で分配することが可能になっている。以下、本実施形態に係るステータの冷却構造について、「ステータの構成」、「冷媒分配部材の構成」、「室間連通路の開口幅の設定方法」の順に詳細に説明する。
なお、以下の説明では、特に断らない限り、「軸方向」、「周方向」、「径方向」は、ステータ1(回転電機)の軸心を基準として定義している。また、以下の説明では、特に断らない限り、「軸方向一方側」は、図1における軸方向に沿った左下側(図2における紙面手前側)を表し、「軸方向他方側」は、図1における軸方向に沿った右上側(図2における紙面奥側)を表すものとする。
また、以下の説明では、特に断らない限り、「上」は、ステータ1の使用状態における鉛直方向上側を表し、「下」は、ステータ1の使用状態における鉛直方向下側を表すものとする。なお、図2における上下方向は、ステータ1が使用される状態における上下方向(鉛直方向)と一致する。例えば、ステータ1が、ハイブリッド車両や電動車両等の車両の駆動力源としての回転電機用のステータである場合には、車両に搭載された状態が当該ステータの使用状態となる。
1.ステータの構成
本実施形態に係るステータ1の構成について、図1、図2を参照して説明する。なお、図2は、図1に示すステータ1を軸方向一方側(図1における軸方向に沿った左下側)から見た図であるが、冷媒分配部材4については、その構成の理解を容易にすべく、冷媒吐出用開口60の形成箇所において径方向(軸心直交方向)に沿って切断した断面図で表している。
図1に示すように、ステータ1は、ステータコア2と、コイルエンド部3と、を備え、回転電機用の電機子として構成されている。なお、本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。ステータコア2は、円筒状のコア本体部と、当該コア本体部の外周面に対して径方向外側に突出形成された突条部91とを備え、全体として円筒状に形状されている。なお、突条部91は、ステータコア2の軸方向全域に亘って形成されているとともに、コア本体部の外周を均等に3分割する位置に形成されている(図2参照)。そして、ステータコア2は、突条部91に形成された挿通孔に挿入された締結ボルト90により、ケース(図示せず)に対して締結固定される。この際、ステータ1は、軸心が水平方向と一致するようにケースに固定される。
ステータコア2の径方向内側には、周方向に沿って所定間隔で、複数のティース6が形成されており、周方向に隣接するティース6の間に、軸方向及び径方向に延びるスロットが形成されている。周方向に沿って複数形成されるスロットは互いに同じ断面形状であって、所定の幅及び深さを有して径方向内側に開口している。そして、スロットのそれぞれに巻装されたコイル5により、ステータコア2の軸方向端部から突出するコイルエンド部が形成される。本例では、コイルエンド部は、ステータコア2の軸方向両側に形成されている。以下の説明では、図1及び図2に示すように、軸方向一方側のコイルエンド部を符号「3」で表し、軸方向他方側のコイルエンド部を符号「94」で表す。本実施形態では、軸方向一方側のコイルエンド部3が、冷媒分配部材4による冷却の対象となるコイルエンド部であり、図1、図2に示すように、コイルエンド部3は、軸心が鉛直方向に対して交差する方向(本例では水平方向)に延びる円筒状に形成されている。なお、図1においては、軸方向他方側のコイルエンド部94は省略している。
本実施形態では、ステータ1は、三相交流で駆動される回転電機に用いられるステータであり、コイル5も三相構成(U相、V相、W相)で形成されている。本例では、コイル5は、延在方向に直交する断面における断面形状が矩形状の線状導体とされている。そして、三相のコイル5に対応して3つの端子93が設けられており、当該3つの端子93を介してコイル5に電流を流すことで、磁界を発生させることができる。なお、異なる相のコイル5の間での電気的絶縁性を確保するため、コイルエンド部3には相間絶縁シート92が配置されている。
図示は省略するが、ステータ1(ステータコア2)の径方向内側には、永久磁石や電磁石を備えた界磁としてのロータが、ステータ1に対して相対回転可能に配置される。すなわち、本実施形態に係るステータ1は、インナーロータ型で回転界磁型の回転電機用のステータとされている。そして、回転電機の駆動時に発熱するコイルエンド部3に対して、冷媒分配部材4を介して冷媒が供給される構成となっている。
なお、上記のようなステータコア2は、例えば、円環板状の電磁鋼板を複数枚積層した積層構造体としたり、磁性材料の粉体である磁性粉体を加圧成形してなる圧粉材を主な構成要素として形成したりすることができる。
2.冷媒分配部材の構成
次に、冷媒分配部材4の構成について、図1及び図2を参照して詳細に説明する。なお、冷媒分配部材4に形成される室間連通路50の開口幅の設定方法については、第3節で説明する。
図1、図2に示すように、本実施形態では、冷媒分配部材4は、コイルエンド部3(軸方向一方側のコイルエンド部)の冷媒供給対象部位に対して上方に備えられている。ここで、「コイルエンド部3の冷媒供給対象部位」とは、冷媒分配部材4から冷媒が直接供給されるコイルエンド部3の部位を意味し、本例では、コイルエンド部3の最上部を含んだ領域となっている。そして、冷媒分配部材4は、絶縁材料(例えば樹脂等)で形成される。これにより、コイルエンド部3とケースとの間を絶縁するために設けられている既存の空間を有効に利用して冷媒分配部材4を配置することができる。なお、本例では、冷媒分配部材4は、取付部95を介してステータコア2と一体的にケースに固定される構成となっている。
