JP4352895B2 - 新規グルタミン酸受容体とその利用 - Google Patents
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Description
本発明は、新規グルタミン酸受容体とその利用に関し、詳しくは、グルタミン酸受容体とそれをコードするDNA、ならびにそれらを利用して同受容体に結合するリガンドをスクリーニングする方法、及び受容体結合試験等に関する。
背景技術
ヒトの味覚は、塩味、甘味、酸味、苦味、うま味の5基本味から構成されると考えられている。各味覚は舌上の味雷に存在する味細胞に特異的に発現している個別の受容体に対する味物質の結合がトリガーとなり生じる。これまで、味覚受容体の候補として、ENaC/Deg.(塩味受容体)、EnaC,ASIC,HCN(酸味)、T2R family(苦味受容体)、T1R2/T1R3(甘味受容体)、Taste mGluR4(うま味受容体)等がクローニングされている(詳しくは、Lindemann B,Nature413:13,219−225,2001を参照、引用文献は本明細書に組み込まれる。以下同じ)。
特に、うま味受容体として、Chaudhari,N.,Landin,A.M.,Roper,S.D.らが発見した、ラット味蕾細胞に発現する低親和性グルタミン酸受容体はうま味受容機構を分子レベルで実証する有力な証拠となった(Nat.Neurosci.2000,Feb;3(2):113−9)。このうま味受容体は、ラット脳型代謝型グルタミン酸受容体のサブタイプであるタイプ4型(mGluR4)(Tanabe,Y.et al.,Neuron,1992,Jan;8(1):169−79;Flor,P.J.et al.,Neuropharmacology,1995,Feb;34(2):149−55)とホスト遺伝子を同じとし、スプライシング変異により、脳型mGluR4の細胞外ドメインを一部欠損した味蕾型mGluR4であることから、新しいタイプの末梢型グルタミン酸受容体として、本受容体を利用した、グルタミン酸以外の特異的作動物質の発見が注目されている。
一方、グルタミン酸は、中枢神経系において主要な興奮性神経伝達物質であり、その制御異常は、記憶障害、虚血性脳障害、筋萎縮性側策硬化症(ALS)、パーキンソン氏病、及びハンチントン舞踏病等の進行性脳障害などの病態形成に寄与していると広く考えられている(Meldrum,B.S.,Neurology,1994 Nov;44(11 Suppl 8):S14−23;Nishizawa,Y.,Life Sci.2001,Jun 15;69(4):369−81)。そのため、グルタミン酸受容体に関する多くの研究が脳神経系を通じてこれまでなされ、多くの受容体(イオン型受容体3種類、代謝型受容体8種類)が中枢神経系で発見され、いくつかのスプライシングバリアント体も見つかっている。特に、1992年、Nakanishiらにより代謝型グルタミン酸受容体タイプI型(mGluR1a)がクローニングされて以来、mGluR1には少なくとも3つ以上(mGluR1b,mGluR1c,mGluR1d)のスプライシングバリアント体が確認されている(詳しくは、Hermans E.& Challiss R.A.,Biochemical J.359:465−484,2001を参照)。これらのバリアント体は全て、mGluR1aのC−末端領域が短くなったものであり、神経細胞、グリア細胞に発現が確認されている。これら豊富な受容体情報をもとに、上記疾患に対する治療薬の開発を目指して、今日もその受容体特異的な作用薬の開発が精力的になされている(詳しくはBarnard,E.A.,Trends Pharmacol.Sci.,1997,May;18(5):141−8;Schoepp,D.D.,Conn,P.J.,Trends Pharmacol.Sci.1993 Jan;14(1):13−20を参照)。
今日我々は、末梢性グルタミン酸受容体の生理機能を示唆する幾つかの知見を有している(Berk,M.,Plein,H., Ferreira,D.,Clin.Neuropharmacol.,2001,May−Jun;24(3):129−32;Karim,F.,J.Neurosci.2001,Jun 1;21(11):3771−9;Berk,M.,Plein,H.,Belsham,B.,Life Sci.2000;66(25):2427−32;Carlton,S.M.,Coggeshall,R.E.,Brain Res,1999,Feb 27;820(1−2):63−70;Haxhiu.M.A.,Erokwu,B.,Dreshaj,I.A.,J.Auton.Nerv.Syst.1997,Dec 11;67(3):192−9;Inagaki,N.,FASEB J.1995,May;9(8):686−91;Erdo,S.L.,Trends Pharmacol.Sci.,1991,Nov;12(11):426−9;Aas,P.,Tanso,R.,Fonnum,F.,Eur.J.Pharmacol.1989,May 2;164(1):93−102;Said,S.I.,Dey,R.D.,Dickman,K.,Trends Pharmacol.Sci.2001,Jul;22(7):344−5;Skerry,T.M.,Genever,P.G.,Trends Pharmacol.Sci.2001,Apr;22(4):174−81)。しかしながら、これらの末梢性グルタミン酸受容体は体内の末梢神経系組織、平滑筋、免疫系臓器に発現しているものであり、舌上皮、消化管粘膜上皮に発現している報告は見当たらない。ヒトを含めた哺乳動物が正常に成長(growth)し、正常な生活(健康)を維持するためには、必要な時期に必要な量の栄養素を経口より摂取する必要がある。それを主として担っているのが食べ物の味(味覚)であり、食べた後の内臓感覚に主として由来する食後の満足感である。例えば、塩味(ナトリウム、カリウムなど)はミネラルのマーカーとして体液浸透圧の保持等に、甘味(グルコース)は炭水化物のマーカーとしてエネルギー補給に、うま味(グルタミン酸ナトリウム)はタンパク質源のマーカーとしてエネルギー・体蛋白補給、苦味は有害物質のマーカーとしての意味があると考えられている。そして、必要量を十分摂取したかどうかは、胃および小腸、及び肝臓−門脈系に存在する栄養素センサーを介して迷走神経求心路を活性化し、延髄孤束核へ入力され、一連の脳内プロセスを得ることによって、満足感(satiety)として判断される(Bray,G.A.,Proc.Nutr.Soc.,2000;59:373−84;Bray,G.A.,Med.Clin.North.Am.1989:73:29)。
一般に動物は摂取する際に食物中に含まれる栄養素の中で最も重要な蛋白質の存在をアミノ酸と抗酸関連物質であるAMP、IMP、GMPなどの5’−モノリボヌクレオチドとにより認知している。脊椎動物では肉食性の魚類は、他の動物の組織である蛋白質を含む食物糖原性アミノ酸とアルギニンおよびAMPやIMPにより認知し、摂食行動を示す。両者の共存する食物は味応答が相乗的に増強され、より容易に蛋白質の認知ができるようになる。一方、陸棲の動物は視覚や嗅覚により蛋白質を含む食物(生きた動物や死ガイ)により探索し摂食するが、その際もアミノ酸と抗酸関連物質が有力な味覚情報を源となる。ヒトを含む高等哺乳類では、食物に含まれる蛋白質に最も多く存在するグルタミン酸と核酸関連物質との間で味覚応答が相乗的に増強することが知られ、これを手がかりに物質的受容体の存在を前提にした数多くの研究が生化学的、電気生理学的、行動科学的に行われ、現在、うま味(Umami taste)として基本味の一つとして国際的に認知されている。現在、うま味物質としてはグルタミン酸ナトリウム(mono−sodiumL−glutamate)関連物質やイノシン酸あるいはグアニル酸などの核酸関係物質など、殆ど全てが舌上のグルタミン酸受容に関わる物質であり、世界中で食品として消費されている。
