JP5199679B2 - 難燃性油圧作動油組成物 - Google Patents

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Description

本発明は難燃性油圧作動油組成物に関し、特にアルミダイキャスト押し出し加工機あるいは製鉄所構内作業など、火災発生の危険性が高く、高温かつ高圧下で使用される用途に最適で、かつ高圧ポンプへの適用可能な、耐摩耗性、耐焼き付き性、スラッジ抑制性能に優れ、長期間使用可能であることを特徴とする難燃性油圧作動油組成物に関する。
従来よりアルミダイキャスト押し出し加工機あるいは製鉄所構内作業など、火災発生の危険性が高い場所で使用される作動液は、安全性を保つため水グリコールあるいは脂肪酸エステルなどの難燃性作動油(液)が使用されていた。その中でも消防法の規制から、第四石油類の規制がある場所では、水グリコールが主に使用されていたが、使用液管理の煩雑さ、耐摩耗性などについて欠点を有していた。ところが、2002年の消防法の改正により引火点250℃以上の脂肪酸エステルを基油とする作動油が消防法の適用外となり、その用途が広がることとなった。
脂肪酸エステルの性能は、エステルを構成する脂肪酸の組成により異なり、酸化安定性は飽和脂肪酸のエステルが優れている。しかしながら、飽和脂肪酸は石油原料からの合成あるいは動植物油から得られた不飽和脂肪酸を水添して製造されるため高価であり、地球環境に対して優しくない原料である。そのため、環境に優しく、コスト的にも有利な動植物油から得られた不飽和脂肪酸を主体とした脂肪酸を用いた天然系合成エステルや油脂も使用されているのが現状である(特許文献1〜3参照)。
特開2001−214187号公報 特許第3548591号公報 特許第2888747号公報
一方、最近は油圧システムの高圧化、メンテナンスフリー化が進み、このような環境下で使用される作動油には長寿命性と優れた耐摩耗性が要求されるようになってきた。ところが、動植物油などの天然系素材を原料とする天然系合成エステルは、脂肪酸が不飽和脂肪酸を主体であるため、地球環境に優しくコスト的にも有利であるが、酸化安定性が飽和脂肪酸の合成エステルや合成系の炭化水素油などより大きく劣るのが欠点であった。
従来の鉱油系作動油あるいは合成炭化水素系作動油には、フェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤あるいはZnDTP(ジアルキルジチオリン酸亜鉛)などが耐酸化安定性の添加剤として使用されてきた。しかしながら、飽和脂肪酸あるいは不飽和脂肪酸よりなるエステル系作動油は、従来のフェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤を配合した場合、生成したスラッジの溶解性が乏しいためにスラッジが蓄積し易く、様々な不具合を生じるという問題がある。特に、酸化安定性が劣る不飽和脂肪酸を用いた合成エステルや動植物油脂を基油とした場合には、その傾向が著しい。この不飽和脂肪酸を原料とした合成エステルや動植物油に効果的に作用する添加剤は未だ見出されていないため、従来は、地球環境に悪影響があり、価格も高い飽和脂肪酸を用いた合成エステルを使用するか、油交換インターバルの短い不飽和脂肪酸を原料とした合成エステルあるいは動植物油脂を使用するか、いずれかの選択をせざるを得なかった。
また、従来の鉱油系作動油には、ZnDTP(ジアルキルジチオリン酸亜鉛)、芳香族リン酸エステルなどの耐摩耗性添加剤が使用されてきた。しかしながら、エステルを基油とした場合エステル自身の吸着活性が高いために、鉱油と比較してこれら添加剤の効果がほとんど発揮されないという問題が指摘されてきた。例えば、代表的なリン系摩耗防止剤であるTCP(トリクレジルフォスフェート)は、脂肪酸エステル中ではほとんどその耐摩耗性の効果が発揮されない。
以上のように、従来の技術では、環境に優しく、比較的安価な天然原料を使用した合成エステルや動植物油脂を使用して長寿命で耐摩耗性に優れた難燃性作動油を開発することは、きわめて困難な状況にあった。
難燃性作動油として、エステル油が使用されるようになったが、不飽和脂肪酸からなるエステルは酸化安定性が極めて悪い。しかし、鉱油や合成系炭化水素油に使用されてきた従来のフェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤ではエステル油に対しては十分な酸化防止効果や耐摩耗性が得られない。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、不飽和脂肪酸を主体とする原料から得た合成エステルあるいは動植物油脂において、十分な酸化防止性能及び耐摩耗性を有し、最近の油圧システムの高圧化、メンテナンスフリー化に対応した長寿命の難燃性油圧作動油を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題について鋭意研究した結果、合成エステル及び/又は油脂、特に天然原料から得られた不飽和脂肪酸を主成分としてなる合成エステルに対して、特定のアミン系酸化防止剤及び特定のリン化合物を配合することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(A)合成エステル及び油脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の基油に、(B)式(1)で示されるビス(4−ジアルキルアミノフェニル)メタン系酸化防止剤を組成物全量基準で0.01〜5.0質量%、及び(C)硫黄含有リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルアミン塩及び亜リン酸エステルから選ばれる少なくとも1種類の摩耗防止剤を組成物全量基準で0.001〜5質量%を含有し、引火点が280℃以上であることを特徴とする難燃性油圧作動油組成物に関する。
Figure 0005199679
