JP5197293B2 - 遠隔操作型アクチュエータ - Google Patents

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Description

この発明は、工具の姿勢を遠隔操作で変更可能で、医療用、機械加工等の用途で用いられる遠隔操作型アクチュエータに関する。
医療用として骨の加工に用いられたり、機械加工用としてドリル加工や切削加工に用いられたりする遠隔操作型アクチュエータがある。遠隔操作型アクチュエータは、直線形状や湾曲形状をした細長いパイプ部の先端に設けた工具を遠隔操作で制御する。ただし、従来の遠隔操作用アクチュエータは、工具の回転のみを遠隔操作で制御するだけであったため、医療用の場合、複雑な形状の加工や外からは見えにくい箇所の加工が難しかった。また、ドリル加工では、直線だけではなく、湾曲状の加工が可能なことが求められる。さらに、切削加工では、溝内部の奥まった箇所の加工が可能なことが求められる。以下、医療用を例にとって、遠隔操作型アクチュエータの従来技術と課題について説明する。
整形外科分野において、骨の老化等によって擦り減って使えなくなった関節を新しく人工のものに取り替える人工関節置換手術がある。この手術では、患者の生体骨を人工関節が挿入できるように加工する必要があるが、その加工には、術後の生体骨と人工関節との接着強度を高めるために、人工関節の形状に合わせて精度良く加工することが要求される。
例えば、股関節の人工関節置換手術では、大腿骨の骨の中心にある髄腔部に人工関節挿入用の穴を形成する。人工関節と骨との接触強度を保つには両者の接触面積を大きくとる必要があり、人工関節挿入用の穴は、骨の奥まで延びた細長い形状に加工される。このような骨の切削加工に用いられる医療用アクチュエータとして、細長いパイプ部の先端に工具を回転自在に設け、パイプ部の基端側に設けたモータ等の回転駆動源の駆動により、パイプ部の内部に配した回転軸を介して工具を回転させる構成のものがある(例えば特許文献1)。この種の医療用アクチュエータは、外部に露出した回転部分は先端の工具のみであるため、工具を骨の奥まで挿入することができる。
人工関節置換手術では、皮膚切開や筋肉の切断を伴う。すなわち、人体に傷を付けなければならない。その傷を最小限に抑えるためには、前記パイプ部は真っ直ぐでなく、適度に湾曲している方が良い場合がある。このような状況に対応するためのものとして、次のような従来技術がある。例えば、特許文献2は、パイプ部の中間部を2重に湾曲させて、パイプ部の先端側の軸心位置と基端側の軸心位置とをずらせたものである。このようにパイプ部の軸心位置が先端側と軸心側とでずれているものは、他にも知られている。また、特許文献3は、パイプ部を180度回転させたものである。
特開2007−301149号公報 米国特許第4,466,429号明細書 米国特許第4,265,231号明細書 特開2001−17446号公報
生体骨の人工関節挿入用穴に人工関節を嵌め込んだ状態で、生体骨と人工関節との間に広い隙間があると、術後の接着時間が長くなるため、前記隙間はなるべく狭いのが望ましい。また、生体骨と人工関節の接触面が平滑であることも重要であり、人工関節挿入用穴の加工には高い精度が要求される。しかし、パイプ部がどのような形状であろうとも、工具の動作範囲はパイプ部の形状の制約を受けるため、皮膚切開や筋肉の切断をできるだけ小さくしながら、生体骨と人工関節との間の隙間を狭くかつ両者の接触面が平滑になるように人工関節挿入用穴を加工するのは難しい。
一般に、人工関節置換手術が行われる患者の骨は、老化等により強度が弱くなっていることが多く、骨そのものが変形している場合もある。したがって、通常考えられる以上に、人工関節挿入用穴の加工は難しい。
そこで、本出願人は、人工関節挿入用穴の加工を比較的容易にかつ精度良く行えるようにすることを目的として、工具の姿勢を遠隔操作で変更可能とすることを試みた。工具の姿勢が変更可能であれば、パイプ部の形状に関係なく、工具を適正な姿勢に保持することができるからである。しかし、工具は細長いパイプ部の先端に設けられているため、工具の姿勢を変更させる機構を設ける上で制約が多く、それを克服するための工夫が必要である。また、加工時には、工具および被加工物の他、アクチュエータの回転部分も発熱するため、これらの発熱箇所を効率良く冷却できることが望ましい。そのための冷却手段を設ける場合、冷却液が機械部分に悪影響を与えないようにする必要がある。
なお、細長いパイプ部を有しない医療用アクチュエータでは、手で握る部分に対して工具が設けられた部分が姿勢変更可能なものがある(例えば特許文献4)が、遠隔操作で工具の姿勢を変更させるものは提案されていない。
この発明は、細長いパイプ部の先端に設けられた工具の姿勢を遠隔操作で変更することができ、機械部分に悪影響を与えることなく、加工時に発熱する箇所を効率良く冷却できる遠隔操作型アクチュエータを提供することを課題としている。
この発明にかかる遠隔操作型アクチュエータは、細長形状のスピンドルガイド部と、このスピンドルガイド部の先端に先端部材連結部を介して姿勢変更自在に取付けられた先端部材と、前記スピンドルガイド部の基端が結合された駆動部ハウジングとを備え、前記先端部材は、工具を保持するスピンドルを回転自在に支持し、前記スピンドルガイド部は、前記駆動部ハウジング内に設けられた工具回転用駆動源の回転を前記スピンドルに伝達する回転軸と、両端に貫通したガイド孔とを内部に有し、先端が前記先端部材に接して進退動作することにより前記先端部材を姿勢変更させる姿勢操作部材を前記ガイド孔内に進退自在に挿通し、前記姿勢操作部材を進退させる姿勢変更用駆動源を前記駆動部ハウジング内に設け、冷却液を、前記スピンドルガイド部の基端近傍に設けられた冷却液注入孔から内部に注入し、前記スピンドルガイド部および先端部材の内部を通って先端側へ送り、前記先端部材から前記工具に向けて吐出させる冷却手段を設けるとともに、前記スピンドルガイド部内から前記駆動部ハウジング内への前記冷却液の浸入を阻止するシール手段を設けたことを特徴とする。