一方、内臓感覚を担う、消化管における栄養素認識(chemical sense)機構に関する生理学的検討は古くから行われており、消化管内には内容物を知覚するセンサーが存在すると想定されている(詳しくは、Mei,N.,J.Auton.Nerv.Syst.,1983;9:199−206;Mei,N.,Lucchini,S.,J.Auton.Nerv.Syst.,1992;41:15−8を参照)。これら消化管センサーとしては、グルコースセンサー(Mei,N.,J.Physiol.(Lond.)1978,282,485−506),温度センサー(El Ouazzani,T.,Mei,N.,Exp.Brain Res.1979;15;34:419−34)、浸透圧センサー(Mei,N.,Garnier,L.,J.Auton.Nerv.Syst.,1986;16:159−70)、pHセンサー、アミノ酸センサー(Mei,N.,Physiol.Rev.,1985;65:211−37)、圧センサー(Barber,W.D.,Burks,T.F.,Gastroenterol Clin.North.Am.1987;16:521−4)が挙げられる。
特に、消化管でのグルタミン酸を認識するセンサーとしては、新島らが、主として胃、小腸を支配している迷走神経胃枝及び腹腔枝の神経活動を電気的に捉える手法を用いて、グルタミン酸の消化管内投与時に神経興奮が起こることを見出し、迷走神経終末にグルタミン酸認識機構が存在すると仮定し、グルタミン酸センサーとしてその存在を示唆した(Niijima,A.,Physiol.Behav.,1991;49:1025−8)。
発明の開示
上述のように、うま味(グルタミン酸)受容体、特にmGluR4に関しては多くの研究がなされているが、その他のうま剤味受容体候補に関する知見はなく、うま味研究の進展及び、新規うま味物質の発見には至っていない。本発明の第一の目的は、新たなうま味受容体候補遺伝子提供することで、新規なうま味物質の効率的なスクリーニング系を提供するものである。
また、グルタミン酸受容体及び消化管センサーについて多くの研究がなされているが、今日まで、グルタミン酸センサーの実体は不明であり、研究の進展は見られていない。グルタミン酸センサーを含んだ舌上皮における味覚認識及び消化管センサーに必要な受容機構(受容体、トランスポーター等)が単離されていないことが、この分野の研究の進展を妨げている。グルタミン酸消化管センサーの実体が解明されれば、下記に挙げる栄養素認識機構の調節を目的とした薬剤等の開発が可能であると考えた。
即ち、栄養素認識機構は、満足感(sataiety)あるいは飽きにも重要な役割を果たし、過食による体調不全、および偏食による摂取栄養素の偏りを是正する。この消化管における栄養素認識が正常に行われなくなると、当然ながら、消化吸収の全体のプロセスが乱れ、過食、偏食、食欲不振、消化不良、下痢、便秘等が引き起こされることが考えられる。より医学的には、心因性過食症、拒食症及び肥満症、胃酸分泌異常、消化管血流異常、消化酵素分泌異常等による消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)、ストレス性潰瘍、薬物性(NSAIDs等)急性潰瘍、虚血性潰瘍(虚血性大腸炎)、インシュリン分泌異常又は消化管ホルモン分泌異常による糖尿病、運動性機能異常による胃もたれ、むかつき、便秘、下痢、過敏性腸症候群などの要因として考えられる。
また、近年、肥満者の急増は社会現象化し、問題となっている。これらの人は基礎代謝が低下した人が多く、また過食傾向にあると言われ、これらの人の食べたいという欲求を如何にコントロールするかは社会的関心が非常に大きい。無理なダイエットを試みる人も多いが、多くの場合、失敗に終わっている。消化管における栄養素認識機構を是正し、食事による満足感を如何に正常に得るかは、これらの人にとっても非常に重要である。
本発明の第二の目的は、上記観点からなされたものであり、舌上皮及び消化管グルタミン酸センサーの実体を明らかにし、それを利用した技術を提供することを課題とする。
本発明者らは、代謝型グルタミン酸受容体(1型)の細胞内ドメインを認識する抗体を用いた免疫組織学的手法により、舌上皮及び消化管内における受容体分布を検討した。その結果、舌上皮及び、胃内粘膜層には代謝型グルタミン酸1型受容体(GluR1)陽性細胞が存在すること見い出した。舌上皮では味雷中の味細胞先端部が、胃では、胃体部の粘液分泌細胞(副細胞)及びペプシノーゲン分泌細胞(主細胞)、並びに幽門部の粘液細胞がmGluR1陽性であった。そして、舌上皮サンプルから新規なグルタミン酸受容体と思われるcDNAをクローニングすることに成功した。このグルタミン酸受容体は、これまで実態が不明であった、新たなうま味受容体、或いは、消化管グルタミン酸センサーである可能性が高く、本受容体cDNA、精製受容体及び本受容体発現細胞は、うま味物質及び、消化管グルタミン酸センサーの機能調節剤のスクリーニングに有用であると考えられる。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1)下記性質を有するグルタミン酸受容体タンパク質:
(A)タイプ1型代謝型グルタミン酸受容体タンパク質と共通の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを有する、
(B)タイプ1型代謝型グルタミン酸受容体タンパク質よりも481又は409アミノ酸残基短い細胞外ドメインを有する。
(2)ラットの舌上皮に発現していることを特徴とする(1)のグルタミン酸受容体タンパク質。
(3) 配列番号6および8に示すアミノ酸配列又は同アミノ酸配列においてアミノ酸番号73〜790および73〜497で表されるアミノ酸配列を有する(1)のグルタミン酸受容体タンパク質。
(4)1又は複数のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加を含み、かつ、グルタミン酸が結合することによってセカンドメッセンジャーを発生し得る(3)のグルタミン酸受容体タンパク質。
(5)(1)〜(4)のいずれかのグルタミン酸受容体タンパク質をコードし、かつ、タイプ1型代謝型グルタミン酸受容体タンパク質を発現しないDNA。
(6)(1)〜(4)のいずれかのグルタミン酸受容体タンパク質をコードするDNAを発現可能な形態で保持する細胞。
(7)(1)〜(4)のいずれかのグルタミン酸受容体タンパク質をコードするDNAを発現可能な形態で保持する細胞を培地で培養し、同グルタミン酸受容体タンパク質を生成させ、前記細胞より前記グルタミン酸受容体タンパク質を採取することを特徴とする、グルタミン酸受容体タンパク質の製造法。
(8)(1)〜(4)のいずれか一項に記載のグルタミン酸受容体タンパク質と同タンパク質に結合する物質とを被検物質の存在下で反応させ、該反応の阻害又は促進を検出することを特徴とする、グルタミン酸のアゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーターの探索方法。
(9)(1)〜(4)のいずれかのグルタミン酸受容体タンパク質と被検物質とを反応させ、該反応を検出することを特徴とする、グルタミン酸のアゴニストの探索方法。