本実施形態では、上記のように、コイルエンド部3は、軸心が水平方向に延びる円筒状に形成されている。このようなコイルエンド部3の形状に合わせて、図2に示すように、冷媒分配部材4は、コイルエンド部3の軸方向から見て円弧状に形成されている。また、冷媒分配部材4は、コイルエンド部3の外周面に沿って配置されている。これにより、冷媒分配部材4を配置することによるケースの大型化が抑制されている。なお、「コイルエンド部の外周面」とは、円筒状に形成されたコイルエンド部3の径方向外側の外周面(円筒面)であり、より具体的には、コイルエンド部3を構成するコイル5の径方向最外側の部位(端面)に沿った面である。
冷媒分配部材4には、図1に示すように、コイルエンド部3に冷媒を供給するための断面円形の冷媒吐出用開口60が複数形成されている。本例では、冷媒分配部材4には5個の冷媒吐出用開口60が、同一の軸方向位置であって互いに異なる周方向位置に形成されている。また、当該5個の冷媒吐出用開口60は、開口断面積が互いに等しく形成されている。なお、図2に示すように、本例では、冷媒分配部材4の下面における冷媒吐出用開口60に隣接した部位は、凹凸のない円弧状面とされている。
冷媒吐出用開口60のそれぞれは、鉛直方向視で開口部の全てがコイルエンド部3(より厳密には、コイルエンド部3が占有する円筒状の空間、以下同様)と重なる位置に形成されている。言い換えれば、本例では、冷媒吐出用開口60のそれぞれは、開口部の軸方向一方側端部がコイルエンド部3の軸方向一方側端部と同じ軸方向位置、或いは当該軸方向位置よりも軸方向他方側に位置するように形成されている。なお、冷媒吐出用開口60からの冷媒の吐出方向は、重力や表面張力の影響を受けたものとなるが、ほぼ鉛直下方に沿った方向となる。よって、上記のような位置に冷媒吐出用開口60を形成することで、冷媒吐出用開口60から吐出された冷媒を効率良くコイルエンド部3に供給することが可能となっている。なお、図2における矢印は、冷媒分配部材4に供給される冷媒及び各冷媒吐出用開口60からコイルエンド部3に供給される冷媒の流れを模式的に示している。コイルエンド部3に供給された冷媒は、コイルエンド部3との間の熱交換により当該コイルエンド部3を冷却する。なお、冷媒は、例えば油等の公知の種々の冷却液を採用することができる。
ところで、コイルエンド部3を効率的に冷却するには、冷媒分配部材4に供給された冷媒を、複数の冷媒吐出用開口60のそれぞれに対して所望の分配割合で分配できることが望ましい。そこで、冷媒分配部材4には、導入された冷媒を複数の冷媒吐出用開口60に分配するための冷媒分配経路が形成されている。具体的には、冷媒分配部材4は、上記の冷媒分配経路を構成する構成要素として、図1に示すように、隔壁により区画された複数(本例では8個)の室42と、当該隔壁に形成されるとともに互いに隣接する室42の間を連通する室間連通路50と、を備えている。すなわち、冷媒分配経路は、隔壁により区画された複数の室42と、当該隔壁に形成されるとともに互いに隣接する室42の間を連通する室間連通路50と、を有している。そして、冷媒分配経路は、室間連通路50の形成位置や異なる室間連通路50同士の底面部の高低関係により、分岐箇所や冷媒の流下方向が定まる。このような冷媒分配経路を備えることで、以下に述べるように、複数の冷媒吐出用開口60のそれぞれに対して所望の分配割合で冷媒を分配できることが可能となっている。なお、当然ながら、本願にいう「所望の分配割合」は、ステータ1の使用上大きな問題が生じない程度にコイルエンド部3を冷却することができるものであれば良く、ある程度の幅を有したものであっても良い。
冷媒分配部材4は、上記複数の室42として、室内に導入された冷媒を複数の室間連通路50に分配することで冷媒分配経路を分岐する冷媒分配室70を少なくとも一つ備えるとともに、冷媒吐出用開口60が形成された冷媒吐出室80を複数備えている。本例では、冷媒分配部材4は、3つの冷媒分配室70と、5つの冷媒吐出室80とを備えている。なお、図2にも示すように、本例では、冷媒吐出用開口60は、冷媒吐出室80の底面(径方向外側に面する面)に形成されている。
本実施形態では、図1に示すように、冷媒分配部材4は、複数の冷媒分配室70がコイルエンド部3の周方向に沿って隣接して配置された冷媒分配室部と、複数の冷媒吐出室80がコイルエンド部3の周方向に沿って隣接して配置された冷媒吐出室部とが、コイルエンド部3の軸方向に並んで配置されている部分を有する。本例では、3つの冷媒分配室70が冷媒分配室部を形成し、周方向両側の冷媒吐出室80を除く3つの冷媒吐出室80が冷媒吐出室部を形成している。このように、冷媒分配室70や冷媒吐出室80を規則的に配置することで、冷媒分配経路を簡素なものとすることができるとともに、冷媒分配部材4の大型化を抑制することが可能となっている。また、冷媒吐出室80が周方向に沿って配置されるため、冷媒をコイルエンド部3に対して周方向の広い範囲に供給することが容易となっている。
