JP5201440B2 - 車両 - Google Patents
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Description
そして、車体の傾斜角に応じて、カウンタウェイト(バランサ)を移動させることにより、姿勢制御を行うようにしている。
また、加減速時において、車体(被倒立支持部)には、加速度に伴う慣性力と駆動輪の反トルクが作用するので、車体のバランスを保つためには車体の重心を加速度方向に移動させる必要がある。
一般に、バランサの質量は車体に比べて小さく(姿勢制御のために質量を増やせば燃費が低下する)、移動距離も限られているため、バランサ移動による重心移動量は相対的に小さい。このため、高加減速時において車体のバランスを保つためには、バランサを移動させたとしても、更に、車体を大きく傾ける必要がある。一方、加速度に対応するため又は車体傾斜を抑えるために、バランサを大きくした場合、車体に対する質量が大きくなるので、車体の剛性を高める必要が生じてくる。その結果、車両全体の重量増加、車体の大型化を招くとともに燃費が低下するなどの問題が出てくるので現実的ではない。
例えば、バランサを使わない場合、加速度0.4Gに対して車体を20度以上前方に傾ける必要がある。
このような車体傾斜に伴い、急加速や急減速の際には、搭乗者も大きく傾ける必要があり、搭乗者の視界も大きく上下に動くため、乗り心地が悪いという問題がある。
(2)請求項2に記載の発明では、駆動輪と、前記駆動輪の回転軸に回動可能に支持された車体と、前記車体に相対移動可能に配設された搭乗部と、目標走行状態を取得する目標取得手段と、バランサと、前記バランサを移動させるバランサ移動機構と、前記目標走行状態に応じて、前記回転軸に対する車体の回動と、前記バランサ移動機構による前記バランサの移動と、前記車体に対する前記搭乗部の移動により、前記車体の重心を調整しながら走行を制御する走行制御手段と、自車両を操作する操作部材の操作状態から、目標加速度を取得する目標加速度取得手段と、を備え、前記目標取得手段は、前記目標加速度を目標走行状態として取得し、前記走行制御手段は、前記取得した目標加速度が所定の閾値未満の場合、前記車体の傾斜と前記バランサの移動により、前記取得した目標加速度が所定の閾値以上の場合、当該目標加速度の向きに応じた、前記バランサが移動可能な移動限界位置に固定し、前記車体の傾斜と前記搭乗部の移動により、前記車体の重心を調整しながら走行を制御する、ことを特徴とする車両を提供する。
(3)請求項3に記載の発明では、駆動輪と、前記駆動輪の回転軸に回動可能に支持された車体と、前記車体に相対移動可能に配設された搭乗部と、目標走行状態を取得する目標取得手段と、前記目標走行状態に応じて、前記回転軸に対する車体の回動と前記車体に対する前記搭乗部の移動により、前記車体の重心を調整しながら走行を制御する走行制御手段と、前記搭乗部にかかる重量体を含む前記搭乗部の質量を取得する質量取得手段と、を備え、前記走行制御手段は、前記質量取得手段によって取得した搭乗部の質量に応じて、前記車体の重心を調整しながら走行を制御することを特徴とする車両を提供する。
(4)請求項4に記載の発明では、前記走行制御手段は、前記取得した目標走行状態に応じて、前記駆動輪の駆動トルクと、前記搭乗部を移動させる移動推力を決定する決定手段と、前記決定手段で決定した駆動トルクを前記駆動輪に与える駆動手段と、前記決定手段で決定した移動推力を前記搭乗部に与える搭乗部移動手段と、を有することを特徴とする請求項2又は請求項3記載の車両を提供する。
(5)請求項5に記載の発明では、前記目標走行状態に応じて、前記車体の回動による目標傾斜角を決定する目標傾斜角決定手段と、前記目標走行状態と前記目標傾斜角に基づいて、前記搭乗部を移動させる目標位置を決定する目標位置決定手段と、を備え、前記走行制御手段は、前記目標走行状態と、前記目標傾斜角、前記目標位置に応じて、前記車体の回動と前記乗部の移動により、前記車体の重心を調整しながら走行を制御することを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の車両を提供する。
(6)請求項6に記載の発明では、前記目標走行状態に応じて、前記車体の回動による目標傾斜角を決定する目標傾斜角決定手段と、前記目標走行状態と前記目標傾斜角に基づいて、前記搭乗部を移動させる目標位置を決定する目標位置決定手段と、前記車体の傾斜角を検出する傾斜角検出手段と、前記搭乗部の搭乗部位置を検出する位置検出手段と、を備え、前記決定手段は、前記傾斜角検出手段により検出した車体の傾斜角と前記目標傾斜角決定手段により決定した車体の目標傾斜角に基づいて前記駆動輪の駆動トルクを決定し、前記位置検出手段により検出した搭乗部位置と前記目標位置決定手段により決定した搭乗部の目標位置に基づいて前記搭乗部の移動推力を決定する、ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1の請求項に記載の車両を提供する。
(7)請求項7に記載の発明では、前記目標走行状態に応じて、前記車体の回動による目標傾斜角を決定する目標傾斜角決定手段と、前記目標走行状態と前記目標傾斜角に基づいて、前記搭乗部を移動させる目標位置を決定する目標位置決定手段と、前記車体の傾斜角を検出する傾斜検出手段と、前記搭乗部の搭乗部位置を検出する位置検出手段と、前記目標傾斜角に基づいて前記駆動輪のフィードフォワード駆動トルクと、前記搭乗部の目標位置に基づいて前記搭乗部のフィードフォワード移動推力と、を決定するフィードフォワード出力決定手段と、前記目標傾斜角決定手段により決定した目標傾斜角と前記傾斜角検出手段により検出した車体の傾斜角との偏差から前記駆動輪のフィードバック駆動トルクと、前記目標位置決定手段により決定した目標位置と前記傾斜検出手段により検出した搭乗部位置との偏差から前記搭乗部のフィードバック移動推力と、を決定するフィードバック出力決定手段と、を備え、前記決定手段は、前記フィードフォワード駆動トルクとフィードバック駆動トルクとの和から前記駆動輪の駆動トルクを決定し、前記フィードフォワード移動推力と前記フィードバック移動推力との和から前記搭乗部の移動推力を決定する、ことを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の車両を提供する。
