しかしながら、上記特許文献1に記載のインクジェットヘッドにおいては、ノズルプレートの凸設部が流路ユニットを構成する他のプレートよりも大きく外側に突出しているため、ヘッドの製造工程中などに凸設部に外力が加わりやすく、凸設部に外力が加わるとノズルプレート及びノズルプレートに隣接する他のプレート間が剥離し、ヘッドが破損しやすくなる。
これらヘッドの破損及びジャムを防止するためには、ノズルプレートに凸設部を形成せずに流路ユニットの外周側壁を傾斜させることが考えられる。この場合、流路ユニットを構成する複数のプレートをノズルプレートから離れるに連れて徐々にその平面形状を大きくし、且つ流路ユニットの外周側壁がその全周に亘って傾斜状になるように複数のプレートを積層することで、外周側壁が傾斜した流路ユニットを構成することができる。しかし、外周側壁は巨視的には傾斜になっていても、微視的には階段状になっているので、ノズルプレート及びノズルプレートと隣接する他のプレートとがなす角部に用紙の先端が引っ掛かってジャムが生じてしまう。
そこで、本発明の目的は、ジャムが生じるのを抑制することが可能なヘッドユニット及びこれを備えた液体吐出装置を提供することである。
本発明のヘッドユニットAは、液体を吐出する吐出面を有し、一方向を長手の方向とする液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドの長手方向に沿った側面を覆っていると共に、前記液体吐出ヘッドに固定されたカバーとを備えている。そして、前記カバーは、前記吐出面と直交する方向に関して、前記吐出面と同じ高さに一端を、前記吐出面から離隔した部分には前記液体吐出ヘッドと固定される固定部をそれぞれ有し、一端部において、前記側面と対向する内面側に前記側面と当接する当接領域が、前記側面と反対の外面側には前記吐出面に対して傾斜した傾斜領域がそれぞれ形成されており、前記液体吐出ヘッドは、前記当接領域が前記側面に近づく方向に付勢されるように、前記カバーの前記内面を、前記固定部よりも前記吐出面から離隔した位置において、前記側面から離れる方向に押圧する。
これによると、液体吐出ヘッドには傾斜領域を有するカバーが固定されているので、記録媒体が液体吐出ヘッドの側面に引っ掛かってジャムが生じるのを抑制することができる。また、カバーの内面が押圧されることで当接領域が液体吐出ヘッドの側面と当接する。そのため、カバーの当接領域と液体吐出ヘッドの側面との間に隙間がなくなり、当該隙間を埋めるためのシール部材を別途設ける必要がなくなるとともに、隙間に入り込んだ液体が不意に落下してきて記録媒体を汚すのを抑制することが可能となる。
本発明において、前記傾斜領域が、前記長手方向に関して、前記吐出面以上の長さを有していることが好ましい。これにより、ジャムをより抑制することが可能となる。
また、本発明において、前記傾斜領域が、前記直交する方向に関して、前記吐出面から前記固定部までの距離以上の高さを有していることが好ましい。これにより、ジャムをより抑制することが可能となる。
また、本発明において、前記液体吐出ヘッドが、前記側面に取り付けられたヒートシンクを有しており、前記カバーには、前記ヒートシンクと対向する位置に開口が形成されていることが好ましい。これにより、液体吐出ヘッドの側面にヒートシンクが取り付けられていても、カバーに開口が形成されているので、ヒートシンクによる放熱性能が低下しない。
また、このとき、前記液体吐出ヘッドは、前記吐出面から液体を吐出するときに生じる熱が前記ヒートシンクによって放出される複数のドライバICが前記側面に沿って配置され、前記カバーの開口は、前記ドライバICの配置位置に対応して形成されていてもよい。これにより、ヒートシンクがドライバICの熱を効果的に放熱することができる。
また、このとき、前記カバーの開口縁には、前記ヒートシンクに押圧されることによって前記側面から離れる方向に撓み変形可能な片持ち梁が形成されていてもよい。これにより、カバーを液体吐出ヘッドに固定するときに片持ち梁が撓むので、カバーの液体吐出ヘッドに対する確実な当接が可能になる。
また、本発明において、前記液体吐出ヘッドの前記固定部と対向する位置には、前記側面から突出したフックが形成されており、前記固定部は、前記カバーの厚み方向に貫通した前記フックが嵌め込まれる貫通部を有していることが好ましい。これにより、カバーの液体吐出ヘッドに対する固定が容易になる。
また、このとき、前記フック及び前記貫通部が、前記長手方向に複数形成されていてもよい。これにより、カバーを液体吐出ヘッドに確実に固定することが可能となる。
