JP5194365B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、空気入りタイヤに関するものである。特に、この発明は、耐久性の向上を図ることのできる空気入りタイヤに関するものである。
従来の空気入りタイヤでは、氷上で使用する場合における氷上制動性の向上や、空気入りタイヤが低偏平時の場合における耐ワンダリング性の向上などの観点から、トレッド面のタイヤ幅方向における端部に細溝などを設けているものがある。例えば、特許文献1に記載の空気入りタイヤでは、トレッド面のタイヤ幅方向における端部に傾斜部を設け、この傾斜部の近傍に、タイヤ周方向に延びる2本の細溝を形成している。また、この2本の細溝は、トレッド面に形成され、タイヤ幅方向に延びる横溝に接続されている。さらに、この細溝は、当該細溝のタイヤ周方向における中央部付近から端部に向かうに従って、溝深さが浅くなっている。これにより、トレッド面のタイヤ幅方向における端部の形状、及び細溝の形状が、低偏平タイヤにおいて氷上制動性、耐ワンダリング性、耐偏摩耗性を向上させるのに適した形状になる。このため、低偏平の空気入りタイヤをこのような形状にすることにより、これらの性能の向上を図ることができる。
特開平6−87303号公報
このように、従来の空気入りタイヤでは、トレッド面のタイヤ幅方向における端部に細溝を形成することにより、上述した性能の向上を図っているが、横溝はタイヤ幅方向における端部で開口し、細溝は横溝の端部よりもタイヤ幅方向における内側に設けられているため、横溝の端部付近における耐偏摩耗性が不十分である虞がある。また、細溝はタイヤ周方向における端部で溝深さが浅くなっているため、この部分における耐偏摩耗性も不十分である虞がある。
このような、偏摩耗を考慮して、近年の空気入りタイヤの中には、非接地領域に周方向細溝を設けているものがある。この周方向細溝は、トレッド面のタイヤ幅方向における両端部に位置すると共に通常の直線走行時には接地しない領域である非接地領域に、タイヤ周方向に延びる細溝として形成される。このように非接地領域に周方向細溝が形成される場合には、トレッド面に形成される横溝は周方向細溝に接続する。このため、周方向細溝は横溝によって分断されておらず、タイヤ周方向における全周に形成されている。これにより、耐偏摩耗性の向上を図ることができる。しかしながら、横溝が周方向細溝に接続されている場合、その交点に歪みが発生し、この部分にクラックが発生する虞がある。耐偏摩耗性の向上には、周方向細溝に横溝を接続するのが好ましいが、このように、横溝を周方向細溝に接続した場合には、その接続部分にクラックが発生する虞があり、周方向細溝と横溝との交点でのクラックを抑制と、偏摩耗の抑制とを両立することは、困難なものとなっていた。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、耐偏摩耗性を維持しつつ耐クラック性の向上を図ることのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係る空気入りタイヤは、トレッド部の表面であるトレッド面にタイヤ幅方向に延びる横溝を複数有すると共に前記横溝によって区画される複数の陸部を有する空気入りタイヤにおいて、前記トレッド面のタイヤ幅方向両端に形成されたショルダー部よりもタイヤ径方向内方に位置する非接地領域には、タイヤ周方向に延びると共に前記横溝が接続された周方向細溝と、前記周方向細溝によって区画されると共に前記周方向細溝のタイヤ幅方向外側に位置する非接地リブと、が形成されており、前記周方向細溝は、少なくとも前記横溝の溝壁である横溝溝壁がタイヤ周方向において設けられている位置における溝幅が、前記陸部に隣接する部分における溝幅よりも広くなって形成される幅広部を有しており、前記幅広部は、タイヤ周方向における幅が、前記周方向細溝に接続される前記横溝の溝幅よりも広くなっていると共に、前記横溝溝壁がタイヤ周方向において設けられている位置から前記幅広部のタイヤ周方向における端部までの距離が、前記横溝溝壁を有する前記横溝の溝幅の10〜50%の範囲内となっており、且つ、前記周方向細溝における1つの前記横溝が接続されている部分に2つ設けられていることを特徴とする。
この発明では、非接地領域に周方向細溝を設けることにより、トレッド面のショルダー部付近に荷重が作用した場合に、周方向細溝が変形して荷重を分散させることができる。これにより、トレッド面に、部分的に大きな荷重が作用することを抑制することができ、この部分のみが大きく摩耗することを抑制することができる。また、周方向細溝において横溝が接続されている部分には幅広部が形成されており、幅広部は、少なくとも横溝溝壁がタイヤ周方向において設けられている位置における溝幅が、当該周方向細溝において陸部に隣接する部分における溝幅よりも広くなっている。これにより、トレッド面のショルダー部付近に荷重が作用した場合に、周方向細溝と横溝との交点における歪みを低減することができ、クラックの発生を抑制することができる。これらの結果、耐偏摩耗性を維持しつつ耐クラック性の向上を図ることができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記周方向細溝は、前記幅広部の溝幅の最大幅が、前記陸部に隣接する部分における溝幅の1.2〜3倍の範囲内となっていることを特徴とする。
この発明では、周方向細溝の幅広部の最大幅を上記の範囲内にすることにより、偏摩耗を抑制しつつ、周方向細溝と横溝との交点における歪みを低減することができる。つまり、幅広部の溝幅の最大幅が、横溝の溝幅の1.2倍未満の場合には、幅広部の溝幅が狭過ぎるため、トレッド面のショルダー部付近に荷重が作用した際に、周方向細溝と横溝との交点における歪みを、十分に低減することができない虞がある。また、幅広部の溝幅の最大幅が、横溝の溝幅の3倍よりも大きい場合には、幅広部の溝幅が広過ぎるため、トレッド面のショルダー部付近に荷重が作用した際に陸部が変形し過ぎて、この部分のトレッド面の摩耗が多くなる虞がある。このため、偏摩耗を十分に抑制することができない虞がある。従って、周方向細溝が有する幅広部の溝幅の最大幅が、陸部に隣接する部分における溝幅の1.2〜3倍の範囲内となるように形成することにより、偏摩耗を抑制しつつ、周方向細溝と横溝との交点における歪みを低減することができる。この結果、より確実に耐偏摩耗性を維持しつつ耐クラック性の向上を図ることができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記幅広部の溝幅は、前記周方向細溝の溝壁のうち前記非接地リブ側の溝壁である非接地リブ側溝壁の、前記周方向細溝の溝深さ方向における両端部のうち、前記周方向細溝の開口部側に位置する端部の位置における溝幅よりも、前記周方向細溝の溝底側に位置する端部の位置における溝幅の方が広くなっていることを特徴とする。
