JP5197129B2 - 下糸張力制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、布地などの縫製を行うミシンのボビンケースから引き出される下糸の張力を制御するのに好適な下糸張力制御装置に関する。
従来から、工業用ミシンなどのミシンには、縫い針を上下方向に往復移動させる針駆動機構と、ミシンフレームのベッド内において縫い針と協働して縫い目を形成する釜機構とが設けられている。そして、釜機構の釜は、回転駆動される外釜と、この外釜の内部に回転止めされた状態で保持される中釜と、この中釜に装着されるボビンケースとを備えており、ボビンケースには、下糸が巻回されたボビンが収容されている。なお、工業用ミシンには、釜として半回転釜が用いられる場合もあるが、一般的には釜駆動機構が簡単な垂直全回転釜を用いる場合が多い。
ところで、ボビンから引き出される下糸は、上糸(針糸)と比較して必要以上に引き出されても、また、必要量が引き出されなくても好ましくなく、縫製条件に応じて適切な量が供給されることが望ましい。
そこで、従来から、ボビンケースの外周面に糸調子ばね(板ばね)を取り付け、この糸調子ばねとボビンケースとの間に下糸を配置し、糸調子ばねで下糸を押圧することにより、下糸に一定の張力を付与するように構成されている。
このような糸調子ばねを下糸に押圧して下糸に所定の張力を付与する構成においては、糸調子ばねを締め付ける調節ねじの締め加減を調節することにより下糸の張力の調節が行われているが、縫製中は下糸の張力の調節を実行することができない。例えば、ミシンが、その縫製速度を変化しうるものである場合、下糸の張力を高速縫製あるいは低速縫製に対応するように設定すると、対応しない縫製速度のときに縫いむらが生じることになってしまう。
そこで、縫製中においてもボビンから引き出される下糸の張力を調節することのできる下糸張力制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の下糸張力制御装置は、ボビンケースの底部の内側と、これに対向するボビンの端面との間に、ボビンの端面に当接する皿ばねなどの弾性体と、この弾性体に隣接しスラスト方向(ボビンケースの軸線方向)に移動可能な環状の永久磁石とを備え、ボビンケースの外側にはこのボビンケースの底部に対向配置された電磁石を備えている。
このような構成からなる従来の下糸張力制御装置においては、ボビンケースの底部の外側に電磁石を接近させた状態で、電磁石のコイルに縫製速度に対応する電流を流して永久磁石と逆の極性に磁化させることで電磁石から縫製速度に対応する斥力を受けて永久磁石がスラスト方向(ボビンの端面に向かう方向)に移動する。そして、永久磁石が弾性体を介してボビンの端面を圧迫する結果、ボビンには縫製速度に対応する制動力である制動トルクが作用することとなり、下糸に所定の張力が付与されている。
つまり、釜の外部に設けられた電磁石に流す電流を制御することで、ボビンケースの内部に設けられた永久磁石に作用する斥力を調節して、ボビンの中釜に対する押圧力を増減することにより、ボビンと中釜の摩擦力を増減し、これによりボビンに制動トルクを作用させてボビンから繰り出される下糸に張力を付与するとともに、張力を制御するようになっている。
ここで、制動トルクは、ボビンの糸残り半径と、下糸の張力との積であらわすことができる。
特開平05−068764号公報(図1)
しかしながら、従来の下糸張力制御装置においては、制動トルクを制御するものであり、下糸の張力そのものを制御することができないという問題点があった。
すなわち、電磁石に通電する電流の電流値および通電方向(電流を流す向き)を変更することはできるが、ボビンに巻回された糸残り量が変化すると、制動トルクが一定であっても下糸の張力が変化(増大)するという問題点があった。