また、本発明において、前記カバーが金属からなることが好ましい。これにより、カバーが金属からなるのでヒートシンクから熱を効果的に奪うことができる。そのため、ヒートシンクによる放熱性能が向上する。
また、本発明において、前記カバーが合成樹脂からなることが好ましい。これにより、カバーのコストが安価になる。
また、本発明のヘッドユニットBは、別の観点では、液体を吐出する吐出面と前記吐出面から液体を吐出する信号を生成する複数のドライバICとを有し一方向を長手の方向とする液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドの長手方向に沿った側面を覆うとともに、当該側面との間に前記複数のドライバICを挟むヒートシンクと、前記ヒートシンクの長手方向に沿った側面を覆うとともに、前記液体吐出ヘッドに固定されたカバーとを備えている。そして、前記カバーは、前記液体吐出ヘッドの側面との間に前記ヒートシンクを挟み、前記ドライバICと対向する位置に複数の開口がそれぞれ形成されているとともに、前記吐出面と直交する方向において、端縁が前記吐出面と同じ高さの一端部と、前記吐出面から離れて前記液体吐出ヘッドと固定される固定部と、前記固定部よりも前記吐出面から離れ前記ヒートシンクの前記側面から押圧される押圧部とをそれぞれ有し、前記カバーの一端部には、前記液体吐出ヘッドの側面と対向する内面には当該側面に当接する当接領域を有し、前記内面と反対側の外面には前記吐出面に対して傾斜した傾斜面を含む傾斜領域が形成されている。
これによると、液体吐出ヘッドには傾斜領域を有するカバーが固定されているので、記録媒体が液体吐出ヘッドの側面に引っ掛かってジャムが生じるのを抑制することができる。また、押圧部がヒートシンクの側面から押圧されることで当接領域が液体吐出ヘッドの側面と当接する。そのため、カバーの当接領域と液体吐出ヘッドの側面との間に隙間がなくなり、当該隙間を埋めるためのシール部材を別途設ける必要がなくなるとともに、隙間に入り込んだ液体が不意に落下してきて記録媒体を汚すのを抑制することが可能となる。また、カバーに形成された複数の開口によって、ヒートシンクがドライバICの熱を効果的に放熱することができる。
本発明において、前記カバーは合成樹脂からなり、前記ヒートシンクと間隙を介して配置され、前記傾斜領域の傾斜面が、前記外面から外側に突出して形成された複数のリブによって形成されていることが好ましい。これにより、カバーがヒートシンクと間隙を介して配置されているので、カバーが合成樹脂から形成されていてもヒートシンクによる放熱を妨げない。また、傾斜面が外面から突出した複数のリブによって形成されているので、カバーの強度が向上する。
本発明の液体吐出装置は、記録媒体の搬送機構と、前記搬送機構による記録媒体の搬送方向と前記液体吐出ヘッドの前記長手方向とが直交し且つ前記カバーが前記搬送方向に関して前記液体吐出ヘッドの上流に位置するように固定された上述のヘッドユニットA又はヘッドユニットBとを備えている。
これによると、カバーが液体吐出ヘッドの上流に配置されているので、搬送されてきた記録媒体が液体吐出ヘッドの上流側面に引っ掛かってジャムが生じるのを抑制することができる。また、カバーの内面(又は押圧部)が押圧されることで当接領域が液体吐出ヘッドの側面と当接する。そのため、カバーの当接領域と液体吐出ヘッドの側面との間に隙間がなくなり、当該隙間を埋めるためのシール部材を別途設ける必要がなくなるとともに、隙間に入り込んだ液体が不意に落下してきて記録媒体を汚すのを抑制することが可能となる。
本発明のヘッドユニットAによると、液体吐出ヘッドには傾斜領域を有するカバーが固定されているので、記録媒体が液体吐出ヘッドの側面に引っ掛かってジャムが生じるのを抑制することができる。また、カバーの内面が押圧されることで当接領域が液体吐出ヘッドの側面と当接する。そのため、カバーの当接領域と液体吐出ヘッドの側面との間に隙間がなくなり、当該隙間を埋めるためのシール部材を別途設ける必要がなくなるとともに、隙間に入り込んだ液体が不意に落下してきて記録媒体を汚すのを抑制することが可能となる。
本発明のヘッドユニットBによると、液体吐出ヘッドには傾斜領域を有するカバーが固定されているので、記録媒体が液体吐出ヘッドの側面に引っ掛かってジャムが生じるのを抑制することができる。また、押圧部がヒートシンクの側面から押圧されることで当接領域が液体吐出ヘッドの側面と当接する。そのため、カバーの当接領域と液体吐出ヘッドの側面との間に隙間がなくなり、当該隙間を埋めるためのシール部材を別途設ける必要がなくなるとともに、隙間に入り込んだ液体が不意に落下してきて記録媒体を汚すのを抑制することが可能となる。また、カバーに形成された複数の開口によって、ヒートシンクがドライバICの熱を効果的に放熱することができる。
