JP5192307B2 - ワイヤ放電加工機の加工経路作成装置 - Google Patents
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Description
なお、凹円弧コーナ部では、加工回数毎のオフセット量が異なっていても、加工経路は同心円状となるので、直線部に比べて加工量が増大するということはない。従って、上記のような問題は基本的には起こらない。
●特許文献1について;
仕上げ形状に対しオフセット量の距離にある経路を演算し、ワイヤの中心を前後経路で移動させるワイヤ放電加工方法において、加工条件ごとに適用する30度以上70度以下の角度範囲のコーナ角度とコーナ部の経路補正式とパラメータとを準備しておき、加工に先立ち、前記経路補正式と前記パラメータに基づいて前記コーナ部の移動方向手前側で一旦予め設定した第1の角度で加工側から離間し、前記コーナ部を超えた後、転回して前記コーナ部に続く加工部に予め設定した第2の角度で戻って加工する補正経路を演算し、コーナ部はワイヤの中心を前記経路に替えて前記補正経路で移動させるワイヤ放電加工技術である。
凹角コーナ部の加工について、円弧経路を追加するワイヤカット形状修正方法が提案されている。すなわち、このワイヤカット形状修正方法によれば、基本プログラムで指令される2つのブロックによる加工経路の交点が凹部加工の交点である場合に、該交点を中心に加工経路に対するワイヤ電極のオフセット値を半径とする円弧のワイヤ電極移動軌跡の加工経路が、上記交点部に追加される。
ワイヤ電極の放電ギャップの変化を伴う加工条件を変更可能なワイヤカット放電加工に対し、ワークを所望の形状に加工させるために加工条件を変更する位置を適切に設定することで対処することが提案されている。ブロックの継ぎ目ではオフセットが変更される場合に、加工経路が不連続となる部分に補正ブロックを挿入し、それに対応する加工条件の変更タイミングを適正に設定することが説明されている。オフセットによって凹角コーナ部で加工量が増大する問題に着目したものではなく、やはり本発明とは別種のものである。
この技術では、凹角コーナ部の仕上げ加工時に適正な箇所で送り速度を変更することで前述の問題を解決しようとしている。具体的には、仕上げ加工時に、所定の軌跡をオフセットしたオフセット軌跡における加工除去距離が直線を加工するときの加工除去距離よりも増加または減少し始めるワイヤ電極の位置を第1の変更点、ワイヤ電極が第1の変更点を通過し加工除去距離が変化しなくなるワイヤ電極の位置を第2の変更点、ワイヤ電極が第2の変更点を通過し加工除去距離が減少または増加に転じるワイヤ電極の位置を第3の変更点、ワイヤ電極が第3の変更点を通過し直線を加工するときの加工除去距離と同じになるワイヤ電極の位置を第4の変更点とそれぞれ定め、第1の変更点から第4の変更点間における所定単位距離毎の加工除去距離を計算して、計算された加工除去距離から適正送り速度を求め、第1の変更点と第4の変更点間において所定単位距離毎に適正送り速度に変更設定することが説明されている。
この技術では、着目している問題は本発明と共通しているものの、問題を加工速度を制御することで解決したもので、後述するように、本発明とは解決手段が異なっている。
加工プログラム上の経路が円弧状であるコーナ部の形状精度を改善するための技術が開示されている。荒加工に続いて仕上げ加工を行っていく段階で、加工形状内円弧部の半径が予め設定された基準半径以下の円弧部に対して、1回目の加工で上記円弧部をこの円弧部の前後の加工経路と接し、かつ所定の半径より小さい円弧に挿入してなる加工経路により加工し、その後の加工で挿入する円弧の半径を徐々に大きくして加工経路を変換しながら加工する手法が説明されている。
加工プログラム上の経路が円弧状であるコーナ部の形状精度を改善しようとするものである。凹円弧コーナ部において、各加工工程の加工経路が同一の半径を持つようにして、加工可能な最小半径を極力小さくしようとしている。そのために、オフセット値の異なる各加工工程のインコーナ部加工における円弧軌跡が同一半径となるよう各加工工程におけるインコーナ部の移動軌跡を計算し、その計算結果に基づき各加工工程のインコーナ部の移動軌跡を計算し、その計算結果に基づき各加工工程のインコーナ部半径が同一となるような軌跡移動を行うような制御が行われている。
