JP5201505B2 - 屋根材の縁切り材 - Google Patents

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本発明は、家屋の屋根に葺かれる板状の屋根材の塗装後、上下屋根材の重なり部に挿入され、重なり部の塗膜の切断し、重なり部に常時空間を形成し、屋根材間に侵入した雨水を積極的に排水させる屋根材の縁切り材に関する発明である。
従来、屋根材、特に平板スレート屋根材は、図9に示すように、屋根の野地板14の上に、防水シート12を貼り、軒側端部から下屋根材10bを釘などの留具13で固定し、その上に上屋根材10aを重ねながら屋根上部に向け貼っていた。
しかし、家屋の築年数が経過すると、屋根材の塗膜11が劣化するとともに、屋根材の下端部が反り返り、防水性が失われるため、屋根材の葺き替え、或いは屋根材の再塗装が必要であった。
再塗装の際、屋根材の単に塗装を行うと、塗料により上下屋根材10a、10bの重なり部10cが塗膜11で密閉され、雨水などの水分の排水性が悪化する。その結果、滞留した雨水等が長期間放置され、野地板14を腐蝕、破損させ、さらには天井の雨漏りに繋がる。
それを改善するため、屋根材の重なり部10cの塗膜11によるふさがり部分を切断する特許文献1〜3に記載の屋根材の縁切り部材が開発されている。
これら縁切り部材は、屋根材表面の塗装後、重なり部10cに挿入することにより、雨水の排水性を確保するものである。
例えば、特許文献3の縁切り部材15は、図10に示すように、屋根の補修のため再塗装した後、屋根材の重なり部10cに打ち込んだまま使用する縁切り部材であって、前記屋根材の重なり部10cに挿入する多角形状の板状をなす本体16と、前記本体16には該本体16が屋根の重なり部10cから離脱しないため本体16の底部に弾性体に凹凸形状を形成した収納部16cに収納可能な脱離防止片16aおよび離脱防止用凸形状部と、前記本体16の一部に屋根材の重なり部10cに侵入してくる雨水等を溜める排水溜り用空間16bと、前記本体16の手前部に所定の位置決めをするストッパー17と、前記ストッパー17の下部に前記空間16bに溜まった雨水等を排水する排水溝とからなることを特徴とする。
図11に、特許文献3に記載の縁切り部材15の屋根材への使用状態を示した。重なり部10cに縁切り部材15を挿入すると、重なり部10cに、常時空間を形成し、屋根材間に侵入した雨水を排水溝17aから積極的に排水できるというものである。排水溝17aは、ストッパー17と、本体16が段差17bを設けた連設されるため形成される。
特開2005−120801号公報 特開2006−125173号公報 特開2007−051521号公報
しかしながら、特許文献3に記載の屋根材の縁切り部材15では、上下屋根材10a、10b間の雨水を積極的に排水することができるものの、縁切り部材15周辺に、上下屋根材10a、10bと縁切り部材15との間に、雨水が滞留し続けるとの現象がみられた。
その原因を探求したところ、縁切り部材15が、板状の本体16を有すること、ストッパー17が本体16に対して、垂直に起立していることに起因することの結論を得た。
そこで、本発明は、屋根材を長期期間使用し劣化が著しくなり、屋根材の重なり部10cの空間が増しても、縁切り材が離脱せず、更に縁切り材の周囲に滞留した雨水を積極的に排水し、また屋根材の重なり部10cに挿入された縁切り材の外周部に人が足で踏む等の荷重が加わっても屋根材の破損が発生しない縁切り材を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、上下屋根材10a、10bの重なり部10cに挿入され、前記重なり部10cに常時空間を形成し、屋根材10間に侵入した雨水を排水させる屋根材の縁切り材であって、上屋根材10aの下端部に引っ掛り、縁切り材の位置決めをするストッパー2と、前記ストッパー2の底部に、上屋根材10a下端部側のストッパー面と略垂直になるよう固定された挿入部と、前記挿入部の反挿入側端部に連設した突出部とからなることを特徴とする屋根材の縁切り材の構成とした。
さらに、前記ストッパー2と挿入部とが、段差9を設け排水溝を形成して固定されたことを特徴とする前記屋根材の縁切り材の構成、前記突出部が、下屋根材10b表面の上方に向け、下屋根材10b面に対して角度45°未満の範囲で屈曲して、前記挿入部の反挿入側端部に連設したことを特徴とする前記屋根材の縁切り材の構成、前記挿入部を、前記ストッパー2の左右両端部に、間隔を開け2本設けたことを特徴とする前記何れかに記載の屋根材の縁切り材構成とした。
