JP5152627B2 - 車両 - Google Patents

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本発明は、車両に係り、例えば、倒立振り子の姿勢制御を利用した車両に関する。
倒立振り子の姿勢制御を利用した車両(以下、単に倒立振り子車両という)が注目され、例えば、特許文献1の搬送措置が提案されている。
特開2004−129435公報
この特許文献1提案の搬送装置では、センサ部で筐体のバランス状態および動作状態を検出しながら、制御部が回転体の動作を制御して搬送装置を静止若しくは移動させるようにしている
そして、車体の傾斜角に応じて、カウンタウェイト(バランサ)を移動させることにより、姿勢制御を行うようにしている。
上記特許文献1記載の車両では、バランサを前後に動かすことで姿勢制御を行うが、車両の加減速時における具体的な制御方法については開示されていない。
また、加減速時において、車体(被倒立支持部)には、加速度に伴う慣性力と駆動輪の反トルクが作用するので、車体のバランスを保つためには車体の重心を加速度方向に移動させる必要がある。
一般に、バランサの質量は車体に比べて小さく(姿勢制御のために質量を増やせば燃費が低下する)、移動距離も限られているため、バランサ移動による重心移動量は相対的に小さい。このため、高加減速時において車体のバランスを保つためには、バランサを移動させたとしても、更に、車体を大きく傾ける必要がある。一方、加速度に対応するため又は車体傾斜を抑えるために、バランサを大きくした場合、車体に対する質量が大きくなるので、車体の剛性を高める必要が生じてくる。その結果、車両全体の重量増加、車体の大型化を招くとともに燃費が低下するなどの問題が出てくるので現実的ではない。
例えば、バランサを使わない場合、加速度0.4Gに対して車体を20度以上前方に傾ける必要がある。
このような車体傾斜に伴い、急加速や急減速の際には、搭乗者も大きく傾ける必要があり、搭乗者の視界も大きく上下に動くため、乗り心地が悪いという問題がある。
そこで本発明は、乗り心地のよい倒立振り子の姿勢制御を利用した車両を提供することを目的とする。
(1)前記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、駆動輪と、前記駆動輪の回転軸に回動可能に支持された車体と、前記車体に相対移動可能に配設された搭乗部と、搭乗者が入力した走行目標に対応する車両目標加速度を取得する目標取得手段と、前記駆動輪を駆動する駆動手段と、前記搭乗部を移動する搭乗部移動手段と、車速を検出する車速検出手段と、前記車両目標加速度に基づいて、前記駆動手段による駆動と前記搭乗部移動手段による前記搭乗部の移動とのうち少なくとも1つを制御することで、前記車体の重心位置を調整しながら走行を制御する走行制御手段と、を備え、前記走行制御手段は、前記車速の増加に従い、前記車体が後方に傾斜し、前記搭乗部が前方へ移動するように、前記駆動手段による駆動と前記搭乗部の移動とのうち少なくとも1つを制御する、ことを特徴とする車両を提供する。
(2)請求項2に記載の発明では、体感加速度を指定する指定手段を備え、前記走行制御手段は、更に前記指定された体感加速度の程度に応じて、前記駆動手段による前記駆動輪の駆動トルクと前記搭乗部移動手段による前記搭乗部の移動推力を決定する、ことを特徴とする請求項1に記載の車両を提供する。
(3)請求項3に記載の発明では、前記車両目標加速度に応じて、前記車体の目標傾斜角を決定する目標傾斜角決定手段と、前記車両目標加速度と前記目標傾斜角に基づいて、前記搭乗部を移動させる目標位置を決定する目標位置決定手段と、を備え、前記走行制御手段は、前記車体を後方に傾斜させると共に前記搭乗部を前方に移動させた状態を基準とし、当該基準に対し、前記車両目標加速度と、前記目標傾斜角、前記目標位置に応じて、前記駆動手段による前記駆動輪の駆動トルクと、前記搭乗部移動手段による前記搭乗部の移動推力を決定する、ことを特徴とする請求項1に記載の車両を提供する。
(1)請求項1記載の発明によれば、車速の増加に従い、車体が後方に傾斜し、搭乗部が前方へ移動するように、駆動手段による駆動と搭乗部の移動とのうち少なくとも1つを制御するように構成したので、急減速直後の車体傾斜の大きな変化を抑えることができる。
(2)請求項2記載の発明では、体感加速度を指定可能にすることで、搭乗者の「好み」に合わせて、体感加速度を定量的に調整することができる。
(3)請求項3記載の発明では、車体を後方に傾斜させると共に搭乗部を前方に移動させた状態を基準とし、車両目標加速度と、目標傾斜角、目標位置に応じて、駆動手段による駆動輪の駆動トルクと、搭乗部移動手段による搭乗部の移動推力を決定することで、車体傾斜角を一定に保ったままの速度調整が可能となり、搭乗者の乗り心地を優先した目標位置決定及び制御を行うことができる。
以下、本発明の車両における好適な実施の形態について、図1から図29を参照して詳細に説明する。
(1)実施形態の概要
図1は、本実施形態おいて、搭乗部の移動により小さな傾斜角で加速する状態を表したものである。
本実施形態では、搭乗者を含む搭乗部を車両の前後方向に相対的に並進移動させることにより、車体のバランス(倒立状態)を保つ。
すなわち、図1(a)に示すように、搭乗者操作に基づく目標走行状態(加速、減速、停止など)に応じた加減速により車体に作用する駆動輪の反トルクと加速度に伴う慣性力とのバランスを保つために、搭乗者を含む搭乗部を加速度方向に並進移動させる。
これにより、加減速度に対する車体の傾斜角を小さくすることができ、快適で安全な倒立型車両を提供することができる。
また、第2実施形態では、目標車体姿勢(車両目標傾斜角、搭乗部位置目標値)の決定において、体感加速度の程度を調節するように、車体傾斜角と搭乗部移動量を決定する。例えば、加速感を強く得たい場合には、車体傾斜を抑えて、搭乗部を動かす。これにより、搭乗者の好みに応じて、加速に対する車体の傾斜と体感加速度を調整することができる。
さらに、第3実施形態では、搭乗部移動機構とバランサ移動機構を利用した倒立型車両の前後方向走行・姿勢制御を行う。
すなわち、目標走行状態に応じて、車体傾斜、搭乗部位置、バランサ位置を制御し、車体のバランスを保ちつつ、目標とする走行状態を実現する。具体的には車両目標加速度が所定値よりも小さい場合には、バランサの移動と車体の傾斜で車体バランスを保つ。一方、車両目標加速度が所定値よりも大きい場合には、バランサを最大に移動した状態で、車体の傾斜と搭乗部の移動とで車体バランスを保つ。
(2)第1実施形態の詳細
図2は、本実施形態における車両について、乗員が乗車して前方に走行している状態の外観構成を例示したものである。
図2に示されるように、車両は、同軸上に配置された2つの駆動輪11a、11bを備えている。
両駆動輪11a、11bは、それぞれ駆動モータ12a、12bで駆動されるようになっている。
なお、車両の駆動輪及び駆動モータについては、同軸上に2つ配置する場合だけでなく、それぞれ1つ、又は3つ以上を配置するようにしてもよい。
駆動輪11a、11b(両駆動輪11aと11bを指す場合には駆動輪11という。以下他の構成も同様)及び駆動モータ12の上部には、重量体である荷物や乗員等が搭乗する搭乗部13(シート)が配置されている。
搭乗部13は、運転者が座る座面部131、背もたれ部132、及びヘッドレスト133で構成されている。
搭乗部13は、移動機構63を介して支持部材14により支持されている。支持部材14は駆動モータ12が収納されている駆動モータ筐体に固定されている。
移動機構63としては、例えばリニアガイド装置のような低抵抗の線形移動機構を用い、搭乗部駆動モータの駆動トルクにより搭乗部13と、支持部材14との相対的な位置を変更するようになっている。
リニアガイド装置は、支持部材14に固定された案内レールと、搭乗部駆動モータに固定されたスライダと、転動体を備えている。
案内レールには、その左右側面部に2本の軌道溝が長手方向に沿って直線状に形成されている。
スライダの断面はコ字状に形成されており、その対向する二つの側面部内側には、2本の軌道溝が、案内レールの軌道溝と各々対向するように形成されている。
転動体は、前述した軌道溝の間に組み込まれて、案内レールとスライダとの相対的直線運動に伴って軌道溝内を転動するようになっている。
なお、スライダには、軌道溝の両端をつなぐ戻し通路が形成されており、転動体は軌道溝と戻し通路を循環するようになっている。
リニアガイド装置には、リニアガイド装置の動きを締結するブレーキ(クラッチ)が配設されている。車両が停車している時のように搭乗部の動作が不要であるときには、ブレーキにより、案内レールにスライダを固定することで、案内レールが固定されている支持部材14と、スライダが固定されている搭乗部13との相対的位置を保持する。そして、動作が必要であるときには、このブレーキを解除し、支持部材14側の基準位置と搭乗部13側の基準位置との距離が所定値となるように制御する。
搭乗部13の脇には入力装置30が配置され、入力装置30にはジョイスティック31が配置されている。
運転者は、ジョイスティック31を操作することにより、車両の加速、減速、旋回、その場回転、停止、制動等の指示を行うようになっている。
本実施形態における入力装置30は、座面部131に固定されているが、有線又は無線で接続されたリモコンにより構成するようにしてもよい。また、肘掛けを設けその上部に入力装置30を配置するようにしてもよい。
また、本実施形態の車両には、入力装置30が配置されているが、予め決められた走行指令データに従って自動走行する車両の場合には、入力装置30に代えて走行指令データ取得部が配設される。走行指令データ取得部は、例えば、半導体メモリ等の各種記憶媒体から走行指令データを取得する読み取り手段、または/及び、無線通信により外部から走行指令データを取得する通信制御手段で構成してもよい。
なお、図2において、搭乗部13には人が搭乗している場合について示しているが、必ずしも人が運転する車両には限定されず、荷物だけを乗せた状態、あるいは、何も搭載していない状態で、外部からのリモコン操作や走行指令データに従って走行や停止をさせてもよい。
搭乗部13と駆動輪11との間には制御ユニット16が配置されている。
本実施形態において制御ユニット16は、支持部材14に取り付けられている。
なお、制御ユニット16は、搭乗部13の座面部131の下面に取り付けるようにしてもよい。この場合、制御ユニットは移動機構63によって搭乗部13と共に前後に移動する。
本実施形態の車両は、その他の装置としてバッテリを備えている。バッテリは支持部材14に配設されており、駆動モータ12、搭乗部駆動モータ、制御ECU20等に駆動用及び演算用の電力を供給する。
以下の説明において、駆動輪11、および、これに固定されて共に回転する部分を「駆動輪」、搭乗者を含む車両全体から駆動輪を除いた部分を「車体」、搭乗部13、および、これに固定されて共に並進移動する部分(搭乗者を含む)を「搭乗部」とする。
本実施形態において、「搭乗部」は、搭乗部13、入力装置30、移動機構63(リニアガイド)の一部により構成されるが、制御ユニット16やバッテリを搭乗部13に配設することで、「搭乗部」に加えてもよい。これにより、「搭乗部」の重量、および、その移動による効果を大きくすることができる。
図3は、第1実施形態における制御システムの構成を表したものである。
制御システムは、走行姿勢制御手段として機能する制御ECU(電子制御装置)20、ジョイスティック31、車体傾斜センサ41、駆動輪センサ51、駆動モータ52(駆動モータ12と同じ)、搭乗部センサ61、搭乗部モータ62(搭乗部駆動モータ)、その他の装置を備えている。
制御ECU20は、主制御ECU21、駆動輪制御ECU22、搭乗部制御ECU23を備えており、駆動輪制御、車体制御(倒立制御)等により、車両の走行、姿勢制御等の各種制御を行う。
制御ECU20は、本実施形態における走行・姿勢制御処理プログラム等の各種プログラムやデータが格納されたROM、作業領域として使用されるRAM、外部記憶装置、インターフェイス部等を備えたコンピュータシステムで構成されている。
主制御ECU21には、駆動輪センサ51、車体傾斜センサ41、搭乗部センサ61、及び、入力装置30としてジョイスティック31が接続されている。
ジョイスティック31は、搭乗者の操作に基づく走行指令(操縦操作量)を主制御ECU21に供給する。
ジョイスティック31は直立した状態を中立位置とし、前後方向に傾斜させることで加減速を指示し、左右に傾斜させることで旋回走行時の横方向加速度を指示する。傾斜角度に応じて、要求加減速度、横方向加速度が大きくなる。
車体傾斜センサ41は、車体の傾斜角を検出する傾斜検出手段として機能し、駆動輪11の車軸を回転中心とする車体の前後方向の傾斜状態を検出する。
車体傾斜センサ41は、加速度を検出する加速度センサと車体傾斜角速度を検出するジャイロセンサを備えている。検出した加速度から車体傾斜角θ1を算出するのと同時に検出した車体傾斜角速度から車体傾斜角θ1を算出することで、その精度を高めるようにしている。なお、いずれか一方のセンサのみを配置し、その検出値から車体傾斜角や角速度を算出するようにしてもよい。
主制御ECU21は、目標とする目標走行状態を取得する目標走行状態取得手段として機能する。更に、取得した目標走行状態に応じて、駆動輪の駆動トルクと搭乗部の移動推力を決定する出力決定手段として機能する。
主制御ECU21は、ジョイスティック31からの信号に基づく目標走行状態に応じて、目標とする車体傾斜角と、目標とする搭乗部位置を決定する目標姿勢決定手段として機能する。
また、主制御ECU21は、目標走行状態と目標姿勢(目標車体傾斜角と目標搭乗部位置)に応じて、各アクチュエータ(駆動モータ52と搭乗部モータ62)のフィードフォワード出力を決定する、フィードフォワード出力決定手段として機能する。
更に、主制御ECU21は、車体傾斜角の目標値と実測値との偏差に応じて駆動モータ52のフィードバック出力を決定すると共に、搭乗部位置の目標値と実測値との偏差に応じて搭乗部モータ62のフィードバック出力を決定する、フィードバック出力決定手段として機能する。
主制御ECU21は、駆動輪制御ECU22、駆動モータ52と共に駆動手段として機能し、更に駆動輪センサ51を含めて駆動輪制御システム50を構成する。