さらに、本実施形態では、図1に示すように、複数の室42は、上方に開口する槽状に形成されている。そして、複数の室42のそれぞれは、隔壁により四方を囲まれているため、室間連通路50や冷媒吐出用開口60以外の部位を介した冷媒の流出が抑制されている。なお、図1、図2に示すように、底面(径方向外側に面する面)の水平方向に対する傾斜角が大きくなる室42(本例では、周方向中央部の室42を除く室42)においては、隔壁により四方を囲まれるものの、実質的には、3つの隔壁と当該底面とにより、冷媒の室間連通路50や冷媒吐出用開口60以外の部位を介した流出が抑制される。
また、本実施形態では、室間連通路50は、室42を区画する隔壁の上部の一部を切り欠いた切り欠き状に形成されている。このように室間連通路50を形成することで、所望の開口幅を有する室間連通路50の形成工程を簡素なものとすることができ、冷媒分配部材4の製造コストを低く抑えることが可能となっている。具体的には、図1に示すように、室間連通路50は、切り欠かれた隔壁の上面を底面部とし、隔壁の対向する2つの側面を側面部とし、これらの3つの部位(底面部及び2つの側面部)により形成される空間となっている。よって、室間連通路50の開口幅は、当該2つの側面部の間の離間距離となる。なお、本例では、2つの側面部の法線方向は、互いに一致するとともに底面部の法線方向に対して直交する。よって、室間連通路50の開口幅は、当該室間連通路50内における上下位置によらず一定である。
そして、冷媒分配部材4は、図1及び図2に示すように、コイルエンド部3の少なくとも最上部を覆うように配置されており、ステータ1の使用状態で冷媒分配部材4内の最上部に位置する冷媒分配室70が、冷媒分配部材4の外部から冷媒が導入される冷媒導入室43となっている。すなわち、冷媒導入室43はコイルエンド部3の最上部の上方に配置され、コイルエンド部3の最上部から周方向両側に冷媒を供給することが容易な構成となっている。さらに、冷媒分配経路は、冷媒分配部材4の内部において最上部に位置する冷媒導入室43が最上流部となり、複数の冷媒吐出室80のそれぞれが最下流部となるように形成されている。よって、冷媒導入室43から各冷媒吐出室80に向かう冷媒分配経路を、上方に向かう部分を有さないものとすることができ、ポンプ等を備えなくとも重力を利用して冷媒分配経路に沿って冷媒を流下させることが可能となっている。なお、冷媒分配経路は、後述する冷媒分配室70からの分岐後に合流することがないように形成されている。
冷媒分配室70に導入された冷媒は、当該冷媒分配室70を囲む隔壁に形成された、それぞれ異なる下流側の室42に連通する複数の室間連通路50に分配される(図3の矢印参照)。そして、この際、冷媒分配室70に導入される冷媒の量によらず、所望の分配割合で当該複数の室間連通路50に冷媒を分配できることが望ましい。そこで、一つの冷媒分配室70を囲む隔壁に形成された、それぞれ異なる下流側の室42に連通する複数の室間連通路50に関して、ステータ1の使用状態における底面部の高さが互いに等しく形成されている。これにより、冷媒分配室70に導入された冷媒は、下流側の複数の室42に連通する複数の室間連通路50の開口幅に応じて定まる分配割合で、当該下流側の複数の室42に分配される。そして、最終的には、冷媒吐出用開口60が形成された複数の冷媒吐出室80のそれぞれには、各冷媒吐出室80の上流側にある全ての室間連通路50の開口幅に応じた分配割合で冷媒が分配される。よって、各室間連通路50の開口幅を適切に設定することで、冷媒分配室70への冷媒の供給量にかかわらず、複数の冷媒吐出用開口60に対して所望の分配割合で冷媒を分配することが可能となる。なお、室間連通路50の開口幅の設定については後述する。
また、冷媒導入室43以外の冷媒分配室70に関して、冷媒分配室70を囲む隔壁に形成された上流側の室42(本例では、冷媒分配室70)に連通する室間連通路50の底面部の高さは、一つ下流側の室42に連通する室間連通路50の底面部の高さよりも高く形成されている。これにより、冷媒分配室70に導入された冷媒が上流側の室42に逆流することが禁止されている。
ところで、図1に模式的に示すように、冷媒吐出用開口60が形成されない冷媒分配室70には常に一定量の冷媒が溜められることになる。この際の液面レベルは、下流側の室42に連通する室間連通路50の底面部の高さにほぼ等しくなる。そして、冷媒分配室70に冷媒が導入されると、当該冷媒分配室70内における冷媒の液面レベルが上昇し、液面レベルの上昇幅に応じた量の冷媒が、下流側の複数の室42に対して分配される。すなわち、冷媒分配室70に新たに導入された冷媒の量に応じた量の冷媒が、下流側の複数の室42に分配される。そして、冷媒分配経路における最下流部である冷媒吐出室80に到達した冷媒は、当該冷媒吐出室80に形成された冷媒吐出用開口60を介してコイルエンド部3に供給される。なお、図1、図2においては、各冷媒吐出室80に供給された冷媒が、冷媒吐出室80に一時的に溜められている様子を模式的に示している。
また、上記のように冷媒分配室70には常に一定量の冷媒が溜められているため、冷媒導入室43(本例では、最上部に位置する冷媒分配室70)に冷媒を導入する際、冷媒導入室43の底面がむき出しになっている構成に比べ、導入された冷媒の飛散が抑制される構成となっている。なお、冷媒導入室43に冷媒を導入するための構成は、冷媒導入室43に冷媒を導入できるあらゆる構成を採用することができる。例えば、冷媒導入室43の上方に設けられた吐出孔から冷媒を滴下して冷媒導入室43に供給する構成としたり、冷媒導入室43とは軸方向位置が異なる位置に配置された吐出孔から、冷媒を軸方向に吐出して冷媒導入室43に供給する構成とすることができる。なお、本実施形態では、冷媒導入室43となる冷媒分配室70は、上記のように上方に開口する槽状に形成されているため、冷媒導入室43に対して冷媒を供給するための構成は何れにしても簡素なものとすることができる。
