JP5206882B2 - 塩味調節物質のスクリーニング方法 - Google Patents

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Description

本発明は、塩味を代替又は修飾する物質を含む、塩味調節物質をスクリーニングする方法に関する。塩味代替、修飾物質は、食品分野等で有用である。
味覚は、食品中の栄養成分、あるいは害毒成分の検出に重要である。哺乳動物の味覚受容は、口腔内に存在する味蕾に含まれる、味覚受容細胞を介して行われる。受容されたシグナルは、味覚受容細胞から味蕾に入り込む味神経へと伝達され、中枢に伝えられる。一般的に哺乳動物の味覚は5種類の基本的な味質に分けられる。すなわち、甘味、苦味、酸味、塩味、うま味であり、これらを5基本味と呼ぶ。
近年の研究の進展から、これら5基本味に対応する受容体が明らかになりつつある(非特許文献1、2)。新規な味覚受容体の同定と単離は、味覚受容の新しい調節方法を可能にする。例えば、受容体を用いた高親和性アゴニスト、アンタゴニストの探索により、味覚修飾物質のスクリーニングが可能である。こうした味覚修飾物質は、種々の消費者製品の味質の改良・改善につながり得る。
5基本味の一つである塩味は、ナトリウムイオン、あるいは他の無機陽イオンの検知に関与し、体内のホメオスタシスを保つのに極めて重要である。塩味の受容経路には、利尿剤であるアミロライドにより阻害を受けるアミロライド感受性経路と、アミロライドにより影響を受けないアミロライド非感受性経路とが存在すると考えられている(非特許文献3)。両塩味受容経路に関与する分子は、味蕾内の味受容細胞に存在し、機能している(非特許文献2)。
アミロライド感受性経路は、上皮性ナトリウムチャネル(ENaC)によって媒介されると考えられている。ENaCは4種類のサブユニット、α、β、γ、δから構成され、α、β、γ、あるいはδ、β、γの組み合わせからなるヘテロ多量体として機能する(非特許文献13)。しかしながら、アミロライドによる塩味受容の阻害は、げっ歯類動物においては著明に観察されるものの、ヒトでは一部にしか認められず、ヒト塩味受容機構においては異なる受容体の存在が示唆される。このように、塩味受容機構については、受容体を始めとして未だに未解明な部分が多い。
食品からの過剰な塩分摂取は、高血圧や循環器系疾患の要因の一つとされ、日本を含めて、世界的に塩分摂取量を制限する動きがある(国際保健機構、非特許文献4)。
塩分摂取量を減少させる技術として、例えば、従来から、塩化カリウムを塩化ナトリウムの代替物として用いた減塩調味料、減塩食品が開発されているが、塩化カリウムには苦味、及び刺激味があり、呈味は著しく劣るという問題がある。これを改善するために、塩化カリウムに塩化アンモニウム、乳酸カルシウム、L-アスパラギン酸ナトリウム、L-グルタミン酸塩及び/又は核酸系呈味物質を特定の割合で混合してなる調味料組成物(特許文献1)、アスコルビン酸を添加した低ナトリウム塩味調味料(特許文献2)、カラギーナンを用いた脱苦味方法(特許文献3)などが開発されている。しかし、今もなお食塩味以外の不快な呈味を除き、かつ塩化ナトリウムと同等の塩味強度を呈するほどの減塩技術には到達していない。
さらに、塩化ナトリウムを減じても塩味強度を損なわない、塩味増強物質を用いた減塩方法がある。例えば塩基性アミノ酸、特にL−アルギニンには塩味を増強する効果が知られている(非特許文献5、6)。これを応用した技術として、L−アルギニンとL−アスパラギン酸、及び塩化ナトリウムとを組み合わせたもの(特許文献4)、塩基性アミノ酸とクエン酸の中和塩を用いた呈味改良剤(特許文献5)などが開発されている。しかし減塩効果、風味、塩味強度などの観点から、塩化ナトリウムの不足分を充分に補うことができる技術は未だ開発されていない。
一方、元来、高頻度の発火を行う神経細胞において機能するとされ、細胞の膜電位が-20mV以上に脱分極するとカリウムイオンを放出し、外向き電流が観察されるカリウムチャネルのファミリーとして、Kv3ファミリーが知られている(非特許文献7)。しかし、これらは電位依存性カリウムチャネルとしての機能しか知られておらず(非特許文献8〜11)、静止膜電位(-60mV〜-80mV程度)付近で細胞外ナトリウム濃度に応じて機能する陽イオンチャネルとしての機能は全く知られていない。
味覚との関連では、ラット茸状乳頭から単離された味細胞において、Kv3.1、Kv3.2の遺伝子発現がPCR法によって報告されているが(非特許文献12)、その味細胞における機能についてはまったく知られていない。
特開平11−187841号公報 特開平1−281054号公報 特開平4−262758号公報 米国特許第5145707号明細書 特開2003−0144088号公報
Chandrashekar, J.ら、Nature, 444:288-294 (2006) Bachmanov, A.A.ら、Ann. Rev. Nutr, 27: 387-412 (2007) DeSimone, J.A.ら、Am. J. Physiol. Regulatory Integrative Comp. Physiol., 249: 52-61 (1985) Reducing salt intake in populations - Report a WHO Forum and Technical Meeting、[online]、[平成21年9月20日検索]、インターネット<URL:http://www.who.int/dietphysicalactivity/reducingsalt/en/> Riha, W.ら、Chem. Senses, 22:778 (1997) Estrella, N.L.ら、Chem. Senses, 34:A117-8 (2009) Rudy, B.ら、Trends in Neuroscience, 24:517-526 (2001) Gutman, G.A.ら、Pharmacological Reviews 57: 473-508 (2005) McCormack, T.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 87: 5227-5231 (1990) HERNANDEZ-PINEDA, R.ら、J. Neurophysiol. 82:1512-1528(1999) Madeja, M.ら、Neuropharmacology 39: 202-210 (2000) Liu, L.ら、Am. J. Physiol. Cell Physiol. 289:868-880(2005) Stahler, F.ら、Chemosensory Perception 1:78-90 (2008)
本発明の課題は、塩味受容体タンパク質、及びそれをコードする遺伝子を同定し、塩味受容を増強、または阻害する化合物、あるいは塩味代替物質を探索するスクリーニング系を提供することにある。
本発明者らは、塩味受容体、又は同受容体を調節する分子を使用すれば、塩味受容を増強、または阻害する化合物、あるいは塩味代替物質を効率的に探索、同定することが可能となり、ひいては呈味を損なわない有効な減塩方法の開発につながることができ、その結果、呈味を維持したまま含有塩濃度の低下した食品を製造することが可能となることに想到した。そして、鋭意研究を行った結果、塩味受容に関与する分子を同定することに成功し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下のとおりである。
(1)Kv3.2タンパク質を発現する細胞に被検物質を接触させ、同細胞内への陽イオン流入を、被検物質を接触させないときの前記細胞内への陽イオン流入と比較する工程を含む、塩味調節物質のスクリーニング方法。
(2)ナトリウムイオン存在下での前記細胞の細胞膜電流を測定することにより、前記陽イオン流入を測定する、(1)に記載の方法。
(3)ナトリウムイオン非存在下での前記細胞の細胞膜電流を測定することにより、前記陽イオン流入を測定する、(1)に記載の方法。
(4)塩味調節物質が、塩味増強物質、又は塩味阻害物質である、前記(1)又は(2)に記載の方法。
(5)塩味調節物質が、塩味代替物質である前記(1)又は(3)に記載の方法。
(6)Kv3.2タンパク質が、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、40,47,49,51、又は53のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するタンパク質である、前記方法。
(7)Kv3.2タンパク質が、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、40,47,49,51、又は53のいずれかと少なくとも78%以上の配列同一性を有し、かつ、細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化する陽イオンチャネルを構成し得るタンパク質である、前記方法。
(8)Kv3.2タンパク質が、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、40,47,49,51、又は53のいずれかに示されるアミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含むアミノ酸配列を有し、かつ、細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化する陽イオンチャネルを構成し得るタンパク質である、前記方法。
(9)Kv3.2タンパク質が、下記(a)又は(b)のDNAによってコードされる、前記方法。
(a)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、39、46、48、50、又は52のいずれかの塩基配列を有するDNA、
(b)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、39、46、48、50、又は52のいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列、又は同塩基配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化する陽イオンチャネルを構成し得るタンパク質をコードするDNA。