この構成によれば、先端部材に設けた工具の回転により、骨等の切削が行われる。その場合に、姿勢変更用駆動源により姿勢操作部材を進退させると、この姿勢操作部材の先端が先端部材に対し作用することにより、スピンドルガイド部の先端に先端部材連結部を介して姿勢変更自在に取付けられた先端部材が姿勢変更する。姿勢変更用駆動源は、スピンドルガイド部の基端側の駆動部ハウジング内に設けられており、上記先端部材の姿勢変更は遠隔操作で行われる。姿勢操作部材はガイド孔に挿通されているため、姿勢操作部材が長手方向と交差する方向に位置ずれすることがなく、常に先端部材に対し適正に作用することができ、先端部材の姿勢変更動作が正確に行われる。
加工時には、工具および被加工物が発熱する他、回転軸、スピンドル等の回転する部材が回転摩擦により発熱する。冷却手段を設けたことにより、スピンドルガイド部および先端部材の内部を通って先端側へ送られる冷却液によって回転軸、スピンドル等が冷却され、先端部材から吐出させる冷却液によって工具および被加工物が冷却される。スピンドルガイド部および先端部材の内部に冷却液を通したことにより、冷却液供給用の管をスピンドルガイド部および先端部材の外部に設けなくて済み、スピンドルガイド部および先端部材を簡素化ならびに小径化できる。
また、シール手段を設けたため、スピンドルガイド部内から駆動部ハウジング内への冷却液の浸入を阻止することができ、駆動部ハウジング内の工具回転用駆動源および姿勢変更用駆動源を含む機構の故障が生じ難く、低寿命化を防止できる。
この発明において、前記シール手段は、前記冷却液注入孔よりも基端側の位置で前記回転軸を支持する滑り軸受とすることができる。
滑り軸受は回転軸に接触して支持するため、転がり軸受に比べて、軸受と回転軸との回転部の隙間が小さい。そのため、冷却液注入孔よりも基端側に位置する軸受を滑り軸受とすることで、これをシール部材に兼用できる。
この発明において、前記シール手段は、前記駆動部ハウジングに設けられ前記スピンドルガイド部の基端でスピンドルガイド部の内部と連通する遮蔽空間を有し、この遮蔽空間の圧力を大気圧よりも高くしてもよい。
先端部材の冷却液吐出部は大気圧であるため、遮蔽空間の圧力を大気圧よりも高くすることにより、スピンドルガイド部内の冷却液が先端部材側へ流れるようになり、スピンドルガイド部内の冷却液が駆動部ハウジング内へ浸入することを防止できる。
この発明において、前記スピンドルガイド部が、このスピンドルガイド部の外郭となる外郭パイプを有し、前記ガイド孔を、前記外郭パイプ内に設けられたガイドパイプの内径孔とすることができる。
この構成であれば、外郭パイプによりスピンドルガイド部の内部を保護しつつ、スピンドルガイド部を中空状にして軽量化を図れる。
上記構成である場合、前記外郭パイプは両端に貫通した中空孔を有し、この中空孔は、中心部の円形孔部と、この円形孔部から外径側へ凹んだ溝状部とでなり、前記円形孔部に前記回転軸を配置し、かつ前記溝状部に前記ガイドパイプを配置してもよい。
外郭パイプの中空孔は、中心部の円形孔部と、この円形孔部から外径側へ凹んだ溝状部とでなるため、外郭パイプの溝状部以外の箇所の肉厚を厚くすることができる。それにより、スピンドルガイド部の剛性(断面2次モーメント)が高くなり、先端部材の位置決め精度が向上させられるとともに、切削性を向上させられる。例えば、外郭パイプの断面2次モーメントが、同外径の中実シャフトの1/2以上とすると良い。また、溝状部にガイドパイプを配置したことにより、ガイドパイプの円周方向の位置決めを容易に行え、組立性が良好である。
スピンドルガイド部が外郭パイプを有する場合、前記外郭パイプに前記冷却液注入孔を設けることができる。
外郭パイプに冷却液注入孔を設ければ、駆動部ハウジングに冷却液注入孔を設けるのに比べて、構造を簡略にできる。特に、上記外郭パイプのように外郭パイプが肉厚の厚い箇所を有する場合は、この肉厚の厚い箇所に冷却液注入孔を開けることにより、補強用の他の部材を用いずにスピンドルガイド部に冷却液注入孔を設けることができる。
この発明において、前記スピンドルガイド部内の前記回転軸を回転自在に支持する複数の転がり軸受を設ける場合、隣合う転がり軸受間に、これら転がり軸受に対して予圧を与えるばね要素を設けるのが望ましい。
加工の仕上がりを良くするには、スピンドルを高速回転させて加工するのがよい。スピンドルを高速回転させると、工具に作用する切削抵抗を低減させる効果もある。スピンドルはワイヤ等からなる細い回転軸を介して回転力が伝達されるので、スピンドルの高速回転を実現させるため、回転軸を支持する転がり軸受に予圧をかけておくことが必要となる。この予圧のためのばね要素を隣合う転がり軸受間に設ければ、スピンドルガイド部の径を大きくせずにばね要素を設けられる。
前記スピンドルガイド部内の前記回転軸を回転自在に支持する複数の転がり軸受を設ける場合、前記冷却手段は、前記冷却液により前記転がり軸受を冷却するものであってもよい。
スピンドルガイド部の内部に冷却液を通過させるため、スピンドルガイド部内に設けた転がり軸受を冷却液で冷却することができる。
前記冷却液は、水もしくは生理食塩水であるのが望ましい。
この遠隔操作型アクチュエータが医療用であり、先端部材を生体内に挿入して加工を行う場合、冷却液が水もしくは生理食塩水であれば、冷却液が生体に悪影響を与えない。
この発明において、前記スピンドルガイド部は湾曲した箇所を有していてもよい。
スピンドルガイド部が湾曲していれば、障害物の向こう側にある被加工物に対して加工を行える。
この発明の遠隔操作型アクチュエータは、細長形状のスピンドルガイド部と、このスピンドルガイド部の先端に先端部材連結部を介して姿勢変更自在に取付けられた先端部材と、前記スピンドルガイド部の基端が結合された駆動部ハウジングとを備え、前記先端部材は、工具を保持するスピンドルを回転自在に支持し、前記スピンドルガイド部は、前記駆動部ハウジング内に設けられた工具回転用駆動源の回転を前記スピンドルに伝達する回転軸と、両端に貫通したガイド孔とを内部に有し、先端が前記先端部材に接して進退動作することにより前記先端部材を姿勢変更させる姿勢操作部材を前記ガイド孔内に進退自在に挿通し、前記姿勢操作部材を進退させる姿勢変更用駆動源を前記駆動部ハウジング内に設け、冷却液を、前記スピンドルガイド部の基端近傍に設けられた冷却液注入孔から内部に注入し、前記スピンドルガイド部および先端部材の内部を通って先端側へ送り、前記先端部材から前記工具に向けて吐出させる冷却手段を設けるとともに、前記スピンドルガイド部内から前記駆動部ハウジング内への前記冷却液の浸入を阻止するシール手段を設けたため、細長形状であるスピンドルガイド部の先端に設けられた工具の姿勢を遠隔操作で変更することができ、機械部分に悪影響を与えることなく、加工時に発熱する箇所を効率良く冷却できる。