3.室間連通路の開口幅の設定方法
次に、冷媒分配部材4に形成される室間連通路50の開口幅の設定方法について、図3、図4を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明では、図3、図4に示すように、複数(本例では3つ)の冷媒分配室70のそれぞれを区別し、周方向一方側から周方向他方側に向かって、「第一冷媒分配室71」、「第二冷媒分配室72」、「第三冷媒分配室73」とする。また、複数(本例では5つ)の冷媒吐出室80のそれぞれを区別し、周方向一方側から周方向他方側に向かって、「第一冷媒吐出室81」、「第二冷媒吐出室82」、「第三冷媒吐出室83」、「第四冷媒吐出室84」、「第五冷媒吐出室85」とする。また、複数(本例では7つ)の室間連通路50のそれぞれを、周方向一方側から周方向他方側に向かって、「第一室間連通路51」、「第二室間連通路52」、「第三室間連通路53」、「第四室間連通路54」、「第五室間連通路55」、「第六室間連通路56」、「第七室間連通路57」とする。そして、複数(本例では5つ)の冷媒吐出用開口60のそれぞれを区別し、周方向一方側から周方向他方側に向かって、「第一冷媒吐出用開口61」、「第二冷媒吐出用開口62」、「第三冷媒吐出用開口63」、「第四冷媒吐出用開口64」、「第五冷媒吐出用開口65」とする。なお、これらを区別する必要がない場合には、これまでと同様、「冷媒分配室70」、「冷媒吐出室80」、「室間連通路50」、「冷媒吐出用開口60」という。
また、以下の説明では、図4に示すように、第一冷媒吐出用開口61、第二冷媒吐出用開口62、第三冷媒吐出用開口63、第四冷媒吐出用開口64、第五冷媒吐出用開口65の開口断面積を、それぞれ、「S1」、「S2」、「S3」、「S4」、「S5」とする。また、第一室間連通路51、第二室間連通路52、第三室間連通路53、第四室間連通路54、第五室間連通路55、第六室間連通路56、及び第七室間連通路57の開口幅を、それぞれ、「W1」、「W2」、「W3」、「W4」、「W5」、「W6」、「W7」とする。
本発明では、複数の冷媒吐出用開口60のそれぞれに対して、各冷媒吐出用開口60の開口断面積に応じた量の冷媒を供給すべく、以下のように室間連通路50の開口幅を設定している。すなわち、一つの冷媒分配室70を囲む隔壁に形成された、それぞれ異なる下流側の室42に連通する複数の室間連通路50に関して、異なる室間連通路50同士の開口幅の比が、それぞれの室間連通路50の下流にある全ての冷媒吐出用開口60の開口断面積の和の比に等しく設定されている。なお、「室間連通路50の下流にある全ての冷媒吐出用開口60の開口断面積の和」は、室間連通路50の下流にある冷媒吐出用開口60が一つである場合における当該冷媒吐出用開口60の開口断面積を含む概念として用いている。以下、3つの冷媒分配室71〜73のそれぞれについて、具体的に説明する。
(a)第一冷媒分配室71
第一冷媒分配室71を囲む隔壁に形成された、それぞれ異なる下流側の室42に連通する複数の室間連通路50(第一冷媒吐出室81に連通する第一室間連通路51、及び第二冷媒吐出室82に連通する第二室間連通路52)に関して、以下のように開口幅が設定されている。すなわち、第一室間連通路51の開口幅W1と、第二室間連通路52の開口幅W2との比は、第一室間連通路51の下流にある全ての冷媒吐出用開口60(第一冷媒吐出用開口61)の開口断面積Sの和(S1)と、第二室間連通路52の下流にある全ての冷媒吐出用開口60(第二冷媒吐出用開口62)の開口断面積Sの和(S2)との比に等しく設定されている。これを式で表すと、以下の式(1)のようになる。
W1:W2 = S1:S2・・・(1)
なお、本例では、冷媒吐出用開口61〜65の開口断面積S1〜S5は互いに等しいため、W1:W2=1:1となる。
(b)第三冷媒分配室73
第三冷媒分配室73を囲む隔壁に形成された、それぞれ異なる下流側の室42に連通する複数の室間連通路50(第四冷媒吐出室84に連通する第六室間連通路56、及び第五冷媒吐出室85に連通する第七室間連通路57)に関して、以下のように開口幅が設定されている。すなわち、第六室間連通路56の開口幅W6と、第七室間連通路57の開口幅W7との比は、第六室間連通路56の下流にある全ての冷媒吐出用開口60(第四冷媒吐出用開口64)の開口断面積Sの和(S4)と、第七室間連通路57の下流にある全ての冷媒吐出用開口60(第五冷媒吐出用開口65)の開口断面積Sの和(S5)との比に等しく設定されている。これを式で表すと、以下の式(2)のようになる。
W6:W7 = S4:S5・・・(2)
なお、本例では、冷媒吐出用開口61〜65の開口断面積S1〜S5は互いに等しいため、W6:W7=1:1となる。
(c)第二冷媒分配室72