(8)請求項8に記載の発明では、自車両を操作する操作部材の操作状態から、目標加速度を取得する目標加速度取得手段と、を備え、前記目標取得手段は、前記目標加速度を目標走行状態として取得することを特徴とする請求項1、請求項3、又は請求項7に記載の車両を提供する。
請求項1、請求項4記載の発明では、目標走行状態に応じて、駆動輪の駆動トルクと搭乗部を移動させる移動推力を決定し、駆動トルクを駆動輪に与え、移動推力を搭乗部に与えることで、車体傾斜量と搭乗部位置を最適化することができる。
請求項1記載の発明では、体感加速度を指定可能にすることで、搭乗者の「好み」に合わせて、体感加速度を定量的に調整することができる。
請求項2記載の発明では、自車両を操作する操作部材の操作状態から目標状態としての目標加速度を取得するので、搭乗者の要求する加速要求に対応しつつ、車体の傾斜角を小さく抑えた走行を実現することができる。
また請求項2記載の発明では、回転軸に対する車体の回動と、車体に対する搭乗部の移動に加えて、バランサを移動することにより、車体の重心を調整をより細かく制御することができる。
また請求項2記載の発明では、目標加速度が所定の閾値未満の場合に車体の傾斜とバランサの移動により車体の重心を調整するので、低加速度に対して搭乗部を動かすことなく、かつ、小さな車体傾斜で、搭乗者に適切な加速度を感じさせることができる。
請求項3記載の発明では、搭乗部にかかる重量体を含む搭乗部の質量を取得し、取得した搭乗部の質量に応じて、車体の重心を調整しながら走行を制御するので、目標とする車両運動、車体姿勢に対する定常偏差を極力抑え、適切な制御を行い、姿勢制御の安定性向上、精度向上を実現することができる。
請求項5記載の発明では、車体の目標傾斜角に応じて搭乗部の目標位置と駆動トルクを決定することで、車体傾斜角を一定に保ったままの速度調整が可能となり、搭乗者の乗り心地を優先した目標値決定及び制御を行うことができる。
請求項6記載の発明では、車体の傾斜制御と搭乗部の位置制御を実測値と目標値に基づいて行うので、より正確に車体の重心調整を行うことができる。
請求項7記載の発明では、目標傾斜角と目標位置から、駆動輪と搭乗部のフィードフォワード出力とフィードバック出力との合計出力を与えることにより、各状態量を高精度で制御し、状態量の定常偏差を少なくすることができ、重心を調整しながらの走行を安定的に制御することができる。
請求項8記載の発明では、自車両を操作する操作部材の操作状態から目標状態としての目標加速度を取得するので、搭乗者の要求する加速要求に対応しつつ、車体の傾斜角を小さく抑えた走行を実現することができる。
(1)実施形態の概要
図1は、本実施形態おいて、搭乗部の移動により小さな傾斜角で加速する状態を表したものである。
本実施形態では、搭乗者を含む搭乗部を車両の前後方向に相対的に並進移動させることにより、車体のバランス(倒立状態)を保つ。
すなわち、図1(a)に示すように、搭乗者操作に基づく目標走行状態(加速、減速、停止など)に応じた加減速により車体に作用する駆動輪の反トルクと加速度に伴う慣性力とのバランスを保つために、搭乗者を含む搭乗部を加速度方向に並進移動させる。
これにより、加減速度に対する車体の傾斜角を小さくすることができ、快適で安全な倒立型車両を提供することができる。
さらに、第3実施形態では、搭乗部移動機構とバランサ移動機構を利用した倒立型車両の前後方向走行・姿勢制御を行う。
すなわち、目標走行状態に応じて、車体傾斜、搭乗部位置、バランサ位置を制御し、車体のバランスを保ちつつ、目標とする走行状態を実現する。具体的には車両目標加速度が所定値よりも小さい場合には、バランサの移動と車体の傾斜で車体バランスを保つ。一方、車両目標加速度が所定値よりも大きい場合には、バランサを最大に移動した状態で、車体の傾斜と搭乗部の移動とで車体バランスを保つ。
図2は、本実施形態における車両について、乗員が乗車して前方に走行している状態の外観構成を例示したものである。
図2に示されるように、車両は、同軸上に配置された2つの駆動輪11a、11bを備えている。
両駆動輪11a、11bは、それぞれ駆動モータ12a、12bで駆動されるようになっている。
なお、車両の駆動輪及び駆動モータについては、同軸上に2つ配置する場合だけでなく、それぞれ1つ、又は3つ以上を配置するようにしてもよい。
搭乗部13は、運転者が座る座面部131、背もたれ部132、及びヘッドレスト133で構成されている。
移動機構63としては、例えばリニアガイド装置のような低抵抗の線形移動機構を用い、搭乗部駆動モータの駆動トルクにより搭乗部13と、支持部材14との相対的な位置を変更するようになっている。
案内レールには、その左右側面部に2本の軌道溝が長手方向に沿って直線状に形成されている。
スライダの断面はコ字状に形成されており、その対向する二つの側面部内側には、2本の軌道溝が、案内レールの軌道溝と各々対向するように形成されている。
転動体は、前述した軌道溝の間に組み込まれて、案内レールとスライダとの相対的直線運動に伴って軌道溝内を転動するようになっている。
なお、スライダには、軌道溝の両端をつなぐ戻し通路が形成されており、転動体は軌道溝と戻し通路を循環するようになっている。