この発明の実施形態を図1〜図3と共に説明する。図1において、この遠隔操作型アクチュエータは、回転式の工具1を保持する先端部材2と、この先端部材2が先端に姿勢変更自在に取付けられた細長形状のスピンドルガイド部3と、このスピンドルガイド部3の基端が結合された駆動部ハウジング4aと、この駆動部ハウジング4a内の工具回転用駆動機構4bおよび姿勢変更用駆動機構4cを制御するコントローラ5と、工具1等を冷却する冷却手段50とを備える。なお、駆動部ハウジング4aは、内蔵の工具回転用駆動機構4bおよび姿勢変更用駆動機構4cと共に駆動部4を構成する。
図2に示すように、先端部材2は、略円筒状のハウジング11の内部に、一対の軸受12によりスピンドル13が回転自在に支持されている。スピンドル13は、先端側が開口した筒状で、中空部に工具1のシャンク1aが嵌合状態に挿入され、回り止めピン14によりシャンク1aが回転不能に結合される。この先端部材2は、先端部材連結部15を介してスピンドルガイド部3の先端に取付けられる。先端部材連結部15は、先端部材2を姿勢変更自在に支持する手段であり、球面軸受からなる。具体的には、先端部材連結部15は、ハウジング11の基端の内径縮径部からなる被案内部11aと、スピンドルガイド部3の先端に固定された抜け止め部材21の鍔状部からなる案内部21aとで構成される。両者11a,21aの互いに接する各案内面F1,F2は、スピンドル13の中心線CL上に曲率中心Oが位置し、基端側ほど径が小さい球面とされている。これにより、スピンドルガイド部3に対して先端部材2が抜け止めされるとともに、姿勢変更自在に支持される。この例は、曲率中心Oを通るX軸回りに先端部材2が姿勢変更する構成であるため、案内面F1,F2が、点Oを通るX軸を軸心とする円筒面であってもよい。
スピンドルガイド部3は、駆動部ハウジング4a内の工具回転用駆動源41(図3)の回転力を前記スピンドル13へ伝達する回転軸22を有する。この例では、回転軸22はワイヤとされ、ある程度の弾性変形が可能である。ワイヤの材質としては、例えば金属、樹脂、グラスファイバー等が用いられる。ワイヤは単線であっても、撚り線であってもよい。図2(C)に示すように、スピンドル13と回転軸22とは、自在継手等の継手23を介して回転伝達可能に接続されている。継手23は、スピンドル13の閉塞した基端に設けられた溝13aと、回転軸22の先端に設けられ前記溝13aに係合する突起22aとで構成される。上記溝13aと突起22aとの連結箇所の中心は、前記案内面F1,F2の曲率中心Oと同位置である。回転軸22と突起22aは別部材として構成しても良い。
スピンドルガイド部3は、このスピンドルガイド部3の外郭となる外郭パイプ25を有し、この外郭パイプ25の中心に前記回転軸22が位置する。回転軸22は、それぞれ軸方向に離れて配置された複数の転がり軸受26によって回転自在に支持されている。各転がり軸受26間には、これら転がり軸受26に予圧を発生させるためのばね要素27A,27Bが設けられている。ばね要素27A,27Bは、例えば圧縮コイルばねである。転がり軸受26の内輪に予圧を発生させる内輪用ばね要素27Aと、外輪に予圧を発生させる外輪用ばね要素27Bとがあり、これらが交互に配置されている。前記抜け止め部材21は、固定ピン28により外郭パイプ25のパイプエンド部25aに固定され、その先端内周部で転がり軸受29を介して回転軸22の先端部を回転自在に支持している。パイプエンド部25aは、外郭パイプ25と別部材とし、溶接等により結合してもよい。
外郭パイプ25の内径面と回転軸22の間には、両端に貫通する1本のガイドパイプ30が設けられ、このガイドパイプ30の内径孔であるガイド孔30a内に可撓性の姿勢操作部材31が進退自在に挿通されている。この例では、姿勢操作部材31はワイヤである。姿勢操作部材31の先端は球面状で、その球面状の先端が、ハウジング11の基端面に形成された径方向の溝部11bの底面に当接している。溝部11bおよび姿勢操作部材31は回転防止機構37を構成し、溝部11bに挿入された姿勢操作部材31の先端部が溝部11bの側面に当たることで、先端部材2がスピンドルガイド部3に対して先端部材2の中心線CL回りに回転するのを防止している。姿勢操作部材31の基端側には柱状ピン31aが設けられ、この柱状ピン31aの球面状の基端が後記レバー43bの側面に当接している。
上記姿勢操作部材31が位置する周方向位置に対し180度の位相の位置には、先端部材2のハウジング11の基端面とスピンドルガイド部3の外郭パイプ25の先端面との間に、例えば圧縮コイルばねからなる復元用弾性部材32が設けられている。この復元用弾性部材32は、先端部材2を所定姿勢側へ付勢する作用をする。
また、外郭パイプ25の内径面と回転軸22の間には、前記ガイドパイプ30とは別に、このガイドパイプ30と同一ピッチ円C上に、複数本の補強シャフト34が配置されている。これらの補強シャフト34は、スピンドルガイド部3の剛性を確保するためのものである。ガイドパイプ30と補強シャフト34の配列間隔は等間隔とされている。ガイドパイプ30および補強シャフト34は、外郭パイプ25の内径面におよび前記転がり軸受26の外径面に接している。これにより、転がり軸受26の外径面を支持している。
