JP2009118720A - 車両 - Google Patents
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Abstract
【課題】坂道の路面勾(こう)配と長さとに応じて車体傾斜角を補正するようにして、坂道を走行しているときには、車体の姿勢を鉛直軸を基準に前傾姿勢又は後傾姿勢にして乗員の視線が最適な方向となるようにし、路面勾配に関わらず、視認性がよく、乗り心地がよく、安定した走行状態を実現することができるようにする。
【解決手段】車体と、回転可能に前記車体に取り付けられた駆動輪12と、前記車体に対して相対移動する能動重量部と、前記駆動輪12に付与する駆動トルクを制御するとともに、前記能動重量部の位置を制御して前記車体の姿勢を制御する車両制御装置とを有し、該車両制御装置は、坂道の終点に基づいて、前記車体の姿勢を制御する。
【選択図】図1
【解決手段】車体と、回転可能に前記車体に取り付けられた駆動輪12と、前記車体に対して相対移動する能動重量部と、前記駆動輪12に付与する駆動トルクを制御するとともに、前記能動重量部の位置を制御して前記車体の姿勢を制御する車両制御装置とを有し、該車両制御装置は、坂道の終点に基づいて、前記車体の姿勢を制御する。
【選択図】図1
Description
本発明は、倒立振り子の姿勢制御を利用した車両に関するものである。
従来、倒立振り子の姿勢制御を利用した車両に関する技術が提案されている。例えば、同軸上に配置された2つの駆動輪を有し、運転者の重心移動による車体の姿勢変化を感知して駆動する車両、球体状の単一の駆動輪により車体の姿勢を制御しながら移動する車両等の技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この場合、センサで車体のバランスや動作の状態を検出し、回転体の動作を制御して車両を停止又は移動させるようになっている。
特開2004−129435号公報
しかしながら、前記従来の車両においては、乗員にとって快適な姿勢で、坂道を走行することができなかった。例えば、車両を走行させて坂道を上るとき、倒立状態を維持しようとすると、車体は前傾状態、すなわち、鉛直軸を基準に車両進行方向へ傾いてしまい、乗員は、前方の視界を確保するために常に上を見上げるような姿勢を取る必要があり、乗員は車両の操縦に労力を費やす可能性がある。
本発明は、前記従来の車両の問題点を解決して、坂道の路面勾(こう)配と長さとに応じて車体傾斜角を補正するようにして、坂道を走行しているときには、車体の姿勢を鉛直軸を基準に前傾姿勢又は後傾姿勢にして乗員の視線が最適な方向となるようにし、路面勾配に関わらず、視認性がよく、乗り心地がよく、安定した走行状態を実現することができる安全性の高い車両を提供することを目的とする。
そのために、本発明の車両においては、車体と、回転可能に前記車体に取り付けられた駆動輪と、前記車体に対して相対移動する能動重量部と、前記駆動輪に付与する駆動トルクを制御するとともに、前記能動重量部の位置を制御して前記車体の姿勢を制御する車両制御装置とを有し、該車両制御装置は、坂道の終点に基づいて、前記車体の姿勢を制御する。
本発明の他の車両においては、さらに、前記坂道の終点は、上り坂の場合は坂道の頂点であり、下り坂の場合は坂道の麓(ふもと)である。
本発明の更に他の車両においては、さらに、前記車両制御装置は、前記坂道の終点に近付くに従って、前記車体の傾斜角が減少するように該車体の姿勢を制御する。
本発明の更に他の車両においては、さらに、前記車両制御装置は、前記坂道が上り坂の場合、鉛直軸を基準に前記車体を進行方向に対して後方に傾斜させ、前記坂道が下り坂の場合、前記車体を進行方向に対して前方に傾斜させる。
本発明の更に他の車両においては、さらに、乗員が搭乗する搭乗部を更に有し、前記車両制御装置は、乗員の視線が坂道の終点より所定の高さだけ上に位置する点を通過するように前記傾斜角を制御する。
本発明の更に他の車両においては、さらに、前記所定の高さは、水平面における路面からの乗員の視線の高さである。
請求項1の構成によれば、坂道で車体が傾斜するので、路面に対する車体の角度が適切に保持されるため、乗員にとって視界の確保が容易であり、乗り心地がよい。
請求項2及び3の構成によれば、坂道の終点に近付くに従って車体の傾斜角が減少するので、乗員は違和感を感じることがない。
請求項4の構成によれば、上り坂では車体が後方に傾斜し、下り坂では車体が前方に傾斜するので、乗員にとって視界の確保が容易であり、乗り心地がよい。
請求項5及び6の構成によれば、乗員は常に坂道の頂点よりやや上の点を視認することができるので、乗員の視界の確保が容易になる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態における車両の構成を示す概略図であり乗員が搭乗した状態で加速前進している状態を示す図、図2は本発明の第1の実施の形態における車両の制御システムの構成を示すブロック図である。
図において、10は、本実施の形態における車両であり、車体の本体部11、駆動輪12、支持部13及び乗員15が搭乗する搭乗部14を有し、倒立振り子の姿勢制御を利用して車体の姿勢を制御する。そして、前記車両10は、車体を前後に傾斜させることができるようになっている。図1に示される例においては、車両10は矢印Aで示される方向に加速中であり、車体が進行方向前方に向かって傾斜した状態が示されている。
前記駆動輪12は、車体の一部である支持部13によって回転可能に支持され、駆動アクチュエータとしての駆動モータ52によって駆動される。なお、駆動輪12の軸は図1の図面に垂直な方向に延在し、駆動輪12はその軸を中心に回転する。また、前記駆動輪12は、単数であっても複数であってもよいが、複数である場合、同軸上に並列に配設される。本実施の形態においては、駆動輪12が2つであるものとして説明する。この場合、各駆動輪12は個別の駆動モータ52によって独立して駆動される。なお、駆動アクチュエータとしては、例えば、油圧モータ、内燃機関等を使用することもできるが、ここでは、電気モータである駆動モータ52を使用するものとして説明する。
また、車体の一部である本体部11は、支持部13によって下方から支持され、駆動輪12の上方に位置する。そして、本体部11には、能動重量部として機能する搭乗部14が、車両10の前後方向に本体部11に対して相対的に並進可能となるように、換言すると、車体回転円の接線方向に相対的に移動可能となるように、取り付けられている。
ここで、能動重量部は、ある程度の質量を備え、本体部11に対して並進する、すなわち、前後に移動させることによって、車両10の重心位置を能動的に補正するものである。そして、能動重量部は、必ずしも搭乗部14である必要はなく、例えば、バッテリ等の重量のある周辺機器を並進可能に本体部11に対して取り付けた装置であってもよいし、ウェイト、錘(おもり)、バランサ等の専用の重量部材を並進可能に本体部11に対して取り付けた装置であってもよい。また、搭乗部14、重量のある周辺機器、専用の重量部材等を併用するものであってもよい。
本実施の形態においては、説明の都合上、乗員15が搭乗した状態の搭乗部14が能動重量部として機能する例について説明するが、搭乗部14には必ずしも乗員15が搭乗している必要はなく、例えば、車両10がリモートコントロールによって操縦される場合には、搭乗部14に乗員15が搭乗していなくてもよいし、乗員15に代えて、貨物が積載されていてもよい。
前記搭乗部14は、乗用車、バス等の自動車に使用されるシートと同様のものであり、座面部14a、背もたれ部14b及びヘッドレスト14cを備え、図示されない移動機構を介して本体部11に取り付けられている。