第二冷媒分配室72を囲む隔壁に形成された、それぞれ異なる下流側の室42に連通する複数の室間連通路50(第一冷媒分配室71に連通する第三室間連通路53、第三冷媒吐出室83に連通する第四室間連通路54、及び第三冷媒分配室73に連通する第五室間連通路55)に関して、以下のように開口幅が設定されている。すなわち、第三室間連通路53の開口幅W3と、第四室間連通路54の開口幅W4と、第五室間連通路55の開口幅W5の比は、第三室間連通路53の下流にある全ての冷媒吐出用開口60(第一冷媒吐出用開口61及び第二冷媒吐出用開口62)の開口断面積Sの和(S1+S2)と、第四室間連通路54の下流にある全ての冷媒吐出用開口60(第三冷媒吐出用開口63)の開口断面積Sの和(S3)と、第五室間連通路55の下流にある全ての冷媒吐出用開口60(第四冷媒吐出用開口64及び第五冷媒吐出用開口65)の開口断面積Sの和(S4+S5)との比に等しく設定されている。これを式で表すと、以下の式(3)のようになる。
W3:W4:W5 = (S1+S2):S3:(S4+S5)・・・(3)
なお、本例では、冷媒吐出用開口61〜65の開口断面積S1〜S5は互いに等しいため、W3:W4:W5=2:1:2となる。
以上のように、各室間連通路51〜57の開口幅W1〜W7を設定することで、複数の冷媒吐出用開口60のそれぞれに対して、冷媒分配室70への冷媒の供給量にかかわらず、各冷媒吐出用開口60の開口断面積に応じた量の冷媒を供給することができる。言い換えれば、各冷媒吐出用開口60の吐出可能な冷媒量に応じて、複数の冷媒吐出用開口60のそれぞれに冷媒を分配することができる。これにより、コイルエンド部3を効率的に冷却することが可能となっている。なお、本例では、異なる冷媒吐出用開口60同士の冷媒吐出量の比は、開口断面積の比にほぼ等しくなる。また、本例では、図4より明らかなように、第一室間連通路51の開口幅W1と、第三室間連通路53の開口幅W3と、第五室間連通路55の開口幅W5と、第七室間連通路57の開口幅W7とは、互いに等しく形成されている。
4.その他の実施形態
(1)上記の実施形態では、冷媒分配部材4の下面における冷媒吐出用開口60に隣接した部位が、凹凸のない円弧状面とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、図5及び図6に示すように、冷媒分配部材4の下面における冷媒吐出用開口60の開口部の周囲に、溝状の引退部96が形成されている構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。このような構成によれば、冷媒吐出用開口60から下方に向けて吐出される冷媒が、冷媒分配部材4の下面を伝うことを抑制することができる。よって、冷媒吐出用開口60から吐出される冷媒を、当該冷媒吐出用開口60の下方に位置するコイルエンド部3の冷媒供給対象部位により確実に供給することができ、コイルエンド部3を適切に冷却することができる。なお、溝状の引退部96を設けることによって冷媒分配部材4の上下方向の体格は大きくならないので、冷媒分配部材4の配置に関して大きな問題は生じない。
(2)上記の実施形態では、冷媒分配部材4が、3つの冷媒分配室70と5つの冷媒吐出室80とを備え、各冷媒吐出室80には一つの冷媒吐出用開口60が形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、冷媒分配部材4が備える冷媒分配室70や冷媒吐出室80の個数、並びに冷媒吐出室80に形成される冷媒吐出用開口60の個数は適宜変更可能である。例えば、図7に示すように、冷媒分配部材4が、5つの冷媒分配室70と7つの冷媒吐出室80を備える構成とすることができる。図7に示す例では、冷媒吐出室80によって形成される冷媒吐出用開口60の個数が異なる。具体的には、周方向中央の3つの冷媒吐出室80のそれぞれには6つの冷媒吐出用開口60が形成され、残りの4つの冷媒吐出室80のそれぞれには4つの冷媒吐出用開口60が形成されている。このように冷媒吐出室80に複数の冷媒吐出用開口60が形成される構成においても、上記の実施形態のように各室間連通路50の開口幅を設定することで、上記の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。そして、冷媒吐出室80内における複数の冷媒吐出用開口60の形成位置を周方向にずらして上下方向位置を異ならせることで、当該複数の冷媒吐出用開口60同士の冷媒吐出量の比を調節することも可能である。なお、図7に示す冷媒分配部材4は、上記実施形態とは異なり、ステータコア2をケースに固定する締結ボルト90以外の締結ボルトにより、取付部95を介してケースに固定されるように構成されている。
(3)上記の実施形態では、冷媒分配部材4に形成される複数の冷媒吐出用開口60の開口断面積が、互いに等しい場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、複数の冷媒吐出用開口60の開口断面積が互いに異なる構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。このような構成として、例えば、複数の冷媒吐出用開口60の開口断面積のそれぞれを、コイルエンド部3における対応する冷媒供給部位の発熱量に応じて設定する構成とすると好適である。このような構成によれば、コイルエンド部3における温度が高い部分により多くの冷媒を供給することができ、コイルエンド部3の冷却効率を高めることができる。