図3は、駆動部ハウジング4a内の工具回転用駆動機構4bおよび姿勢変更用駆動機構4cを示す。工具回転用駆動機構4bは、コントローラ5により制御される工具回転用駆動源41を備える。工具回転用駆動源41は、例えば電動モータであり、その出力軸41aが前記回転軸22の基端に結合させてある。姿勢変更用駆動機構4cは、コントローラ5により制御される姿勢変更用駆動源42を備える。姿勢変更用駆動源42は、例えば電動リニアアクチュエータであり、図3(A)の左右方向に移動する出力ロッド42aの動きが、増力伝達機構43を介して前記姿勢操作部材31に伝達される。増力伝達機構43は、支軸43a回りに回動自在なレバー43bを有し、このレバー43bにおける支軸43aからの距離が長い作用点P1に出力ロッド42aの力が作用し、支軸43aからの距離が短い力点P2で姿勢操作部材31に力を与える構成であり、姿勢変更用駆動源42の出力が増力して姿勢操作部材31に伝達される。増力伝達機構43を設けると、小さな出力のリニアアクチュエータでも姿勢操作部材31に大きな力を与えることができるので、リニアアクチュエータの小型化が可能になる。なお、回転軸22は、レバー43bに形成された開口44を貫通させてある。なお、リニアアクチュエータ等を設ける代わりに、手動により先端部材2の姿勢を遠隔操作してもよい。
姿勢変更用駆動機構4cには、姿勢変更用駆動源42の動作量を検出する動作量検出器45が設けられている。この動作量検出器45の検出値は、姿勢検出手段46に出力される。姿勢検出手段46は、動作量検出器45の出力により、先端部材2のX軸(図2)回りの傾動姿勢を検出する。姿勢検出手段46は、上記傾動姿勢と動作量検出器45の出力信号との関係を演算式またはテーブル等により設定した関係設定手段(図示せず)を有し、入力された出力信号から前記関係設定手段を用いて傾動姿勢を検出する。この姿勢検出手段46は、コントローラ5に設けられたものであっても、あるいは外部の制御装置に設けられたものであってもよい。
また、姿勢変更用駆動機構4cには、電動アクチュエータである姿勢変更用駆動源42に供給される電力量を検出する供給電力計47が設けられている。この供給電力計47の検出値は、荷重検出手段48に出力される。荷重検出手段48は、供給電力計47の出力により、先端部材2に作用する荷重を検出する。荷重検出手段48は、上記荷重と供給電力計47の出力信号との関係を演算式またはテーブル等により設定した関係設定手段(図示せず)を有し、入力された出力信号から前記関係設定手段を用いて荷重を検出する。この荷重検出手段48は、コントローラ5に設けられたものであっても、あるいは外部の制御装置に設けられたものであってもよい。
コントローラ5は、前記姿勢検出手段46および荷重検出手段48の検出値に基づき、工具回転用駆動源41および姿勢変更用駆動源42を制御する。
図1に示すように、冷却手段50は、遠隔操作型アクチュエータの外部に設けた冷却液供給装置51と、この冷却液供給装置51から供給される冷却液をスピンドルガイド部3、および先端部材2の内部を通して先端側へ導く冷却液供給管52とでなり、先端部材2の先端から工具1に向けて軸方向に冷却液を吐出させる。冷却液供給管52は、冷却液供給装置1からスピンドルガイド部3までの外部分52aと、スピンドルガイド部3および先端部材2の内部を通る内部分52bとでなり、内部分52bでは、スピンドルガイド部3の外郭パイプ25(図2)および先端部材2のハウジング11(図2)が冷却液供給管52になっている。
図2(A)に示すように、スピンドルガイド部3は、その基端部を駆動部ハウジング4aの先端側の側板70に挿入させて、駆動部ハウジング4aと結合されている。駆動部ハウジング4aの側板70には、スピンドルガイド部3の軸心と同軸上の軸受嵌合孔71、および前記ガイド孔30aに続く延長ガイド孔72が設けられている。そして、軸受嵌合孔71に滑り軸受73が嵌合し、この滑り軸受73により回転軸22が支持されている。延長ガイド孔72には、前記柱状ピン31aが挿通されている。
また、駆動部ハウジング4aの側板70および基板74には、スピンドルガイド部3内と外部とを連通する冷却液注入孔75が設けられ、この冷却液注入孔75の外部側端に管継手76を介して冷却液供給管52の外部分52aが結合されている。前記滑り軸受73は、冷却液注入孔75よりも基端側に位置している。滑り軸受73は、スピンドルガイド部3内から駆動部ハウジング4a内への冷却液の浸入を阻止するシール手段Sである。
この遠隔操作型アクチュエータの動作を説明する。
工具回転用駆動源41を駆動すると、その回転力が回転軸22を介してスピンドル13に伝達されて、スピンドル13と共に工具1が回転する。工具1を回転させて骨等を切削加工する際に先端部材2に作用する荷重は、供給電力計47の検出値から、荷重検出手段48によって検出される。このように検出される荷重の値に応じて遠隔操作型アクチュエータ全体の送り量や後記先端部材2の姿勢変更を制御することにより、先端部材2に作用する荷重を適正に保った状態で骨の切削加工を行える。
使用時には、姿勢変更用駆動源42を駆動させて、遠隔操作で先端部材2の姿勢変更を行う。例えば、姿勢変更用駆動源42により姿勢操作部材31を先端側へ進出させると、姿勢操作部材31によって先端部材2のハウジング11が押されて、先端部材2は図2(A)において先端側が下向きとなる側へ案内面F1,F2に沿って姿勢変更する。逆に、姿勢変更用駆動源42により姿勢操作部材31を後退させると、復元用弾性部材32の弾性反発力によって先端部材2のハウジング11が押し戻され、先端部材2は図2(A)において先端側が上向きとなる側へ案内面F1,F2に沿って姿勢変更する。その際、先端部材連結部15には、姿勢操作部材31の圧力、復元用弾性部材32の弾性反発力、および抜け止め部材21からの反力が作用しており、これらの作用力の釣り合いにより先端部材2の姿勢が決定される。先端部材2の姿勢は、動作量検出器45の検出値から、姿勢検出手段46によって検出される。そのため、遠隔操作で先端部材2の姿勢を適正に制御できる。
また、先端部材2がスピンドルガイド部3に対して先端部材2の中心線CL回りに回転するのを防止する回転防止機構37が設けられているため、姿勢操作部材31の進退を制御する姿勢操作用駆動機構4cやその制御装置の故障等により工具1を保持する先端部材2が制御不能となった場合でも、先端部材2が中心線CL回りに回転して加工箇所の周りを傷つけたり、先端部材2自体が破損したりすることを防止できる。
姿勢操作部材31はガイド孔30aに挿通されているため、姿勢操作部材31が長手方向と交差する方向に位置ずれすることがなく、常に先端部材2に対し適正に作用することができ、先端部材2の姿勢変更動作が正確に行われる。また、姿勢操作部材31はワイヤからなり可撓性であるため、スピンドルガイド部3が湾曲した状態でも先端部材2の姿勢変更動作が確実に行われる。さらに、スピンドル13と回転軸22との連結箇所の中心が案内面F1,F2の曲率中心Oと同位置であるため、先端部材2の姿勢変更によって回転軸22に対して押し引きする力がかからず、先端部材2が円滑に姿勢変更できる。