本発明の液体吐出装置によると、カバーが液体吐出ヘッドの上流に配置されているので、搬送されてきた記録媒体が液体吐出ヘッドの上流側面に引っ掛かってジャムが生じるのを抑制することができる。また、カバーの内面(又は押圧部)が押圧されることで当接領域が液体吐出ヘッドの側面と当接する。そのため、カバーの当接領域と液体吐出ヘッドの側面との間に隙間がなくなり、当該隙間を埋めるためのシール部材を別途設ける必要がなくなるとともに、隙間に入り込んだ液体が不意に落下してきて記録媒体を汚すのを抑制することが可能となる。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の第1実施形態であるインクジェットプリンタの全体的な構成を示す概略側面図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ101は、4つのヘッドユニット3を有するカラーインクジェットプリンタである。このインクジェットプリンタ101には、図中右方に給紙部111が、図中左方に排紙部112がそれぞれ構成されている。なお、ヘッドユニット3は、インクを吐出するインクジェットヘッド1と、インクジェットヘッド1の用紙搬送方向(図中右方から左方に向かう方向)の上流側の側面を覆うカバー70とを有している。
インクジェットプリンタ101の内部には、給紙部111から排紙部112に向かって記録媒体である用紙Pが搬送される用紙搬送経路が形成されている。給紙部111のすぐ下流位置には、用紙を挟持搬送する一対の送りローラ105a、105bが配置されている。一対の送りローラ105a、105bは、用紙Pを給紙部111から図中左方に送り出す。用紙搬送経路の中間部には、2つのベルトローラ106、107と、両ローラ106、107の間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト108と、搬送ベルト108によって囲まれた領域内においてヘッドユニット3と対向する位置に配置されたプラテン115とを含むベルト搬送機構113が設けられている。
プラテン115は、ヘッドユニット3と対向する領域において搬送ベルト108が下方に撓まないように搬送ベルト108を支持する。ベルトローラ107と対向する位置には、ニップローラ104が配置されている。ニップローラ104は、給紙部111から送りローラ105a、105bによって送り出された用紙Pを搬送ベルト108の外周面108aに押さえ付ける。
図示しない搬送モータがベルトローラ106を回転させることによって、搬送ベルト108が駆動される。これにより、搬送ベルト108が、ニップローラ104によって外周面108aに押さえ付けられた用紙Pを粘着保持しつつ排紙部112に向けて搬送する。
用紙搬送経路に沿う搬送ベルト108のすぐ下流には、剥離機構114が設けられている。剥離機構114は、搬送ベルト108の外周面108aに粘着されている用紙Pを外周面108aから剥離して、図中左方の排紙部112に向けて送るように構成されている。
4つのヘッドユニット3のインクジェットヘッド1は、互いに異なる色のインク(マゼンタ、イエロー、シアン、ブラック)を吐出する。また、ヘッドユニット3は、用紙搬送方向(副走査方向)に沿って4つ並べて固定されている。つまり、このインクジェットプリンタ101は、ライン式プリンタである。4つのインクジェットヘッド1は、その下端にヘッド本体2をそれぞれ有している。ヘッド本体2は、用紙搬送方向に直交した方向(主走査方向)に長尺な細長い直方体形状となっている。また、ヘッド本体2の底面が外周面108aに対向するインク吐出面2aとなっている。搬送ベルト108によって搬送される用紙Pが4つのヘッド本体2のすぐ下方を順に通過する際に、この用紙Pの上面すなわち印刷面に向けてインク吐出面2aに形成されたノズルから各色のインクが吐出されることで、用紙Pの印刷面に所望のカラー画像が形成される。
次に、ヘッドユニット3について詳細に説明する。なお、4つのヘッドユニット3はいずれも同じ構成であるため、1つのヘッドユニット3について説明する。図2は、図1に示すインクジェットヘッドの概略斜視図である。図3は、図2に示されたインクジェットヘッドの内部の構成を示す斜視図である。図4は、図2に示すIV−IV線に沿った断面図である。