この発明では、幅広部の溝幅を、非接地リブ側溝壁における周方向細溝の開口部側に位置する端部の位置での溝幅よりも、非接地リブ側溝壁における周方向細溝の溝底側に位置する端部の位置での溝幅の方が広くなるようにしているので、より確実に周方向細溝と横溝との交点における歪みを低減することができる。この結果、より確実に耐クラック性の向上を図ることができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記幅広部は、前記横溝溝壁がタイヤ周方向において設けられている位置から前記幅広部のタイヤ周方向における端部までの距離が、前記横溝溝壁を有する前記横溝の溝幅の10〜50%の範囲内となっていることを特徴とする。
この発明では、タイヤ周方向における幅広部の幅を上記の範囲内にすることにより、偏摩耗を抑制しつつ、周方向細溝と横溝との交点における歪みを低減することができる。つまり、横溝溝壁がタイヤ周方向において設けられている位置から幅広部のタイヤ周方向における端部までの距離が、横溝の溝幅の10%未満である場合には、タイヤ周方向における幅広部の幅が狭過ぎるため、トレッド面のショルダー部付近に荷重が作用した際に、周方向細溝と横溝との交点における歪みを、十分に低減することができない虞がある。また、横溝溝壁がタイヤ周方向において設けられている位置から幅広部のタイヤ周方向における端部までの距離が、横溝の溝幅の50%を超える場合には、タイヤ周方向における幅広部の幅が広過ぎるため、トレッド面のショルダー部付近に荷重が作用した際に陸部が変形し過ぎる虞がある。このため、この部分のトレッド面の摩耗が多くなり、偏摩耗を十分に抑制することができない虞がある。従って、横溝溝壁がタイヤ周方向において設けられている位置から幅広部のタイヤ周方向における端部までの距離が、横溝の溝幅の10〜50%の範囲内になるように周方向細溝を形成することにより、偏摩耗を抑制しつつ、周方向細溝と横溝との交点における歪みを低減することができる。この結果、より確実に耐偏摩耗性を維持しつつ耐クラック性の向上を図ることができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記トレッド面には、タイヤ周方向に延びる縦溝が複数形成されており、前記非接地領域に形成され、且つ、前記トレッド面から前記周方向細溝までの間に位置する非接地面は、前記トレッド面のプロファイルラインの法線方向に対する角度αが20°〜60°の範囲内となって形成されており、前記周方向細溝の溝壁のうち前記陸部側の溝壁である陸部側溝壁は、前記プロファイルラインの法線方向に対する角度βが10°〜50°の範囲内となって形成されており、前記プロファイルラインから前記周方向細溝の溝底までの距離をhとし、前記縦溝の溝深さをdとし、前記プロファイルラインから前記非接地リブのタイヤ径方向外方の端部である非接地リブ外端までの距離をgとした場合に、h/d=0.5〜1.2の範囲内で、且つ、g/h=0.5〜0.8の範囲内となっていることを特徴とする。
この発明では、非接地領域の各部の形状を上記の範囲内になるように形成しているので、ショルダー部付近の剛性を向上させることができると共に、トレッド面のショルダー部付近に荷重が作用して際のピーク接地圧を低下させることができる。これにより、より確実にショルダー部付近の摩耗の低減を図ることができる。この結果、より確実に耐偏摩耗性の向上を図ることができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、さらに、少なくとも前記横溝の溝底と前記周方向細溝の溝底との交点は、前記トレッド部を形成するトレッドゴムとは異なる耐クラック性ゴムにより形成されており、前記耐クラック性ゴムは、前記周方向細溝の溝底における厚さが0.5〜5.0mmの範囲内となっていることを特徴とする。
この発明では、横溝の溝底と周方向細溝の溝底との交点を耐クラック性ゴムにより形成しており、さらに、当該耐クラック性ゴムは、周方向細溝の溝底における厚さが、0.5〜5.0mmの範囲内となっているので、偏摩耗の抑制とクラックの抑制とを両立することができる。つまり、耐クラック性ゴムの厚さが0.5mm未満の場合には、耐クラック性ゴムの厚さが薄過ぎるため、横溝の溝底と周方向細溝の溝底との交点での歪みを緩和することが困難になる。また、耐クラック性ゴムの厚さが5.0mmを超える場合には、横溝の溝底と周方向細溝の溝底との交点での剛性が高くなり過ぎ、周方向細溝が変形し難くなるので、トレッド面のショルダー部付近での偏摩耗を誘発する虞がある。これらにより、周方向細溝の溝底における厚さが0.5〜5.0mmの範囲内になる耐クラック性ゴムで横溝の溝底と周方向細溝の溝底との交点を形成することにより、これらの交点における歪みを緩和すると共に、ショルダー部付近での偏摩耗を抑制することができる。この結果、耐偏摩耗性を維持しつつ耐クラック性の向上を図ることができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記耐クラック性ゴムは、破断強度が前記トレッドゴムの破断強度よりも低くなっており、且つ、破断伸びが前記トレッドゴムの破断伸びよりも大きくなっていることを特徴とする。
