しかしながら、広帯域の光源を用いたり、複数の発振波長を持つ光源を使用したりすることでスペックルノイズを低減する方法に、上述した従来技術を用いると、複数のレーザ光源が必要となるため、コストが高くなったり、装置寸法が大型化する等の問題があった。また、サンプルドグレーティングを用いた半導体レーザ及びファイバレーザ光源においても、レーザディスプレイ用光源として使用できるほどの出力が得られていない上、2つの反射領域を制御して発振波長を決定しており、発振波長とレーザ出力を同時に制御する制御方法が複雑になるという課題があった。さらに、反射領域の制御による波長変化が外気温に関して敏感であるという課題もあった。また、ファイバレーザ光源の例に関しては、大きな可変範囲を得るためにはファイバグレーティングに大きな応力を加える必要があり、ファイバが切れる可能性があり、ファイバの信頼性に問題がある。さらに、波長を切り替えた場合にレーザ媒質が有するゲインの波長依存性が引き金となり、発振出力が変化するという課題があった。
さらに、医療分野で利用され始めている、上述したラマンファイバを用いた多波長発振のレーザ装置では、同時に2つの波長の光を発生させることはできない。また、ラマンファイバレーザのゲインは、波長が1000〜1100nmで最も大きいことから、オレンジ色の光の波長として必要な1100〜1200nmの光を発生させた場合、1000〜1100nmのブロードな発光スペクトルを持つ光もあわせて発生してしまう。このため、パルス発振によるレーザ発振器の破壊という課題もあった。一方、上述した固体レーザを用いた多波長発振可能なレーザにおいては、発振波長ごとに光学系の切り替えが必要であり、瞬時に所望の波長に切り替えることが困難であるという課題があった。さらに、発振波長ごとにレーザ光の特性が大きく異なるため、得られる最大出力が一定しないという課題もあった。
また、従来の医療用のレーザ光源装置の構成では、レーザ発振器で発生したレーザ光の基本波を波長変換素子で可視光に波長変換した後、中空ファイバ等で手術用ハンドピースに伝搬させていた。しかし、レーザ発振器から中空ファイバへの可視光の結合損失や、ファイバ中の伝搬損失により、可視光の30%程度がロスし、伝搬効率を下げる原因となっていた。さらに、ファイバの取り回し等で、ハンドピースの取扱が困難になる等の課題もあった。
上記課題に鑑み、本発明の目的は、複数の波長を切り替えて発生することが可能で、Wクラスの大きな光出力を持つ高信頼性のレーザ光源装置及び画像表示装置を提供することである。
上記目的を達成するため、本発明に係るレーザ光源装置は、励起光を出射するレーザ光源と、レーザ活性物質を含み、前記レーザ光源からの励起光が入射されるファイバと、前記ファイバの前記レーザ光源側に設けられた、複数の反射ピークを持つ第1ファイバグレーティングと、前記ファイバの出射端側に設けられた、複数の反射ピークを持つ第2のファイバグレーティングと、を有するレーザ共振器と、前記レーザ共振器から出射される基本波を高調波に変換する波長変換部と、前記第2のファイバグレーティングの反射ピークの反射波長をシフト可能な反射波長可変部と、前記反射波長可変部により前記レーザ共振器の発振波長を制御すると共に、前記波長変換部の位相整合条件を制御する制御部とを備え、前記第1のファイバグレーティングの隣接する反射ピークの間隔と前記第2のファイバグレーティングの隣接する反射ピークの間隔とは異なる。
上記のレーザ光源装置では、第1及び第2のファイバグレーティングがそれぞれ複数の反射ピークを持っており、第1のファイバグレーティングの反射ピークの間隔と第2のファイバグレーティングの反射ピークの間隔とが異なるように設定されているので、第2のファイバグレーティングの反射ピークの反射波長をシフトさせることにより、レーザ共振器の発振波長を切り替えることができる。
前記第2のファイバグレーティングの複数の反射ピークの反射率のそれぞれを規定するグレーティング長は、前記レーザ共振器の発振波長の減少に伴う前記ファイバの発振効率の低下を妨げるように、前記レーザ共振器の発振波長が減少する方向に順々に長くなるように構成されていることが好ましい。
この場合、レーザ共振器の発振波長を減少させてもファイバの発振効率を維持することができる。特に、1045〜1070nm帯の光を発振させる際にレーザ共振器の発振波長の減少に伴うファイバの発振効率の低下が顕著である。したがって、この場合、1045〜1070nm帯の光の出力を向上させることができる。
前記第1のファイバグレーティングの反射ピークの帯域幅は、前記第2のファイバグレーティングの反射ピークの帯域幅よりも広く、前記第1のファイバグレーティングの反射ピークの反射率は、前記第2のファイバグレーティングの反射ピークの反射率よりも大きいことが好ましい。
この場合、第1のファイバグレーティングの反射ピークの帯域幅が第2のファイバグレーティングの反射ピークの帯域幅よりも広いので、第2のファイバグレーティングの反射ピークの反射率のシフト制御に要求される精度を緩和することができると共に、第1のファイバグレーティングの反射ピークの反射率が第2のファイバグレーティングの反射ピークの反射率よりも大きいので、第2のファイバグレーティングから基本波を効率よく出射することができる。
前記第1のファイバグレーティングの反射ピークの帯域幅は0.5〜2nmであり、前記第2のファイバグレーティングの反射ピークの帯域幅は0.2nm以下であることが好ましい。
この場合、第2のファイバグレーティングの反射ピークの反射率をシフトさせる際、第2のファイバグレーティングの反射ピークを第1のファイバグレーティングの反射ピークに確実に一致させることができる。
前記第1のファイバグレーティングの反射ピークの反射率は95%以上であり、前記第2のファイバグレーティングの反射ピークの反射率は5〜20%であることが好ましい。
この場合、レーザ共振器によるレーザ光による励起用レーザの破壊を防止しつつ、レーザ光を効率よく出射することができる。
前記制御部は、前記反射波長可変部による前記第2のファイバグレーティングの反射ピークの反射波長のシフトにより前記レーザ共振器の発振波長を切り替えた後、前記切り替えられた発振波長に応じて前記波長変換部の位相整合条件を変更することが好ましい。
この場合、レーザ共振器から出射される基本波の発振波長の切り替えに合わせて波長変換部の位相整合条件が変更されるので、基本波を効率よく高調波に波長変換することができる。
前記波長変換部は、角度位相整合を用いる非線形結晶から構成された第1の波長変換素子と、前記第1の波長変換素子を保持すると共に、前記第1の波長変換素子の角度位相整合条件を成立させるべく前記レーザ共振器の発振波長に応じた前記第1の波長変換素子に対する前記レーザ共振器から出射される基本波の入射角度を設定する第1の保持部とを有し、前記制御部は、前記第1の保持部により前記波長変換部の位相整合条件を制御することが好ましい。
この場合、波長変換素子を角度位相整合を用いる非線形結晶により構成した場合に、レーザ共振器からの基本波を効率よく高調波に波長変換することができる。
前記波長変換部はさらに、角度位相整合を用いる非線形結晶から構成された第2の波長変換素子と、前記第2の波長変換素子を保持すると共に、前記第2の波長変換素子の角度位相整合条件を成立させるべく前記レーザ共振器の発振波長に応じた前記第2の波長変換素子に対する前記第1の波長変換素子から出射される基本波の入射角度を設定する第2の保持部とを有し、前記第2の保持部は、前記第1の保持部により生じる光軸の変化を抑えるように配置されており、前記制御部は、前記第1及び第2の保持部により前記波長変換部の位相整合条件を制御することが好ましい。
この場合、波長変換素子を角度位相整合を用いる非線形結晶により構成した場合でも、波長変換の際に生じる光軸の変動を抑えることができる。
前記波長変換部は、温度位相整合を用いる非線形結晶から構成された波長変換素子と、前記波長変換素子を保持すると共に、前記波長変換素子の温度位相整合条件を成立させるべく前記レーザ共振器の発振波長に応じた前記波長変換素子の温度を設定する保持部とを有し、前記制御部は、前記保持部により前記波長変換部の位相整合条件を制御することが好ましい。
この場合、波長変換素子を温度位相整合を用いる非線形結晶により構成した場合に、レーザ共振器からの基本波を効率よく高調波に波長変換することができる。
前記波長変換部は、擬似位相整合を用いる非線形結晶から構成され、分極反転周期構造を持つ波長変換素子と、前記波長変換素子を保持すると共に、前記波長変換素子の擬似位相整合条件を成立させるべく前記レーザ共振器の発振波長に応じた前記波長変換素子の分極反転周期領域に前記レーザ共振器から出射される基本波を入射させる保持部とを有し、前記制御部は、前記保持部により前記波長変換部の位相整合条件を制御することが好ましい。
この場合、波長変換素子を擬似位相整合を用いる非線形結晶により構成した場合に、レーザ共振器からの基本波を効率よく高調波に波長変換することができる。
前記波長変換素子の分極反転周期構造の周期は、前記レーザ共振器から出射される基本波の入射方向に対して垂直方向に変化し、前記保持部は、前記レーザ共振器の発振波長に応じて前記波長変換素子を前記分極反転周期構造の周期が変化する方向に移動可能な移動ステージ、を有することが好ましい。
この場合、波長変換素子の分極反転周期構造の周期を最適な長さにすることができるので、基本波から高調波への変換効率を高めることができる。