前記移動機構は、リニアガイド装置等の低抵抗の直線移動機構、及び、能動重量部アクチュエータとしての能動重量部モータ62を備え、該能動重量部モータ62によって搭乗部14を駆動し、本体部11に対して進行方向に前後させるようになっている。なお、能動重量部アクチュエータとしては、例えば、油圧モータ、リニアモータ等を使用することもできるが、ここでは、回転式の電気モータである能動重量部モータ62を使用するものとして説明する。
リニアガイド装置は、例えば、本体部11に取り付けられている案内レールと、搭乗部14に取り付けられ、案内レールに沿ってスライドするキャリッジと、案内レールとキャリッジとの間に介在するボール、コロ等の転動体とを備える。そして、案内レールには、その左右側面部に2本の軌道溝が長手方向に沿って直線状に形成されている。また、キャリッジの断面はコ字状に形成され、その対向する2つの側面部内側には、2本の軌道溝が、案内レールの軌道溝と各々対向するように形成されている。転動体は、軌道溝の間に組み込まれており、案内レールとキャリッジとの相対的直線運動に伴って軌道溝内を転動するようになっている。なお、キャリッジには、軌道溝の両端をつなぐ戻し通路が形成されており、転動体は軌道溝及び戻し通路を循環するようになっている。
また、リニアガイド装置は、該リニアガイド装置の動きを締結するブレーキ又はクラッチを備える。車両10が停車しているときのように搭乗部14の動作が不要であるときには、ブレーキによって案内レールにキャリッジを固定することで、本体部11と搭乗部14との相対的位置関係を保持する。そして、動作が必要であるときには、このブレーキを解除し、本体部11側の基準位置と搭乗部14側の基準位置との距離が所定値となるように制御される。
前記搭乗部14の脇(わき)には、目標走行状態取得装置としてのジョイスティック31を備える入力装置30が配設されている。乗員15は、操縦装置であるジョイスティック31を操作することによって、車両10を操縦する、すなわち、車両10の加速、減速、後退、旋回、その場回転、停止、制動等の走行指令を入力するようになっている。なお、乗員15が操作して走行指令を入力することができる装置であれば、ジョイスティック31に代えて他の装置、例えば、ジョグダイヤル、タッチパネル、押しボタン等の装置を目標走行状態取得装置として使用することもできる。
なお、車両10がリモートコントロールによって操縦される場合には、前記ジョイスティック31に代えて、コントローラからの走行指令を有線又は無線で受信する受信装置を目標走行状態取得装置として使用することができる。また、車両10があらかじめ決められた走行指令データに従って自動走行する場合には、前記ジョイスティック31に代えて、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶媒体に記憶された走行指令データを読み取るデータ読取り装置を目標走行状態取得装置として使用することができる。
また、車両10は、車両制御装置としての制御ECU(Electronic Control Unit)20を有し、該制御ECU20は、主制御ECU21、駆動輪制御ECU22及び能動重量部制御ECU23を備える。前記制御ECU20並びに主制御ECU21、駆動輪制御ECU22及び能動重量部制御ECU23は、CPU、MPU等の演算手段、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶手段、入出力インターフェイス等を備え、車両10の各部の動作を制御するコンピュータシステムであり、例えば、本体部11に配設されるが、支持部13や搭乗部14に配設されていてもよい。また、前記主制御ECU21、駆動輪制御ECU22及び能動重量部制御ECU23は、それぞれ、別個に構成されていてもよいし、一体に構成されていてもよい。
そして、主制御ECU21は、駆動輪制御ECU22、駆動輪センサ51及び駆動モータ52とともに、駆動輪12の動作を制御する駆動輪制御システム50の一部として機能する。前記駆動輪センサ51は、レゾルバ、エンコーダ等から成り、駆動輪回転状態計測装置として機能し、駆動輪12の回転状態を示す駆動輪回転角及び/又は回転角速度を検出し、主制御ECU21に送信する。また、該主制御ECU21は、駆動トルク指令値を駆動輪制御ECU22に送信し、該駆動輪制御ECU22は、受信した駆動トルク指令値に相当する入力電圧を駆動モータ52に供給する。そして、該駆動モータ52は、入力電圧に従って駆動輪12に駆動トルクを付与し、これにより、駆動アクチュエータとして機能する。
また、主制御ECU21は、能動重量部制御ECU23、能動重量部センサ61及び能動重量部モータ62とともに、能動重量部である搭乗部14の動作を制御する能動重量部制御システム60の一部として機能する。前記能動重量部センサ61は、エンコーダ等から成り、能動重量部移動状態計測装置として機能し、搭乗部14の移動状態を示す能動重量部位置及び/又は移動速度を検出し、主制御ECU21に送信する。また、該主制御ECU21は、能動重量部推力指令値を能動重量部制御ECU23に送信し、該能動重量部制御ECU23は、受信した能動重量部推力指令値に相当する入力電圧を能動重量部モータ62に供給する。そして、該能動重量部モータ62は、入力電圧に従って搭乗部14を並進移動させる推力を搭乗部14に付与し、これにより、能動重量部アクチュエータとして機能する。
さらに、主制御ECU21は、駆動輪制御ECU22、能動重量部制御ECU23、車体傾斜センサ41、駆動モータ52及び能動重量部モータ62とともに、車体の姿勢を制御する車体制御システム40の一部として機能する。前記車体傾斜センサ41は、加速度センサ、ジャイロセンサ等から成り、車体傾斜状態計測装置として機能し、車体の傾斜状態を示す車体傾斜角及び/又は傾斜角速度を検出し、主制御ECU21に送信する。そして、該主制御ECU21は、駆動トルク指令値を駆動輪制御ECU22に送信し、能動重量部推力指令値を能動重量部制御ECU23に送信する。
なお、主制御ECU21には、入力装置30のジョイスティック31から走行指令が入力される。そして、前記主制御ECU21は、駆動トルク指令値を駆動輪制御ECU22に送信し、能動重量部推力指令値を能動重量部制御ECU23に送信する。
また、前記制御ECU20は、車両10の走行状態及び車体姿勢の時間変化に基づいて路面勾配を推定する路面勾配推定手段として機能する。また、目標走行状態及び路面勾配に応じて目標とする車体姿勢、すなわち、車体傾斜状態及び/又は能動重量部移動状態を決定する目標車体姿勢決定手段として機能する。さらに、各センサによって取得した車両10の走行状態及び車体姿勢、並びに、目標走行状態、目標車体姿勢及び路面勾配に応じて各アクチュエータの出力を決定するアクチュエータ出力決定手段として機能する。さらに、車両10の前後方向の路面勾配を取得する路面勾配取得手段として機能する。さらに、路面勾配に応じて付加する駆動トルクを決定する登坂トルク決定手段として機能する。さらに、登坂トルクに応じて、車体の重心補正量を決定する重心補正量決定手段として機能する。
なお、各センサは、複数の状態量を取得するものであってもよい。例えば、車体傾斜センサ41として加速度センサとジャイロセンサとを併用し、両者の計測値から車体傾斜角と傾斜角速度とを決定するようにしてもよい。
次に、前記構成の車両10の動作について説明する。まず、走行及び姿勢制御処理の概要について説明する。
図3は本発明の第1の実施の形態における坂道上での車両の動作を示す概略図、図4は本発明の第1の実施の形態における車両の走行及び姿勢制御処理の動作を示すフローチャートである。なお、図3(a)は比較のための従来技術による動作例を示し、図3(b)は本実施の形態による動作を示している。