(10)前記グルタミン酸受容体タンパク質を、(6)の細胞又は同細胞から調製される膜画分を用いる(8)の方法。
(11)前記結合の阻害又は促進を、グルタミン酸受容体タンパク質が発生するセカンドメッセンジャーにより検出する(10)の方法。
(12)前記グルタミン酸受容体タンパク質を、(6)の細胞又は同細胞から調製される膜画分を用いる(9)の方法。
(13)前記結合の阻害又は促進を、グルタミン酸受容体タンパク質が発生するセカンドメッセンジャーにより検出する(12)の方法。
(14)(1)〜(4)のいずれかのグルタミン酸受容体タンパク質に特異的に結合する抗体。
(15)(1)〜(4)のいずれかのグルタミン酸受容体タンパク質と同タンパク質に結合する物質とを被検物質の存在下で反応させ、該反応の阻害又は促進を検出することにより、グルタミン酸のアゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーターを探索する工程と、
前記ステップにより得られるグルタミン酸のアゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーターを有効成分として医薬組成物を調製する工程を含む、
グルタミン酸受容体にグルタミン酸が結合することにより発生するセカンドメッセンジャーを調節するための医薬の製造方法。
(16)(1)〜(4)のいずれかのグルタミン酸受容体タンパク質と被検物質とを反応させ、該反応を検出することにより、グルタミン酸のアゴニストを探索する工程と、
前記ステップにより得られるグルタミン酸のアゴニストを有効成分として医薬組成物を調製する工程を含む、
グルタミン酸受容体にグルタミン酸が結合することにより発生するセカンドメッセンジャーを調節するための医薬の製造方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のグルタミン酸受容体タンパク質は、典型的には、配列表の配列番号2のアミノ酸配列においてアミノ酸番号1〜718で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質、配列表の配列番号4のアミノ酸配列においてアミノ酸1〜425で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質、配列表の配列番号6のアミノ酸配列においてアミノ酸1〜790を有するタンパク質、及び配列番号8のアミノ酸配列においてアミノ酸1〜497を有するタンパク質である。本タンパク質をコードするラットcDNAの塩基配列のオープンリーディング領域を配列番号1、3、5、7、9、及び10に示す。
本発明者らはこれらグルタミン酸受容体タンパク質の変異体が舌上皮細胞から見出された味蕾型(Taste type)の代謝型グルタミン酸1型受容体(mGluR1)であることから、mGluRTと命名し、さらに配列の相同性から配列番号1及び3でコードされるタンパク質をmGluRTα、配列番号5及び7でコードされるタンパク質をmGluRTβ、配列番号9及び10でコードされるタンパク質をmGluRTγと命名した。またmGluR1においてもC末端のスプライシング変異により、A型(mGluR1a)及びB型(mGluR1b)の二種が知られているが、本発明のタンパク質においても配列番号1及び3、5及び7、9及び10によりコードされるタンパク質がそれぞれA型及びB型に対応する変異型であるため、配列番号1でコードされるタンパク質をmGluRTαa、配列番号3でコードされるタンパク質をmGluRTαb、配列番号5でコードされるタンパク質をmGluRTβa、配列番号7でコードされるタンパク質をmGluRTβb、配列番号9でコードされるタンパク質をmGluRTγa及び配列番号10でコードされるタンパク質をmGluRTγbとそれぞれ命名した。以下本発明のグルタミン酸受容体タンパク質を総称して、本明細書ではmGluR1変異体と呼ぶことがある。配列番号1、3、5、7、9及び10に示す塩基配列の上流に適当なプロモーターを連結し、適当な細胞で発現させれば、活性のあるグルタミン酸受容体を産生させることができる。
本発明のタンパク質のアミノ酸配列と、脳においてその存在が確認されている、脳型代謝型グルタミン酸1型受容体(以下mGluR1という。)との比較を図1に示す。mGluRTαaのC末端側(配列番号2中、アミノ酸番号1〜718)はmGluR1a、mGluRTαbのC末端側(配列番号4中、アミノ酸番号1〜425)はmGluR1bとそれぞれ一致していたが、mGluR1に比べてN末端側は481アミノ酸残基短かった。一方mGluRTβ及びmGluRTγはそのコード領域を共にし、いずれもA型(mGluRTβa及びmGluRTγa)のC末端側(配列番号6中、アミノ酸番号1〜790)はmGluR1a、B型(mGluRTβb及びmGluRTγb)のC末端側(配列番号8中アミノ酸番号1〜497)はmGluR1bとそれぞれ一致していたが、mGluR1に比べてN末端側は409アミノ酸残基短かった。後述するように、本発明のグルタミン酸受容体タンパク質は、mGluR1と共通の遺伝子に由来するスプライシング変異体(variant)であると考えられた。以下、本発明のグルタミン酸受容体タンパク質を、本明細書ではmGluR1変異体と呼ぶことがある。
前記mGluR1変異体をコードするcDNA配列を、mGluR1 mRNA配列と比較したところ、これらは共通の遺伝子に由来することが示唆された。すなわち、mGluR1変異体は、mGluR1遺伝子中のエクソンが選択的スプライシング(alternative splicing)により脱落し生じた結果であると推定される。詳細を図1に示す。脳型mGluR1はエクソン1−9から成り、サブタイプであるA型(mGluR1a)はエクソン1−7および9からなり、B型(mGluR1b)はエクソン1−8からなる(図1A参照)。一方、本発明のmGluR1変異体のうち、mGluRTαaはエクソン5−7及び9からなり、mGluRTαbはエクソン5−8からなり(図1B参照)、mGluRTβaはエクソン3−7および9からなり、mGluRTβbはエクソン3−8からなり、mGluRTγaはエクソン4−7および9からなり、mGluRTγbはエクソン4−8からなる(図1C参照)。mGluRTβを構成するエクソン3には開始メチオニンコドンがコードされていないため、mGluRTβのコード領域はエクソン4中のメチオニンから始まり、結果としてmGluRTβおよびmGluRTγのコード領域は共通している。ここに、エクソン1〜6は細胞外ドメイン、エクソン7は7回膜貫通ドメイン、及びエクソン8−9は細胞内ドメインにそれぞれ相当する。
図2に、mGluR1及びmGluR1変異体の構造を示す。mGluR1は、細胞内ドメイン(エクソン1〜6)と、7回膜貫通ドメイン(エクソン7)と、細胞外ドメイン(A型:エクソン9、B型:エクソン8)からなっている。mGluR1変異体も、mGluR1と同様の細胞内ドメインと7回膜貫通ドメインを有しており、mGluR1のそれらと同一の配列を有している。
なお、mGluRTαはエクソン5からスタートするので、配列番号2記載のアミノ酸配列(mGluRTαa)は配列番号6記載のアミノ酸配列中(mGluRTβa及びmGluRTγa)の73〜790に相当し、配列番号4記載のアミノ酸配列(mGluRTαb)は配列番号8記載のアミノ酸配列中(mGluRTβb及びmGluRTγb)の73〜497に相当する。