また、前記挿入部に、脱離防止片を設けたことを特徴とする前記何れかに記載の屋根材の縁切り材の構成、前記左右挿入部3、4の間に、前記左右挿入部3、4と間隔を開け、中央挿入部5を設けたことを特徴とする前記屋根材の縁切り材の構成、前記脱離防止片を設けた挿入部3、4には、前記脱離防止片3a、4aが上下屋根材10a、10bに圧縮され変形した際に、前記脱離防止片3a、4aを収納する空間である収納部3f、4fが設けられ、かつ、前記脱離防止片3a、4aは、前記収納部3f、4f内部の挿入先端側に一端が接続し、他端が下屋根材10b側に斜めに突出すると共に、脱離防止片3a、4aの底面に下屋根材10b方向に対して係止力を発揮する係止突起3e、4eを形成したことを特徴とする前記屋根材の縁切り材の構成とした。
加えて、前記挿入部3、4、5の先端部3c、4c、5aが、挿入方向に向かって薄くなるテーパー状であることを特徴とする前記何れかに記載の屋根材の縁切り材の構成とした。
本発明は以上の構成であるから以下の効果を有する。先ず、特許文献3のように板状の本体16を採用せず、各挿入部の反挿入端部に突出部を設けたことで、縁切り材周辺に雨水が滞留することがない。さらに、突出部が、下屋根材表面の上方に向け、下屋根材面に対して角度45°未満の範囲で屈曲して、前記挿入部の反挿入側端部に連設するため、より一層縁切り材周辺に雨水を滞留させることなく、排出させることができる。
また、ストッパーと挿入部とが、段差を設け排水溝を形成しているため、積極的に屋根材間の雨水を排水させることができる。毛細管現象により、雨水等が野地板14に浸入し腐蝕、破損させることも排除できる。
挿入部を、それぞれ間隔を開け、2本、或いは3本とすることで、特許文献3のように、板状の本体16を構成せずとも、所定の長さのストッパーを確保し、挿入部を重なり部10c打ち込め、さらに縁切り部周辺に滞留する雨水の量を極めて少なくすることができる。
挿入部に設けた弾性体からなる脱離防止片により、屋根材が経年変化で屋根材間の空間が所定量より増しても、縁切り材は当初の部位に止まり、常時雨水等の排水を行い、野地板14等の腐蝕、破損を防止する。
挿入部の先端部が、挿入方向に向かって薄くなるテーパー状であるので、挿入部を屋根材の重なり部10cに挿入し易く、また各挿入部が細い棒状であるため、外周部に、人等が足で踏む等、局部的に荷重が加わっても屋根材が破損することを防止できる。
以下、添付図面に基づいて、本発明である屋根材の縁切り材について詳細に説明する。
図1は本発明である屋根材の縁切り材の正面(A)及び背面(B)図、図2が平面図、図3が底面図、図4は右側面図及び図2A−A位断面図、図5は図2B−B位断面図である。
本発明の一例である縁切り材1は、上屋根材10aの下端部に引っ掛かり、縁切り材の挿入位置の位置決めをするストッパー2と、前記ストッパー2の底部に、上屋根材10a端部側のストッパー2面と略垂直になるようそれぞれ間隔を開け固定された左挿入部3、右挿入部4、中央挿入部5と、前記各挿入部3、4、5の反挿入側端部に連設した左突出部6、右突出部7、中央突出部8とからなる。
そのようにしてなる当該縁切り材1は、上下屋根材10a、10bの重なり部10cに挿入され、前記重なり部10cに常時空間を形成し、屋根材10間に侵入した雨水を排水させると共に、縁切り材1周辺に滞留する雨水を極めて少なくする。
また、前記ストッパー2と左右及び中央挿入部3、4、5とは、段差9を設け固定され、それにより下屋根材10と縁切り材1との間に雨水の排出口となる排水溝3b、4bを形成する。縁切り材1の近傍に集中した雨水等は、その自重により、排水溝3b、4bより、下屋根材10b上を流下し、排出される。
左右及び中央突出部6、7、8は、それぞれ下屋根材10b表面の上方に向け、下屋根材10b面に対して角度15°(図4(B)θ)屈曲し、それぞれ各挿入部3、4、5に連設している。角度θは、45°未満の範囲で屈曲して連設されていればよい。より好ましくは、角度θは5°以上30°未満の範囲で屈曲していること好ましい。
角度θが、前記範囲で屈曲して穿設されておれば、雨水は、各突出部6、7,8下面と、下屋根材10bの表面との間に毛細管現象及び表面張力で強制的に排出され、次々に蒸発し、縁切り材1周辺に長期滞留することはない。