駆動輪センサ51は、駆動輪11の回転状態である駆動輪回転角(回転角速度)を検出し、主制御ECU21に供給する。本実施形態の駆動輪センサ51は、レゾルバで構成され、駆動輪回転角を検出する。この駆動輪回転角から回転角速度が計算により算出される。
主制御ECU21は駆動輪制御ECU22に駆動トルク指令値を供給し、駆動輪制御ECU22は駆動モータ52に駆動トルク指令値に相当する入力電圧(駆動電圧)を供給する。駆動モータ52は、入力電圧に従って、駆動輪11に駆動トルクを与える駆動輪アクチュエータとして機能する。
また、主制御ECU21は、搭乗部制御ECU23、搭乗部センサ61、搭乗部モータ62と共に搭乗部制御システム60を構成する。
搭乗部センサ61は、搭乗部の相対位置を検出する位置検出として機能し、検出した搭乗部位置(移動速度)のデータを主制御ECU21に供給する。本実施形態の搭乗部センサは、エンコーダで構成され、搭乗部位置を検出する。この搭乗部位置の検出値から搭乗部の移動速度が算出される。
主制御ECU21は、搭乗部制御ECU23に搭乗部推力指令値を供給し、搭乗部制御ECU23は搭乗部モータ62に搭乗部推力指令値に相当する入力電圧(駆動電圧)を供給する。搭乗部モータ62は、入力電圧に従って、搭乗部13を並進移動させるための推力を与える搭乗部アクチュエータとして機能する。
次に、以上の通り構成された車両による走行・姿勢制御処理について説明する。
図4は、走行・姿勢制御処理の内容を表したフローチャートである。
まずこの走行・姿勢制御処理による処理全体の概要を説明する。
本実施形態における走行・姿勢制御では、加減速、停止など、目標とする走行状態に応じて、車体傾斜や搭乗部位置を制御し、車体のバランスを保ちつつ、目標とする走行状態を実現する。
主制御ECU21は、初めに、搭乗者の意志に従って、車両をどのように動かすのか、すなわち、車両の走行目標を決定する(ステップ110〜ステップ130)。
次いで主制御ECU21は、決定した走行目標に対して車体のバランスを保つ(倒立姿勢をとる)ような車体目標姿勢(目標車体傾斜角と目標搭乗部位置)を決定する(ステップ140)。
このように、車体傾斜量と搭乗部位置を最適化することにより、車体傾斜を小さくして乗り心地の悪化を防止しつつ、搭乗者に適切な加速感を与えることができる。
そして主制御ECU21は、目標とする車両走行状態と車体姿勢を実現するために必要な駆動モータ52、搭乗部モータ62の出力値を決定する。その値に応じて、駆動モータ52と搭乗部モータ62の実際の出力を駆動輪制御ECU22と搭乗部制御ECU23で制御する(ステップ150〜ステップ200)。
次に、走行・姿勢制御処理の詳細を説明する。
主制御ECU21は、搭乗者によるジョイスティック31の操縦操作量(走行指令)を取得する(ステップ110)。
そして、主制御ECU21は、取得した操作量に基づいて車両加速度の目標値(車両目標加速度)α*を決定する(ステップ120)。例えば、ジョイスティック31の前後操作量に比例した値を車両目標加速度α*の値とする。
主制御ECU21は、決定した車両目標加速度α*から、駆動輪角速度の目標値(駆動輪目標角速度)[θω*]を算出する(ステップ130)。
なお、記号[n]は、nの時間微分を表すものとする。例えば、車両目標加速度α*を時間積分し、所定の駆動輪接地半径で除した値を駆動輪目標角速度[θω*]として算出する。
次に主制御ECU21は、車体傾斜角と搭乗部位置の目標値を決定する(ステップ140)。すなわち、ステップ120で決定した車両目標加速度α*の大きさに応じた次の数式1〜数式3により車体傾斜角の目標値(目標車体傾斜角)θ1 *を決定する。
そして、決定した目標車体傾斜角θ1 *に基づき、車両目標加速度α*の大きさに応じた数式4〜数式6により搭乗部位置の目標値(搭乗部目標位置)λS *を決定する。
(数式1) θ1 *=φ*−βMax+sin-1(γsinφ*cosβMax) (α*<−αMax
(数式2) θ1 *=(1−CSense)φ* (−αMax≦α*≦αMax
(数式3) θ1 *=φ*+βMax+sin-1(γsinφ*cosβMax) (α*>αMax
(数式4) λS *=−λS,Max (α*<−αMax
(数式5) λS *=l1(m1/mS){tan(φ*−θ1 *)+γ(sinφ*/cos(φ*−θ1 *))} (−αMax≦α*≦αMax
(数式6) λS *=λS,Max (α*>αMax
数式1〜数式6において、φ*、βMax、γは、次の通りである。
φ*=tan-1α*
βMax=tan-1(mSλS,Max/m11
γ=M〜RW/m11、M〜=m1+mW+IW/RW 2
α*は車両目標加速度(G)である。また、λS,Maxは搭乗部移動量最大値で設定値である。
閾値αMaxは、数式5においてλ*=λS,Maxとしたとき、すなわち、搭乗部を限界まで動かしたときの車両目標加速度α*である。この閾値αMaxは、既定値であるが、解析的に求めることが出来ないため、繰り返し計算や近似式等を用いることで決定する。
図5は、数式1〜数式6で与えられる車両目標加速度α*(横軸)と目標車体傾斜角θ1 *および搭乗部目標位置λS *の関係を図示したものである。
車両目標加速度α*が閾値±αMaxの間にある場合(−αMax≦α*≦αMax)、目標車体傾斜角θ1 *は数式2により決定し、搭乗部目標位置λS *は数式5により決定する。
これにより、−αMax≦α*≦αMaxの範囲では、車体をθ1 *に傾けながら、搭乗部もλS *に動かすことにより、車体のバランスを保ちつつ、搭乗者に適切な加速度を感じさせることができる。
このように、閾値±αMaxの範囲内において、車両目標加速度α*の実現に必要な重心位置の移動を、車体傾斜と搭乗部移動の両者により行うが、その重心移動の分担を決定するのが、数式2と数式5における搭乗者加速度感受係数CSenseである。CSenseの値は0≦CSense≦1であり、予め設定しておく。
ある車両目標加速度α*に対して、設定値CSenseの値を大きくすると、目標車体傾斜角θ1 *は大きくなり(数式2)、搭乗部目標位置λS *は小さくなる(数式5)。
Senseは、搭乗者が加速度を感じる程度に相当する。
すなわち、CSense=1とすると、目標車体傾斜角θ1 *=0(数式2)となり、車体を全く傾けないため、搭乗者は車両の加減速による慣性力をそのまま感じる。
一方、CSense=0とすると、θ1 *=φ*=tan-1α*となり、車体を平衡傾斜角(重力と慣性力の合力の角度)まで傾けるため、搭乗者は慣性力を感じない(ただし、搭乗者にとって下向きの力は増加する)。
本実施形態では、搭乗者に最適な加速度を感じさせる値として、CSense=pが予め設定される。
例えば、CSense=1とした場合、車両目標加速度α*の実現に必要な重心位置の移動の全てを搭乗部13の移動で実現することになり、車体を直立状態に維持するように制御しながら走行する。
搭乗部移動量が限界±λS,Maxに達したとき、すなわち、車両目標加速度α*<−αMax、又は、α*>αMaxの場合、図5に示すように、車体をより大きく傾けてバランスを保つことになる(数式1、3)。
なお、搭乗部移動量に余裕のある場合には、車体傾斜角の方を制限してもよい。
(目標車体傾斜角θ1 *と搭乗部目標位置λS *の決定の変形例)
上記実施形態の説明では、車両目標加速度α*と閾値±αMaxとの関係から数式1〜数式3のいずれか、及び数式4〜数式6のいずれかを選択して目標車体傾斜角θ1 *と、搭乗部目標位置λS *を決定する場合について説明した。
これに対して、図6に示す目標値決定処理によって目標車体傾斜角θ1 *と、搭乗部目標位置λS *を決定してもよい。
図6は、第1実施形態における目標値決定処理の内容を表したフローチャートである。
主制御ECU21は、最初に数式2から車両目標加速度α*に対応する目標車体傾斜角θ1 *を算出する(ステップ10)。
そして、決定したθ1 *を用いて数式5から搭乗部目標位置λS *を算出し(ステップ11)、算出値λS *が搭乗部の移動可能な−λS,Max≦λS *≦λS,Maxの範囲内であるか否かを判断する(ステップ12)。
算出値λS *が搭乗部の移動可能な範囲内であれば(ステップ12;Y)、主制御ECU21は、ステップ10で算出したθ1 *を目標車体傾斜角に、ステップ11で算出したλS *を搭乗部目標位置に、それぞれ決定し(ステップ13)、処理を終了する。
一方、算出値λS *が搭乗部の移動可能な範囲外である場合(ステップ12;N)、主制御ECU21は、搭乗部移動量最大値±λS,Maxを搭乗部目標位置λS *に決定する(ステップ14)。
そして、数式1又は数式3を用いて車両目標加速度α*に対応するθ1 *を再度算出し、これを目標車体傾斜角θ1 *に決定し(ステップ15)、処理を終了する。
以上の目標値決定処理によれば、数式1〜数式3、数式4〜数式6のいずれの数式を使用するかを決定するための閾値αMaxを用いることなく、目標車体傾斜角θ1 *と搭乗部目標位置λS *を決定することができる。
本実施形態では、厳密な理論式である数式1〜数式6を用いて、車体目標姿勢を決定したが、より簡単な式を用いて決定してもよい。例えば、数式1〜数式6を線形化した式を使ってもよい。また、数式の代わりに、車両目標加速度α*と車体目標姿勢の関係をマップとして予め用意して、それを使って車体目標姿勢を決定してもよい。
一方、より複雑な関係式を用いてもよい。例えば、車両目標加速度α*の絶対値が所定の閾値以下の場合には、車体を全く傾けずに搭乗部のみを動かし、その閾値を超えた場合に車体を傾け始めるように、関係式を設定してもよい。
なお、本実施形態では、搭乗部の基準位置からの前方最大移動量と後方最大移動量が等しいとしているが、両者は異なってもよい。例えば、後方最大移動量の方を大きくすることにより、加速性能に比べて制動性能を高くすることができる。この場合には、閾値αMaxを各々の限界値に対応するように修正することで、容易に同様の制御を実現できる。
走行・姿勢制御処理(図4)の説明に戻り、主制御ECU21は、決定した各目標値を用いて残りの目標値を算出する(ステップ150)。
すなわち、各目標値を時間微分、あるいは、時間積分することにより、駆動輪回転角目標値θW *、車体傾斜角速度目標値[θ1 *]、搭乗部移動速度目標値[λS *]をそれぞれ算出する。
次に各アクチュエータのフィードフォワード出力を決定する(ステップ160)。
主制御ECU21は、次の数式7により、車両目標加速度α*を実現するのに必要だと予想される駆動モータ52のフィードフォワード出力τW,FFを決定する。ちなみに、数式7におけるM〜は、駆動輪の回転慣性分も考慮した車両の総質量である。
また、数式8により、各目標値から搭乗部モータ62のフィードフォワード出力SS,FFを決定する。このSS,FFは、目標車体傾斜角θ1 *に対して、搭乗部が重力によって移動せず、目標位置に留まるのに必要な搭乗部推力に相当する。
(数式7) τW,FF=M〜RWgα*
(数式8) SS,FF=−mSgsinθ1 *
数式7、8のようなフィードフォワード出力を与えることにより、各状態量をより高精度で制御することができる。
なお、この方法は、特に状態量の定常偏差を減少させるのに有効であるが、この代わりとしてフィードバック制御(ステップ190)で積分ゲインを与えてもよい。
次に主制御ECU21は、各センサから各状態量を取得する(ステップ170)。すなわち、駆動輪センサ51から駆動輪回転角(回転角速度)を、車体傾斜センサ41から車体傾斜角(傾斜角速度)を、搭乗部センサ61から搭乗部位置(移動速度)を、それぞれ取得する。
また主制御ECU21は、残りの状態量を算出する(ステップ180)。すなわち、駆動輪回転角(回転角速度)、車体傾斜角(傾斜角速度)、搭乗部位置(移動速度)を時間積分あるいは微分することにより、残りの状態量を算出する。
次に主制御ECU21は、各アクチュエータのフィードバック出力を決定する(ステップ190)。
すなわち、各目標値と実際の状態量の偏差から、数式9により駆動モータ52のフィードバック出力τW,FBを、数式10により搭乗部モータ62のフィードバック出力SS,FBを、それぞれ決定する。
なお、数式9、数式10におけるK**はフィードバックゲインであり、各フィードバックゲインK**は、例えば最適レギュレータの値を予め設定しておく。また、前述のように、定常偏差を無くすために、積分ゲインを導入してもよい。
(数式9) τW,FB=−KW1(θW−θW *)−KW2([θW]−[θW *])−KW3(θ1−θ1 *)−KW4([θ1]−[θ1 *])−KW5(λS−λS *)−KW6([λS]−[λS *])
(数式10) SS,FB=−KS1(θW−θW *)−KS2([θW]−[θW *])−KS3(θ1−θ1 *)−KS4([θ1]−[θ1 *])−KS5(λS−λS *)−KS6([λS]−[λS *])
なお、いくつかのフィードバックゲインを零とすることで、簡素化してもよい。例えば、数式9に代えてτW,FB=−KW2([θW]−[θW *])−KW3(θ1−θ1 *)、また数式10に代えてSS,FB=−KS5(λS−λS *)をそれぞれ用いてもよい。
最後に主制御ECU21は、各要素制御システムに指令値を与え(ステップ200)、メインルーチンにリターンする。
すなわち、主制御ECU21は、ステップ160で決定したフィードフォワード出力τW,FFと、ステップ190で決定したフィードバック出力τW,FBの和(τW,FF+τW,FB)を駆動トルク指令値τWとして、駆動輪制御ECU22に供給する。また、フィードフォワード出力SS,FFとフィードバック出力SS,FBの和(SS,FF+SS,FB)を搭乗部推力指令値SSとして、搭乗部制御ECU23に供給する。
これにより、駆動輪制御ECU22は、駆動トルク指令値τWに対応する入力電圧(駆動電圧)を駆動モータ52に供給することで、駆動輪に駆動トルクτWを与える。
また、搭乗部制御ECU23は、搭乗部推力指令値SSに対応した入力電圧(駆動電圧)を搭乗部モータ62に供給することで、搭乗部を移動させる。
(3)第2実施形態
第1実施形態では、搭乗者加速度感受係数CSenseを予め設定した値とすることで、車両の加速度(目標値)に対する体感加速度の割合を一定にしている。