また、従来の下糸張力制御装置においては、制動トルクがボビンに作用して下糸に張力を付与するように構成されているが、ボビンに巻回されている下糸には、長さに比例して伸びるという伸縮特性があるため、ボビンに一定の制動トルクを付与しても、下糸が伸びたり、その伸びの程度が異なるので、ボビンを圧迫しても必ずしも希望する下糸の張力を得ることができないという問題点もあった。
さらに、ボビンに制動トルクを付与した状態で下糸を引き出すとき、ボビンに巻回されている下糸が締まってしまうので、以降の下糸の引出しにより大きな力が必要となる。すなわち、下糸が伸びて張力が加わった状態でボビンに斥力を作用させると、下糸に大きな力がかかるので、ボビンに巻回されている下糸が締まってしまう。その結果、それ以降の下糸の張力が増加するという問題点もあった。
また、ボビンとボビンケースとの間に永久磁石をスラスト方向に移動可能に設けているので、永久磁石の収納および移動に必要なスペースを確保するために、ボビンの軸方向の長さを短くしなければならず、ボビンに巻回する下糸の長さである糸巻き量が少なくなる。その結果、専用のボビンを必要とするとともに、ボビンの交換サイクルが短くなり、縫製物の生産性が低下するという問題点もあった。
さらにまた、ボビンと中釜の摩擦力による制動トルクで下糸の張力を制御しているため、長時間制御を繰り返すと、ボビンや中釜が発熱して温度が上昇するという問題点もあった。
また、ボビンと中釜の摩擦により摩耗粉が発生し、摩耗粉が下糸やボビンケースや永久磁石に付着し、縫製物にも摩耗粉が付着する危険性があるという問題点もあった。
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、下糸の張力を適正に制御することのできる下糸張力制御装置を提供することを目的とする。
前述した目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載の本発明の下糸張力制御装置の特徴は、下糸を巻回するボビンが収容される有底筒状に形成されたボビンケースと、前記ボビンケースの周壁に設けられた糸孔を介して前記ボビンケースの外側に引き出される下糸を押圧して下糸に張力を付与する糸調子ばねと、前記糸調子ばねの糸押圧部から離れた固定部を前記ボビンケースの周壁に螺着させる固定ねじとを有する下糸張力制御装置において、前記糸調子ばねの糸押圧部を前記ボビンケースの外周面に押し付けるための磁性体により形成された可動な糸調子ばね押圧手段と、前記ボビンケースに設けられ、前記糸調子ばね押圧手段の可動範囲を制限するストッパと、前記ボビンケースの外側において前記糸調子ばね押圧手段と対向配置される電磁石とを有しており、前記電磁石の磁力により前記糸調子ばね押圧手段を駆動させて前記糸調子ばねの糸押圧部を前記ボビンケースの外周面に押し付けるとともに、前記電磁石に通電する電流値を変化させることにより、前記糸調子ばねの糸押圧部が下糸を押圧する力を制御するように形成されており、前記糸調子ばね押圧手段は、前記ボビンケースの周壁の一部を形成する周壁部分代替部と、前記ボビンケースの周壁に連なる底壁の一部を形成する底壁部分代替部とにより断面L字状をなすように磁性体により形成された押圧本体と、前記糸調子ばねの糸押圧部と固定部との中間部を介して前記押圧本体に螺着される調節ねじと、前記ボビンケースに両端が取り付けられ、前記押圧本体の屈曲部分が挿通される支持軸とを有しており、前記押圧本体は、前記支持軸を中心として可動に形成されている点にある。
そして、このような構成を採用したことにより、糸調子ばねの糸押圧部が下糸を押圧する力を制御することができるので、下糸の張力を容易かつ確実に制御することができる。その結果、下糸の張力を制動トルクで制御するのではなく、糸調子ばねが下糸を押圧する力で制御することができるので、ボビンに巻回されている下糸の糸残り量にかかわらず、安定した下糸の張力の可変制御を縫製中に行うことができる。また、電磁石に通電する電流値を変化させることにより、電磁石の磁力を容易かつ確実に変更することができる。その結果、下糸の張力を必要なときに、確実かつ容易に変更することができる。さらに、ボビンケースに、糸調子ばね押圧手段の可動範囲を制限するストッパが設けられているから、ボビンケースの内部に収容されているボビンおよび下糸に糸調子ばね押圧手段が接触するのを確実に防止することができる。さらにまた、ボビンケースの形状を、従来のボビンケースの形状と同一に形成することができる。