本実施の形態においては、搭乗部14が能動重量部として機能し、図3(b)に示されるように、並進させる、すなわち、前後に移動させることによって、車両10の重心位置を能動的に補正するようになっている。これにより、坂道で車両10を停止させるために、すなわち、該車両10が下り方向に移動しないように、駆動輪12に駆動トルクを付与し、その反作用である反トルクが車体に作用しても、車体が下り方向に傾いてしまうことがない。また、坂道を走行する場合にも、車体が下り方向に傾いてしまうことがなく、安定して走行することができる。
これに対し、仮に、「背景技術」の項で説明した従来の車両のように、路面勾配に応じた重心位置補正を行わない場合、図3(a)に示されるように、坂道で車両10を停止させておくために駆動輪12に付与した駆動トルクの反作用、すなわち、反トルクが車体に作用するので、車体が下り方向に傾いてしまう。そして、坂道を走行する場合にも、安定した車体姿勢及び走行の制御を行うことができない。
そこで、本実施の形態においては、走行及び姿勢制御処理を実行することによって、路面勾配に関わらず、車両10は安定して停止及び走行することができるようになっている。
走行及び姿勢制御処理において、制御ECU20は、まず、状態量の取得処理を実行し(ステップS1)、各センサ、すなわち、駆動輪センサ51、車体傾斜センサ41及び能動重量部センサ61によって、駆動輪12の回転状態、車体の傾斜状態及び搭乗部14の移動状態を取得する。
次に、制御ECU20は、路面勾配の取得処理を実行し(ステップS2)、状態量の取得処理で取得した状態量、すなわち、駆動輪12の回転状態、車体の傾斜状態及び搭乗部14の移動状態と、各アクチュエータの出力値、すなわち、駆動モータ52及び能動重量部モータ62の出力値とに基づき、オブザーバによって路面勾配を推定する。ここで、前記オブザーバは、力学的なモデルに基づいて、制御系の内部状態を観測する方法であり、ワイヤードロジック又はソフトロジックで構成される。
次に、制御ECU20は、目標走行状態の決定処理を実行し(ステップS3)、ジョイスティック31の操作量に基づいて、車両10の加速度の目標値、及び、駆動輪12の回転角速度の目標値を決定する。
次に、制御ECU20は、目標車体姿勢の決定処理を実行し(ステップS4)、路面勾配の取得処理によって取得された路面勾配と、目標走行状態の決定処理によって決定された車両10の加速度の目標値とに基づいて、車体姿勢の目標値、すなわち、車体傾斜角及び能動重量部位置の目標値を決定する。
最後に、制御ECU20は、アクチュエータ出力の決定処理を実行し(ステップS5)、状態量の取得処理によって取得された各状態量、路面勾配の取得処理によって取得された路面勾配、目標走行状態の決定処理によって決定された目標走行状態、及び、目標車体姿勢の決定処理によって決定された目標車体姿勢に基づいて、各アクチュエータの出力、すなわち、駆動モータ52及び能動重量部モータ62の出力を決定する。
次に、走行及び姿勢制御処理の詳細について説明する。まず、状態量の取得処理について説明する。
図5は本発明の第1の実施の形態における車両の力学モデル及びそのパラメータを示す図、図6は本発明の第1の実施の形態における状態量の取得処理の動作を示すフローチャートである。
本実施の形態においては、状態量やパラメータを次のような記号によって表す。なお、図5には状態量やパラメータの一部が示されている。
θW :駆動輪回転角〔rad〕
θ1 :車体傾斜角(鉛直軸基準)〔rad〕
λS :能動重量部位置(車体中心点基準)〔m〕
τW :駆動トルク(2つの駆動輪の合計)〔Nm〕
SS :能動重量部推力〔N〕
g:重力加速度〔m/s2 〕
η:路面勾配〔rad〕
mW :駆動輪質量(2つの駆動輪の合計)〔kg〕
RW :駆動輪接地半径〔m〕
IW :駆動輪慣性モーメント(2つの駆動輪の合計)〔kgm2 〕
DW :駆動輪回転に対する粘性減衰係数〔Nms/rad〕
m1 :車体質量(能動重量部を含む)〔kg〕
l1 :車体重心距離(車軸から)〔m〕
I1 :車体慣性モーメント(重心周り)〔kgm2 〕
D1 :車体傾斜に対する粘性減衰係数〔Nms/rad〕
mS :能動重量部質量〔kg〕
lS :能動重量部重心距離(車軸から)〔m〕
IS :能動重量部慣性モーメント(重心周り)〔kgm2 〕
DS :能動重量部並進に対する粘性減衰係数〔Nms/rad〕
θW :駆動輪回転角〔rad〕
θ1 :車体傾斜角(鉛直軸基準)〔rad〕
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τW :駆動トルク(2つの駆動輪の合計)〔Nm〕
SS :能動重量部推力〔N〕
g:重力加速度〔m/s2 〕
η:路面勾配〔rad〕
mW :駆動輪質量(2つの駆動輪の合計)〔kg〕
RW :駆動輪接地半径〔m〕
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DW :駆動輪回転に対する粘性減衰係数〔Nms/rad〕
m1 :車体質量(能動重量部を含む)〔kg〕
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IS :能動重量部慣性モーメント(重心周り)〔kgm2 〕
DS :能動重量部並進に対する粘性減衰係数〔Nms/rad〕
次に、路面勾配の取得処理について説明する。
図7は本発明の第1の実施の形態における路面勾配の取得処理の動作を示すフローチャートである。
路面勾配の取得処理において、主制御ECU21は、路面勾配ηを推定する(ステップS2−1)。この場合、状態量の取得処理で取得した各状態量と、前回(一つ前の時間ステップ)の走行及び姿勢制御処理におけるアクチュエータ出力の決定処理で決定した各アクチュエータの出力とに基づき、次の式(1)により、路面勾配ηを推定する。
このように、本実施の形態においては、駆動モータ52が出力する駆動トルクと、状態量としての駆動輪回転角加速度、車体傾斜角加速度及び能動重量部移動加速度とに基づいて路面勾配を推定する。この場合、駆動輪12の回転状態を示す駆動輪回転角加速度だけでなく、車体の姿勢変化を示す車体傾斜角加速度及び能動重量部移動加速度をも考慮している。すなわち、倒立振り子の姿勢制御を利用した、いわゆる倒立型車両に特有の要素である車体の姿勢変化を考慮している。
従来においては、駆動トルクと駆動輪回転角加速度とに基づいて路面勾配を推定するため、特に車体の姿勢が変化しているとき、路面勾配の推定値に大きな誤差が生じることがあった。しかし、本実施の形態においては、車体の姿勢変化を示す車体傾斜角加速度及び能動重量部移動加速度をも考慮して路面勾配を推定するので、大きな誤差が生じることがなく、極めて高い精度で路面勾配を推定することができる。
一般的に、倒立型車両では、駆動輪と相対的に車体の重心が前後に移動するので、駆動輪が停止していても、車両の重心が前後に移動することがある。したがって、重心の加速度と駆動力、あるいは、駆動トルクとから路面勾配を高い精度で推定するためには、このような影響を考慮する必要がある。一般的な倒立型車両においては、車両全体に対する車体の重量比率が高いので、特に車両停止時には、このような影響が大きくなる。
なお、路面勾配の値にローパスフィルタをかけることによって、推定値の高周波成分を除去することもできる。この場合、推定に時間遅れが生じるが、高周波成分に起因する振動を抑制することができる。