すなわち、本発明のmGluR1変異体は、タイプ1型代謝型グルタミン酸受容体タンパク質と共通の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを有し、タイプ1型代謝型グルタミン酸受容体タンパク質よりも409又は481アミノ酸残基短い細胞外ドメインを有する。すなわち、本発明のmGluR1変異体はリガンドとの作用部位である細胞外ドメインにおいてmGluR1と異なるため、リガンドとの親和性においてmGluR1と異なることが予想される一方、7回膜貫通型Gタンパク共役受容体(GPCR)のイフェクター領域である細胞内ドメインにおいてmGluR1と共通するため、セカンドメッセンジャーを発生し得る、機能性受容体である。
本発明のmGluR1変異体は、ラット由来のものでもよいし、グルタミン酸が結合することによってセカンドメッセンジャーを発生し得るという性質を持つ限り、ヒト、サル、マウス、イヌ、ウシ、ウサギといった哺乳類や鳥類、魚類その他いかなる動物由来のmGluR1変異体でもよい。mGluR1変異体を医薬組成物の成分として用いる場合には、哺乳類由来のものが好ましい。
本発明のmGluR1変異体は、配列番号6に示すアミノ酸配列又は同アミノ酸配列においてアミノ酸番号73〜790で表されるアミノ酸配列(配列番号2に示すアミノ酸配列)を有するタンパク質あるいは、配列番号8に示すアミノ酸配列又は同アミノ酸配列においてアミノ酸番号73〜497で表されるアミノ酸配列(配列番号4に示すアミノ酸配列)を有するタンパク質に加えて、グルタミン酸が結合することによってセカンドメッセンジャーを発生し得るという性質を持つ限り、配列番号2、4、6および8に示すアミノ酸配列において1若しくは複数の位置での1若しくは複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入又は付加を有するものであってもよい。
ここで、「複数」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが、配列番号2、4、6および8に示すアミノ酸配列との相同性が80%以上、好ましくは90%以上となるような数が挙げられる。より具体的には、2〜115個、好ましくは、2〜58個、より好ましくは2〜30個である。
尚、本発明のグルタミン酸受容体は、精製又は単離された形態であってもよいが、活性を必要とする場合は、適当な細胞で発現され、同細胞の膜に局在化した形態、又は、mGluR1変異体が発現した細胞から調製される膜画分に含まれる形態であることが好ましい。したがって、本発明のグルタミン酸受容体には、このようなmGluR1変異体を発現している細胞又は同細胞から調製された膜画分も含まれる。
mGluR1変異体は、例えば、mGluR1変異体をコードするDNAを適当な宿主細胞に導入し、発現させることによって取得することができる。前記DNAとしては、マウス等の哺乳類細胞の染色体から単離したmGluR1変異体をコードする遺伝子又はcDNAが挙げられる。尚、染色体遺伝子を用いる場合は、mGluR1変異体を生成させるように、転写後のスプライシング等のプロセスを調節する必要があると考えられるため、cDNAを用いることが好ましい。
mGluR1変異体cDNAは、ラット等の哺乳動物の舌上皮から調製したRNAを鋳型とし、例えば発明の実施の形態にに示すオリゴヌクレオチドをプライマーとして用い、mGluR1変異体cDNAを増幅することによって、クローニングすることができる。また、本発明により、mGluR1変異体の構造、特にN末端領域の特徴的な構造が明らかになったので、それらの構造に基づいて、mGluR1変異体cDNAのクローニング及び同定は容易に行うことができる。こうして得られるmGluR1変異体cDNAのオープンリーディング領域塩基配列が、配列番号1、3、5、7、9および10に示した配列である。
すなわち、本発明の別の形態は、本発明のmGluR1変異体をコードするポリヌクレオチドである。本発明のmGluR1変異体をコードするポリヌクレオチドとしては、上記した本発明のmGluR1変異体をコードする塩基配列(DNAまたはRNA、好ましくはDNA)を含有するものであれば、脳型mGluR1をコードしない限りいかなるものであってもよい。該ポリヌクレオチドとしては、本発明のmGluR1変異体をコードするDNA、mRNAなどのRNAであり、二本鎖であっても一本鎖であってもよい。二本差の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドであっても良い。一本鎖の場合は、センス鎖(コード鎖)であっても、アンチセンス鎖(非コード鎖)であってもよい。当該ポリヌクレオチドは典型的には配列番号1、3、5、7、9及び10で表される塩基配列を含有するポリヌクレオチドである。
mGluR1変異体をコードするDNAとしては、配列番号1、3、5、7、9及び10に示す塩基配列以外にも、これらの塩基配列を有するDNA又は同塩基配列から調製され得るプローブと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、mGluR1変異体をコードするDNAが挙げられる。「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば50%以上、好ましくは75%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC,0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。
mGluR1変異体をコードするDNAを導入する細胞としては、mGluR1変異体の活性を必要とする場合は、動物細胞、昆虫細胞又は酵母が好ましく、動物細胞が特に好ましい。例えば、mGluR1変異体をコードするDNAを含む組換えベクターを導入し、一時的な機能発現が可能と考えられる細胞として、アフリカツメガエル卵母細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、baby hamster kidney(BHK)細胞、human embryonic kidney(HEK)細胞、Sf−9 insect細胞、PC12細胞、COCA−2細胞等が挙げられる。また、mGluR1変異体をコードするDNAを染色体DNAに組み込み、mGluR1変異体を永久的に発現させる場合には、上記の細胞のうち、アフリカツメガエル卵母細胞以外の細胞が挙げられる。
これらの細胞にmGluR1変異体をコードするDNAを導入する方法としては公知の方法を用いることができる。細胞へのDNAの導入等の操作に必要な技術は、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.,and Maniatis,T.,″Molecular Cloning A Laboratory Manual,Second Edition″,Cold Spring Harbor Laboratory Press,(1989)等に記載されている。
一方、mGluR1変異体を、mGluR1変異体に特異的に結合する抗体を作製するための免疫源として用いる場合のように、生理活性を必要としない場合には、mGluR1変異体をコードするDNAを導入する細胞は、mGluR1変異体を活性のある形態で発現しない細胞であってもよい。そのような細胞としては、エシェリヒア・コリをはじめとする異種蛋白質生産に通常用いられている微生物細胞を用いることができる。