(10)Kv3.2タンパク質が、ヒト、マウス、ラット、ゼノパス属のカエル、イヌ、ウマ、チンパンジー、アカゲザル、ニワトリ、オポッサム、ブタ若しくはウシに由来するKv3.2タンパク質ホモログ、又は、これらの変異体から選択される、前記方法。
(11)前記細胞が、Kv3.2タンパク質をコードするポリヌクレオチドが発現可能な形態で導入された卵母細胞である、前記方法。
(12)前記細胞が、味細胞、舌上皮、副腎、松果体、甲状腺、メラノサイト、および、腎臓から選択される組織から単離されたKv3.2遺伝子を発現する細胞である、前記方法。
(13)Kv3.2タンパク質バリアントであって、下記(a)〜(c)のいずれかのタンパク質:
(a)配列番号47、49、51、又は53のいずれかの配列を有するタンパク質;
(b)配列番号47、49、51、又は53のいずれかと少なくとも78%以上の配列同一性を有し、かつ、細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化する陽イオンチャネルを構成し得るタンパク質;
(c)配列番号47、49、51、又は53のいずれかに示されるアミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含むアミノ酸配列を有し、かつ、細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化する陽イオンチャネルを構成し得るタンパク質。
(14)Kv3.2タンパク質バリアントをコードする、下記(a)又は(b)のいずれかのDNA:
(a)配列番号46、48、50、又は52のいずれかの塩基配列を有するDNA;
(b)配列番号46、48、50、又は52のいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列、又は同塩基配列から調製されうるプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化する陽イオンチャネルを構成し得るタンパク質をコードするDNA。
(15)Kv3.2遺伝子発現細胞中で発現している遺伝子のうち、KV3.2遺伝子と発現プロファイルが類似している遺伝子、又はKV3.2遺伝子発現細胞中では発現が抑制されている遺伝子を同定することで、Kv3.2活性を正、もしくは負の方向に調節する機能を持つタンパク質、又は塩味受容体を構成するタンパク質を探索する方法。
(16)Kv3.2タンパク質、又はこれを発現する細胞に作用する化合物を同定することにより、塩味調節物質を探索する方法。
(17)Kv3.2タンパク質、及び、味細胞特異的発現タンパク質とから構成されるチャネル又は複合体に作用する化合物を同定することにより、呈味物質、又はフレーバー物質を探索する方法。
(18)Kv3.2タンパク質をコードするポリヌクレオチドが発現可能な形態で導入された、単離された卵母細胞又は味細胞。
本発明により同定された塩味受容体タンパク質は、味細胞に発現している塩味受容体イオンチャネルを構成する。同受容体を活性化する物質は、塩味調節物質、すなわち、塩味代替、増強、阻害剤の候補物質として有用である。また、前記受容体を細胞表面に発現する細胞を用いれば、塩味代替、増強、阻害剤の簡便なスクリーニング系を提供することができる。
また、塩味を代替又は増強する物質を含む食品は、過剰な塩分摂取を抑え、高血圧や循環器系疾患予防に有効である。
マウスの各種組織におけるKv3.1、Kv3.2、Kv3.3、Kv3.4遺伝子の発現を示すRT-PCRの結果を示す図(電気泳動写真)。レーン1:舌先端部(茸状乳頭を含む)、レーン2:有郭乳頭領域、レーン3:舌両側部(葉状乳頭を含む)、レーン4:味蕾を含まない舌上皮、レーン5:逆転写酵素なし、レーン6:腎臓 Kv3.2タンパク質(ヒト)を発現するアフリカツメガエル卵母細胞の、細胞外ナトリウムイオン濃度を変化させたときの細胞膜電流を示す図。KCNC2は、Kv3.2 cRNAを注入したことを示す。 Kv3ファミリータンパク質(ヒト)を発現するアフリカツメガエル卵母細胞の、細胞外ナトリウムイオン濃度を0mMから96mMに変化させたときの細胞膜電流量差を示す図。 マウス舌上皮におけるKv3.2遺伝子の発現箇所を示すin situ ハイブリダイゼーションの結果を示す図(顕微鏡写真)。 低分子有機化合物Aを接触させたKv3.2タンパク質(ヒト)を発現する卵母細胞の細胞膜電流を示す図。KCNC2は、Kv3.2 cRNAを注入したことを示す。 Kv3.2タンパク質(アフリカツメガエル)を発現するアフリカツメガエル卵母細胞の、細胞外ナトリウムイオン濃度を変化させたときの細胞膜電流を示す図。XlKv3.2は、アフリカツメガエルのKv3.2 cRNAを注入したことを示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、元来、高頻度の発火を行う神経細胞において機能するとされ、細胞の膜電位が-20mV以上に脱分極すると電流が観察されるカリウムチャネルであるKv3ファミリーに属するイオンチャネルKv3.1、Kv3.2、Kv3.3、Kv3.4(Rudyら、Trends in Neuroscience, 24:517-526 (2001))について、マウスの味蕾を含む舌上皮組織においてこれらをコードする遺伝子の発現を確認し、またヒトKv3.2チャネル遺伝子のアフリカツメガエル卵母細胞における発現が、細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じた細胞膜電流の変動という形で塩味受容に関与しうることを見出した。この知見に基づき、Kv3.2が塩味受容体イオンチャネルとして機能し、新規の塩味調節物質のスクリーニングに用いることができることを見出した。又、Kv3.2遺伝子が味蕾において発現していることを確認し、Kv3.2チャネル遺伝子が塩味応答感度の異なる2種のマウスにおいて、感度に応じた発現量の差があることを見出し、Kv3.2が塩味受容体であることを更に確認した。又、本発明者らは、Kv3.2タンパク質の味蕾におけるスプライスバリアントを新たに見出した。
本発明の方法は、Kv3.2タンパク質を発現する細胞に被検物質を接触させ、同細胞内への陽イオン流入を、被検物質を接触させないときの前記細胞内への陽イオン流入と比較する工程を含む。
Kv3.2タンパク質は、Kv3ファミリーの一員であるカリウムチャネルを構成するタンパク質であり、本発明者等により、細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化する陽イオンチャネル活性を有することが、初めて見出された。Kv3.2タンパク質は、Kcnc2遺伝子(KCNC2とも表記される)によりコードされるポリペプチドである。
本発明において、Kv3.2タンパク質としては、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、40,47,49,51、又は53に示すアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。
ヒトKv3.2タンパク質をコードするポリヌクレオチドとしては、4種類の塩基配列が遺伝子データベース(National Center for Biotechnology Information;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/、あるいはEnsembl project;http://www.ensembl.org/index.html)に登録されている(NM_139136、NM_139137、NM_153748、AY243473)。配列番号1、3、5、7がそれぞれの塩基配列に相当する。各々の塩基配列がコードするアミノ酸配列を、配列番号2、4、6、8に示す。これらの各アミノ酸配列は、C末端を除いて共通しており(配列番号2の1〜538位に相当する箇所)、スプライスバリアントであると考えられる。
また、同様のデータベースには、マウスKv3.2タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして1種類(NM_001025581、配列番号9)が登録されている。配列番号9の塩基配列がコードするアミノ酸配列を配列番号10に示す。また、ラットKv3.2タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして4種類の塩基配列が登録されている(NM_139216、NM_139217、ENSRNOT00000049943、X62839)。これらの塩基配列を、配列番号11、13、15、17に示す。各々の塩基配列がコードするアミノ酸配列を、配列番号12、14、16、18に示す。これらの各アミノ酸配列も、C末端を除いて共通しており(配列番号12の1〜593位に相当する箇所)、スプライスバリアントであると考えられる。
また、後記実施例に示すように、アフリカツメガエルのKv3.2タンパク質遺伝子が単離され、同タンパク質が細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化する陽イオンチャネル活性を有することが示された。この遺伝子の塩基配列を配列番号39に、同遺伝子がコードするKv3.2タンパク質のアミノ酸配列を配列番号40に示す。
さらに後記実施例に示すように、マウスの味蕾を含む舌上皮組織からマウスKv3.2遺伝子のスプライスバリアント4種類を単離した。これらスプライスバリアントの塩基配列を配列番号46、48、50、52に示す。各々の塩基配列がコードするアミノ酸配列を、配列番号47、49、51、53に示す。配列番号10,47,49、51,53のアミノ酸配列は、C末端を除いて共通している(配列番号10の1〜597位に相当する箇所)。
本発明の方法に用いるKv3.2タンパク質には、種間同族体(ホモログ)も含まれ、例え