これに対して第2実施形態では、搭乗者の好みに応じて体感加速度の程度を定量的に調整可能にする。すなわち、目標車体姿勢決定において、搭乗者の好みに応じて、体感加速度の程度を調節するように、車体傾斜角と搭乗部移動量を決定する。例えば、加速感を強く得たい場合には、車体傾斜を抑えて、搭乗部13を動かすようにする。そして、これを数式2における搭乗者加速度感受計数CSenseを可変とすることで実現する。
このように搭乗者加速度感受係数CSenseを変更することで、姿勢制御の安定性を確保しつつ、様々な搭乗者による様々な要求に応ずることができ、より快適な倒立型車両を提供することができる。
図7は、第2実施形態における制御システムの構成を表したものである。なお図3に示した第1実施形態における制御システムと同様である部分には同一の符号を付して、適宜その説明を省略する。
図7に示されるように、第2実施形態では入力装置30に、制御モード入力装置32を配置する。
制御モード入力装置32には、制御モード選択用のスイッチが配設されている。制御モードには、体感加速度は大きくなるが車体の傾斜をより抑えるスムーズモードと、体感加速度は小さくなるが車体傾斜が大きくなるアクティブモードが設けられている。
制御モード入力装置32からは、搭乗者が選択した制御モードが主制御ECU2121に供給される。
図8は、選択可能な制御モードと搭乗者加速度感受係数CSenseの対応を表した図である。
図8に示されるように、スムーズモードではCSense(数式2)を1に近い値、例えば、0.75に設定することで、体感加速度は大きくなるが、車体の傾斜は小さくなる(代わりに搭乗部の前後移動幅を大きくする)。
一方、アクティブモードではCSenseを0に近い値、例えば、0.25に設定することで、体感加速度は小さくなるが、車体傾斜は大きくなる(代わりに搭乗部の前後移動幅を小さくする)。
なお、第2実施形態では、2種類の制御モードを設けているが、更に多くのモード(例えば、CSense=0.5を加えた3モード、更にCSense=1、0を加えた5モード等)を設けるようにしてもよい。
また、搭乗者が数値(要求車体傾斜度)を入力し、その値に応じて係数CSenseを変えるようにしてもよい。この場合、ダイヤル式のアナログ入力装置やタッチパネル式のデジタル入力装置を制御モード入力装置32に配設する。
このように構成された第2実施形態における走行・姿勢制御処理について、図9のフローチャートに従って説明する。なお、第2実施形態におけるフローチャートの説明では、第1実施形態と同様の部分について同一の符号、ステップ番号を付し、同一部分については適宜その説明を省略することとする。
第2実施形態における走行・姿勢制御において、主制御ECU21は、初めに、第1実施形態と同様に、搭乗者の意志に従って車両をどのように動かすのか、すなわち、車両の走行目標を決定する(ステップ110〜ステップ130)。
そして、主制御ECU21は、制御モード信号を取得し(ステップ131)、搭乗者加速度感受係数を決定する(ステップ132)。すなわち、搭乗者が制御モード入力装置32によって指令した制御モードを認識し、その制御モードに対応した値を搭乗者加速度感受係数CSenseに設定する(図8参照)。
次に主制御ECU21は、目標車体傾斜角θ1 *と搭乗部目標位置λS *を決定する(ステップ140)。第2実施形態では、車両目標加速度α*と設定した搭乗者加速度感受係数CSenseを使用して、車体目標姿勢を決定する。すなわち、数式1〜数式3により目標車体傾斜角θ1 *を決定し、数式4〜数式6により搭乗部目標位置λS *を決定する。
なお、この第2実施形態においても、第1実施形態と同様に図6で説明した目標値決定処理により、目標車体傾斜角θ1 *と搭乗部目標位置λS *を決定するようにしてもよい。
以下第1実施形態と同様に、主制御ECU21は、目標とする車両走行状態と車体姿勢を実現するために必要な駆動モータ52、搭乗部モータ62の出力値を決定し、その値に応じて、駆動モータ52と搭乗部モータ62の実際の出力を駆動輪制御ECU22と搭乗部制御ECU23で制御し(ステップ150〜ステップ200)、メインルーチンにリターンする。
この第2実施形態によれば、車体を傾けて加減速を行うか、シートを動かして加減速を行うか、その搭乗者の「好み」に合わせて定量的に調整することができる。
「好み」は、その時の気分、状況によって変化するため、それに応じて逐次調整する必要がある。また、複雑な制御系のパラメータを搭乗者自身に調整させるのは難しく、さらに、急加減速時には、その車体姿勢制御の安定性を確保するため、搭乗者の要求に反して、シートや車体を大きく傾ける必要がある。これらの課題に対して、本実施形態では、パラメータ1つの変更で簡単に乗り心地を調整でき、逐次調整が可能で、高加減速時の安定性も確保した制御を実現している。
(4)第3実施形態
次に第3実施形態について説明する。
第1実施形態、第2実施形態では、車両目標加速度α*に対する重心位置の移動を、車体傾斜と搭乗部移動によって行う場合について説明したが、第3実施形態では、搭乗部とは別の重量物であるバランサを前後に動かすことで倒立型車両前後方向の走行・姿勢制御を行う。
すなわち、加減速、停止など、目標とする走行状態に応じて、車体傾斜、搭乗部位置、バランサ位置を制御し、車体のバランスを保ちつつ、目標とする走行状態を実現する。
なお、第3実施形態の説明では省略するが、第2実施形態と同様に、搭乗者の体感加速度に対する好みに応じて搭乗者加速度感受計数CSenseを可変としてもよい。
図10は、第3実施形態における制御システムの構成を表したものである。なお図3に示した第1実施形態における制御システムと同様である部分には同一の符号を付して、適宜その説明を省略する。
図10に示されるように、第3実施形態における制御システムは、バランサ制御ECU24、バランサセンサ(バランサ移動状態計測装置)71、バランサモータ(バランサアクチュエータ)72を更に備えており、主制御ECU21はこれら各部と共にバランサ制御システム70として機能するようになっている。
バランサセンサ71は、バランサ位置のデータを主制御ECU21に供給する。主制御ECU21は、バランサ推力指令値をバランサ制御ECU24に供給し、バランサ制御ECU24は、バランサ推力指令値に相当する入力電圧(駆動電圧)をバランサ駆動アクチュエータ62に供給する。
他の構成については、図3で説明した第1実施形態と同様である。
図11は、バランサ134を任意の位置に移動させるバランサ移動機構について、その構成例を表したものである。
このバランサ移動機構は、重量体移動手段として機能し、車体の一部を構成する。バランサ移動機構は、重量体であるバランサ134を前後方向に動かすことによって車体の重心を移動させる。
バランサ134は、搭乗部13と駆動輪11との間に配置されている。このバランサ134は、バランサ駆動アクチュエータ62によって前後方向(車体中心軸と車軸に垂直な方向)に移動可能であるように構成されている。
本実施形態である図11(a)のバランサ移動機構は、スライダ型アクチュエータ135によって、スライダ上でバランサ134を直線移動させる。
他の実施形態として、図11(b)、(c)に示すバランサ移動機構は、回転移動型バランサを用いた機構である。支持軸136の一端にはバランサ134が配設され、支持軸136の他端部には、バランサ支持軸回転モータ137、138のロータが固定されている。そして、バランサ支持軸モータ137、138によって、支持軸136を半径とする円周軌道上でバランサ134を移動させる。
図11(b)のバランサ移動機構では、バランサ支持軸回転モータ137が座面部131の下部に配設され、円周軌道上の下側でバランサ134が移動する。
図11(c)のバランサ移動機構では、バランサ支持軸回転モータ138が駆動輪11と同軸上に配設され、円周軌道上の上側でバランサ134が移動する。
なお、他のバランサ移動機構の例として、伸縮型のアクチュエータによりバランサ134を移動させるようにしてもよい。
例えば、2本の伸縮型アクチュエータのそれぞれ一端を車両の前方と後方に固定し、他端をそれぞれバランサ134に固定し、両伸縮型アクチュエータの一方を伸ばし、他方を縮めることで、バランサ134を直線移動させてもよい。
図12は、本実施形態のバランサを含む車両姿勢制御系の力学モデルを図示したものである。なお、この力学モデルにおけるバランサを除いた他の部分については、他の実施形態にも適用可能である。
図12におけるバランサ134は、車軸及び車両中心軸に垂直な方向に移動する図12(a)の場合を例示している。
この図12における各記号は次の通りである。なお、本説明中の数式における記号についても同様である。
(a)状態量
θW:駆動輪回転角[rad]
θ1:車体傾斜角(鉛直軸基準)[rad]
λ2:バランサ位置(車体中心点基準)[m]
λS:搭乗部位置(車体中心点基準)[m]
(b)入力
τW:駆動トルク(2輪合計)[Nm]
B:バランサ推力[N]
S:搭乗部推力[N]
(c)物理定数
g:重力加速度[m/s2
(d)パラメータ
W:駆動輪質量(2輪合計)[kg]
W:駆動輪接地半径[m]
W:駆動輪慣性モーメント(2輪合計)[kgm2
W:駆動輪回転に対する粘性減衰係数[Ns/rad]
1:車体質量(搭乗部、バランサ含む)[kg]
1:車体重心距離(車軸から)[m]
1:車体慣性モーメント(重心周り)[kgm2
1:車体傾斜に対する粘性減衰係数[Ns/rad]
2:バランサ質量[kg]
2:バランサ基準重心距離(車軸から)[m]
2:バランサ慣性モーメント(重心周り)[kgm2
2:バランサ並進に対する粘性減衰係数[Ns/m]
S:搭乗部質量[kg]
S:搭乗部基準重心距離(車軸から)[m]
S:搭乗部慣性モーメント(重心周り)[kgm2
S:搭乗部並進に対する粘性減衰係数[Ns/m]
このように構成された第3実施形態における走行・姿勢制御処理について説明する。
なお、第3実施形態における走行・姿勢制御処理は図4で説明した第1実施形態とほぼ同様に処理されるので、図4を参照しながら第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、同一部分については適宜その説明を省略することとする。
第3実施形態における走行・姿勢制御において、主制御ECU21は、初めに、第1実施形態と同様に、搭乗者の意志に従って車両をどのように動かすのか、すなわち、車両の走行目標を決定する(ステップ110〜ステップ130)。
そして、主制御ECU21は、各状態量の目標値である、目標車体傾斜角θ1 *、搭乗部目標位置λS *、バランサ目標位置λ2 *を決定する(ステップ140)。
すなわち、ステップ120で決定した車両目標加速度α*の大きさに応じた次の数式11〜数式13により目標車体傾斜角θ1 *を、数式14〜数式18により搭乗部目標位置λS *を、数式19〜数式21によりバランサ目標位置λ2 *を、それぞれ決定する。
(数式11) θ1 *=φ*−βS,Max+sin-1(γsinφ*cosβS,Max) (α*<−αS,Max
(数式12) θ1 *=(1−CSense)φ* (−αS,Max≦α*≦αS,Max
(数式13) θ1 *=φ*+βS,Max+sin-1(γsinφ*cosβS,Max) (α*>αS,Max
(数式14) λS *=−λS,Max (α*<−αS,Max
(数式15) λS *=l1(m1/mS)[tan(φ*−θ1 *)+γ(sinφ*/cos(φ*−θ1 *))]+(m2/mS)λ2,Max (−αS,Max≦α*<−α2,Max
(数式16) λS *=0 (−α2,Max≦α*≦α2,Max
(数式17) λS *=l1(m1/mS)[tan(φ*−θ1 *)+γ(sinφ*/cos(φ*−θ1 *))]−(m2/mS)λ2,Max (α2,Max<α*≦αS,Max
(数式18) λS *=λS,Max (α*>αS,Max
(数式19) λ2 *=−λ2,Max (α*<−α2,Max
(数式20) λ2 *=l1(m1/m2)[tan(φ*−θ1 *)+γ(sinφ*/cos(φ*−θ1 *))] (−α2,Max≦α*≦α2,Max
(数式21) λ2 *=λ2,Max (α*>α2,Max
数式11、数式13において、βS,Maxは次の通りである。
βS,Max=tan-1((mSλS,Max+m2λ2,Max)/m11
また、λ2,Maxは、バランサ移動量最大値で設定値である。
数式11〜数式21における他の記号については、第1実施形態における数式1〜数式6と同様である。
閾値α2,Maxは、数式20においてλ2 *=λ2,Maxとしたとき、すなわち、バランサを限界まで動かしたときの車両目標加速度α*であり、閾値αs,Maxは、数式17においてλS *=λS,Maxとしたとき、すなわち、搭乗部を限界まで動かしたときの車両目標加速度α*である。
これらの閾値α2,MaxS,Maxは、第1実施形態と同様に既定値であるが、解析的に求めることが出来ないため、繰り返し計算や近似式等を用いることで決定する。
図13は、数式11〜数式21で与えられる車両目標加速度α*(横軸)と目標車体傾斜角θ1 *、搭乗部目標位置λS *、バランサ目標位置λ2 *の関係を図示したものである。
車両目標加速度α*が閾値±α2,Maxの間にある場合(−α2,Max≦α*≦α2,Max)、搭乗部目標位置をλS *=0(数式16)とし、車両目標加速度α*の実現に必要な重心位置の移動を、バランサ移動と車体傾斜により実現する。
すなわち、バランサ目標位置λ2 *を数式20により、目標車体傾斜角θ1 *を数式12により、それぞれ決定する。
車両目標加速度α*が、閾値±α2,Maxと閾値±αS,Maxの間にある場合(−αS,Max≦α*≦−α2,Max、又は、α2,Max≦α*≦αS,Max)、その目標加速度の向き(+か−か)に応じてバランサを移動限界であるバランサ目標位置λ2 *=±λ2,Max(数式19、数式21)に固定し、車両目標加速度α*の実現に必要な重心位置のさらなる移動を、搭乗部移動と車体傾斜により実現する。
つまり、車両目標加速度α*が+(加速)の場合、バランサ位置λ*を+の限界値、車両目標加速度α*が−(減速)の場合は、バランサ位置λ*を−の限界値に固定する。
すなわち、搭乗部目標位置λS *を数式15、数式17により、目標車体傾斜角θ1 *を数式12により、それぞれ決定する。