mGluR1変異体を宿主細胞中で産生させるためには、宿主細胞に適したプロモーターおよびエンハンサー等の発現調節配列に、mGluR1変異体をコードするDNAを連結する。また、mGluR1変異体をコードするDNAは、必要に応じて、プロセシング情報部位、例えばリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写ターミネーター配列を含んでいてもよい。好ましい発現制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サイトメガロウイルス等に由来するプロモーターである。
上記のようにして得られるmGluR1変異体をコードするDNAを発現可能な形態で保持する細胞を培地で培養し、mGluR1変異体を生成させることにより、mGluR1変異体及びmGluRa1変異体を保持する細胞を製造することができる。
活性なmGluR1変異体、すなわちグルタミン酸が結合することによってセカンドメッセンジャーを発生し得るmGluR1変異体は、グルタミン酸のアゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーターの探索等に利用することができる。例えば、mGluR1変異体と、mGluR1変異体に結合する物質とを被検物質の存在下で反応させ、該反応の阻害又は促進を検出することにより、グルタミン酸のアゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーター(以下、これらを「リガンド」と総称することがある)を探索することができる。アロステリックモジュレーターは、mGluR1変異体とグルタミン酸との結合部位以外の部位に結合し、アゴニスト又はアンタゴニストと同様の機能を示す。
また、グルタミン酸のアゴニストは、mGluR1変異体と被検物質とを反応させ、該反応を検出することによっても、探索することができる。
活性なmGluR1変異体としては、mGluR1変異体を発現している細胞、又は同細胞から調製される膜画分が挙げられる。このような膜画分は、例えば、上記のように細胞に活性なmGluR1変異体を発現させ、そして、細胞を超音波などで破砕後、密度勾配遠心法で膜画分を集めることにより調製することができる。
また、前記mGluR1変異体に結合する物質として、グルタミン酸もしくはグルタミン酸アゴニスト、又はmGluR1に結合する公知のリガンド(例えばグルタミン酸、キスカル酸、CHPG,MPEP,LY367385等)等が挙げられる。mGluR1変異体の活性を調節する物質としては、細胞内カルシウム濃度に影響を与える薬剤(カルシウムチャンネルおよびナトリウムチャンネルオープナー、Na/Kポンプ阻害剤、Na/Ca交換系作用剤、Ca−ATPase阻害剤、プロテインキナーゼC作用剤)、細胞内cAMP濃度に影響を与える薬剤(フォスフォジエステラーゼ作用剤、アデニレートシクラーゼ作用剤)、細胞内cGMP濃度に影響を与える薬剤(cGMP依存性フォスフォジエステラーゼ作用剤、グアニレートシクラーゼ作用剤)等が挙げられる。
mGluR1変異体と、これに結合する物質との反応の阻害又は促進は、mGluR1変異体にグルタミン酸等のリガンドが結合することによって発生するセカンドメッセンジャーを検出することによって、検出することができる。また、セカンドメッセンジャーを検出する代わりに、既知のリガンドを標識したものを用い、標識リガンドとmGluR1変異体との結合を測定することによっても、前記反応の阻害又は促進を検出することができる。
また、mGluR1変異体とグルタミン酸のアゴニストとの反応は、mGluR1変異体とグルタミン酸のアゴニストとの結合により発生するセカンドメッセンジャーを検出することによって、検出することができる。
mGluR1変異体は、細胞内ドメインは脳型及び味蕾型mGluR1と同一であり、脳型及び味蕾型mGluR1の細胞内シグナル伝達機序は同じであるから、mGluR1変異体も同様であると予想される。したがって、前記セカンドメッセンジャーは、Gq(GTP binding protein)を活性化しフォスフォリパーゼCの活性化に伴うイノシトール三燐酸(IP3)産生に伴う、細胞内カルシウム濃度の上昇である。また、シグナル伝達におけるカルシウム変動の下流には、細胞内カルシウム依存性のプロテインキナーゼを介した遺伝子発現調節によるものと、細胞質・膜蛋白の燐酸化による急性期の機能調節がある。したがって、細胞膜フラクションの蛋白リン酸化、カルシウム依存性フォスフォジエステラーゼの活性化に伴う、細胞内cAMP,cGMP変動、チャンネル機能変化の測定等によって、カルシウム、IP3以外のセカンドメッセンジャーを検出することができる。
以下に、mGluR1変異体を用いたリガンド探索の具体的な方法を例示する。
(1)アフリカツメガエル卵母細胞に、mGluR1変異体cRNAを発現させ、2電極ボルテージクランプ法により、細胞内カルシウム依存性クロライド電流の増強或いは減弱を指標に、mGluR1変異体に作用するリガンド検索を行う(Pin JP et al.,Proc Natl Acad Sci USA 1992 Nov 1;89(21):10331−5;Kasahara J,Sugiyama H,FEBS Lett 1994 Nov 21;355(1):41−4;Takahashi K et al.,J Biol Chem 1993 Sep 15;268(26):19341−5)。
(2)mGluR1変異体発現細胞又は同細胞から調製した膜画分に、リガンド候補化合物、及びmGluR1に作用する既知のリガンド(例えばグルタミン酸、キスカル酸、CHPG,MPEP,LY367385等)を一定期間作用させ、mGluR1変異体発現細胞の細胞膜又は膜画分に結合した既知リガンドの量を測定することにより、リガンド検索を行う(Naples MA,Neuropharmacology 2001;40(2):170−7;Thomsen C,Neuropharmacology 1997 Jan;36(1):21−30;H.I.Yamamura,S.J.Enna and M.J.Kuhar eds,1958,Neurotransmitter Receptor Binding,2nd ed.,Raven Press,New York)。既知リガンドの量は、それらの物質の一部を放射活性ラベルし、細胞膜又は膜画分に結合する放射活性の量により、測定することができる。
(3)mGluR1変異体発現細胞に、あらかじめカルシウム感受性色素(例えばFura−2、Indo−1、Fluo−3等)を導入し、リガンド候補化合物とmGluR1変異体発現細胞を一定期間接触させたときの蛍光強度比(細胞内カルシウム濃度)変化を指標として、リガンド検索を行う。あるいは、mGluR1変異体アゴニストと、リガンド候補化合物と、カルシウム感受性色素を導入したmGluR1変異体発現細胞とを一定期間接触させたときの蛍光強度比(細胞内カルシウム濃度)変化により、リガンド検索を行う。
(4)mGluR1変異体発現細胞に、あらかじめcAMP感受性蛍光蛋白質(例えばFlCRhR等)を導入し、リガンド候補化合物とmGluR1変異体発現細胞を一定期間接触させたときの蛍光強度比(細胞内cAMP濃度)変化を指標として、リガンド検索を行う(Adams SR,Nature 1991 Feb 21;349(6311):694−7)。
(5)リガンド候補化合物とmGluR1変異体発現細胞を一定期間接触させたとき、あるいは、mGluR1変異体作動薬とリガンド候補化合物とmGluR1変異体発現細胞を一定期間接触させたときのプロトン産生量をサイトセンサーにより測定し、プロトン産生量を指標としてリガンド検索を行う(McConnell HM,Science 1992 Sep25;257(5078):1906−12)。