リニアガイド装置には、リニアガイド装置の動きを締結するブレーキ(クラッチ)が配設されている。車両が停車している時のように搭乗部の動作が不要であるときには、ブレーキにより、案内レールにスライダを固定することで、案内レールが固定されている支持部材14と、スライダが固定されている搭乗部13との相対的位置を保持する。そして、動作が必要であるときには、このブレーキを解除し、支持部材14側の基準位置と搭乗部13側の基準位置との距離が所定値となるように制御する。
運転者は、ジョイスティック31を操作することにより、車両の加速、減速、旋回、その場回転、停止、制動等の指示を行うようになっている。
本実施形態における入力装置30は、座面部131に固定されているが、有線又は無線で接続されたリモコンにより構成するようにしてもよい。また、肘掛けを設けその上部に入力装置30を配置するようにしてもよい。
本実施形態において制御ユニット16は、支持部材14に取り付けられている。
なお、制御ユニット16は、搭乗部13の座面部131の下面に取り付けるようにしてもよい。この場合、制御ユニットは移動機構63によって搭乗部13と共に前後に移動する。
本実施形態において、「搭乗部」は、搭乗部13、入力装置30、移動機構63(リニアガイド)の一部により構成されるが、制御ユニット16やバッテリを搭乗部13に配設することで、「搭乗部」に加えてもよい。これにより、「搭乗部」の重量、および、その移動による効果を大きくすることができる。
制御システムは、走行姿勢制御手段として機能する制御ECU(電子制御装置)20、ジョイスティック31、車体傾斜センサ41、駆動輪センサ51、駆動モータ52(駆動モータ12と同じ)、搭乗部センサ61、搭乗部モータ62(搭乗部駆動モータ)、その他の装置を備えている。
制御ECU20は、本実施形態における走行・姿勢制御処理プログラム等の各種プログラムやデータが格納されたROM、作業領域として使用されるRAM、外部記憶装置、インターフェイス部等を備えたコンピュータシステムで構成されている。
ジョイスティック31は、搭乗者の操作に基づく走行指令(操縦操作量)を主制御ECU21に供給する。
ジョイスティック31は直立した状態を中立位置とし、前後方向に傾斜させることで加減速を指示し、左右に傾斜させることで旋回走行時の横方向加速度を指示する。傾斜角度に応じて、要求加減速度、横方向加速度が大きくなる。
車体傾斜センサ41は、加速度を検出する加速度センサと車体傾斜角速度を検出するジャイロセンサを備えている。検出した加速度から車体傾斜角θ1を算出するのと同時に検出した車体傾斜角速度から車体傾斜角θ1を算出することで、その精度を高めるようにしている。なお、いずれか一方のセンサのみを配置し、その検出値から車体傾斜角や角速度を算出するようにしてもよい。
また、主制御ECU21は、目標走行状態と目標姿勢(目標車体傾斜角と目標搭乗部位置)に応じて、各アクチュエータ(駆動モータ52と搭乗部モータ62)のフィードフォワード出力を決定する、フィードフォワード出力決定手段として機能する。
更に、主制御ECU21は、車体傾斜角の目標値と実測値との偏差に応じて駆動モータ52のフィードバック出力を決定すると共に、搭乗部位置の目標値と実測値との偏差に応じて搭乗部モータ62のフィードバック出力を決定する、フィードバック出力決定手段として機能する。
駆動輪センサ51は、駆動輪11の回転状態である駆動輪回転角(回転角速度)を検出し、主制御ECU21に供給する。本実施形態の駆動輪センサ51は、レゾルバで構成され、駆動輪回転角を検出する。この駆動輪回転角から回転角速度が計算により算出される。
主制御ECU21は駆動輪制御ECU22に駆動トルク指令値を供給し、駆動輪制御ECU22は駆動モータ52に駆動トルク指令値に相当する入力電圧(駆動電圧)を供給する。駆動モータ52は、入力電圧に従って、駆動輪11に駆動トルクを与える駆動輪アクチュエータとして機能する。
搭乗部センサ61は、搭乗部の相対位置を検出する位置検出として機能し、検出した搭乗部位置(移動速度)のデータを主制御ECU21に供給する。本実施形態の搭乗部センサは、エンコーダで構成され、搭乗部位置を検出する。この搭乗部位置の検出値から搭乗部の移動速度が算出される。
主制御ECU21は、搭乗部制御ECU23に搭乗部推力指令値を供給し、搭乗部制御ECU23は搭乗部モータ62に搭乗部推力指令値に相当する入力電圧(駆動電圧)を供給する。搭乗部モータ62は、入力電圧に従って、搭乗部13を並進移動させるための推力を与える搭乗部アクチュエータとして機能する。
図4は、走行・姿勢制御処理の内容を表したフローチャートである。
まずこの走行・姿勢制御処理による処理全体の概要を説明する。
本実施形態における走行・姿勢制御では、加減速、停止など、目標とする走行状態に応じて、車体傾斜や搭乗部位置を制御し、車体のバランスを保ちつつ、目標とする走行状態を実現する。
このように、車体傾斜量と搭乗部位置を最適化することにより、車体傾斜を小さくして乗り心地の悪化を防止しつつ、搭乗者に適切な加速感を与えることができる。
主制御ECU21は、搭乗者によるジョイスティック31の操縦操作量(走行指令)を取得する(ステップ110)。
そして、主制御ECU21は、取得した操作量に基づいて車両加速度の目標値(車両目標加速度)α*を決定する(ステップ120)。例えば、ジョイスティック31の前後操作量に比例した値を車両目標加速度α*の値とする。
なお、記号[n]は、nの時間微分を表すものとする。例えば、車両目標加速度α*を時間積分し、所定の駆動輪接地半径で除した値を駆動輪目標角速度[θω*]として算出する。
そして、決定した目標車体傾斜角θ1 *に基づき、車両目標加速度α*の大きさに応じた数式4〜数式6により搭乗部位置の目標値(搭乗部目標位置)λS *を決定する。
(数式2) θ1 *=(1−CSense)φ* (−αMax≦α*≦αMax)
