本発明は改質用燃料と水蒸気とを反応させることにより、水素を含有する改質ガスを生成する燃料電池用改質装置に関する。
一般的には、改質装置は、改質用燃料と水蒸気とで改質ガスを生成させる改質部と、水を加熱して水蒸気を生成して改質部に供給する蒸発部と、改質部から流出された改質ガスに含まれる一酸化炭素を低減させる一酸化炭素浄化部とを備えている(特許文献1,2)。ここで、一酸化炭素浄化部は、改質部で形成された改質ガスに含まれる一酸化炭素を低減させるCOシフト部と、COシフト部よりも下流に配設された酸化用のCO低減部とを備えている。CO低減部においては、COシフト部を経た改質ガスに残留する一酸化炭素と酸素とを酸化反応させることにより、改質ガスに残留する一酸化炭素を更に低減させる。このため、一酸化炭素を低減させた改質ガスを燃料電池に供給することができ、発電性能を高めることができる。
特開2002−124286号公報
特開2006−143564号公報
産業界では、改質部において生成された改質ガスに含まれる一酸化炭素を更に低減させることが要望されている。
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、改質部において生成された改質ガスに含まれる一酸化炭素を更に効果的に低減させることができる燃料電池用改質装置を提供することを課題とする。
(1)様相1に係る燃料電池用改質装置は、改質用燃料を水蒸気改質で改質ガスを生成させる改質部と、水を加熱して水蒸気を生成して改質部に供給する蒸発部と、改質部から流出された改質ガスに含まれる一酸化炭素を低減させる一酸化炭素低減部と、一酸化炭素低減部と蒸発部との間に配置され一酸化炭素低減部から蒸発部への熱移動を抑制する断熱手段とを具備することを特徴とする。
一酸化炭素低減部は、改質部において生成された改質ガスに含まれる一酸化炭素を一酸化炭素低減反応に基づいて低減させる部位である。蒸発部は水を加熱して水蒸気を生成する。一般的には、蒸発部の温度は、水の気化熱の影響で一酸化炭素低減部の温度よりも低い。
断熱手段は、蒸発部よりも相対的に高温となる一酸化炭素低減部と、一酸化炭素低減部よりも相対的に低温となる蒸発部との間に配置されている。従って、断熱手段は、一酸化炭素低減部から蒸発部への熱の移動を抑制する。このため改質装置が運転されるとき、一酸化炭素低減部における過度の冷却は抑制される。故に、一酸化炭素低減部において、一酸化炭素低減反応(例えば一酸化炭素の酸化反応、メタネーション反応)における過度の冷却に起因する反応速度の低下が抑制される。一酸化炭素低減部に保持されている触媒では、長時間運転などで徐々に低温における反応活性が低下するが、上記したように断熱手段による断熱作用により、一酸化炭素低減部における過度の冷却が抑制される。このため、一酸化炭素低減部における反応速度の低下が抑制される。よって、一酸化炭素低減部において一酸化炭素低減反応が良好に実施される。この結果、改質ガスに含有されている一酸化炭素の濃度を低減させ易い。
(2)更に様相1に係る燃料電池用改質装置によれば、上記様相において、一酸化炭素低減部は、改質ガスが流れる上流側、中流側および下流側を備えており、断熱手段は、一酸化炭素低減部における中流側および下流側の双方、または、下流側に配置されていることを特徴とする。
そして一酸化炭素低減部は、上流側では酸化反応がメタネーション反応に優先して改質ガス中の一酸化炭素を低減し、下流側ではメタネーション反応が酸化反応に優先して改質ガス中の一酸化炭素を低減するCO浄化部であることを特徴とする。
本様相によれば、断熱手段は、一酸化炭素低減部における中流側および下流側の双方、または、下流側に配置されている。このため、一酸化炭素低減部において、特に、中流側および下流側の過度の冷却、または、下流側の過度の冷却が抑制される。故に、一酸化炭素低減部において、過度の低温化に起因する一酸化炭素低減反応(例えば一酸化炭素の酸化反応、メタネーション反応)の反応速度の低下が抑制される。よって改質ガスに含有されている一酸化炭素の濃度を低減させ易い。
ここで、一酸化炭素低減部における上流側、中流側および下流側とは、一酸化炭素低減部(特に、一酸化炭素低減部における触媒担持部)の改質ガスの流れ方向において、流路長さを3分割(例えば3等分)した区分けでも良い。あるいは、一酸化炭素低減部(特に、一酸化炭素低減部の触媒担持部)の改質ガス入口から改質ガス流れ方向に沿った所定距離の部分を上流とし、残りの部分を2分割(2等分)し、中流および下流としても良い。所定距離としては3〜10ミリメートルが例示され、3〜7ミリメートルがさらに例示される。また上記した所定距離としては、一酸化炭素低減部における触媒担持部の改質流れ方向の長さのうち、4〜15%が例示され、4〜10%が更に例示される。
(3)様相2に係る燃料電池用改質装置によれば、上記様相において、断熱手段は、断熱材を基材としていることを特徴とする。断熱材としては、セラミックス、多孔質体が例示される。セラミックスとしてはアルミナ、シリカ、炭化珪素、窒化珪素など、または、これらの2つ以上を組み合わせたものが例示される。断熱材としては、セラミックス繊維の集合体でも良いし、セラミックス繊維の集合体にセラミックス粒子を装填したものでもよく、セラミックス粒子の集合体でも良く、気孔を含有していても良い。
(4)様相3に係る燃料電池用改質装置によれば、上記様相において、断熱手段は、空気断熱層であることを特徴とする。空気断熱層は空気であるため、使用材料が少ない。従って、一酸化炭素低減部と蒸発部との間における断熱性を確保しつつ、材料コストが低減される。なお、空気断熱層および断熱材の双方を併有しても良い。
本発明に係る改質装置によれば、断熱手段は、一酸化炭素低減部と蒸発部との間に配置されている。この結果、相対的に高温側の一酸化炭素低減部から、相対的に低温側の蒸発部への熱の移動を抑制する。このため改質装置の運転中において、一酸化炭素低減部における過度の冷却は抑制される。故に、一酸化炭素低減部において、過度の冷却に起因する一酸化炭素低減反応(例えば、一酸化炭素の酸化反応、メタネーション反応)における反応速度低下が抑制される。よって改質ガスに含有されている一酸化炭素の濃度を低減させ易い。