〔R,R,R及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜6のアルキル基である。〕
また本発明は、合成エステルを構成する脂肪酸が動植物原料から得られた脂肪酸であり、且つ合成エステルを構成する脂肪酸に占める不飽和脂肪酸の比率が30モル%以上であることを特徴とする前記記載の難燃性油圧作動油組成物に関する。
さらに本発明は、酸化防止剤としてさらにフェノール系酸化防止剤を組成物全量基準で0.01〜5質量%含有することを特徴とする前記記載の難燃性油圧作動油組成物に関する。
本発明によれば、不飽和脂肪酸を主体とした脂肪酸のエステル油において、耐酸化安定性、及び耐摩耗性に優れた難燃性油圧作動油組成物を提供することが可能となる。また、FZGギヤ試験において合格ステージが10以上、又はOECD301C 法による生分解率が60%以上である難燃性油圧作動油組成物を提供することが可能となる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明の難燃性油圧作動油組成物に使用される基油としては、不飽和脂肪酸を主体とした脂肪酸の合成エステル及び天然の動植物油脂の中から選ばれる少なくとも1種を基油として用いることができ、ポリオールエステル、ジエステル、各種植物油脂、動物油脂などが例示される。この中でもポリオールエステル、オレイン酸比率の高い菜種油、ひまわり油、大豆油などのエステルが好ましく、特に、40℃における動粘度が10〜200mm/s、引火点が280℃以上のものが好ましく用いられる。
合成エステルとしては、例えば、脂肪酸エステル、二塩基酸エステル、ポリオールエステル、コンプレックスエステル、芳香族エステル、炭酸エステル及びこれらの混合物などが例示される。
脂肪酸エステルとしては、パルミトイル酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレステアリン酸、8,11-イコサジエン酸などの不飽和脂肪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸などの炭素数5〜19の直鎖又は分枝アルキル基を有する飽和脂肪酸と、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノールなどの直鎖又は分枝アルキル基を有する炭素数1〜15の一価アルコールとのエステル及びこれらの混合物が好ましく用いられる。具体的には、オレイルステアレート、オレイルラウレートなどの脂肪酸エステルが好ましい。
二塩基酸エステルとしては、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの炭素数5〜10の二塩基酸と、前記脂肪酸エステルに記載の直鎖又は分枝アルキル基を有する炭素数1〜15の一価アルコールとのエステル及びこれらの混合物が好ましく用いられ、より具体的には例えば、ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、及びこれらの混合物などが挙げられる。
ポリオールエステルとしては、ジオールあるいは水酸基を3〜20個有するポリオールと、炭素数1〜24の脂肪酸とのエステルが好ましく用いられる。
ジオールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2ーメチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどが挙げられる。
ポリオールとしては、具体的には例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜20量体)、1,3,5ーペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトールなどの多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトースなどの糖類、ならびにこれらの部分エーテル化物、及びメチルグルコシド(配糖体)などが挙げられる。
これらの中でもポリオールとしては、より加水分解安定性に優れることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)などのヒンダードアルコールが好ましい。
前記ポリオールエステルの脂肪酸としては、前記脂肪酸エステルに記載の不飽和脂肪酸、及び炭素数5〜19の直鎖又は分枝アルキル基を有する飽和脂肪酸が例示され、特に前記脂肪酸エステルに記載の不飽和脂肪酸が好ましく用いられる。あるいはα炭素原子が4級であるネオ酸などが挙げられる。さらに分岐の飽和脂肪酸として、具体的には、イソペンタン酸(3−メチルブタン酸)、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸などが挙げられる。
好ましいポリオールエステルの具体例としては、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸の中から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸と、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン及びペンタエリスリトールの各ポリオールとのジエステル、トリエステルおよびテトラエステルが挙げられる。
なお、2種以上の脂肪酸とのエステルとは、1種の脂肪酸とポリオールのエステルを2種以上混合したものでも良く、2種以上の混合脂肪酸とポリオールのエステルであっても良い。
また、ポリオールエステルの中でも、より加水分解安定性に優れることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)などのヒンダードアルコールのエステルがより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン及びペンタエリスリトールのエステルがさらにより好ましく、加水分解安定性に特に優れることからトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのエステルが最も好ましい。具体的には、トリメチロールプロパンオレエート、ペンタエリスリトールオレエート、等が好ましく用いられる。