車両目標加速度α*が、閾値±αS,Maxの範囲外にある場合(α*<−αS,Max、又は、αS,Max<α*)、バランサを移動限界であるバランサ目標位置λ2 *=±λ2,Max(数式19、数式21)に、搭乗部を移動限界である搭乗部目標位置λS *=±λS,Max(数式14、数式18)に、それぞれ固定し、車両目標加速度α*の実現に必要な重心位置のさらなる移動を、車体傾斜で実現する。
すなわち、目標車体傾斜角θ1 *を数式11、数式13により決定する。
このように第3実施形態では、低加速度時には、搭乗部は動かさず、バランサのみを動かすことでバランスを保ち、バランサ移動量が限界に達したときには、搭乗部も移動してバランスを保つ。
これにより、低加速度に対して搭乗部を動かすことなく、かつ、小さな車体傾斜で、搭乗者に適切な加速度を感じさせることができる。
(目標車体傾斜角θ1 *、バランサ目標位置λ2 *、搭乗部目標位置λS *の決定の変形例)
上記実施形態の説明では、車両目標加速度α*と閾値±α2,Max、±αS,Maxの関係から数式11〜数式13、数式14〜数式18、数式19〜数式21のいずれかを選択して、各目標値(目標車体傾斜角θ1 *、バランサ目標位置λ2 *、搭乗部目標位置λS *)を決定する場合について説明した。
これに対して、第1実施形態における変形例と同様に、図14に示す目標値決定処理によって各目標値を決定してもよい。
図14は、第3実施形態における目標値決定処理の内容を表したフローチャートである。
主制御ECU21は、最初に数式12から車両目標加速度α*に対応する目標車体傾斜角θ1 *を算出する(ステップ30)。
そして、決定したθ1 *を用いて数式20からバランサ目標位置λ2 *を算出し(ステップ31)、算出値λ2 *がバランサの移動可能な−λ2,Max≦λ2 *≦λ2 * ,Maxの範囲内であるか否かを判断する(ステップ32)。
算出値λ2 *がバランサの移動可能な範囲内であれば(ステップ32;Y)、主制御ECU21は、ステップ30で算出したθ1 *を目標車体傾斜角に、ステップ31で算出したλ2 *をバランサ目標位置に、それぞれ決定し(ステップ33)、処理を終了する。
一方、算出値λ2 *が搭乗部の移動可能な範囲外である場合(ステップ32;N)、主制御ECU21は、バランサ移動量最大値±λ2,Maxをバランサ目標位置λ2 *に決定する(ステップ34)。
そして、ステップ30で決定したθ1 *を再び用いて、数式15又は数式17から搭乗部目標位置λS *を算出し(ステップ361)、算出値λS *が搭乗部の移動可能な−λS,Max≦λS *≦λS,Maxの範囲内であるか否かを判断する(ステップ36)。
算出値λS *が搭乗部の移動可能な範囲内であれば(ステップ36;Y)、主制御ECU21は、ステップ30で算出したθ1 *を目標車体傾斜角に、ステップ35で算出したλS *を搭乗部目標位置に、それぞれ決定し(ステップ37)、処理を終了する。
一方、算出値λS *が搭乗部の移動可能な範囲外である場合(ステップ36;N)、主制御ECU21は、搭乗部移動量最大値±λS,Maxを搭乗部目標位置λS *に決定する(ステップ38)。
そして、数式11又は数式13を用いて車両目標加速度α*に対応するθ1 *を再度算出し、これを目標車体傾斜角θ1 *に決定し(ステップ39)、処理を終了する。
以上の目標値決定処理によれば、数式11〜数式13、数式14〜数式18、数式19〜数式21のいずれの数式を使用するかを決定するための閾値α2,MaxS,Maxを用いることなく、目標車体傾斜角θ1 *、バランサ目標位置λ2 *、搭乗部目標位置λS *を決定することができる。
本実施形態では、厳密な理論式である数式11〜数式21を用いて、車体目標姿勢を決定したが、より簡単な式を用いて決定してもよい。例えば、数式11〜数式21を線形化した式を使ってもよい。また、数式の代わりに、車両目標加速度α*と車体目標姿勢の関係をマップとして予め用意して、それを使って車体目標姿勢を決定してもよい。
一方、より複雑な関係式を用いてもよい。例えば、車両目標加速度α*の絶対値が所定の閾値以下の場合には、車体を全く傾けずにバランサと搭乗部を動かし、その閾値を共に超えた場合に車体を傾け始めるように、関係式を設定してもよい。
なお、本実施形態では、搭乗部やバランサの基準位置からの前方最大移動量と後方最大移動量が等しいとしているが、両者は異なってもよい。例えば、後方最大移動量の方を大きくすることにより、加速性能に比べて制動性能を高くすることができる。この場合には、閾値αMaxを各々の限界値に対応するように修正することで、容易に同様の制御を実現できる。
走行・姿勢制御処理(図4)の説明に戻り、主制御ECU21は、決定した各目標値θ1 *、λ2 *、λS *を用いて残りの目標値を算出する(ステップ150)。
すなわち、各目標値を時間微分、あるいは、時間積分することにより、駆動輪回転角目標値θW *、車体傾斜角速度目標値[θ1 *]、バランサ移動速度目標値[λ2 *]、搭乗部移動速度目標値[λS *]をそれぞれ算出する。
次に、各アクチュエータのフィードフォワード出力を決定する(ステップ160)。主制御ECU21は、第1実施形態と同様に、数式7、数式8により、駆動モータ52、搭乗部モータ62のフィードフォワード出力τW,FF、SS,FFをそれぞれ決定する。また、バランサモータ72のフィードフォワード出力SB,FFを、数式22により決定する。
このSB,FFは、搭乗部モータ62のフィードフォワード出力SS,FFと同様に、目標車体傾斜角θ1 *に対して、バランサを目標位置に留めるのに必要なバランサ推力に相当する。
(数式22) SB,FF=−m2gsinθ1 *
数式7、数式8、数式22のようなフィードフォワード出力を与えることにより、各状態量をより高精度で制御することができる。
なお、第1実施形態と同様に、この代わりとして、フィードバック制御(ステップ190)で積分ゲインを与えてもよい。
次に主制御ECU21は、各センサから各状態量を取得する(ステップ170)。すなわち、駆動輪センサ51から駆動輪回転角(回転角速度)を、車体傾斜センサ41から車体傾斜角(傾斜角速度)を、搭乗部センサ61から搭乗部位置(移動速度)を、バランサセンサ71からバランサ位置(移動速度)を、それぞれ取得する。
また主制御ECU21は、残りの状態量を算出する(ステップ180)。すなわち、駆動輪回転角(回転角速度)、車体傾斜角(傾斜角速度)、搭乗部位置(移動速度)、バランサ位置(移動速度)を時間積分あるいは微分することにより、残りの状態量を算出する。
次に主制御ECU21は、各アクチュエータのフィードバック出力を決定する(ステップ190)。
すなわち、各目標値と実際の状態量の偏差から、数式23により駆動モータ52のフィードバック出力τW,FBを、数式24により搭乗部モータ62のフィードバック出力SS,FBを、数式25によりバランサモータ72のフィードバック出力SB,FBを、それぞれ決定する。
なお、数式23〜数式25におけるK**はフィードバックゲインであり、各フィードバックゲインK**は、例えば最適レギュレータの値を予め設定しておく。また、前述のように、定常偏差を無くすために、積分ゲインを導入してもよい。
(数式23) τW,FB=−KW1(θW−θW *)−KW2([θW]−[θW *])−KW3(θ1−θ1 *)−KW4([θ1]−[θ1 *])−KW5(λS−λS *)−KW6([λS]−[λS *])−KW7(λ2−λ2 *)−KW8([λ2]−[λ2 *])
(数式24) SS,FB=−KS1(θW−θW *)−KS2([θW]−[θW *])−KS3(θ1−θ1 *)−KS4([θ1]−[θ1 *])−KS5(λS−λS *)−KS6([λS]−[λS *])−KS7(λ2−λ2 *)−KS8([λ2]−[λ2 *])
(数式25) SB,FB=−KB1(θW−θW *)−KB2([θW]−[θW *])−KB3(θ1−θ1 *)−KB4([θ1]−[θ1 *])−KB5(λS−λS *)−KB6([λS]−[λS *])−KB7(λ2−λ2 *)−KB8([λ2]−[λ2 *])
なお、いくつかのフィードバックゲインを零とすることで、簡素化してもよい。例えば、数式23に代えてτW,FB=−KW2([θW]−[θW *])−KW3(θ1−θ1 *)、また数式24に代えてSS,FB=−KS5(λS−λS *)、また数式25に代えてSB,FB=−KB7(λ2−λ2 *)をそれぞれ用いてもよい。
最後に主制御ECU21は、各要素制御システムに指令値を与え(ステップ200)、メインルーチンにリターンする。
すなわち、主制御ECU21は、ステップ160で決定したフィードフォワード出力τW,FFと、ステップ190で決定したフィードバック出力τW,FBの和(τW,FF+τW,FB)を駆動トルク指令値τWとして、駆動輪制御ECU22に、フィードフォワード出力SS,FFとフィードバック出力SS,FBの和(SS,FF+SS,FB)を搭乗部推力指令値SSとして、搭乗部制御ECU23に、フィードフォワード出力SB,FFとフィードバック出力SB,FBの和(SB,FF+SB,FB)をバランサ推力指令値S2として、バランサ制御ECU24に、それぞれ供給する。
これにより、駆動輪制御ECU22は、駆動トルク指令値τWに対応する入力電圧(駆動電圧)を駆動モータ52に供給することで、駆動輪に駆動トルクτWを与える。
またバランサ制御ECU24は、バランサ推力指S2に対応した入力電圧(駆動電圧)をバランサモータ72に供給することで、バランサを移動させる。
更に、搭乗部制御ECU23は、搭乗部推力指令値SSに対応した入力電圧(駆動電圧)を搭乗部モータ62に供給することで、搭乗部を移動させる。
以上説明した各実施形態及びその変形例では重量体(搭乗員、搭乗物等)を含む搭乗部13の質量mSについて、搭乗部13自体の質量と予め想定される搭乗員、搭乗物の質量とから設定した値を使用するようにしている。
これに対して、搭乗部13の重量体(搭乗員等)の違いなどに基づく搭乗部13の質量変動を考慮するようにしてもよい。すなわち、目標値決定に必要な搭乗部質量13について、計測器やオブザーバによって、実際の値を取得し、目標値決定の各数式に適用する。
このように、実際の値を各数式に代入することにより、より正確な姿勢制御を行うことが可能になる。
実際の搭乗部質量の値を取得する方法としては、(a)搭乗部に荷重計を設け、その計測値を利用する方法、(b)各アクチュエータ出力と各状態量に基づくオブザーバにより、その値を推定する方法がある。以下各々について説明する。
(a)変形例1…荷重計の使用
この変形例の場合、搭乗部13に荷重計を配設し、垂直加重WS(座面部131に垂直な成分)を計測し主制御ECU21に供給する。
そして、次の数式26に従って、搭乗者等を含む搭乗部質量mSを算出する。
数式26において、mS,0は搭乗部質量の非変動分(搭乗者の有無に依らない質量;シートなど搭乗部13単独の質量)で、gは重力加速度である。
(数式26)mS=mS,0+(WS/gcosθ1
なお、この変形例では、垂直荷重を計測する荷重計を配置するが、水平成分も計測できる荷重計を用いてもよい。この場合、車体傾斜角の値を用いることなく、搭乗部質量を決定することができる。
そして主制御ECU21は、数式26で算出した搭乗部質量mSの値に対して、ローパスフィルタをかけて、高周波成分を取り除く。これにより、ノイズに起因する車体やシートの振動を無くすことができる。
なお、車体重量m1についても、搭乗部質量の標準値(想定に基づき、あらかじめ設定した値)との差を加えておく。
また、本変形例では、搭乗部重量変動の影響を、車体重量m1に対して考慮しているが、車体の重心距離l1や慣性モーメントI1についても、この影響を考慮するようにしてもよい。
また、搭乗部重量変動が直接影響するパラメータ(mS、m1、l1、I1)だけでなく、たとえば、フィードバックゲインについても、その影響を考慮して次の数式27によって修正するようにしてもよい。
数式27において記号〜は標準値を表す。
(数式27)KS5=(mS/m〜S)K〜S5
(b)変形例2…オブザーバによる推定
上記変形例1では、搭乗部質量mS(および、車体質量m1)の値を荷重計による実測値から数式26で算出する場合について説明したが、この変形例2では、搭乗部の移動状態λSやバランサ推力SBなどに基づくオブザーバによって、搭乗部質量mSの値を推定する。
主制御ECU21は、次の数式28の搭乗部移動モデルにより、搭乗部質量mSを推定する。gは重力加速度、CSはシート移動に対する粘性摩擦係数を表す。また、各状態量xの加速度[[x]]については、速度[x]を微分することにより求める。
数式28では、例えば、シート移動に要する推力SSが大きいほど、大きな搭乗部質量mSが推定される。
(数式28)mS=(SS−DSS])/([[λS]]+λS[[θ1]]+acosθ1−gsinθ1
数式28による搭乗部移動モデルでは、乾性摩擦は考慮していないが、それらを厳密に考慮した詳細なモデル、あるいは、車体傾斜などの複数のモデルを用いることで搭乗部質量mSを推定するようにしてもよい。
また、数式28で与えられる搭乗部質量mSの推定値に対して、ローパスフィルタをかけて、高周波成分を取り除くことで、オブザーバを安定化させると共に、ノイズによる振動を抑制するすることができる。
なお、初めて走行・姿勢制御処理のループに入ったときには、(オブザーバの初期値として)搭乗部質量に標準値を与える。
変形例2では、力学的モデルに基づくオブザーバによって、搭乗部重量mSを推定しているが、より簡単な方法を用いてもよい。たとえば、数式28の代わりに、搭乗部13を動かすのに最低限必要な推力とそのときの搭乗部重量mSの関係を計測した結果を、あらかじめマップとして記憶しておき、それを用いて推定するようにしてもよい。
この変形例1、2によれば、搭乗部13(搭乗者等を含む)の質量mSについて、予め想定した設定値ではなく、より実値に近い値を推定するので、目標とする車両運動、車体姿勢に対する定常偏差を極力抑え、適切な制御を行うことができる。これにより、姿勢制御の安定性向上、精度向上を実現することができる。
次に第4実施形態から第9実施形態について説明する。
なお、第2実施形態、第3実施形態及び第4実施形態から第9実施形態までの各実施形態と変形例については、第1実施形態に加えて、全てを備えた車両とすることが最適であるが、少なくとも1以上の実施形態、変形例を第1実施形態に適用した車両とすることが可能である。