この発明では、耐クラック性ゴムの破断強度がトレッドゴムの破断強度よりも低くなっているので、破断強度が高過ぎることに起因して破断伸びが低下し、耐クラック性ゴムにクラックが発生し易くなることを抑制することができる。また、耐クラック性ゴムの破断伸びがトレッドゴムの破断伸びよりも大きくなっているので、当該耐クラック性ゴムが設けられている横溝の溝底と周方向細溝の溝底との交点が大きく歪んだ場合でも、クラックが発生することを抑制することができる。この結果、より確実に耐クラック性の向上を図ることができる。
本発明に係る空気入りタイヤは、耐偏摩耗性を維持しつつ耐クラック性の向上を図ることができる、という効果を奏する。
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。また、空気入りタイヤのトレッドパターンは、ブロックパターンやリブラグパターン等があるが、以下の説明は、本発明に係る空気入りタイヤの一例として、トレッドパターンがブロックパターンで形成される空気入りタイヤについて説明する。
(実施の形態)
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内方とはタイヤ幅方向において赤道面に向かう方向、タイヤ幅方向外方とは、タイヤ幅方向において赤道面に向かう方向の反対方向をいう。また、タイヤ径方向とは、前記回転軸と直交する方向をいい、タイヤ周方向とは、前記回転軸を回転の中心となる軸として回転する方向をいう。図1は、この発明の実施の形態に係る空気入りタイヤの要部を示す子午断面図である。同図に示す空気入りタイヤ1は、子午面方向の断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側にトレッド部10が形成されており、このトレッド部10の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)が走行した場合に、路面と接触する部分はトレッド面11となっている。また、トレッド部10のタイヤ径方向内方側には、複数のベルト層8が設けられている。さらに、トレッド部10のタイヤ幅方向における端部からタイヤ径方向内方側の所定の位置までは、サイドウォール部5が設けられている。また、ベルト層8のタイヤ径方向内方、及びサイドウォール部5の赤道面50側には、カーカス6が連続して設けられており、このカーカス6の内側、或いは、当該カーカス6の、空気入りタイヤ1における内部側には、インナーライナ7がカーカス6に沿って形成されている。
また、トレッド面11には、トレッドパターンを形成する溝部20が複数設けられている。この溝部20は、タイヤ周方向に延びる縦溝である主溝21と、タイヤ幅方向に延びる横溝であるラグ溝22とによって形成されており、これらの主溝21及びラグ溝22は、それぞれ複数形成されている。また、トレッド部10には、この複数の主溝21と複数のラグ溝22とによって区画された陸部であるブロック部13が複数形成されている。なお、これらの主溝21及びラグ溝22は、正確にタイヤ周方向、或いはタイヤ幅方向に延びてなくてもよい。主溝21は概ねタイヤ周方向に形成されていればよく、タイヤ幅方向に斜めに形成されている場合や、曲線、またはジグザグ状などの形状で形成されていてもよい。同様に、ラグ溝22は概ねタイヤ幅方向に形成されていればよく、タイヤ周方向に斜めに形成されている場合や、曲線、またはジグザグ状などの形状で形成されていてもよい。
また、前記ショルダー部12よりもタイヤ径方向内方には非接地領域30が位置している。即ち、トレッド部10のタイヤ幅方向における両側面は、非接地領域30となっている。また、この非接地領域30には、タイヤ周方向に延びる細溝である周方向細溝31が形成されている。この周方向細溝31は、タイヤ径方向内方に向かうに従って赤道面50に向かう方向に傾斜して形成されている。非接地領域30には、このように周方向細溝31が形成されており、非接地領域30において周方向細溝31によって区画され、周方向細溝31よりもタイヤ幅方向外方に位置する部分は非接地リブ40となっている。
図2は、図1のA部詳細図である。また、非接地領域30に形成される周方向細溝31には、複数のラグ溝22のうち、ショルダー部12付近に形成されるラグ溝22が接続されており、周方向細溝31の溝底32とラグ溝22の溝底23とは接続され、交点48を有している。なお、ここでいうラグ溝22の溝底23と周方向細溝31の溝底32との交点48とは、ラグ溝22の溝底23と周方向細溝31の溝底32とが接続されている部分において、ラグ溝22の溝壁、即ち横溝溝壁であるラグ溝溝壁24と、周方向細溝31の溝壁33のうち、ブロック部13側に位置する溝壁、即ち陸部側溝壁であるブロック部側溝壁35とが接続される部分をいう。
また、非接地領域30において、ショルダー部12からタイヤ径方向内方にかけての所定の範囲には、非接地面45が形成されている。この非接地面45は、ショルダー部12からタイヤ径方向内方に向かうに従って、タイヤ幅方向外方に向かう方向に傾斜した平面となっている。周方向細溝31は、この非接地面45よりもタイヤ径方向内方に位置している。
また、周方向細溝31の溝壁33のうち、非接地リブ40側に位置する溝壁33は非接地リブ側溝壁36となっており、この非接地リブ側溝壁36とブロック部側溝壁35とは、ほぼ平行に形成されている。さらに、この非接地リブ側溝壁36とブロック部側溝壁35とは、子午面断面形状においてほぼタイヤ径方向内方に凸となる円弧の形状で形成される溝底32によって、タイヤ径方向内方側に位置する非接地リブ側溝壁36及びブロック部側溝壁35の端部同士が接続されている。また、ブロック部側溝壁35は、非接地面45のタイヤ径方向内方側の端部に接続されている。また、この非接地面45とブロック部側溝壁35との接続部分は、非接地リブ40のタイヤ径方向外方側の端部である非接地リブ外端41よりもタイヤ径方向外方に位置している。
これらのように、非接地領域30に形成される非接地面45及び周方向細溝31のうち、非接地面45は、トレッド面11のプロファイルライン15の法線方向に対する角度αが20°〜60°の範囲内となって形成されている。また、周方向細溝31のブロック部側溝壁35は、プロファイルライン15の法線方向に対する角度βが10°〜50°の範囲内となって形成されている。また、周方向細溝31、及び非接地リブ40は、プロファイルライン15から周方向細溝31の溝底32までの距離をhとし、トレッド面11に形成される主溝21の溝深さをdとし、プロファイルライン15から非接地リブ外端41までの距離をgとした場合に、h/d=0.5〜1.2の範囲内で、且つ、g/h=0.5〜0.8の範囲内となるように形成されている。