なお、ポリオールエステルとしては、ポリオールの全ての水酸基がエステル化されずに一部の水酸基が残った部分エステルであっても良く、全ての水酸基がエステル化された完全エステルであっても良く、また部分エステルと完全エステルの混合物であっても良いが、完全エステルであることが好ましい。
コンプレックスエステルとは、脂肪酸及び二塩基酸と、一価アルコール及びポリオールとのエステルのことであり、脂肪酸、二塩基酸、一価アルコール、ポリオールとしては、二塩基酸エステル及びポリオールエステルに関する説明において例示したものと同様のものが使用できる。
芳香族エステルとしては、1〜6価、好ましくは1〜4価、より好ましくは1〜3価の芳香族カルボン酸と炭素数1〜18、好ましくは1〜12の脂肪族アルコールとのエステルなどが用いられる。1〜6価の芳香族カルボン酸としては、具体的には例えば、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの混合物などが挙げられる。また、炭素数1〜18の脂肪族アルコールとしては、前記脂肪酸エステルに記載の直鎖又は分枝アルキル基を有する炭素数1〜15の一価アルコール、直鎖状又は分枝状のヘキサデカノール、直鎖状又は分枝状のヘプタデカノール、直鎖状又は分枝状のオクタデカノール及びこれらの混合物などが挙げられる。
芳香族エステルとして、具体的には例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジノニル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジドデシル、フタル酸ジトリデシル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)、トリメリット酸トリノニル、トリメリット酸トリデシル、トリメリット酸トリドデシル、トリメリット酸トリトリデシルなどが挙げられる。なお、当然のことながら、2価以上の芳香族カルボン酸を用いた場合、1種の脂肪族アルコールからなる単純エステルであってもよいし、2種以上の脂肪族アルコールからなる複合エステルであってもよい。
また、炭酸エステルとは、分子内に炭酸エステル構造を有する化合物である。なお、炭酸エステル構造は一分子内に1つでも良いし複数有していても良い。
炭酸エステルを構成するアルコールとしては、前述の脂肪族アルコール、ポリオールなどが使用でき、またポリグリコールやポリオールにポリグリコールを付加させたものも使用できる。また、炭酸と脂肪酸及び/又は二塩基酸を用いたものを使用しても良い。
また、当然のことながら本発明でいうエステルとしては、単一の構造のエステル1種からなるものであっても良く、構造の異なる2種以上のエステルの混合物であっても良い。
これらのエステル系基油の中でも、加水分解安定性に優れることから、ポリオールエステルが好ましい。
本発明においては、上記のエステル系基油のうちの1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本発明の難燃性油圧作動油組成物の基油として用いられる油脂としては、天然の動植物油脂が挙げられ、例えば、菜種油、ひまわり油、大豆油、ひまし油、ココナッツ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、米ぬか油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、ピーナッツ油、トール油、牛脂、豚脂、あるいはこれらの水素添加物等が挙げられる。油脂の中では、エステルを構成する脂肪酸のうち不飽和脂肪酸、特にオレイン酸の比率が高いハイオレイン酸タイプの油脂類が好ましく、さらにオレイン酸の比率を高めたハイオレイン化植物油がさらに好ましい。
本発明の難燃性作動油組成物の基油としては、上記した合成エステル及び油脂からなる群より選ばれる1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
前記合成エステル及び/または油脂において、構成脂肪酸は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、また直鎖状脂肪酸、分枝状脂肪酸の何れであってもよいが、(B)成分として用いられる前記式(1)で示されるビス(4−ジアルキルアミノフェニル)メタン系酸化防止剤の効果の点からは、不飽和脂肪酸の含有量が高い方が好ましい。エステルを構成する脂肪酸に占める不飽和脂肪酸の比率は30モル%以上、好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上であることが望ましい。
エステルを構成する脂肪酸に占める不飽和脂肪酸の比率が30モル%未満であると、(B)成分を配合しても、油圧作動油の使用の初期段階では粘度上昇・酸価増加の抑制効果があるが、使用が進むと劣化生成物が急にスラッジ化し易く、油圧システム内でトラブルが発生することがある。
なお、これら基油の動粘度は、特に限定されず任意であるが、難燃性、耐摩耗性、耐焼き付き性に優れ、かつ攪拌抵抗による摩擦ロスが少ない等の点から、通常、40℃における動粘度は、好ましくは10〜200mm/s、より好ましくは15〜150mm/sであり、さらに好ましくは20〜100mm/sである。またその粘度指数も任意であるが、高温における油膜維持等の点から、通常、その粘度指数は好ましくは80〜500、より好ましくは100〜300である。さらにその流動点も任意であるが、冬期におけるポンプ始動性等の点から、好ましくは−5℃以下、より好ましくは−15℃以下である。
本発明の難燃性油圧作動油組成物は、必須の成分(B)として一般式(1)で示されるビス(4−ジアルキルアミノフェニル)メタン系酸化防止剤を含有する。
Figure 0005199679