この第4実施形態では、車両目標加速度α*の周波数成分に応じて、車体傾斜と搭乗部移動の使い分けを行うものである。具体的には、目標車体姿勢決定において、車両目標加速度α*の低周波成分を車体傾斜に、高周波成分を搭乗部移動に対応させることで、急な車体傾斜を防ぎ、乗り心地を向上させる。
車体を傾けて加減速する場合、急加減速時に車体が急に傾くため、乗り心地が悪い。すなわち、車体が傾くのは、車両との一体感が得られて良いが、急に傾くのは不快に感じることがある。
また、速く細かい加減速時に、この加減速に合わせて車体が前後に傾斜することも、乗り心地の低下をもたらす。
そこで、第4実施形態では、搭乗者が入力した走行目標に対応する車両目標加速度α*について、それを周波数フィルタによって、低周波成分と高周波成分に分割し、低周波成分を車体傾斜に、高周波成分を搭乗部移動に、それぞれ対応させることで急加減速時の急激な車体傾斜を防止している。
図15は、車体傾斜と搭乗部移動に対する、車両目標加速度α*の各周波数成分毎の重み付けを表したものである。
図15に示されるように、所定の周波数fc1未満では車体傾斜対応分が大きく、fc1以上では搭乗部移動対応分が大きくなるように、車両目標加速度α*の各周波数成分毎に車体傾斜と搭乗部移動に対する重み付けを決定する。
なお、所定の周波数fc1の値は、車体傾斜に対して搭乗者が不快に感じない程度の周波数であり、予め所定の値、例えば1Hzが設定されている。
図16は、第4実施形態による急加速時の車体傾斜と搭乗部移動の状態変化を表したものである。
搭乗者の急な加速指令直後は、その高周波成分(急激な変化)に応じて、図16(a)に示されるように、搭乗部13を前方に移動させ、車体の重心を前方に移動させることで、急加速に対応する。
その後、一定の加速指令が与えられ続けると、その低周波成分(一定値、あるいは、緩やかな変化)に応じて、図16(b)に示されるように、搭乗部13を徐々に前方に傾斜させながら、搭乗部13を後方に(元の基準位置方向に)移動させる。
これにより、急加速指令の直後は、車体を傾けることなく搭乗部13を前方に移動させ、その後ゆっくりと車体を前方に傾けることで、乗り心地のよい急加速を実現する。
次に第4実施形態による走行・姿勢制御について説明する。
なお、第4実施形態における制御システムの構成は、図3で説明した第1実施形態と同様である
図17は、第4実施形態による走行・姿勢制御処理の内容を表したフローチャートである。なお、第4実施形態におけるフローチャートの説明では、第1実施形態と同様の部分について同一の符号、ステップ番号を付し、適宜その説明を省略することとする。
第4実施形態における走行・姿勢制御において、主制御ECU21は、初めに、第1実施形態と同様に、搭乗者の意志に従って車両をどのように動かすのか、すなわち、車両の走行目標を決定する(ステップ110〜ステップ130)。
次に主制御ECU21は、車両目標加速度α*の低周波成分α1 *を算出する(ステップ141)。すなわち、次の数式29で示される、ローパスフィルタにより、車両目標加速度α*の車体傾斜対応分である低周波成分α1 *を算出する。
(数式29)
α1 *=ξα*+(1−ξ)α1 *(k-1)
数式29において、α*は今回の(本時間ステップにおける)車両目標加速度の値、α1 *(k-1)はΔt前の時刻における車両目標加速度の低周波成分の値である。
また、Δtを制御演算周期、TC(=1/fC1)をローパスフィルタの時定数とした場合、ξ=Δt/TCである。すなわち、このξの値が小さいと、低周波成分α1 *の変化は緩やかになり、低周波成分α1 *に応じて変化する車体の傾きもゆっくり変化することになる。なお、ローパスフィルタの時定数TC、あるいは、カットオフ周波数fC1は、搭乗者の好みにより変更可能としてもよい。
なお、上記数式29は、1次の有限インパルス型ローパスフィルタに相当するが、別の種類、あるいは、より高次のフィルタを用いるようにしてもよい。
次に、主制御ECU21は、車両目標加速度α*の低周波成分α1 *から目標車体傾斜角θ1 *を決定する(ステップ142)。
すなわち、主制御ECU21は、第1実施形態における数式1〜数式3に変えて、次の数式30〜数式32により、車両目標加速度α*の低周波成分α1 *から、目標車体傾斜角θ1 *を決定する(ステップ142)。
数式31においてφ1 *=tan-1α1 *であり、α1 *はステップ141で算出した車両目標加速度α*の低周波成分であり、その他の記号は数式1〜数式3と同様である。
(数式30)θ1 *=φ*−βMax+sin-1(γsinφ*cosβMax) (α*<−αMax
(数式31)θ1 *=(1−CSense)φ1 * (−αMax≦α*≦αMax
(数式32)θ1 *=φ*+βMax+sin-1(γsinφ*cosβMax) (α*>αMax
なお、車両目標加速度α*が、搭乗部移動限界に対応する加速度αMaxを超える場合には搭乗部13を移動することができないので、車両目標加速度α*の周波数に関わらず、車体傾斜によって対応することで、車体姿勢制御の安定性を確保する。
ただし、高周波成分が限界を超過する時間は短いため、この限界を無視するようにしてもよい。この場合には、車両目標加速度α*に関わらず常に数式31を適用する。
次に、主制御ECU21は、搭乗部目標位置λS *を決定する(ステップ143)。
すなわち、主制御ECU21は、第1実施形態と同様に、車両目標加速度α*と目標車体傾斜角θ1 *から、数式4〜数式6により搭乗部目標位置λS *を決定する。
なお、第1実施形態、第3実施形態において、目標車体傾斜角θ1 *と搭乗部目標位置λS *を決定する手法の変形例について図6、図14の目標値決定処理に従って説明したが、第4実施形態〜第9実施形態においても説明した変形例と同様にして決定するようにしてもよい。
すなわち、主制御ECU21は、−αMax≦α*≦αMaxを満たす場合の数式(第4実施形態では数式31)から車両目標加速度α*に対応する目標車体傾斜角θ1 *を算出する。
そして、算出したθ1 *を用いて数式5から搭乗部目標位置λS *を算出し、搭乗部の移動可能な−λS,Max≦λS *≦λS,Maxの範囲内であれば、算出したθ1 *を目標車体傾斜角に、λS *を搭乗部目標位置に、それぞれ決定する。
一方、算出値λS *が搭乗部の移動可能な範囲外であれば、搭乗部移動量最大値±λS,Maxを搭乗部目標位置λS *に決定し、数式1又は数式3を用いて車両目標加速度α*に対応するθ1 *を再度算出し、これを目標車体傾斜角θ1 *に決定する。
目標車体傾斜角θ1 *と搭乗部目標位置λS *を決定した後、主制御ECU21は、以下第1実施形態と同様に、目標とする車両走行状態と車体姿勢を実現するために必要な駆動モータ52、搭乗部モータ62の出力値を決定し、その値に応じて、駆動モータ52と搭乗部モータ62の実際の出力を駆動輪制御ECU22と搭乗部制御ECU23で制御し(ステップ150〜ステップ200)、メインルーチンにリターンする。
このように第4実施形態によれば次のような効果を得ることができる。
(1)急加減速時に車体が急に傾くことが無く、乗り心地が良い。
(2)速く細かい加減速時に、車体が前後に揺れることが無い。
(3)代わりに搭乗部が急に移動するが、これにより搭乗者の視界が上下動することは無く、さらに、搭乗部は搭乗者が要求する加速度方向に移動するため、搭乗者は、例えば、立ち上がりの加速感、制動操作直後の減速感を、より強く感じることができる。
なお第4実施形態の変形例として、例えば、搭乗部移動の可動速度(あるいは加速度)が、車体傾斜の可動速度(あるいは加速度)よりも低い場合、低周波成分を搭乗部移動に、高周波成分を車体傾斜に分配するようにしてもよい。
このように車両の力学的構造、各システム要素の性能に適合させることにより、姿勢制御をより安定化できる。
次に第5実施形態について説明する。
この第5実施形態では、目標車体姿勢決定において、車両速度が高い場合には、予め、搭乗部13を前方に移動させると共に、車体を後方に傾斜させることで、急減速直後の車体姿勢の大きな変化を抑えるようにしたものである。
車体を後方に傾けることで重心を後方に移動して減速する倒立車両の場合、急制動時に車体が急に大きく後傾するため、搭乗者にとって乗り心地が悪く、視界の急な上下動により、搭乗者の制動操作にも影響を及ぼす可能性がある。
一方、車両の走行速度が高くなるほど、搭乗者から急制動、すなわち、大きな減速度を要求される可能性が高くなる。
そこで第5実施形態では、車両目標加速度α*に応じた目標車体姿勢(目標車体傾斜角θ1 *と搭乗部目標位置λS *)の決定において、車両速度の増加に従い、搭乗部13を前方へ移動させるのと共に、車体を後方に傾斜させることで搭乗者の急制動操作に備える。
図18は、第5実施形態による車体傾斜と搭乗部移動の状態を表したものである。
図18(a)に示すように、低速走行時には、第1実施形態と同様にして、車両目標加速度α*に応じた目標車体姿勢(目標車体傾斜角θ1 *と搭乗部目標位置λS *)で走行する。
一方、図18(b)に示すように、高速走行時には、車両速度の増加に従って、図18(b)の矢印A1で示すように車体を後方に傾斜させると共に、矢印B1に示すように搭乗部13を前方に移動する。この場合、車体後方傾斜による重心の後方移動量と、搭乗部前方移動とによる重心の前方移動量とを等しくすることで、本実施形態の目標車体姿勢の補正によって、重心位置Pが適切な位置からずれることを防ぐ。
この状態で制動指令を受けた場合、第1実施形態と同様に決定した、目標車体姿勢(目標車体傾斜角θ1 *と搭乗部目標位置λS *)で制動を行うことになるが、例えば急制動を指令された場合、図18(c)に示すように、その急制動指令に対応して、矢印B2で示すように搭乗部13を後方に移動させると共に、矢印A2で示すように車体を後方に傾斜させるが、急制動に備えて既に車体をある程度後傾させてあるので、車体傾斜の変化量を小さくすることができる。
次に第5実施形態による走行・姿勢制御について説明する。
なお、第5実施形態における制御システムの構成は、図3で説明した第1実施形態と同様である。
図19は、第5実施形態による走行・姿勢制御処理の内容を表したフローチャートである。なお、第5実施形態におけるフローチャートの説明では、第1実施形態と同様の部分について同一の符号、ステップ番号を付し、適宜その説明を省略することとする。
第5実施形態における走行・姿勢制御において、主制御ECU21は、初めに、第1実施形態と同様に、搭乗者の意志に従って車両をどのように動かすのか、すなわち、車両の走行目標を決定する(ステップ110〜ステップ130)。
次に主制御ECU21は、駆動輪回転角速度を取得する(ステップ144)。すなわち、1つ前の時間ステップにおける制御演算で用いた駆動輪回転角速度[θW]の値を取得する。
なお、予め、駆動輪センサ51から駆動輪回転角速度[θW]の値を取得しておくようにしてもよい。
次に、主制御ECU21は、目標車体傾斜角θ1 *を決定する(ステップ145)。すなわち、車両目標加速度α*と駆動輪回転角速度[θW]とから、次の数式33〜数式35により、目標車体傾斜角θ1 *を決定する。
(数式33)θ1 *=φ*−βMax+sin-1(γsinφ*cosβMax) (α*<−αMax
(数式34)θ1 *=(1−CSense)φ*−ψ (−αMax≦α*≦αMax
(数式35)θ1 *=φ*+βMax+sin-1(γsinφ*cosβMax) (α*>αMax
数式33と数式35は、第1実施形態における数式1、数式3と同じである。
数式34は、数式2の目標車体傾斜角θ1 *からψだけマイナスすることで後傾させている。
このψは、次の数式36、数式37により決定する。ψ〜は車両速度に応じた車体傾斜角減少量である。
(数式36)ψ=max(0,ψ〜+(1−CSense)φ*) (α*<0)
(数式37)ψ=ψ〜 (α*≧0)
ここで、ψ〜は数式38で表される。ψ0,V0は基準パラメータ(設定値)であり、車両速度V0で車体傾斜角をψ0だけ減少させる。
数式33〜数式38中におけるその他の記号は、第1実施形態の数式1〜数式3における記号と同じである。
(数式38)ψ〜=ψ0(RWW]/V0
次に主制御ECU21は、搭乗部目標位置λS *を決定する(ステップ146)。
すなわち、主制御ECU21は、第1実施形態と同様に、車両目標加速度α*と目標車体傾斜角θ1 *から、数式4〜数式6により搭乗部目標位置λS *を決定する。
図20は、数式33〜数式38、及び数式4〜数式6で与えられる車両目標加速度α*(横軸)と目標車体傾斜角θ1 *および搭乗部目標位置λS *の関係を図示したものである。
図20において点線で表した部分が、図5で表した目標車体傾斜角θ1 *と搭乗部目標位置λS *である。
車両目標加速度α*が閾値±αMaxの間にある場合(−αMax≦α*≦αMax)、目標車体傾斜角θ1 *は数式34により決定し、搭乗部目標位置λS *は数式5により決定する。例えば、加減速無く、一定速度で走行する場合(α*=0)、図20に示されるように、目標車体傾斜角θ1 *は負、すなわち、車体を後ろに傾けた状態で制動に備える。
このとき、走行速度が高い(駆動輪回転角速度[θW]が大きい)ほど、目標車体傾斜角の減少量ψ〜が大きくなるため、車体はより大きく後方に傾く。
なお、第5実施形態では、走行速度に比例した目標車体傾斜角減少量を与えているが、非線形に与えてもよい。(走行速度−目標車体傾斜角減少量対応マップを用いてもよい)例えば、一定速度以上で与えるようにしてもよい。
目標車体傾斜角θ1 *と搭乗部目標位置λS *を決定した後、主制御ECU21は、以下第1実施形態と同様に、目標とする車両走行状態と車体姿勢を実現するために必要な駆動モータ52、搭乗部モータ62の出力値を決定し、その値に応じて、駆動モータ52と搭乗部モータ62の実際の出力を駆動輪制御ECU22と搭乗部制御ECU23で制御し(ステップ150〜ステップ200)、メインルーチンにリターンする。
このように第5実施形態によれば次のような効果を得ることができる。
(1)高速走行時には急制動に備えて予め車体を後傾させておくので、急制動時に車体が急に大きく後傾することが無く、乗り心地が良く、安全である。
(2)代わりに搭乗部13が急に後方へ移動するが、これにより搭乗者の視界が上下動することは無く、さらに、搭乗部13の移動方向は、搭乗者が要求する制動減速度の方向と同じであるため、搭乗者は、制動操作直後の減速感を、より強く感じることが出来る。