本発明に係る燃料電池用改質装置は、改質部と、蒸発部と、一酸化炭素低減部と、断熱手段とを備えている。改質部は、改質用燃料と水蒸気とで改質ガスを生成させる。改質用燃料は気体状でも、液体状でも、固体状でも良い。蒸発部は、水を加熱して水蒸気を生成して改質部に供給する。一酸化炭素低減部は、改質部から流出された改質ガスに含まれる一酸化炭素を低減させる。断熱手段は、一酸化炭素低減部と蒸発部との間に配置されており、一酸化炭素低減部から蒸発部への熱の移動を抑制する。これにより一酸化炭素低減部の過度の冷却が抑制される。断熱手段としては、セラミックス、空気断熱層が例示される。一酸化炭素低減部において、過度の冷却に起因する一酸化炭素低減反応(例えば一酸化炭素の酸化反応、メタネーション反応)の反応速度低下が断熱手段の断熱作用により抑制される。一酸化炭素低減部に充填された触媒では、長時間運転などで低温における反応活性が徐々に低下するが、上記したように断熱手段の断熱作用により、一酸化炭素低減部における過度の冷却が抑制されるため、一酸化炭素低減部における反応速度の低下が抑制される。よって改質ガスに含有されている一酸化炭素の濃度を低減させ易い。一酸化炭素低減部は、触媒を備えている形態、触媒を備えていない形態のいずれでも良い。
以下、本発明の実施例1について図1を参照して具体的に説明する。本実施例に係る改質装置は燃料電池システムに適用したものである。本実施例に係る改質装置は燃料電池システムに適用したものである。図1では、複雑化を避けるため、大部分のハッチングを省略している。図1に示すように、改質装置2は、燃焼バーナで形成された加熱部として機能する燃焼部30と、燃焼部30により加熱される改質部34と、蒸発部36と、CO浄化部(一酸化炭素低減部)37とをもつ。
改質部34は、鉛直方向に沿った中心軸芯をもつ筒形状をなしており、改質用燃料を改質させて改質ガスを生成するものである。改質部34は、燃焼部30に対面する燃焼通路32をもつ。改質部34の回りを包囲するように燃焼通路33が同軸的に形成されている。更に、燃焼通路33の回りを包囲するように、原料水を蒸発させる筒形状をなす蒸発部36が同軸的に形成されている。蒸発部36の回りに筒形状のCO浄化部37(CO選択酸化部ともいう)が同軸的に形成されている。
図1に示すように、改質部34は内通路34iと外通路34pと折返部34mとをもつ。燃焼部30で加熱される改質部34により、蒸発部36は加熱される。蒸発部36の外周部を包囲するように、筒状のCO浄化部37が隣設状態に配置されている。このため蒸発部36の外周部とCO浄化部37の内周部とは互いに熱交換される。改質装置2の運転中においては、一般的に、液相状態の水が蒸発する蒸発部36の温度よりもCO浄化部37の温度が高い。このため、CO浄化部37は蒸発部36に熱を与える。
改質部34は、改質反応を促進させる改質触媒34e(例えばニッケル系、ルテニウム系)を担持する担体を有する。改質触媒34eの活性温度域は一般的には500〜800℃であるが、これに限定されるものではない。改質部34の温度がこれの活性温度域から大きく外れると、改質部34の改質反応が損なわれるおそれがある。改質部34は下記の式(1)に基づいて、改質用燃料と水蒸気とに基づいて水蒸気改質を行い、水素を含有する改質ガスを生成する。改質ガスは一酸化炭素を含む。なお改質部34では下記の式(2)のシフト反応も発生している。
更に、図1および図2に示すように、改質装置2は、改質部34の下方に配置された熱交換部4と、熱交換部4の下方に配置された別の一酸化炭素低減部として機能するCOシフト部5と、COシフト部5と熱交換部4との間に配置された電気式のヒータをもつ暖機部47とを備えている。ここで、蒸発部36の下流に熱交換部4が設けられ、熱交換部4の下流にCOシフト部5が設けられている。
COシフト部5は、下記の(2)式に基づいて、水蒸気を利用するシフト反応を促進させ、改質ガスに含まれているCOを低減させる。COシフト部5はシフト触媒5e(例えば銅−亜鉛系触媒)を担持する担体を有する。シフト触媒5eの活性温度域は一般的には160〜300℃であるが、これに限定されるものではない。COシフト部5の温度がこれの活性温度域から大きく外れると、COシフト部5のシフト反応が損なわれ、一酸化炭素が充分に浄化されないおそれがある。COシフト部5で浄化された改質ガスに含まれているCOの濃度は、改質用燃料にもよるが、一般的にはモル比で0.2〜1%であるが、これに限られるものではない。COシフト部5の出口5pと酸化用空気通路75とは、第2合流域M2を介して浄化通路400により接続されている。
CO浄化部37は、COシフト部5の下流に配置されており、COシフト部5で浄化された改質ガスに含まれているCOを下記の式(3)に基づいて、酸化させて低減させる酸化反応を促進させるものである。CO浄化部37は、触媒37e(例えばルテニウム系、白金系、白金−ルテニウム系等の貴金属系触媒)を担持するセラミックス(例えばアルミナ)製の担体を有する触媒担持部37xをもつ。酸素含有雰囲気において、触媒37eの活性温度域は一般的には100〜200℃であり、改質部34に担持されている改質触媒34e(例えばニッケル系、ルテニウム系)の活性温度域よりも低くされている。従って、改質部34の近傍に配置されているCO浄化部37については、蒸発部36により冷却する構造が採用されている。
ここで、酸素含有雰囲気においてCO浄化部37の温度がこれの活性温度域から大きく外れると、CO浄化部37における選択酸化反応が損なわれるおそれがある。そこで本実施例によれば、蒸発部36の外周側にCO浄化部37を隣設させた状態で接近した状態に配置し、蒸発部36によりCO浄化部37を冷却し、CO浄化部37の過剰高温化を抑え、CO浄化部37における選択酸化反応を効果的に行うことにしている。