前記波長変換素子の分極反転周期構造の周期は、前記レーザ共振器から出射される基本波の入射方向に沿って変化することが好ましい。
この場合、波長変換素子の移動を伴うことなく、レーザ共振器の発振波長に応じた分極反転周期領域に基本波を入射させることができるので、波長変換部を簡単な構成で実現することができる。
前記第1のファイバグレーティングと前記第2のファイバグレーティングとの間で重なり合う部分を持つ反射ピークは、2つであることが好ましく、前記重なり合う部分を持つ2つの反射ピークの各反射波長の範囲は、1000〜1090nmと1100〜1180nmであることが好ましい。
この場合、1100〜1180nmの波長帯域の光を発生させる場合であっても、1000〜1090nmの波長帯域の光を同時に発生させることにより、ASE光の発生によるレーザ共振器の破壊を防止することができる。
本発明に係る画像表示装置は、上記のレーザ光源装置と、前記レーザ光源装置の制御部に接続され、前記レーザ光源装置の発振波長を決定するための選択信号を前記制御部に出力する波長決定回路と、前記レーザ光源装置から出射されるレーザ光により表示される映像信号に含まれる輝度信号に基づき前記映像信号の輝度を判定し、前記判定された輝度を前記波長決定回路に出力する輝度信号判定回路と、を有するプロジェクタ制御回路と、前記画像表示装置の利用者により入力された前記レーザ光源装置の発振波長を前記波長決定回路に指示する映像モード切り替え部と、前記画像表示装置により使用される電源の種類及び残量を判定し、前記判定された電源の種類及び残量を前記波長決定回路に出力する電源制御回路とを備える。
上記の画像表示装置では、映像信号の種類や電源の使用状況に応じてレーザ光源装置から出射されるレーザ光の発振波長を切り替えることができる。このため、高輝度で色再現範囲が広く、高画質化及び低消費電力化された画像表示装置が実現可能である。
本発明に係る顕微鏡装置は、上記のレーザ光源装置と、前記レーザ光源装置から出射されるレーザ光の照射による蛍光試料の励起により前記蛍光試料の発光を観察可能とする顕微鏡部とを備える。
上記の顕微鏡装置では、蛍光試料に応じてレーザ光源装置から出射されるレーザ光の発振波長を切り替えることができるので、複数の蛍光試料の励起を良く行うことができる。
本発明に係るレーザ光源装置は、少なくとも2つの基本波を出射するレーザ発振装置と、前記レーザ発振装置から出射される少なくとも2つの基本波を各々高調波に変換し、前記変換された高調波を照射可能なレーザ光照射部と、前記レーザ発振装置と前記レーザ光照射部との間に配置され、前記レーザ発振装置から出射される基本波を前記レーザ光照射部に伝搬するファイバ部とを備え、前記レーザ発振装置は、励起光を出射するレーザ光源と、レーザ活性物質を含み、前記レーザ光源からの励起光が入射されるファイバと、前記ファイバの前記レーザ光源側に設けられた少なくとも2つの第1のファイバグレーティングと、前記ファイバの出射端側に設けられ、前記第1のファイバグレーティングのそれぞれに一対一に対応する少なくとも2つの第2のファイバグレーティングと、から構成されたレーザ共振器とを有する。
上記のレーザ光源装置では、レーザ発振装置が少なくとも2つの基本波を出射し、それら基本波をファイバ部によりレーザ光照射部に伝搬し、レーザ光照射部がそれら基本波を各々高調波に波長変換するので、少なくとも2つの異なる波長のレーザ光を従来よりも効率よく発振させて照射することができる。
前記レーザ共振器はさらに、前記ファイバの出射光の偏光方向に従って前記出射光を分岐する光分岐部を有し、前記第2のファイバグレーティングは、前記光分岐部により分岐された分岐光のうちのいずれかを入射されることが好ましい。
この場合、ファイバの出射光の偏光方向ごとに異なる波長の基本波を発振させるので、多波長発振時に発生するモード間競合を抑えることができる。
前記第2のファイバグレーティングは、対応する第1のファイバグレーティングとの間で構成される共振器のQ値を可変とすべく前記第2のファイバグレーティングの反射波長がシフト可能に構成されていることが好ましい。
この場合、第1及び第2のファイバグレーティングとの間に構成される共振器のQ値を第2のファイバグレーティングの反射波長のシフトにより変化させることができるので、レーザ光照射部による照射に不要な基本波の共振器のQ値を低下させ、その発振を停止させることができる。
前記レーザ光照射部は、前記レーザ共振器から出射される基本波を高調波に変換する少なくとも2つの波長変換素子と、前記波長変換素子から出射される高調波の一部を反射する光学部材とを有し、前記光学部材により反射された高調波は、前記ファイバ部により前記レーザ発振装置に帰還され、前記レーザ発振装置は、前記帰還された高調波の出力強度に基づいて前記レーザ共振器の発振波長を変化させる。
この場合、レーザ発振装置は、レーザ光照射部により波長変換された高調波の出力強度に応じてレーザ共振器の発振波長を変化させるので、レーザ光照射部から出射される高調波の出力を安定化させることができる。
前記光学部材の反射率は、1〜10%であることが好ましく、前記光学部材は、前記波長変換素子の出射面に配置された誘電体多層膜であることが好ましい。
この場合、レーザ発振装置はレーザ光照射部により波長変換された高調波の出力強度を精度良く検出することができる。
前記レーザ光照射部はさらに、前記少なくとも2つの波長変換素子から出射される光のうちのいずれかを前記レーザ光照射部から選択的に照射させる光選択部を有することが好ましい。
この場合、レーザ光照射部から出射されるレーザ光の波長を切り替えることが可能となる。
前記ファイバ部は、ダブルクラッドファイバであることが好ましい。
この場合、レーザ発振装置からレーザ光照射部への基本波の伝搬及びレーザ光照射部からレーザ発振装置への高調波の伝搬を効率よく行うことができる。
前記第2のファイバグレーティングは、前記第2のファイバグレーティングの温度又は引っ張り応力の付加のいずれかの制御により反射波長がシフトされることが好ましい。
この場合、第2のファイバグレーティングの反射波長のシフトを精度良く行うことができる。
前記レーザ発振装置はさらに、前記ファイバ部により帰還される高調波の出力強度を検出する検出部と、前記検出部により検出された高調波の出力強度に基づいて前記第2のファイバグレーティングの反射波長のシフト量を制御する制御部とを有することが好ましい。
この場合、レーザ光照射部から帰還される高調波の出力強度を検出し、検出された高調波の出力強度に基づいて第2のファイバグレーティングの反射波長のシフト量を制御するので、レーザ光照射部により波長変換された高調波の出力強度に応じてレーザ共振器の発振波長を変化させることができる。この結果、レーザ光照射部から出射される高調波の出力を安定化させることができる。
前記検出部は、前記レーザ共振器と前記ファイバ部との接続点の近傍に配置され、前記接続点から前記高調波の漏れ光を受光する受光素子であることが好ましい。
この場合、レーザ光照射部から帰還される高調波の出力強度を精度良く把握することができる。
前記レーザ発振装置はさらに、前記レーザ光源装置の利用者による前記レーザ光源の点灯指令が入力されるスイッチ部、を有し、前記制御部は、前記スイッチ部により入力される点灯指令に基づいて前記レーザ光源を点灯させ、前記検出部により検出される高調波の出力強度を安定化させるべく前記第2のファイバグレーティングの反射波長のシフト量を制御し、前記レーザ光照射部はさらに、前記高調波の出力強度が安定化された後に、前記波長変換素子から出射される高調波を前記レーザ光照射部から照射可能とする開閉器、を有することが好ましい。
この場合、レーザ光照射部により波長変換された高調波の出力が安定した後に、レーザ光照射部の照射が可能となるので、レーザ光源を常時動作させる必要が無くなる。この結果、レーザ光源による消費電力の低減を図ることができる。
前記制御部は、前記第2のファイバグレーティングの反射波長のシフト量の制御による前記波長変換素子の位相整合条件の不成立により、前記レーザ共振器から出射される基本波を前記波長変換素子により波長変換されることなく前記波長変換素子から出射させることが好ましい。
この場合、レーザ光照射部から出射される基本波の出力を増加させることができる。
前記レーザ共振器から出射される少なくとも2つの基本波の発振波長の範囲は、1000〜1100nmと1100〜1200nmであることが好ましい。
この場合、1100〜1200nmの波長帯域の光を発生させる場合であっても、1000〜1100nmの波長帯域の光を同時に発生させることにより、ASE光の発生によるレーザ共振器の破壊を防止することができる。
前記波長変換素子は、Mg:LiNbO3結晶を擬似位相整合により構成されており、前記レーザ共振器から出射される基本波の半値幅は、0.06nm以下であることが好ましい。
この場合、波長変換素子をMg:LiNbO3結晶を擬似位相整合により構成されている場合に、基本波から高調波への波長変換効率を最大波長変換効率の90%以上で実現できる。
本発明によれば、複数の波長を切り替えて発生することが可能で、Wクラスの大きな光出力を持つ高信頼性のレーザ光源装置及び画像表示装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同一部分には同一符号を付し、図面で同一の符号が付いたものは、説明を省略する場合もある。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るレーザ光源の概略構成を示す図である。図1において、本実施の形態に係るレーザ光源21は、ファイバレーザ22と、ファイバレーザ22から出射される基本波53を高調波24に変換する波長変換素子25を有する波長変換部23と、制御部34と、を備えている。