まずは、ヘッドユニット3を構成するインクジェットヘッド1について説明する。図2〜図4に示すように、インクジェットヘッド1は、一方向を長手の方向(主走査方向)とする略直方体形状を有している。インクジェットヘッド1は、流路ユニット4とアクチュエータユニット20とを有するヘッド本体2と、流路ユニット4にインクを供給するインクリザーバ50とを有している。さらに、インクジェットヘッド1は、インクリザーバ50上に配設されたヘッドカバー11を有しており、その内部空間にはインクリザーバ50や制御基板17が配置されている。
ヘッドカバー11の主走査方向に沿う側面には、開口11aが形成されている。開口11aは、この側面の一部を切り欠いて形成され、ヘッドカバー11の上下方向に沿って側面の下端から側面の中央近傍に亘る。開口11aは長方形形状を有しており、その長辺は主走査方向に平行である。また、開口11aの短辺は上下方向に平行である。ヘッドカバー11の内側には、ヒートシンク13が開口11aを塞ぐように配置されている。本実施形態においては、ヒートシンク13に形成された平坦突出部14が開口11aを介してヘッドカバー11から露出している。なお、インクジェットヘッド1は、ヘッドカバー11、ヒートシンク13、リザーバベース52及び流路ユニット4で囲まれた空間が密閉空間となるように、各部材間の隙間がシール部材(図示せず)によって埋められている。
流路ユニット4の内部には、共通インク室及び共通インク室から圧力室を経てノズルに至る多数の個別インク流路を含む流路が形成されている。流路ユニット4の上面にはノズルからインク滴を吐出させるために、多数の圧力室のインクに対して選択的に吐出エネルギーを付与することができる4つのアクチュエータユニット20が取り付けられている。
アクチュエータユニット20は、圧力室と対向するように配置された多数の個別電極と共通電極とで挟持された圧電層を含むユニモルフ式のアクチュエータである。本実施形態では、個別電極がアクチュエータユニット20の表面に形成されている。圧電層は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる。また、個別電極及び共通電極はAg−Pd系などの金属材料からなる。個別電極は、ガラスフリットを含む金からなるランドを介してFPC16の対応する配線16aと電気的に接続されている。そして、ドライバIC15によって生成された所定の電圧パルス(インクを吐出させる駆動信号)が配線16aを介して個別電極に供給されることにより、アクチュエータユニット20の当該個別電極に対応する領域が変形し、当該領域に対向する圧力室の容積が変化する。これにより、圧力室内のインクに圧力波(吐出エネルギー)が発生し、対応するノズルからインク滴が吐出される。
制御基板17は、アクチュエータユニット20を制御するものであり、図3及び図4に示すように、インクリザーバ50の上方に固定されている。制御基板17の上面には、4つのコネクタ17aが固定されている。コネクタ17aは、制御基板17上に構築された各種のプロセッサや記憶装置と電気的に接続されている。
これらプロセッサおよび記憶装置が構築する駆動制御部は、アクチュエータユニット20を駆動する液滴データを生成する。駆動制御部には、上位の装置(例えば、ホストコンピュータ)から印刷データが送信される。印刷データは、カラー画像を構成する色成分毎の各画素に対応して、色濃度値(階調値)及びこの濃度の画素の連続する回数値が組み合わされたデータである。駆動制御部は、印刷データを受信すると、その色濃度値から対応する液滴データ(インク滴を吐出するための駆動信号の波形)を特定し、連続回数分だけ複製して、記憶装置の所定の記憶領域に順次記憶する。なお、この波形は、記憶装置の別の記憶領域に、データテーブルとして記憶されている。
本実施形態では、主走査方向に等間隔で配列するノズル毎(それぞれのノズルが形成する副走査方向に配列する画素列毎)に、駆動制御部が液滴データを生成していく。さらに、駆動制御部は、1つの画素を形成する印刷周期毎に、液滴データをドライバIC15に順次出力する。この印刷周期中に、ドライバIC15からは、液滴データに対応する駆動信号がアクチュエータユニット20に出力される。駆動信号は、ドライバIC15が液滴データに基づいて電力増幅した信号である。なお、ドライバIC15は、駆動信号を出力する(アクチュエータユニット20を駆動する)ことで発熱する。
各コネクタ17aの側面には、FPC16の一端が電気的に接続されている。FPC16は可撓性のシート状の部材であり、複数の配線16aが形成されていると共にドライバIC15が実装されている。一方、インクリザーバ50の凹部53a内において、FPC16の他端(配線16aの端子)が、アクチュエータユニット20の個別電極に電気的に接続されている。
なお、凹部53aは、インクリザーバ50と流路ユニット4とでアクチュエータユニット20を挟むサンドイッチ構造で、インクリザーバ50と流路ユニット4間でアクチュエータユニット20の配設空間を確保するために形成された隙間部である。