(数式3) θ1 *=φ*+βMax+sin-1(γsinφ*cosβMax) (α*>αMax)
(数式5) λS *=l1(m1/mS){tan(φ*−θ1 *)+γ(sinφ*/cos(φ*−θ1 *))} (−αMax≦α*≦αMax)
(数式6) λS *=λS,Max (α*>αMax)
φ*=tan-1α*
βMax=tan-1(mSλS,Max/m1l1)
γ=M〜RW/m1l1、M〜=m1+mW+IW/RW 2
閾値αMaxは、数式5においてλ*=λS,Maxとしたとき、すなわち、搭乗部を限界まで動かしたときの車両目標加速度α*である。この閾値αMaxは、既定値であるが、解析的に求めることが出来ないため、繰り返し計算や近似式等を用いることで決定する。
車両目標加速度α*が閾値±αMaxの間にある場合(−αMax≦α*≦αMax)、目標車体傾斜角θ1 *は数式2により決定し、搭乗部目標位置λS *は数式5により決定する。
これにより、−αMax≦α*≦αMaxの範囲では、車体をθ1 *に傾けながら、搭乗部もλS *に動かすことにより、車体のバランスを保ちつつ、搭乗者に適切な加速度を感じさせることができる。
ある車両目標加速度α*に対して、設定値CSenseの値を大きくすると、目標車体傾斜角θ1 *は大きくなり(数式2)、搭乗部目標位置λS *は小さくなる(数式5)。
すなわち、CSense=1とすると、目標車体傾斜角θ1 *=0(数式2)となり、車体を全く傾けないため、搭乗者は車両の加減速による慣性力をそのまま感じる。
一方、CSense=0とすると、θ1 *=φ*=tan-1α*となり、車体を平衡傾斜角(重力と慣性力の合力の角度)まで傾けるため、搭乗者は慣性力を感じない(ただし、搭乗者にとって下向きの力は増加する)。
例えば、CSense=1とした場合、車両目標加速度α*の実現に必要な重心位置の移動の全てを搭乗部13の移動で実現することになり、車体を直立状態に維持するように制御しながら走行する。
なお、搭乗部移動量に余裕のある場合には、車体傾斜角の方を制限してもよい。
上記実施形態の説明では、車両目標加速度α*と閾値±αMaxとの関係から数式1〜数式3のいずれか、及び数式4〜数式6のいずれかを選択して目標車体傾斜角θ1 *と、搭乗部目標位置λS *を決定する場合について説明した。
これに対して、図6に示す目標値決定処理によって目標車体傾斜角θ1 *と、搭乗部目標位置λS *を決定してもよい。
主制御ECU21は、最初に数式2から車両目標加速度α*に対応する目標車体傾斜角θ1 *を算出する(ステップ10)。
そして、決定したθ1 *を用いて数式5から搭乗部目標位置λS *を算出し(ステップ11)、算出値λS *が搭乗部の移動可能な−λS,Max≦λS *≦λS,Maxの範囲内であるか否かを判断する(ステップ12)。
算出値λS *が搭乗部の移動可能な範囲内であれば(ステップ12;Y)、主制御ECU21は、ステップ10で算出したθ1 *を目標車体傾斜角に、ステップ11で算出したλS *を搭乗部目標位置に、それぞれ決定し(ステップ13)、処理を終了する。
そして、数式1又は数式3を用いて車両目標加速度α*に対応するθ1 *を再度算出し、これを目標車体傾斜角θ1 *に決定し(ステップ15)、処理を終了する。
本実施形態では、厳密な理論式である数式1〜数式6を用いて、車体目標姿勢を決定したが、より簡単な式を用いて決定してもよい。例えば、数式1〜数式6を線形化した式を使ってもよい。また、数式の代わりに、車両目標加速度α*と車体目標姿勢の関係をマップとして予め用意して、それを使って車体目標姿勢を決定してもよい。
一方、より複雑な関係式を用いてもよい。例えば、車両目標加速度α*の絶対値が所定の閾値以下の場合には、車体を全く傾けずに搭乗部のみを動かし、その閾値を超えた場合に車体を傾け始めるように、関係式を設定してもよい。
なお、本実施形態では、搭乗部の基準位置からの前方最大移動量と後方最大移動量が等しいとしているが、両者は異なってもよい。例えば、後方最大移動量の方を大きくすることにより、加速性能に比べて制動性能を高くすることができる。この場合には、閾値αMaxを各々の限界値に対応するように修正することで、容易に同様の制御を実現できる。
すなわち、各目標値を時間微分、あるいは、時間積分することにより、駆動輪回転角目標値θW *、車体傾斜角速度目標値[θ1 *]、搭乗部移動速度目標値[λS *]をそれぞれ算出する。
主制御ECU21は、次の数式7により、車両目標加速度α*を実現するのに必要だと予想される駆動モータ52のフィードフォワード出力τW,FFを決定する。ちなみに、数式7におけるM〜は、駆動輪の回転慣性分も考慮した車両の総質量である。
また、数式8により、各目標値から搭乗部モータ62のフィードフォワード出力SS,FFを決定する。このSS,FFは、目標車体傾斜角θ1 *に対して、搭乗部が重力によって移動せず、目標位置に留まるのに必要な搭乗部推力に相当する。
(数式8) SS,FF=−mSgsinθ1 *
なお、この方法は、特に状態量の定常偏差を減少させるのに有効であるが、この代わりとしてフィードバック制御(ステップ190)で積分ゲインを与えてもよい。
また主制御ECU21は、残りの状態量を算出する(ステップ180)。すなわち、駆動輪回転角(回転角速度)、車体傾斜角(傾斜角速度)、搭乗部位置(移動速度)を時間積分あるいは微分することにより、残りの状態量を算出する。
すなわち、各目標値と実際の状態量の偏差から、数式9により駆動モータ52のフィードバック出力τW,FBを、数式10により搭乗部モータ62のフィードバック出力SS,FBを、それぞれ決定する。
なお、数式9、数式10におけるK**はフィードバックゲインであり、各フィードバックゲインK**は、例えば最適レギュレータの値を予め設定しておく。また、前述のように、定常偏差を無くすために、積分ゲインを導入してもよい。