ファイバレーザ22は、レーザ活性物質を含むファイバ26と、ファイバ26にファイバ32を通して励起光27を入射する励起用レーザ28と、ファイバ26の両端に形成され、ファイバ26と共にレーザ共振器を構成する第1のファイバグレーティング29及び第2のファイバグレーティング30と、を有している。
第1のファイバグレーティング29は複数の広帯域反射ピークを持っており、各反射ピークの帯域幅は0.5〜3nmである。また、第2のファイバグレーティング30も複数の狭帯域反射ピークを持っており、各反射ピークの帯域幅は0.2nm以下である。ファイバレーザ22の共振器は、第1のファイバグレーティング29及び第2のファイバグレーティング30のそれぞれから選択された反射ピークを2つの反射面として、基本波53を増幅して出射する。第2のファイバグレーティング30の各反射ピークの帯域幅は、望ましくは0.2nm以下、より望ましくは0.15nm以下である。波長変換素子25による波長変換の際の波長許容幅から第2のファイバグレーティング30の帯域幅を狭くするほど、波長変換素子25が効率よく波長変換できるからである。このような波長変換応用技術では、発振した基本波53の波長帯域は狭い必要があるため、第2のファイバグレーティング30の波長帯域を狭くしなければならない。そこで、第1のファイバグレーティング29の帯域幅を第2のファイバグレーティング30の10倍程度、すなわち、第1のファイバグレーティング29の帯域幅を0.5〜3nm、より望ましくは0.5〜2nmとすることにより、狭帯域側の第2のファイバグレーティング30の制御を粗くすることができる。第1のファイバグレーティング29の帯域幅は広げすぎると帯域のトップ形状に発生するリップルが大きくなるため、0.5〜2nmとするのが望ましい。
第2のファイバグレーティング30は、反射波長可変部33上に配置されている。反射波長可変部33は、第2のファイバグレーティング30に引っ張り応力を与える応力付加機構を有している。そして、第2のファイバグレーティング30に引っ張り応力を加えることにより、第2のファイバグレーティング30の反射波長をシフトさせ、その波長シフトによってファイバレーザ22の発振波長を変化させる。第2のファイバグレーティング30の一端は基台上に固定され、他の一端はパルスモータで駆動される1軸ステージ上に固定されている。ステージの可動方向と第2のファイバグレーティング30の光伝搬方向とは平行であり、パルスモータの回転により第2のファイバグレーティング30に引っ張り応力を与えることができる。なお、ここでは、波長可変部33に応力付加機構を持たせたが、本実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、ペルチェ素子を用いた温度制御機構を波長可変部33に持たせ、第2のファイバグレーティング30を温度制御することにより反射波長をシフトさせるようにしても良い。
次に、第1のファイバグレーティング29及び第2のファイバグレーティング30の各々の複数の反射ピークについて具体的に説明する。図2(a)に第1のファイバグレーティング29の反射スペクトルを、図2(b)に第2のファイバグレーティング30の反射スペクトルを示す。図2(a)において、第1のファイバグレーティング29は、λ1、λ2、λ3の3つの中心波長を持ち、反射率が98%以上、すなわちHigh−Refrect(HR)ミラーとなっている。一方、図2(b)において、第2のファイバグレーティング30は、λ4、λ5、λ6の3つの中心波長を持ち、反射率が12%程度である。12%程度の反射率を必要とするのは、第2のファイバグレーティング30が、発振光の一部をファイバ26へ帰還させる役割を果たすためである。図2(a)及び(b)では、第1のファイバグレーティング29は、帯域幅0.5nmで、中心波長が5nmずつ離れた特性を持っている。一方、第2のファイバグレーティング30は、帯域幅0.06nmで、中心波長が4.5nmずつ離れた特性を持っている。なお、第1のファイバグレーティング29及び第2のファイバグレーティング30の各中心波長間の間隔は、ファイバレーザ22に要求される発振波長に基づいて適宜設定されるものである。図2(a)及び(b)では、第1のファイバグレーティング29と第2のファイバグレーティング30とは、室温(25度)で第2のファイバグレーティング30に引っ張り応力を付加しない状態では、λ1=λ4となっている。
このとき、励起用レーザ28として、0.45Aをしきい値電流とする、最大7W出力可能な、波長915nmの半導体レーザを2個使用した場合、基本波53の出力として7.2Wが実現された。励起波長として915nmを使用することで、冷却フィンと送風ファンを用いた簡単な冷却機構により、安定して基本波53を出力することができる。
次に、本実施の形態に係るレーザ光源の波長選択動作について説明する。ここでは、図2(a)及び(b)に示した反射ピークを持つ第1のファイバグレーティング29及び第2のファイバグレーティング30を用いた場合について説明する。図3(a)〜(c)は、本実施の形態に係るレーザ光源の波長選択動作を説明するための図であり、図3(a)は、室温、かつ、第2のファイバグレーティング30に引っ張り応力が付加されていない状態を示す図、図3(b)は、室温、かつ、第2のファイバグレーティング30に引っ張り応力を付加することにより、第2のファイバグレーティング30の反射波長を0.5nmだけシフトさせた状態を示す図、図3(c)は、室温、かつ、第2のファイバグレーティング30にさらに引っ張り応力を付加し、第2のファイバグレーティング30の反射波長をさらに0.5nmシフトさせた状態を示す図である。
まず、図3(a)において、第1のファイバグレーティング29の中心波長λ1と第2のファイバグレーティング30の中心波長λ4が一致している。このため、ファイバレーザ22は、λ1(=λ4)で発振することになる。
次に、図3(b)において、反射波長可変部33による引っ張り応力の付加により、第2のファイバグレーティング30の反射波長はシフトする。それにより、第1のファイバグレーティング29の中心波長λ2と第2のファイバグレーティング30の中心波長λ5とが一致する。このため、ファイバレーザ22は、λ2(=λ5)で発振する。すなわち、第2のファイバグレーティング30の反射波長をわずか0.5nmシフトさせるだけで、ファイバレーザ22の発振波長を5nmシフトさせることができる。
さらに、図3(c)において、反射波長可変部33による引っ張り応力のさらなる付加により、第2のファイバグレーティング30の反射波長はさらにシフトする。それにより、第1のファイバグレーティング29の中心波長λ3と第2のファイバグレーティング30の中心波長λ6とが一致する。このため、ファイバレーザ22は、λ3(=λ6)で発振することになり、その発振波長は図3(b)よりさらに5nmシフトする。
すなわち、第2のファイバグレーティング30の反射波長を1nmシフトさせることにより、ファイバレーザ22の発振波長を10nmシフトさせることが可能となる。このように、本実施の形態では、離散的ではあるが、ファイバレーザ22の発振波長を5nmずつ、計10nm切り替えることが可能となる。ファイバレーザ22の発振波長のシフト量は、第1のファイバグレーティング29及び第2のファイバグレーティング30の設計により、任意に設計が可能である。
このように、高い反射率で広い帯域幅を持つ反射器である第1のファイバグレーティング29と、小さな反射率で狭い帯域幅を持つ反射器である第2のファイバグレーティング30とを組みあわせることにより、両方の反射器を微調整してファイバレーザ22の発振波長をコントロールする必要がなくなり、一方の反射器を制御するだけで発振波長を切り替えることが可能となる。その上、従来では、発振波長の監視をレーザの出力に基づいて行う必要があり、発振波長の変化とレーザ出力自体の変化との切り分けが困難となっていた。本実施の形態では、発振波長の監視を不要とすることにより、レーザ出力自体の変化のみを制御(Auto Power Control:APC)すればよい。したがって、レーザ出力の制御が容易となる。また、従来では、ファイバグレーティングの反射波長が外気温の変動に敏感であることから、発振波長が不用意に切り替わることがあった。本実施の形態では、第1のファイバグレーティング29の帯域幅を第2のファイバグレーティング30よりも広げることで、この課題も防止することができる。