一般式(1)において、R、R、R及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を示す。R、R、R及びRのアルキル基の炭素数が6を超える場合には分子中に占める官能基の割合が小さくなり、酸化防止効果に悪影響を与える恐れがある。R、R、R及びRで表されるアルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い)が挙げられる。
一般式(1)で表される化合物の中でも、より優れた酸化防止効果が得られることから、R、R、R及びRは、メチル基、エチル基又は炭素数3〜4の分枝アルキル基が好ましく、さらにメチル基又はエチル基が最も好ましい。
本発明の難燃性油圧作動油成物における(B)成分の含有量の上限値は、組成物全量基準で5質量%であり、好ましくは2質量%、より好ましくは1.5質量%である。含有量が5質量%を越える場合、スラッジ発生の原因となるので好ましくない。
一方、(B)成分の含有量の下限値は、組成物全量基準で0.01質量%であり、好ましくは0.05質量%、より好ましくは0.1質量%である。(B)成分の含有量が0.01質量%に満たない場合は、酸化防止効果が不足するので好ましくない。
一般式(1)で表されるビス(4−ジアルキルアミノフェニル)メタン系酸化防止剤は市販のものを用いても良く、また合成物を用いても良い。
本発明の難燃性油圧作動油組成物は、(C)成分として、(C1)硫黄含有リン酸エステル、(C2)酸性リン酸エステル、(C3)酸性リン酸エステルアミン塩、及び(C4)亜リン酸エステルよりなる群から選ばれた少なくとも1種類の摩耗防止剤を含有する。
(C1)硫黄含有リン酸エステルとしては、具体的には、アルキル基が炭素数4〜18であるトリアルキルフォスフォロチオネート、トリオレイルフォスフォロチオネート、トリフェニルフォスフォロチオネート、トリクレジルフォスフォロチオネート、トリキシレニルフォスフォロチオネート、クレジルジフェニルフォスフォロチオネート、キシレニルジフェニルフォスフォロチオネート、トリス(n−プロピルフェニル)フォスフォロチオネート、トリス(イソプロピルフェニル)フォスフォロチオネート、トリス(n−ブチルフェニル)フォスフォロチオネート、トリス(イソブチルフェニル)フォスフォロチオネート、トリス(s−ブチルフェニル)フォスフォロチオネート、トリス(t−ブチルフェニル)フォスフォロチオネート等が挙げられる。
(C2)酸性リン酸エステルとしては、具体的には、アルキル基が炭素数7〜18であるアルキルアシッドフォスフェート、アルキル基が炭素数4〜18であるジアルキルアシッドフォスフェート及びジオレイルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
(C3)酸性リン酸エステルアミン塩としては、具体的には、前記酸性リン酸エステルと、炭素数1〜8のアルキル基を有するアミン、炭素数1〜8のアルキル基を2個有するアミン、及び炭素数1〜8のアルキル基を3個有するアミン、との塩が挙げられる。
(C4)亜リン酸エステルとしては、具体的には、炭素数4〜12のアルキル基を2個有するジアルキルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、炭素数4〜12のアルキル基を3個有するトリアルキルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、及びトリクレジルホスファイトなどが挙げられる。
本発明で用いる(C)成分としては、中でも合成エステル及び油脂中での効果が高いことから、(C1)硫黄含有リン酸エステル、(C2)酸性リン酸エステル、(C3)酸性リン酸エステルのアミン塩が好ましく用いられる。
本発明の難燃性油圧作動油組成物における(C)成分の含有量の上限値は、組成物全量基準で5質量%であり、好ましくは2質量%、より好ましくは1.5質量%である。含有量が5質量%を越える場合、熱安定性に劣り、スラッジ発生の原因となるので好ましくない。一方、(C)成分の含有量の下限値は、組成物全量基準で0.001質量%であり、好ましくは0.005質量%、より好ましくは0.01質量%である。(C)成分の含有量が0.001質量%に満たない場合は、耐摩耗性及び耐焼き付き性が不足するので好ましくない。
本発明の難燃性油圧作動油組成物は、さらにフェノール系酸化防止剤を併用することでより高い酸化防止性とスラッジ抑制性を付加することができる。フェノール系酸化防止剤としては、潤滑油の酸化防止剤として用いられる任意のアルキルフェノール系化合物が使用可能であり、特に限定されるのもではないが、例えば、アルキルフェノール類及びビスフェノール類などのヒンダードフェノール型が好ましく、分子中にサルファイド基、エステル結合を含むものも好ましく使用される。
本発明の難燃性油圧作動油組成物におけるフェノール系酸化防止剤の含有量の上限値は、組成物全量基準で5質量%が好ましく、より好ましくは2質量%、さらに好ましくは1.5質量%である。含有量が5質量%を越える場合、スラッジ発生の原因となるので好ましくない。一方、フェノール系酸化防止剤の含有量の下限値は、組成物全量基準で、0.01質量%が好ましく、より好ましくは0.05質量%、さらに好ましくは0.1質量%である。フェノール系酸化防止剤の含有量が0.01質量%に満たない場合は、併用による酸化防止効果が付加されないので好ましくない。
フェノール系酸化防止剤としては、潤滑油の酸化防止剤として用いられる任意のアルキルフェノール系化合物が使用可能であり、特に限定されるのもではないが、例えば、下記の一般式(2)又は一般式(3)で表される化合物の中から選ばれる1種または2種以上のアルキルフェノール化合物が好ましいものとして挙げられる。
Figure 0005199679
上記(2)式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、下記の一般式(i)で表される基又は下記の一般式(ii)で表される基を示す。
Figure 0005199679