本実施の形態においては、駆動力、慣性力及び路面勾配による重力成分を考慮しているが、駆動輪12の転がり抵抗や回転軸の摩擦による粘性抵抗、あるいは、車両10に作用する空気抵抗などを副次的な影響として考慮してもよい。
また、本実施の形態においては、駆動輪12の回転運動に関する線形モデルを使用しているが、より正確な非線形モデルを使用してもよいし、車体傾斜運動や能動重量部並進運動についてのモデルを使用してもよい。なお、非線形モデルについては、マップの形式で関数を適用することもできる。
さらに、計算の簡略化のために、車体姿勢の変化を考慮しなくてもよい。
次に、目標走行状態の決定処理について説明する。
図8は本発明の第1の実施の形態における目標走行状態の決定処理の動作を示すフローチャートである。
目標走行状態の決定処理において、主制御ECU21は、まず、操縦操作量を取得する(ステップS3−1)。この場合、乗員15が、車両10の加速、減速、旋回、その場回転、停止、制動等の走行指令を入力するために操作したジョイスティック31の操作量を取得する。
続いて、主制御ECU21は、取得したジョイスティック31の操作量に基づいて、車両加速度の目標値を決定する(ステップS3−2)。例えば、ジョイスティック31の前後方向への操作量に比例した値を車両加速度の目標値とする。
続いて、主制御ECU21は、決定した車両加速度の目標値から、駆動輪回転角速度の目標値を算出する(ステップS3−3)。例えば、車両加速度の目標値を時間積分し、駆動輪接地半径RW で除した値を駆動輪回転角速度の目標値とする。
次に、目標車体姿勢の決定処理について説明する。
図9は本発明の第1の実施の形態における能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値の変化を示すグラフ、図10は本発明の第1の実施の形態における目標車体姿勢の決定処理の動作を示すフローチャートである。
目標車体姿勢の決定処理において、主制御ECU21は、まず、能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値を決定する(ステップS4−1)。この場合、目標走行状態の決定処理によって決定された車両加速度の目標値と、路面勾配の取得処理によって取得された路面勾配ηとに基づき、次の式(2)及び(3)により、能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値を決定する。
続いて、主制御ECU21は、残りの目標値を算出する(ステップS4−2)。すなわち、各目標値を時間微分又は時間積分することにより、駆動輪回転角、車体傾斜角速度及び能動重量部移動速度の目標値を算出する。
このように、本実施の形態においては、車両加速度に伴って車体に作用する慣性力及び駆動モータ反トルクだけでなく、路面勾配ηに応じた登坂トルクに伴って車体に作用する反トルクも考慮して、車体姿勢の目標値、すなわち、能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値を決定する。
このとき、車体に作用して車体を傾斜させようとするトルク、すなわち、車体傾斜トルクを重力の作用によって打ち消すように、車体の重心を移動させる。例えば、車両10が加速するとき及び坂を上るときには、搭乗部14を前方へ移動させ、あるいは、さらに車体を前方へ傾ける。また、車両10が減速するとき及び坂を下るときには、搭乗部14を後方へ移動させ、あるいは、さらに車体を後方へ傾ける。
本実施の形態においては、図9に示されるように、まず、車体を傾斜させずに搭乗部14を移動させ、該搭乗部14が能動重量部移動限界に達すると、車体の傾斜を開始させる。そのため、細かい加減速に対しては車体が前後に傾かないので、乗員15にとっての乗り心地が向上する。また、格別な急勾配でなければ、坂道の上でも車体が直立状態を維持するので、乗員15にとっての視界の確保が容易となる。さらに、格別な急勾配でなければ、坂道の上でも車体が大きく傾斜することがないので、車体の一部が路面に当接することが防止される。
なお、本実施の形態においては、能動重量部移動限界が前方と後方とで等しい場合を想定しているが、前方と後方とで異なる場合には、各々の限界に応じて、車体の傾斜の有無を切り替えるようにしてもよい。例えば、加速性能よりも制動性能を高く設定する場合、後方の能動重量部移動限界を前方よりも遠くに設定する必要がある。
また、本実施の形態においては、加速度が低いときや勾配が緩やかなときには、搭乗部14の移動だけで対応させているが、その車体傾斜トルクの一部又は全部を車体の傾斜で対応させてもよい。車体を傾斜させることにより、乗員15に作用する前後方向の力を軽減することができる。
さらに、本実施の形態においては、線形化した力学モデルに基づいた式を使用しているが、より正確な非線形モデルや粘性抵抗を考慮したモデルに基づいた式を使用してもよい。なお、式が非線形になる場合には、マップの形式で関数を適用することもできる。
次に、アクチュエータ出力の決定処理について説明する。
図11は本発明の第1の実施の形態におけるアクチュエータ出力の決定処理の動作を示すフローチャートである。
アクチュエータ出力の決定処理において、主制御ECU21は、まず、各アクチュエータのフィードフォワード出力を決定する(ステップS5−1)。この場合、各目標値と路面勾配ηとから、後述の式(4)により駆動モータ52のフィードフォワード出力を決定し、また、同じく後述の式(5)により能動重量部モータ62のフィードフォワード出力を決定する。
このように、路面勾配ηに応じた登坂トルクを自動的に付加することにより、つまり、路面勾配ηに応じて駆動トルクを補正することにより、坂道であっても、平地と同様の操縦感覚を提供することができる。すなわち、坂道で停止した後、乗員15がジョイスティック31から手を放しても、車両10は動くことがない。また、坂道の上であっても、ジョイスティック31の一定の操縦操作に対して、平地と同様の加減速を行うことができる。
このように、本実施の形態においては、理論的にフィードフォワード出力を与えることによって、より高精度な制御を実現する。
なお、必要に応じて、フィードフォワード出力を省略することもできる。この場合、フィードバック制御により、定常偏差を伴いつつ、フィードフォワード出力に近い値が間接的に与えられる。また、前記定常偏差は、積分ゲインを適用することによって低減させることができる。
続いて、主制御ECU21は、各アクチュエータのフィードバック出力を決定する(ステップS5−2)。この場合、各目標値と実際の状態量との偏差から、後述の式(6)により駆動モータ52のフィードバック出力を決定し、また、同じく後述の式(7)により能動重量部モータ62のフィードバック出力を決定する。
なお、スライディングモード制御等の非線形のフィードバック制御を導入することもできる。また、より簡単な制御として、KW2、KW3及びKS5を除くフィードバックゲインのいくつかをゼロとしてもよい。さらに、定常偏差をなくすために、積分ゲインを導入してもよい。
最後に、主制御ECU21は、各要素制御システムに指令値を与える(ステップS5−3)。この場合、主制御ECU21は、前述のように決定したフィードフォワード出力とフィードバック出力との和を駆動トルク指令値及び能動重量部推力指令値として、駆動輪制御ECU22及び能動重量部制御ECU23に送信する。
このように、本実施の形態においては、路面勾配ηをオブザーバによって推定し、登坂トルクを与えるとともに、搭乗部14を上り側に移動させる。そのため、坂道で車体を直立に保持することができ、急勾配にも対応することができる。また、路面勾配ηを計測する装置が不要となり、構造を簡素化してコストを低減することができる。