ドライバIC15は、アクチュエータユニット20を駆動するICチップであり、図3に示すように、インクリザーバ50の側面に沿って2つずつ配置されている。また、ドライバIC15は、図4に示すように、ヒートシンク13の平坦突出部14と対向する位置において、インクリザーバ50の側面に設けられたスポンジ18によってFPC16とともにヒートシンク13に対して付勢されている。
ヒートシンク13は、図2に示すように、主走査方向に長手方向を有した略長方形形状を有しており、アルミやステンレスのような金属性の板状部材である。ヒートシンク13には、平坦突出部14、流路ユニット4に差し込まれる複数の突起部13aが形成されている。平坦突出部14は、ヒートシンク13の上リザーバ51(後述する)の側面と対向する部分に形成されており、開口11から突出している。この突出している部分、すなわち先端は平坦であって主走査方向に長尺な長方形形状となっている。この平坦突出部14は、例えば、金属製の平板にプレス加工が施されることによって形成される。このように、ヒートシンク13に平坦突出部14が形成されていることで、ヒートシンク13の表面積が広くなり剛性が高められている。
平坦突出部14の内面には、ドライバIC15と対向する位置に放熱シート19が貼り付けられている。そして、ドライバIC15が、放熱シート19を介してヒートシンク13に密着しており、ドライバIC15とヒートシンク13とが熱的に結合される。これにより、ドライバIC15で発生した熱がヒートシンク13を介して放熱される。
複数の突起部13aは、ヒートシンク13の下端から下方へと突出しており、主走査方向に沿って互いに離隔して配置されている。流路ユニット4の上面の幅は、インクリザーバ50の下面の幅よりも大きい。そして、インクリザーバ50は流路ユニット4の副走査方向(幅方向)について中央に配置されている。したがって、流路ユニット4の副走査方向について両端の近傍には、インクリザーバ50の下面と対向していない領域が存在する。これらの領域には、5つの凹部4aがそれぞれ形成されている。これら凹部4aは、複数の突起部13aと対応する位置に形成されている。また、凹部4aは、ヒートシンク13の突起部13aとちょうど嵌まり合うような大きさ及び形状に形成されている。これら凹部4aに突起部13aが嵌め込まれることで、ヒートシンク13が流路ユニット4から立設されている。また、ヒートシンク13の上部は、図4に示すように、ヘッドカバー11の側面内側に当接して、ヘッドカバー11を固定している。
インクリザーバ50は、ヘッド本体2と同様に、平面視において長方形形状を有しており、その長辺が主走査方向に平行となっている。インクリザーバ50は、流路ユニット4に向かって順に、上リザーバ51、リザーバベース52及び下リザーバ53を有している。
上リザーバ51の内部には、インク流路54が形成されている。インク流路54は、インク供給弁12(図2参照)と連通していると共にリザーバベース52、下リザーバ53内に形成された図示しないインク流路を介して流路ユニット4と連通している。インク流路54の下面の一部は、可撓性のフィルム55からなる。なお、フィルム55の下面は、リザーバベース52と所定の間隙を介して対向しており、この間隙に対応して変位可能に配置されている。このため、このフィルム55が振動することによって、インク流路54内に充填されたインクに発生する圧力波による衝撃が吸収される。また、インク流路54内には、複数の微細孔を有するフィルタ56が配置されている。
下リザーバ53は、図4に示すように、流路ユニット4と接合されているが、両者の境界面には凹部53aが部分的に形成されている。凹部53aは、アクチュエータユニット20にそれぞれ対応して配置され、この凹部53aが作る隙間内で、アクチュエータユニット20が流路ユニット4の表面に取り付けられている。このようにインクリザーバ50に形成されたインク流路54を通じて、インク供給弁12から供給されたインクが流路ユニット4に流入する。流路ユニット4に到達するまでにインク流路54に設けられたフィルタ56をインクが通過する。その際にインク内の不純物がフィルタ56によって濾過される。