ところで、本実施の形態に係るレーザ光源に用いられるファイバレーザでは、レーザ活性物質であるYbの添加によるファイバの吸収により、発振波長ごとに発振効率が異なることが知られている。図4に、Yb添加のファイバの発振波長と損失との関係を示す。図4に示すように、発振波長が1045〜1070nmの範囲では、発振波長が長いほどファイバの損失が小さくなる。そのため、発振波長の増加に伴い、発振効率が高くなる傾向がある。したがって、発振波長を短くする場合、発振効率の低下を防止する必要がある。本実施の形態では、この発振効率の低下に対し、第2のファイバグレーティング30の反射率を大きくする。すなわち、第2のファイバグレーティング30の反射率の向上によりファイバ26に帰還させる発振光を増加させることにより、発振効率の低下を防止する。複数の反射波長を持つ第2のファイバグレーティング30は、各反射波長に対応するグレーティングの長さを変化させることにより、各グレーティングの反射率を変化させることができる。各々のグレーティング長の増加により、各々のグレーティングの反射率は増加する。つまり、短い発振波長の場合(本実施の形態の場合、1045nm)では、各グレーティングの反射率を大きくし、長い発振波長(本実施の形態の場合、1070nm)の場合は、反射率を小さくすることにより、発振効率の低下を抑制することができる。それにより、APCによる励起用レーザ28の駆動電流量の増加を抑制できる。つまり、低消費電力化できる。図5に、第2のファイバグレーティング30の反射波長と反射率との関係の一例を示す。
図5において、ファイバレーザ22を1045nmから5nm刻みで1070nmまでの波長範囲Xで発振させると設計する場合、第2のファイバグレーティング30に、最も大きな反射ピークを1045nmと設定し、順次5nm刻みで小さくなる順に、反射波長を割り当てていくことにより、ファイバレーザ22の発振効率の低下を抑制し、ファイバレーザ22の発振波長の変動による基本波53の出力変動を5%以内に抑えることができる。
次に、ファイバレーザ22から出射された基本波53の高調波24を発生させる波長変換部23について説明する。図1に示すように、波長変換部23は、波長変換素子25と、集光レンズ31と、ビームスプリッタ8と、波長変換素子保持部35と、を有している。なお、本実施の形態では、集光レンズ31を波長変換部23に設けているが、ファイバレーザ22に設けても構わない。
ファイバレーザ22により基本波53のレーザ光が出力されると、集光レンズ31で集光されて波長変換素子25に入射する。ファイバレーザ22からの基本波53が入射波となり、波長変換素子25の非線形光学効果により変換されると、波長が基本波53の1/2の高調波24となる。この変換された高調波24は、ビームスプリッタ8で一部反射される一方、透過した高調波24のほとんど全てがレーザ光源21の出力光となって出射される。
ビームスプリッタ8で一部反射された高調波24は、波長変換素子25の出力光をモニターするために受光素子37で受光して電気信号に変換されて利用される。この変換された信号の強度が波長変換素子25で所望の出力が得られる強度になるように、制御部34は励起用レーザ電流源36で励起用レーザ28の駆動電流を調整する。そうすると励起用レーザ28からの励起光27の強度が調整され、ファイバレーザ22の基本波53の出力強度が調整され、その結果としてレーザ光源21の出力の強度が調整される。このことによりレーザ光源21の出力の強度は一定に保たれ、いわゆるオートパワーコントロール(APC)が安定に動作する。なお、レーザ光源21の出力の強度をAPC動作により、さらに精度よく制御するために、ファイバ26の第2のファイバグレーティング30の外側に受光素子を配置することもできる。このようにして、第2のファイバグレーティング30で反射されずに、わずかに漏れてくる基本波53を検出することができる。この検出データを基に、励起光27や基本波53の全体の強度を各々推定することにより、制御部34は励起用レーザ電流源36で励起用レーザ28の駆動電流を調整してレーザ光源21の出力の強度をAPC動作させる。
なお、基本波53の検出は、第2のファイバグレーティング30の外側に受光素子を配置した構成に限るものでは無く、第2のファイバグレーティング30から出射された基本波53の分岐光を検出する構成であっても良い。また、第1のファイバグレーティング29を透過した基本波53の出力を受光素子で検出する構成でも良い。さらに、励起用レーザ28の励起光27を取り出しミラーにより反射させて、励起光27の一部を受光素子で検出することにより、基本波53の出力を制御して良い。これらの構成により、励起光27や基本波53の出力を、より正確に検出して基本波53の出力を安定に制御することにより、レーザ光源21からの出力をさらに安定して得ることができる。
次に、波長変換部23の波長変換素子25及び波長変換素子保持部35の具体的な構成について説明する。本実施の形態では、基本波53を出射するファイバレーザ22の発振波長を変化させる。このため、高調波24を発生させる波長変換部23の波長変換素子25に用いている非線形光学結晶の位相整合条件を、発振波長に応じて変化させる必要がある。本実施の形態では、角度位相整合を用いる結晶の例としてKTiOPO4(KTP)、温度位相整合を用いる結晶の例としてLiB3O5(LBO)、擬似位相整合を用いる結晶の例としてMgO:LiNbO3、を用いた場合について説明する。
(角度位相整合を用いる場合)
図6(a)に、波長変換素子25に角度位相整合を用いる非線形結晶を使用した場合の波長変換部23の構成について示す。図6(a)において、波長変換部23は、波長変換素子25aと、集光レンズ31と、ビームスプリッタ8と、波長変換素子保持部35aと、を有している。波長変換素子25aはKTP結晶を角度位相整合により構成されており、波長変換素子保持部35aは結晶光学軸におけるφ方向に波長変換素子25aを回転させる回転ステージを設けている。
ファイバレーザ22の発振波長を1055nm、1060nm、1065nm及び1070nmとし、波長変換素子25aを構成するKTP結晶をtype−II位相整合(xy面内、z軸と基本波入射方向とのなす角度θ=90)で使用した。それぞれの位相整合条件としては、位相整合角度φ(基本波入射方向とx軸とがなす角度:結晶内の角度)が35°、32.5°、28.5°及び23.5°であった。なお、この位相整合角度φは、結晶の温度により±0.2°程度変化するものである。
図6(b)に、波長変換素子25に角度位相整合を用いる非線形結晶を使用した場合の波長変換部23の他の構成について示す。図6(b)において、波長変換部23は、波長変換素子25aと、集光レンズ31と、ビームスプリッタ8と、波長変換素子保持部35aと、波長変換素子25bと、波長変換素子保持部35bと、を有している。もちろん、波長変換素子25bはKTP結晶を角度位相整合により構成されており、波長変換素子保持部35bは結晶光学軸におけるφ方向に波長変換素子25bを回転させる回転ステージを設けている。すなわち、図6(b)の構成は、図6(a)の構成に、波長変換素子25bと波長変換素子保持部35bを追加したものとなっている。この構成により、波長変換素子25aの回転により生じる光軸の変化を、波長変換素子25bの回転により、抑えることができる。
(温度位相整合を用いる場合)
図7に、波長変換素子25に温度位相整合を用いる非線形結晶を使用した場合の波長変換機部23の構成について示す。図7において、波長変換部23は、波長変換素子25cと、集光レンズ31と、ビームスプリッタ8と、波長変換素子保持部35cと、を有している。波長変換素子25cはLBO結晶を温度位相整合により構成されており、波長変換素子保持部35cは、波長変換素子25cの温度を保持するヒーター42と、ヒーター42と波長変換素子25cとの隙間に配置されたスペーサー41と、を有している。ヒーター42は、真鍮製のブロック内にカートリッジヒータを内蔵させたもので、5mm×5mm、長手方向に25mmの空間を設け、その空間内に、3mm×3mm×20mmのLBO結晶からなる波長変換素子25cを保持している。隙間にはアルミニウム製のスペーサー41を配置している。ここでの位相整合温度は、この真鍮ブロックに配置した温度モニター用の熱電対の温度を示している。
ファイバレーザ22の発振波長を1055nm、1060nm、1065nm及び1070nmとし、波長変換素子25cを構成するLBO結晶(θ=90°、φ=0°:x軸上)の非臨界位相整合条件(type−I)を使用した場合、それぞれの位相整合温度は161℃、155℃、147℃及び136℃であった。なお、この位相整合温度は、結晶の個体差やヒーター42での保持条件により、±2℃程度変化するものである。
(擬似位相整合を用いる場合)
図8に、波長変換素子25に擬似位相整合を用いる非線形結晶を使用した場合の波長変換部23の構成について示す。図8において、波長変換部23は、波長変換素子25dと、集光レンズ31と、ビームスプリッタ8と、波長変換素子保持部35dと、を有している。波長変換素子25dは非線形光学結晶(MgO:LiNbO3[MgO:LN])を擬似位相整合により構成されており、波長変換保持部35dは、波長変換素子25dの温度を保持するペルチェ素子及びそのコントローラ51と、波長変換素子25dを所定の方向に移動可能な移動ステージ52と、を有している。非線形光学結晶(MgO:LN)には分極反転周期が形成されており、MgO:LN結晶の最大の非線形光学定数d33を使用することができるため、高効率な波長変換が可能である。分極反転周期は、基本波53の波長で規定されるため、基本波53の波長を切り替えるたびに、非線形光学結晶に形成された分極反転周期も切り替える必要がある。