ば上記のヒト、マウス、ラット、アフリカツメガエルに由来する配列を有するタンパク質に加えて、イヌ、ウマ、チンパンジー、ニワトリ、オポッサム、ブタ若しくはウシに由来するKv3.2タンパク質であっても良い。これらをコードする遺伝子の配列情報は、それぞ
れ、イヌ:XM_538289(塩基配列は配列番号54、アミノ酸配列は配列番号55)、ウマ
:XM_001488185(塩基配列は配列番号56、アミノ酸配列は配列番号57)、チンパンジー:XR_20952(塩基配列は配列番号72、アミノ酸配列は配列番号73)、ニワトリ:XM_001235254(塩基配列は配列番号58、アミノ酸配列は配列番号59)、オポッサム:XM_001363374(塩基配列は配列番号60、アミノ酸配列は配列番号61)、XM_001363455(塩基配列は配列番号62、アミノ酸配列は配列番号63)、ブタ:XM_001926426(塩基配列は配列番号64、アミノ酸配列は配列番号65)、XM_001924780(塩基配列は配列番号
66、アミノ酸配列は配列番号67)、ウシ:XM_590276(塩基配列は配列番号68、ア
ミノ酸配列は配列番号69)として登録されている。また、アカゲザル、アノールトカゲ、マーモセット、モルモット、ナマケモノ、アルマジロ、カンガルーネズミ、ヒメハリテンレック、ハリネズミ、イトヨ、ゴリラ、ゾウ、ワラビー、キツネザル、ココウモリ、ナキウサギ、ウサギ、ガラゴ、オランウータン、ハイラックス、オオコウモリ、トガリネズミ、リス、キンカチョウ、タキフグ、メガネザル、ツパイ、イルカ、については、これらをコードする遺伝子の配列情報は、それぞれ、アカゲザル:ENSMMUG00000012362(塩基配列は配列番号70、アミノ酸配列は配列番号71)、アノールトカゲ:ENSACAG00000007691、マーモセット:ENSCJAG00000001261、モルモット:ENSCPOG00000003474、ナマケモノ:ENSCHOG00000007167、アルマジロ:ENSDNOG00000013383、カンガルーネズミ:ENSDORG00000000056、ヒメハリテンレック:ENSETEG00000010484、ハリネズミ:ENSEEUG00000002220、イトヨ:ENSGACG00000019441、ゴリラ:ENSGGOG00000003896、ゾウ:ENSLAFG00000031982、ワラビー:ENSMEUG00000007789、キツネザル:ENSMICG00000017734、ココウモリ:ENSMLUG00000010813、ナキウサギ:ENSOPRG00000017272、ウサギ:ENSOCUG00000004467、ガラゴ:ENSOGAG00000000768、オランウータン:ENSPPYG00000004780、ハイラックス:ENSPCAG00000015808、オオコウモリ:ENSPVAG00000010964、トガリネズミ:ENSSARG00000006415、リス:ENSSTOG00000004842、キンカチョウ:ENSTGUG00000007354、タキフグ:ENSTRUG00000003532、メガネザル:ENSTSYG00000010689、ツパイ:ENSTBEG00000001105、イルカ:ENSTTRG00000013226、として登録されている。

Kv3.2をコードする遺伝子は、上述した遺伝子情報を持つ遺伝子や、公知の配列を有する遺伝子に限られず、コードされるKv3.2タンパク質が細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化する陽イオンチャネルを構成し得る限り、それらの遺伝子のホモログや人為的な改変体等、保存的変異を有する遺伝子も使用することができる。すなわち、公知のタンパク質のアミノ酸配列において、1若しくは複数の位置での1若しくは複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加等を含む配列を有するタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。Kv3.2タンパク質が「細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化する陽イオンチャネルを構成し得る」とは、同タンパク質を発現する細胞をナトリウムイオンと接触させたときに、陽イオンの細胞内への流入による細胞膜電位を増加する活性を有することを意味する。ここに、陽イオンとは、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオンなどが挙げられるが、好ましくはナトリウムイオンである。
ここで、「1若しくは複数」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置やアミノ酸残基の種類によっても異なるが、具体的には好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個を意味する。また、保存的変異の代表的なものは、保存的置換である。保存的置換とは、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Leu、Ile、Val間で、極性アミノ酸である場合には、Gln、Asn間で、塩基性アミノ酸である場合には、Lys、Arg、His間で、酸性アミノ酸である場合には、Asp、Glu間で、ヒドロキシル基を持つアミノ酸である場合には、Ser、Thr間でお互いに置換する変異である。保存的置換とみなされる置換としては、具体的には、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln、Lys又はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの置換、及び、ValからMet、Ile又はLeuへの置換が挙げられる。また、上記のようなアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、または逆位等には、遺伝子が由来する微生物の個体差、種の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(mutant又はvariant)によって生じるものも含まれる。このような遺伝子は、例えば、部位特異的変異法によって、コードされるタンパク質の特定の部位のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加を含むように公知の遺伝子の塩基配列を改変することによって取得することができる。
さらに、上記のような保存的変異を有する遺伝子は、コードされるアミノ酸配列全体に対して、78%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有し、かつ、野生型Kv3.2タンパク質と同等の機能を有するタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。尚、本明細書において、「相同性」(homology)」は、「同一性」(identity)を指すことがある。
また、遺伝子の配列におけるそれぞれのコドンは、遺伝子が導入される宿主で使用しやすいコドンに置換したものでもよい。
保存的変異を有する遺伝子は、変異剤処理等、通常変異処理に用いられる方法によって取得されたものであってもよい。さらに、Kv3.2遺伝子は、宿主細胞に導入したときにKv3.2タンパク質を発現することができる限り、1又は複数のイントロンを含んでいてもよい。
また、Kv3.2をコードするDNA(以下、「Kv3.2遺伝子」と記載することがある。)は、公知の遺伝子配列の相補配列又はその相補配列から調製され得るプローブと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、公知のKv3.2タンパク質と同等の機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドが挙げられる。
「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、相同性が高いポリヌクレオチド同士、例えば78%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上のの相同性を有するポリヌクレオチド同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いポリヌクレオチド同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1% SDS 、好ましくは、0.1×SSC、0.1% SDS、さらに好ましくは、68℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度、温度で、1回、より好ましくは2〜3回洗浄する条件が挙げられる。
プローブとしては、遺伝子の相補配列の一部を用いることもできる。そのようなプローブは、公知の遺伝子配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとし、これらの塩基配列を含むDNA断片を鋳型とするPCRによって作製することができる。例えば、プローブとして、300 bp程度の長さのDNA断片を用いる場合には、ハイブリダイゼーションの洗いの条件は、50℃、2×SSC、0.1% SDSが挙げられる。
各種Kv3ファミリータンパク質の相同性を比較したところ、上記の各種動物のKv3.2タンパク質ホモログ間では78%以上の相同性(同一性)を示したが、Kv3.2タンパク質と他のKv3ファミリータンパク質とでは、最も相同性が高いもので74%であった。