式(1)…CH4+H2O→3H2+CO
式(2)…CO+H2O→H2+CO2
式(3)…CO+1/2O2→CO2
なお、COシフト部5はCO浄化部37の上流に配置されているため、改質装置2の運転時には、式(2)→式(3)の順に実行される。
図1に示すように、COシフト部5の出口5pとCO浄化部37の入口37iとは、浄化通路400で接続されている。COシフト部5の出口5pから吐出された改質ガス(水素を主要成分とし、一酸化炭素を含有)は、浄化通路400を上向きに矢印W2方向に流れ、第2合流域M2を経てCO浄化部37の入口37iに供給される。なお、入口37iは、CO浄化部37の高さ方向の下部側に形成されているが、これに限定されるものではない。
次に改質装置2を起動させるときについて説明する。燃焼用空気通路73を介して燃焼用空気を改質部34の燃焼部30に供給する。また燃焼用燃料通路62aを介してガス状の燃焼用燃料(燃焼性燃料)を改質部34の燃焼部30に供給する。これにより燃焼部30が着火されて加熱され、ひいては改質部34が改質反応に適するように加熱される。改質部34および外側部35と共に蒸発部36およびCO浄化部37も、高温に加熱される。
その後、改質水通路82から改質水(改質反応前の水)が蒸発部36の入口36iに供給される。改質水は改質装置2の高温の蒸発部36において水蒸気化される。生成された水蒸気は、蒸発部36の出口36pから水蒸気通路300を経て第1合流域M1に到達する。第1合流域M1は、水蒸気通路300を流れる水蒸気または凝縮水と、改質用燃料通路62cを流れる改質用燃料とが合流する領域である。これに対して、改質用燃料は改質用燃料通路62cおよび第1合流域M1を経て熱交換部4の入口4iに供給される。第1合流域M1において、改質用燃料通路62cの改質用燃料と水蒸気通路300の水蒸気とが合流して混合される。合流した混合流体が熱交換部4の入口4iに供給される。混合流体は熱交換部4の低温側の第1通路4aを通過する。このとき熱交換部4の高温側の第2通路4cを流れる高温の改質ガスと熱交換する。このため、改質反応前の混合流体が加熱される。混合流体は改質部34の外通路34pに流入し、矢印A1方向に流れ、折返部34mを経て内通路34iに流入し、矢印A2方向に流れる。このとき水蒸気(または凝縮水)および改質用燃料が混合した混合流体は、上記した(1)に示す改質反応により、水素リッチな改質ガスとなる。この改質ガスは一酸化炭素を含む。
更に、改質反応を経た高温の改質ガスは、改質部34から熱交換部4に流入する。即ち、高温の改質ガスは、改質部34から熱交換部4の高温側の第2通路4cを通過することにより、低温側の第1通路4aの混合流体を加熱する。更に、改質ガスは、暖機部47を経て、COシフト部5の入口5iからCOシフト部5の内部に流入する。COシフト部5においては、上記した式(2)に示すように、水蒸気を利用したシフト反応が行われる。これにより改質ガスに含まれている一酸化炭素が低減され、改質ガス中のCO濃度は低減される。
更に、COシフト部5においてCO濃度が低減された改質ガスは、COシフト部5の出口5pから浄化通路400を経て矢印W2方向に流れ、第2合流域M2に至る。更に改質ガスは、酸化用空気通路75(酸素供給部)の酸化用空気(酸素成分,CO浄化部37における選択反応に使用される選択酸化用空気)と第2合流域M2において合流する。従って、第2合流域M2は、浄化通路400を流れる改質ガスと、酸化用空気通路75を流れる酸化用空気(酸素成分)とが合流する領域である。そして、合流した改質ガスは、CO浄化部37の下部に形成されている入口37iから、CO浄化部37内に流入する。CO浄化部37においては、上記した式(3)に示すように、酸素を利用した酸化反応(CO+1/2O2→CO2)が行われる。この結果、改質ガスに含まれているCOが浄化されて更に低減される。酸化反応は発熱を伴う。
このように浄化された改質ガスは、CO浄化部37の出口37pからアノードガスとして、アノードガス通路100を経て燃料電池に供給される。カソードガスとして機能する空気は、燃料電池の酸化剤極の入口に供給される。これにより燃料電池において発電反応が発生し、電気エネルギが生成される。アノードガスの発電反応後のオフガス(燃料電池から排出されたガス)は、発電反応が行われなかった水素を含むことがある。このためオフガスはオフガス通路110を経て改質部34の燃焼部30に供給されて燃焼され、燃焼部30の熱源となる。
(要部構成)
さて本実施例の要部について説明を加える。図1に示すように、CO浄化部37と蒸発部36との間には、断熱部700が断熱手段として同軸的に配置されている。断熱部700は、横断面リング形状をなす筒形状をなしており、単位体積当たりの断熱性がCO浄化部37よりも高い断熱材を基材としている。断熱材としては、セラミックス、多孔質体(例えば発泡体)が例示される。セラミックスとしてはアルミナ系、シリカ系、ジルコニア系、マグネシア系、チタニア系、窒化珪素系などが例示される。セラミックス繊維の集合体でも良いし、セラミックス粒子の集合体でも良く、セラミックス繊維とセラミックス粒子との組合せでも良い。
CO浄化部37は、改質部34から流出された改質ガスに含まれる一酸化炭素をCO低減反応(選択酸化反応、メタネーション反応)により低減させる。CO低減反応を効果的に行うため、改質装置の運転中において、CO浄化部37は、蒸発部36により過度に冷却されないことが好ましい。
そこで、断熱部700は、蒸発部36よりも相対的に高温となるCO浄化部37と蒸発部36との間に配置されており、CO浄化部37から蒸発部36への熱の移動を抑制する。このため改質装置が運転されるとき、CO浄化部37における過度の冷却は断熱部700の断熱作用により抑制される。特に、CO浄化部37における触媒担持部37xにおける過度の冷却は抑制される。故に、上記したCO低減反応(選択酸化反応、メタネーション反応)が良好に実施される。