ファイバレーザ22の発振波長を1055nm、1060nm、1065nm及び1070nmとした場合、必要な分極反転周期は6.8μm、6.9μm、7μm及び7.1μmとなる。図9(a)〜(c)に、MgO:LN結晶に形成された分極反転周期を示す。図9(a)では、基本波53の進行方向に対して各分極反転周期が形成された領域A、B、C、・・・が平行に並んでいる。例えば、領域Aに形成された分極反転周期はλ1の基本波53に対応し、領域Bに形成された分極反転周期はλ2の基本波53に対応し、領域Cに形成された分極反転周期はλ3の基本波53に対応する。一方、図9(b)では、分極反転周期がリニアに変化するものであり、例えば、位置Dの分極反転周期がλ1の基本波53に対応し、位置Eの分極反転周期がλ2の基本波53に対応し、位置Fの分極反転周期がλ3の基本波53に対応する。
図9(a)及び(b)に示す分極反転周期の構成を持つ波長変換素子25dは、基本波53の波長の切り替えに対応して、基本波53が入力される領域又は位置を切り替える必要がある。したがって、波長変換素子25dは波長変換素子保持部35dの移動ステージ52により移動可能となっている。また、移動ステージ52の駆動タイミングは、図1の反射波長可変部33の駆動タイミングに同期しなければならない。このため、制御部34は、反射波長可変部33を駆動する駆動信号に同期して、移動ステージ52を駆動する駆動信号を生成する。それにより、反射波長可変部33による第2のファイバグレーティング30の反射波長のシフトに合わせて、波長変換素子25dの基本波53が入力される領域又は位置を正確に切り替えることにより、波長変換を効率よく実行することができる。なお、MgO:LN結晶の結晶軸を考慮すれば、図9(a)の構成の作製が容易である。
一方、図9(c)では、基本波53の進行方向に沿って各分極反転周期が形成された領域G、H、I・・・が順に並んでいる。例えば、領域Gに形成された分極反転周期はλ1の基本波53に対応し、領域Hに形成された分極反転周期はλ2の基本波53に対応し、領域Iに形成された分極反転周期はλ3の基本波53に対応する。図9(c)の構成では、基本波53の進行方向に沿って各分極反転周期の領域を設けているため、基本波53の波長切り替えと連動させて、波長変換素子25dを移動する必要がない。したがって、図8の移動ステージ52は不要となり、波長変換素子保持部35dの構成は簡単化され、さらに制御部34の処理の負荷も軽減できる。図9(c)の構成は、基本波53の波長が離散的に変化することから実現可能となっている。ただし、波長変換される領域(相互作用長)が短くなるため、基本波53から高調波24への変換効率は低下する。このため、変換効率を重視する場合は図9(a)の構成が望ましい。
次に、図1のレーザ光源21が高出力の緑色レーザ光(以下、「G光」とする。)を出力する方法について説明する。図1において、ファイバレーザ22のファイバ26のコア部分には、レーザ活性物質として希土類元素Ybが1200ppmの濃度でドープされている。ファイバ励起用の励起用レーザ28は、波長915nm、しきい値電流400mA、最大光出力10Wの半導体レーザが使用されている。波長915nmの励起光はファイバ26に入射されて、第2のファイバグレーティング30に到達するまでに全て吸収される。その結果、励起用レーザ28からの励起光27をファイバ26に入射すると、励起光27がコア部分で吸収されてコア部分のYbの準位を利用して、ファイバ26から波長約1050〜1065nmの誘導放出が起こる。この約1050〜1065nmの誘導放出光は、ファイバ26中を励起光27が吸収されることで得られたゲインで増幅されて進み、波長約1050〜1065nmの赤外レーザ光の基本波53となる。また、基本波53は第1のファイバグレーティング29と第2のファイバグレーティング30とをレーザ共振器の一組の反射面として、これらの反射面の間を往復することにより、主として低反射率の第2のファイバグレーティング30により発振波長の選択が行われる。このときの第2のファイバグレーティング30の反射波長は、上述したように、1050nm、1055nm、1060nm及び1065nmに設定され、反射波長帯域幅は0.1nmに設定されている。したがって、基本波53の波長帯域幅は0.1nmとなって、ファイバレーザ22から出力される。なお、第1のファイバグレーティング29と第2のファイバグレーティング30の発振波長1050nm、1055nm、1060nm及び1065nmに対する反射率は、それぞれ98%と10%程度に設定されているが、第1のファイバグレーティング29と第2のファイバグレーティング30は共に、サンプルドグレーティングとなっているため、設計により各発振波長に対する反射率を変化させることができる。第1のファイバグレーティング29の反射率を98%以上とすることにより、励起用レーザ28へ発振光が戻り、励起用レーザ28を破壊することを防ぐことができる。一方、第2のファイバグレーティング30の反射率は、所望の発振波長をロックするだけの光量を帰還すればよいため、5〜20%程度であることが望ましい。
図10に、励起用レーザ28からの励起光量に対する波長1065nmの基本波53の光出力の入出力特性について示す。基本波53の出力は、7Wまで励起光量に対して比例して直線性よく増加しているのがわかる。
次に、ファイバレーザ22から出射された基本波53が波長変換素子25により高調波24に変換される過程について説明する。ファイバレーザ22から出力された基本波53(例えば、波長1065nm)は、集光レンズ31を介して波長変換素子25に入射する。波長変換素子25は、入射した光を高調波24に変換して出力する素子で、たとえば長さ20mmの分極反転周期構造のMgO:LiNbO3結晶を用いている。以下、分極反転周期構造のMgO:LiNbO3結晶を用いた場合について記述する。ここで、波長変換素子25において高調波に変換可能な波長は位相整合波長と呼ばれ、本実施の形態では25℃で1065nmに設定されている。したがって、ファイバレーザ22の基本波53の波長1065nmは位相整合波長と一致し、波長変換素子25で高調波24に変換され、1/2の波長である532.5nmの波長の緑色レーザとなって波長変換部23から高調波24として出力される。
一般に、波長変換素子25は、素子温度により位相整合波長が敏感に変化するため、0.01℃の精度で温度制御されている。本実施の形態では、波長変換素子25及び第2のファイバグレーティング30は、ペルチェ素子を取り付けて0.01℃の精度でそれぞれ個別に温度制御されている。このようにすると、ファイバレーザ22の基本波出力が5Wを超えて波長変換素子25及び第2のファイバグレーティング30での発熱が大きくなっても、W級の緑色レーザの高調波24を得ることができる。なお、ペルチェ素子には温度センサが取り付けられており、ペルチェ素子及び温度センサは全て、制御部34に接続されて温度の信号出力の取り込みや各部品や素子の駆動などを制御されている。
したがって、本実施の形態では、ファイバ26に添加する希土類元素の種類や量を調整することや、第2のファイバグレーティング30の反射波長を短波長に調整することにより、より短波長の基本波を5W以上の高出力で出力できる。したがって、より短波長の526〜540nmのW級の緑色レーザ光を得ることができる。
制御部34は、予め入力されたテーブルを記憶し、テーブルに基づき第2のファイバグレーティング30と波長変換素子25の温度制御を行う構成としてもよい。これらの構成により、基本波53の波長変換素子25での位相整合条件を精密に制御することができ、さらに安定な高調波24の出力が効率良く、波長変換素子25より得ることができる。
テーブルは、基本波53の出力に対する波長変換素子25での位相整合波長変化量のデータからなる構成としてもよい。また、テーブルは、基本波53の出力に対する基本波53の第2のファイバグレーティング30での反射波長変化量のデータからなる構成としてもよい。これらの構成により、基本波53の出力が変化したときに上記のようなテーブルのデータに基づき、迅速に基本波53の出力と波長に対して波長変換素子25の位相整合条件が、第2のファイバグレーティング30と波長変換素子25の温度制御により迅速に調整されて、波長変換素子25の高調波出力がさらに安定に維持される。
なお、ファイバレーザ22のファイバ26のファイバ長を短くすることで526〜540nmの短波長の緑色レーザ光を得ることができ、再生色の範囲を従来のSRGB規格より大きく拡げることができる。このため、ディスプレイ等に適用するときに、さらに色再現範囲が広げられる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図11に、本発明の実施の形態2に係るレーザディスプレイ(2次元画像表示装置)の構成を示す。本実施の形態に係るレーザディスプレイは、上記の実施の形態1に係るレーザ光源を適用したレーザディスプレイの一例である。
光源には、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のレーザ光源1001a〜1001cを用いている。赤色レーザ光源(R光源)1001aには、波長638nmのAlGaInP/GaAs系半導体レーザを、青色レーザ光源(B光源)1001cには、波長465nmのGaN系半導体レーザを用いている。