(数式10) SS,FB=−KS1(θW−θW *)−KS2([θW]−[θW *])−KS3(θ1−θ1 *)−KS4([θ1]−[θ1 *])−KS5(λS−λS *)−KS6([λS]−[λS *])
すなわち、主制御ECU21は、ステップ160で決定したフィードフォワード出力τW,FFと、ステップ190で決定したフィードバック出力τW,FBの和(τW,FF+τW,FB)を駆動トルク指令値τWとして、駆動輪制御ECU22に供給する。また、フィードフォワード出力SS,FFとフィードバック出力SS,FBの和(SS,FF+SS,FB)を搭乗部推力指令値SSとして、搭乗部制御ECU23に供給する。
また、搭乗部制御ECU23は、搭乗部推力指令値SSに対応した入力電圧(駆動電圧)を搭乗部モータ62に供給することで、搭乗部を移動させる。
第1実施形態では、搭乗者加速度感受係数CSenseを予め設定した値とすることで、車両の加速度(目標値)に対する体感加速度の割合を一定にしている。
これに対して第2実施形態では、搭乗者の好みに応じて体感加速度の程度を定量的に調整可能にする。すなわち、目標車体姿勢決定において、搭乗者の好みに応じて、体感加速度の程度を調節するように、車体傾斜角と搭乗部移動量を決定する。例えば、加速感を強く得たい場合には、車体傾斜を抑えて、搭乗部13を動かすようにする。そして、これを数式2における搭乗者加速度感受計数CSenseを可変とすることで実現する。
このように搭乗者加速度感受係数CSenseを変更することで、姿勢制御の安定性を確保しつつ、様々な搭乗者による様々な要求に応ずることができ、より快適な倒立型車両を提供することができる。
図7に示されるように、第2実施形態では入力装置30に、制御モード入力装置32を配置する。
制御モード入力装置32には、制御モード選択用のスイッチが配設されている。制御モードには、体感加速度は大きくなるが車体の傾斜をより抑えるスムーズモードと、体感加速度は小さくなるが車体傾斜が大きくなるアクティブモードが設けられている。
制御モード入力装置32からは、搭乗者が選択した制御モードが主制御ECU2121に供給される。
図8に示されるように、スムーズモードではCSense(数式2)を1に近い値、例えば、0.75に設定することで、体感加速度は大きくなるが、車体の傾斜は小さくなる(代わりに搭乗部の前後移動幅を大きくする)。
一方、アクティブモードではCSenseを0に近い値、例えば、0.25に設定することで、体感加速度は小さくなるが、車体傾斜は大きくなる(代わりに搭乗部の前後移動幅を小さくする)。
また、搭乗者が数値(要求車体傾斜度)を入力し、その値に応じて係数CSenseを変えるようにしてもよい。この場合、ダイヤル式のアナログ入力装置やタッチパネル式のデジタル入力装置を制御モード入力装置32に配設する。
第2実施形態における走行・姿勢制御において、主制御ECU21は、初めに、第1実施形態と同様に、搭乗者の意志に従って車両をどのように動かすのか、すなわち、車両の走行目標を決定する(ステップ110〜ステップ130)。
なお、この第2実施形態においても、第1実施形態と同様に図6で説明した目標値決定処理により、目標車体傾斜角θ1 *と搭乗部目標位置λS *を決定するようにしてもよい。
「好み」は、その時の気分、状況によって変化するため、それに応じて逐次調整する必要がある。また、複雑な制御系のパラメータを搭乗者自身に調整させるのは難しく、さらに、急加減速時には、その車体姿勢制御の安定性を確保するため、搭乗者の要求に反して、シートや車体を大きく傾ける必要がある。これらの課題に対して、本実施形態では、パラメータ1つの変更で簡単に乗り心地を調整でき、逐次調整が可能で、高加減速時の安定性も確保した制御を実現している。
次に第3実施形態について説明する。
第1実施形態、第2実施形態では、車両目標加速度α*に対する重心位置の移動を、車体傾斜と搭乗部移動によって行う場合について説明したが、第3実施形態では、搭乗部とは別の重量物であるバランサを前後に動かすことで倒立型車両前後方向の走行・姿勢制御を行う。
すなわち、加減速、停止など、目標とする走行状態に応じて、車体傾斜、搭乗部位置、バランサ位置を制御し、車体のバランスを保ちつつ、目標とする走行状態を実現する。
なお、第3実施形態の説明では省略するが、第2実施形態と同様に、搭乗者の体感加速度に対する好みに応じて搭乗者加速度感受計数CSenseを可変としてもよい。
図10に示されるように、第3実施形態における制御システムは、バランサ制御ECU24、バランサセンサ(バランサ移動状態計測装置)71、バランサモータ(バランサアクチュエータ)72を更に備えており、主制御ECU21はこれら各部と共にバランサ制御システム70として機能するようになっている。
他の構成については、図3で説明した第1実施形態と同様である。
このバランサ移動機構は、重量体移動手段として機能し、車体の一部を構成する。バランサ移動機構は、重量体であるバランサ134を前後方向に動かすことによって車体の重心を移動させる。
バランサ134は、搭乗部13と駆動輪11との間に配置されている。このバランサ134は、バランサ駆動アクチュエータ62によって前後方向(車体中心軸と車軸に垂直な方向)に移動可能であるように構成されている。
図11(b)のバランサ移動機構では、バランサ支持軸回転モータ137が座面部131の下部に配設され、円周軌道上の下側でバランサ134が移動する。
図11(c)のバランサ移動機構では、バランサ支持軸回転モータ138が駆動輪11と同軸上に配設され、円周軌道上の上側でバランサ134が移動する。
例えば、2本の伸縮型アクチュエータのそれぞれ一端を車両の前方と後方に固定し、他端をそれぞれバランサ134に固定し、両伸縮型アクチュエータの一方を伸ばし、他方を縮めることで、バランサ134を直線移動させてもよい。