Kv3.2遺伝子は、公知又は本明細書に開示された新規のKv3.2遺伝子、例えば配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、40、47、49、51、又は53に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列の情報を基にして適当なプライマー又はプローブを設計し、前記プライマー又はプローブと、目的とする生物[例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、イヌ、ウマ、チンパンジー、アカゲザル、ニワトリ、オポッサム、ブタ若しくはウシなど)]由来の試料(例えば、総RNA若しくはmRNA画分、cDNAライブラリー)とを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、又はサザンハイブリダーゼーションもしくはノーザンハイブリダイゼーション等を実施することにより、取得することができる。
Kv3.2遺伝子は、細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化する陽イオンチャネルを構成し得るタンパク質をコードする限り、断片であってもよく、また、Kv3.2タンパク質又はその断片と他のタンパク質とのキメラタンパク質であってもよい。
例えば、Kv3.2タンパク質には、前記のようにスプライスバリアントが存在し、それらの共通部分(例えば配列番号2の1〜538位)よりもC末端側の領域は、欠落、あるいは他の配列に置換させてもよい可能性が高い。
Kv3.2タンパク質をコードするポリヌクレオチドを発現可能な形態で適当な宿主細胞に導入し、Kv3.2タンパク質を発現させることによって、塩味受容体イオンチャネルを持つ細胞を取得することができる。例えば、Kv3.2タンパク質をコードする直鎖状のDNA、又は、Kv3.2タンパク質をコードする配列を含むベクターを宿主細胞に導入することによって、Kv3.2タンパク質を発現させることができる。発現可能な形態としては、例えば、DNA情報に基づいてKv3.2タンパク質が生成し得るように、転写及び翻訳に必要な配列を、Kv3.2タンパク質をコードする配列の上流に含むことが挙げられる。また、宿主細胞にKv3.2タンパク質をコードするcRNAを注入することによっても、塩味受容体イオンチャネルを持つ細胞を取得することができる。この場合は、cRNAの5'末端側に翻訳に必要な配列を含む。転写に必要な配列としては、プロモーター及びエンハンサー等の発現調節配列が挙げられる。また、転写ターミネーター配列を含んでいてもよい。翻訳に必要な配列としては、リボソーム結合部位が挙げられる。さらに、必要に応じて、プロセシング情報部位、例えばRNAスプライス部位、ポリアデニル化部位等を含んでいてもよい。ブロモーターとしては、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サイトメガロウイルス等に由来するプロモーターが挙げられる。
Kv3.2タンパク質をコードするポリヌクレオチドを導入する細胞としては、動物細胞、昆虫細胞又は酵母が好ましく、動物細胞が特に好ましい。例えば、味細胞が濃縮された画分、あるいは単離された味細胞、又は、舌上皮、副腎、松果体、甲状腺、メラノサイト、および、腎臓から選択される組織から単離された組織などを用いても良い。具体的には、Kv3.2タンパク質をコードするポリヌクレオチドを発現する組換えベクターを導入し、一時的な機能発現が可能と考えられる細胞として、アフリカツメガエル卵母細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、human embryonic kidney(HEK)細胞、Sf-9 insect細胞等が挙げられる。本発明は、又、そのようなKv3.2タンパク質をコードするポリヌクレオチドが発現可能な形態で導入された細胞を提供する。ここで細胞としては卵母細胞又は味細胞が好ましく、特に味細胞が塩味調節物質のスクリーニングに用いるのに好適である。
これらの細胞にKv3.2タンパク質をコードするポリヌクレオチドを導入する方法としては、公知の方法を用いることができる。細胞へのポリヌクレオチドの導入等の操作に必要な技術は、Sambrook, J., Fritsch, E.F., and Maniatis, T., "Molecular Cloning A Laboratory Manual, Second Edition", Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989)等に記載されている。
実施例に示すように、Kv3.2タンパク質を発現する細胞は、細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて変化する陽イオンチャネル活性を有している。したがって、細胞中で発現したKv3.2タンパク質は、細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化する陽イオンチャネルを構成し得る。Kv3.2タンパク質は、多量体として細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化する陽イオンチャネルを構成すると推定されるが、Kv3.2タンパク質を発現する細胞が細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化する陽イオンチャネル活性を有する限り、多量体であるか単量体であるかは制限されない。尚、「陽イオンチャネル」とは、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、カリウムイオン等の陽イオンを細胞内に流入ないし流出させるチャネルであることを意味する。
さらに実施例に示すように、Kv3.2タンパク質をコードする遺伝子は、味覚受容器である舌の味蕾で発現しており、その発現量は、塩味受容感度の高いマウス系統のほうが塩味受容感度の低いマウス系統よりも高いことから、Kv3.2タンパク質は塩味受容感度を調節する塩味受容体タンパク質であることが支持される。
よって、Kv3.2タンパク質、あるいはこれを発現する細胞に作用する化合物を同定することにより、塩味調節物質を探索することができる。
化合物の同定方法としては、上述のものに加えて、例えば、精製されたKv3.2タンパク質と被検物質との結合を測定することにより行うことができる。なお、Kv3.2タンパク質に作用する化合物は、関連タンパク質(例えばKv1.2、Chenら、Proc Natl Acad Sci U S A. 107:11352-11357 (2010))の立体構造情報を参考にして、その立体構造を計算機により推定し、さらにイオンチャネル活性に影響しうる箇所に親和性のある化合物を計算機的に選択することで、そのような化合物を効率的に探索することができ得る。
上記のようにして得られるKv3.2タンパク質を発現する細胞に被検物質を接触させ、同細胞内への陽イオン流入を、被検物質を接触させないときの前記細胞内への陽イオン流入と比較することによって、塩味調節物質をスクリーニングすることができる。
Kv3.2タンパク質を発現する細胞に被検物質を接触させたときの同細胞内への陽イオン流入が、被検物質を接触させないときの前記細胞内への陽イオン流入よりも多ければ、被検物質は塩味受容体チャネルを活性化し、被検物質を接触させたときの前記細胞内への陽イオン流入が、被検物質を接触させないときの前記細胞内への陽イオン流入よりも少なければ、被検物質は塩味受容体チャネルを不活性化すると判断される。
また、Kv3.2遺伝子発現細胞中で発現している遺伝子のうち、Kv3.2遺伝子と発現プロファイルが類似している遺伝子、又はKv3.2遺伝子発現細胞中では発現が抑制されている遺伝子を同定することで、Kv3.2活性を正、あるいは負の方向に調節する機能を持つタンパク質、又は塩味受容体を構成するタンパク質を探索することもできる。
Kv3.2活性とは、Kv3.2が、それを発現する細胞において細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて変化する陽イオンチャネルを構成する機能をいう。また、Kv3.2活性とは、Kv3.2が持つ塩味受容体タンパク質としての活性でもある。
Kv3.2遺伝子と発現プロファイルが類似している遺伝子とは、体内におけるKv3.2遺伝子発現の組織特異性と、該当遺伝子の組織特異性とが類似していることを示す。発現プロファイルが類似している遺伝子を同定する方法の一つとしては、DNAマイクロアレイなどの網羅的な遺伝子発現解析方法が挙げられる。具体的には、様々な組織毎にRNAを抽出し、それらを用いてDNAマイクロアレイなどの網羅的な遺伝子発現解析方法を用いて、Kv3.2と遺伝子発現の組織特異性が類似した遺伝子を探索することによって同定することができる。
Kv3.2遺伝子発現細胞中で発現が抑制されている遺伝子とは、Kv3.2遺伝子が発現している細胞では、その発現が抑制されており、Kv3.2遺伝子が発現していない細胞では、遺伝子発現が確認できる遺伝子をのことを示す。発現が抑制されている遺伝子を同定する方法の一つとしては、DNAマイクロアレイなどの網羅的な遺伝子発現解析方法が挙げられる。具体的には、様々な組織毎にRNAを抽出し、それらを用いてDNAマイクロアレイなどの網羅的な遺伝子発現解析方法を用いて、Kv3.2の発現する組織では発現の観察されない遺伝子を探索することによって同定することができる。
このようにして同定される遺伝子は、Kv3.2活性を調節する機能を有するタンパク質、あるいは、塩味受容体を構成するタンパク質であり、Kv3.2タンパク質と共にチャネルを構成し、あるいは、複合体を構成し、味覚受容に関与することが推察される。
さらに、味覚受容体であるKv3.2タンパク質、及び、味細胞特異的発現タンパク質とから構成されるチャネル又は複合体に作用する化合物を同定することにより、呈味物質、又はフレーバー物質を探索することもできる。フレーバー物質とは、呈味を修飾する物質であり、フレーバー添加物として、食品に利用することができる。ここで呈味物質又はフレーバー物質として、より具体的には塩味調節物質があげられる。