本発明は、仕上時の多重加工において、凹角コーナ部(2つの移動ブロックが交わって形作られる凹コーナ部)の加工精度を向上させることを目指したものであり、多重加工における凹角コーナ部の加工特性に着目し、円弧形状の移動ブロック(以下、「円弧移動ブロック」という)の挿入を含む加工経路の変更の仕方を工夫することで問題解決を図るものである。なお、ここで、2つの移動ブロックが交わって形作られる凹コーナ部は、例えば、直線ブロックと直線ブロック、直線ブロックと円弧ブロック、円弧ブロックと円弧ブロックの、移動ブロックの組み合わせがある。
図2は、凹角コーナ部に多重加工を施す場合の一般的な加工経路のとり方を示している。本例で示されている凹角コーナ部は、加工プログラム上の加工経路LRTprの屈曲部で施す場合、第1回目、第2回目・・・と回を重ねる毎に、オフセット量を逓減させた加工経路による加工が実行される。
多重加工における各回の加工に際しては、加工プログラムと、ワイヤのその回について適用するオフセット量に基づいて定められた加工経路に従い、ワイヤを被加工物に対して相対移動させる制御が行われる。図4において、例示されている凹角コーナ部は直線ブロックが約30度の鋭角で交わって形成されているもので、n回目(n≧1)の加工においては、『n回目の加工経路RTn』に従って、ワイヤは移動し、『n回目のワイヤ位置(頂点部)WMn』で折り返し(凹角コーナ部を通過)、放電によって『n回目の被加工物端面Hn』が形成される。この間、ワイヤと被加工物端面との間には『n回目の放電ギャップGPn』が形成されている。
[経路補正なしの場合]
ワイヤは、凹角コーナ部に差し掛かる手前までは、その側面で放電しながら『n回目の被加工物端面Hn』を舐めるようにして移動し、『n+1回目の加工代(直線部)Kn+1』を除去しながら薄皮を剥くようにして進む。この間、放電ギャップGPn+1が保たれる。その結果、『n+1回目の被加工物端面Hn+1(直線部)』が形成される。そして、ワイヤが更に移動して凹角コーナ部の頂点部に差し掛かると、ワイヤは前述したオフセット量の影響で、コーナ部の奥深くへと進まなければならなくなる。このときの加工代は『n+1回目の加工代(頂点部:補正前)Fn+1』まで達することとなり、直線部と比較すると加工量が急激かつ大幅に増大する。
[経路補正あり(本発明適用)の場合]
経路補正なしの場合の上記考察から、凹角コーナ部の頂点部においても加工代が増大しないようにすればよいと考えられる。そこで、本発明では、凹角コーナ部の頂点部の直前から直後にかけての直線部分を、適当な半径(曲率半径)を持つ円弧経路で置き換え、連続的かつ滑らかに直線部分→円弧経路→直線部分と移行する経路に変更することで、凹角コーナ部の頂点部における加工代の増大を回避する。換言すれば、凹角コーナ部の頂点を含みその前後の直線経路部分(頂点で屈曲するL字形の経路部分)が削除され、該削除部分を埋めるように円弧形状の移動ブロックが挿入される。
(イ)曲率半径>差分;
この場合、曲率半径=差分の場合より更に凹角コーナ部での加工代が小さくなる。従って、曲率半径を過剰に大きくすると加工不足(凹角コーナ部の切り込み不足)の可能性が高まる。実際的な許容範囲としては、例えば、「曲率半径が1.2*差分を超えない範囲」が考えられる。なお、「*」は乗算を表す記号である。
(ロ)曲率半径<差分;
この場合、曲率半径=差分の場合に比べて凹角コーナ部の加工代が大きくなる。従って、曲率半径を過剰に小さくすると、「凹角コーナ部における加工代の縮小」という作用効果が薄れてしまう可能性がある。実際的な許容範囲としては、例えば「曲率半径が0.5*差分を下回らない範囲」が考えられる。なお、「*」は乗算を表す記号である。
このときの加工代は直線部と同じになるので、放電エネルギーが不足することはなく、加工精度の悪化の原因となる短絡を抑えることができるようになる。