また、図3及び図4に示すように、下リザーバ53の用紙搬送方向(副走査方向)の上流側面には、3つのフック57〜59が形成されている。これらフック57〜59は、主走査方向に所定間隔をおいて互いに離隔して配置されている。また、フック57〜59は、下リザーバ53の上流側面から外側に突出し、そこから主走査方向に下リザーバ53と平行に折れ曲がったL字形状を有している。なお、これらフック57〜59のうち、主走査方向の中央に設けられたフック58は、他の2つのフック57,59よりも一段凹んだ位置から突出しているが、その根元部分には、図3に示すように、フック58の先端が副走査方向に関して他の2つのフック57,59の先端と同じ位置になるように基部58aが形成されている。この基部58aは、図2に示すように、インクジェットヘッド1の側面にヒートシンク13が取り付けられたときに、ヒートシンク13に形成された孔13bからその先端部が突出している。そして、基部58aとヒートシンク13の孔13aとの隙間にシール部材(不図示)が充填されている。
次に、インクジェットヘッド1に固定されたカバー70について説明する。図5(a)はカバー70の側面図であり、図5(b)は図5(a)のV−V線に沿った断面図である。
カバー70は、図5に示すように、主走査方向に長尺な板状部材であり、その主走査方向の長さはインク吐出面2aと同じ長さになっている。また、カバー70は、図4に示すように、インクジェットヘッド1に固定されたときに、その下端(一端:端縁)にある下面71がインク吐出面2aと同じ高さに配置される。そして、カバー70の高さが、インクジェットヘッド1の上流側面であって中央から下端までの部分を覆うような高さとなっている。
カバー70のインクジェットヘッド1の上流側面と対向する内面81には、図4及び図5に示すように、下面71に連続し且つ当該上流側面に当接する当接面(当接領域)72が形成されている。一方、カバー70の内面81とは反対側にある外面82には、下面71に連続し且つインク吐出面2aに対して傾斜した傾斜面(傾斜領域)73が形成されている。これら下面71、当接面72、傾斜面73は、カバー70の下端部(一端部)に形成されている。本実施形態において下端部は、鉛直方向に関して、下面71から傾斜面73の上端まで範囲(下面71から固定部77〜79までの範囲とほぼ同じ範囲)である。
傾斜面73は、図5(a)に示すように、カバー70の主走査方向全体に亘って形成されている。すなわち、インク吐出面2aと同じ長さを有している。このような傾斜面73が形成されていることで、インク吐出面2aと対向する領域に、例えば、前端がカールした用紙Pが搬送されてきても、当該前端をインク吐出面2aと対向する領域にスムーズに案内することができる。また、傾斜面73が主走査方向に関してインク吐出面2aと同じ長さを有していることで、用紙Pをより確実にインク吐出面2aと対向する領域に案内することができ、ジャムをより抑制することができる。
また、傾斜面73は、その上端が後述の固定部77〜79の下端に配置されている。すなわち、傾斜面73は、鉛直方向に関して、インク吐出面2aから固定部77〜79までの距離と同じ高さを有している。これにより、インク吐出面2aと対向する領域に、例えば、前端が大きくカールした用紙Pが搬送されてきても、用紙Pの前端と傾斜面73とが接触し当該前端をスムーズに案内することができる。そのため、ジャムをより抑制することができる。
カバー70には、図5(a)に示すように、インクジェットヘッド1に固定される3つの固定部77〜79が形成されている。これら固定部77〜79は、カバー70をインクジェットヘッド1に固定したときに、フック57〜59と対向する位置に形成されている。固定部77〜79は、カバー70の厚み方向(副走査方向)に貫通した貫通部77a,78a,79aと、カバー70の外面82に形成され且つ貫通部77a〜79aから主走査方向に沿って延在した溝77b,78b,79bとを有している。貫通部77a,78aは、対応するフック57,58の先端面より若干大きな開口を有している。貫通部79aは、主走査方向の一側壁が切り欠かれている。
この構成において、貫通部77a〜79aにフック57〜59を嵌め込んでから、フック57〜59の先端部が溝77b〜79bに向かって移動するようにカバー70をスライドさせる。3つの溝77b,78b,79bのうち溝77b,79bの上壁には、図5に示すように、下方に向かって突出した突起77c,79cが形成されている。カバー70がスライドするとき、突起77c,79cとフック57,59の先端部とが噛み合うことで、カバー70の固定部77〜79がインクジェットヘッド1に固定される。なお、カバー70は、図4に示すように、インクリザーバ50の側面との間にヒートシンク13を挟み且つヒートシンク13と間隙を介して配置されている。