味覚受容体を活性化させる物質は、味覚受容細胞の興奮を促進することにより、呈味を示す、あるいは呈味を増強することが知られている。従って、塩味受容体チャネルを細胞膜に発現させた細胞を用いて、塩味受容体チャネルを活性化又は不活性化する物質、すなわち塩味調節物質をスクリーニングすることができる。つまり塩味受容体チャネルを活性化する物質は、元来塩味受容体イオンチャネルが発現している塩味受容細胞の興奮を促進することにより、塩味受容を増強することが期待できる。そのため、ナトリウムイオン非存在下で塩味受容体チャネルを活性化する物質は塩味代替物質、ナトリウムイオン存在下で塩味受容体チャネルを活性化する物質は塩味増強物質の候補物質として有用である。従って、Kv3.2タンパク質を発現する細胞それ自体を、塩味代替、増強物質のスクリーニングに用いることができる。また、塩味受容体チャネルを不活性化する物質は、塩味阻害物質の候補として有用である。
Kv3.2タンパク質を発現する細胞の細胞内への陽イオン流入は、細胞を陽イオンを含む
溶液に懸濁させ、細胞内に流入する陽イオンの量を、直接的又は間接的に測定することによって、測定することができる。
細胞内への陽イオン流入は、例えば、細胞外陽イオン存在下での前記細胞の電気生理学的性質、例えば細胞電流を測定することにより、測定することができる。例えば、Kv3.2
タンパク質を発現する細胞をナトリウムイオンの存在下で被検物質に接触させ、細胞膜電位、もしくは膜電流の増減、または細胞内陽イオン濃度を検出することにより、塩味増強物質、又は塩味阻害物質等の塩味調節物質をスクリーニングすることができる。また、Kv3.2タンパク質を発現する細胞をナトリウムイオン非存在下で被検物質に接触させ、細胞
膜電位、もしくは膜電流の増減、または細胞内陽イオン濃度を検出することにより、塩味代替物質をスクリーニングすることができる。

以下に、Kv3.2タンパク質を発現する細胞を用いた塩味調節物質のスクリーニングの具体的な方法を例示する。
(1)アフリカツメガエル卵母細胞に、Kv3.2タンパク質をコードするcRNAを発現させ、2電極電位固定法により、塩味受容体イオンチャネル電流の増強或いは減弱を指標に、塩味受容体イオンチャネルに作用するリガンド検索を行う。例えば、保持電位-60〜80mVに膜電位固定された細胞の細胞外液に、試験化合物を添加した場合に、試験化合物を添加しない場合に比べて内向き電流が増加すれば、前記試験化合物は、本発明のポリペプチドを活性化する物質であると判定することができる。また、細胞外ナトリウムイオン濃度を段階的又は連続的に変化させて、内向き電流を測定してもよい。
(2)塩味受容体イオンチャネルを細胞表面に発現させた細胞に、電位固定法、特にはホールセル膜電位固定法により膜電位固定した状態で、塩味受容体イオンチャネル電流の増強或いは減弱を指標に、塩味受容体イオンチャネルに作用するリガンド検索を行う。例えば、保持電位-80mVに膜電位固定された細胞の細胞外液に、ナトリウムイオン存在下で試験化合物を添加した場合に、試験化合物を添加しない場合に比べて内向き電流が増加すれば、前記試験化合物は、本発明のポリペプチドを活性化する物質、すなわち塩味増強物質であると判定することができる。
(3)塩味受容体イオンチャネルを細胞表面に発現させた細胞に、あらかじめ膜電位感受性色素を取り込ませた後、ナトリウムイオン存在下で試験化合物を添加した際の、細胞内の前記色素の蛍光強度変化を分析(すなわち、測定又は検出)することにより、Kv3.2タンパク質をが活性化されるか否かを分析する。本方法は、膜電位感受性色素が、イオンチャネルの開口に伴う膜電位の変化を光学的に検出することができるという性質を利用するものである。より具体的には、前記膜電位感受性色素として、DiBAC[bis-(1,3-dibutylbarbituric acid) trimethineoxonol;Molecular Probes社製]又はその誘導体、あるいはMembrane potential assay kit(Molecular Devices社)などを用いることができる。
(4)塩味受容体イオンチャネルを細胞表面に発現させた細胞に、あらかじめ陽イオン感受性色素(例えばSBFI、CoroNa Green、Sodium Green(Molecular Probes社)等を導入し、ナトリウムイオン存在下でリガンド候補化合物と塩味受容体イオンチャネル発現細胞を一定期間接触させたときの蛍光強度比(細胞内陽イオン濃度)の変化を指標として、塩味増強ないしは阻害物質の検索を行う。
(5)前記(2)〜(4)記載の方法をナトリウムイオン非存在下で実施することによって、塩味代替物質を探索することができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。なお、特に断らない限り、公知の方法(Maniatis, T.ら,"Molecular Cloning-A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory, NY, 1-982;及び、Hille, B., Ionic Channels of Excitable Membranes, 2nd Ed., Sinauer Associates Inc., MA, 1992)に従って実施した。
〔実施例1〕マウスKv3ファミリーチャネル遺伝子の発現解析
マウス舌上皮組織において、配列番号10に示すアミノ酸配列を有するKv3ファミリーチャネル遺伝子の、舌上皮における発現分布を、RT-PCR法により以下の手順で解析した。
マウスの舌から上皮を単離し、さらに茸状乳頭を含む舌先端部、有郭乳頭を含む領域(舌中央後部)、葉状乳頭を含む舌両側部、および味蕾を含まない上皮をそれぞれ切除した。別途、腎臓を切除し、破砕した。
それぞれの組織から、RNA抽出キット(Absolutely RNA microprep kit;Stratagene社)を用いてRNAを抽出した。抽出したRNAを、Super Script III First Strand Synthesis System for RT-PCR(Invitrogen社)を用いて逆転写させ、第1鎖cDNAを合成した。得られた第1鎖cDNAを鋳型として、表1に示すプライマーの組み合わせにてPCRを行い、Kv3.1、Kv3.2、Kv3.3、及びKv3.4の各タンパク質遺伝子cDNAを増幅した。
Figure 0005206882
PCRは、FastStart Taq DNAポリメラーゼ(Roche Aplpied Science社)を用いて、ホットスタート法により行なった。なお、前記各プライマーの塩基配列は、マウスKv3.1遺伝子(NM_001112739)、マウスKv3.2遺伝子(NM_001025581、配列番号9)、マウスKv3.3遺伝子(NM_008422)、マウスKv3.4遺伝子(NM_145922)に特異的な配列であり、それぞれKv3.1:241bp、Kv3.2:574bp、Kv3.3:204bp、Kv3.4:287bpのDNA断片が増幅される。遺伝子名の後のカッコ内は、GenBankのアクセション番号である。
マウスの茸状乳頭を含む舌先端部、有郭乳頭を含む領域、葉状乳頭を含む舌両側部、味蕾を含まない上皮に由来するmRNA、及び腎臓由来のmRNAについて、RT-PCR解析を行なった。また、対照として、各組織由来のmRNAについて、逆転写酵素を加えずに同様の反応を行った。
その結果、味蕾を含む上皮組織である、茸状乳頭を含む舌先端部、有郭乳頭を含む領域、葉状乳頭を含む舌両側部においては、Kv3.1、Kv3.2、Kv3.3、Kv3.4、いずれのタンパク質についても、想定される大きさのDNA断片が増幅された(図1)。この結果から、Kv3ファミリーのイオンチャネルタンパク質のmRNAの発現は、舌上皮においては、味蕾を含む部分に見られることが明らかとなった。特にKv3.2遺伝子は、舌上皮においては茸状乳頭を含む舌先端部、有郭乳頭を含む領域、葉状乳頭を含む舌両側部という、味蕾を含む部分にのみ局在していることが明らかになった。同時に、腎臓においてもKv3.1、Kv3.2、Kv3.3については想定される大きさのDNA断片が増幅された。Kv3.4については想定される大きさと異なるDNA断片が増幅され、スプライスバリアントの存在の可能性が示唆された。
〔実施例2〕ヒトKv3.2タンパク質をコードするポリヌクレオチドの単離と発現ベクターの構築
ヒトの塩味受容体タンパク質をコードする全長cDNAは、例えばヒトのmRNAからクローニング可能であるが、The Mammalian Gene Collection(http://mgc.nci.nih.gov/)中の該当する完全長cDNA(MGC:120670 IMAGE:7939480)として、購入可能である(カタログ番号MHS1010-98052225、Open Biosystems社)。この購入可能なプラスミドを鋳型とし、配列番号19に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(5'末端にKpnI認識配列が付加してある)をフォワードプライマーとして、配列番号20に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド(5'末端にXhoI認識配列が付加してある)をリバースプライマーとして、PCR反応を行なった。得られたDNA断片を制限酵素KpnI及びXhoIで消化した後、プラスミドpcDNA3.1(+)を用いてクローニングした。得られたクローンをpcDNA3.1-KCNC2と命名した。なお、前記プラスミドpcDNA3.1(+)は、サイトメガロウイルス由来のプロモーター配列を持っており、動物細胞にクローニング断片にコードされるポリペプチドを発現させるために使用することができる。
得られたクローンpcDNA3.1-KCNC2の塩基配列を、ジデオキシターミネーター法によりDNAシークエンサー(3130xl genetic analyzer;Applied Biosystems社)を用いて解析し、配列番号5に示す塩基配列が得られた。配列番号5に示す塩基配列は、1677塩基対からなるオープンリーディングフレームを有する。前記オープンリーディングフレームから予測されるアミノ酸配列は558アミノ酸残基からなる(配列番号6)。
〔実施例3〕Kv3.2タンパク質のアフリカツメガエル卵母細胞における発現