Figure 0005199679
上記式(i)中、Rは炭素数1〜6のアルキレン基、Rは炭素数1〜24のアルキル基又はアルケニル基を示す。
上記式(ii)中、R10は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R11は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R12は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは0または1の整数を示す。
Figure 0005199679
上記(3)式中、R13及びR17は、それぞれ個別に、炭素数1〜4のアルキル基を示し、R14及びR18は、それぞれ個別に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R15及びR16は、それぞれ個別に、炭素数1〜6のアルキレン基を示し、Yは炭素数1〜18のアルキレン基又は下記の一般式(iii)で表される基を示す。
−R19−S−R20− (iii)
上記式(iii)中、R19及びR20は、それぞれ個別に、炭素数1〜6のアルキレン基を示す。
一般式(2)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。中でも耐スラッジ性により優れる点からtert−ブチル基が好ましい。また、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。中でも、耐スラッジ性により優れる点から水素原子、メチル基又はtert−ブチル基が好ましい。また、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、上記式(i)で表される基又は上記式(ii)で表される基を示す。Rが示す炭素数1〜4のアルキル基としては、中でも耐スラッジ性により優れる点からメチル基又はエチル基であるのが好ましい。
一般式(2)中のRが式(i)で表される基である場合において、式(i)のRで示される炭素数1〜6のアルキレン基は、直鎖状でも分枝状であっても良く、具体的には例えば、メチレン基、メチルメチレン基、エチレン基(ジメチレン基)等であることがより好ましい。
一方、式(i)のRは、炭素数1〜24のアルキル基(直鎖状でも分枝状でも良い)又はアルケニル基(直鎖状でも分枝状でも良く、また二重結合の位置も任意である)である。Rとしては、これらの中でも基油に対する溶解性に優れる点から炭素数4〜18のアルキル基が好ましく、炭素数6〜12の直鎖状又は分枝状アルキル基がより好ましく、炭素数6〜12の分枝状アルキル基が特に好ましい。
一般式(2)で表されるフェノール化合物の中で、Rが式(i)で表される基である場合の化合物としては、式(i)におけるRが炭素数1〜2のアルキレン基であり、Rが炭素数6〜12の直鎖状又は分枝状アルキル基であるものがより好ましく、式(i)におけるRが炭素数1〜2のアルキレン基であり、Rが炭素数6〜12の分枝状アルキル基であるものが特に好ましい。一般式(2)中のRが式(ii)で表される基である場合において、式(ii)中のR10は炭素数1〜6のアルキレン基を示す。このアルキレン基としては、直鎖状でも分枝状であっても良く、具体的には例えば、先にRについて例示した各種アルキレン基が挙げられる。R10としては、これらの中でも炭素数1〜3のアルキレン基、具体的には例えば、メチレン基、メチルメチレン基、エチレン基(ジメチレン基)、エチルメチレン基、プロピレン基(メチルエチレン基)、トリメチレン基等がより好ましい。
また、式(ii)中のR11は炭素数1〜4のアルキル基を示す。具体的には、耐スラッジ性に優れる点からtert−ブチル基が好ましい。また、R12としては、水素原子又は上述したような炭素数1〜4のアルキル基が挙げられるが、耐スラッジ性に優れる点から水素原子、メチル基又はtert−ブチル基が好ましい。式(ii)中のnは0または1の整数を示す。nが0の場合には、二つのベンゼン環が直接結合したビフェニル構造をとる。
一般式(2)において、上述した通りRは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、上記式(i)で表される基又は上記式(ii)で表される基を示すが、これらの中でも炭素数1〜4のアルキル基または上記式(ii)で表される基であることが好ましく、メチル基、エチル基、または上記式(ii)で表される基であって、R10が炭素数1〜3のアルキレン基であり、R11がtert−ブチル基であって、R12が水素原子、メチル基またはtert−ブチル基であり、nが0または1の整数である基であることがより好ましい。
一般式(2)で表される化合物としては、上述の通り各種化合物が含まれるが、これらの中で好ましいものを例示すれば、Rが炭素数1〜4のアルキル基である場合の化合物として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール等;Rが式(i)で表される基である場合の化合物として、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ヘプチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸2−エチルヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソドデシル等;Rが式(ii)で表される基である場合の化合物として、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、等;及びこれらの混合物等が挙げられる。