更に説明を加える。図1に示すように、CO浄化部37の触媒担持部37xは、改質ガスが流れる上流37u、中流37mおよび下流37dを備えている。CO浄化部37において、上流37uは下部に位置し、下流37dは上部に位置している。CO浄化部37の触媒担持部37xの高さ寸法をH1とすると、断熱部700の一端部700d(下端部)の高さ位置は、下流37dからCO浄化部37の高さ寸法H1の半分程度に設定されている。従って、断熱部700は、CO浄化部37のうち上流37uを包囲していないものの、中流37mの半分程度を包囲しており、更には下流37dを包囲している。この結果、断熱部700は、CO浄化部37と蒸発部36との間において、CO浄化部37における中流37mの一部および下流側37uに配置されている。
CO浄化部37においては、上流37uは、酸化用空気が供給される入口37iに近いため、酸素濃度が相対的に高い。これに対して下流37dは入口37iから遠く、上流37uで主として酸素が消費される酸化反応が起こる。このため、上流37uよりも酸素濃度が相対的に低い。従って、上流37uでは、酸素が消費される選択酸化反応(発熱反応)が発生し易く、その反応活性温度は一般的には100〜200℃である。
これに対して、酸素が消費された側である中流37mや下流37dでは、選択酸化反応よりもメタネーション反応(発熱反応)が発生し易い。メタネーション反応も、選択酸化反応と同様に、一酸化炭素低減反応である。
選択酸化反応:CO+1/2O2→CO2
メタネーション反応:CO+3H2→CH4+H2O
上記した蒸発部36は水を水蒸気化するため、蒸発部36の運転温度は水の気化熱の影響を受けて、CO浄化部37の温度よりも低く、100℃前後となる。即ち、蒸発部36は、水の気化熱の影響により、比較的低温となりやすい。CO浄化部37が蒸発部36により過度に冷却されると、上記した選択酸化反応およびメタネーション反応が損なわれるおそれがある。特に、メタネーション反応は、良好な活性温度域が150〜300℃であり、蒸発部36の運転温度(約100℃)との温度差が大きいため、過度の冷却は良好なメタネーション反応を損なうおそれがある。この点本実施例によれば、断熱部700は、蒸発部36よりも相対的に高温となるCO浄化部37と蒸発部36との間に配置されている。よってCO浄化部37から蒸発部36への熱の移動を抑制する。このため改質装置が運転されるとき、CO浄化部37における過度の冷却は抑制される。即ち、CO浄化部37における選択酸化反応およびメタネーションの双方における過度の冷却が抑制される。故に、過度の冷却に起因する反応速度の低下が抑制される。よってCO浄化部37において選択酸化反応およびメタネーションが良好に実施される。この結果、改質ガスに含有されている一酸化炭素の濃度を低減させ易い。
殊に本実施例によれば、図1に示すように、断熱部700は、CO浄化部37と蒸発部36との間において、CO浄化部37における中流37mの半分程度、および下流37dに配置されている。このためCO浄化部37においては、中流37mおよび下流37dでは、温度降下が断熱部700の断熱作用により良好に抑制される。前述したように、CO浄化部37においては、酸素濃度が相対的に高い上流37uでは、酸素が消費される選択酸化反応が発生し易い。酸化反応は発熱反応であるため、上流37uでは、発熱量が多くも高温化され易いが、上流37uから蒸発部36への熱の移動が促進されるため、上流37uの触媒温度は選択酸化反応の反応活性温度に保たれる。よって、上流37uにおける選択酸化反応によって改質ガスのCOの大部分は低減される(例えば、CO浄化部入口で0.2〜1%であったCO濃度が10〜500ppmに低減される)。
これに対して、酸素濃度が減少している中流37mおよび下流37dにおいては、酸素が消費されないメタネーション反応が発生し易い。しかも中流37mおよび下流37dではCO濃度が微量になっているため、一酸化炭素の低減量は少なく(例えば、10〜500ppmのCO濃度を10ppmよりも低濃度に低減)、メタネーション反応による発熱量が微量である。
このような中流37mおよび下流37dにおいては、断熱部700の断熱作用によって、CO浄化部37から蒸発部36への熱移動が良好に抑制されている。これにより、中流37mおよび下流37dでは、温度降下が良好に抑制されており、メタネーション反応が良好に行われる。これにより改質ガスに含有されている一酸化炭素が効率よく低減される。実施例1の場合、1kW定格発電時において、上流37uは約150〜180℃、中流37mは約140〜160℃、下流37dは約130〜150℃に保たれている。
更に説明を加えると、本実施例によれば、断熱部700は、CO浄化部37における上流37uには配置されていない。このため、上流37uにおいて、相対的に高温側のCO浄化部37から、相対的に低温側の蒸発部36への熱の移動が促進される。故に、CO浄化部37における上流37mは、蒸発部36により適度に冷却される。故に、選択酸化反応がCO浄化部37における上流37uにおいて良好に行われる。
以上説明したように本実施例によれば、改質ガスに含有されている一酸化炭素に対して選択炭化反応およびメタネーション反応の双方がCO浄化部37において良好に起きる。このため改質ガスに含有されている一酸化炭素が効果的に低減される。
以下、本発明の実施例2について図2を参照して具体的に説明する。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。断熱手段として空洞リング状の空気断熱層750がCO浄化部37と蒸発部36との間に同軸的に配置されている。CO浄化部37の高さ寸法をH1とすると、空気断熱層750の一端部750d(下端部)の高さ位置は、下流37dからCO浄化部37の高さ寸法H1の半分程度に設定されている。