上記のようにして検索されるグルタミン酸のアゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーターを有効成分として含む食品添加物は新規うま味調節物質として使用ができる。また、上記のようにして検索されるグルタミン酸のアゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーターを有効成分として含む医薬組成物は、グルタミン酸受容体にグルタミン酸が結合することにより発生するセカンドメッセンジャーを調節するための医薬として使用することができる。セカンドメッセンジャーを調節することによって、グルタミン酸受容体異常に起因する疾患、病態を改善、予防することができる。
グルタミン酸受容体異常に起因する迷走神経制御異常としては、求心路異常(栄養素認識障害)と遠心路異常がある。求心路異常に起因する疾患又は病態としては、過食症、拒食症及び肥満症等が挙げられる。また、遠心路異常に起因するものとしては、胃酸分泌異常、消化管血流異常、消化酵素分泌異常等による消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)、ストレス性潰瘍、薬物性(NSAIDs等)急性潰瘍、虚血性潰瘍(虚血性大腸炎)、インシュリン分泌異常又は消化管ホルモン分泌異常による糖尿病、過食症、拒食症、肥満症、及び、運動性機能異常による胃もたれ、むかつき、便秘、下痢、過敏性腸症候群などが挙げられる。
mGluR1変異体を免疫源として用いることにより、mGluR1変異体に特異的に結合する抗体を作製することができる。特に、mGluR1変異体はN末端が新規なアミノ酸配列を有しているので、この部分をエピトープとする抗体、特にモノクローナル抗体は、mGluR1変異体に結合し、他のグルタミン酸受容体には結合しないと予想される。さらに、3次元構造予測から新規のN末細胞内ドメイン(細胞表面露出部分)のアミノ酸残基を推定することにより、mGluR1変異体特異的抗体を作ることが可能である。mGluR1変異体に特異的な抗体は、mGluR1変異体特異的な免疫染色等に用いることができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1. ラット有郭乳頭からの新規な代謝型グルタミン酸受容体cDNAのクローニング
16週齢のウィスター(Wistar)ラット10匹分の有郭乳頭由来の全RNAを抽出し逆転写反応によりcDNAを得た(使用キット SuperScript,Gibco−BRL)。mGluR1の全長をコードするcDNAを鋳型とし、Z−TaqによってPCRを行った。この酵素は3’側の複製効率がよくその後のTOPO TAクローニングリアクションに適している。PCR産物は2%アガロースゲルで電気泳動し、それらの配列はABI Sequencer Model 3100(AB1社)で解析した。
有郭乳頭より見出された6種類のmGluR1変異体cDNA(mGluRTαa、mGluRTαb、mGluRTβa、mGluRTβb、mGluRTγa、mGluRTγb)には5’側にユニークな配列が存在しその部分にはstopコドンがある。その上流は既知の物と同一であり、それらはA型或いはB型のmGluR1の配列に酷似していた。このユニークな部分は翻訳されていないので、アミノ酸の配列は6種類のmGluR1変異体cDNAのいずれもmGluR1のアミノ酸配列の一部と同一であるが、鎖長は短い。
6種類のmGluR1変異体cDNAに特異的な forward primersをHokkaidoSystem Scienceで作製し(使用したプライマーは表1に示す)、Reverse primersは脳のタイプのmRNA sequenceから以下のものを作った(Masu et al.,Nature 349:760,1991)(mGluR1−4253R 5’−TAC CAT ATG GAA TTG TGC TTT GTC A−3’(配列番号17),mGluR1−4198R 5’−ATA ATT CAA GAG TCA CAA TCC TGG C−3’(配列番号18):Aタイプ用とmGluR1−3266R 5’−GGG TAT TGT CCT CTT CTT CCA CA−3’(配列番号19):Bタイプ用)。
150ngのcDNAを鋳型とし10μM forwardとreverse primers,10x LA PCR buffer,2.5mM MgCl2,2.5mM dNTPをミックスし0.25unitsのZ−Taq酵素を入れトータル10μlとした。 PCRの条件はGeneAmp PCR system9700:94℃→20seconds,56℃→1minute,68℃→3minutesを30サイクル行い 最後に10minute extension→68℃した。更に2nd.PCRを行い、得られたテンプレートをTOPO TA cloning kit(invitrogen)によりpCRII−TOPOベクターでクローニングを行った.Positive clonesはcoloni PCRを行いplasmidsはHispeed plasmid Maxi−kit(QUIAGEN)で精製し機能解析を行った。
その結果、配列番号1,3,5,7,9及び10記載の新規なcDNAが見出された。得られたクローンは、新規な細胞外ドメインを有するmGluR1のスプライシング変異体(variant)であることが示された。
実施例2. 免疫染色手法によるグルタミン酸受容体局在の同定
<1>ラット舌の切片標本の作製
ラット(Wistar系、雄、10〜15週齢)をエーテル麻酔下で心臓右心耳を切開して放血し、その後すぐ舌部位を採材した。
切り出した舌標本は4%パラホルムアルデヒド(4℃)で一昼夜振蕩し、浸漬固定した。その後20%Sucrose−PBSに3〜4日浸漬して凍結保護(Cryoprotection)した後、Tissue−Tek□(OCT compound)に包埋し、クリオスタットで5−7μmに薄切した。切片は室温にて乾燥させた後、染色に用いるまで4℃で保存した。
<2>抗代謝型グルタミン酸受容体1型抗体による免疫染色
切片の免疫染色は、Drengk,A.C.et al.,J.Auto.Nerv.Sys.78:109−112,2000、及びMiampamba,M.et al.,J.Auto.Nerv.Sys.77:140−151,1999に記載の方法に準じて行った。切片はまずPBSで洗浄した後、内因性ペルオキシダーゼによる反応を阻止するために、3%過酸化水素・メタノールで15分処理した。次に、切片をPBSで洗浄した後、10%正常馬血清を含む1%牛血清アルブミン添加PBS(1%BSA−PBS)を用いて1時間ブロッキングを行った。再びPBSで洗った後、1%正常馬血清を含む1%BSA−PBSで希釈した一次抗体(anti−mGluR1a,rabbit,polyclonal,Chemicon,cat#AB1551)を4℃で2晩反応させた。その後、切片をPBSで洗浄し、1%BSA−PBSで希釈した2次抗体(anti−mGluR1a,rabbit,polyclonal,Chemicon,cat#AB1551)を室温で1時間反応を行った。最後にVectorstain elite kit(Vector)を用いてABC(アビジン−ビオチン複合体)反応を行い、0.025%ジアミノベンチジン−0.25%塩化ニッケル−0.01%H202で発色させた。反応終了後、切片をPBSで洗い、エタノール・キシレンで脱水、封入の後、顕微鏡にて観察した。一次抗体を用いないものをネガティブコントロールとした。
<3>結果