この遠隔操作型アクチュエータは、例えば人工関節置換手術において骨の髄腔部を削るのに使用されるものであり、施術時には、先端部材2の全部または一部が患者の体内に挿入して使用される。このため、上記のように先端部材2の姿勢を遠隔操作で変更できれば、常に工具1を適正な姿勢に保持した状態で骨の加工をすることができ、人工関節挿入用穴を精度良く仕上げることができる。
細長形状であるスピンドルガイド部3には、回転軸22および姿勢操作部材31を保護状態で設ける必要があるが、外郭パイプ25の中心部に回転軸22を設け、外郭パイプ25と回転軸22との間に、姿勢操作部材31を収容したガイドパイプ30と補強シャフト34とを円周方向に並べて配置した構成としたことにより、回転軸22および姿勢操作部材31を保護し、かつ内部を中空として軽量化を図りつつ剛性を確保できる。また、全体のバランスも良い。
回転軸22を支持する転がり軸受26の外径面を、ガイドパイプ30と補強シャフト34とで支持させたため、余分な部材を用いずに転がり軸受26の外径面を支持できる。また、ばね要素27A,27Bにより転がり軸受26に予圧がかけられているため、ワイヤからなる回転軸22を高速回転させることができる。そのため、スピンドル13を高速回転させて加工することができ、加工の仕上がりが良く、工具1に作用する切削抵抗を低減させられる。ばね要素27A,27Bは隣合う転がり軸受26間に設けられているので、スピンドルガイド部3の径を大きくせずにばね要素27A,27Bを設けることができる。
冷却手段50により、冷却液供給装置51から供給される冷却液が、冷却液注入孔75からスピンドルガイド部3内に入り、スピンドルガイド部3および先端部材2の内部を通って先端側へ送くられて、先端部材2の先端から軸方向に工具1に向けて吐出される。詳しくは、スピンドルガイド部3の内部では、外郭パイプ25内の回転軸22とガイドパイプ25と補強シャフト25との間の中空部、ならびに転がり軸受26の内輪と外輪間の隙間を冷却液が流れる。スピンドルガイド部3から先端部材2にかけては、抜け止め部材21と回転軸22との間の隙間、および転がり軸受29の内輪と外輪間の隙間を冷却液が流れる。先端部材2の内部では、軸受12の内輪と外輪間の隙間を冷却液が流れる。
冷却液がスピンドルガイド部3および先端部材2の内部を通過する際に、回転軸22、転がり軸受26,29、およびスピンドル13を冷却する。これらの回転する部材は、回転摩擦により発熱する。また、先端部材2から吐出される冷却液により、工具1および被加工物が冷却される。このように、スピンドルガイド部3および先端部材2の内部に冷却液を通したことにより、冷却液供給用の管を外部に設けなくて済み、スピンドルガイド部3および先端部材2を簡素化ならびに小径化できる。
なお、前記冷却液を転がり軸受26,29の潤滑に兼用させてもよい。そうすれば、軸受に一般的に使用されているグリス等を使用しなくてもよく、しかも別に潤滑装置を設けなくて済む。
一般に、滑り軸受は回転軸を接触状態で支持するため、転がり軸受に比べて、軸受と回転軸との回転部の隙間が小さい。そのため、冷却液注入孔75よりも基端側で回転軸22を支持する軸受を滑り軸受73とすることで、スピンドルガイド部3内から駆動部ハウジング4a内への冷却液の浸入を阻止できる。すなわち、滑り軸受73をシール手段Sに兼用できる。シール手段Sを設けることにより、駆動部ハウジング4a内の工具回転用駆動機構4bおよび姿勢変更用駆動機構4cに故障が生じ難く、低寿命化を防止できる。
上記冷却液は、水もしくは生理食塩水であるのが望ましい。冷却液が水もしくは生理食塩水であれば、この遠隔操作型アクチュエータが医療用であり、先端部材2を生体内に挿入して加工を行う場合に、冷却液が生体に悪影響を与えないからである。冷却液が水もしくは生理食塩水である場合、冷却液と接する部品の材質は、耐腐食性に優れたステンレスであるのが望ましい。この遠隔操作型アクチュエータを構成する他の部品も、ステンレス製であってもよい。
上記実施形態では、駆動部ハウジング4aの側板70内に挿入されたスピンドルガイド部3の基端部に冷却液注入孔75が設けられているが、スピンドルガイド部3の側板70から露出している箇所に冷却液注入孔75を設けてもよい。その場合、冷却液注入孔75に対する冷却液供給管52の外部分52aの取付けが不安定となるのを防ぐため、図4のように、フランジ部材77を用いてスピンドルガイド部3の根元部を側板70に固定し、このフランジ部77に冷却液注入孔75を設けるのがよい。
図5はシール手段の異なる構成を示す。このシール手段Sは、駆動部ハウジング4aに、前記軸受嵌合孔71を介してスピンドルガイド部3内と連通する遮蔽空間78を設け、この遮蔽空間78と外部の圧力発生手段79とを管継手80を介して接続し、圧力発生手段79の作用で遮蔽空間78の圧力を大気圧よりも高くしたものである。圧力発生手段79としては、例えばエアポンプを使用できる。軸受嵌合孔72に嵌合して回転軸22を支持する軸受は、転がり軸受26とされている。
この構成のシール手段Sによれば、先端部材2の冷却液吐出部の圧力は大気圧であるため、遮蔽空間78の圧力を大気圧よりも高くすることにより、スピンドルガイド部3内の冷却液が先端部材2側へ流れるようになり、スピンドルガイド部3内の冷却液が駆動部ハウジング4a内へ浸入することを防止できる。なお、遮蔽空間78を完全に密封状態、すなわち全く空気の漏れがない状態とすることができるのであれば、圧力発生手段79を設けなくてもよい。
図6のように、遮蔽空間78の両側で回転軸22を支持する軸受を滑り軸受73とすれば、遮蔽空間78の圧力を上昇させやすくなり、スピンドルガイド部3内から駆動部ハウジング4a内への冷却液の浸入をより一層効果的に防止できる。
上記実施形態では、姿勢操作部材31がハウジング11を押すことにより先端部材2の姿勢変更を行うが、図7のように、ワイヤからなる姿勢操作部材31の先端とハウジング11とを連結部材31bで連結し、姿勢変更用駆動源(図示せず)により姿勢操作部材31を基端側へ後退させることで、姿勢操作部材31がハウジング11を引っ張って先端部材2の姿勢変更を行うようにしてもよい。復元用弾性部材32は引っ張りコイルばねとする。