一方、緑色レーザ光源(G光源)1001bには、上記の実施の形態1に係るレーザ光源を用いている。赤外レーザの波長を1/2にする波長変換素子を具備したレーザ光源である。R、G、B各光源1001a〜1001cより出射されたレーザビームは、集光レンズ1009a〜1009cにより集光したのち、反射型2次元ビーム走査手段1002a〜1002cにより拡散板1003a〜1003c上を走査される。画像データは、R、G、Bそれぞれのデータに分割されており、その信号をフィールドレンズ1004a〜1004cで絞って空間光変調素子1005a〜1005cに入力したのち、ダイクロイックプリズム1006で合波することによりカラー画像を形成する。このように合波した画像は投射レンズ1007によりスクリーン1008に投影される。ただし、G光源1001bから空間光変調素子1005bに入射する光路中には、空間変調素子1005bでのG光のスポットサイズをR光やB光と同じにするための凹レンズ1009が挿入されている。
なお、本実施の形態では、1つの半導体レーザを使用してR光源やB光源を構成しているが、複数個の半導体レーザの出力を、例えば、バンドルファイバなどにより1本のファイバとしてまとめて得られるようにR光源やB光源を構成してもよい。このようにすると、R光源やB光源の波長スペクトルの幅を大きくすることができて、可干渉性を緩和することができ、光源としてスペックルノイズを抑制することもできる。同様にG光源についても、複数のレーザ光源のG光出力をそれぞれ出力ファイバで導波し、これらの出力ファイバを、例えば、バンドルファイバなどにより1本のファイバとしてまとめることにより、スペックルノイズを抑制したG光源としてもよい。
また、図11のレーザディスプレイでは、振動拡散板1003a〜1003cやフィールドレンズ1004a〜1004c等の部材が空間光変調素子1005a〜1005cの手前に配置されている。このような部材の配置は、可干渉性の強いレーザ光線を光源に用いることにより、発生するスペックルノイズを除去するためであり、これらのスペックルノイズ除去手段を揺動することにより、人間の目の応答時間で見たスペックルノイズを低減することができる。
本実施の形態では、G光源1001bに上記の実施の形態1にレーザ光源を用いて、ファイバレーザから出射される基本波を波長変換素子に入射して高調波を発生させている。本実施の形態に係るレーザディスプレイの構成においては、G光源1001bに用いられたレーザ光源が特徴となっている。
本実施の形態のレーザディスプレイは、R、G、Bの光源にレーザ光源を用いるので、高輝度で薄型に構成できる。さらに、G光源1001bに上記実施の形態1に係るレーザ光源を用いることにより、再生色範囲を従来のSRGB規格より、例えば、525nmの範囲にまで広く拡げることができ、さらに原色に近い色表現が可能となる。すなわち、本実施の形態のレーザディスプレイは、従来のレーザディスプレイよりも色再現範囲を拡げることができる。
さらに、G光源1001bは、例えば、波長が525nm、527.5nm、530nm及び532.5nmのいずれかの光を任意に発振可能である。このため、スペックルノイズを単一波長の場合の2割以下に低下させることができる。さらに、振動拡散板1003bを揺動することにより、ヒトの目にとってスペックルノイズが感じられない程度(2%以下)にスペックルノイズによる明暗の高低差を低減することができる。
なお、本実施の形態では、このような構成の2次元画像表示装置のほかに、スクリーンの背後から投影する形態(リアプロジェクションディスプレイ)をとることも可能である。また、導光板でレーザ光を均一化することにより、液晶パネルのバックライトとしても使用することが可能である。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。一般に、緑色光の発振波長が変化すると、映像の色再現範囲が変化することが知られている。図12に、緑色光の波長と色再現範囲との関係を示す。532.5nmは視感度が高いため、同じ明るさを得る場合には少ない投入電力でよいが、海の色などを表示するのに必要な「シアン系」の色が出せないという問題がある。一方、525nmでは「シアン系」の色を再現できるが、視感度が低いため、532.5nmの場合と比較して2倍以上の投入電力を必要とするという問題点があった。
このような問題を解決するために、本実施の形態に係るレーザ光源では、映像の種類や使用状況に応じてレーザ光の発振波長を切り替えることにより、ヒトの目の視感度を利用して同じ消費電力で、より明るい映像を表示させることを可能にする。以下、本実施の形態に係るレーザ光源がレーザディスプレイの緑色光源に用いられた場合について説明する。
図13に、本実施の形態に係るレーザ光源の概略構成を示す。本実施の形態に係るレーザ光源110は、上記の実施の形態1に係るレーザ光源に、波長決定回路1102及び輝度信号判定回路1103を含むプロジェクタ制御回路1101と、映像モード切替スイッチ1104と、が追加された構成となっている。また、外部より映像信号(データ)1105あるいは映像信号(ビデオ)1106がプロジェクタ制御回路1101に入力され、プロジェクタ制御回路1101により制御部34へ波長選択信号1107が送信され、レーザ光の発振波長が選択される。
プロジェクタ制御回路1101の動作について説明する。通常、レーザディスプレイには、映像信号の入出力用の複数の端子、例えば、D−sub15pinや、DVI、RCAピン、S端子、D端子、HDMI、が設けられている。そこで、まず、プロジェクタ制御回路1101が、レーザディスプレイの端子のうちのいずれに映像信号が入力されたかを検知することにより、レーザ光の発振波長を変化させる場合について説明する。
例えば、レーザディスプレイに映像信号(データ)1105が入力されたとする。映像信号(データ)1105がD−sub15pinあるいはDVIから入力されていれば、映像信号1105はプレゼンテーションに用いるような、明るさが重要視されるデータ信号であると言える。この場合、波長決定回路1102は、波長選択信号1107を制御部34に送信することにより、視感度の高い波長の緑色光を選択する。
また、RCAピンや、S端子、D端子、HDMI等の端子から映像信号が入力された場合、その映像信号は映像信号(ビデオ)1106であることが多い。この場合、輝度信号判定回路1103は、映像ソースの明るさを判定する。輝度信号判定回路1103は、映像中の輝度信号を解析することにより、入力された映像信号1106が、一般的なテレビ番組(例えば、スタジオ収録された番組)のような明るい場面が多く、それほど色が重要視されない映像信号であるのか、あるいは、映画のような暗い場面が多いが、広い色再現範囲が求められるような映像信号であるのかを判別する。前者の場合は、視感度の高い緑色波長を使用する割合を増やし、効率を向上させ、後者の場合には、色再現性が拡大できる526nmなどの短波長の緑色波長を使用する割合を増やすことで画質を向上させることが可能となる。
また、映像モード切替スイッチ1104により、ユーザーが任意にどちらの波長を使用するか決定することもできる。例えば、ユーザーが明るい映像を好む場合には、視感度の高い緑色波長を指定できる一方、色再現性が広い高画質な映像を常に見たい場合には、色再現性が拡大できる波長を指定できる。また、輝度信号判定回路1103で決定される波長選択信号1107において、発振波長を決定することもできる。
本実施の形態に係るレーザ光源110では、525nm、527.5nm、530nm、あるいは、532.5nmのいずれかの波長を任意に発振可能となるため、色再現性よりも明るさが要求されるデータプロジェクターとして使用する際には、視感度の高い532.5nmの発光とすることで、同じ消費電力でヒトの目に感じる明るさを向上することができる。一方、明るさよりも映画などの色再現性が要求される場合においては、視感度は低いが、再現色範囲を広げることが可能な525nmの発光として、色再現性を高めることができる。
以上の発光比率を変化させる方法としては、以上に挙げた限りでなく、他の方法を適用しても同様の効果が得られるものである。
また、本実施の形態では、バッテリー1109を電源として使用できる構成の場合、AC電源1108かバッテリー1109のいずれの使用か、あるいはバッテリー1109の残量に応じて、発振する波長を切り替えることで、バッテリー1109の寿命を向上させることも可能である。例えば、AC電源1108かバッテリー1109を使用しているかで判断する場合、電源制御回路1110により電源種類を判断し、波長決定回路1102に電源判定信号1111を送信することで、波長決定回路1102により波長が決定される。また、バッテリー1109の残量を電源制御回路1110で判断することにより発振波長を決定することで、バッテリー1109を使用している場合やバッテリー残量が少なくなった場合、ファイバレーザ22としての効率が高く、かつ視感度も大きな長波長のグリーン光で投影することにより、より少ない消費電力で明るい画像を表示できる。
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について説明する。図14に、本発明の実施の形態4に係るレーザ蛍光顕微鏡の構成を示す。本実施の形態に係るレーザ蛍光顕微鏡は、上記の実施の形態1に係るレーザ光源を用いたものである。本実施の形態に係るレーザ蛍光顕微鏡は、試料にローダミンなどの蛍光物質で染色し、上記実施の形態1に係るレーザ光源から発生した光により励起することにより、蛍光した部分を観察するものである。蛍光物質は数種類あり、それぞれ励起光の波長が異なっている。例えば、TRITCという蛍光試薬の励起波長は540nmであり、TexasRedという試薬では560nmとなっている他、様々な励起波長の蛍光試薬が市販されている。それぞれの試薬で細胞内に留まる部分が異なっているため、視認性を大きく高めることができるものである。