配列番号5に示すアミノ酸配列を有するタンパク質の細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化する陽イオンチャネル活性を検出するために、前記実施例2で得られた発現ベクターpcDNA3.1-KCNC2を鋳型にしてcRNAを合成し、アフリカツメガエル卵母細胞に注入することにより、前記タンパク質を発現させた。前記発現ベクターpcDNA3.1-KCNC2を制限酵素XhoIにより1箇所で切断して線状にした後、市販のcRNA合成キットであるMegascript High Yield Transcription Kit(Ambion社)を用いて、Kv3.2タンパク質をコードするcRNAを合成した。合成したcRNAを、定法に従って調製したアフリカツメガエル卵母細胞に、ガラスキャピラリー、及びマイクロインジェクター(World Prescision Instruments社 )を用いて注入し、Kv3.2タンパク質を発現させた。また、コントロール細胞として、水を注入した卵母細胞も同様にして作製した。得られたこれらの卵母細胞を、ND96+溶液(96mM NaCl、2mM KCl、1mM MgCl2、1.8mM CaCl2、5mM HEPES、2mM ピルビン酸ナトリウム、1/100 ペニシリン−ストレプトマイシン混合液(invitrogen社15140-122)、NaOHによりpH7.4に調整)などの標準的な卵母細胞培養液中において、18℃で2〜4日保存した後、以下の実施例4で使用した。
〔実施例4〕Kv3.2タンパク質の細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化する陽イオンチャネル活性の検出
前記実施例3で得られた各卵母細胞を、2電極電位固定法によって膜電位固定し、全細胞電流を測定した。この測定には、ND96溶液(96mmol/L-NaCl、2mmol/L-KCl、1mmol/L-MgCl2 、1.8mmol/L-CaCl2、及び5mmol/L-HEPES(pH=7.5))を使用した。
プラスミドpcDNA3.1-KCNC2を鋳型にして作製したcRNAを注入したアフリカツメガエル卵母細胞では、細胞外液中のNaCl濃度を96mMとした場合、保持電位-80mVにおいて、100nA以上の内向き電流が測定された。この電流は、上記ND96溶液中のNaClをN-メチル-D-グルカミン塩酸塩と置換することによって細胞外液中のNaCl濃度を0〜96mMの間で変動させた場合、細胞外ナトリウムイオン濃度の増加に伴って増加が観察された(図2)。一方、水を注入したコントロール卵母細胞では、細胞外液中のNaCl濃度を96mMとした場合、保持電位-80mVにおいて、前記の様な大きな内向き電流は観察されず、また細胞外液中のナトリウムイオン濃度を変動させた場合にも、電流量の変化は観測されなかった。
〔実施例5〕Kv3ファミリータンパク質の細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化する陽イオンチャネル活性の有無の確認
Kv3.2と同じKv3ファミリーに属するチャネルKv3.1、Kv3.3、及びKv3.4について、実施例2と同様に発現ベクターの構築を行った。それぞれ該当するタンパク質をコードする全長cDNAを購入した(Kv3.1:カタログ番号ORK11519、Promega社、Kv3.3:カタログ番号OHS4559-99848374、Open Biosystems社、Kv3.4:カタログ番号MHS1010-98052650、Open Biosystems社)。これら全長cDNAを鋳型に、表2に示すプライマーの組み合わせにてそれぞれPCRを行い、Kv3.1、Kv3.3、及びKv3.4の各タンパク質をコードする遺伝子DNA断片を作製した。得られたDNA断片の5'、3'両末端を制限酵素で消化した後(Kv3.1:XbaI及びXhoI、Kv3.3:NheI及びEcoRI、Kv3.4:NheI及びXhoI)、プラスミドpcDNA3.1(+)を用いてクローニングした。得られたクローンをそれぞれKv3.1:pcDNA3.1-KCNC1、Kv3.3:pcDNA3.1-KCNC3、Kv3.4:pcDNA3.1-KCNC4と命名した。
Figure 0005206882
さらに実施例2と同様にしてこれらのプラスミドを鋳型にしてcRNAを合成し、アフリカツメガエル卵母細胞に注入することにより、前記タンパク質を発現させた。前記発現ベクターpcDNA3.1-KCNC1、pcDNA3.1-KCNC3、pcDNA3.1-KCNC4を制限酵素により1箇所で切断して線状にした(Kv3.1:XhoI、Kv3.3:EcoRI、Kv3.4:XhoI)。線状プラスミドを市販のcRNA合成キットであるMegascript High Yield Transcription Kit(Ambion社)を用いて、Kv3.1、Kv3.3、及びKv3.4タンパク質をコードするcRNAをそれぞれ合成した。合成したcRNAを、定法に従って調製したアフリカツメガエル卵母細胞に、ガラスキャピラリー、及びマイクロインジェクター(World Prescision Instruments社 )を用いて注入し、各cRNAによりコードされるタンパク質を発現させた。コントロール細胞として、実施例2と同様にしてKv3.2を注入してタンパク質を発現させた卵母細胞、及び水を注入した卵母細胞も作製した。得られた各卵母細胞を、ND96+溶液(96mM NaCl、2mM KCl、1mM MgCl2、1.8mM CaCl2、5mM HEPES、2mM ピルビン酸ナトリウム、1/100 ペニシリン−ストレプトマイシン混合液(invitrogen社15140-122)、NaOHによりpH7.4に調整)などの標準的な卵母細胞培養液中において、18℃で2〜4日保存した後、2電極電位固定法によって膜電位固定し、全細胞電流を測定した。この測定には、ND96溶液(96mmol/L-NaCl、2mmol/L-KCl、1mmol/L-MgCl2 、1.8mmol/L-CaCl2、及び5mmol/L-HEPES(pH=7.5))を使用した。
細胞外液中のNaCl濃度をND96を用いて96mMとした場合と、ND96溶液中のNaClとN-メチル-D-グルカミン塩酸塩とを置換することで細胞外液中のNaCl濃度を0mMにした場合とで、保持電位-80mVにおける電流量の差を、それぞれの卵母細胞について測定した。その結果、Kv3.2タンパク質をコードするcRNAを注入した場合のみ、平均して約80nA以上の電流量差が測定された(図3)。一方で、水を注入したコントロール卵母細胞では電流量の差が観察できなかった。さらに他のKv3ファミリーのチャネルであるKv3.1、Kv3.3、及びKv3.4タンパク質をコードするcRNAを注入した卵母細胞では、15nA未満の電流しか測定されず、水を注入したコントロール卵母細胞と大きな差が見られなかった。これらの測定結果から、類似性の高いKv3ファミリーチャネルの中でも、Kv3.2のみが細胞外ナトリウムイオン濃度の増加に伴った電流量の増加を示すことが確認された。
以上のことから、Kv3.2タンパク質は、細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化する陽イオンチャネルを構成し得ることが示された。
〔実施例6〕マウス塩味受容感度差のある系統間でのKv3.2遺伝子発現量の比較
これまでに行動学的手法を用いてマウスの塩味閾値を測定する方法について報告されている(Ishiwatari,Y. and Bachmanov, A.A.、Chemical Senses、34: 277-293(2009))。また、塩味に対する受容感度にはマウス系統間で差があるとの報告がある(Ishiwatari,Y., and Bachmanov, A.A.、Chemical Senses, 32:A26 (2007))。この行動学手法を用いて、塩味受容感度に差のある2系統、C57BL/6J(塩味受容感度の高い系統)、A/J(塩味受容感度の低い系統)について、塩味閾値の差を測定した。その結果、両者間では約5倍の閾値差があることが確認された(表3)。そこで、両系統について、舌上皮におけるKv3.2タンパク質をコードする遺伝子の発現量を定量比較した。
Figure 0005206882
2系統(C57BL/6J、A/J)のマウスの舌から上皮を単離し、さらに茸状乳頭を含む舌先端部、および味蕾を含まない上皮をそれぞれ切除した。それぞれの組織から、RNA抽出キット(Absolutely RNA microprep kit;Stratagene社)を用いてRNAを抽出した。抽出したRNAを、Super Script III First Strand Synthesis System for RT-PCR(Invitrogen社)を用いて逆転写させ、第1鎖cDNAを合成した。得られた第1鎖cDNAを鋳型として、TaqMan Gene Expression Assays(ライフテクノロジーズ社)を用いて、StepOnePlusリアルタイムPCRシステム(ライフテクノロジーズ社)による定量的RT-PCR解析を行った。定量結果は、各部位におけるβ-アクチン遺伝子(actb)の発現量で補正を行った上で、系統間の発現量を比較した。Kv3.2遺伝子について2種類のアッセイ(プローブ1:Mm01234233_m1、プローブ2:Mm01234232_m1)を行った結果、A/J、C57BL/6J、両系統間では、舌先端部における発現量に差が見られた。C57BL/6J系統の発現量は、A/J系統の発現量の3〜5倍であり、この発現量の差が塩味に対する受容感度の差に影響していると考えられる(表4)。一方で、両系統とも味蕾を含まない上皮では発現が検出されなかった。
Figure 0005206882
以上のことから、Kv3.2遺伝子が塩味受容に寄与するタンパク質をコードすることが確認された。
〔実施例7〕in situ ハイブリダイゼーション法によるマウスKv3.2遺伝子の味蕾における発現確認