請求項に記載の本発明の下糸張力制御装置の特徴は、請求項において、前記電磁石が前記底壁部分代替部と対向配置されている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、糸調子ばね押圧手段を容易かつ確実に可動させることができる
請求項に記載の本発明の下糸張力制御装置の特徴は、請求項において、前記調節ねじが前記押圧本体に装着され、前記電磁石の磁力により前記押圧本体が回動して、前記糸調子ばねの糸押圧部が下糸を押圧する力を制御する点にある。そして、このような構成を採用したことにより、糸調子ばねの糸押圧部が下糸を押圧する力をより確実かつ容易に調節することができる。
本発明に係る下糸張力制御装置によれば、電磁石の磁力により糸調子ばね押圧手段を駆動させて糸調子ばねの糸押圧部をボビンケースの外周面に押し付けるとともに、電磁石に通電する電流値を変化させることにより糸調子ばねの糸押圧部が下糸を押圧する力を制御するように形成されているから、糸調子ばね押圧手段は、電磁石に通電する電流値の変化により下糸の張力を容易かつ確実に制御することができるとともに、下糸の張力を制動トルクで制御するのではなく、糸調子ばねが下糸を押圧する力で制御することができるので、ボビンに巻回されている下糸の糸残り量にかかわらず、安定した下糸の張力の可変制御を縫製中に行うことができる。その結果、縫製中においても下糸の張力を適正に制御することができるなどの優れた効果を奏する。また、ボビンケースの形状を、従来のボビンケースの形状と同一に形成することができるなどの優れた効果を奏する。
以下、本発明を図面に示す実施形態により説明する。
図1から図4は、本発明に係る下糸張力制御装置の実施形態を示すものであり、図1は要部の断面図、図2は図1の側面図、図3は図2のボビンケースの拡大図、図4は図3のA−A線に沿った断面図、図5は図1の電磁石への通電状態を示す図4と同様の図である。
本実施形態の下糸張力制御装置1は、垂直全回転釜2(以下、単に、垂直釜と記す。)に配設されている。この垂直釜2は、周知の如く、水平に延在する回転軸心RLを中心として回転駆動される外釜3と、この外釜3の内部に回転止めされた状態で保持される中釜4とを具備している。なお、中釜4は、ミシンフレームに取り付けられた中釜回り止め部材(ともに図示せず)により、外釜3が回転した際に、中釜4が外釜3の回転に従動するのを防止して、中釜4の回転の停止が行われている。
図1および図2に示すように、本実施形態の下糸張力制御装置1は、中釜4に装着されるボビンケース11を有している。このボビンケース11は、全体として有底筒状に形成されており、その内部には、下糸Tが巻回された図示しないボビンが回転可能かつ着脱可能に収容されている。なお、ボビンケース11としては、磁性体であっても非磁性体であってもよいが、後述する押圧本体17を磁力により効率よく駆動させることができるという意味で、樹脂、非鉄金属およびオーステナイト系ステンレス、セラミックスなどの非磁性体により形成するとよい。
前記ボビンケース11は、その開口端が中釜4の外部に露出した釜底面に対向するように装着されており、ボビンケース11の底部の外面が外部に露出するように配置されている。そして、ボビンケース11の周壁11aには、糸孔12と、この糸孔12に連通するスリット状の糸通し溝13とが設けられており、下糸Tの一端をボビンケース11の開口端側に設けられた糸通し溝13の糸通し溝口13aから滑り込ませることにより、糸孔12を介して下糸Tがボビンケース11の内側から外側、詳しくはボビンケース11の外周面11bに導出されるようになっている(図1)。