図8は異なる実施形態を示す。この遠隔操作型アクチュエータは、外郭パイプ25内の互いに180度の位相にある周方向位置に2本のガイドパイプ30を設け、そのガイドパイプ30の内径孔であるガイド孔30a内に前記同様の姿勢操作部材31が進退自在に挿通してある。2本のガイドパイプ30間には、ガイドパイプ30と同一ピッチ円C上に複数本の補強シャフト34が配置されている。復元用弾性部材32は設けられていない。案内面F1,F2は、曲率中心が点Oである球面、または点Oを通るX軸を軸心とする円筒面である。
駆動部4(図示せず)には、2つの姿勢操作部材31をそれぞれ個別に進退操作させる2つの姿勢変更用駆動源42(図示せず)が設けられており、これら2つの姿勢変更用駆動源42を互いに逆向きに駆動することで先端部材2の姿勢変更を行う。例えば、図8における上側の姿勢操作部材31を先端側へ進出させ、かつ下側の姿勢操作部材31を後退させると、上側の姿勢操作部材31によって先端部材2のハウジング11が押されることにより、先端部材2は図8(A)において先端側が下向きとなる側へ案内面F1,F2に沿って姿勢変更する。逆に、両姿勢操作部材31を逆に進退させると、下側の姿勢操作部材31によって先端部材2のハウジング11が押されることにより、先端部材2は図8(A)において先端側が上向きとなる側へ案内面F1,F2に沿って姿勢変更する。その際、先端部材連結部15には、上下2つの姿勢操作部材31の圧力、および抜け止め部材21からの反力が作用しており、これらの作用力の釣り合いにより先端部材2の姿勢が決定される。この構成では、2つの姿勢操作部材31で先端部材2のハウジング11に加圧されるため、1つの姿勢操作部材31だけで加圧される前記実施形態に比べ、先端部材2の姿勢安定性を高めることができる。
図9はさらに異なる実施形態を示す。この遠隔操作型アクチュエータは、外郭パイプ25内の互いに120度の位相にある周方向位置に3本のガイドパイプ30を設け、そのガイドパイプ30の内径孔であるガイド孔30a内に姿勢操作部材31が進退自在に挿通してある。この例では、各姿勢操作部材31の先端側にも柱状ピン31cが設けられている。柱状ピン31cの先端は球面状で、その球面状の先端が、ハウジング11の基端面に形成された径方向の溝部11bの底面に当接している。3本のガイドパイプ30間には、ガイドパイプ30と同一ピッチ円C上に複数本の補強シャフト34が配置されている。復元用弾性部材32は設けられていない。案内面F1,F2は曲率中心が点Oである球面であり、先端部材2は任意方向に傾動可能である。
駆動部4には、3つの姿勢操作部材31(31U,31L,31R)をそれぞれ個別に進退操作させる3つの姿勢変更用駆動源42(42U,42L,42R)(図13)が設けられており、これら3つの姿勢変更用駆動源42を互いに連係させて駆動することで先端部材2の姿勢変更を行う。
例えば、図9における上側の1つの姿勢操作部材31Uを先端側へ進出させ、かつ他の2つの姿勢操作部材31L,31Rを後退させると、上側の姿勢操作部材31Uによって先端部材2のハウジング11が押されることにより、先端部材2は図9(A)において先端側が下向きとなる側へ案内面F1,F2に沿って姿勢変更する。このとき、各姿勢操作部材31の進退量が適正になるよう、各姿勢変更用駆動源42が制御される。各姿勢操作部材31を逆に進退させると、左右の姿勢操作部材31L,31Rによって先端部材2のハウジング11が押されることにより、先端部材2は図9(A)において先端側が上向きとなる側へ案内面F1,F2に沿って姿勢変更する。
また、上側の姿勢操作部材31Uは静止させた状態で、左側の姿勢操作部材31Lを先端側へ進出させ、かつ右側の姿勢操作部材31Rを後退させると、左側の姿勢操作部材31Lによって先端部材2のハウジング11が押されることにより、先端部材2は右向き、すなわち図9(A)において紙面の裏側向きとなる側へ案内面F1,F2に沿って姿勢変更する。左右の姿勢操作部材31L,31Rを逆に進退させると、右の姿勢操作部材31Rによって先端部材2のハウジング11が押されることにより、先端部材2は左向きとなる側へ案内面F1,F2に沿って姿勢変更する。
このように姿勢操作部材31を円周方向の3箇所に設けることにより、先端部材2を上下左右の2軸(X軸、Y軸)の方向に姿勢変更することができる。その際、先端部材連結部15には、3つの姿勢操作部材31の圧力、および抜け止め部材21からの反力が作用しており、これらの作用力の釣り合いにより先端部材2の姿勢が決定される。この構成では、3つの姿勢操作部材31で先端部材2のハウジング11に加圧されるため、さらに先端部材2の姿勢安定性を高めることができる。姿勢操作部材31の数をさらに増やせば、先端部材2の姿勢安定性をより一層高めることができる。
姿勢操作部材31は、図10および図11に示すように、ガイド孔30aの長さ方向に隙間無く並ぶ複数の力伝達部材31d,31eで構成してもよい。図10の例は、複数の力伝達部材31dがボールであり、そのボールの並びの先端側に柱状ピン31cが設けられている。図11の例は、複数の力伝達部材31eが円柱等の柱状体であり、その柱状体の並びの先端側に柱状ピン31cが設けられている。柱状ピン31cは前記同様のものであり、その球面状の先端が、ハウジング11の基端面に形成された径方向の溝部11bの底面に当接している。
姿勢操作部材31が複数の力伝達部材31d,31eで構成されている場合は、姿勢操作部材31の先端で先端部材2を押付ける側に動作することにより先端部材2を姿勢変更させる。姿勢操作部材31が複数の力伝達部材31d,31eで構成されていても、先端部材2に対して確実に作用を及ぼすことができる。力伝達部材31d,31eはガイド孔30a内に配列されているため、姿勢操作部材31が長手方向と交差する方向に位置ずれすることがなく、常に先端部材2に対し適正に作用することができ、先端部材2の姿勢変更動作が正確に行われる。また、個々の力伝達部材31d,31eは剛体であっても、姿勢操作部材31全体では可撓性であるため、湾曲形状のスピンドルガイド部3に設けられる場合でも先端部材2の姿勢変更動作が確実に行われる。