一方、上記の一般式(3)において、R13及びR17は、それぞれ個別に、炭素数1〜4のアルキル基を示す。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等を示すが、耐スラッジ性により優れる点から、ともにtert−ブチル基であるのが好ましい。また、R14及びR18としては、それぞれ個別に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。このようなアルキル基としては、上述した基が挙げられる。これらの中でも、耐スラッジ性により優れる点から、それぞれ個別に、水素原子、メチル基又はtert−ブチル基であるのが好ましい。また、R15及びR16が示す炭素数1〜6のアルキレン基としては、直鎖状でも分枝状であっても良く、具体的には、それぞれ個別に、Rについて上述した各種アルキレン基が挙げられる。R15及びR16としては、これらの中でも一般式(3)で表される化合物が少ない反応工程で製造できる点およびその原料の入手が容易である点で、それぞれ個別に、炭素数1〜2のアルキレン基、具体的には例えば、メチレン基、メチルメチレン基、エチレン基(ジメチレン基)等がより好ましい。
また、一般式(3)において、Yは炭素数1〜18のアルキレン基または上記式(iii)で表される基を示す。Yが示す炭素数1〜18のアルキレン基としては、直鎖状でも分枝状でも良い。原料入手の容易さ等から、炭素数1〜6のアルキレン基がより好ましく、エチレン基(ジメチレン基)、トリメチレン基、直鎖ブチレン基(テトラメチレン基)、直鎖ペンチレン基(ペンタメチレン基)、直鎖ヘキシレン基(ヘキサメチレン基)等の炭素数2〜6の直鎖アルキレン基が特に好ましい。
一般式(3)で表されるアルキルフェノールの中で、Yが炭素数1〜18のアルキレン基である場合の化合物として特に好ましいものは、下記の式(4)で示される化合物である。
Figure 0005199679
また、一般式(3)中のYが式(iii)で表される基である場合において、式(iii)中のR19及びR20で示される炭素数1〜6のアルキレン基は、直鎖状でも分枝状であっても良く、具体的には、それぞれ個別に、先にRについて上述したような各種アルキレン基が挙げられる。R19及びR20としては、これらの中でも一般式(3)の化合物を製造する際の原料が入手しやすいことから、それぞれ個別に、炭素数1〜3のアルキレン基、具体的には例えば、メチレン基、メチルメチレン基、エチレン基(ジメチレン基)、エチルメチレン基、プロピレン基(メチルエチレン基)、トリメチレン基等であるのがより好ましい。
一般式(3)で表されるアルキルフェノールの中で、Yが式(iii)で表される基である場合の化合物として特に好ましいものは、下記の式(5)で示される化合物である。
Figure 0005199679
本発明においては、上述したとおり、合成エステル及び油脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の基油に、(B)成分、(C)成分さらにはフェノール系酸化防止剤を配合するだけで、酸化防止性能及び耐摩耗性に優れる難燃性油圧作動油が得られるが、その性能をさらに向上させる目的で、必要に応じて、さらにその他の酸化防止剤、さび止め剤、金属不活性化剤、摩耗防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤、抗乳化剤、スティックスリップ防止剤、油性剤等に代表される各種添加剤を単独で、又は数種類組み合わせて含有させても良い。
(B)成分のアミン系酸化防止剤に加えて、他のアミン系酸化防止剤を併用してもよい。代表的なアミン系酸化防止剤としては、以下の式(6)で示すフェニル−α−ナフチルアミン類、あるいは式(7)で示すp,p’−ジアルキル化ジフェニルアミンが挙げられる。
Figure 0005199679
Figure 0005199679
一般式(6)において、R21は水素原子又は炭素数1〜16のアルキル基を示す。
一般式(7)において、R22及びR23は、それぞれ個別に、炭素数1〜16のアルキル基を示す。
一般式(6)で表される化合物の中でもR21がアルキル基である場合は、より優れたスラッジ生成抑制効果が得られることから、R21は、炭素数8〜16の分枝アルキル基が好ましく、さらに炭素数3又は4のオレフィンのオリゴマーから誘導される炭素数8〜16の分枝アルキル基がより好ましい。炭素数3又は4のオレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、2−ブテン及びイソブチレンが挙げられるが、より優れたスラッジ生成抑制効果を得るためには、プロピレン又はイソブチレンが好ましい。更に優れたスラッジ生成抑制効果を得るためには、R21は、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、プロピレンの3量体から誘導される分枝ノニル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基、プロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基またはプロピレンの5量体から誘導される分枝ペンタデシル基がさらに好ましく、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、イソブチレンの3量体から誘導される分枝ドデシル基又はプロピレンの4量体から誘導される分枝ドデシル基がより好ましく、分岐ドデシル基が最も好ましい。
一般式(7)で表されるp,p’−ジアルキルジフェニルアミンのR22及びR23は、より優れたスラッジ生成抑制効果を得るために、それぞれ個別に、炭素数3〜16の分枝アルキル基が好ましく、さらに炭素数3又は4のオレフィン、又はそのオリゴマーから誘導される炭素数3〜16の分枝アルキル基がより好ましい。上記炭素数3又は4のオレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、2−ブテンおよびイソブチレン等が挙げられるが、より優れたスラッジ生成抑制効果を得るためにプロピレン又はイソブチレンが好ましい。
さらに、R22又はR23は、より優れた酸化防止効果を得るために、イソブチレンから誘導されるtert−ブチル基、イソブチレンの2量体から誘導される分枝オクチル基、が最も好ましい。