免疫染色の結果を図3に示す。舌標本では抗mGluR1抗体で味細胞が染色された(図3A)。味細胞にmGluR1受容体は発現されていないと一般的に考えられている。したがって、mGluR1変異体は、味細胞に発現していると考えられ、機能的にはうま味受容との関連が示唆された。胃標本(図3B)では抗mGluR1によりそれぞれ、幽門部粘液産生細胞、胃体部主細胞、副細胞が染色された。これらの細胞には、mGluR1受容体は発現していないと一般的に考えられている。したがって、mGluR1変異体は、粘液産生細胞、主細胞に発現していると考えられ、機能的には粘液分泌、消化酵素分泌との関連が示唆された。
実施例3. mGluR1変異体の機能の推定
ラット(Wistar系、雄、8〜10週齢:日本チャールズリバー)を18時間絶食後、ウレタン麻酔(1g/kg,i.p.)下に開腹し、実態顕微鏡下で迷走神経胃枝を5mm前後剥離した。迷走神経束を切断後、小型オペ台(8×6mm)上に迷走神経束をのせて、周囲の脂肪及び結合組織を注意深く剥離し、その臓器側末端繊維を記録用のプラチナ製双極電極に載せ、流動パラフィン・ワセリン(1:1)混合液で周囲組織と絶縁した。また、MSG(L−グルタミン酸ナトリウム、味の素株式会社製)の投与ルートとして、経口で胃内にシリコンチューブを留置した。
神経活動電位は、微小電位増幅器(WPI社製DAM−80)により10000倍に増幅し、ベッセルフィルター(4−pole,High Cut 10Hz,Low Cut 1KHz)によりノイズを低減させた後、A/D変換(Powerlab 4sp,ADI Instruments社製)後、コンピュータに取り込んだ(sampling rate 3KHz,iBook)。同時に、増幅信号をオシロスコープでモニタしながらウィンドー・ディスクリミネータ(ダイヤメディカル社製DSE−435)によりノイズ成分と神経信号成分を分離し、スパイクカウンター(Spike Counter、ダイヤメディカル社製DSE−335P)で5秒積算後、チャートレコーダ(日本光電製WT−465G)で記録した。スパイク波形の解析は、SHEソフトウエア(ADI Instruments社製)を用いた。
結果を図4に示す。胃内にMSG 150mMを投与した時の迷走神経胃枝の求心活動は亢進した。迷走神経求心路は内臓感覚、特に、胃および腸からの栄養情報を延髄孤束核に送り込み、満足感、不快感などの食後感覚、及び迷走神経遠心路調節による消化調節を行うシグナル伝導路と考えられている。したがって、MSGの消化管内投与により迷走神経求心路活動が亢進したことは、MSGがそのシグナル発生要因であり、消化管内腔に発現しているmGluR1変異体が、そのシグナル発生を仲介している可能性を示している。
実施例4. RT−PCR法によるmGluR1変異体の組織における発現
Whole Coding Sequence
有郭乳頭と脳のTotal RNAをトランスクリプターゼにより逆転写したcDNAを使用した。1stPCRのPrimerはmGluR1−790−1F(Forward)(配列番号13)とmGluR1−4253R(Reverse)(配列番号17)及びZ−Taqにより30cycleのPCRを行い、得られたPCR産物を10倍希釈した物を2nd PCRのテンプレートとした。2nd PCRのprimer はmGluRTαについてはmGluR1−718−3F(Forward: 5’−AAT GTA ACA GTC ACT GGT GCT GGG−3’)(配列番号12)およびmGluR1−3266R(Reverse: 5’−GGG TAT TGT CCT CTT CTT CCA CA−3’)(配列番号19)を用い、mGluRTβについてはmGluR1−790−2F(Forward)(配列番号14)とmGluR1−4198R(Reverse)(5’−ATA ATT CAA GAG TCA CAA TCC TGG C−3’)(配列番号18)を用いた。及びZ−Taqにより同じく30cycleで行った。得られたPCR産物はABI sequencer Model 3100で確認済みである。尚、使用したPCRの機種はGeneAmp PCR System 9700である。この結果、mGluRTαについては1760bp(A型)及び1900bp(B型)付近にバンドが確認され、mGluRTβbについては2000bp付近にバンドが確認され、有郭乳頭においてその発現が確認された(図5A及び5B)。
実施例5.
機能解析
卵母細胞の単離(Oocyte Isolation)
アフリカツメガエル卵母細胞発現系をラット有郭乳頭由来mGluR1 mRNAの機能解析に用いた。
メスのアフリカツメガエル(ワタナベ増殖より購入)は、卵母細胞を単離するまで魚水槽にて飼育した。アフリカツメガエルは脱イオン化水中、濃度1g/Lにて溶解し、NaHCO3(500mg/L)にて緩衝したトリカインメタンスルフォン酸塩(MS222、シグマ)で麻酔した。手で解剖し、ステージV及びVIの卵母細胞を卵巣から回収し、0.2%コラーゲナーゼS−1(新田ゼラチン)溶液中で解離するまでインキュベートした(30分〜1時間)。コラーゲナーゼ処理後、卵母細胞を洗浄し、濾胞を除去し、顕微鏡下で選別し、18℃にて1晩インキュベートした。
代謝型グルタミン酸cRNAの調整(Metabotropic glutamate cRNA preparation)
変異型mGluR1 cDNAはラット脳及び味覚乳頭全RNAから以下のプライマー(mGluRTβ:1st PCR:mGluR1−790−1F 5’−GGG ACT CTC TCC TGT CTT GTG AG−3’(配列番号13)mGluR1−4253R 5’−TAC CAT ATG GAA TTG TGC TTT GTC A−3’(配列番号17)、2nd PCR:mGluR1 790−2F forward 5’−AGC ATA ACA GGG AAT TGC AGT GG−3’(配列番号14);mGluR1 4198 reverse 5’−ATA ATT CAA GAG TCA CAA TCC TGG C−3’(配列番号18)、mGluRTγ :1st PCR:mGluR1−1599−200F 5’−CAG ACA GAA TAT AAT AGT CGG TC−3’(配列番号15)mGluR1−4253R 5’−TAC CAT ATG GAA TTG TGC TTT GTC A−3’(配列番号17)2nd PCR:mGluR1−1599−221F 5’−ACA AGT ACA AAA CAA GCT CTG C−3’(配列番号16)mGluR1 4198 reverse 5’−ATA ATT CAA GAG TCA CAA TCC TGG C−3’(配列番号18))及び校正酵素Z−Taq DNAポリメラーゼを用い、RT−PCR法により構築した。このポリメラーゼはPCR断片中に平滑末端を残すため、PCR増幅mGluRTβaとmGluRTγa鋳型DNAをTOPO−TAクローニング反応によりpCRII−TOPOベクター(Invitrogen)に挿入した。pCRII−TOPO/mGluRTγベクターはEcoRV、pCRII−TOPO/mGluRTβベクターはXbaIにより直線化し、フェノール−クロロホルム混合液により抽出し、酢酸ナトリウムと共にエタノールで沈殿した。シークエンス解析後、pCRII−TOPOプロモーターに結合する、Sp6プロモーター用のAmbion社製転写キット(mMESSAGE mMACHINE kit)を用い、cRNAを調製した。簡略には、約1μgの直鎖状鋳型DNAを2μL酵素混合液(10μL 2XNTP/Cap及び10xreaction bufferにより最終濃度20μL volumeとする。)により転写する。反応液はcRNA合成のため、37℃にて3時間インキュベートし、残った鋳型DNAは1μL DNase 1を15分間添加し、分解した。転写物はフェノール・クロロホルム抽出及びイソプロパノール沈殿により精製した。cRNAはジエチルピロカルボン酸処理水中で再構成し、卵母細胞への注入前にUV照射下で定量した。