本実施の形態に係るレーザ蛍光顕微鏡1301のレーザ光源21から発せられたレーザ光をミラー1302a及び1302bで折り返し、顕微鏡1303内に導入する。レーザ光を試料1304に照射することで、試料1304内に保持されている蛍光試料を励起し、発光部分を画像で確認することができる。従来は、ハロゲンランプの光をダイクロイックミラーで分離したものや、色素レーザを使用した光源が用いられていたが、ハロゲンランプのものでは色分離しきれず、励起したくない色素まで励起してしまうという課題があった。色素レーザを用いたものでは、チューナブルレーザのため色分離が可能であるが、液体の色素を頻繁に交換する必要があり、メンテナンス回数が多いという課題があった。本実施の形態では、離散的な波長可変となるが、メンテナンスフリーであり、色素レーザと比較して大幅に小型化が可能となる。
以上説明したように、本発明の実施の形態1〜4によれば、複数の反射波長を持つ一組のファイバグレーティングの狭帯域側のファイバグレーティング周期を可変とすることにより、レーザの発振波長を離散的に変化させることができる。このことにより、高出力かつ複数の波長を切り替えて使用可能なレーザ光源装置を実現できる。また、狭帯域側の反射率とレーザ媒質のゲインとを合致させ、発振させたい波長を任意に選択できるため、複数波長を同時発振させる場合と比較して、W級の可視のレーザ光を安定に出力でき、視感度の高い緑色のレーザ光を出射することができる。さらに、高輝度で、色再現範囲が広く、高画質化、低消費電力化された2次元画像表示装置を実現できる。
なお、上記の実施の形態1〜4において、図15(a)に示すように、1120nmなどの1100nm以上の光を発振させ、高調波を得る場合、ファイバレーザ側で1000〜1100nmの波長範囲で増幅自然放出光(Amplifired Spontanious Emission)が発生し、励起用レーザを破壊することがある。このため、図15(b)に示すように、1000〜1100nmの波長範囲のうちのいずれかの波長で、同時に発振するようにファイバグレーティングを設計することにより、励起用レーザの破壊を防止することができ、安定した出力を得ることができる。
また、上記の実施の形態1〜4において、ファイバレーザは希土類元素としてYbをドープしたものを用いたが、他の希土類元素、例えば、Nd、Er等から選択された少なくとも1つの希土類元素を用いてもよい。また、波長変換素子の波長や出力に応じて、希土類元素のドープ量を変えたり、複数の希土類元素をドープしたりしてもよい。
さらに、上記の実施の形態1〜4において、ファイバレーザの励起用レーザには、波長915nm及び波長976nmのレーザを用いたが、ファイバレーザを励起できるものであれば、これらの波長以外のレーザを用いても良い。
上記の実施の形態1〜4に係るレーザ光源及び2次元画像表示装置は、高輝度で色再現範囲が広く低消費電力であるので、大型ディスプレイや高輝度ディスプレイ等のディスプレイ分野や、生化学分野における分析応用等に有用である。
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5について説明する。本実施の形態は、安定な可視光高出力レーザを得るレーザ光源を用いる、手術等に利用される医療用のレーザ光源装置に係るものである。
図16は、本実施の形態に係るレーザ光源装置の概略構成を示す図である。本実施の形態に係るレーザ光源装置2100は、レーザ発振装置2101と、レーザ光照射部2102と、を備えている。レーザ発振装置2101は、ファイバレーザ2103と、電源部2104と、制御部2105と、を有し、レーザ光照射部2102は、2つの波長変換素子2111及び2112と、光選択部2113と、を有している。また、レーザ発振装置2101には、レーザ光を出射させるタイミングをユーザにより決定可能とする点灯スイッチ2106が設けられている。ファイバレーザ2103から出射されたレーザ光は、ファイバ2117を通して、レーザ光照射部2102に伝搬される。
ファイバレーザ2103は、Yb等の希土類が添加されたファイバ2110と、ファイバ2110に入射する励起光を出力する励起用レーザ2107と、基本波の波長を選択可能なファイバグレーティング2108a、2108b、2109a及び2109bと、パンダカップラ2110aと、を有し、ファイバグレーティング2108a、2109a及びファイバ2110は、ダブルクラッド偏波保持ファイバで構成されている。
レーザ光照射部2102は、発生した可視光の一部をファイバ2117を通してレーザ発振装置2101に帰還させている。レーザ発振装置2101では、ファイバ2117を介して帰還する可視光がフォトダイオード2115及び2116によりモニターされる。制御部2105はそのモニター結果に基づき励起用レーザ2107の駆動する電源部2104を制御することにより励起用レーザ2107の出力を安定化させる。ファイバ2117は、レーザ光照射部2102からファイバ2117への可視光の結合損失及び、ファイバ2117による可視光の伝搬損失を低減するためには、ダブルクラッド偏波保持ファイバであることが望ましい。また、ファイバグレーティング2108b及び2109bを通常の偏波保持ファイバで構成することで、ダブルクラッド偏波保持ファイバであるファイバ2117との接続点で漏れ光が発生する。それにより、フォトダイオード2115及び2116のためのモニター用可視光を得ることができる。
次に、ファイバレーザ2103の動作について説明する。励起用レーザ2107からの励起光がファイバ2110に入射する。入射した励起光はファイバ2110に含まれるレーザ活性物質で吸収されつつ、ファイバ2110中を伝搬する。励起光がファイバ2110中を通過・吸収され、ファイバ2110内で基本波を増幅するゲインが一様に高くなった状態で、基本波の種光がファイバ2110の内部で発生する。この基本波の種光は、ファイバグレーティング2108aと2108bとを一組の共振器として、あるいは、ファイバグレーティング2109aと2109bを一組の共振器として、これら共振器の中を増幅されて強度を増しつつ何度も反射して往復し、ついにレーザ発振に至る。
パンダカプラ2110aは、基本波の偏光方向ごとに発振波長を変化させるために用いている。例えば、パンダカプラ2110aのslow軸方向に反射波長が1064nm、反射帯域が0.05nmのファイバグレーティング2109bを融着し、fast軸方向に反射波長が1178nm、反射帯域が0.05nmのファイバグレーティング2108bを融着することで、Ybファイバ2110内ではslow軸方向が1064nm、fast軸方向が1178nmで発振する。各波長によるfast/slow軸の方向は、それぞれの波長での偏光方向が直交していれば、それぞれ入れ替わっても同様の効果を得ることができる。
このように、基本波の偏光方向ごとに発振波長を変えることで、多波長発振時に発生するモード間競合による出力不安定を防止することができる。また、1178nmを発生させる場合には、波長が1040〜1090nmのASE(Amplitude Spontaneous Emission)光が発生してしまう。その結果、1178nm発生の効率が低下するばかりか、不用意なパルス発振が発生し、ファイバレーザ共振器を破壊する。このため、1178nm発生時には、1064nmも同時に発振させるようにしている。こうすることで、不用意なパルス発振が抑制されてファイバレーザ共振器の破壊を防ぐことができる。このとき、所望の波長が1178nmの高調波である589nmであれば、1064nmを発生させるためのファイバグレーティング2109bの温度または引っ張り応力を制御することにより、ファイバグレーティング2109bの反射波長を変化させて1064nmが発生している共振器のQ値を低下させる。それにより、励起光のエネルギーがファイバグレーティング2108bによる1178nmの発生に、より多く使われるようになる。
このように、ファイバグレーティング2108a、2109a及びファイバ2110はダブルクラッド偏波保持ファイバであることが必須である。一方、パンダカップラ2110a、ファイバグレーティング2108b及び2109bはダブルクラッド構造を持たない通常の偏波保持ファイバであることが望ましい。ファイバグレーティング2108b及び2109bが形成された偏波保持ファイバの末端、つまり基本波の出口は、基本波レーザ光をレーザ光出射部2102へ伝搬するファイバ2117に融着接続されている。そして、その融着接続点付近にはそれぞれ、レーザ光照射部2102内に配置される波長変換素子2111及び2112で発生する可視光の戻り光をモニターするためのフォトダイオード2115及び2116が配置されている。ただし、接続点では、赤外光も一緒に漏れてくるため、フォトダイオード2115及び2116には、赤外光フィルターが装着されていることが望ましい。本実施の形態の場合、波長変換素子2111及び2112の出射面に、波長変換により発生する可視光のうち8%だけ入射方向に戻すための誘電体多層膜が形成されている。入射方向へ反射された可視光は、再びファイバ2117に結合される。この際、ファイバ2117がダブルクラッドファイバであることにより、ファイバ2117への可視光の結合効率が向上し、より多くの可視光を上記の接続点まで伝搬することが可能となる。その結果、フォトダイオード2115及び2116は、上記の可視光をより正確にモニターすることができる。なお、波長変換素子2111及び2112の各出射面での可視光の反射量は、ファイバ2117の長さに依存し、1〜10%の範囲内であることが望ましい。