前記ボビンケース11の外周面11bには、糸調子ばね14が配設されている。この糸調子ばね14は、糸孔12を介してボビンからボビンケース11の外側に引き出される下糸Tを押圧して下糸Tに張力を付与するためのものであり、糸孔12を覆うように配置される糸押圧部14aと、この糸押圧部14aから図1の下方に離れた固定部14bとを有している。そして、糸調子ばね14は、固定部14bを介してボビンケース11の周壁11aに螺着される固定ねじ15によってボビンケース11に着脱可能に取り付けられている。
図3および図4に示すように、本実施形態のボビンケース11の周壁11aとこれに連なる底壁11cとの接続部の一部には、ボビンケース11の内外を連通する開口部16が形成されている。この開口部16は、ボビンケース11の糸孔12と固定ねじ15の螺着部分との間で、かつ糸通し溝13に干渉しない位置に形成されている。
前記開口部16には、ボビンケース11の一部を構成するように、磁性体、好ましくは強磁性体により形成された押圧本体17が配設されている。この押圧本体17は、ボビンケース11の周壁11aの一部を形成する円弧状の周壁部分代替部17aと、ボビンケース11の底壁11cの一部を形成する平板状の底壁部分代替部17bとを備えており、全体として断面ほぼL字状をなすように形成されている。
前記押圧本体17の周壁部分代替部17aと底壁部分代替部17bとの屈曲部分には、支持軸18が挿通されている。この支持軸18の両端は、ボビンケース11の開口部16の近傍に嵌め込まれて取り付けられており、押圧本体17は、支持軸18を中心として回動可能に形成されている。また、押圧本体17の周壁部分代替部17aには、糸調子ばね14の糸押圧部14aと固定部14bとの間の中間部14cを介して調節ねじ19が螺着されている。なお、糸調子ばね14、支持軸18および調節ねじ19は、磁性体でもオーステナイト系ステンレスなどの非磁性体でもどちらでもよい。
前記押圧本体17、支持軸18および調節ねじ19により、本実施形態の糸調子ばね14の糸押圧部14aをボビンケース11の外周面11bに押し付けるための磁性体により形成された可動な糸調子ばね押圧手段20が構成されている。
前記開口部16には、押圧本体17が支持軸18を中心として回動するときの回動範囲を制限するためのストッパ21が形成されている。すなわち、ボビンケース11には、糸調子ばね押圧手段20の可動範囲を制限するためのストッパ21が設けられている。このストッパ21は、ボビンケース11の底壁11cの外面に形成された第1ストッパ21aと、ボビンケース11の周壁11aの開口端により形成された第2ストッパ21bとを具備している。そして、第1ストッパ21aは、押圧本体17が支持軸18を中心として図4の時計方向に回転したときの最大位置を拘束するようになっており、第2ストッパ21bは、押圧本体17が支持軸18を中心として図4の反時計方向に回転したときの最大位置を拘束するようになっている。また、押圧本体17は、図4に示すように、常時は糸調子ばね14のばね力によって底壁部分代替部17bが第1ストッパ21aに当接した状態を保持するように形成されている。
図1および図2に示すように、ボビンケース11の底部には、ボビンケース11が中釜4から離脱しないように保持させる周知のラッチ24が設けられており、このラッチ24には、中釜4に装着されたボビンケース11を抜き取るときに、ラッチ24によるボビンケース11の保持状態を解除するためのラッチレバー24aが設けられている。
前記ボビンケース11の外側には、電磁石26が押圧本体17の底壁部分代替部17bと対向配置されている。この電磁石26は、軟鉄などの磁性体により形成された鉄心26aと、絶縁した電線を密に巻いたコイル26bとを備えて構成されている(図1)。そして、電磁石26は、鉄心26aの長手方向が水平に延在するようにして、図示しないミシンフレームあるいはミシンフレームに取り付けられた支持ステーに支持されている。なお、図1には、電磁石26の模式化した半断面図を示してある。