従って図2に示すように、空気断熱層750は、CO浄化部37と蒸発部36との間において、CO浄化部37における中流37mの半分程度、および、下流37dに配置されている。故に、中流37mおよび下流37dの熱が蒸発部36に伝達されることが抑制されている。このため中流37mおよび下流37dにおける温度降下が空気断熱層750の断熱作用により抑制されている。CO浄化部37のうち、酸素濃度が低下している中流側37mおよび下流37dにおいて、メタネーション反応が発生し易い。図2に示すように、空気断熱層750は、CO浄化部37における上流37uには配置されていない。このため、相対的に高温側のCO浄化部37から、相対的に低温側の蒸発部36への熱の移動が促進される。故に、CO浄化部37における上流37uは、蒸発部36により適度に冷却される。従って、上記したメタネーション反応よりも反応活性温度が低い選択酸化反応が上流37uにおいて良好に行われる。上記したように本実施例によれば、CO浄化部37において選択酸化反応およびメタネーション反応の双方が良好に行われ、一酸化炭素が低減される。
以下、本発明の実施例3について図3を参照して具体的に説明する。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。図3に示すように、断熱手段として、セラミックスを基材とする筒形状の断熱部700は、CO浄化部37と蒸発部36との間において、CO浄化部37における下流37dに配置されている。よって下流37dの熱が蒸発部36に伝達されることが抑制されている。このため下流37dの冷却は、断熱部700の断熱作用により良好に抑制される。ここで、CO浄化部37のうち上流37uでは、酸素が消費される。このため、CO浄化部37のうち下流37dでは、酸素濃度が極めて少ない。このように酸素濃度が減少している下流37dにおいて、メタネーション反応が発生し易い。
ここで、断熱部700は、CO浄化部37における上流37uおよび中流37mには配置されていない。このため、上流37uおよび中流37mにおいては、相対的に高温側のCO浄化部37から、相対的に低温側の蒸発部36への熱の移動が促進される。故に、上流37uおよび中流37mは適度に冷却される。故に、上記したメタネーション反応よりも反応活性温度が低い選択酸化反応が上流37uにおいて良好に行われる。上記したように本実施例によれば、CO浄化部37において、選択酸化反応およびメタネーション反応の双方が良好に行われ、一酸化炭素が良好に低減される。
以下、本発明の実施例4について図4を参照して具体的に説明する。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。断熱手段として、空洞状をなす空気断熱層750がCO浄化部37と蒸発部36との間に配置されている。空気断熱層750は、CO浄化部37における下流37dに配置されており、下流37dの過度の冷却を抑制している。故に、CO浄化部37のうち、相対的に酸素濃度が減少している下流37dにおいて、メタネーション反応が発生し易い。
更に図4に示すように、空気断熱層750は、CO浄化部37における上流37uおよび中流37mには配置されていない。このため上流37uおよび中流37mにおいて、相対的に高温側のCO浄化部37から、相対的に低温側の蒸発部36への熱の移動が確保される。故に、CO浄化部37における上流37uおよび中流37mは、蒸発部36により適度に冷却される。よって、上記したメタネーション反応よりも反応活性温度が低い選択酸化反応が上流37uにおいて良好に行われる。
以下、本発明の実施例5について図5を参照して具体的に説明する。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。断熱手段として断熱部700EがCO浄化部37と蒸発部36との間に配置されている。断熱部700Eは、多数の細孔(空気断熱層)をもつ断熱材料で形成されており、CO浄化部37における中流37mの半分、および、下流37dに配置されている。
以下、本発明の実施例6について図6を参照して具体的に説明する。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。断熱手段として断熱部700がCO浄化部37と蒸発部36との間に配置されている。更にCO浄化部37の外周部のうち下流37d付近に対面するようにヒータ37hが設けられている。故に、CO浄化部37のうち、酸素が減少している下流37dにおいて、反応活性温度がより高い一酸化低減反応であるメタネーション反応が発生し易い。ヒータ37hは下流37dおよび中流37mの双方に、または、中流37mのみに配置しても良い。ヒータ37hに代えて断熱材を用いても良い。
以下、本発明の実施例7について図7を参照して具体的に説明する。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。断熱手段として断熱部700がCO浄化部37と蒸発部36との間に配置されている。断熱部700は、下流37d付近に設けられた厚肉部700kと、上流37u付近に設けられた薄肉部700hとを有する。厚肉部700kの厚みは薄肉部700hの厚みよりも厚くされており、CO浄化部37の断熱性が高められている。特に下流37dにおける断熱性が特に高められている。なお、当該厚みは、CO浄化部37の触媒37eの種類、能力に応じて設定できる。
以下、本発明の実施例8について図8を参照して具体的に説明する。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。図8に示すように、燃料電池1は、プロトン伝導性をもつ固体高分子膜10を燃料極11と酸化剤極12とで厚み方向に挟持する膜電極接合体13を複数組み付けて形成されている。固体高分子膜10の材質としては、炭化フッ素系樹脂(例えばパーフルオロスルホン酸樹脂)または炭化水素系樹脂が例示される。燃料電池1としては、シート状の膜電極接合体13を厚み方向に複数積層する方式でも良いし、チューブ状の膜電極接合体13を複数配置する方式でも良い。改質装置2は、燃焼バーナで形成された加熱部として機能する燃焼部30と、燃焼部30により加熱される改質部34とをもつ。改質部34は鉛直方向に沿った中心軸芯をもつ筒形状をなしており、改質用燃料を改質させて改質ガスを生成するものである。改質部34は、燃焼部30に対面する燃焼通路32をもつ。改質部34の回りを包囲するように燃焼通路33が同軸的に形成されている。燃焼通路33に連通するようにこれの外側に燃焼通路35が同軸的に形成されている。燃焼通路33と燃焼通路35との間には、筒状の断熱部31が同軸的に形成されている。更に、燃焼通路35の回りを包囲するように、原料水を蒸発させる蒸発部36が同軸的に形成されている。蒸発部36の回りにCO浄化部37(一酸化炭素低減部)が同軸的に形成されている。蒸発部36とCO浄化部37との間に断熱部700が介在している。