一般式(7)で表されるp,p’−ジアルキルジフェニルアミンは市販のものを用いても良くまた合成物を用いても良い。合成物は、一般式(6)で表されるフェニル−α−ナフチルアミンと同様に、炭素数1〜16のハロゲン化アルキル化合物とジフェニルアミン、あるいは炭素数2〜16のオレフィン又は炭素数2〜16のオレフィン又はこれらのオリゴマーとジフェニルアミンとをフリーデル・クラフツ触媒を用いて反応させることにより、容易に合成することができるが、いずれの合成方法であっても良い。
(B)成分以外のアミン系酸化防止剤の配合量は、組成物全量基準で0.001〜2.0質量%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜1.5質量%、最も好ましくは0.1〜1.0質量%である。
さび止め剤としては、具体的には、アミノ酸誘導体、多価アルコールの部分エステル;ラノリン脂肪酸エステル、アルキルコハク酸エステル、アルケニルコハク酸エステル等のエステル類;ザルコシン;ソルビタン脂肪酸エステル等の多価アルコール部分エステル類;脂肪酸金属塩、ラノリン脂肪酸金属塩、酸化ワックス金属塩等の金属石けん類;カルシウムスルフォネート、バリウムスルフォネート等のスルフォネート類;酸化ワックス;アミン類;リン酸;リン酸塩等が例示できる。中でもアミノ酸誘導体は防錆効果が高いので好ましい。
上記のアミノ酸誘導体としては、下記一般式(8)で示される化合物が挙げられる。
Figure 0005199679
式(8)中、Aは、式(9)又は式(10)で示される基であり、Bは炭素数1〜12のアルキル基又は式(11)で示される1価カルボン酸エステルの残基であり、R24は炭素数4〜12のアルキル基であり、R25は、炭素数1〜10のアルキル基である。
27O−CO−R26− (9)
29O−CO−R28−CO− (10)
−C−CO−O−R30 (11)
(式(9)〜(11)中、R26は炭素数1〜12のアルキレン基であり、R28は炭素数1〜10のアルキレン基であり、R27及びR29は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、R30は炭素数1〜10のアルキル基である。)
24は炭素数4〜12のアルキル基であり、好ましくは炭素数4〜10、さらに好ましくは炭素数6〜10のアルキル基である。また、R25及びR30は、それぞれ個別に、炭素数1〜10のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜8、さらに好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。R29は水素又は炭素数1〜10のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。
本発明においては、これらのさび止め剤の中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を、任意の量で油圧作動油組成物に含有させることができるが、通常、その含有量は、油圧作動油組成物全量基準で0.001〜2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜1.5質量%、さらに好ましくは0.05〜1質量%である。
金属不活性化剤としては、具体的には、ベンゾトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系化合物等が例示できる。本発明においては、これらの金属不活性化剤の中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を、任意の量で含有させることができるが、通常、その含有量は、油圧作動油組成物全量基準で0.001〜1質量%であるのが望ましい。
粘度指数向上剤としては、具体的には、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの共重合体若しくはその水添物、エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等が例示できる。)若しくはその水素化物、ポリイソブチレン若しくはその水添物、スチレン−ジエン共重合体の水素化物及びポリアルキルスチレン等の、いわゆる非分散型粘度指数向上剤等が例示できる。本発明においては、これらの粘度指数向上剤の中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を、任意の量で含有させることができるが、通常、その含有量は、油圧作動油組成物全量基準で0.01〜10質量%であるのが望ましい。
流動点降下剤としては、具体的には、各種アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの共重合体若しくはその水添物等が例示できる。本発明においては、これらの流動点降下剤の中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を、任意の量で含有させることができるが、通常、その含有量は、油圧作動油組成物全量基準で0.01〜5質量%であるのが望ましい。
消泡剤としては、具体的には、ジメチルシリコーン、フルオロシリコーン等のシリコーン類が例示できる。本発明においては、これらの消泡剤の中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を、任意の量で含有させることができるが、通常、その含有量は、油圧作動油組成物全量基準で0.001〜0.05質量%であるのが望ましい。
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコール,ポリオキシアルキレンアルキルエーテル,ポリオキシアルキレンアルキルアミド,ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等が挙げられる。