図10および図11は、姿勢操作部材31を互いに120度の位相にある3箇所の周方向位置に設けた例を示しているが、姿勢操作部材31を互いに180度の位相にある2箇所の周方向位置に設けた場合や、周方向の1箇所に設けた姿勢操作部材31とこれに対応する復元用弾性部材32とを組み合わせた場合にも、複数の力伝達部材31d,31eで構成した姿勢操作部材31を適用できる。
図12は、外郭パイプの断面形状が異なる実施形態を示す。この実施形態の外郭パイプ25は、その中空孔24が、中心部の円形孔部24aと、この円形孔部24aの外周における互いに120度の位相をなす周方向位置から外径側へ凹んだ3つの溝状部24bとでなる。溝状部24bの先端の周壁は、断面半円形である。そして、円形孔部24aに回転軸22が配置され、各溝状部24bにガイドパイプ30が設けられている。
外郭パイプ25を上記断面形状としたことにより、外郭パイプ25の溝状部24b以外の箇所の肉厚tを厚くすることができる。それにより、スピンドルガイド部3の剛性(断面2次モーメント)が高まり、先端部材2の位置決め精度が向上させられるとともに、切削性を向上させられる。例えば、外郭パイプ25の断面2次モーメントが、同外径の中実シャフトの1/2以上とすると良い。また、溝状部24bにガイドパイプ30をそれぞれ配置したことにより、ガイドパイプ30の円周方向の位置決めを容易に行え、組立性が良好である。また、外郭パイプ25に肉厚の厚い箇所があるので、この肉厚の厚い箇所に冷却液注入孔75を開けることにより、前記フランジ部材77等のような補強用の他の部材を用いずにスピンドルガイド部3に冷却液注入孔75を設けることができる。
図9ないし図12の各実施形態のように姿勢操作部材31が周方向の3箇所に設けられている場合、姿勢変更駆動機構4cを例えば図13のように構成することができる。すなわち、各姿勢操作部材31(31U,31L,31R)をそれぞれ個別に進退操作させる3つの姿勢変更用駆動源42(42U,42L,42R)を左右並列に配置すると共に、各姿勢変更用駆動源42に対応するレバー43b(43bU,43bL,43bR)を共通の支軸43a回りに回動自在に設け、各レバー43bにおける支軸43aからの距離が長い作用点P1(P1U,P1L,P1R)に各姿勢変更用駆動源42の出力ロッド42aの力が作用し、支軸43aからの距離が短い力点P2(P2U,P2L,P2R)で姿勢操作部材31に力を与える構成としてある。これにより、各姿勢変更用駆動源42の出力が増力して対応する姿勢操作部材31に伝達させることができる。なお、回転軸22は、上側の姿勢操作部材31U用のレバー43bUに形成された開口44を貫通させてある。
図14は姿勢操作用駆動機構4cの構成が異なる実施形態の工具回転用駆動機構および姿勢変更用駆動機構の破断側面図、図15はその姿勢操作部材31と駆動部ハウジング4aの連結部の拡大図である。この実施形態では、ワイヤからなる姿勢操作部材31の基端に雄ねじ部36aが形成されており、この雄ねじ部36aは、駆動部ハウジング4aに形成された雌ねじ部36bと螺合している。これら雄ねじ部36aと雌ねじ部36bとでねじ機構36を構成している。姿勢変更用駆動源42の駆動で姿勢操作部材31の基端を回転させることにより、ねじ機構36の作用で姿勢操作部材31が進退する。
姿勢変更用駆動機構4cは、例えば電動ロータリアクチュエータからなる姿勢変更用駆動源42の出力軸42aの回転が減速回転伝達機構49を介して前記姿勢操作部材31の基端に減速して伝達される。減速回転伝達機構49は、姿勢変更用駆動源42の出力軸42aに取付けられた円形平歯車49aと、駆動部ハウジング4aに固定の支持部材60に回転自在に支持され前記円形平歯車49aと噛み合う扇形平歯車49bとでなり、この扇形平歯車49bの回転中心軸上に設けた回転摺動部62で、扇形平歯車49bから姿勢操作部材31の基端側延長部63へ回転を伝達する。円形平歯車49aよりも扇形平歯車49bの方が、ピッチ円直径が大きく、出力軸42aの回転が減速して姿勢操作部材31の基端に伝達される。減速回転伝達機構49を設けると、高速回転する小型のロータリアクチュエータでも姿勢操作部材31の基端を低速で回転させることができるので、姿勢変更用駆動源42として小型のロータリアクチュエータを使用することが可能になる。工具回転用駆動機構4bは、前記同様の構成である。
上記各実施形態は、先端部材2の回転防止機構37が設けられているが、回転防止機構37は設けなくてもよい。
また、上記各実施形態はスピンドルガイド部3が直線形状であるが、この発明の遠隔操作型アクチュエータは、姿勢操作部材31が可撓性であり、スピンドルガイド部3が湾曲した状態でも先端部材2の姿勢変更動作が確実に行われるので、図16のようにスピンドルガイド部3を初期状態で湾曲形状としてもよい。あるいは、スピンドルガイド部3の一部分のみを湾曲形状としてもよい。スピンドルガイド部3が湾曲形状であれば、直線形状では届きにくい骨の奥まで先端部材2を挿入することが可能となる場合があり、人工関節置換手術における人工関節挿入用穴の加工を精度良く仕上げることが可能になる。
スピンドルガイド部3を湾曲形状とする場合、外郭パイプ25、ガイドパイプ30、および補強シャフト34を湾曲形状とする必要がある。また、回転軸22は変形しやすい材質を用いるのが良く、例えば形状記憶合金が適する。
以上、医療用の遠隔操作型アクチュエータについて説明したが、この発明はそれ以外の用途の遠隔操作型アクチュエータにも適用できる。例えば、機械加工用とした場合、湾曲状をした孔のドリル加工や、溝内部の奥まった箇所の切削加工が可能になる。