このように、インクジェットヘッド1にフック57〜59が形成され、カバー70に貫通部77a〜79aと溝77b〜79bとからなる固定部77〜79が形成されているので、カバー70をインクジェットヘッド1に容易に固定することができる。なお、固定部77〜79は、溝77b〜79bを有していなくてもよい。この場合、インクジェットヘッド1にカバー70を固定したときに、フック57〜59の先端部が外面81から突出するだけである。また、フック57〜59及び固定部77〜79が主走査方向に3つずつ設けられているので、カバー70がインクジェットヘッド1から外れにくくなって確実に固定することができる。さらに、カバー70をインクジェットヘッド1に固定したときに、突起77c,79cとフック57,59とが係合するので、カバー70が主走査方向に移動しにくくなってカバー70がフック57〜59から脱落しにくくなる。さらに、長手方向の全体に亘って、カバー70の一端をインク吐出面2aと同じ高さに揃えることができる。
カバー70は、合成樹脂から構成されている。このように合成樹脂から構成されていることで、簡単にカバー70を形成することが可能になってカバー70の製造コストが安価になる。本実施形態においては、カバー70が合成樹脂からなるが、ヒートシンク13と同様な金属から構成されていてもよい。この場合、ヒートシンク13の平坦突出部14近傍の熱を奪うことが可能となるので、ヒートシンク13から間接的に熱を奪うことになる。そのため、ヒートシンク13による放熱性能が向上する。
カバー70には、図5に示すように、主走査方向に沿って配列された5つの開口75が形成されている。開口75は、図4に示すように、固定部77〜79よりも上方に配置され且つ平坦突出部14と対向する領域に形成されている。また、開口75は、カバー70がインクジェットヘッド1に固定されたときに、ドライバIC15と対向する位置に配置されるように配列されている。具体的には、カバー70がインクジェットヘッド1に固定されると、図5中左から2番目の開口75が図3中左方のドライバIC15と対向する位置に配置され、図5中最も右方の開口75が図3中右方のドライバIC15と対向する位置に配置される。
このようにカバー70に開口75が形成されていることで、ヒートシンク13による放熱性能が低下しない。また、開口75がドライバIC15の配置位置に対応して形成されていることで、ヒートシンク13がドライバIC15の熱を効果的に放熱することができる。
また、各開口75には、図5に示すように、開口縁の下端中央から上方に向かって延在した片持ち梁76が形成されている。片持ち梁76の肉厚は、カバー70の他の部位の肉厚より薄く形成されている。片持ち梁76の上端部には、内面81側に向かって突出する突出部76aが形成されている。この突出部76aの先端面76b(内面81の一部)は、図5(b)に示すように、内面81の中で最も副走査方向に突出しており、鉛直方向に関して、固定部77〜79よりもインク吐出面2aから上方に離れている。
この構成により、カバー70がインクジェットヘッド1に固定されたときに、図4に示すように、突出部76aの先端面(押圧部)76bが平坦突出部14に当接する。片持ち梁76は、先端面76bが平坦突出部14から押圧される(換言すると、平坦突出部14が先端面76bに押圧される)ことで、平坦突出部14から離れる方向に撓む。このように片持ち梁76が撓むので、インクジェットヘッド1に対するカバー70の固定が容易になる。また、製造上のばらつきを吸収して、カバー70の当接面72をインクジェットヘッド1の側面に確実に当接することができる。そして、この片持ち梁76を撓ませる押圧力が、固定部77〜79を中心としたカバー70の回転力となって当接面72に伝わる。これによって、当接面72がインクジェットヘッド1(流路ユニット4)の上流側面に近づく方向に付勢され、上流側面に密着する。このため、カバー70の当接面72とインクジェットヘッド1の上流側面との間にほとんど隙間が生じなくなる。
一方、カバー70は、図4に示すように、当接面72よりも上方の部分が、突出部76aの先端面76bを除いてヒートシンク13から離隔している。特に、ヒートシンク13の平坦突出部14に対向する部分には、大きな隙間が形成されている。これによって、ヒートシンク13の放熱が向上する。
以上のように、本実施形態のインクジェットプリンタ101によると、傾斜面73を有するカバー70がインクジェットヘッド1の用紙搬送方向の上流に固定されているので、用紙Pがインクジェットヘッド1の上流側面に引っ掛かってジャムが生じるのを抑制することができる。また、カバー70の先端面76bが押圧されることで、当接面72がインクジェットヘッド1の上流側面と密着し、両者間に隙間が生じなくなる。そのため、当該隙間を埋めるためのシール部材を別途設ける必要がなくなるとともに、隙間に入り込んだインクが不意に落下してきて用紙Pを汚すのを抑制することが可能となる。また、カバー70が合成樹脂から構成されていても、カバー70がヒートシンク13と間隙を介して配置されているので、ヒートシンク13の放熱を妨げない。