さらに、車体の姿勢を示す車体傾斜角θ1 及び能動重量部位置λS をも考慮して路面勾配ηを推定するので、大きな誤差が生じることなく、極めて高い精度で路面勾配ηを推定することができる。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
図12は本発明の第2の実施の形態における坂道上での車両の姿勢を説明する第1の図、図13は本発明の第2の実施の形態における坂道上での車両の姿勢を説明する第2の図、図14は本発明の第2の実施の形態における坂道上での車両の姿勢を説明する第3の図である。なお、図12において、(a)及び(b)は好ましくない例を示す図、(c)は好ましい例を示す図、図13において、(a)は従来の車両の姿勢変化を示す図、(b)は本実施の形態の車両の姿勢変化を示す図、図14において、(a)は麓付近の車両の姿勢変化を示す図、(b)は頂上付近の車両の姿勢変化を示す図である。
前記第1の実施の形態においては、車体傾斜トルクを重力の作用が打ち消すように車体の重心を移動させるために、急な加減速時を除いて、車体を傾斜させずに搭乗部14を移動させる。坂道上でも同様であり、車体を直立に、すなわち、重力の作用する方向である鉛直方向に対して平行に保持することができる。
しかし、坂道を走行しているときに車体が直立状態にあると、図12(a)に示されるように、乗員15の視線の先が路面になってしまい、乗員15が前方の視界を確保するのに苦労する可能性があるので、好ましくない。なお、図において、矢印は乗員15の視線を示している。また、車体の姿勢が図12(b)に示されるようになると、乗員15の視線の先が空になってしまい、同様に、乗員15が前方の視界を確保するのに苦労する可能性があるので、好ましくない。
車両走行中の視認性という面からは、車体の姿勢が図12(c)に示されるようになり、乗員15の視線の先が坂道の頂点のやや上になることが好ましい。また、乗員15も、前方の視界を確保するために、自ら首を曲げて上方を見上げたり、下方を見下ろしたりする必要がないので、乗り心地がよく、快適である。
仮に、「背景技術」の項で説明した従来の車両のように、路面勾配に応じた車体の姿勢制御を行わない場合、図13(a)に示されるように、坂道を走行中に車体が前方に傾斜するため、乗員15は地面方向を見てしまい、前方の視野を確保しづらくなってしまう。これに対し、本実施の形態においては、車体の姿勢を適切に制御することによって、図13(b)に示されるように、乗員15の視線の先が坂道の頂点のやや上になるとともに、車両10が坂道の頂点に近付くに従って、視線が徐々に水平となるように変化する。
具体的には、本実施の形態における車両10は、坂道の路面勾配ηと長さとを取得し、乗員15の視線の方向が最適な方向、すなわち、車両10の進行方向となるように、車体の姿勢を制御する。これにより、図14(a)に示されるように、坂道の麓付近では、乗員15の視線の先が坂道の頂点のやや上になり、図14(b)に示されるように、坂道の頂点付近では、乗員15の視線が水平に近付くようになる。したがって、坂道を走行しているときに乗員15は、違和感を感じることがなく、容易に前方の視界を確保することができるので、乗り心地がよく、快適である。さらに、安全性も向上する。
次に、本実施の形態における車両10の構成について説明する。
図15は本発明の第2の実施の形態における車両の制御システムの構成を示すブロック図である。
本実施の形態においては、路面勾配ηとともに坂道の頂点までの距離を取得し、それに基づいて、乗員15の視線の方向が最適な方向となるように車体の姿勢を制御するので、車両10は、位置測定システム70を有する。該位置測定システム70は、GPS(Global Positioning System)センサ等のように車両10の現在位置を測定する車両位置測定センサ71と、一般の自動車等に搭載されている車両用ナビゲーション装置が備えるものと同様の地図データベース72とを備える。
前記車両位置測定センサ71は、例えば、人工衛星(GPS衛星)から送信された電波を受信することによって地球上における車両10の現在位置を測定する。また、前記地図データベース72は、道路の幅員、勾配、カント、高度、バンク、路面の状態等を含む地図データ等が格納されている。そのため、地図データベース72を参照することにより、車両位置測定センサ71によって測定された車両10の現在位置における路面勾配ηを取得することができる。同様に、車両10が走行中の坂道の頂上までの距離も取得することができる。
なお、路面勾配ηは、前記第1の実施の形態で説明したように、推定することもでき、また、センサによって直接測定することもできる。例えば、互いに前後に離れて、搭乗部14の下面に2つの距離センサを配設し、該2つの距離センサが互いに前後に離れた位置において計測した路面までの距離の差に基づいて路面勾配ηを算出することができる。また、レーザレンジファインダによって測定することもできる。さらに、マシンビジョンを使用した画像処理によって測定することもできる。同様に、坂道の頂点までの距離も、距離センサやマシンビジョンによって測定することもできる。
なお、本実施の形態においては、坂道が上り坂、すなわち、登坂路である場合について説明し、坂道が下り坂、すなわち、降坂路である場合については、第3の実施の形態において説明する。また、その他の点の構成については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
次に、本実施の形態における車両10の動作について説明する。ここでは、坂道を走行する場合の車両10の姿勢制御の動作についてのみ説明し、その他の点の動作については、前記第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
図16は本発明の第2の実施の形態における坂道上での姿勢制御のパラメータを示す図、図17は本発明の第2の実施の形態における視線の高さを示す図、図18は本発明の第2の実施の形態における坂道上での車体姿勢角を算出する方法を説明する図、図19は本発明の第2の実施の形態における車体姿勢角を調整する方法を説明する第1の図、図20は本発明の第2の実施の形態における車体姿勢角を調整する方法を説明する第2の図、図21は本発明の第2の実施の形態における車両の姿勢制御処理の動作を示すフローチャート、図22は本発明の第2の実施の形態における車両の姿勢制御処理の結果を示す図である。
本実施の形態においては、図16に示されるようなパラメータを坂道上での姿勢制御に使用する。
H:坂道の頂点までの高さ〔m〕
η:坂道の勾配(路面勾配)〔rad〕
L:現在の車両位置から坂道頂点までの距離〔m〕
h:坂道の頂点から視線の目標点までの高さ〔m〕
Θ:車体姿勢角〔rad〕
また、乗員15の視線の中心は車体である。
H:坂道の頂点までの高さ〔m〕
η:坂道の勾配(路面勾配)〔rad〕
L:現在の車両位置から坂道頂点までの距離〔m〕
h:坂道の頂点から視線の目標点までの高さ〔m〕
Θ:車体姿勢角〔rad〕
また、乗員15の視線の中心は車体である。
なお、車体姿勢角Θは、車体が後方に傾いた際の鉛直軸に対する角度であり、その値は、最小値ΘMin 以上であって、最大値ΘMax 以下となる。
坂道上での姿勢制御処理において、主制御ECU21は、まず、路面勾配データを取得する(ステップS11)。この場合、主制御ECU21は、地図データベース72を参照し、車両位置測定センサ71が測定した車両10の現在位置における路面勾配ηを取得する。なお、距離センサやマシンビジョンによって路面勾配ηを直接測定してもよい。