図3は、図2のB−B矢視図である。図4は、図1に示す空気入りタイヤの要部斜視図である。また、周方向細溝31にはラグ溝22が接続されているが、周方向細溝31は、当該周方向細溝31においてラグ溝22が接続されている部分に幅広部38を有している。この幅広部38は、溝幅が、周方向細溝31のうちブロック部13に隣接する部分における溝幅よりも広くなっている。具体的には、幅広部38は、非接地リブ側溝壁36が、周方向細溝31のうちブロック部13に隣接する部分の非接地リブ側溝壁36よりもタイヤ幅方向外方に位置している。このように幅広部38は、周方向細溝31のうちブロック部13に隣接する部分よりも溝幅が広くなっているため、周方向細溝31の溝底32の子午面断面における形状である円弧(図2参照)は、ブロック部13に隣接する部分の溝底32の形状である円弧の半径よりも、幅広部38の溝底32の形状である円弧の半径の方が大きくなっている。
また、この幅広部38は、タイヤ周方向における幅が、周方向細溝31に接続されるラグ溝22の溝幅よりも広くなっている。つまり、幅広部38のタイヤ周方向における端部39は、ラグ溝22のラグ溝溝壁24がタイヤ周方向において設けられている位置よりも、ラグ溝22の溝幅方向における外側方向に位置している。また、この周方向細溝31は、幅広部38の溝幅の最大幅Mが、ブロック部13に隣接する部分における溝幅Nの1.2〜3倍の範囲内となるように形成されている。さらに、幅広部38は、ラグ溝溝壁24がタイヤ周方向において設けられている位置から端部39までのタイヤ周方向における距離Gが、ラグ溝溝壁24を有する前記ラグ溝22の溝幅Hの10〜50%の範囲内となるように形成されている。
この空気入りタイヤ1を車両に装着して走行すると、トレッド面11のうち下方に位置するトレッド面11が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。車両走行時には、このようにトレッド面11が路面に接触するため、トレッド面11には車両の重量などによる荷重が作用する。このトレッド面11に作用する荷重は、車両の走行状態によって変化し、直進走行時には、荷重はトレッド面11における赤道面50付近を中心として作用し易く、コーナリング時やレーンチェンジ時などには、ショルダー部12付近に大きな荷重が作用し易くなる。特に、コーナリング時などには、車両幅方向の両側に位置する空気入りタイヤ1のうち、コーナリングの径方向における外側方向に位置する空気入りタイヤ1に荷重が作用し易く、さらに、この空気入りタイヤ1のショルダー部12付近に荷重が作用し易くなっている。このため、コーナリング時におけるショルダー部12付近には、大きな荷重が作用し易くなっている。
このように、ショルダー部12付近には大きな荷重が作用し易くなっているが、ショルダー部12のタイヤ径方向内方には、周方向細溝31が形成されている。このため、ショルダー部12に荷重が作用した場合には、ショルダー部12付近のトレッド部10は変形し易くなっている。つまり、ショルダー部12付近に大きな荷重が作用した場合には、ショルダー部12付近にはタイヤ径方向内方への力が作用するが、周方向細溝31はショルダー部12に対してこの力が作用する方向に位置しているため、ショルダー部12に荷重が作用することにより、周方向細溝31は溝幅が狭くなる方向に変形する。これにより、ショルダー部12付近のトレッド面11に作用する荷重は分散され、局部的に大きな荷重が作用し難くなる。これにより、車両走行時にショルダー部12付近のトレッド面11に大きな荷重が作用することに起因してショルダー部12付近のみが大きく摩耗する偏摩耗を抑制することができる。
また、ショルダー部12付近に荷重が作用した場合には、周方向細溝31の溝幅が変形し易くなっているが、同様に、ラグ溝22のうちショルダー部12の近傍に位置し、周方向細溝31に接続される部分付近のラグ溝22の溝幅も変化し易くなっている。このため、周方向細溝31とラグ溝22との交点48付近は、歪みが大きくなり易くなっているが、この部分には、幅広部38が形成されている。幅広部38は、周方向細溝31のうちブロック部13に隣接する部分における溝幅よりも溝幅が広くなっており、溝底32の形状である円弧の半径も、ブロック部13に隣接する部分の溝底32の形状である円弧の半径よりも大きくなっている。このため、ショルダー部12付近に荷重が作用してラグ溝22の溝幅が変化した場合でも、周方向細溝31とラグ溝22との交点48付近における周方向細溝31に幅広部が形成されていることにより、この交点48付近の歪みを低減することができる。これにより、ショルダー部12付近に荷重が作用することに起因して発生する周方向細溝31とラグ溝22との交点48付近のクラックの発生を抑制することができる。これらの結果、耐偏摩耗性を維持しつつ耐クラック性の向上を図ることができる。
また、周方向細溝31が有する幅広部38の溝幅の最大幅Mを、ブロック部13に隣接する部分における溝幅Nの1.2〜3倍の範囲内となるように形成することにより、偏摩耗を抑制しつつ、周方向細溝31とラグ溝22との交点48における歪みを低減することができる。つまり、幅広部38の溝幅の最大幅Mを、ラグ溝22の溝幅Nの1.2倍以上にすることにより、幅広部38の溝幅を確保することができるので、トレッド面11のショルダー部12付近に荷重が作用した際に、周方向細溝31とラグ溝22との交点48における歪みを、より確実に低減することができる。また、幅広部38の溝幅の最大幅Mを、ラグ溝22の溝幅Nの3倍以下にすることにより、幅広部38の溝幅が広くなり過ぎることを抑制でき、トレッド面11のショルダー部12付近に荷重が作用した際にブロック部13が変形し過ぎて、この部分のトレッド面11が摩耗し過ぎることを抑制できる。これにより、より確実に偏摩耗を抑制することができる。従って、周方向細溝31が有する幅広部38の溝幅の最大幅Mが、ブロック部13に隣接する部分における溝幅Nの1.2〜3倍の範囲内となるように形成することにより、偏摩耗を抑制しつつ、周方向細溝31とラグ溝22との交点48における歪みを低減することができる。この結果、より確実に耐偏摩耗性を維持しつつ耐クラック性の向上を図ることができる。