続いて、本発明の第2実施形態によるヘッドユニット203について以下に説明する。図6は、本発明の第2実施形態によるヘッドユニットのカバーの側面図である。図7は、本発明の第2実施形態によるヘッドユニットの要部断面図である。本実施形態によるヘッドユニット203は、カバー270の傾斜面273を構成する部分が第1実施形態のカバー70と若干異なるだけで、これ以外は第1実施形態のヘッドユニット3とほぼ同様である。なお、第1実施形態と同様なものに関しては、同符号を示し説明を省略する。
本実施形態のカバー270の外面282には、図6及び図7に示すように、その下端部に、下端が下面71に連続し、カバー270の長手方向の全長にわたって延びた突起部284aが形成されている。突起部284aは、外面282から突出し、インク吐出面2aに対して傾斜する傾斜面273aを有している。本実施形態では、傾斜面273aは、曲率の小さい湾曲面である。さらに、外面282の下端部には、主走査方向に沿って所定間隔で配列された複数のリブ284bが形成されている。これらリブ284bは、外面282から外側に突出して形成されており、インク吐出面2aに対して傾斜する傾斜面273bを有している。傾斜面273bは、傾斜面273aに続く曲率の小さい湾曲面である。リブ284bは、突起部284aと同様に、下端が下面71に連続し、上端は開口75の下端縁まで延びている。リブ284bの突起部284aと重なる部分では、リブ284bの傾斜面273bは、突起部284aの傾斜面273aと区別のない状態で連続している。これら突起部284aの傾斜面273a及びリブ284bの傾斜面273bによって傾斜領域274が形成されている。この傾斜領域274は、主走査方向に関して、インク吐出面2aとほぼ同じ長さを有している。
なお、リブ284bは、インク吐出面2aと対向する領域に搬送されてくる用紙Pの用紙搬送方向と直交する方向の幅よりも短い間隔で配置されている。このように傾斜領域274が複数のリブ284bによって構成されていることで、カバー270自体の強度が第1実施形態と比して向上する。なお、第1実施形態と同様な構成においては同じ効果を得ることができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、各実施形態においては、先端面76bが平坦突出部14に押圧されているが、当接領域である当接面72がインクジェットヘッド1の上流側面に付勢されるのであれば、カバー70,270の内面81のどこかをインクジェットヘッド1が押圧していてもよい。また、片持ち梁76が形成されていなくてもよい。この場合、カバー70,270の上端部の内面を部分的にインクジェットヘッド1の側面及びヒートシンク13の側面のいずれかに当接させて、当接面72をインクジェットヘッド1の上流側面に付勢すればよい。
また、傾斜面73,273a,273bがなす傾斜領域が、主走査方向に関して、インク吐出面2aより長くてもよいし、短くてもよい。また、傾斜領域の高さが、鉛直方向に関して、インク吐出面2aから固定部77〜79までの距離よりも低くてもよいし、高くてもよい。また、カバー70,270に形成された開口75が、ドライバIC15に対向していなくてもよいし、開口75自体が形成されていなくてもよい。カバー70,270とインクジェットヘッド1とをフック57〜59及び固定部77〜79以外の構成で固定してもよい。また、第1実施形態におけるインクジェットプリンタ101においては、4つのヘッドユニット3を有しているが、用紙搬送方向に関して、最も上流にヘッドユニット3が配置されておれば、残りの3つがインクジェットヘッドであってもよい。また、傾斜面273a,273bは、湾曲面としたが、傾斜面73と同様に、平面であってもよい。逆に、平面とした傾斜面73を、傾斜面273aと同様にして、曲率の小さな湾曲面として形成してもよい。
また、上述した各実施形態は、ノズルからインクを吐出するヘッドユニット及びこれを有するインクジェットプリンタに本発明を適用した一例であるが、本発明の適用可能対象はこのようなヘッドユニット及びインクジェットプリンタに限られない。例えば、導電ペーストを吐出して基板上に微細な配線パターンを形成したり、あるいは、有機発光体を基板に吐出して高精細ディスプレイを形成したり、さらには、光学樹脂を基板に吐出して光導波路等の微小電子デバイスを形成するための、液体吐出ヘッドとカバーとを有するヘッドユニット及びこれを有する、種々の液体吐出装置に適用することができる。