図12におけるバランサ134は、車軸及び車両中心軸に垂直な方向に移動する図12(a)の場合を例示している。
(a)状態量
θW:駆動輪回転角[rad]
θ1:車体傾斜角(鉛直軸基準)[rad]
λ2:バランサ位置(車体中心点基準)[m]
λS:搭乗部位置(車体中心点基準)[m]
(b)入力
τW:駆動トルク(2輪合計)[Nm]
SB:バランサ推力[N]
SS:搭乗部推力[N]
(c)物理定数
g:重力加速度[m/s2]
(d)パラメータ
mW:駆動輪質量(2輪合計)[kg]
RW:駆動輪接地半径[m]
IW:駆動輪慣性モーメント(2輪合計)[kgm2]
DW:駆動輪回転に対する粘性減衰係数[Ns/rad]
m1:車体質量(搭乗部、バランサ含む)[kg]
l1:車体重心距離(車軸から)[m]
I1:車体慣性モーメント(重心周り)[kgm2]
D1:車体傾斜に対する粘性減衰係数[Ns/rad]
m2:バランサ質量[kg]
l2:バランサ基準重心距離(車軸から)[m]
I2:バランサ慣性モーメント(重心周り)[kgm2]
D2:バランサ並進に対する粘性減衰係数[Ns/m]
mS:搭乗部質量[kg]
lS:搭乗部基準重心距離(車軸から)[m]
IS:搭乗部慣性モーメント(重心周り)[kgm2]
DS:搭乗部並進に対する粘性減衰係数[Ns/m]
なお、第3実施形態における走行・姿勢制御処理は図4で説明した第1実施形態とほぼ同様に処理されるので、図4を参照しながら第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、同一部分については適宜その説明を省略することとする。
すなわち、ステップ120で決定した車両目標加速度α*の大きさに応じた次の数式11〜数式13により目標車体傾斜角θ1 *を、数式14〜数式18により搭乗部目標位置λS *を、数式19〜数式21によりバランサ目標位置λ2 *を、それぞれ決定する。
(数式12) θ1 *=(1−CSense)φ* (−αS,Max≦α*≦αS,Max)
(数式13) θ1 *=φ*+βS,Max+sin-1(γsinφ*cosβS,Max) (α*>αS,Max)
(数式15) λS *=l1(m1/mS)[tan(φ*−θ1 *)+γ(sinφ*/cos(φ*−θ1 *))]+(m2/mS)λ2,Max (−αS,Max≦α*<−α2,Max)
(数式16) λS *=0 (−α2,Max≦α*≦α2,Max)
(数式17) λS *=l1(m1/mS)[tan(φ*−θ1 *)+γ(sinφ*/cos(φ*−θ1 *))]−(m2/mS)λ2,Max (α2,Max<α*≦αS,Max)
(数式18) λS *=λS,Max (α*>αS,Max)
(数式20) λ2 *=l1(m1/m2)[tan(φ*−θ1 *)+γ(sinφ*/cos(φ*−θ1 *))] (−α2,Max≦α*≦α2,Max)
(数式21) λ2 *=λ2,Max (α*>α2,Max)
βS,Max=tan-1((mSλS,Max+m2λ2,Max)/m1l1)
また、λ2,Maxは、バランサ移動量最大値で設定値である。
数式11〜数式21における他の記号については、第1実施形態における数式1〜数式6と同様である。
これらの閾値α2,Max,αS,Maxは、第1実施形態と同様に既定値であるが、解析的に求めることが出来ないため、繰り返し計算や近似式等を用いることで決定する。
すなわち、バランサ目標位置λ2 *を数式20により、目標車体傾斜角θ1 *を数式12により、それぞれ決定する。
つまり、車両目標加速度α*が+(加速)の場合、バランサ位置λ*を+の限界値、車両目標加速度α*が−(減速)の場合は、バランサ位置λ*を−の限界値に固定する。
すなわち、搭乗部目標位置λS *を数式15、数式17により、目標車体傾斜角θ1 *を数式12により、それぞれ決定する。
すなわち、目標車体傾斜角θ1 *を数式11、数式13により決定する。
これにより、低加速度に対して搭乗部を動かすことなく、かつ、小さな車体傾斜で、搭乗者に適切な加速度を感じさせることができる。
上記実施形態の説明では、車両目標加速度α*と閾値±α2,Max、±αS,Maxの関係から数式11〜数式13、数式14〜数式18、数式19〜数式21のいずれかを選択して、各目標値(目標車体傾斜角θ1 *、バランサ目標位置λ2 *、搭乗部目標位置λS *)を決定する場合について説明した。
これに対して、第1実施形態における変形例と同様に、図14に示す目標値決定処理によって各目標値を決定してもよい。
主制御ECU21は、最初に数式12から車両目標加速度α*に対応する目標車体傾斜角θ1 *を算出する(ステップ30)。
そして、決定したθ1 *を用いて数式20からバランサ目標位置λ2 *を算出し(ステップ31)、算出値λ2 *がバランサの移動可能な−λ2,Max≦λ2 *≦λ2 * ,Maxの範囲内であるか否かを判断する(ステップ32)。
算出値λ2 *がバランサの移動可能な範囲内であれば(ステップ32;Y)、主制御ECU21は、ステップ30で算出したθ1 *を目標車体傾斜角に、ステップ31で算出したλ2 *をバランサ目標位置に、それぞれ決定し(ステップ33)、処理を終了する。
算出値λS *が搭乗部の移動可能な範囲内であれば(ステップ36;Y)、主制御ECU21は、ステップ30で算出したθ1 *を目標車体傾斜角に、ステップ35で算出したλS *を搭乗部目標位置に、それぞれ決定し(ステップ37)、処理を終了する。
そして、数式11又は数式13を用いて車両目標加速度α*に対応するθ1 *を再度算出し、これを目標車体傾斜角θ1 *に決定し(ステップ39)、処理を終了する。