マウスの塩味受容体タンパク質全長をコードするcDNAは、配列番号9、及び遺伝子データベースに登録されている類似配列(GenBankアクセション番号BY281762)を参考にプライマー組を設計し、PCRを行うことでクローニング可能である。配列番号35に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをフォワードプライマーとして、配列番号36に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをリバースプライマーとして、実施例6で得られた、茸状乳頭を含む舌先端部から作られた第1鎖cDNAを鋳型としてPCR反応を行なった。得られたDNA断片を、プラスミドpGEM-T easy(プロメガ社)にクローニングした。得られたクローンをpGEM-T-mKcnc2と命名した。得られたクローンの塩基配列を、ジデオキシターミネーター法によりDNAシークエンサー(3130xl genetic analyzer;Applied Biosystems社)を用いて解析し、配列番号9と同一の塩基配列が得られた。さらにプラスミドpGEM-T-mKcnc2を制限酵素SphIにて1箇所で切断して線状にした後、DIG RNAラベリングキット(ロシュ・ダイアグノスティックス社)を用いて、ジゴキシゲニン標識されたマウスKv3.2遺伝子のアンチセンスRNAを合成した。
凍結組織包埋剤に浸漬し、-80℃で凍結保存したマウス舌の味蕾を含む部分から、クライオスタットを用いて切片を作製した。切片を固定処理(4%パラホルムアルデヒドに10分浸漬)した後、アシル化処理を10分行い、PBSにて10分3回洗浄の後、ハイブリダイゼーションバッファー(5×SSC、50%ホルムアミド、1×Denhardt's solution、1mg/mlサケ精子DNA、1mg/ml tRNA)に浸漬した。cRNAプローブはジゴキシゲニン標識したUTP存在下で、T7 RNAポリメラーゼを用いて調製した。ハイブリダイゼーションは5×SSC、50%ホルムアミド溶液中で72℃にて行った。シグナル検出にはアルカリフォスファターゼ結合抗ジゴキシゲニン抗体(ロシュ・ダイアグノスティックス社)を用い、NBT/BCIPを基質とした発色反応を行った後、光学顕微鏡(オリンパス社、BX61)下にて切片を観察した。ジゴキシゲニン標識されたマウスKv3.2遺伝子のアンチセンスRNAをプローブにしてハイブリダイゼーションを行った結果、マウス舌上皮の有郭乳頭を含む領域において、味蕾中にシグナルが検出された(図4)。従って、Kv3.2遺伝子が味蕾内部で発現していることが判明した。
以上のことから、Kv3.2タンパク質は味蕾内部に存在することが確認された。Kv3.2タンパク質が塩味受容感度に寄与するタンパク質であり、かつ細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化する陽イオンチャネルを構成することを合わせて考慮すると、Kv3.2タンパク質は塩味受容体イオンチャネルを構成するタンパク質であると結論される。このKv3.2タンパク質は新規の塩味調節物質のスクリーニングに利用することが可能である。
〔実施例8〕Kv3.2を用いたチャネル活性調節化合物スクリーニング
アフリカツメガエル(雌)より取り出した成熟した卵母細胞にヒトKv3.2チャネルのcRNAを注入し、ND96+溶液(96mM NaCl、2mM KCl、1mM MgCl2、1.8mM CaCl2、5mM HEPES、2mM ピルビン酸ナトリウム、1/100 ペニシリン−ストレプトマイシン混合液(invitrogen社15140-122)、NaOHによりpH7.4に調整)などの標準的な卵母細胞培養液中において、18℃で保存した。注入から2〜4日後の卵母細胞を、アフリカツメガエル卵母細胞用パラレルクランプシステムOpusXpress 6000A(モレキュラーデバイスジャパン社)にセットした。卵母細胞をアッセイバッファー(66mM N-メチル-D-グルカミン塩酸塩、30mM NaCl、2mM KCl、1mM MgCl2、1.8mM CaCl2、5mM HEPES、KOHによりpH7.4に調整)で灌流し、膜電位を-80mVに保持した。この状態で細胞膜電流値を測定し、被検物質溶液を添加した場合に電流値の変化を検出することによるスクリーニングを実施した。電流値が内向き電流が観察された場合は化合物によりKv3.2チャネルが活性化されており、外向き電流が観察された場合はKv3.2チャネル活性が抑制されていると考えられる。また、被検物質の卵母細胞自体への影響による非特異的な電流値の変化と区別するため、cRNAの代わりに水を注入した卵母細胞にも被検物質溶液を添加し、電流値に変化がないことを確認した。例えば、スクリーニングにより得られた低分子有機化合物Aは、ヒトKv3.2チャネルを発現する卵母細胞では化合物の添加により濃度依存的に電流値を増加させたが、水を注入した卵母細胞ではこの電流値の変化は確認されなかった(図5)。
〔実施例9〕得られた活性調節化合物の塩味増強効果
Kv3.2チャネル活性調節作用が見出された化合物について、定量的な官能評価試験を行うことにより塩味に対する影響を確認した。
定量的官能評価試験は以下のように実施した。塩化ナトリウム(0.5g/dl)を含有する蒸留水に、試料として化合物Aを0.0001〜0.002g/dlにて混合した場合の、塩味増強活性の強度を測定した。0.55g/dl、0.60g/dl、0.65g/dlの塩化ナトリウムを含有する蒸留水を比較対象とした。直線尺度法を用い、塩化ナトリウム濃度が1.0倍(0.50g/dl)、1.1倍(0.55g/dl)、1.2倍(0.60g/dl)、1.3倍(0.65g/dl)の位置を示した直線に対し、該当する採点を位置として記入する方法を用いた。官能評点については、パネルが記入した位置を測定し、平均化したものを塩味増強率(倍)として表記した。n=6で実施した。食品の調味開発を累積で1年以上経験し、濃度が異なる0.50g/dl、0.55g/dl、0.60g/dlの塩化ナトリウム溶液の識別ができる者(定期的に確認)をパネラーとした。尚、「先味」とは口に含んで2秒までの塩味の強さを、「中後味」とは、中味と後味を合わせたものであり口に含んで2秒以降の塩味の強さとして評価した。代表的な濃度での結果を表5に示した。このように、化合物A添加により、濃度依存的に塩味強度が増強されることが判明した。
Figure 0005206882
〔実施例10〕アフリカツメガエルKv3.2遺伝子のクローニング
アフリカツメガエル(Xenopus laevis)Kv3.2チャネルタンパク質をコードするcDNAの情報は無い。一方で、近縁種であるゼノパス・トロピカリス(Xenopus tropicalis)の遺伝子データベース(http://genome.jgi-psf.org/Xentr4/Xentr4.home.html)中に、Kv3.2をコードすると予測される塩基配列(C_scaffold_541000003)が登録されている。本配列、及びヒト、マウス、ラットのKv3.2遺伝子配列情報を元に、配列番号37に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをフォワードプライマーとして、配列番号38に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをリバースプライマーとして、アフリカツメガエル脳のcDNAを鋳型にPCR反応を行なった。得られたDNA断片を、プラスミドpGEM-T easyにクローニングした。得られたクローンをpGEM-T-xlKcnc2と命名した。得られたクローンの塩基配列を、ジデオキシターミネーター法によりDNAシークエンサー(3130xl genetic analyzer;Applied Biosystems社)を用いて解析し、配列番号31に示す塩基配列が得られた。配列番号39に示す塩基配列は、1716塩基対からなるオープンリーディングフレームを有する。前記オープンリーディングフレームから予測されるアミノ酸配列は571アミノ酸残基からなる(配列番号40)。
〔実施例11〕アフリカツメガエルKv3.2タンパク質のアフリカツメガエル卵母細胞における発現
配列番号40に示すアミノ酸配列を有するタンパク質の細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化する陽イオンチャネル活性を検出するために、前記実施例10にて得られたクローンを鋳型にcRNAを合成し、アフリカツメガエル卵母細胞に注入することにより、前記タンパク質を発現させた。前記プラスミドpGEM-T-xlKcnc2を鋳型に、配列番号41に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをフォワードプライマーとして、配列番号42に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをリバースプライマーとしてPCR反応を行なった。得られたDNA断片を制限酵素NheI及びXhoIで消化した後、プラスミドpcDNA3.1(+)(Invitrogen社)を用いてクローニングした。得られたクローンをpcDNA3.1-xlKcnc2と命名した。得られたプラスミドを制限酵素XhoIにより1箇所で切断して線状にした後、市販のcRNA合成キットであるMegascript High Yield Transcription Kit(Ambion社)を用いて、Kv3.2タンパク質をコードするcRNAを合成した。合成したcRNAを、定法に従って調製したアフリカツメガエル卵母細胞に、ガラスキャピラリー、及びマイクロインジェクター(World Prescision Instruments社 )を用いて注入し、Kv3.2タンパク質を発現させた。また、コントロール細胞として、水を注入した卵母細胞も同様にして作製した。得られたこれらの卵母細胞を、ND96+溶液(96mM NaCl、2mM KCl、1mM MgCl2、1.8mM CaCl2、5mM HEPES、2mM ピルビン酸ナトリウム、1/100 ペニシリン−ストレプトマイシン混合液(invitrogen社15140-122)、NaOHによりpH7.4に調整)などの標準的な卵母細胞培養液中において、18℃で2〜4日保存した後、以下の実施例12で使用した。
〔実施例12〕アフリカツメガエルKv3.2タンパク質の細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化する陽イオンチャネル活性の検出