(3)高速走行時に車体を後傾させ、搭乗者の視線を上げることで、遠方への注意を促すことができる。
なお第5実施形態の変形例として、例えば、搭乗部移動の可動速度(あるいは加速度)が、車体傾斜の可動速度(あるいは加速度)よりも低い場合、搭乗部13を予め後方に移動させて、急制動に備えるようにしてもよい。
このように車両の力学的構造、各システム要素の性能に適合させることにより、姿勢制御をより安定化することができる。
次に第6実施形態について説明する。
この第6実施形態では、車体姿勢と車両走行の方向に応じた駆動モータ52と搭乗部移動の使い分けを行う。すなわち、車体姿勢制御に必要な駆動トルクと車両走行制御に必要な駆動トルクの向きが異なるときに搭乗部13を動かすことで、逆動作を無くすことができる。
図21は、駆動モータ52による車体姿勢制御と、車両走行制御との関係を説明するための図である。
図21(a)に示すように、倒立型車両の場合、駆動輪11に前進する方向の駆動トルクを与えると、その反トルクにより車体は後方に傾斜することになる。このため、車体姿勢制御に必要な駆動トルクと車両走行制御に必要な駆動トルクの向きが相反する場合がある。
すなわち、車両(駆動輪)の加減速(走行制御)と車体傾斜(姿勢制御)は、駆動モータ52の作用・反作用によって行うため、加速しながらの車体前傾や減速しながらの車体後傾はできない。
例えば、停止状態から車体を前傾させて加速するとき、前傾姿勢にするためには、駆動輪を一時的に後方に移動する必要がある(図21(b)の右上の領域)。
また、一定速度(車速)での走行状態から車体を後傾させて制動するとき、後傾姿勢にするためには、駆動輪を一時的に前方へ加速する必要がある。(図21(b)の左下の領域)。
そこで第6実施形態では、次の(i)と(ii)の実施により、駆動輪の逆動作を軽減する。
(i)車両目標加速度α*に応じた目標車体姿勢の決定において、車両目標加速度α*に応じて、目標車体傾斜角加速度を制限し、それを搭乗部移動によって補う。
(ii)車両走行と車体姿勢のフィードバック制御において、駆動輪回転角速度の偏差と車体傾斜角速度の偏差に応じて、一方のフィードバックゲインを制限する。
なお、(i)(ii)の一方だけを導入するようにしてもよい。
次に第6実施形態による走行・姿勢制御について説明する。
なお、第6実施形態における制御システムの構成は、図3で説明した第1実施形態と同様である。
図22は、第6実施形態による走行・姿勢制御処理の内容を表したフローチャートである。なお、第6実施形態におけるフローチャートの説明では、第1実施形態と同様の部分について同一の符号、ステップ番号を付し、適宜その説明を省略することとする。
第6実施形態における走行・姿勢制御において、主制御ECU21は、初めに、第1実施形態と同様に、搭乗者の意志に従って車両をどのように動かすのか、すなわち、車両の走行目標を決定する(ステップ110〜ステップ130)。
次に主制御ECU21は、車体傾斜と搭乗部移動の状態量を取得する(ステップ140a)。すなわち、1つ前の時間ステップにおける車体傾斜角θ1、車体傾斜角速度[θ1]、搭乗部位置λSの値を取得する。
なお、予め、駆動輪センサ51から各値を取得しておくようにしてもよい。
次に主制御ECU21は、目標車体傾斜角の限界値を決定する(ステップ140b)。 車両目標加速度α*とステップ140aで取得した各状態量(θ1、[θ1]、λS)とから、次の数式39、数式40より目標車体傾斜角の上限値θ1 * ,Maxまたは下限値θ1 * ,Minを決定する。
すなわち、(ア)α*≧αshのときには、数式39により上限値θ1 * ,Maxを設定して車体の前傾を制限し、(イ)α*<αshのときには、数式40により下限値θ1 * ,Minを設定して車体の後傾を制限する。
(数式39)上限値θ1 * ,Max=θ1 *(k-1)+Δt[θ1]
(数式40)下限値θ1 * ,Min=θ1 *(k-1)+Δt[θ1]
数式39、40において、θ1 *(k-1)はΔt前の時刻における車体傾斜角の目標値である。αshは、制御両立限界車両加速度であり、次の数式41で表される。
Limitは、制限強さ(設定値、0以上1以下)であり、逆動作を抑える程度を表す。
数式41に示すように、車体傾斜角θ1や搭乗部位置λSを考慮することで、車体傾斜時や搭乗部移動時にも、駆動トルクのみによる制御両立の可能性を適切に検討できる。
(数式41)αsh=CLimittan-1((m11sinθ1+mSλScosθ1)/(M〜RW+m11))
主制御ECU21は次に目標車体傾斜角θ1 *を決定する(ステップ140c)。すなわち、車両目標加速度α*とステップ140bで決定した車体傾斜角の限界値(上限値θ1 * ,Max又は下限値θ1 * ,Min)から、次の数式42〜数式44より目標車体傾斜角θ1 *を決定する。
また数式43において、θ〜1 *は、(ア)α*≧αshのときは数式45により決定し、(イ)α*<αshのときは数式46により決定する。
(数式42)θ1 *=φ*−βMax+sin-1(γsinφ*cosβMax) (α*<−αMax
(数式43)θ1 *=θ〜1 * (−αMax≦α*≦αMax
(数式44)θ1 *=φ*+βMax+sin-1(γsinφ*cosβMax) (α*>αMax
(数式45)θ〜1 *=min((1−CSense)φ*1 * ,Max
(数式46)θ〜1 *=max((1−CSense)φ*1 * ,Min
次に主制御ECU21は、搭乗部目標位置λS *を決定する(ステップ140d)。
すなわち、主制御ECU21は、第1実施形態と同様に、車両目標加速度α*と目標車体傾斜角θ1 *から、数式4〜数式6により搭乗部目標位置λS *を決定する。
目標車体傾斜角θ1 *と搭乗部目標位置λS *を決定した後、主制御ECU21は、第1実施形態と同様に、残りの目標値の設定、フィードフォワード出力の決定、各状態量の取得と算出を行う(ステップ150〜ステップ180)
次に主制御ECU21は、一部のフィードバックゲインを変更する(ステップ181)。すなわち、駆動輪回転角速度の偏差([θW]−[θW *])と、車体傾斜角速度の偏差([θ1]−[θ1 *])に基づき、駆動輪回転角速度に関するフィードバックゲインKW2を数式47により、車体傾斜角速度に関するフィードバックゲインKW4を数式48により変更する。
(数式47)KW2=(1+ζ)KW2,0
(数式48)KW4=(1−ζ)KW4,0
数式47、48において、KW2,0,KW4,0はフィードバックゲイン基準値である。ζはフィードバックゲイン修正係数で次の数式49で表される。cζは修正度比例係数であり、フィードバックゲインを修正する程度を表す。
この数式49では、駆動輪回転角速度の偏差(実際の状態値と目標値の差)と、車体傾斜角速度の偏差について、その正負が同じとき、その偏差の大きさに応じて、駆動輪回転角速度のフィードバックゲインを大きく、また、車体傾斜角速度のフィードバックゲインを小さくすることにより、駆動輪回転制御を相対的に強くして、駆動輪の逆動作を弱めている。
(数式49)ζ=cζmax(([θW]−[θW *])([θ1]−[θ1 *]),0)
次に主制御ECU21は、第1実施形態と同様に、フィードバック出力の決定し(ステップ190)、決定したフィードフォワード出力とフィードバック出力から駆動モータ52と搭乗部モータ62の実際の出力を駆動輪制御ECU22と搭乗部制御ECU23で制御し(ステップ200)、メインルーチンにリターンする。
このように第6実施形態によれば次のような効果を得ることができる。
(1)停止状態からの加速時や一定速度走行状態からの制動時における駆動輪の「逆動作」が軽減し、搭乗者にとって操縦性が向上する。
なお、第6実施形態にける両ゲイン修正において、修正度比例係数cζを異なる値にしてもよい。
また、一方の修正係数を零とし、他方のゲインのみを増加、あるいは、減少させるようにしてもよい。特に、駆動輪回転角速度のゲインが負の場合、そちらは修正せず、車体傾斜角速度のゲインのみを小さくしてもよい。また、駆動輪回転角速度のゲインの正負を変えてもよい。
さらに、両偏差に対して、他の非線形関数を用いても良い。例えば、両偏差がある程度大きくなった場合にのみ、修正係数を与えてもよい。
なお、他のフィードバックゲインについても、同様の修正を行ってもよい。例えば、車体傾斜角のフィードバックゲインを弱めてもよい。また、駆動モータ52の車体傾斜ゲインを弱めるのと共に、搭乗部モータ62の車体傾斜ゲインを強めてもよい。
一方、駆動輪のゲインを弱くし、車体傾斜のゲインを強くすることで、駆動輪制御をある程度犠牲にしても、車体姿勢制御の安定性を高めるようにしてもよい。
次に第7実施形態について説明する。
この第7実施形態では、外乱の周波数成分に応じた駆動モータ52と搭乗部移動の使い分けを行うものである。具体的には、フィードバック制御において、偏差の低周波成分を搭乗部移動に、高周波成分を駆動モータ52に対応させることで、外乱に対する振動を抑える。
車体の姿勢制御に搭乗部13の移動を利用するとき、高周波の振動が発生する場合があり、乗り心地に影響する場合がある。これは、搭乗部移動による車体姿勢制御には「遅れ」があり、細かい制御には不向きなことに起因する。
また、目標姿勢とは異なる姿勢での釣り合い状態に陥る場合、例えば、車体が目標角よりも余分に傾き、その逆方向に搭乗部13が移動した状態を保持する場合がある。これは、駆動モータ52の姿勢制御と搭乗部移動の姿勢制御が相殺されることに起因する。
そこで第7実施形態では、車体傾斜角の実状態値と目標値の偏差を、周波数フィルタによって、低周波成分と高周波成分に分割し、低周波成分を搭乗部移動に、高周波成分を駆動モータ52に、それぞれ対応させる。
これにより、高周波の振動に対して、それに適した車体傾斜のみを対応させることができる。また、車体傾斜と搭乗部移動で対応する周波数帯をずらすことにより、両者が干渉し、誤った釣り合い状態に陥ることを防ぐことができる。
図23は、駆動モータ52と搭乗部移動が対応する、外乱成分の各周波数成分毎の重み付けを表したものである。
図23に示されるように、所定の周波数fc2未満では搭乗部移動の対応分が大きく、fc2以上では駆動モータ52の対応分が大きくなるように、外乱成分の各周波数成分毎に駆動モータ52と搭乗部移動に対する重み付けを決定する。
ここで、所定の周波数fc2の値は、搭乗部移動による姿勢制御がある程度有効である周波数であり、予め所定の値、例えば、5Hzが設定されている。なお、一般的には、この値は第4実施形態において閾値となる周波数fc1に比べて大きい値が設定される。
次に第7実施形態による走行・姿勢制御について説明する。
なお、第7実施形態における制御システムの構成は、図3で説明した第1実施形態と同様である。
図24は、第7実施形態による走行・姿勢制御処理の内容を表したフローチャートである。なお、第7実施形態におけるフローチャートの説明では、第1実施形態と同様の部分について同一の符号、ステップ番号を付し、適宜その説明を省略することとする。
第7実施形態における走行・姿勢制御において、主制御ECU21は、第1実施形態と同様にして、目標状態量の決定、状態量の取得、フィードフォワード出力を決定する(ステップ110〜ステップ180)。
そして主制御ECU21は、各偏差の低周波、高周波成分を計算する(ステップ191)。
すなわち、主制御ECU21は車体傾斜角について、実状態値と目標値の偏差(θ1−θ1 *)を、数式50(ローパスフィルタ)と、数式51(ハイパスフィルタに相当)により、低周波成分と高周波成分に分解する。
また、車体傾斜角速度について、実状態値と目標値の偏差([θ1]−[θ1 *])を、同様の数式52、数式53により、低周波成分と高周波成分に分解する。
なお、第7実施形態では、1次の有限インパルス型ローパスフィルタを用いているが、別の種類、あるいは、より高次のフィルタを用いてもよい。
(数式50)(θ1−θ1 *L=ξ(θ1−θ1 *)+(1−ξ)(θ1−θ1 *L (k-1)
(数式51)(θ1−θ1 *H=(θ1−θ1 *)−(θ1−θ1 *L
(数式52)([θ1]−[θ1 *])L=ξ([θ1]−[θ1 *])+(1−ξ)([θ1]−[θ1 *])L (k-1)
(数式53)([θ1]−[θ1 *])H=([θ1]−[θ1 *])−([θ1]−[θ1 *])L
数式50〜数式53において、ξ=Δt/TEであり、(x)L (k-1)はΔt前の時刻における低周波成分の値、Δtは制御演算周期、TE(=1/fC2)はフィルタの時定数である。
次に、主制御ECU21は、各アクチュエータのフィードバック出力を決定する(ステップ192)。すなわち、各状態量について、実状態値と目標値の偏差から、数式54より駆動モータ52のフィードバック出力を決定し、数式55より搭乗部モータ62のフィードバック出力を決定する。
(数式54)τW,FB=−KW1(θW−θW *)−KW2([θW]−[θW *])−KW3(θ1−θ1 *)−KW4([θ1]−[θ1 *])H
(数式55)SS,FB=−KS3(θ1−θ1 *L−KS4([θ1]−[θ1 *])L−KS5(λS−λS *)−KS6([λS]−[λS *])
なお、第7実施形態では、駆動モータ52と搭乗部モータ62の役割を明確化するため、フィードバックゲインKW5,KW6,KS1,KS2を零としているが、それらに値を与えてもよい。また、その際、対応する状態量の偏差についても、周波数分解して与えてもよい。
最後に主制御ECU21は、第1実施形態と同様に、決定したフィードフォワード出力とフィードバック出力から駆動モータ52と搭乗部モータ62の実際の出力を駆動輪制御ECU22と搭乗部制御ECU23で制御し(ステップ200)、メインルーチンにリターンする。
第7実施形態によれば次のような効果を得ることができる。
(1)車体および搭乗部13の振動が抑えられ、乗り心地が向上する。
(2)目標姿勢とは異なる姿勢での釣り合い状態が無くなる。
なお、第7実施形態において、駆動輪ギヤのバックラッシや駆動タイヤの微小変形などにより、駆動輪の細かい制御が困難な場合は、低周波成分を駆動モータ52に、高周波成分を搭乗部移動に、それぞれ対応させるようにしてもよい。
次に第8実施形態について説明する。
この第8実施形態は、第3実施形態のバランサを用いた車両において、第7実施形態の技術を適用したもので、外乱の周波数成分に応じて、搭乗部移動と駆動モータ52とバランサの使い分けるものである。