図8に示すように、燃焼部30で加熱される改質部34により、蒸発部36は加熱される。蒸発部36の回りを包囲するように、筒状のCO浄化部37が隣設状態に配置されている。このため、蒸発部36とCO浄化部37とは互いに熱交換される。改質装置2の運転中においては、一般的に、液相状態の水が蒸発する蒸発部36の温度よりもCO浄化部37の温度が高いため、CO浄化部37は蒸発部36に熱を与える。CO浄化部37の外周部は、これを包囲して保温するために、高い断熱性をもつ筒状の断熱材39で覆われている。但し、図8に示すように、CO浄化部37のうち、COシフト部5を経た改質ガスが供給される入口37i付近には、断熱材39が設けられていない。故に断熱材39の下端部39uは入口37iに到達していない。その主たる理由としては、当該改質ガスの温度がCO浄化部37の触媒37eの活性化温度よりもやや高いことがあるため、当該改質ガスを冷やすためである。
更に、図8に示すように、改質装置2は、改質部34の下方に配置された熱交換部4と、熱交換部4の下方に配置されたCOシフト部5と、COシフト部5と熱交換部4との間に配置された電気式のヒータをもつ暖機部47とを備えている。ここで、蒸発部36の下流に熱交換部4が設けられ、熱交換部4の下流にCOシフト部5が設けられている。
COシフト部5は、上記の(2)式に基づいて、水蒸気を利用するシフト反応を促進させ、改質ガスに含まれているCOを低減させる。COシフト部5は通路5iと通路5vと折返部5mとをもつ。COシフト部5の出口5pと酸化用空気通路75とは、第2合流域M2を介して浄化通路400により接続されている。
CO浄化部37は、COシフト部5の下流に配置されており、COシフト部5で浄化された改質ガスに含まれているCOを上記の式(3)に基づいて、酸化させて低減させる酸化反応を促進させるものである。本実施例によれば、改質装置2の運転中にCOシフト部5は、水素リッチとなり還元条件となる。このため、COシフト部5の触媒5eが僅かに酸化しているだけであれば、触媒5eは改質装置の運転中に還元され易い。
しかしCO浄化部37の触媒37eは、改質装置の運転中だけでは還元されにくい。CO浄化部37に酸素が供給されている状態では、CO浄化部37の触媒37eの活性温度域(例えば100〜200℃)が存在する。この温度を超えると、酸化雰囲気では触媒37eの劣化が進行し易いため、200℃を越えないことが好ましいと言われている。これを考慮し、気化熱が奪われる蒸発部36でCO浄化部37を積極的に冷却させる。
一方、酸素が供給されない条件においては、つまり、酸素欠乏雰囲気においては、前記した活性温度領域を上側に越える温度領域に触媒37eが加熱保持されたとしても、劣化が抑えられるばかりか、触媒37eが還元されて再生される。
このようにCO浄化部37に酸素が供給されつつ、改質装置2が通常運転されたとしても、CO浄化部37の触媒37eの還元は、なかなか進行しないため、再生処理を行うこと好ましい。
上記した再生処理において、CO浄化部37の触媒37eの触媒再生温度領域としては、一般的には190℃以上、200℃以上が良い。220℃以上が更に好ましく、250℃以上が更に好ましい。但し、温度は触媒37eの組成によって異なり、限られるものではない。
次に通路系について説明する。図8に示すように、燃料供給源61に弁25aを介して繋がる燃料通路62が設けられている。燃料供給源61の燃料としては気体燃料でも、液体燃料でも、粉化燃料でも良い。具体的には、炭化水素系燃料、アルコール系燃料が例示される。例えば都市ガス、LPG、灯油、メタノール、ジメチルエーテル、ガソリン、バイオガス等が例示される。燃料通路62は、弁25a,ポンプ27aを介して改質部34の燃焼部30に繋がる燃焼用燃料通路62aと、熱交換部4の入口4iにポンプ27b、脱硫器62xおよび弁25bを介して繋がる改質用燃料通路62c(改質用燃料供給部)とをもつ。空気供給源71に繋がる空気通路72(酸素供給部)が設けられている。空気通路72は、ポンプ27cを介して改質部34の燃焼部30に繋がる燃焼用空気通路73と、空気浄化フィルタ72x、ポンプ27dおよび弁25dを介してCO浄化部37の入口37iに繋がる酸化用空気通路75(酸素供給部)とをもつ。
図8に示すように、水タンク81と蒸発部36の入口36iとをポンプ27mおよび弁25mを介して繋ぐ改質水通路82(水供給部)が設けられている。CO浄化部37の出口37pと燃料電池1の燃料極11の入口11iとを弁25e(出口弁)を介して繋ぐアノードガス通路100(改質ガス吐出路)が設けられている。CO浄化部37の出口37pは、CO浄化部37の高さ方向の上部側に形成されている。燃料電池1の燃料極11の出口11pと燃焼部30とを弁25fを介して繋ぐオフガス通路110が設けられている。オフガス通路110は発電反応後のアノードオフガスを排出させる。オフガス通路110とアノードガス通路100とを弁25h(出口弁)を介して繋ぐバイパス通路150が設けられている。