一方、角度45°以上では、毛細管現象及び表面張力が十分発揮されず、各挿入部6、7,8と下屋根材10bの表面との間に滞留した雨水を重なり部10cから外部に排出することができない。従って、雨水は、各挿入部と下屋根材との間に、長期間滞留し、屋根材10下部の腐蝕に繋がる。
左右及び中央挿入部3、4、5の先端部3c、4c、5aは、挿入方向に向かって薄くなるテーパー状をなし、重なり部10cに挿入し易くなっている。また、左右及び中央挿入部3、4、5の底面には、三角、四角、丸等の複数個の脱離防止用凸部を設けもよい。その断面形状は、四角形状でもよいが、楔形状の方が離脱防止効果をより高める。
左右挿入部3、4には、脱離防止片3a、4aが設けられている。脱離防止片3aを設けた左挿入部3には、脱離防止片3aが上下屋根材10a、10bに圧縮され、変形した際に、前記脱離防止片3aを収納する空間である収納部3fが設けられている。なお、中央挿入部5にも、同様に収納部、脱離防止片を設けてもよいが、左右挿入部3、4の2箇所に脱離防止片3a、4aを設けるだけでも十分脱離防止効果を発揮する。
脱離防止片3aは、前記収納部3f内部の挿入先端側に一端が接続し、他端が下屋根材10b側に斜めに突出すると共に、脱離防止片3aの底面には下屋根材10b方向に対して係止力を発揮する係止突起3eが形成されている。脱離防止片4aも同様である。
なお、脱離防止片3a、4aはここでは、下屋根材側に斜めに突出しているが、上屋根材10a側に突出させてもよい。また、脱離防止片は、これら形状に限定されず、さらには、弾性体として上下屋根材10a、10bに係止されるものであればよい。
屋根材10は、約7〜8 年経過した時点で再塗装の時期となる。再塗装後、屋根材10の重なり部10cに雨水等が滞留しないように、本縁切り材1が挿入される。しかし、再塗装して、更に長期間経過すると、屋根材の劣化により、屋根材10の重なり部10cに隙間が発生し、その値は増加傾向となる。
屋根材10は、使用後10年を経過すると高温、多湿と悪い環境の地域では、屋根材10の重なり部10cの隙間は7〜8mm程度になることがあるが、脱離防止片3a、3bにより縁切り材1は脱落しない。
本縁切り材1は、屋根の重なり部10cの隙間が想定以上に増加しても、脱離防止片3a、4aの弾性により、屋根材10の重なり部10cの隙間に対し、充分追従できるよう設定されているので、離脱することはない。
一般的なスレート屋根材10の場合、縁切り材1の各構成の大きさについては概ね次の通りで十分雨水の排出作用を発揮する。ストッパー2の屋根材10と水平方向の長さ(横)は5.5mm、屋根材からの垂直方向の長さ(高さ)は6mm、厚みは2mm程度でよい。また各挿入部の挿入長は22mm、幅6mm、テーパー状でない部分の厚さは2mm程度、突出部の突出長はストッパー2から5mm程度でよい。
このようなサイズであれば、屋根材10の縁切り、上下屋根材10a、10b間への挿入、さらに雨水の排水機能も十分発揮することができ、さらに加重による屋根材の破損もない。
縁切り材1の素材としては、長期使用に対する腐蝕性、加工の容易性の観点から、樹脂系素材が好ましい。
図6は、本発明である屋根材の縁切り材の使用状態図である。上下に位置する各屋根材10の重なり部10cに、屋根材1枚につき、縁切り材1を1〜3個程度挿入する。特に、上屋根材同士が接合する部分に挿入すると、屋根材10間に侵入した雨水を効率よく排出することができる。
尚、屋根材10の重なり部10cに縁切り材1を挿入するには、縁切り材1の先端部3c、4c、5aを屋根材10の重なり部1 0cに少量差し入れ、その後手動あるいは冶具でストッパー2の反挿入側面に荷重をかけることで容易に挿入ができる。
図7は本発明である屋根材の縁切り材の使用状態図6C−C位断面図、図8は本発明である屋根材の縁切り材の使用状態図6における縁切り材図2B−B断面に相当する断面図である。
縁切り材1を重なり部10cに挿入すると、上下屋根材10a、10bからの圧力で、脱離防止片4a(3a)は収納部4f(3f)に収納されつつ、その弾性力及び係止突起4e(3e)によって、下屋根材10bに係止し、縁切り材1を重なり部10cに留まる。