前記実施例11で得られた各卵母細胞を、2電極電位固定法によって膜電位固定し、全細胞電流を測定した。この測定には、ND96溶液(96mmol/L-NaCl、2mmol/L-KCl、1mmol/L-MgCl2 、1.8mmol/L-CaCl2、及び5mmol/L-HEPES(pH=7.5))を使用した。プラスミドpcDNA3.1-xlKcnc2を鋳型にして作製したcRNAを注入したアフリカツメガエル卵母細胞では、細胞外液中のNaCl濃度を96mMとした場合、保持電位-80mVにおいて、100nA以上の内向き電流が測定された。この電流は、細胞外液中のNaCl濃度が0mMの場合には認められず、細胞外ナトリウムイオン濃度の減少に伴って電流量の減少が観察された(図6)。一方、水を注入したコントロール卵母細胞では、細胞外液中のNaCl濃度を96mMとした場合、保持電位-80mVにおいて、前記の様な大きな内向き電流は観察されず、また細胞外液中のナトリウムイオン濃度を0mMに変化させた場合にも、電流量の変化は観測されなかった。
以上のことから、アフリカツメガエルKv3.2タンパク質は、細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化する陽イオンチャネルを構成し得ることが示された。
〔実施例13〕味蕾で発現するマウスKv3.2遺伝子のクローニング
マウスではKv3.2遺伝子として1種類(配列番号9)が登録されている。ヒトではKv3.2遺伝子としてスプライスバリアントと考えられる4種類が遺伝子データベースに登録されており(配列番号1、3、5、7)、マウスでも同様に複数のスプライスバリアントが存在する可能性がある。そこでマウスの味蕾において発現し、機能しているKv3.2遺伝子を取得する目的で、味蕾を含む舌上皮からのマウスKv3.2遺伝子のクローニングを行なった。まずマウスの舌から上皮を単離し、味蕾を含む部分を切除し、RNA抽出キット(Absolutely RNA microprep kit;Stratagene社)を用いてRNAを抽出した。抽出したRNAを、Super Script III First Strand Synthesis System for RT-PCR(Invitrogen社)を用いて逆転写させ、第1鎖cDNAを合成した。得られた第1鎖cDNAを鋳型として、PCRによるcDNAの増幅を行なった。なおフォワードプライマーとして配列番号35に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用い、リバースプライマーとして配列番号36に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、及び配列番号43、44、45に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いた。なお、配列番号43、44、45に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは、ヒトKv3.2遺伝子配列(配列番号1、3、5、7)と、マウスKv3.2遺伝子を含むマウスゲノムDNA配列(GenBankアクセション番号NC_000076)との対比から予想された、マウスKv3.2スプライスバリアントに対応するリバースプライマーとして設計した。PCRには、Phusion Hot Start High-Fidelity DNAポリメラーゼ(New England Biolabs社)を用いた。
〔実施例14〕味蕾から単離されたマウスKv3.2遺伝子のスプライスバリアント
得られたDNA断片を、プラスミドpGEM-T easyにクローニングした。得られたクローン30種類について、塩基配列を、ジデオキシターミネーター法によりDNAシークエンサー(3130xl genetic analyzer;Applied Biosystems社)を用いて解析したところ、5種類の塩基配列に大別することができた。5種類の内訳は、遺伝子データベースにマウスKv3.2遺伝子として唯一登録されている、配列番号9と同一の塩基配列に加えて、配列番号46、48、50、52に示されるオープンリーディングフレームを有する配列であった。それぞれの塩基配列の長さ、及びオープンリーディングフレームから予測されるアミノ酸配列(配列番号47、49、51、53)の長さは表6のとおりである。これらの各アミノ酸配列は、C末端を除いて共通しており(配列番号10の1〜597位に相当する箇所)、スプライスバリアントであると考えられる。味蕾からクローニングされた、これらのマウスKv3.2遺伝子のスプライスバリアントは、それぞれ単体、あるいは他のバリアントとの複合体として、塩味受容体チャネルを形成している可能性がある。
Figure 0005206882

Claims (13)

  1. Kv3.2タンパク質を発現する細胞に被検物質を接触させ、同細胞内へのナトリウムイオン流入を、被検物質を接触させないときの前記細胞内へのナトリウムイオン流入と比較する工程を含む、塩味調節物質のスクリーニング方法。
  2. ナトリウムイオン存在下での前記細胞の細胞膜電流を測定することにより、前記ナトリウムイオン流入を測定する、請求項1に記載の方法。
  3. ナトリウムイオン非存在下での前記細胞の細胞膜電流を測定することにより、前記ナトリウムイオン流入を測定する、請求項1に記載の方法。
  4. 塩味調節物質が、塩味増強物質、又は塩味阻害物質である、請求項1又は2に記載の方法。
  5. 塩味調節物質が、塩味代替物質である、請求項1又は3に記載の方法。
  6. Kv3.2タンパク質が、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、40、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71又は73のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するタンパク質である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. Kv3.2タンパク質が、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、40、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71又は73のいずれかと90%以上の配列同一性を有し、かつ、細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化するナトリウムイオンチャネルを構成し得るタンパク質である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  8. Kv3.2タンパク質が、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、40、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71又は73のいずれかに示されるアミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、及び/又は付加を含むアミノ酸配列を有し、かつ、細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化するナトリウムイオンチャネルを構成し得るタンパク質である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  9. Kv3.2タンパク質が、下記(a)又は(b)のDNAによってコードされる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
    (a)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、39、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70又は72のいずれかの塩基配列を有するDNA、
    (b)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、39、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70又は72のいずれかの塩基配列に相補的な塩基配列と68℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度、温度で洗浄する条件下でハイブリダイズし、かつ、細胞外ナトリウムイオン濃度変化に応じて活性が変化するナトリウムイオンチャネルを構成し得るタンパク質をコードするDNA。
  10. Kv3.2タンパク質が、ヒト、マウス、ラット、ゼノパス属のカエル、イヌ、ウマ、チンパンジー、アカゲザル、ニワトリ、オポッサム、ブタ若しくはウシに由来するKv3.2タンパク質ホモログタンパク質である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  11. 前記細胞が、Kv3.2タンパク質をコードするポリヌクレオチドが発現可能な形態で導入された卵母細胞である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記細胞が、味細胞、舌上皮、副腎、松果体、甲状腺、メラノサイト、および、腎臓から選択される組織から単離されたKv3.2遺伝子を発現する細胞である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  13. Kv3.2タンパク質を発現する細胞に被検物質を接触させ、同細胞内へのナトリウムイオン流入を、被検物質を接触させないときの前記細胞内へのナトリウムイオン流入と比較する工程を含む、塩味増強作用を有する、呈味物質又はフレーバー物質のスクリーニング方法。
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