(4)上記の実施形態では、一つの冷媒分配室70を囲む隔壁に形成された、それぞれ異なる下流側の室42に連通する複数の室間連通路50に関して、異なる室間連通路50同士の開口幅の比が、それぞれの室間連通路50の下流にある全ての冷媒吐出用開口60の開口断面積の和の比に等しく設定されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、一つの冷媒分配室70を囲む隔壁に形成された、それぞれ異なる下流側の室42に連通する複数の室間連通路50に関して、異なる室間連通路50同士の開口幅の比が、それぞれの室間連通路50の下流にある全ての冷媒吐出用開口60の開口断面積の和の比に応じて設定されている構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。このような構成では、例えば、上記の実施形態のように定まる室間連通路50の開口幅を基準として開口幅の調整を行うことで、各冷媒吐出用開口60に分配される冷媒の量を、コイルエンド部3における対応する冷媒供給部位の温度に応じて調整したり、コイルエンド部3における対応する冷媒供給部位との距離に応じて調整したりすることができる。
(5)上記の実施形態では、軸心が水平方向になるようにステータ1がケースに配置される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、軸心が水平方向以外の鉛直方向に対して交差する方向(以下、この段落において「交差方向」という。)となるようにステータ1が配置され、コイルエンド部3も当該交差方向に延びる円筒状に形成されている構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。例えば、ステータ1が、ハイブリッド車両や電動車両等の車両の駆動力源としての回転電機用のステータである場合においては、上記の交差方向を、車両の前後方向に延びるとともに、車両後方側に向かうに従って鉛直方向下側に向かうような方向とすることができる。また、このような構成では、軸方向に隣接する冷媒分配室70と冷媒吐出室80との位置関係は、冷媒分配室70が冷媒吐出室80よりも上方に位置するように設定する好適である。
(6)上記の実施形態では、軸心が鉛直方向に対して交差する方向(水平方向)になるようにステータ1がケースに配置される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、軸心が鉛直方向になるようにステータ1がケースに配置される構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。このような構成において、例えば、図8や図9に示すような冷媒分配部材4を、コイルエンド部の上方(軸方向外側)に配置する構成とすることができる。なお、図8及び図9は、冷媒分配部材4の一部のみを示した図である。このように形成された冷媒分配部材4においても、各室間連通路50の底面部の高さと開口幅を上記実施形態のように設定することで、上記の実施形態と同様の作用効果が得られる。なお、図8に示す例では、3つの冷媒分配室70が周方向に沿って並んで冷媒分配室部を構成するとともに、周方向中央側の3つの冷媒吐出室80が周方向に沿って並んで冷媒吐出室部を構成し、当該冷媒分配室部と当該冷媒吐出室部とが径方向に並んでいる。また、図9に示す例では、1つの冷媒分配室70に対して径方向内側に、4つの冷媒吐出室80が周方向に沿って並んでいる。なお、図8及び図9には、冷媒分配部材4が鉛直方向視で円筒状に形成されている場合を例として示しているが、当然ながら、鉛直方向視で円弧状に形成されている構成とすることもできる。
(7)上記の実施形態では、室間連通路50の開口幅が、当該室間連通路50内における上下位置によらず一定である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、室間連通路50の開口幅が、当該室間連通路50内における上下位置によって異なる構成とすることも本発明の好適な実施形態の一つである。このような構成においても、異なる室間連通路50同士の開口幅の比が、上下方向のいずれの位置においても上記の実施形態のように設定される構成とすることで、上記の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。このような構成では、例えば、室間連通路50のそれぞれを、上方に向かうに従って開口幅が一様に広くなるように形成することができる。この場合、冷媒分配室70に供給される冷媒の量が多くなった場合に、下流側の複数の室42への冷媒の分配割合を所望の分配割合に維持しつつ、当該複数の室42への冷媒供給量を上記の実施形態よりも増加させることができ、冷媒分配室70から冷媒があふれることを抑制することができる。
(8)上記の実施形態では、隣接する室42の間を連通する室間連通路50が、一つの連通路により構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、隣接する室42の間を連通する室間連通路50が、2つ以上(例えば、2つ、3つ等)の連通路により構成されている構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。このような構成では、連通する2つの室42が共に同一である連通路の開口幅の和を、当該2つの室42の間を連通する室間連通路50の幅とみなして各室間連通路50の幅を設定することで、上記の実施形態と同様の作用効果が得られる。