図8に示すように、空気供給源71と燃料電池1の酸化剤極12の入口12iにポンプ27kおよび弁25kを介して連通するカソードガス通路200が設けられている。図8に示すように、改質部34で燃焼された燃焼排ガスを外部に放出させる燃焼排ガス通路250が設けられている。改質装置2の蒸発部36の出口36pと改質用燃料通路62cとを第1合流域M1を介して繋ぐ水蒸気通路300が設けられている。水蒸気通路300の上端部300eは蒸発部36の出口36pに繋がる。水蒸気通路300の下端部300fは合流域M1に繋がる。ポンプ27a,27b,27c,27d,27k,27mは流体搬送要素として機能する。
図8に示すように、COシフト部5の出口5pとCO浄化部37の入口37iとは、浄化通路400で接続されている。COシフト部5の出口5pから吐出された改質ガス(水素を主要成分とし、一酸化炭素を含有)は、浄化通路400を上向きに矢印W2方向に流れ、第2合流域M2を経てCO浄化部37の入口37iに供給される。入口37iは、CO浄化部37の高さ方向の下部側に形成されている。
次に改質装置2を起動させるときについて図8を参照して説明する。この場合、ポンプ27cにより燃焼用空気通路73を介して燃焼用空気を改質部34の燃焼部30に供給する。また、弁25aおよびポンプ27aにより燃焼用燃料通路62を介してガス状の燃焼用燃料(燃焼性燃料)を改質部34の燃焼部30に供給する。これにより燃焼部30が着火されて加熱され、ひいては改質部34が改質反応に適するように加熱される。改質部34および外側部35と共に蒸発部36およびCO浄化部37も、高温に加熱される。
その後、水タンク81および改質水通路82からポンプ27mおよび弁25mを介して、改質水(改質反応前の水)が蒸発部36の入口36iに供給される。改質水は改質装置2の高温の蒸発部36において水蒸気化される。生成された水蒸気は、蒸発部36の出口36pから水蒸気通路300を経て第1合流域M1に到達する。これに対して、改質用燃料は弁25a,ポンプ27b,弁25bにより、脱硫器62x、改質用燃料通路62cおよび第1合流域M1を経て熱交換部4の入口4iに供給される。第1合流域M1において、改質用燃料通路62cの改質用燃料と水蒸気通路300の水蒸気とが合流して混合される。合流した混合流体が熱交換部4の入口4iに供給される。
混合流体は熱交換部4の低温側の第1通路4aを通過する。このとき熱交換部4の高温側の第2通路4cを流れる高温の改質ガスと熱交換する。このため、改質反応前の混合流体が加熱される。混合流体は改質部34の外通路34pに流入し、矢印A1方向に流れ、折返部34mを経て内通路34iに流入し、矢印A2方向に流れる。このとき水蒸気(または凝縮水)および改質用燃料が混合した混合流体は、上記した(1)に示す改質反応により、水素リッチな改質ガスとなる。この改質ガスは一酸化炭素を含む。
更に、改質反応を経た高温の改質ガスは、改質部34から熱交換部4に流入する。即ち、高温の改質ガスは、改質部34から熱交換部4の高温側の第2通路4cを通過することにより、低温側の第1通路4aの混合流体を加熱する。更に、改質ガスは、暖機部47を経て、COシフト部5の入口5iからCOシフト部5の内部に流入する。COシフト部5においては、上記した式(2)に示すように、水蒸気を利用したシフト反応が行われる。これにより改質ガスに含まれている一酸化炭素が低減され、改質ガスは浄化される。
更に、COシフト部5において浄化された改質ガスは、COシフト部5の出口5pから浄化通路400を経て矢印W2方向に流れ、第2合流域M2に至る。更に改質ガスは、酸化用空気通路75(酸素供給部)の酸化用空気(酸素成分,CO浄化部37における選択反応に使用される選択酸化用空気)と第2合流域M2において合流する。そして、合流した改質ガスは、CO浄化部37の下部に形成されている入口37iから、CO浄化部37内に流入する。CO浄化部37においては、上記した式(3)に示すように、酸素を利用した酸化反応(CO+1/2O2→CO2)が行われる。この結果、改質ガスに含まれているCOが浄化されて更に低減される。
このように浄化された改質ガスは、CO浄化部37の出口37pからアノードガスとして、アノードガス通路100,弁25eを経て燃料電池1の燃料極11の入口11iに供給される。カソードガスとして機能する空気は、ポンプ27k,弁25kによりカソ−ドガス通路200を経て燃料電池1の酸化剤極12の入口12iに供給される。これにより燃料電池1において発電反応が発生し、電気エネルギが生成される。アノードガスの発電反応後のオフガス(燃料電池1から排出されたガス)は、発電反応が行われなかった水素を含むことがある。このためオフガスはオフガス通路110を経て改質部34の燃焼部30に供給されて燃焼され、燃焼部30の熱源となる。
図8に示すように、COシフト部5のうち上流側(通路5iの入口側)の温度T11を検知するCOシフト部温度検知器55が設けられている。COシフト部5のうち折返部5m付近の温度T31を検知するCOシフト部温度検知器39が設けられている。CO浄化部37のうち上流側の温度T12を検知するCO低減部温度検知器38が設けられている。更に、改質部34の出口側の温度T1を検知する改質部温度検知器31tが設けられている。水蒸気と改質用燃料とが合流する第1合流域M1の温度T2を検知する温度検知器65が設けられている。
さて本実施例によれば、一酸化炭素を含む水素を主要成分とする改質ガスが、改質装置の運転中により生成される。COシフト部5の温度T11が低くてこれの活性温度域よりも低い場合には、CO除去性が充分でないため、制御装置500は、暖機部47のヒータによりCOシフト部5を昇温させる。これによりCOシフト部5を活性温度域に維持させる。
COシフト部温度検知器55,39が検知したCOシフト部5の温度T11,T31の信号と、CO低減部温度検知器38が検知したCO浄化部37の温度T12の信号と、改質部温度検知器31tが検知した改質部34の温度T1の信号と、温度検知器65が検知した第1合流域M1の温度T2の信号が、それぞれ、制御装置500に入力される。制御装置500は、酸化用空気通路75(酸素供給部)からCO浄化部37に供給される空気(酸素含有ガス,酸素成分)の流量を制御する。これにより、CO浄化部37の上流に配設されているCOシフト部5の温度が制御される。