スティックスリップ防止剤としては、具体的には、多価アルコールエステル(完全エステル、部分エステル)などが挙げられる。
油性剤としては、具体的には脂肪酸、エステル、アルコール等が挙げられる。通常、その含有量は、油圧作動油組成物全量基準で0.01〜0.5質量%であるのが望ましい。
本発明の油圧作動油組成物の引火点は280℃以上であり、好ましくは300℃以上であり、難燃性に優れる。特に脂肪酸エステルや油脂類は鉱物油より引火点が高く、事実上火災の危険性が著しく低減される。また、引火点が280℃以上であるので、消防法の第四石油類の危険物の指定からはずれて可燃性液体類となり、取り扱いが容易となる。
なお、ここでいう引火点とは、JIS K 2265「原油及び石油製品−引火点試験方法」に準拠して測定される値である。
以下、本発明の内容を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの内容に何ら限定されるものではない。
(実施例1〜、比較例1〜4)
表1に示すように、基油および添加剤を配合して油圧作動油組成物を調製した。実施例及び比較例で用いた基油および添加剤は以下のとおりである。
<基油>
基油A1:トリメチルロールプロパンのオレイン酸エステル(動粘度47.2mm/s(@40℃)、粘度指数190)
基油A2:高オレイン酸含有菜種油(動粘度35mm/s(@40℃)、粘度指数190、エステルを構成する全脂肪酸に占めるオレイン酸の比率75モル%,エステルを構成する全脂肪酸に占める不飽和脂肪酸比率90モル%)
基油A3:ペンタエリスリトールと、オクチル酸及びデカン酸の混合脂肪酸のエステル(動粘度34.2mm/s(@40℃)、粘度指数130)
<酸化防止剤(B)>
B1:ビス(4−ジメチルアミノフェニル)メタン
B2:α−ナフチルアミン
B3:4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)
<摩耗防止剤(C)>
C1:トリフェニルチオフォスフェート
C2:2−エチルヘキシルアシッドフォスフェート
C3:トリクレジルホスフェート
<防錆剤(D)>
D1:アミノ酸誘導体(次式で示される化合物)
Figure 0005199679
〔ここで、Rはオクチル基、Rはブチル基、Rはブチレン基を示す。〕
D2:ソルビタンモノオレエート
D3:アルケニルコハク酸部分エステル
<その他の添加剤(E)>
E1:Nメチルベンゾトリアゾール
E2:ポリメタクリレート(分子量5万)
調製した油圧作動油組成物について、引火点、ドライトースト試験、四球試験、FZGギヤ試験、V104Cベーンポンプ試験、防錆試験および生分解性試験を行った。その結果を表1に示す。
[引火点]
JIS K 2265「原油及び石油製品−引火点試験方法」に準拠した。
[ドライトースト試験]
JIS K 2514に規定する「酸化安定度方法」に準拠し、規定の容器に試料油300mlを採取し、鉄および銅のコイル状触媒を加え、95℃の水浴槽で酸化安定性試験を行う。なお水は使用しない。試験中、少量づつ試料油を採取し、酸価上昇及びスラッジ量(一定量の試料油をフィルターでろ過、残渣重量から計測)を測定した。
[四球試験]
ASTMD2783−88に規定する潤滑油の極圧性能測定用標準試験方法(四球法)[Standard Test Method for Measurement of Extreme-Pressure Properties of Lubricating Fluids(Four- Ball Method)]に準拠し、回転数1200min−1、荷重294N,油温75℃、試験時間1時間の条件で試験を実施し、3個の固定球の摩耗痕径(mm)の平均値を測定する。
[FZGギヤ試験]
ASTMD5182に規定されたギヤ試験。1500回転(回転数1500rpm/min−1)、試験開始油温90℃で試験を開始し、各ステージで規定された重量でギヤに荷重をかけ、15分間運転する。ギヤが焼きつく荷重のステージで油の耐焼き付き性の評価を行う。ギヤが焼きついた荷重のステージを不合格として報告する。
[ベーンポンプ試験(V104C試験)]
ASTM D 2882に規定されたベーンポンプ試験を実施し、試験前後のベーンとリングの重量を計測し、摩耗量を測定した。試験時間は100時間とした。
[防錆試験]
JISK2510に規定された、みがき棒鋼用一般鋼材を用いた防錆試験。使用する水により、蒸留水と人工海水の2種類の試験方法があるが、今回はより厳しい人工海水で試験を実施した。試験時間は24時間、試験油温波60℃である。
[生分解性試験]
生分解性作動油規格ISO15380に規定されているOECD301C法による生分解性試験を行った。10箇所以上の汚水処理場から採取された活性汚泥を用いて、試料油の生分解性を評価する。その評価法により種々の試験法があるが、本方法では、試料油のBOD(生物化学的酸素要求量)で分解率を測定する。28日間の試験で、60%分解した場合、生分解性があると評価する。
Figure 0005199679

Claims (1)

  1. (A)エステルを構成する脂肪酸が動植物原料から得られた脂肪酸であり、且つ脂肪酸に占める不飽和脂肪酸の比率が30モル%以上である合成エステル及び油脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の基油に、
    (B)式(1)で示されるビス(4−ジアルキルアミノフェニル)メタン系酸化防止剤を組成物全量基準で0.01〜5.0質量%及びフェノール系酸化防止剤を組成物全量基準で0.01〜5質量%、並びに
    (C)トリフェニルチオフォスフェートを組成物全量基準で0.001〜5質量%、
    を含有し、引火点が280℃以上であることを特徴とする難燃性油圧作動油組成物。
    Figure 0005199679
    〔R,R,R及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜6のアルキル基である。〕
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