(9)上記の実施形態では、冷媒導入室43が、冷媒分配部材4内における最上部に位置する冷媒分配室70である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、冷媒分配部材4内におけるその他の冷媒分配室70をも冷媒導入室43として構成することも、本発明の好適な実施形態の1つである。すなわち、冷媒導入室43の個数は、一つである必要はなく、冷媒分配部材4内に複数(例えば、2つ、3つ等)の冷媒導入室43が形成されていても良い。この際、各冷媒導入室43を起点とする冷媒分配経路は互いに独立である必要がある。
(10)上記の実施形態では、複数の室42が、上方に開口する槽状に形成され、室間連通路50が、隔壁の上部の一部を切り欠いた切り欠き状に形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数の室42の少なくとも一部(例えば、冷媒導入室43以外の室42)を、天井を形成する壁部を備えた構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、室間連通路50を、隔壁を貫通するように形成することも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、貫通孔の断面形状は、例えば矩形、多角形、楕円形、円形等とすることができる。
(11)上記の実施形態では、冷媒分配部材4が、コイルエンド部3の軸方向から見て円弧状に形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、冷媒分配部材4のコイルエンド部3の軸方向から見た形状は、コイルエンド部3の外周面の形状に合わせて適宜変更可能である。また、冷媒分配部材4のコイルエンド部3の軸方向から見た形状を、コイルエンド部3の外周面の形状とは無関係な形状とすることもできる。例えば、冷媒分配部材4のコイルエンド部3の軸方向から見た形状を、直線状や折れ線状等とすることができる。
(12)上記の実施形態では、冷媒分配部材4が、複数の冷媒分配室70がコイルエンド部3の周方向に沿って隣接して配置された冷媒分配室部と、複数の冷媒吐出室80がコイルエンド部3の周方向に沿って隣接して配置された冷媒吐出室部とが、コイルエンド部3の軸方向に並んで配置されている部分を有する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、冷媒分配部材4が上記のような部分を有さない構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。すなわち、冷媒分配室70や冷媒吐出室80の冷媒分配部材4内における配設位置は、適宜変更可能である。
(13)上記の実施形態では、冷媒分配部材4が、コイルエンド部3の少なくとも最上部を覆うように形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、冷媒分配部材4が、コイルエンド部3の最上部を覆わないように構成することも、本発明の好適な実施形態の一つである。このような構成は、コイルエンド部3の最上部には、冷媒分配部材4とは異なる部材から冷媒が供給される場合に好適に実施できる。また、このような構成においても、冷媒導入室43を、冷媒分配部材4内における最上部に位置する冷媒分配室70とすると好適である。
(14)上記の実施形態では、冷媒分配部材4から冷媒が供給されるコイルエンド部3の形状が、図1で示されるようなものである場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、図2に示すコイルエンド部94のような形状等、あらゆる形状のコイルエンド部に本発明を適用することができる。
(15)上記の実施形態では、ステータ1の軸方向一方側のコイルエンド部3の上方に、冷媒分配部材4が備えられる場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、ステータ1の軸方向他方側のコイルエンド部94の上方にも同様の冷媒分配部材を備える構成としたり、ステータ1の軸方向他方側のコイルエンド部94の上方にのみ同様の冷媒分配部材を備える構成としたりすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(16)上記の実施形態では、冷媒吐出用開口60が、鉛直方向視で開口部の全てがコイルエンド部3と重なる位置に形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。従って、冷媒吐出用開口60を、鉛直方向視で開口部の一部がコイルエンド部3と重なる位置に形成する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。なお、冷媒吐出用開口60を、鉛直方向視で開口部がコイルエンド部3と重ならない位置に形成することもできる。