一般に、ワイヤカット放電加工の加工プログラムに従って多重加工を実行する際には、ワイヤの移動が始まる前に、各回の加工で使用するオフセット量が加工プログラムに基づいて指令される。図6に示した例では、『D1』の指令コードによって、図7のメモリ構成を持つオフセット量記憶手段(図10参照)の『オフセットメモリ1』に格納されているオフセット量が呼び出されて使用される。
そこで、加工経路作成装置について図10を参照して説明する。
ここで、加工経路作成装置を構成する各手段を説明する。加工プログラム記憶手段1は不揮発性メモリで構成されている。加工プログラム記憶手段1は、加工に必要となる加工プログラムを格納する。加工プログラム解析手段2は、加工プログラム記憶手段1に記憶される加工プログラムから、作業者等によって指定された加工プログラムを解析して、加工経路に関するデータを抽出してこれらを加工経路作成手段3に渡すとともに、加工プログラム中のオフセット量の指令コードから必要となるオフセット量をオフセット量記憶手段4に指示する。
●ステップSS1;今回の加工回数が、基準加工回数kを上回っているか否かを判断する。上回っている場合はステップS1へ進み、そうでない場合はステップSS2へ進む。なお、今回の加工が何回目であるかは、フローチャートには省略しているが適宜に加工回数を指標(レジスタ値)で設定するなどして認識する。また、基準加工回数は、ここでは基準加工回数設定手段7に、パラメータで予め基準加工回数が設定されているものとする。補足すると、図10に示される加工経路作成装置において、加工プログラム解析手段2から基準加工回数設定手段7へ延びる破線矢印による設定ではなく、基準加工回数設定手段7に前述のようにパラメータで予め設定されているものとする。
●ステップSS2;通常処理により、k回目の加工経路を作成する。すなわち、k回目の加工経路のために移動ブロックを関連データ(k回目の加工におけるオフセット量δkのデータ等)とともに読込み、オフセット量δkだけシフトした移動経路を作成し、記憶する。このステップでは、たとえ凹角コーナ部があっても、円弧経路挿入(及び移動経路短縮)は行われない。移動ブロックにオフセット量を加味して移動経路を作成することは周知技術であるので、詳細説明は省略する。
●ステップS1;指標iを初期設定する(i=1)。
●ステップS2;i番目(すなわち、1番目)の移動ブロックを関連データ(k回目の加工におけるオフセット量δkのデータ等)とともに読み込み、解釈する。
●ステップS3;ステップS2の読込/解釈の結果に基づいて、必要な関連処理を行う。この処理には、オフセット量δkを決定し(オフセット量記憶手段4にアクセスして、指定されたオフセット量δkのデータを取り込む)、移動ブロックの加工経路の算出が含まれる。
●ステップS4;i+1番目(第1回目の処理サイクルでは、2番目)の移動ブロックを関連データとともに読み込み解釈する。
●ステップS5;i番目の移動ブロックとi+1番目の移動ブロックが角コーナ部を形成しているかどうか判断する。すなわち、両ブロックが「互いに非平行な移動ブロック」であればYESとし、そうでなけければNOとする。YESであればステップS6へ進み、NOであればステップS7へ進む。
●ステップS6;i番目の移動ブロックとi+1番目の移動ブロックが凹角コーナ部であるか否か判定する。判定方法は記述のとおりである。ここでは、i番目の移動ブロックを表すベクトル(向きは移動方向と一致)と、i+1番目の移動ブロックを表すベクトル(向きは移動方向と一致)との外積から、角コーナ部を左折で回るか、右折で回るかを判断し、オフセット量δkが指定する経路シフトの方向(左側か右側か)との関係をチェックする。
●ステップS7;ステップS3で算出したi番目の移動ブロックの加工経路を記憶する。
●ステップS8;指標iを1つアップする(i=i+1)。
●ステップS9;i+1番目の移動ブロックの有無をチェックする。i+1番目の移動ブロックが無ければステップS10へ進み、有ればステップS4へ戻る。なお、最初のステップS9においてはi=2であり、従って、3番目の移動ブロックの有無をチェックしていることになる。