すなわち、フィードバック制御において、偏差の低周波成分を搭乗部移動に、中周波成分を駆動モータ52に、高周波成分をバランサ移動に対応させることで、外乱に対する車両の振動を抑えると共に、搭乗者に振動を感じさせないようにする。
車体の姿勢制御に搭乗部移動や駆動モータ52を利用するとき、高周波の振動が発生し、それを搭乗者が不快に感じる場合がある。これは、搭乗部移動や駆動モータ52はその対象となる慣性が大きく、細かい制御に不適であることに起因する。
そこで、第8実施形態では、車体傾斜角の実状態値θ1と目標値θ1 *の偏差(θ1−θ1 *)を、周波数フィルタによって、低周波成分と中周波成分と高周波成分に分割し、低周波成分を搭乗部移動に、中周波成分を駆動モータ52に、高周波成分をバランサ移動に、それぞれ対応させる。
図25は、搭乗部移動、駆動モータ52、バランサ移動に対する、外乱成分の各周波数成分毎の重み付けを表したものである。
図25に示されるように、所定の周波数fc21未満では搭乗部移動対応分が大きく、周波数fc21以上fc22未満では駆動モータ52対応分が大きく、周波数fc22以上ではバランサ移動対応分が大きくなるように、外乱成分の各周波数成分毎に搭乗部移動、駆動モータ52、バランサ移動に対する重み付けを決定する。
ここで、所定の周波数fc21およびfc22の値は、それぞれ、搭乗部移動による姿勢制御、駆動モータによる姿勢制御がある程度有効である周波数であり、予め所定の値、例えば、1Hzおよび5Hzが設定されている。
次に第8実施形態による走行・姿勢制御について説明する。
なお、第8実施形態における制御システムの構成は、図10で説明した第3実施形態と同様である。
図26は、第8実施形態による走行・姿勢制御処理の内容を表したフローチャートである。なお、第8実施形態におけるフローチャートの説明では、第3実施形態と同様の部分について同一の符号、ステップ番号を付し、適宜その説明を省略することとする。
第8実施形態における走行・姿勢制御において、主制御ECU21は、第3実施形態と同様にして、目標状態量の決定、状態量の取得、フィードフォワード出力を決定する(ステップ110〜ステップ180)。
つぎに主制御ECU21は、各偏差の低、中、高周波成分を計算する(ステップ191)。
すなわち、主制御ECU21は車体傾斜角について、実状態値と目標値の偏差(θ1−θ1 *)を、数式56〜数式58の各周波数フィルタにより、低周波成分(数式56)、高周波成分(数式57)、中周波成分(数式58)に分解する。
また、車体傾斜角速度について、実状態値と目標値の偏差([θ1]−[θ1 *])を、数式59〜数式61の各周波数フィルタにより、低周波成分(数式59)、高周波成分(数式60)、中周波成分(数式61)に分解する。
なお、第8実施形態では、1次の有限インパルス型ローパスフィルタを用いているが、別の種類、あるいは、より高次のフィルタを用いてもよい。
数式において、ξL=Δt/TC1、ξH=Δt/TC2であり、(x)L (k-1)はΔt前の時刻における低周波成分の値、(x)H (k-1)は同高周波数成分の値、Δtは制御演算周期、TC1,(=1/fc21)およびTC2(=1/fc22)は各周波数フィルタの時定数である。
(数式56)(θ1−θ1 *L=ξL(θ1−θ1 *)+(1−ξL)(θ1−θ1 *L (k-1)
(数式57)(θ1−θ1 *H=(θ1−θ1 *)−(θ1−θ1 *(k-1)+(1−ξH)(θ1−θ1 *H (k-1)
(数式58)(θ1−θ1 *M=(θ1−θ1 *)−(θ1−θ1 *L−(θ1−θ1 *H
(数式59)([θ1]−[θ1 *])L=ξL([θ1]−[θ1 *])+(1−ξL)([θ1]−[θ1 *])L (k-1)
(数式60)([θ1]−[θ1 *])H=([θ1]−[θ1 *])−([θ1]−[θ1 *])(k-1)+(1−ξH)([θ1]−[θ1 *])H (k-1)
(数式61)([θ1]−[θ1 *])M=([θ1]−[θ1 *])−([θ1]−[θ1 *])L−([θ1]−[θ1 *])H
次に主制御ECU21は、各アクチュエータのフィードバック出力を決定する(ステップ192)。すなわち、各状態量について、実状態値と目標値の偏差から、数式62より駆動モータ、数式63より搭乗部モータ62、数式64よりバランサモータ72のフィードバック出力を決定する。
(数式62)τW,FB=−KW1(θW−θW *)−KW2([θW]−[θW *])−KW3(θ1−θ1 *M−KW4([θ1]−[θ1 *])M
(数式63)SS,FB=−KS3(θ1−θ1 *L−KS4([θ1]−[θ1 *])L−KS5(λS−λS *)−KS6([λS]−[λS *])
(数式64)SB,FB=−KB3(θ1−θ1 *H−KB4([θ1]−[θ1 *])H−KB7(λ2−λ2 *)−KB8([λ2]−[λ2 *])
最後に主制御ECU21は、第3実施形態と同様に、決定したフィードフォワード出力とフィードバック出力から駆動モータ52と搭乗部モータ62の実際の出力を駆動輪制御ECU22と搭乗部制御ECU23で制御し(ステップ200)、メインルーチンにリターンする。
第8実施形態によれば次のような効果を得ることができる。
(1)車体および搭乗部13の振動が大幅に軽減され、乗り心地が向上する。
(2)目標姿勢とは異なる姿勢での釣り合い状態が無くなる。
なお、第8実施形態において、駆動輪ギヤのバックラッシや駆動タイヤの微小変形などにより、駆動輪の細かい制御が困難な場合は、低周波成分を駆動モータ52に、中周波成分を搭乗部移動に、それぞれ対応させてもよい。
次に第9実施形態について説明する。
この第9実施形態は、アクチュエータが故障した場合の制御に関し、駆動モータ52、搭乗部モータ62の一方が故障した場合、制御を変更すること(状態目標値、制御ゲインの変更)で、他方のみで、車体の倒立制御を維持するものである。
搭乗部移動やバランサを使用せずに駆動モータ52で姿勢制御を行う場合、駆動モータ52が故障したとき、車体の姿勢制御が不可能になり、車体の倒立状態を維持できなくなる。
一方、搭乗部移動を含めた姿勢制御を行う場合、搭乗部モータ62が故障したとき、搭乗部13の目標位置への制御が困難になり、車体の倒立状態を維持できなくなる。
そこで、第9実施形態では、駆動モータ52が故障したとき、実際の車両走行加速度と車体傾斜角に応じて、適切に搭乗部13を動かすことで、倒立状態を維持する。一方、搭乗部モータ62が故障したとき、実際の搭乗部位置に応じて、適切に車体を傾けることにより、倒立状態を維持しつつ、車両の走行も制御する。
次に第9実施形態による走行・姿勢制御について説明する。
図27は、第9実施形態による走行・姿勢制御処理の内容を表したメインのフローチャートである。
なお、第9実施形態における制御システムの構成は、ステップ330における通常処理の内容に応じて図3で説明した第1実施形態、又は図10で説明した第3実施形態と同様である。
主制御ECU21は、各アクチュエータの故障状態を判定する(ステップ300)。すなわち、各アクチュエータ制御ECU22〜24からの異常を示す信号を取得したり、オブザーバによる入出力関係からの推定に基づき、故障状態を検知する。
例えば、主制御ECU21は、駆動輪回転状態や車体傾斜状態の変化などから、駆動モータ52から出力される駆動トルクの値を推定し、その推定値と駆動モータ52への指令値との差が所定の閾値を超えた場合に、駆動モータ52が故障状態にあると判定する。
同様に主制御ECU21は、搭乗部移動状態などから、搭乗部モータ62から出力される移動推力の値を推定し、その推定値と搭乗部モータ62への指令値との差が所定の閾値を超えた場合に、搭乗部モータ62が故障状態にあると判断する。
故障状態の判定結果から、搭乗部モータ62が故障か(ステップ310)、及び駆動モータ52が故障か(ステップ320)を判断し、両者共に正常である場合(ステップ310;N、ステップ320;N)、主制御ECU21は、通常制御を行う(ステップ330)。
通常制御では、第1実施形態から第8実施形態のいずれか又はこれらを組み合わせた実施形態のいずれかにより、走行・姿勢制御を行う。
一方、主制御ECU21は、駆動モータ52が故障していると判定した場合(ステップ320;Y)駆動モータ故障時制御を行い(ステップ340)、搭乗部モータ62が故障していると判定した場合(ステップ310;Y)搭乗部モータ故障時制御を行う(ステップ350)。
図28は、駆動モータ故障時制御処理(ステップ340)の処理内容を表したフローチャートである。
駆動モータ52の故障を検出すると、主制御ECU21は、まず車両の実際の加速度αと、実際の車体傾斜角θ1を取得する(ステップ341)。
実際の加速度αは、例えば、加速度センサからの取得、駆動輪センサ51から取得した回転角や回転角速度に基づく計算、オブザーバによる推定、非常ブレーキ装置の制動性能仕様の利用などの中で、いずれかの方法により取得される。
次に主制御ECU21は、搭乗部位置の目標値を決定する(ステップ343)。すなわち、取得した車両加速度αと車体傾斜角θ1から、数式65〜数式67より搭乗部位置の目標値(搭乗部目標位置)λS *を決定する。
数式66において、φ=tan-1αである。
(数式65)λS *=−λS,Max (α<−αMax
(数式66)λS *=l1(m1/mS)[tan(φ−θ1)+γ(sinφ/cos(φ−θ1))] (−αMax≦α≦αMax
(数式67)λS *=λS,Max (α>αMax
駆動モータ52が故障している場合、車両加速度および車体傾斜角の高精度な制御は困難であり、車両加速度の目標値α*や車体傾斜角の目標値θ1*が達成されな場合にも、搭乗部移動のみを用いて、車体の姿勢をある程度安定に制御する必要がある。
そこで、数式65〜67で表されるように、実際の車両加速度αと、実際の車体傾斜角θ1に合わせて、搭乗部目標位置λS *を決定し、その位置に搭乗部13を動かすことによって、倒立状態を保持する。
なお、車体傾斜角に関しては、駆動モータ故障時に対応した目標値を与えることで、姿勢制御を維持してもよい。
次に、主制御ECU21は、残りの目標値を算出する(ステップ343)。すなわち、搭乗部目標位置λS *を時間微分して、搭乗部移動速度の目標値[λS *]を算出する。
また主制御ECU21は搭乗部モータ62のフィードフォワード出力を決定する(ステップ344)。すなわち、搭乗部目標位置λS *から、数式68より搭乗部モータ62のフィードフォワード出力SS,FFを決定する。フィードフォワード出力SS,FFは、実際の車体傾斜角θ1に対して、搭乗部13を目標位置に留めるのに必要な搭乗部推力である。
(数式68)SS,FF=−mSgsinθ1
次に、主制御ECU21は、センサから各状態量を取得する(ステップ345)。すなわち、駆動輪センサ51から駆動輪回転角(回転角速度)を、車体傾斜センサから車体傾斜角(傾斜角速度)を、搭乗部センサから搭乗部位置(移動速度)を取得する。
また主制御ECU21は、残りの状態量を算出する(ステップ346)。すなわち、駆動輪回転角(回転角速度)、車体傾斜角(傾斜角速度)、搭乗部位置(移動速度)を時間積分あるいは微分することにより、残りの状態量を算出する。
主制御ECU21は、搭乗部モータ62のフィードバック出力を決定する(ステップ347)。
各目標値と実際の状態量との偏差に基づき、数式69より搭乗部モータ62のフィードバック出力を決定する。
なお、フィードバックゲインKS3,KS4の値を通常時の値よりも大きくすることにより、車体姿勢制御を強くしてもよい。また、車体傾斜角は無視し、KS3=KS4=0としてもよい。
(数式69)SS,FB=−KS3(θ1−θ1 *)−KS4([θ1]−[θ1 *])−KS5(λS−λS *)−KS6([λS]−[λS *])
主制御ECU21は、搭乗部制御システムに指令値を与え(ステップ348)、メインルーチンにリターンする。
すなわち、主制御ECU21から搭乗部制御ECU23にフィードフォワード出力とフィードバック出力の和を指令値(搭乗部推力指令値)SSとして与える。
搭乗部制御ECU23は、搭乗部推力指令値SSに対応した入力電圧(駆動電圧)を搭乗部モータ62に供給することで、搭乗部13を移動させる。
これにより、搭乗部13の移動による姿勢制御が行われる。この場合、駆動モータ52が故障しているので、車両が徐々に減速していく状態及び停止後における姿勢制御が搭乗部13の移動のみで実行される。
図29は、搭乗部モータ故障時制御処理(ステップ350)の処理内容を表したフローチャートである。
搭乗部モータ62の故障時においては、駆動モータ52による走行および姿勢制御が可能であるため、同故障を検出すると、主制御ECU21は、搭乗者の操縦操作量、すなわち、搭乗者によるジョイスティック31の操作量を取得する(ステップ351)。
そして、主制御ECU21は、取得した操縦操作量に基づいて、車両目標加速度α*を決定する(ステップ352)。なお、車両制御を緊急停止モードへ自動的に移行し、所定の減速度目標値を自動的に与えるようにしてもよい。
主制御ECU21は、駆動輪角速度の目標値(駆動輪目標角速度)[θω*]を算出する(ステップ353)。すなわち、減速度の目標値から、駆動輪目標角速度[θω*]を算出する。例えば、減速度の目標値を時間積分し、所定の駆動輪接地半径で除した値を駆動輪回転角速度の目標値とする。
次に主制御ECU21は、車体傾斜角の目標値を決定する(ステップ354)。すなわち、車両目標加速度α*と実際の搭乗部位置λSから数式70より目標車体傾斜角θ1 *を決定する。
数式70において、β=tan-1(mSλS/m11)である。
このように、実際の搭乗部位置λSに合わせて、適切に車体を目標値θ1 *に傾けて、倒立状態を保持することで、搭乗部モータ62の故障に対応している。
なお、搭乗部位置に目標値を与えることで、より強く姿勢制御を維持してもよい。
(数式70)θ1 *=φ*−β+sin-1(γsinφ*cosβ)
次に主制御ECU21は、残りの目標値を算出する(ステップ355)。
各目標値を時間微分、あるいは、時間積分することにより、駆動輪回転角目標値θW *、車体傾斜角速度目標値[θ1 *]をそれぞれ算出する。
次に主制御ECU21は、駆動モータ52のフィードフォワード出力を決定する(ステップ356)。すなわち、車両目標加速度α*から、数式7(第1実施形態参照)より駆動モータ52のフィードフォワード出力τW,FFを決定する。