また、図8で明らかなように、ストッパー2と下屋根材10bとの間に排水溝4b(3b)が開口しているため、雨水を上下屋根材10a、10bの間から外部に排出することができる。さらに、各挿入部近傍に集中した雨水も、各突出部と下屋根材10bとの間に、毛細管現象及び表面張力により、上下屋根材10a、10b間から引き出される。これにより、より積極的に、雨水を排出し、縁切り材1近傍に集中した僅かな雨水をも排出することができる。
さらに、本発明である縁切り材1は、2本、3本又はそれ以上の挿入部をストッパー2底部に間隔を開け備えるため、塗膜11の縁切り及び屋根材10間の雨水を排出する共に、屋根材10の重なり部10cに挿入され、直上に人が足等で踏む等の過度の荷重が加わったとしても、屋根材10が亀裂、破損することなく、雨水等の浸入により野地板14の腐蝕、破損を防止する。
本発明である屋根材の縁切り材の正面及び背面図である。 本発明である屋根材の縁切り材の平面図である。 本発明である屋根材の縁切り材の底面図である。 本発明である屋根材の縁切り材の右側面及び図2A−A位断面図である。 本発明である屋根材の縁切り材の図2B−B位断面図である。 本発明である屋根材の縁切り材の使用状態図である。 本発明である屋根材の縁切り材の使用状態図6C−C位断面図である。 本発明である屋根材の縁切り材の使用状態図6における縁切り材図2B−B断面に相当する断面図である。 再塗装後の屋根材の断面図である。 従来の縁切り部材の斜視図である。 従来の縁切り部材の使用状態の断面図である。
符号の説明
1 縁切り材
2 ストッパー
3 左挿入部
3a 脱離防止片
3b 排水溝
3c 先端部
3e 係止突起
3f 収納部
4 右挿入部
4a 脱離防止片
4b 排水溝
4c 先端部
4e 係止突起
4f 収納部
5 中央挿入部
5a 先端部
6 左突出部
7 右突出部
8 中央突出部
9 段差
10 屋根材
10a 上屋根材
10b 下屋根材
10c 重なり部
11 塗膜
12 防水シート
13 留具
14 野地板
15 縁切り部材
16 本体
16a 脱離防止片
16b 排水溜り用空間
16c 収納部
17 ストッパー
17a 排水溝
17b 段差

Claims (8)

  1. 上下屋根材の重なり部に挿入され、前記重なり部に常時空間を形成し、屋根材間に侵入した雨水を排水させる屋根材の縁切り材であって、上屋根材の下端部に引っ掛り、縁切り材の位置決めをするストッパーと、前記ストッパーの底部に、上屋根材下端部側のストッパー面と略垂直になるよう固定された挿入部と、前記挿入部の反挿入側端部に連設した突出部とからなることを特徴とする屋根材の縁切り材。
  2. 前記ストッパーと挿入部とが、段差を設け排水溝を形成して固定されたことを特徴とする
    請求項1に記載の屋根材の縁切り材。
  3. 前記突出部が、下屋根材表面の上方に向け、下屋根材面に対して角度45°未満の範囲で屈曲して、前記挿入部の反挿入側端部に連設したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の屋根材の縁切り材。
  4. 前記挿入部を、前記ストッパーの左右両端部に、間隔を開け2本設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の屋根材の縁切り材。
  5. 前記挿入部に、脱離防止片を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の屋根材の縁切り材。
  6. 前記左右挿入部の間に、前記左右挿入部と間隔を開け、中央挿入部を設けたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の屋根材の縁切り材。
  7. 前記脱離防止片を設けた挿入部には、前記脱離防止片が上下屋根材に圧縮され変形した際に、前記脱離防止片を収納する空間である収納部が設けられ、かつ、前記脱離防止片は、前記収納部内部の挿入先端側に一端が接続し、他端が下屋根材側に斜めに突出すると共に、脱離防止片の底面に下屋根材方向に対して係止力を発揮する係止突起を形成したことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の屋根材の縁切り材。
  8. 前記挿入部の先端部が、挿入方向に向かって薄くなるテーパー状であることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の屋根材の縁切り材。
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