前記電磁石26は、CPUおよびメモリなどを備えた制御部(図示せず)に電気的に接続されており、制御部から送出される制御指令に基づいて電磁石26、すなわちコイル26bへの通電状態および非通電状態の切り換えタイミング、通電時間、および通電時の電流値などが制御されるようになっている。そして、電磁石26への通電により、電磁石26と押圧本体17の底壁部分代替部17bとの間に吸引力Fが発生し、この吸引力Fにより押圧本体17が支持軸18を中心として図4の反時計方向に回転するように形成されている。この吸引力Fによる押圧本体17の回転は、周壁部分代替部17aが第2ストッパ21bに当接することにより最大位置が拘束される。この電磁石26への通電により、押圧本体17の周壁部分代替部17aが第2ストッパ21bに当接した状態を吸引力Fの作用方向とともに図5に示す。また、電磁石26への通電が停止されると、押圧本体17は、糸調節ばね14のばね力により、底壁部分代替部17bが第1ストッパ21aに当接したもとの状態に復元するように形成されている。
なお、ボビンケース11のその他の構成については、従来周知のものと同様に構成されているので、その詳しい説明については省略する。
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
図4は本実施形態の下糸張力制御装置の電磁石に通電されていない非通電状態を示しており、図5は本実施形態の下糸張力制御装置の電磁石に通電されている通電状態を示している。
本実施形態の下糸張力制御装置1は、電磁石26のコイル26bに通電されていない非通電状態と、通電状態との2つの形態がある。
まず、本実施形態の下糸張力制御装置1における非通電状態について図4により説明する。
本実施形態の下糸張力制御装置1の非通電状態では、図4に示すように、押圧本体17には糸調子ばね14のばね力が作用して、底壁部分代替部17bが第1ストッパ21aに当接した状態を保持している。このとき、糸調子ばね14は、従来と同様に、その糸押圧部14aがボビンケース11の糸孔12を含む部位を押圧しており、糸孔12を介してボビンから引き出される下糸Tに対して一定の初期張力を付与している。ここで、初期張力は、通常のボビンケースと同様に、調節ねじ19の締め込み量に応じて増減できる。また、ボビンケース11に押圧本体17を設けること、および、押圧本体17に調節ねじ19を螺着させること以外は、通常のボビンケースの構成と同様とされているので、調節ねじ19の締め込み量の設定には、通常の糸調子ばねを有するボビンケースで行われた下糸Tの張力の調節経験を活用することができる。
つぎに、本実施形態の下糸張力制御装置1における通電状態について図5により説明する。
本実施形態の下糸張力制御装置1の通電状態では、電磁石26と押圧本体17の底壁部分代替部17bとの間に図5の太矢印にて示す吸引力Fが発生する。そして、吸引力Fが糸調子ばね14のばね力を越えると、押圧本体17は、支持軸18を中心として図5の矢印にて示す反時計方向に回転し、糸調子ばね14の中間部14cをボビンケース11の中心方向に押し込む。これにより、糸調子ばね14が撓んで、糸押圧部14aが下糸Tを押圧する力が増加し、下糸Tの張力が増加する。
ここで、コイル26bに通電する電流値を変化させることにより、電磁石26の磁力を変更、すなわち、電磁石26の磁力の強弱を変えることができる。したがって、コイル26bに通電する電流値を変化させることにより、糸調子ばね14の糸押圧部14aが下糸Tを押圧する力が変化するので、下糸Tの張力も変化する。
また、コイル26bに通電する電流値を減少させたときには、電磁石26と押圧本体17の底壁部分代替部17bとの間に発生する吸引力Fが減少し、糸調子ばね14のばね力により下糸Tの張力も速やかに減少することになる。