また、ラグ溝溝壁24がタイヤ周方向において設けられている位置から幅広部38のタイヤ周方向における端部39までの距離Gが、ラグ溝22の溝幅Hの10〜50%の範囲内になるように周方向細溝31を形成することにより、偏摩耗を抑制しつつ、周方向細溝31とラグ溝22との交点48における歪みを低減することができる。つまり、ラグ溝溝壁24がタイヤ周方向において設けられている位置から幅広部38のタイヤ周方向における端部39までの距離Gを、ラグ溝22の溝幅Hの10%以上にすることにより、タイヤ周方向における幅広部38の幅を確保することができるので、トレッド面11のショルダー部12付近に荷重が作用した際に、周方向細溝31とラグ溝22との交点48における歪みを、より確実に低減することができる。また、ラグ溝溝壁24がタイヤ周方向において設けられている位置から幅広部38のタイヤ周方向における端部39までの距離Gを、ラグ溝22の溝幅Hの50%以下にすることにより、タイヤ周方向における幅広部38の幅が広くなり過ぎることを抑制でき、トレッド面11のショルダー部12付近に荷重が作用した際にブロック部13が変形し過ぎて、この部分のトレッド面11が摩耗し過ぎることを抑制できる。これにより、より確実に偏摩耗を抑制することができる。従って、ラグ溝溝壁24がタイヤ周方向において設けられている位置から幅広部38のタイヤ周方向における端部39までの距離Gが、ラグ溝22の溝幅Hの10〜50%の範囲内になるように周方向細溝31を形成することにより、偏摩耗を抑制しつつ、周方向細溝31とラグ溝22との交点48における歪みを低減することができる。この結果、より確実に耐偏摩耗性を維持しつつ耐クラック性の向上を図ることができる。
また、非接地領域30の各部の形状を、トレッド面11のプロファイルライン15の法線方向に対する非接地面45の角度αが20°〜60°の範囲内となるように形成し、プロファイルライン15の法線方向に対する周方向細溝31のブロック部側溝壁35の角度βが10°〜50°の範囲内となるように形成し、さらに、プロファイルライン15から周方向細溝31の溝底32までの距離をh、主溝21の溝深さをd、プロファイルライン15から非接地リブ外端41までの距離をgとした場合に、h/d=0.5〜1.2の範囲内で、且つ、g/h=0.5〜0.8の範囲内となるように形成することにより、ショルダー部12付近の剛性を向上させることができると共に、トレッド面11のショルダー部12付近に荷重が作用した際のピーク接地圧を低下させることができる。これにより、より確実にショルダー部12付近の摩耗の低減を図ることができる。この結果、より確実に耐偏摩耗性の向上を図ることができる。
(変形例)
図5は、実施の形態に係る空気入りタイヤの変形例を示す要部詳細図である。なお、上述した幅広部38は、周方向細溝31において1つのラグ溝22が接続されている部分に1つの幅広部38が設けられているが、幅広部38は、周方向細溝31において1つのラグ溝22が接続されている部分に2つ以上設けられていてもよい。例えば、図5に示すように、1つのラグ溝22が周方向細溝31に接続されている部分付近に、幅広部38を2つ設けてもよい。この2つの幅広部38は、ラグ溝22が有する2つのラグ溝溝壁24のタイヤ周方向における位置が含まれるように形成されている。このように形成される2つの幅広部38は、それぞれ幅広部38の溝幅の最大幅Mが、周方向細溝31の溝幅のうちブロック部13に隣接する部分における溝幅Nの1.2〜3倍の範囲内となるように形成されている。また、2つの幅広部38は、ラグ溝溝壁24がタイヤ周方向において設けられている位置から端部39までのタイヤ周方向における距離Gが、ラグ溝22の溝幅Hの10〜50%の範囲内となるように形成されている。
つまり、周方向細溝31は、少なくともラグ溝溝壁24がタイヤ周方向において設けられている位置における溝幅が、ブロック部13に隣接する部分における溝幅よりも広くなっている部分である幅広部38を有していればよい。これにより、トレッド面11のショルダー部12付近に荷重が作用した場合における、周方向細溝31とラグ溝22との交点48付近の歪みを低減することができ、ショルダー部12付近に荷重が作用した場合おける交点48付近のクラックの発生を抑制することができる。また、周方向細溝31を設けることにより、ショルダー部12付近に荷重が作用した場合における偏摩耗を抑制することができる。この結果、耐偏摩耗性を維持しつつ耐クラック性の向上を図ることができる。
図6は、実施の形態に係る空気入りタイヤの変形例を示す要部詳細図である。また、上述した幅広部38は、非接地リブ側溝壁36とブロック部側溝壁35とがほぼ平行に形成されており、幅広部38では非接地リブ側溝壁36をタイヤ幅方向外方にずらすことにより溝幅を広くしているが、非接地リブ側溝壁36とブロック部側溝壁35とは平行に形成されていなくてもよい。例えば、図6に示すように、非接地リブ側溝壁36とブロック部側溝壁35とは、周方向細溝31の溝深さ方向において開口部60における位置よりも、溝底32寄りにおける位置の方が互いに離れるように形成されていてもよい。つまり、幅広部38の溝幅は、非接地リブ側溝壁36の、周方向細溝31の溝深さ方向における両端部のうち、周方向細溝31の開口部60側に位置する端部61の位置における溝幅よりも、周方向細溝31の溝底32側に位置する端部62の位置における溝幅の方が広くなっていてもよい。これにより、ショルダー部12付近に荷重が作用した場合に、より確実に周方向細溝31とラグ溝22との交点における歪みを低減することができる。この結果、より確実に耐クラック性の向上を図ることができる。つまり、周方向細溝31は、少なくとも幅広部38の溝底32付近の溝幅が、ブロック部13に隣接する部分における溝幅よりも広くなっていればよく、周方向細溝31にこのような幅広部38を形成することにより、周方向細溝31とラグ溝22との交点における歪みを低減することができ、より確実に耐クラック性の向上を図ることができる。