本実施形態では、厳密な理論式である数式11〜数式21を用いて、車体目標姿勢を決定したが、より簡単な式を用いて決定してもよい。例えば、数式11〜数式21を線形化した式を使ってもよい。また、数式の代わりに、車両目標加速度α*と車体目標姿勢の関係をマップとして予め用意して、それを使って車体目標姿勢を決定してもよい。
一方、より複雑な関係式を用いてもよい。例えば、車両目標加速度α*の絶対値が所定の閾値以下の場合には、車体を全く傾けずにバランサと搭乗部を動かし、その閾値を共に超えた場合に車体を傾け始めるように、関係式を設定してもよい。
なお、本実施形態では、搭乗部やバランサの基準位置からの前方最大移動量と後方最大移動量が等しいとしているが、両者は異なってもよい。例えば、後方最大移動量の方を大きくすることにより、加速性能に比べて制動性能を高くすることができる。この場合には、閾値αMaxを各々の限界値に対応するように修正することで、容易に同様の制御を実現できる。
すなわち、各目標値を時間微分、あるいは、時間積分することにより、駆動輪回転角目標値θW *、車体傾斜角速度目標値[θ1 *]、バランサ移動速度目標値[λ2 *]、搭乗部移動速度目標値[λS *]をそれぞれ算出する。
このSB,FFは、搭乗部モータ62のフィードフォワード出力SS,FFと同様に、目標車体傾斜角θ1 *に対して、バランサを目標位置に留めるのに必要なバランサ推力に相当する。
なお、第1実施形態と同様に、この代わりとして、フィードバック制御(ステップ190)で積分ゲインを与えてもよい。
また主制御ECU21は、残りの状態量を算出する(ステップ180)。すなわち、駆動輪回転角(回転角速度)、車体傾斜角(傾斜角速度)、搭乗部位置(移動速度)、バランサ位置(移動速度)を時間積分あるいは微分することにより、残りの状態量を算出する。
すなわち、各目標値と実際の状態量の偏差から、数式23により駆動モータ52のフィードバック出力τW,FBを、数式24により搭乗部モータ62のフィードバック出力SS,FBを、数式25によりバランサモータ72のフィードバック出力SB,FBを、それぞれ決定する。
なお、数式23〜数式25におけるK**はフィードバックゲインであり、各フィードバックゲインK**は、例えば最適レギュレータの値を予め設定しておく。また、前述のように、定常偏差を無くすために、積分ゲインを導入してもよい。
すなわち、主制御ECU21は、ステップ160で決定したフィードフォワード出力τW,FFと、ステップ190で決定したフィードバック出力τW,FBの和(τW,FF+τW,FB)を駆動トルク指令値τWとして、駆動輪制御ECU22に、フィードフォワード出力SS,FFとフィードバック出力SS,FBの和(SS,FF+SS,FB)を搭乗部推力指令値SSとして、搭乗部制御ECU23に、フィードフォワード出力SB,FFとフィードバック出力SB,FBの和(SB,FF+SB,FB)をバランサ推力指令値S2として、バランサ制御ECU24に、それぞれ供給する。
またバランサ制御ECU24は、バランサ推力指S2に対応した入力電圧(駆動電圧)をバランサモータ72に供給することで、バランサを移動させる。
更に、搭乗部制御ECU23は、搭乗部推力指令値SSに対応した入力電圧(駆動電圧)を搭乗部モータ62に供給することで、搭乗部を移動させる。
これに対して、搭乗部13の重量体(搭乗員等)の違いなどに基づく搭乗部13の質量変動を考慮するようにしてもよい。すなわち、目標値決定に必要な搭乗部質量13について、計測器やオブザーバによって、実際の値を取得し、目標値決定の各数式に適用する。
このように、実際の値を各数式に代入することにより、より正確な姿勢制御を行うことが可能になる。
(a)変形例1…荷重計の使用
この変形例の場合、搭乗部13に荷重計を配設し、垂直加重WS(座面部131に垂直な成分)を計測し主制御ECU21に供給する。
そして、次の数式26に従って、搭乗者等を含む搭乗部質量mSを算出する。
数式26において、mS,0は搭乗部質量の非変動分(搭乗者の有無に依らない質量;シートなど搭乗部13単独の質量)で、gは重力加速度である。
なお、車体重量m1についても、搭乗部質量の標準値(想定に基づき、あらかじめ設定した値)との差を加えておく。
また、本変形例では、搭乗部重量変動の影響を、車体重量m1に対して考慮しているが、車体の重心距離l1や慣性モーメントI1についても、この影響を考慮するようにしてもよい。
数式27において記号〜は標準値を表す。
上記変形例1では、搭乗部質量mS(および、車体質量m1)の値を荷重計による実測値から数式26で算出する場合について説明したが、この変形例2では、搭乗部の移動状態λSやバランサ推力SBなどに基づくオブザーバによって、搭乗部質量mSの値を推定する。
数式28では、例えば、シート移動に要する推力SSが大きいほど、大きな搭乗部質量mSが推定される。
また、数式28で与えられる搭乗部質量mSの推定値に対して、ローパスフィルタをかけて、高周波成分を取り除くことで、オブザーバを安定化させると共に、ノイズによる振動を抑制するすることができる。
なお、初めて走行・姿勢制御処理のループに入ったときには、(オブザーバの初期値として)搭乗部質量に標準値を与える。
12 駆動モータ
13 搭乗部
14 支持部材
131 座面部
132 背もたれ部
133 ヘッドレスト
16 制御ユニット
20 制御ECU
21 主制御ECU
22 駆動輪制御ECU
23 搭乗部制御ECU
24 バランサ制御ECU
30 入力装置
31 ジョイスティック
32 制御モード入力装置
40 車体制御システム
41 車体傾斜センサ
50 駆動輪制御システム
51 駆動輪センサ
52 駆動輪モータ
60 搭乗部制御システム
61 搭乗部センサ
62 搭乗部モータ
70 バランサ制御システム
71 バランサセンサ
72 バランサモータ
63 移動機構
Claims (8)
- 駆動輪と、
前記駆動輪の回転軸に回動可能に支持された車体と、