したがって、縫製中であっても電磁石26のコイル26bに通電する電流値を増減することで、下糸Tの張力を増減することができる。この下糸Tの張力の増減は、縫製中に実行することもできる。そこで、縫製速度に対応した電流値を縫製データの1つとしてメモリに予め記憶させておくことで、縫製速度が変化する毎に、下糸Tの張力も変更することができる。その結果、縫製速度が変化する縫製動作であっても、縫製中に下糸Tの張力を制御することができるので、縫いむらが発生しない高い縫製品質を確保できる。
また、電磁石26のコイル26bに通電する電流値が大きくなり過ぎたときには、周壁部分代替部17aが第2ストッパ21bに当接して、押圧本体17の反時計方向への回転が阻止される。その結果、押圧本体17の周壁部分代替部17aがボビンケース11の内部に配置されているボビンに接触するのを防止できる。
さらに、押圧本体17が、ボビンケース11の一部を形成するように構成されているので、ボビンケース11の外径サイズが大きくなることも、ボビンケース11の内径サイズが小さくなることもない。その結果、通常のボビンを用いることができるので、ボビンに巻回する下糸Tの糸巻き量も通常と変わらないし、ボビンの交換頻度も変わらない。また、ミシンフレームに電磁石26を取り付けるという簡便な構成で、本実施形態の下糸張力制御装置1を既存のミシンに用いることができる。
なお、電磁石26のコイル26bに対する通電を、振幅を減少させた交流電流とすることにより、ボビンケース11および押圧本体17が磁化して余分な吸引力Fが発生するのを防止することができる。
このように、本実施形態の下糸張力制御装置1によれば、糸調子ばね押圧手段20と、ボビンケース11の外側において糸調子ばね押圧手段20と対向配置される電磁石26を有しており、電磁石26の磁力により糸調子ばね押圧手段20を駆動させて糸調子ばね14の糸押圧部14aをボビンケース11の外周面11bに押し付けるとともに、電磁石に通電する電流値を変化させること、すなわち、電磁石26の磁力の強さにより糸調子ばね14の糸押圧部14aが下糸Tを押圧する力を調節するように形成されているから、縫製中であっても下糸Tの張力を適正に、しかも容易かつ確実に制御することができる。
したがって、本実施形態の下糸張力制御装置1によれば、下糸Tの張力を前述した制動トルクで制御するのではなく、糸調子ばね14が下糸Tを押圧する力で制御することができるので、ボビンに巻回されている下糸Tの糸残り量にかかわらず、安定した下糸Tの張力の可変制御を縫製中であっても行うことができる。その結果、下糸Tの張力を容易かつ確実に、しかも適正に制御することができる。
また、本実施形態の下糸張力制御装置1によれば、ボビンケース11に、糸調子ばね押圧手段20の可動範囲を制限するストッパ21が設けられているから、ボビンケース11の内部に収容されているボビンおよび下糸Tに糸調子ばね押圧手段20が接触するのを確実に防止することができる。
さらに、本実施形態の下糸張力制御装置1によれば、この電磁石26に通電する電流値を変化させることにより、磁力を変更するように形成されているから、磁力を容易かつ確実に変更することができる。その結果、下糸Tの張力を必要なときに、確実かつ容易に変更することができる。
さらにまた、本実施形態の下糸張力制御装置1によれば、糸調子ばね押圧手段20が、ボビンケース11の周壁11aの一部を形成する周壁部分代替部17aと、ボビンケース11の周壁11aに連なる底壁11cの一部を形成する底壁部分代替部17bとにより断面L字状をなすように磁性体により形成された押圧本体17と、糸調子ばね14を介して押圧本体17に螺着される調節ねじ19と、ボビンケース11に両端が取り付けられた支持軸18とを有しているとともに、押圧本体17が、支持軸18を中心として可動に形成されているから、電磁石26の磁力により糸調子ばね押圧手段20を可動させることができるとともに、電磁石26に通電する電流値の変化により糸調子ばね14の糸押圧部14aが下糸Tを押圧する力を確実かつ容易に調節することができる。また、ボビンケース11の形状を通常のボビンケースの形状と同一に形成することができるので、ボビンケース11へのボビンの装着、ボビンケース11の中釜4への取り付けおよび取り出し、ボビンケース11への下糸Tの糸掛け、初期張力の設定などの作業を、通常のボビンケースと同様に行うことができる。