続いて、主制御ECU21は、坂道上での姿勢制御、すなわち、視線制御を行うか否かを判断する(ステップS12)。この場合、主制御ECU21は、取得した路面勾配ηに基づき、車両10の現在位置が坂道の上であると判断すると視線制御を行うものとする。なお、取得した路面勾配ηの値があらかじめ設定された閾(しきい)値以上であれば、視線制御を行うようにすることもできる。そして、視線制御を行わない場合には処理を終了する。
また、視線制御を行う場合、主制御ECU21は、地図データベース72と現在位置とから上り制御か下り制御かを決定する(ステップS13)。坂道が上り坂、すなわち、登坂路である場合には、視線制御として上り制御を行い、坂道が下り坂、すなわち、降坂路である場合には、視線制御として下り制御を行う。なお、本実施の形態においては、上り制御について説明し、下り制御については、第3の実施の形態において説明する。
続いて、主制御ECU21は、地図データベース72と現在位置とから坂道の終わり(終点)までの距離Lを算出する(ステップS14)。なお、距離センサやマシンビジョンによって路面勾配ηを直接測定してもよい。また、坂道の終わりとは、上り制御の場合は坂道の頂点であり、下り制御の場合は坂道の麓である。
続いて、主制御ECU21は、坂道の終わりから視線の目標点までの高さ、すなわち、hの値を決定する(ステップS15)。この場合、主制御ECU21は、hの値として、図17に示されるように、水平面における路面からの乗員15の視線の高さh0 の値を採用する。なお、h0 の値としては、標準体型の乗員15の視線の高さ、又は、搭乗部14のヘッドレスト14cの中心までの高さを採用し、固定値とする。ただし、センサによって乗員15の体格を測定し、乗員15毎にh0 の値を変更してもよい。
続いて、主制御ECU21は、hに対する姿勢角の算出を行う(ステップS16)。この場合、主制御ECU21は、図18に示されるように、三角法に従って、車体姿勢角Θを算出する。
なお、図18において、Rは駆動輪12の接地半径〔m〕であり、Heye はhからRを減じた値である。すなわち、Heye =h−Rである。したがって、Heye は固定値であるが、センサによって乗員15の体格を測定し、乗員15毎にHeye の値を変更してもよい。
また、h1 は、従来の視線、すなわち、視線制御を行わない場合の乗員15の視線から、坂道の頂点までの高さを示し、次の式(8)で表される。そして、tanΘの値は、次の式(9)で表される。
以上のことから、車体姿勢角Θは、次の式(10)で表される。ここで、車体姿勢角Θの値はゼロ以上である。なお、式(10)におけるA、B及びCは、式(11)〜(13)で定義される。
続いて、主制御ECU21は、車体姿勢角Θの算出値が限界値以内か否かを判断する(ステップS17)。図19(a)に示されるような最大値ΘMax は、あらかじめ設定されている。また、最小値ΘMin は任意に設定されている。例えば、最小値ΘMin =0である。したがって、主制御ECU21は、算出された車体姿勢角Θが最小値ΘMin 以上、かつ、最大値ΘMax 以下であるか否かを判断する。
そして、車体姿勢角Θの算出値が限界値以内である場合には、算出値を採用する(ステップS18)。また、車体姿勢角Θの算出値が限界値以内でない場合には、限界値を採用する(ステップS19)。
ここで、該限界値は、車体姿勢角Θの最大値ΘMax に余裕を持たせるために、係数kを乗じた値
ΘMax ×k
とする。なお、kは、0以上、かつ、1以下の数である。
ΘMax ×k
とする。なお、kは、0以上、かつ、1以下の数である。
また、前記限界値は、車体姿勢角Θの最大値ΘMax から所定値を減じた値
ΘMax −x
とすることもできる。なお、xは、ΘMax 以下の数である。
ΘMax −x
とすることもできる。なお、xは、ΘMax 以下の数である。
続いて、主制御ECU21は、車体姿勢角Θの調整を行う(ステップS20)。この場合、主制御ECU21は、能動重量部として機能する搭乗部14を移動させることによって車体の姿勢を制御し、車体姿勢角Θが算出値となるように調整する。すなわち、図19(b)に示されるように、駆動モータ52が発生する偏変トルクΔτを考慮して、搭乗部14の移動量λを調整することによって、車体姿勢角Θが算出値となるようにする。
詳細には、車体に作用する力は、図20に示されるようになる。ここで、偏変トルクΔτは、加減速時に発生するトルクであり、加速時には進行方向と逆向きに発生し、減速時には進行方向に発生し、一定速度時には0になる。また、l1 は車体全体の重心から駆動輪12の回転軸までの距離であり、l2 は搭乗部14の重心から駆動輪12の回転軸までの距離である。
そして、(A)は、車体全体の重心に作用する回転モーメントであって、次の式(14)で表され、(B)は、搭乗部14の重心に作用する回転モーメントであって、次の式(15)で表される。また、車体姿勢角Θと路面勾配ηとの関係は、次の式(16)で表される。
なお、Mは車体全体の重量であり、mは乗員15も含む搭乗部14の重量である。
そして、車両10が一定速度で走行している場合には、偏変トルクΔτが発生しないので、次の式(17)で表される関係が成立し、車両10が加速又は減速している場合には、偏変トルクΔτが発生するので、次の式(18)で表される関係が成立する。
前記式(17)及び(18)から、車体姿勢角Θに対応する移動量λの値を求めることができるので、車体姿勢角Θが算出値となるように移動量λを決定することができる。なお、前記式(17)及び(18)に、搭乗部14の機構によってあらかじめ設定されている移動量λの最大値を代入すれば、車体姿勢角Θの最大値ΘMax を求めることができる。
このようにして、車体姿勢角Θの調整を行った後、主制御ECU21は、再び、路面勾配データを取得して、以降の動作を繰り返す。
以上のような姿勢制御の動作を行うことにより、坂道を走行する車両10は、図22に示されるように、車体の姿勢が変化する。すなわち、坂道の麓では車体姿勢角Θが大きく、坂道を上るに従って車体姿勢角Θが徐々に減少し、坂道の頂点では車体姿勢角Θがゼロになる。換言すると、坂道上では、乗員15の視線が坂道の頂点から高さhの点を通過するように、車体を後方へ車体姿勢角Θだけ傾ける。そして、坂道を上るに従って徐々に車体姿勢角Θの値を減少させることにより、車両10が坂道の頂点に近付いても、乗員15の視線が坂道の頂点から高さhの点を通過するようにする。
これにより、車両10が坂道を走行しているときに乗員15の視線の先が、常に、坂道の頂点から高さhの点となるとともに、坂道の頂点に近付くと、乗員15の視線が水平に近付くようになる。なお、hの値として、水平面における路面からの乗員15の視線の高さh0 の値を採用しているので、車両10が坂道の頂点に到達すると、平坦(たん)路を走行している場合と同様に、乗員15の視線が水平となるので、乗員15は違和感を感じることがない。
このように、本実施の形態においては、上り坂の坂道では、路面勾配ηに応じて乗員15の視線の方向が最適な方向となるように、車体を後方に傾斜させる。この場合、乗員15の視線が坂道の頂点より乗員15の視線の高さh分だけ上に位置する点を通過するように、車体姿勢角Θを制御し、坂道を上るに従って徐々に車体姿勢角Θを減少させる。したがって、坂道を走行しているときに乗員15は、違和感を感じることがなく、容易に前方の視界を確保することができるので、乗り心地がよく、快適である。さらに、安全性も向上する。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
図23は本発明の第3の実施の形態における坂道上での車両の姿勢を説明する図である。なお、(a)は従来の車両の姿勢変化を示す図、(b)は本実施の形態の車両の姿勢変化を示す図である。