前記車体に相対移動可能に配設された搭乗部と、
目標走行状態を取得する目標取得手段と、
体感加速度を指定する指定手段と、
前記目標走行状態に応じて、前記回転軸に対する車体の回動と前記車体に対する前記搭乗部の移動により、前記車体の重心を調整しながら走行を制御する走行制御手段と、を具備し、
前記走行制御手段は、
前記取得した目標走行状態と前記指定された体感加速度の程度に応じて、前記駆動輪の駆動トルクと、前記搭乗部を移動させる移動推力を決定する決定手段と、
前記決定手段で決定した駆動トルクを前記駆動輪に与える駆動手段と、
前記決定手段で決定した移動推力を前記搭乗部に与える搭乗部移動手段と、
を有することを特徴とする車両。
- 駆動輪と、
前記駆動輪の回転軸に回動可能に支持された車体と、
前記車体に相対移動可能に配設された搭乗部と、
目標走行状態を取得する目標取得手段と、
バランサと、
前記バランサを移動させるバランサ移動機構と、
前記目標走行状態に応じて、前記回転軸に対する車体の回動と、前記バランサ移動機構による前記バランサの移動と、前記車体に対する前記搭乗部の移動により、前記車体の重心を調整しながら走行を制御する走行制御手段と、
自車両を操作する操作部材の操作状態から、目標加速度を取得する目標加速度取得手段と、を備え、
前記目標取得手段は、前記目標加速度を目標走行状態として取得し、
前記走行制御手段は、
前記取得した目標加速度が所定の閾値未満の場合、前記車体の傾斜と前記バランサの移動により、
前記取得した目標加速度が所定の閾値以上の場合、当該目標加速度の向きに応じた、前記バランサが移動可能な移動限界位置に固定し、前記車体の傾斜と前記搭乗部の移動により、
前記車体の重心を調整しながら走行を制御する、
ことを特徴とする車両。
- 駆動輪と、
前記駆動輪の回転軸に回動可能に支持された車体と、
前記車体に相対移動可能に配設された搭乗部と、
目標走行状態を取得する目標取得手段と、
前記目標走行状態に応じて、前記回転軸に対する車体の回動と前記車体に対する前記搭乗部の移動により、前記車体の重心を調整しながら走行を制御する走行制御手段と、
前記搭乗部にかかる重量体を含む前記搭乗部の質量を取得する質量取得手段と、を備え、
前記走行制御手段は、前記質量取得手段によって取得した搭乗部の質量に応じて、前記車体の重心を調整しながら走行を制御する
ことを特徴とする車両。
- 前記走行制御手段は、
前記取得した目標走行状態に応じて、前記駆動輪の駆動トルクと、前記搭乗部を移動させる移動推力を決定する決定手段と、
前記決定手段で決定した駆動トルクを前記駆動輪に与える駆動手段と、
前記決定手段で決定した移動推力を前記搭乗部に与える搭乗部移動手段と、
を有することを特徴とする請求項2又は請求項3記載の車両。
- 前記目標走行状態に応じて、前記車体の回動による目標傾斜角を決定する目標傾斜角決定手段と、
前記目標走行状態と前記目標傾斜角に基づいて、前記搭乗部を移動させる目標位置を決定する目標位置決定手段と、を備え、
前記走行制御手段は、前記目標走行状態と、前記目標傾斜角、前記目標位置に応じて、前記車体の回動と前記乗部の移動により、前記車体の重心を調整しながら走行を制御することを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の車両。
- 前記目標走行状態に応じて、前記車体の回動による目標傾斜角を決定する目標傾斜角決定手段と、
前記目標走行状態と前記目標傾斜角に基づいて、前記搭乗部を移動させる目標位置を決定する目標位置決定手段と、
前記車体の傾斜角を検出する傾斜角検出手段と、
前記搭乗部の搭乗部位置を検出する位置検出手段と、を備え、
前記決定手段は、前記傾斜角検出手段により検出した車体の傾斜角と前記目標傾斜角決定手段により決定した車体の目標傾斜角に基づいて前記駆動輪の駆動トルクを決定し、前記位置検出手段により検出した搭乗部位置と前記目標位置決定手段により決定した搭乗部の目標位置に基づいて前記搭乗部の移動推力を決定する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1の請求項に記載の車両。
- 前記目標走行状態に応じて、前記車体の回動による目標傾斜角を決定する目標傾斜角決定手段と、
前記目標走行状態と前記目標傾斜角に基づいて、前記搭乗部を移動させる目標位置を決定する目標位置決定手段と、
前記車体の傾斜角を検出する傾斜検出手段と、
前記搭乗部の搭乗部位置を検出する位置検出手段と、
前記目標傾斜角に基づいて前記駆動輪のフィードフォワード駆動トルクと、前記搭乗部の目標位置に基づいて前記搭乗部のフィードフォワード移動推力と、を決定するフィードフォワード出力決定手段と、
前記目標傾斜角決定手段により決定した目標傾斜角と前記傾斜角検出手段により検出した車体の傾斜角との偏差から前記駆動輪のフィードバック駆動トルクと、前記目標位置決定手段により決定した目標位置と前記傾斜検出手段により検出した搭乗部位置との偏差から前記搭乗部のフィードバック移動推力と、を決定するフィードバック出力決定手段と、を備え、
前記決定手段は、前記フィードフォワード駆動トルクとフィードバック駆動トルクとの和から前記駆動輪の駆動トルクを決定し、前記フィードフォワード移動推力と前記フィードバック移動推力との和から前記搭乗部の移動推力を決定する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の車両。
- 自車両を操作する操作部材の操作状態から、目標加速度を取得する目標加速度取得手段と、を備え、
前記目標取得手段は、前記目標加速度を目標走行状態として取得する
ことを特徴とする請求項1、請求項3、又は請求項7に記載の車両。
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