●ステップS10;i番目の移動ブロックの加工経路を記憶する。なお、このステップで対象とする移動ブロックについても、ステップS15で始点の補正がなされている場合があり、その場合は、始点補正後の移動ブロックについての加工経路であり、その場合は、始点補正後の移動ブロックの加工経路を記憶する。
●ステップS11;ステップS6で凹角コーナ部と判定されたコーナ部について、円弧経路の移動ブロック挿入の要否をチェックする。この要否は、加工プログラムで指定されており、前述した例では、R指令が付された凹角コーナ部について、「要」となる。
●ステップS12;挿入される円弧経路の曲率半径を計算する。計算方法は前述したとおりである。すなわち、基準加工回数設定手段7に設定されている基準加工回数に対応するオフセット量と基準加工回数より後の加工回数(例えば、今回加工)に対応するオフセット量との差分を計算し、それに基づいて曲率半径を定める。例えば、差分=曲率半径とする。
●ステップS13;ステップS12の結果を用いて挿入される円弧経路の位置を決定する。例えば、ステップS12で計算された曲率半径を持ち、その凹角コーナ部を形成する2つの経路(オフセット量δkだけシフト補正済み)に接する円弧の位置(中心位置と2つの接点の位置)を計算する。
●ステップS14/S15;円弧経路の挿入に伴って削除されるL字形状の区間の両端の点の内、i番目の移動ブロックに対応する経路上のものが同経路の終点となるように、i番目の移動ブロックの終点を補正する。同様に、同L字形状の区間の両端の点の内、i+1番目の移動ブロックに対応する経路上のものが同経路の始点となるように、i+1番目の移動ブロックの始点を補正する。
●ステップS16;i番目の移動ブロックの加工経路を記憶する。なお、このステップで記憶する移動ブロックは、ステップS14を経ているので、同ステップで終点の補正がなされたものである。
●ステップS17;挿入された円弧経路を記憶する。次のステップは、ステップS8である。
●ステップS18;i番目の移動ブロックの加工経路を記憶する。なお、このステップで対象とする移動ブロックは、ステップS14を経ていないので、同ステップS14による終点の補正がなされたものではない。次のステップは、ステップS8である。
このようにして、加工経路を求め加工経路記憶手段8に記憶する。
2 加工プログラム解析手段
3 加工経路作成手段
4 オフセット量記憶手段
6 オフセット量差分演算手段
7 基準加工回数設定手段
8 加工経路記憶手段
Claims (3)
- ワイヤ放電加工機における多重加工時の加工経路を作成する加工経路作成装置であって、
加工プログラムを解析する加工プログラム解析手段と、
加工回数ごとのワイヤオフセット量を記憶するオフセット量記憶手段と、
前記加工プログラムによって特定される2つの移動ブロックが交わって作られる凹角コーナ部に挿入する円弧形状の移動ブロックの大きさと、前記円弧形状の移動ブロックの挿入を開始する加工回数を決めるための基準となる加工回数を基準加工回数として設定する基準加工回数設定手段と、
前記基準加工回数に対応するオフセット量と基準加工回数より後の加工回数に対応するオフセット量との差分を計算するオフセット量差分演算手段と、
前記オフセット量記憶手段に記憶されたオフセット量と前記加工プログラム解析手段の解析結果を受取り、前記凹角コーナ部に前記オフセット量差分演算手段の演算結果から大きさを決定した前記円弧形状の移動ブロックを挿入して加工経路を作成する加工経路作成手段、
とを有することを特徴とするワイヤ放電加工機の加工経路作成装置。 - 前記円弧形状の移動ブロックは前記オフセット量差分演算手段によって計算されたオフセット量の差分を半径とすることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ放電加工機の加工経路作成装置。
- 前記円弧形状の移動ブロックを前記2つの移動ブロックに接するように挿入して加工経路を作成することを特徴とする請求項1または2のいずれか1つに記載のワイヤ放電加工機の加工経路作成装置。
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