図7は、実施の形態に係る空気入りタイヤの変形例を示す要部詳細図である。また、上述した非接地領域30は、トレッド部10のタイヤ幅方向の両側面に設けられており、これにより非接地領域30は、トレッド部10と同一の材料によって形成されているが、非接地領域30は、トレッド部10とは異なる材料により形成されていてもよい。例えば、図7に示すように、非接地領域30の大部分を、トレッド部10を形成するゴム材料であるトレッドゴム65とは異なるゴム材料である耐クラック性ゴム66によって覆ってもよい。同様に、ラグ溝22において周方向細溝31に接続される部分付近も耐クラック性ゴム66によって覆ってもよい。つまり、これらの部分は、表面を耐クラック性ゴム66によって形成してもよい。これにより、周方向細溝31は耐クラック性ゴム66により形成され、ラグ溝22の溝底23と周方向細溝31の溝底32との交点48も同様に、耐クラック性ゴム66により形成される。なお、この耐クラック性ゴム66は、周方向細溝31の溝底32における厚さが、0.5〜5.0mmの範囲内となっている。
このように形成される耐クラック性ゴム66は、破断強度がトレッドゴム65の破断強度よりも低くなっており、且つ、破断伸びがトレッドゴム65の破断伸びよりも大きくなっている。耐クラック性ゴム66のこれらの破断強度及び破断伸びは、初期状態において、JIS K6251の「加硫ゴム引張試験方法」に準拠して測定された破断強度が17.0MPa以上で、且つ、同試験方法に準拠して測定された破断伸びが570%以上であるのが好ましい。また、耐クラック性ゴム66は、これらの破断強度や破断伸びが低下し難くなっているのが好ましく、具体的には、耐クラック性ゴム66は、100℃の雰囲気にて72時間放置した後における破断強度が15.0MPa以上で、且つ、破断伸びが500%以上であるのが好ましい。
また、この耐クラック性ゴム66の配合は、当該耐クラック性ゴム66が有するゴムのポリマー100重量部のうち、天然ゴムが20〜60重量部の範囲内で含まれていると共に、ブタジエンゴムが40〜80重量部の範囲内で含まれており、且つ、窒素吸着比表面積が30〜100m2/gであるカーボンブラックが、前記ゴムのポリマー100重量部に対して30〜60重量部の範囲内で含まれているのが好ましい。なお、耐クラック性ゴム66が有するゴムのポリマー100重量部に対してブタジエンゴム以外に含まれるゴムは、天然ゴム以外でもよく、ポリイソプレンゴムが20〜60重量部の範囲内で含まれていてもよい。若しくは、天然ゴムとポリイソプレンゴムとを合わせたものが20〜60重量部の範囲内で含まれていてもよい。また、耐クラック性ゴム66に含まれるカーボンブラックは、カーボングレードがSRFグレード以上、HAFグレード以下になっている。
このように耐クラック性ゴム66を設けることにより、ラグ溝22の溝底23と周方向細溝31の溝底32との交点48を耐クラック性ゴム66により形成しており、さらに、当該耐クラック性ゴム66は、周方向細溝31の溝底32における厚さが、0.5〜5.0mmの範囲内となっているので、溝底23、32同士の交点48における歪みを緩和すると共に、ショルダー部12付近での偏摩耗を抑制することができる。
つまり、耐クラック性ゴム66の厚さを0.5mm以上にすることにより、耐クラック性ゴム66の厚さを確保することができるので、ラグ溝22の溝底23と周方向細溝31の溝底32との交点48での歪みを、耐クラック性ゴム66によって緩和することができる。また、耐クラック性ゴム66の厚さを5.0mm以下にすることにより、ラグ溝22の溝底23と周方向細溝31の溝底32との交点48での剛性が高くなり過ぎることを抑制できるので、ショルダー部12付近に荷重が作用した場合に、周方向細溝31を適度に変形させることができる。これにより、周方向細溝31の表面を耐クラック性ゴム66で形成した場合でも、トレッド面11のショルダー部12付近のみが早期に摩耗する偏摩耗を抑制することができる。従って、周方向細溝31の溝底32における厚さが0.5〜5.0mmの範囲内になる耐クラック性ゴム66でラグ溝22の溝底23と周方向細溝31の溝底32との交点48を形成することにより、これらの交点48における歪みを緩和すると共に、ショルダー部12付近での偏摩耗を抑制することができる。これらの結果、より確実に耐偏摩耗性を維持しつつ耐クラック性の向上を図ることができる。
また、耐クラック性ゴム66は、破断強度が高過ぎる場合には、破断伸びが低下する虞があり、破断伸び低下した場合にはクラックが発生し易くなるが、前記耐クラック性ゴム66は、破断強度がトレッドゴム65の破断強度よりも低くなっている。このため、破断強度が大き過ぎることに起因して破断伸びが低下し、耐クラック性ゴム66にクラックが発生し易くなることを抑制することができる。さらに、耐クラック性ゴム66は、破断伸びが小さい場合には、上記のようにクラックが発生し易くなるが、前記耐クラック性ゴム66は、トレッドゴム65の破断伸びよりも大きくなっている。これにより、当該耐クラック性ゴム66が設けられているラグ溝22の溝底23と周方向細溝31の溝底32との交点48が大きく歪んだ場合でも、クラックが発生することを抑制することができる。この結果、より確実に耐クラック性の向上を図ることができる。
また、耐クラック性ゴム66は、破断強度が17.0MPa以上で、且つ、破断伸びが570%以上となっているので、より確実に当該耐クラック性ゴム66の破損を抑制することができる。つまり、耐クラック性ゴム66の破断強度を17.0MPa以上にすることにより、せん断力等に対する許容応力を確保することができ、耐クラック性ゴム66に大きな荷重が作用した場合における欠損などの破損を抑制できる。また、耐クラック性ゴム66の破断伸びを570%以上にすることにより、破断時の伸びを大きくすることができるので、せん断力等の外力が作用した場合におけるクラックの発生を抑制できる。従って、耐クラック性ゴム66の破断強度が17.0MPa以上で、且つ、破断伸びが570%以上になるようにすることにより、より確実に耐クラック性ゴム66の破損を抑制できる。この結果、より確実に耐クラック性の向上を図ることができる。