前記第2の実施の形態においては、坂道が上り坂、すなわち、登坂路である場合について説明したが、本実施の形態においては、坂道が下り坂、すなわち、降坂路である場合について説明する。
仮に、「背景技術」の項で説明した従来の車両のように、路面勾配に応じた車体の姿勢制御を行わない場合、図23(a)に示されるように、下り坂の坂道を走行中に車体が後方に傾斜するので、乗員15は前方の視界を確保することができなくなってしまう。これに対し、本実施の形態においては、車体の姿勢を適切に制御することによって、図23(b)に示されるように、乗員15の視線の先が坂道の麓のやや上になるとともに、車両10が坂道の麓に近付くに従って、視線が徐々に水平となるように変化する。
なお、車両10の構成については、前記第2の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
次に、本実施の形態における車両10の動作について説明する。ここでは、下り坂の坂道を走行する場合の車両10の姿勢制御の動作についてのみ説明し、その他の点の動作については、前記第1及び第2の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
図24は本発明の第3の実施の形態における坂道上での車体姿勢角を算出する方法を説明する図、図25は本発明の第3の実施の形態における坂道上での車体姿勢角を算出する方法を補足する図、図26は本発明の第3の実施の形態における車体姿勢角を調整する方法を説明する図、図27は本発明の第3の実施の形態における車両の姿勢制御処理の動作を示すフローチャート、図28は本発明の第3の実施の形態における車両の姿勢制御処理の結果を示す図、図29は本発明の第3の実施の形態における車両の姿勢制御処理を行わない場合を示す図である。
本実施の形態においては、前記第2の実施の形態と同様のパラメータを坂道上での姿勢制御に使用する。なお、主制御ECU21が路面勾配データを取得してから、hの値を決定するまでの動作、すなわち、図27におけるステップS31からステップS35までの動作については、前記第2の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
そして、hの値として水平面における路面からの乗員15の視線の高さh0 の値を採用した後、主制御ECU21は、hに対する姿勢角の算出を行う(ステップS36)。下り坂の坂道を走行する場合、主制御ECU21は、図24及び25に示されるような三角法に従って、車体姿勢角Θを算出する。
本実施の形態において、車体姿勢角Θは、次の式(19)で表される。ここで、車体姿勢角Θの値はゼロ以上である。なお、式(19)におけるB、D及びEは、式(20)〜(22)で定義される。
続いて、主制御ECU21は、車体姿勢角Θの算出値が限界値以内か否かを判断する(ステップS37)。そして、車体姿勢角Θの算出値が限界値以内である場合には、算出値を採用する(ステップS38)。また、車体姿勢角Θの算出値が限界値以内でない場合には、閾値を採用する(ステップS39)。
ここで、該閾値は、車体姿勢角Θの最大値ΘMax に余裕を持たせるために、係数kを乗じた値
ΘMax ×k
とする。なお、kは、0以上、かつ、1以下の数である。
ΘMax ×k
とする。なお、kは、0以上、かつ、1以下の数である。
また、前記閾値は、車体姿勢角Θの最大値ΘMax から所定値を減じた値
ΘMax −x
とすることもできる。なお、xは、ΘMax 以下の数である。
ΘMax −x
とすることもできる。なお、xは、ΘMax 以下の数である。
続いて、主制御ECU21は、車体姿勢角Θの調整を行う(ステップS40)。坂道が下り坂の場合、車体に作用する力は、図26に示されるようになる。そして、車体全体の重心に作用する回転モーメント(A)及び搭乗部14の重心に作用する回転モーメント(B)は、前記第2の実施の形態と同様であり、前記式(14)及び(15)で表される。車両10が一定速度で走行している場合には、偏変トルクΔτが発生しないので、前記第2の実施の形態と同様であり、前記式(17)で表される関係が成立する。
なお、車両10が加速又は減速している場合には、偏変トルクΔτが発生するので、次の式(23)で表される関係が成立する。
前記式(17)及び(23)から、車体姿勢角Θに対応する移動量λの値を求めることができるので、車体姿勢角Θが算出値となるように移動量λを決定することができる。なお、前記式(17)及び(23)に、搭乗部14の機構によってあらかじめ設定されている移動量λの最大値を代入すれば、車体姿勢角Θの最大値ΘMax を求めることができる。
このようにして、車体姿勢角Θの調整を行った後、主制御ECU21は、再び、路面勾配データを取得して、以降の動作を繰り返す。
以上のような姿勢制御の動作を行うことにより、坂道を走行する車両10は、図28に示されるように、車体の姿勢が変化する。すなわち、坂道の頂点では車体姿勢角Θが大きく、坂道を下るに従って車体姿勢角Θが徐々に減少し、坂道の麓では車体姿勢角Θがゼロになる。換言すると、坂道上では、乗員15の視線が坂道の麓から高さhの点を通過するように、車体を前方へ車体姿勢角Θだけ傾ける。そして、坂道を下るに従って徐々に車体姿勢角Θの値を減少させることによって、車両10が坂道の麓に近付いても、乗員15の視線が坂道の麓から高さhの点を通過するようにする。
これにより、車両10が坂道を走行しているときに乗員15の視線の先が、常に、坂道の麓から高さhの点となるとともに、坂道の麓に近付くと、乗員15の視線が水平に近付くようになる。なお、hの値として、水平面における路面からの乗員15の視線の高さh0 の値を採用しているので、車両10が坂道の麓に到達すると、平坦路を走行している場合と同様に、乗員15の視線が水平となるので、乗員15は違和感を感じることがない。
これに対し、「背景技術」の項で説明した従来の車両のように、路面勾配に応じた車体の姿勢制御を行わない場合、図29に示されるように、バランスを取るために車体が後方に傾斜するので、下り坂の坂道を走行中に乗員15の視線が上を向いてしまう。そのため、乗員15が前方の視界を確保するのに苦労してしまう。
このように、本実施の形態においては、下り坂の坂道では、路面勾配ηに応じて乗員15の視線の方向が最適な方向となるように、車体を前方に傾斜させる。この場合、乗員15の視線が坂道の麓より乗員15の視線の高さh分だけ上に位置する点を通過するように、車体姿勢角Θを制御し、坂道を下るに従って徐々に車体姿勢角Θを減少させる。したがって、坂道を走行しているときに乗員15は、違和感を感じることがなく、容易に前方の視界を確保することができるので、乗り心地がよく、快適である。さらに、安全性も向上する。
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、第1〜第3の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1〜第3の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
図30は本発明の第4の実施の形態における坂道を出る前の車両の姿勢を説明する図である。
「背景技術」の項で説明した従来の車両の場合、下り坂の坂道では、図23(a)に示されるように、車体が後方に傾斜するので、乗員15は前方の視界を確保することができなくなってしまう。もっとも、前記第3の実施の形態においては、下り坂の坂道で車体の姿勢を前方に傾斜させるようになっているが、坂道に入って急に車体を傾斜させると、乗員15は違和感を感じてしまうことがある。そこで、本実施の形態においては、図30に示されるように、坂道の距離Lに応じて車体の姿勢を変化させるようになっている。