この発明の実施形態にかかる遠隔操作型アクチュエータの概略構成を示す図である。 (A)は同遠隔操作型アクチュエータの先端部材、スピンドルガイド部、および駆動部ハウジングの一部の断面図、(B)はそのIIB−IIB断面図、(C)は先端部材と回転軸との連結構造を示す図、(D)は先端部材のハウジングを基端側から見た図である。 (A)は同遠隔操作型アクチュエータの工具回転用駆動機構および姿勢変更用駆動機構の正面図に制御系を組み合わせて表示した図、(B)はそのIIIB−IIIB断面図である。 この発明の異なる実施形態にかかる遠隔操作型アクチュエータのスピンドルガイド部と駆動部ハウジングとの結合部の断面図である。 シール手段の異なる構成を示すスピンドルガイド部および駆動部ハウジングの一部の断面図である。 シール手段のさらに異なる構成を示すスピンドルガイド部および駆動部ハウジングの一部の断面図である。 (A)はこの発明の異なる実施形態にかかる遠隔操作型アクチュエータの先端部材およびスピンドルガイド部の断面図、(B)はそのVIIB−VIIB断面図、(C)は先端部材のハウジングを基端側から見た図である。 (A)はこの発明のさらに異なる実施形態にかかる遠隔操作型アクチュエータの先端部材およびスピンドルガイド部の断面図、(B)はそのVIIIB−VIIIB断面図、(C)は先端部材のハウジングを基端側から見た図である。 (A)はこの発明のさらに異なる実施形態にかかる遠隔操作型アクチュエータの先端部材およびスピンドルガイド部の断面図、(B)はそのIXB−IXB断面図、(C)は先端部材のハウジングを基端側から見た図である。 (A)はこの発明のさらに異なる実施形態にかかる遠隔操作型アクチュエータの先端部材およびスピンドルガイド部の断面図、(B)はそのXB−XB断面図、(C)は先端部材のハウジングを基端側から見た図である。 (A)はこの発明のさらに異なる実施形態にかかる遠隔操作型アクチュエータの先端部材およびスピンドルガイド部の断面図、(B)はそのXIB−XIB断面図、(C)は先端部材のハウジングを基端側から見た図である。 (A)はこの発明のさらに異なる実施形態にかかる遠隔操作型アクチュエータの先端部材、スピンドルガイド部、および駆動部ハウジングの一部の断面図、(B)はそのXIIB−XIIB断面図、(C)は先端部材のハウジングを基端側から見た図である。 (A)図9ないし図12に示す各遠隔操作型アクチュエータの工具回転用駆動機構および姿勢変更用駆動機構の正面図、(B)はそのXIIIB−XIIIB断面図である。 姿勢操作用駆動機構の構成が異なる遠隔操作型アクチュエータの工具回転用駆動機構および姿勢変更用駆動機構の破断側面図である。 同遠隔操作型アクチュエータの姿勢操作部材と駆動部ハウジングの連結部の拡大図である。 スピンドルガイド部の形状が異なる遠隔操作型アクチュエータの概略構成を示す図である。
符号の説明
1…工具
2…先端部材
3…スピンドルガイド部
4a…駆動部ハウジング
5…コントローラ
13…スピンドル
15…先端部材連結部
22…回転軸
24…中空孔
24a…円形孔部
24b…溝状部
25…外郭パイプ
26,29…転がり軸受
27A,27B…ばね要素
30…ガイドパイプ
30a…ガイド孔
31…姿勢操作部材
41…工具回転用駆動源
42…姿勢変更用駆動源
50…冷却手段
73…滑り軸受
75…冷却液注入孔
78…遮蔽空間
S…シール手段

Claims (10)

  1. 細長形状のスピンドルガイド部と、このスピンドルガイド部の先端に先端部材連結部を介して姿勢変更自在に取付けられた先端部材と、前記スピンドルガイド部の基端が結合された駆動部ハウジングとを備え、
    前記先端部材は、工具を保持するスピンドルを回転自在に支持し、前記スピンドルガイド部は、前記駆動部ハウジング内に設けられた工具回転用駆動源の回転を前記スピンドルに伝達する回転軸と、両端に貫通したガイド孔とを内部に有し、先端が前記先端部材に接して進退動作することにより前記先端部材を姿勢変更させる姿勢操作部材を前記ガイド孔内に進退自在に挿通し、前記姿勢操作部材を進退させる姿勢変更用駆動源を前記駆動部ハウジング内に設け、
    冷却液を、前記スピンドルガイド部の基端近傍に設けられた冷却液注入孔から内部に注入し、前記スピンドルガイド部および先端部材の内部を通って先端側へ送り、前記先端部材から前記工具に向けて吐出させる冷却手段を設けるとともに、前記スピンドルガイド部内から前記駆動部ハウジング内への前記冷却液の浸入を阻止するシール手段を設けたことを特徴とする遠隔操作型アクチュエータ。
  2. 請求項1において、前記シール手段は、前記冷却液注入孔よりも基端側の位置で前記回転軸を支持する滑り軸受である遠隔操作型アクチュエータ。
  3. 請求項1または請求項2において、前記シール手段は、前記駆動部ハウジングに設けられ前記スピンドルガイド部の基端でスピンドルガイド部の内部と連通する遮蔽空間を有し、この遮蔽空間の圧力を大気圧よりも高くした遠隔操作型アクチュエータ。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記スピンドルガイド部が、このスピンドルガイド部の外郭となる外郭パイプを有し、前記ガイド孔が、前記外郭パイプ内に設けられたガイドパイプの内径孔である遠隔操作型アクチュエータ。
  5. 請求項4において、前記外郭パイプは両端に貫通した中空孔を有し、この中空孔は、中心部の円形孔部と、この円形孔部から外径側へ凹んだ溝状部とでなり、前記円形孔部に前記回転軸を配置し、かつ前記溝状部に前記ガイドパイプを配置した遠隔操作型アクチュエータ。
  6. 請求項4または請求項5において、前記外郭パイプに前記冷却液注入孔を設けた遠隔操作型アクチュエータ。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記スピンドルガイド部内の前記回転軸を回転自在に支持する複数の転がり軸受を設け、隣合う転がり軸受間に、これら転がり軸受に対して予圧を与えるばね要素を設けた遠隔操作型アクチュエータ。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、前記スピンドルガイド部内の前記回転軸を回転自在に支持する複数の転がり軸受を設け、前記冷却手段は、前記冷却液により前記転がり軸受を冷却するものとした遠隔操作型アクチュエータ。
  9. 請求項1ないし請求項8のいずれか1項において、前記冷却液は、水もしくは生理食塩水である遠隔操作型アクチュエータ。
  10. 請求項1ないし請求項9のいずれか1項において、前記スピンドルガイド部は湾曲した箇所を有する遠隔操作型アクチュエータ。
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