また、耐クラック性ゴム66の配合を、ゴムのポリマー100重量部のうち、天然ゴムまたはポリイソプレンゴムのうちいずれか一方、またはこれらを合わせたものを20〜60重量部の範囲内で含ませると共にブタジエンゴムを40〜80重量部の範囲内で含ませ、且つ、窒素吸着比表面積が30〜100m2/gであるカーボンブラックを、ゴムのポリマー100重量部に対して30〜60重量部の範囲内で含ませることにより、より確実にクラックの発生を抑制できる。具体的には、ブタジエンゴムを含ませることにより、クラックが発生し難くなるので、ブタジエンゴムを40〜80重量部の範囲内にすることにより、より確実にクラックの発生を抑制することができる。また、カーボンブラックを30重量部以上にすることにより破断強度を確保することができる。また、カーボンブラックを60重量部以下にすることにより、破断伸びを所定の大きさ以上にすることができるので、より確実にクラックの発生を抑制することができる。従って、耐クラック性ゴム66の配合を上記の範囲内にすることにより、より確実にクラックの発生を抑制できる。この結果、より確実に耐クラック性の向上を図ることができる。
また、耐クラック性ゴム66の物性を、100℃の雰囲気で72時間放置した後における破断強度が15.0MPa以上で、且つ、破断伸びが500%以上となるようにした場合には、より確実に耐クラック性ゴム66の耐クラック性の低下を抑制することができる。つまり、耐クラック性ゴム66は、周方向細溝31などの表面を形成しているため、大気に露出している。このため、通常の使用時においては、耐クラック性ゴム66は紫外線やオゾン等にさらされることになるので、空気入りタイヤ1を長期間使用することにより、経年劣化する虞がある。そこで、耐クラック性ゴム66の物性を上記の範囲内にすることにより、長期間に渡り物性の変化の少ない耐クラック性ゴム66にすることができる。この結果、長期間に渡り耐偏摩耗性、及び耐クラック性を維持することができる。
以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来の空気入りタイヤ1と本発明の空気入りタイヤ1とについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、耐クラック性と、耐偏摩耗性の2項目について行なった。
試験方法は、245/70R19.5サイズの空気入りタイヤ1をJATMA規定リムに組み付け、この空気入りタイヤ1を車両総重量25tの8×4車に装着し、空気圧をJATMA規定空気圧に設定して実車走行をすることにより行なった。試験の評価方法は、耐クラック性については、30,000km走行後、周方向細溝31の溝底32とラグ溝22の溝底23との交点48付近に発生したクラックの発生率によって評価した。このクラックの発生率は、(クラック発生ラグ溝数/全ラグ溝数)×100によって算出した。この耐クラック性は、10%以下の場合、良好な性能を有しているものとする。
また、耐偏摩耗性については、30,000km走行後のショルダー部12に発生した偏摩耗の程度を、後述する従来例1の空気入りタイヤ1の偏摩耗を100とした指数で示した。指数が大きい程、耐偏摩耗性に優れている。また、この耐偏摩耗性は、従来例1よりも10%以内の低下であれば性能を維持しているものとし、許容範囲内とする。
試験を行なう空気入りタイヤ1は、本発明が8種類、そして、2種類の従来例を、上記の方法で試験する。なお、試験を行なうこれらの空気入りタイヤ1は、全て非接地領域30に周方向細溝31を有している。このうち、従来例1は、周方向細溝31の溝幅が一定になっており、周方向細溝31はタイヤ周方向に連続して形成されている。また、非接地領域30の各部の形状は、h/d=1、g/h=0.6、α=40、β=30(図2参照)となっている。また、従来例2は、周方向細溝31の溝幅が一定になっており、周方向細溝31はタイヤ周方向において分断されて形成されている。また、非接地領域30の各部の形状は、h/d=1、g/h=0.6、α=40、β=30となっている。
この従来例1、2に対し、本発明1〜8は、周方向細溝31は、ラグ溝22が接続されている部分に幅広部38が形成されており、この部分の溝幅が広くなっている。また、本発明1〜8では、周方向細溝31は、全てタイヤ周方向に連続して形成されている。このうち、本発明1は、非接地領域30の各部の形状は、h/d=0.5、g/h=0.6、α=40、β=30となっている。また、本発明2は、非接地領域30の各部の形状は、h/d=1.2、g/h=0.6、α=40、β=30となっている。また、本発明3は、非接地領域30の各部の形状は、h/d=1.0、g/h=0.5、α=40、β=30となっている。また、本発明4は、非接地領域30の各部の形状は、h/d=1.0、g/h=0.8、α=40、β=30となっている。また、本発明5は、非接地領域30の各部の形状は、h/d=1.0、g/h=0.6、α=20、β=30となっている。また、本発明6は、非接地領域30の各部の形状は、h/d=1.0、g/h=0.6、α=60、β=30となっている。また、本発明7は、非接地領域30の各部の形状は、h/d=1.0、g/h=0.6、α=40、β=10となっている。また、本発明8は、非接地領域30の各部の形状は、h/d=1.0、g/h=0.6、α=40、β=50となっている。
これらの従来例1及び従来例2、本発明1〜8の空気入りタイヤ1を上記の方法で評価試験をし、得られた結果を表1−1及び表1−2に示す。これらの表1−1及び表1−2のうち、表1−1は、従来例1及び従来例2、本発明1〜3の試験結果を表示しており、表1−2は、本発明4〜8の試験結果を表示している。
Figure 0005194365
Figure 0005194365
表1−1及び表1−2に示した上記の試験結果で明らかなように、非接地領域30に周方向細溝31を設けた場合でも、周方向細溝31がタイヤ周方向において分断されている場合には、周方向細溝31がタイヤ周方向に連続して形成されている場合と比較して耐偏摩耗性が低下する(従来例2)。また、周方向細溝31の溝幅が一定の場合には、ショルダー部12付近に荷重が作用した場合、クラックの発生を抑制するのが困難になり、クラックが発生する虞がある(従来例2)。