またさらに、本実施形態の下糸張力制御装置1によれば、電磁石26が底壁部分代替部17bと対向配置されているから、糸調子ばね押圧手段20を容易かつ確実に可動させることができる。
さらにまた、本実施形態の下糸張力制御装置1によれば、調節ねじ19が押圧本体17に装着され、電磁石26の磁力により押圧本体17が回動して、糸調子ばね14の糸押圧部14aが下糸Tを押圧する力を制御するように構成されているから、糸調子ばね14の糸押圧部14aが下糸Tを押圧する力をより確実かつ容易に調節することができる。
なお、本実施形態の下糸張力制御装置1によれば、通常のボビンケースと比較して、構成部品点数の増加が少なく、構成部品の材料も安価なものとすることができるので、コストの大幅な増加を招くこともない。
また、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
本発明に係る下糸張力制御装置の実施形態の要部を示す断面図 図1の側面図 図2のボビンケースの拡大図 図3のボビンケースの非通電状態におけるA−A線に沿った要部の断面図 図3のボビンケースの通電状態における図4と同様の図
符号の説明
1 下糸張力制御装置
2 垂直釜
3 外釜
4 中釜
11 ボビンケース
11a 周壁
11b 外周面
11c 底壁
12 糸孔
14 糸調子ばね
14a 糸押圧部
14b 固定部
14c 中間部
15 固定ねじ
17 押圧本体
18 支持軸
19 調節ねじ
20 糸調子ばね押圧手段
21 ストッパ
21a 第1ストッパ
21b 第2ストッパ
26 電磁石
T 下糸
F 吸引力

Claims (3)

  1. 下糸を巻回するボビンが収容される有底筒状に形成されたボビンケースと、
    前記ボビンケースの周壁に設けられた糸孔を介して前記ボビンケースの外側に引き出される下糸を押圧して下糸に張力を付与する糸調子ばねと、
    前記糸調子ばねの糸押圧部から離れた固定部を前記ボビンケースの周壁に螺着させる固定ねじとを有する下糸張力制御装置において、
    前記糸調子ばねの糸押圧部を前記ボビンケースの外周面に押し付けるための磁性体により形成された可動な糸調子ばね押圧手段と、
    前記ボビンケースに設けられ、前記糸調子ばね押圧手段の可動範囲を制限するストッパと、
    前記ボビンケースの外側において前記糸調子ばね押圧手段と対向配置される電磁石とを有しており、
    前記電磁石の磁力により前記糸調子ばね押圧手段を駆動させて前記糸調子ばねの糸押圧部を前記ボビンケースの外周面に押し付けるとともに、前記電磁石に通電する電流値を変化させることにより、前記糸調子ばねの糸押圧部が下糸を押圧する力を制御するように形成されており、
    前記糸調子ばね押圧手段は、
    前記ボビンケースの周壁の一部を形成する周壁部分代替部と、前記ボビンケースの周壁に連なる底壁の一部を形成する底壁部分代替部とにより断面L字状をなすように磁性体により形成された押圧本体と、
    前記糸調子ばねの糸押圧部と固定部との中間部を介して前記押圧本体に螺着される調節ねじと、
    前記ボビンケースに両端が取り付けられ、前記押圧本体の屈曲部分が挿通される支持軸とを有しており、
    前記押圧本体は、前記支持軸を中心として可動に形成されていることを特徴とする下糸張力制御装置。
  2. 前記電磁石が前記底壁部分代替部と対向配置されていることを特徴とする請求項に記載の下糸張力制御装置。
  3. 前記調節ねじが前記押圧本体に装着され、前記電磁石の磁力により前記押圧本体が回動して、前記糸調子ばねの糸押圧部が下糸を押圧する力を制御することを特徴とする請求項に記載の下糸張力制御装置。
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