例えば、坂道の距離Lがあまり長くなければ、後方に傾斜する車体姿勢角Θが徐々に減少して坂道の麓でゼロとなるように、車体の姿勢を変化させる。また、例えば、坂道の距離Lがある程度長ければ、車体が直立状態を維持するように、車体の姿勢を変化させる。さらに、例えば、坂道の距離Lがかなり長ければ、車体が直立状態から前方に傾斜した状態となるように、車体の姿勢を変化させる。
なお、車両10の構成については、前記第2の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
次に、本実施の形態における車両10の動作について説明する。
図31は本発明の第4の実施の形態における車両の姿勢制御処理の動作を示すフローチャート、図32は本発明の第4の実施の形態における車両の姿勢制御処理の結果を示す第1の図、図33は本発明の第4の実施の形態における車両の姿勢制御処理の結果を示す第2の図、図34は本発明の第4の実施の形態における車両の姿勢制御処理の結果を示す第3の図である。
まず、主制御ECU21は、路面勾配データを取得し(ステップS51)、坂道上での姿勢制御、すなわち、視線制御を行うか否かを判断する(ステップS52)。そして、視線制御を行わない場合には処理を終了する。
また、視線制御を行う場合、主制御ECU21は、地図データベース72と現在位置とから上り制御か下り制御かを決定する(ステップS53)。坂道が上り坂、すなわち、登坂路である場合には、視線制御として上り制御を行い、坂道が下り坂、すなわち、降坂路である場合には、視線制御として下り制御を行う。
そして、主制御ECU21は、決定した制御が上り制御であるか否かを判断し(ステップS54)、上り制御である場合、地図データベース72と現在位置とから坂道の頂点までの距離Lを算出する(ステップS55)。また、上り制御でない場合、すなわち、下り制御である場合、地図データベース72と現在位置とから坂道の麓までの距離Lを算出する(ステップS56)。
続いて、主制御ECU21は、坂道の終わりから視線の目標点までの高さ、すなわち、hの値を決定する(ステップS57)。なお、hの値は、前記第2の実施の形態と同様にして決定される。
続いて、主制御ECU21は、hに対する姿勢角の算出を行う(ステップS58)。この場合、主制御ECU21は、前記第2及び第3の実施の形態で説明したように、三角法に従って、車体姿勢角Θを算出する。また、車体の姿勢を後方に傾斜した状態から直立状態にするとき、又は、後方に傾斜した状態から前方に傾斜した状態にするとき、車体姿勢角Θの変化は、坂道の残りの距離に関する一次関数的な変化とする。なお、必ずしも、一次関数的な変化でなくてもよい。
続いて、主制御ECU21は、車体姿勢角Θの算出値が限界値以内か否かを判断する(ステップS59)。そして、車体姿勢角Θの算出値が限界値以内である場合には、算出値を採用する(ステップS60)。また、車体姿勢角Θの算出値が限界値以内でない場合には、限界値を採用する(ステップS61)。
続いて、主制御ECU21は、車体姿勢角Θの調整を行い(ステップS62)、その後、再び、路面勾配データを取得して、以降の動作を繰り返す。
以上のような姿勢制御の動作を行うことによって、坂道を走行する車両10は、図32〜34に示されるように、車体の姿勢が変化する。すなわち、図32に示される例においては、坂道の頂点では車体姿勢角Θが大きく、坂道を下るに従って車体姿勢角Θが徐々に減少し、坂道の麓では車体姿勢角Θがゼロになる。換言すると、坂道上では、車体を後方へ大きく傾け、坂道を下るに従って徐々に車体姿勢角Θの値を減少させ、車両10が坂道の麓に到着すると、車体が直立状態となるようにする。
また、図33に示される例においては、坂道の頂点では車体姿勢角Θが大きく、坂道を下るに従って車体姿勢角Θが徐々に減少し、坂道の途中で車体姿勢角Θがゼロになる。換言すると、坂道上では、車体を後方へ大きく傾け、坂道を下るに従って徐々に車体姿勢角Θの値を減少させ、車両10が坂道の麓に到着する前に、車体が直立状態となるようにする。
さらに、図34に示される例においては、坂道の頂点では車体が後方に傾き、坂道を下るに従って車体姿勢角Θが徐々に減少し、坂道の途中で車体姿勢角Θが一旦(たん)ゼロになった後、車体が前方に傾く。換言すると、坂道上では、車体を後方へ大きく傾け、坂道を下るに従って車体姿勢角Θの値を減少させ、途中で車体を直立状態とした後に前方へ傾け、車両10が坂道の麓に到着すると、再び、車体が直立状態となるようにする。
このように、本実施の形態においては、下り坂の坂道では、後方に傾斜した車体の車体姿勢角Θを制御し、坂道を下るに従って徐々に車体姿勢角Θを減少させる。したがって、坂道を走行しているときに乗員15は、違和感を感じることがなく、乗り心地がよく、快適である。さらに、安全性も向上する。
なお、前記第1〜第4の実施の形態においては、車両10が二輪車である場合について説明したが、駆動輪12の軸に対して車体が揺動するのであれば、車両10は三輪車であっても四輪車であってもよい。
また、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
10 車両
12 駆動輪
14 搭乗部
15 乗員
20 制御ECU
12 駆動輪
14 搭乗部
15 乗員
20 制御ECU
Claims (6)
- 車体と、
回転可能に前記車体に取り付けられた駆動輪と、
前記車体に対して相対移動する能動重量部と、
前記駆動輪に付与する駆動トルクを制御するとともに、前記能動重量部の位置を制御して前記車体の姿勢を制御する車両制御装置とを有し、
該車両制御装置は、坂道の終点に基づいて、前記車体の姿勢を制御することを特徴とする車両。 - 前記坂道の終点は、上り坂の場合は坂道の頂点であり、下り坂の場合は坂道の麓である請求項1に記載の車両。
- 前記車両制御装置は、前記坂道の終点に近付くに従って、前記車体の傾斜角が減少するように該車体の姿勢を制御する請求項1又は2に記載の車両。
- 前記車両制御装置は、前記坂道が上り坂の場合、鉛直軸を基準に前記車体を進行方向に対して後方に傾斜させ、前記坂道が下り坂の場合、前記車体を進行方向に対して前方に傾斜させる請求項1に記載の車両。
- 乗員が搭乗する搭乗部を更に有し、
前記車両制御装置は、乗員の視線が坂道の終点より所定の高さだけ上に位置する点を通過するように前記傾斜角を制御する請求項1に記載の車両。 - 前記所定の高さは、水平面における路面からの乗員の視線の高さである請求項4に記載の車両。
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JP2019119028A (ja) * | 2018-01-10 | 2019-07-22 | 株式会社日立製作所 | 移動体、動作制御システム、及び移動体システム |
-
2007
- 2007-12-26 JP JP2007334131A patent/JP2009118720A/ja not_active Withdrawn
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JP7081926B2 (ja) | 2018-01-10 | 2022-06-07 | 株式会社日立製作所 | 移動体、動作制御システム、及び移動体システム |
US11378960B2 (en) | 2018-01-10 | 2022-07-05 | Hitachi, Ltd. | Mobile entity |
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