これに対し、本発明1〜8では、非接地領域30に、タイヤ周方向に連続した周方向細溝31を設けることにより、耐偏摩耗性を確保することができる。また、周方向細溝31において、ラグ溝22が接続されている部分の溝幅を広くしているので、ショルダー部12に荷重が作用した場合における周方向細溝31とラグ溝22との交点48付近の歪みを低減することができるので、クラックの発生率を大幅に低減することができる。これらの結果、耐偏摩耗性を維持しつつ耐クラック性の向上を図ることができる。
なお、上記の説明では、空気入りタイヤ1の一例としてブロックパターンを有する空気入りタイヤ1を説明しているが、本発明を適用する空気入りタイヤ1はブロックパターン以外でもよく、例えば、トレッドパターンがリブラグパターンで形成された空気入りタイヤでもよい。非接地領域30に形成される周方向細溝31に接続されるラグ溝22を有しているものであれば、トレッドパターンは、ブロックパターン以外のパターンでもよい。
以上のように、本発明に係る空気入りタイヤは、非接地領域に周方向細溝が形成された空気入りタイヤに有用であり、特に、ラグ溝が周方向細溝に接続される空気入りタイヤに適している。
この発明の実施の形態に係る空気入りタイヤの要部を示す子午断面図である。 図1のA部詳細図である。 図2のB−B矢視図である。 図1に示す空気入りタイヤの要部斜視図である。 実施の形態に係る空気入りタイヤの変形例を示す要部詳細図である。 実施の形態に係る空気入りタイヤの変形例を示す要部詳細図である。 実施の形態に係る空気入りタイヤの変形例を示す要部詳細図である。
符号の説明
1 空気入りタイヤ
5 サイドウォール部
6 カーカス
7 インナーライナ
8 ベルト層
10 トレッド部
11 トレッド面
12 ショルダー部
13 ブロック部
15 プロファイルライン
20 溝部
21 主溝
22 ラグ溝
23 溝底
24 ラグ溝溝壁
30 非接地領域
31 周方向細溝
32 溝底
33 溝壁
35 ブロック部側溝壁
36 非接地リブ側溝壁
38 幅広部
39 端部
40 非接地リブ
41 非接地リブ外端
45 非接地面
48 交点
50 赤道面
60 開口部
61、62 端部
65 トレッドゴム
66 耐クラック性ゴム

Claims (6)

  1. トレッド部の表面であるトレッド面にタイヤ幅方向に延びる横溝を複数有すると共に前記横溝によって区画される複数の陸部を有する空気入りタイヤにおいて、
    前記トレッド面のタイヤ幅方向両端に形成されたショルダー部よりもタイヤ径方向内方に位置する非接地領域には、タイヤ周方向に延びると共に前記横溝が接続された周方向細溝と、前記周方向細溝によって区画されると共に前記周方向細溝のタイヤ幅方向外側に位置する非接地リブと、が形成されており、
    前記周方向細溝は、少なくとも前記横溝の溝壁である横溝溝壁がタイヤ周方向において設けられている位置における溝幅が、前記陸部に隣接する部分における溝幅よりも広くなって形成される幅広部を有しており、
    前記幅広部は、タイヤ周方向における幅が、前記周方向細溝に接続される前記横溝の溝幅よりも広くなっていると共に、前記横溝溝壁がタイヤ周方向において設けられている位置から前記幅広部のタイヤ周方向における端部までの距離が、前記横溝溝壁を有する前記横溝の溝幅の10〜50%の範囲内となっており、且つ、前記周方向細溝における1つの前記横溝が接続されている部分に2つ設けられていることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記周方向細溝は、前記幅広部の溝幅の最大幅が、前記陸部に隣接する部分における溝幅の1.2〜3倍の範囲内となっていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記幅広部の溝幅は、前記周方向細溝の溝壁のうち前記非接地リブ側の溝壁である非接地リブ側溝壁の、前記周方向細溝の溝深さ方向における両端部のうち、前記周方向細溝の開口部側に位置する端部の位置における溝幅よりも、前記周方向細溝の溝底側に位置する端部の位置における溝幅の方が広くなっていることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記トレッド面には、タイヤ周方向に延びる縦溝が複数形成されており、
    前記非接地領域に形成され、且つ、前記トレッド面から前記周方向細溝までの間に位置する非接地面は、前記トレッド面のプロファイルラインの法線方向に対する角度αが20°〜60°の範囲内となって形成されており、
    前記周方向細溝の溝壁のうち前記陸部側の溝壁である陸部側溝壁は、前記プロファイルラインの法線方向に対する角度βが10°〜50°の範囲内となって形成されており、
    前記プロファイルラインから前記周方向細溝の溝底までの距離をhとし、前記縦溝の溝深さをdとし、前記プロファイルラインから前記非接地リブのタイヤ径方向外方の端部である非接地リブ外端までの距離をgとした場合に、h/d=0.5〜1.2の範囲内で、且つ、g/h=0.5〜0.8の範囲内となっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  5. さらに、少なくとも前記横溝の溝底と前記周方向細溝の溝底との交点は、前記トレッド部を形成するトレッドゴムとは異なる耐クラック性ゴムにより形成されており、
    前記耐クラック性ゴムは、前記周方向細溝の溝底における厚さが0.5〜5.0mmの範囲内となっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記耐クラック性ゴムは、破断強度が前記トレッドゴムの破断強度よりも低くなっており、且つ、破断伸びが前記トレッドゴムの破断伸びよりも大きくなっていることを特徴とする請求項5に記載の空気入りタイヤ。
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