(17)上記の実施形態では、冷媒吐出用開口60が冷媒吐出室80の底面に形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、複数の冷媒吐出用開口60の少なくとも何れかが、冷媒吐出室80における隣接する室42との間の隔壁以外の側面に形成された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(18)上記の実施形態では、冷媒分配経路が、複数の冷媒吐出室80のそれぞれが最下流部となるように形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、複数の冷媒吐出室80の少なくとも一部の下流側に、さらに別の室が形成されている構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(19)上記の実施形態では、冷媒吐出用開口60の断面形状が円形の場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、冷媒吐出用開口60の断面形状を円形以外(例えば、四角形等の多角形や楕円形等)とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(20)上記の実施形態では、冷媒分配部材4が絶縁材料により形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、冷媒分配部材4を、金属等の絶縁材料以外の材料により形成することも可能である。
本発明は、ステータコアと当該ステータコアの軸方向端部から突出するコイルエンド部とを備えるステータのコイルエンド部に冷媒を供給し、当該コイルエンド部を冷却する回転電機のステータの冷却構造に好適に利用することができる。
1:ステータ
2:ステータコア
3:コイルエンド部
4:冷媒分配部材
42:室
43:冷媒導入室
50〜57:室間連通路
60〜65:冷媒吐出用開口
70〜73:冷媒分配室
80〜85:冷媒吐出室
96:引退部
S1〜S5:開口断面積
W1〜W7:開口幅

Claims (8)

  1. ステータコアと当該ステータコアの軸方向端部から突出するコイルエンド部とを備えるステータの前記コイルエンド部に冷媒を供給し、当該コイルエンド部を冷却する回転電機のステータの冷却構造であって、
    前記コイルエンド部に冷媒を供給するための冷媒吐出用開口が複数形成されているとともに、導入された冷媒を複数の前記冷媒吐出用開口に分配するための冷媒分配経路が形成されている冷媒分配部材を、前記コイルエンド部の冷媒供給対象部位に対して上方に備え、
    前記冷媒分配経路は、隔壁により区画された複数の室と、前記隔壁に形成されるとともに互いに隣接する前記室の間を連通する室間連通路と、を有し、
    前記冷媒分配部材は、前記複数の室として、室内に導入された冷媒を複数の前記室間連通路に分配することで前記冷媒分配経路を分岐する冷媒分配室を少なくとも一つ備えるとともに、前記冷媒吐出用開口が形成された冷媒吐出室を複数備え、更に、前記冷媒分配経路が前記冷媒分配室からの分岐後に合流することがないように形成されており、
    一つの前記冷媒分配室を囲む前記隔壁に形成された、それぞれ異なる下流側の室に連通する複数の前記室間連通路に関して、底面部の高さが互いに等しく形成されているとともに、異なる前記室間連通路同士の開口幅の比が、それぞれの前記室間連通路の下流にある全ての前記冷媒吐出用開口の開口断面積の和の比に応じて設定されているステータの冷却構造。
  2. 前記複数の室は、上方に開口する槽状に形成され、
    前記室間連通路は、前記隔壁の上部の一部を切り欠いて形成されている請求項1に記載のステータの冷却構造。
  3. 前記コイルエンド部は、軸心が鉛直方向に対して交差する方向に延びる円筒状に形成されており、
    前記冷媒分配部材は、前記コイルエンド部の軸方向から見て円弧状に形成されているとともに、当該コイルエンド部の外周面に沿って配置されており、
    前記冷媒分配室であって前記冷媒分配部材の外部から冷媒が導入される室である冷媒導入室は、前記冷媒分配部材内における最上部に位置する室である請求項1又は2に記載のステータの冷却構造。
  4. 前記冷媒分配部材は、前記冷媒分配室を複数備えるとともに、複数の前記冷媒分配室が前記コイルエンド部の周方向に沿って隣接して配置された冷媒分配室部と、複数の前記冷媒吐出室が前記コイルエンド部の周方向に沿って隣接して配置された冷媒吐出室部とが、前記コイルエンド部の軸方向に並んで配置されている部分を有する請求項3に記載のステータの冷却構造。
  5. 前記冷媒分配部材は、前記コイルエンド部の少なくとも最上部を覆うように形成されている請求項1から4のいずれか一項に記載のステータの冷却構造。
  6. 前記冷媒分配部材の下面における前記冷媒吐出用開口の開口部の周囲に、溝状の引退部が形成されている請求項1から5のいずれか一項に記載のステータの冷却構造。
  7. 複数の前記冷媒吐出用開口の開口断面積のそれぞれは、前記コイルエンド部における対応する冷媒供給部位の発熱量に応じて設定されている請求項1から6のいずれか一項に記載のステータの冷却構造。
  8. 一つの前記冷媒分配室を囲む前記隔壁に形成された、それぞれ異なる下流側の室に連通する複数の前記室間連通路に関して、異なる前記室間連通路同士の開口幅の比が、それぞれの前記室間連通路の下流にある全ての前記冷媒吐出用開口の開口断面積の和の比に等しく設定されている請求項1から7のいずれか一項に記載のステータの冷却構造。
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