以下、本発明の実施例9について図9を参照して具体的に説明する。図9に示すように、CO浄化部37は、収容室370をもつ基体371と、収容室370を第1室372および第2室373に仕切る仕切壁374と、第1室372に配置された触媒37e(上記した選択酸化反応およびメタネーション反応に適する触媒)を担持する触媒担持部で形成された浄化部本体375と、浄化部本体375の下側に形成された通気孔376をもつ第1板部材377と、第1板部材377の通気孔376に連通するように浄化部本体375の下側に位置する第1凹部378と、浄化部本体375の上側に形成された通気孔376をもつ第2板部材379と、第2板部材379の通気孔376に連通するように浄化部本体375の上側に位置する第2凹部380とを備えている。
図9に示すように、高い断熱性をもつ断熱部700は、浄化部本体375と蒸発部36との間に位置するように第2室373に配置されている。第1板部材377の通気孔376、第2板部材379の通気孔376、第1凹部378および第2凹部380により通気性が確保される。本実施例においても実施例1と同様に、CO浄化部37において選択酸化反応およびメタネーション反応の双方が良好に行われ、一酸化炭素が低減される。図9に示すように、基体371の内部において、浄化部本体375の下面に対向する第1凹部378が形成され、浄化部本体375の上面に対向する第2凹部380が形成されているため、改質ガスを浄化部本体375に通気させる際において、通気性の均一性を高めるのに有利である。
(試験例)
上記した実施例9に係る改質装置を用いて試験を行った。第1凹部378の幅K1(図9参照)を25ミリメートルとし、第2凹部380の幅K2(図9参照)を20ミリメートルとし、第1板部材377から断熱部700の一端部700dの下面の高さをXとした。そして浄化部本体375において、これの上流37uから下流37dに向かうにつれて、点C1、点C2、点C3、点C4を上方向に向けて順に設定した。点C1は第1板部材377の上面377aから上方に5ミリメートルの位置、点C2は第1板部材377の上面377aから上方に25ミリメートルの位置、点C3は第1板部材377の上面377aから上方に45ミリメートルの位置、点C4は第1板部材377の上面377aから上方に65ミリメートルの位置とした。第1板部材377と第2板部材379との間隔を70ミリメートルに設定した。
そして第1板部材377から断熱部700の下面である一端部700dまでの高さ寸法X(図9参照)について、当該高さ寸法Xを5ミリメートルとした場合と、当該高さ寸法Xを10ミリメートルとした場合とについて、点C1、点C2、点C3、点C4における温度をそれぞれ測定した。測定結果を表1に示す。表1から理解できるように、点C1、点C2、点C3、点C4に進むにつれて、即ち、浄化部本体375の上流37uから下流37dに向かうにつれて、温度は次第に下降する傾向が見られた。ここで、断熱性が高い断熱部700が設けられているため、浄化部本体375における温度の下降が抑制されている。上流側では選択酸化反応に適する温度が得られる。下流側ではメタネーション反応に適する温度が得られる。
また図10は、X=5mmにおいて、CO浄化部37の浄化部本体375における点C1の温度変化を示す。この場合、図10には、起動開始時の温度、起動終了時の温度、発電開始時の温度、発電終了時の温度、発電運転の停止操作中における最高温度がそれぞれ示されている。
図11は、X=10mmにおいて、CO浄化部37の浄化部本体375における点C1の温度変化を示す。この場合、図11には、起動開始時の温度、起動終了時の温度、発電開始時の温度、発電終了時の温度、発電運転の停止操作中における最高温度がそれぞれ示されている。
その他、本発明は上記した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。例えば、実施例1では、CO浄化部37において、上流37uは下部に位置し、下流37dは上部に位置しているが、これに限らず、上流37uは上部に位置し、下流37dは下部に位置していても良い。実施例1では、CO浄化部37と蒸発部36との間に筒形状の断熱部700が同軸的に配置されているが、同軸でなくても良い。断熱部700は蒸発部36の外周部を連続的に1周するように形成されているが、これに限らず、断熱部は蒸発部36の外周部を断続的に1周するように形成されていても良い。各触媒は上記したものに限定されるものではない。
図1に示すように、シフト部5が改質部34に一体的に連設されているが、これに限らず、シフト部5は改質部34から分離していても良い。図1に示すように、改質部34がCOシフト部5の上方に配置されているが、これに限らず、改質部34がCOシフト部5の下方または横方に配置されていても良い。CO浄化部37の上部が蒸発部36の上部よりも上方に突出していても良い。
本発明は燃料電池システム等に使用される改質装置に利用することができる。
実施例1に係り、改質装置のシステム図である。
実施例2に係り、改質装置のシステム図である。
実施例3に係り、改質装置のシステム図である。
実施例4に係り、改質装置のシステム図である。
実施例5に係り、改質装置のシステム図である。
実施例6に係り、改質装置のシステム図である。
実施例7に係り、改質装置のシステム図である。
実施例8に係り、改質装置のシステム図である。
実施例9に係り、改質装置のシステム図である。
実施例9に係る改質装置を用いて試験したときにおける時間と温度との関係を示すグラフである。
実施例9に係る改質装置を用いて試験したときにおける時間と温度との関係を示すグラフである。
符号の説明
1は燃料電池、2は改質装置、30は燃焼部、34は改質部、36は蒸発部、37はCO浄化部(一酸化炭素低減部)、4は熱交換部、5はCOシフト部、500は制御装置、700は断熱部(断熱手段)、750は空気断熱層(断熱手段)を示す。