cRNA 注入 microinjection
回収後24時間で、透明な動物極及び植物極を有する健康なアフリカツメガエル卵母細胞に、直径12μmの標準径ガラスキャピラリーチューブ25nLあたり100ngのmRNAを注入した(マイクロインジェクター、WPI)。2mMピルビン酸及び0.5mMテオフィリンを添加したMBS溶液[88mM NaCl,1mM KCl,2.4mM NaHCO3,10mM HEPES,0.82mM MgSO4,0.33mM Ca(NO3)2,0.91mM CaCl2,pH7.5]中で、72時間インキュベートした後、卵母細胞は電気生理学的アッセイに用いた(Sanna et al,1994)。
膜電流測定法
卵母細胞の膜電流測定はGeneclamp amplifier(Axon Instruments)を用い2電極膜電位固定法により測定した。測定に用いるガラス微小電極はプーラー(Shutter社)で作成し、3M KCL充填時の電極抵抗が1−3MΩのものを用いた。処置した卵母細胞を測定用チャンバーに移し、実体顕微鏡下にガラス電極を挿入後、−70mVに電位固定下にグルタミン酸刺激時のカルシウム依存性クロライド電流を測定した。実験はラットmGluR1変異体を発現卵母細胞および非発現卵母細胞の両者で行った。
mGluRTβaを発現させた卵母細胞の膜電流測定記録結果を図6に示した。測定バス内をメディウムから50mMグルタミン酸ナトリウム(MSG)を含んだメディウムに置換すると、持続的な内向き電流が惹起され、この内向き電流は再度メディウム置換により消失することが確認できた。これは、本受容体にグルタミン酸が作用し、細胞内情報伝達系を介したカルシウム依存的クロライドチャンネルが活性化された結果、内向き電流として測定されたものと考えられる。また、同様の内向き電流はmGluRTγa発現卵母細胞においても観察された。なお、ここには示していないが、cRNAをインジェクションしていない卵母細胞ではこのような反応は認められなかった。これより、本発明のクローニング遺伝子産物であるmGluR1変異体にはグルタミン酸受容を行い、細胞内カルシウム動因を引き起こす作用があることが証明された。同様の手順に従い、mGluRTαについてもリガンド作用を確認することができ、また、アゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーターを探索することができる。
産業上の利用の可能性
本発明により、新規な代謝型グルタミン酸受容体が提供される。本グルタミン酸受容体は、グルタミン酸のアゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーターの探索に用いることができる。また、新規うま味物質としての食品添加物として、また、消化管における代謝異常による疾患、症状を改善する医薬として用いることができる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1はmGluR1及びmGluR1変異体(mGluRTα、mGluRTβおよびmGluRTγ)のスプライシングの概要を示す図である。
図2はmGluR1及びmGluR1変異体(mGluRTα、mGluRTβおよびmGluRTγ)の構造の概要を示す図である。
図3Aはラット味蕾(有郭乳頭)の抗mGluR1抗体による免疫染色の結果を示す図である。
図3Bはラット胃の抗mGluR1抗体による免疫染色の結果を示す図である。
図4は迷走神経胃枝求心性神経活動に対するL−グルタミン酸の作用を示す図である。横軸は時間。縦軸は神経活動を表す。
図5はRT−PCR法によるmGluR1変異体をコードするヌクレオチドの組織における発現を確認した図である(図5A:mGluRTα、図5B:mGluRTβ)。味蕾においてmGluR1変異体が発現していることが確認された。
図6はアフリカツメガエル卵母細胞にmGluR1変異体を発現させ、グルタミン酸ナトリウムを作用させた際の膜電流変化を示す図である。
Claims (14)
- 下記の(A)及び(B)からなるグルタミン酸受容体タンパク質:
(A) タイプ1型代謝型グルタミン酸受容体タンパク質と共通の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメイン、
(B) タイプ1型代謝型グルタミン酸受容体タンパク質よりも481又は409アミノ酸残基短い細胞外ドメイン。 - ラットの舌上皮において発現していることを特徴とする請求項1記載のグルタミン酸受容体タンパク質。
- 配列番号6、8、2又は4に示すアミノ酸配列を有する請求項1記載のグルタミン酸受容体タンパク質。
- 1又は2〜30個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加を含み、かつ、グルタミン酸が結合することによってセカンドメッセンジャーを発生しうる請求項3記載のグルタミン酸受容体タンパク質。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のグルタミン酸受容体タンパク質をコードし、かつ、タイプ1型代謝型グルタミン酸受容体タンパク質を発現しないDNA。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のグルタミン酸受容体タンパク質をコードするDNAを発現可能な形態で保持する宿主細胞。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のグルタミン酸受容体タンパク質をコードするDNAを発現可能な形態で保持する細胞を培地で培養し、同グルタミン酸受容体タンパク質を生成させることを特徴とする、グルタミン酸受容体タンパク質又はそれを保持する細胞の製造法。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のグルタミン酸受容体タンパク質と同タンパク質に結合する物質とを被検物質の存在下で反応させ、該反応の阻害又は促進を検出することを特徴とする、グルタミン酸のアゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーターの探索方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のグルタミン受容体タンパク質と被検物質とを反応させ、該反応を検出することを特徴とする、グルタミン酸のアゴニストの探索方法。
- 前記グルタミン酸受容体のタンパク質を、請求項6記載の細胞又は同細胞から調整させる膜画分を用いる請求項8記載の方法。
- 前記結合の阻害又は促進を、グルタミン酸受容体タンパク質が発生するセカンドメッセンジャーにより検出する請求項10記載の方法。
- 前記グルタミン酸受容体タンパク質を、請求項6記載の細胞又は同細胞から調製される膜画分を用いる請求項9記載の方法。
- 前記結合の阻害又は促進を、グルタミン酸受容体タンパク質が発生するセカンドメッセンジャーにより検出する請求項12記載の方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のグルタミン酸受容体タンパク質に特異的に結合する抗体。
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