次に主制御ECU21は、センサから各状態量を取得する(ステップ357)。すなわち、駆動輪センサ51から駆動輪回転角(回転角速度)を、車体傾斜センサから車体傾斜角(傾斜角速度)を、搭乗部センサから搭乗部位置(移動速度)を取得する。
さらに、残りの状態量を算出する(ステップ358)。駆動輪回転角(回転角速度)、車体傾斜角(傾斜角速度)を時間積分あるいは微分することにより、残りの状態量を算出する。
次に主制御ECU21は、駆動モータ52のフィードバック出力を決定する(ステップ359)。すなわち、各目標値と実際の状態量との偏差から、数式71より駆動モータ52のフィードバック出力τW,FBを決定する。
なお、数式71において、フィードバックゲインKW5、KW6を与え、(−KW5λS−KW6S])の項を加えることにより、搭乗部を中立位置に戻すようにしてもよい。
(数式71)τW,FB=−KW1(θW−θW *)−KW2([θW]−[θW *])−KW3(θ1−θ1 *)−KW4([θ1]−[θ1 *])
最後に主制御ECU21は、駆動輪制御システムに指令値を与え(ステップ360)、メインルーチンにリターンする。
すなわち、主制御ECU21は、決定したフィードフォワード出力τW,FFと、決定したフィードバック出力τW,FBの和(τW,FF+τW,FB)を駆動トルク指令値τWとして、駆動輪制御ECU22に供給する。
駆動輪制御ECU22は、駆動トルク指令値τWに対応する入力電圧(駆動電圧)を駆動モータ52に供給することで、駆動輪に駆動トルクτWを与え、これにより駆動モータ52による姿勢制御、走行制御が行われる。
以上説明したように第9実施形態によれば、駆動モータ52や搭乗部モータ62の故障時においても、車体の姿勢制御を維持し、搭乗者の安全性を十分に確保することができる。
なお、本実施例では、駆動モータ52故障時の制御、搭乗部モータ62故障時の制御を共に具備した場合を示しているが、その一方のみを備えた場合であってもよい。
なお、本実施形態では、次のように車両を構成するようにしてもよい。
(a)駆動輪と、前記駆動輪の回転軸に回動可能に支持された車体と、前記車体に相対移動可能に配設された搭乗部と、目標走行状態を取得する目標取得手段と、前記目標走行状態に応じて、前記回転軸に対する車体の回動と前記車体に対する前記搭乗部の移動により、前記車体の重心を調整しながら走行を制御する走行制御手段と、を具備したことを特徴とする車両。
(b)前記走行制御手段は、前記取得した目標走行状態に応じて、前記駆動輪の駆動トルクと、前記搭乗部を移動させる移動推力を決定する決定手段と、前記決定手段で決定した駆動トルクを前記駆動輪に与える駆動手段と、前記決定手段で決定した移動推力を前記搭乗部に与える搭乗部移動手段と、を有することを特徴とする上記(a)記載の車両。
(c)前記目標走行状態に応じて、前記車体の回動による目標傾斜角を決定する目標傾斜角決定手段と、前記目標走行状態と前記目標傾斜角に基づいて、前記搭乗部を移動させる目標位置を決定する目標位置決定手段と、を備え、前記走行制御手段は、前記目標走行状態と、前記目標傾斜角、前記目標位置に応じて、前記車体の回動と前記乗部の移動により、前記車体の重心を調整しながら走行を制御することを特徴とする上記(a)に記載の車両。
(d)前記目標走行状態に応じて、前記車体の回動による目標傾斜角を決定する目標傾斜角決定手段と、前記目標走行状態と前記目標傾斜角に基づいて、前記搭乗部を移動させる目標位置を決定する目標位置決定手段と、前記車体の傾斜角を検出する傾斜角検出手段と、前記搭乗部位置を検出する位置検出手段と、を備え、前記決定手段は、前記傾斜角検出手段により検出した車体の傾斜角と前記目標傾斜角決定手段により決定した車体の目標傾斜角に基づいて前記駆動輪の駆動トルクを決定し、前 記位置検出手段により検出した搭乗部位置と前記目標位置決定手段により決定した搭乗部の目標位置に基づいて前記搭乗部の移動推力を決定する、ことを特徴とする上記(a)又は(b)に記載の車両。
(e)前記目標走行状態に応じて、前記車体の回動による目標傾斜角を決定する目標傾斜角決定手段と、前記目標走行状態にと前記目標傾斜角に基づいて、前記搭乗部を移動させる目標位置を決定する目標位置決定手段と、前記車体の傾斜角を検出する傾斜検出手段と、前記搭乗部移動機構による前記搭乗部位置を検出する位置検出手段と、前記目標傾斜角に基づいて前記駆動輪のフィードフォワード駆動トルクと、前記搭乗部の目標位置に基づいて前記搭乗部のフィードフォワード移動推力と、を決定するフィードフォワード出力決定手段と、前記目標傾斜角決定手段により決定した目標傾斜角と前記傾斜角検出手段により検出した車体の傾斜角との偏差から前記駆動輪のフィードバック駆動トルクと、前記目標位置決定手段により決定した目標位置と前記傾斜検出手段により検出した搭乗部位置との偏差から前記搭乗部のフィードバック移動推力と、を決定するフィードバック出力決定手段と、を備え、前記決定手段は、前記フィードフォワード駆動トルクとフィードバック駆動トルクとの和から前記駆動輪の駆動トルクを決定し、前記フィードフォワード移動推力と前記フィードバック移動推力との和から前記搭乗部の移動推力を決定する、ことを特徴とする上記(b)に記載の車両。
(f)自車両を操作する操作部材の操作状態から、目標加速度を取得する目標加速度取得手段と、を備え、前記目標取得手段は、前記目標加速度を目標走行状態として取得することを特徴とする上記(a)から(e)のうちのいずれか1に記載の車両。
(g)体感加速度を指定する指定手段を備え、前記決定手段は、更に前記指定された体感加速度の程度に応じて、前記駆動トルクと前記移動推力を決定する、ことを特徴とする上記(b)から(f)のうちのいずれか1に記載の車両。
(h)バランサと、前記バランサを移動させるバランサ移動機構と、を備え、前記走行制御手段は、前記取得した目標走行状態に応じて、前記回転軸に対する車体の回動と、前記バランサ移動機構による前記バランサの移動と、前記車体に対する搭乗部の移動により、前記車体の重心を調整しながら走行を制御する、ことを特徴とする上記(a)又は(f)に記載の車両。
(i)前記走行制御手段は、前記取得した目標加速度が所定の閾値未満の場合、前記車体の傾斜と前記バランサの移動により、前記取得した目標加速度が所定の閾値以上の場合、当該目標加速度の向きに応じた、前記バランサが移動可能な移動限界位置に固定し、前記車体の傾斜と前記搭乗部の移動により、前記車体の重心を調整しながら走行を制御する、ことを特徴とする上記(h)に記載の車両。
(j)前記搭乗部にかかる重量体を含む前記搭乗部の質量を取得する質量取得手段と、を備え、前記走行制御手段は、前記質量取得手段によって取得した搭乗部の質量に応じて、前記車体の重心を調整しながら走行を制御することを特徴とする上記(a)から(i)のうちのいずれか1に記載の車両。
(a)の実施形態では、車体の傾斜だけでなく、更に搭乗部を移動することにより、車体の重心を調整しながら走行するので、車体の傾斜角を小さく抑えることができ、搭乗者にとって乗り心地のよい車両を提供することができる。
(b)の実施形態では、目標走行状態に応じて、駆動輪の駆動トルクと搭乗部を移動させる移動推力を決定し、駆動トルクを駆動輪に与え、移動推力を搭乗部に与えることで、車体傾斜量と搭乗部位置を最適化することができる。
(c)の実施形態では、車体の目標傾斜角に応じて搭乗部の目標位置と駆動トルクを決定することで、車体傾斜角を一定に保ったままの速度調整が可能となり、搭乗者の乗り心地を優先した目標値決定及び制御を行うことができる。
(d)の実施形態では、車体の傾斜制御と搭乗部の位置制御を実測値と目標値に基づいて行うので、より正確に車体の重心調整を行うことができる。
(e)の実施形態では、目標傾斜角と目標位置から、駆動輪と搭乗部のフィードフォワード出力とフィードバック出力との合計出力を与えることにより、各状態量を高精度で制御し、状態量の定常偏差を少なくすることができ、重心を調整しながらの走行を安定的に制御することができる。
(f)の実施形態では、自車両を操作する操作部材の操作状態から目標状態としての目標加速度を取得するので、搭乗者の要求する加速要求に対応しつつ、車体の傾斜角を小さく抑えた走行を実現することができる。
(g)の実施形態では、体感加速度を指定可能にすることで、搭乗者の「好み」に合わせて、体感加速度を定量的に調整することができる。
(h)の実施形態では、回転軸に対する車体の回動と、車体に対する搭乗部の移動に加えて、バランサを移動することにより、車体の重心を調整をより細かく制御することができる。
(i)の実施形態では、目標加速度が所定の閾値未満の場合に車体の傾斜とバランサの移動により車体の重心を調整するので、低加速度に対して搭乗部を動かすことなく、かつ、小さな車体傾斜で、搭乗者に適切な加速度を感じさせることができる。
(j)の実施形態では、搭乗部にかかる重量体を含む搭乗部の質量を取得し、取得した搭乗部の質量に応じて、車体の重心を調整しながら走行を制御するので、目標とする車両運動、車体姿勢に対する定常偏差を極力抑え、適切な制御を行い、姿勢制御の安定性向上、精度向上を実現することができる。
本実施形態おいて、搭乗部を前方に動かすことで、より小さな傾斜角で加速する状態を表した説明図である。 本実施形態における車両について、乗員が乗車して前方に走行している状態の外観構成を例示した図である。 第1実施形態における制御システムの構成図である。 第1実施形態における走行・姿勢制御のフローチャートである。 車両目標加速度α*(横軸)と目標車体傾斜角θ1 *および、搭乗部目標位置λS *の関係図である。 第1実施形態の変形例における目標値決定処理のフローチャートである。 第2実施形態における制御システムの構成図である。 選択可能な制御モードと搭乗者加速度感受係数CSenseの対応を表した図である。 第2実施形態における走行・姿勢制御のフローチャートである。 第3実施形態における制御システムの構成図である。 バランサ移動機構についての構成図である。 バランサを含む車両姿勢制御系の力学モデルを示した図である。 車両目標加速度α*(横軸)と目標車体傾斜角θ1 *、搭乗部目標位置λS *、バランサ目標位置λ2 *の関係図である。 第3実施形態における目標値決定処理のフローチャートである。 第4実施形態における、車両目標加速度α*の各周波数成分に対する車体傾斜制御と搭乗部移動制御の重み付けを表した説明図である。 第4実施形態による急加速時の車体傾斜と搭乗部移動の状態変化を表した図である。 第4実施形態の走行・姿勢制御処理の内容を表したフローチャートである。 第5実施形態による車体傾斜と搭乗部移動の状態変化を表した図である。 第5実施形態の走行・姿勢制御処理の内容を表したフローチャートである。 車両目標加速度α*(横軸)と目標車体傾斜角θ1 *および搭乗部目標位置λS *の関係を示した図である。 駆動モータによる車体姿勢制御と車両走行制御との関係を表す図である。 第6実施形態の走行・姿勢制御処理の内容を表したフローチャートである。 外乱成分の各周波数成分に対する駆動モータと搭乗部移動の重み付けを表した図である。 第7実施形態の走行・姿勢制御処理の内容を表したフローチャートである。 第8実施形態における、外乱成分の各周波数成分に対する搭乗部移動と駆動モータとバランサ移動の重み付けを表した図である。 第8実施形態の走行・姿勢制御処理の内容を表したフローチャートである。 第9実施形態の走行・姿勢制御処理の内容を表したメインのフローチャートである。 駆動モータ故障時制御処理の処理内容を表したフローチャートである。 搭乗部モータ故障時制御処理の処理内容を表したフローチャートである。
符号の説明
11 駆動輪
12 駆動モータ
13 搭乗部
14 支持部材
131 座面部
132 背もたれ部
133 ヘッドレスト
16 制御ユニット
20 制御ECU
21 主制御ECU
22 駆動輪制御ECU
23 搭乗部制御ECU
24 バランサ制御ECU
30 入力装置
31 ジョイスティック
32 制御モード入力装置
40 車体制御システム
41 車体傾斜センサ
50 駆動輪制御システム
51 駆動輪センサ
52 駆動モータ
60 搭乗部制御システム
61 搭乗部センサ
62 搭乗部モータ
70 バランサ制御システム
71 バランサセンサ
72 バランサモータ
63 移動機構

Claims (3)

  1. 駆動輪と、
    前記駆動輪の回転軸に回動可能に支持された車体と、
    前記車体に相対移動可能に配設された搭乗部と、
    搭乗者が入力した走行目標に対応する車両目標加速度を取得する目標取得手段と、
    前記駆動輪を駆動する駆動手段と、
    前記搭乗部を移動する搭乗部移動手段と、
    車速を検出する車速検出手段と、
    前記車両目標加速度に基づいて、前記駆動手段による駆動と前記搭乗部移動手段による前記搭乗部の移動とのうち少なくとも1つを制御することで、前記車体の重心位置を調整しながら走行を制御する走行制御手段と、を備え、
    前記走行制御手段は、前記車速の増加に従い、前記車体が後方に傾斜し、前記搭乗部が前方へ移動するように、前記駆動手段による駆動と前記搭乗部の移動とのうち少なくとも1つを制御する、
    ことを特徴とする車両。
  2. 体感加速度を指定する指定手段を備え、
    前記走行制御手段は、更に前記指定された体感加速度の程度に応じて、前記駆動手段による前記駆動輪の駆動トルクと前記搭乗部移動手段による前記搭乗部の移動推力を決定する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の車両。
  3. 前記車両目標加速度に応じて、前記車体の目標傾斜角を決定する目標傾斜角決定手段と、
    前記車両目標加速度と前記目標傾斜角に基づいて、前記搭乗部を移動させる目標位置を決定する目標位置決定手段と、を備え、
    前記走行制御手段は、前記車体を後方に傾斜させると共に前記搭乗部を前方に移動させた状態を基準とし、当該基準に対し、前記車両目標加速度と、前記目標傾斜角、前記目標位置に応じて、前記駆動手段による前記駆動輪の駆動トルクと、前記搭乗部移動手段による前記搭乗部の移動推力を決定する
    ことを特徴とする請求項1に記載の車両。
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