本実施の形態に係るレーザ光源装置2100は、波長変換素子2111及び2112の位相整合条件をファイバレーザ2103の発振波長を変化させることにより制御する。以下、この位相整合条件の制御について説明する。
図16において、上述したように、レーザ光照射部2102の波長変換素子2111及び2112の出射端面で反射された可視光は、ファイバ2117を通して、レーザ発振装置2101に伝搬され、フォトダイオード2115及び2116によりモニターされている。制御部2105は、フォトダイオード2115及び2116のモニター結果により、波長変換素子2111及び2112の各可視光の出力強度を取得する。制御部2105は、波長変換素子2111及び2112の各可視光の出力強度に基いてファイバグレーティング2108b及び2109bの反射波長をシフトさせることによりファイバレーザ2103の発振波長を変化させる。ファイバレーザ2103の発振波長が変化することにより、波長変換素子2111及び2112の位相整合条件が制御されることになる。
ファイバグレーティング2108b及び2109bの反射波長のシフト量の設定は、例えば、ペルチェ素子による温度制御により実現される。制御部2105は、波長変換素子2111及び2112の位相整合条件の不成立による出力強度の変動が生じると、ファイバグレーティング2108b及び2109bの温度制御によりファイバレーザ2103の発振波長を変化させることにより、波長変換素子2111及び2112の位相整合条件を再び成立させる。なお、ファイバグレーティング2108b及び2109bの反射波長のシフト量の設定は、上記の実施の形態1と同等、ファイバグレーティング2108b及び2109bに引っ張り応力を付加することにより制御しても良い。
次に、制御部2105によるファイバグレーティング2108b及び2109bの温度制御について具体的に説明する。なお、ファイバグレーティング2108b及び2109bのいずれの温度制御も同一の処理が行われるため、以下では、ファイバグレーティング2108bを温度制御する場合について説明する。図17(a)は、波長変換素子2112の温度が低下した場合の位相整合波長の変化を表わす模式図、図17(b)は、波長変換素子2112の温度が上昇した場合の位相整合波長の変化を表わす模式図である。ファイバグレーティング2108bは、予め所定の待機温度となるように、ペルチェ素子による温度制御がなされている。待機温度としては、例えば、波長変換素子2112の出力強度がピークとなる位相整合温度の85〜95%となり、かつ、位相整合温度より低い温度を用いることができる。
まず、図17(a)において、波長変換素子2112の温度が低下すると、図中の矢印A1で示すように、波長変換素子2112の出力は上昇する。このとき、位相整合波長の特性曲線は、図中の矢印A2で示すように、短波長側にシフトする。そこで、制御部2105は、ファイバグレーティング2108bの温度を低下させてファイバレーザ2103から出射される基本波の発振波長を短波長側にシフトさせる。それにより、図中の矢印A3で示すように、波長変換素子2112の出力は低下し、波長変換素子2112の待機温度時における出力に回復する。
一方、図17(b)において、波長変換素子2112の温度が上昇すると、図中の矢印B1で示すように、波長変換素子2112の出力は低下する。このとき、位相整合波長の特性曲線は、図中の矢印B2で示すように、長波長側にシフトする。そこで、制御部2105は、ファイバグレーティング2108bの温度を上昇させてファイバレーザ2103から出射される基本波の発振波長を長波長側にシフトさせる。それにより、図中の矢印B3で示すように、波長変換素子2112の出力は上昇し、波長変換素子2112の待機温度時における出力に回復する。
図18は、上述した制御部2105によるファイバグレーティング2108bの温度制御の処理手順を示すフローチャートである。まず、制御部2105は、フォトダイオード2116による波長変換素子2112からの戻り光の出力強度のモニター結果を取得し(ステップS101)、波長変換素子2112の出力が上昇しているか、あるいは、低下しているか、を判定する(ステップS102)。
次に、上記のステップS102において、波長変換素子2112の出力は上昇していると判定された場合には、制御部2105は、ファイバグレーティング2108bのペルチェ素子に流れる平均電流を減少させる(ステップS103)。それにより、ペルチェ素子の温度を低下させることによりファイバグレーティング2108bの温度を低下させてファイバレーザ2103から出射される基本波の発振波長を短波長側にシフトさせる(図17(a)参照)。
次に、制御部2105は、電源部2104により供給される励起用レーザ2107の駆動電流値が所定の設定範囲内にあることを確認するとともに、波長変換素子2112の出力強度を確認する(ステップS104)。そして、電源部2104からの駆動電流値と初期電流値とを比較し、両者の差が所定の設定範囲内であれば(ステップS105YES)、処理は終了し、所定の設定範囲外であれば(ステップS105NO)、再び上記のステップS101〜105を繰り返す。
一方、上記のステップS102において、波長変換素子2112の出力は低下していると判定された場合には、制御部2105は、ファイバグレーティング2108bのペルチェ素子に流れる平均電流を増加させる(ステップS106)。それにより、ペルチェ素子の温度を上昇させることによりファイバグレーティング2108bの温度を上昇させてファイバレーザ2103から出射される基本波の発振波長を長波長側にシフトさせる(図17(b)参照)。そして、上記のステップS105に進む。
このようにして、上述した制御部2105によるファイバグレーティング2108bの温度制御の処理が行われる。
本実施の形態では、ファイバグレーティング2108a及び2109aの反射波長の帯域幅は、ファイバグレーティング2108b及び2109bの反射波長のシフト量に対応するため、1nm以上であることが望ましい。また、ファイバグレーティング2108b及び2109bの反射波長のシフトによる共振器の発振効率の変化を抑えるため、ファイバグレーティング2108a及び2109aの反射波長の帯域のトップ形状は、リップルを抑えた形、つまりできるだけフラットであることが望ましい。
なお、本実施の形態では、ファイバグレーティング2108b及び2109bの温度を制御しているが、ファイバグレーティング2108a及び2108b、並びに、ファイバグレーティング2109a及び2109bを、それぞれ一組にして一緒に温度制御するようにしても良い。また、それぞれの組を温度補償パッケージに封入したりしても良い。このようにすることで、ファイバグレーティング2108a及び2109aの反射波長の帯域を0.2〜1nmとしても上記と同様の効果が得られる。
このように、ファイバレーザ2103の発振波長により波長変換された可視光の出力強度を制御することにより、レーザ発振装置2101からレーザ光照射部2102への配線を少なくすることができ、レーザ照射部2102の設計の自由度が向上する。また、レーザ光照射部2102を実際に手で持って施術する際に障害となる配線等が少なくなり、レーザ光照射部2102のユーザによる使い勝手を向上させることができる。
次に、レーザ光照射部2102の操作による出射光の波長変化について説明する。図19(a)〜(c)に、レーザ光照射部2102の概略構成を示す。
図19(a)〜(c)に示すように、レーザ光照射部2102は、2つの波長変換素子2111及び2112と、光選択部2113と、を有しており、光選択部2113は、図中の矢印で示す方向に移動可能な台座2401と、台座2401上に配置され、赤外光のみを反射する第1の誘電体多層膜ミラー2402と、第1の誘電体多層膜ミラー2402に隣接するように台座2401上に配置され、可視光のみを反射する第2の誘電体多層膜ミラー2403と、から構成されている。
図19(a)に、グリーン光2111aを出射する波長変換素子2111の出射面に対向するように第2の誘電体多層膜ミラー2403が位置する状態を示す。この場合、可視光のみを反射する第2の誘電体多層膜ミラー2403が波長変換素子2111の出射面の前にあるため、グリーン光2111aがレーザ光照射部2102の外部に出射される。
図19(b)に、オレンジ光2112aを出射する波長変換素子2112の出射面に対向するように第2の誘電体多層膜ミラー2403が位置する状態を示す。この場合、可視光のみを反射する第2の誘電体多層膜ミラー2403が波長変換素子2112の出射面の前にあるため、オレンジ光2112aがレーザ光照射部2102の外部に出射される。
図19(c)に、赤外光2111bを出射する波長変換素子2111の出射面に対向するように第1の誘電体多層膜ミラー2402が位置する状態を示す。この場合、赤外光のみを反射する第1の誘電体多層膜ミラー2402が波長変換素子2111の出射面の前にあるため、波長変換素子2111に入射された基本波のうち未変換の赤外光2111bがレーザ光照射部2102の外部に出射されることになる。
このようにして、レーザ光照射部2102の操作により出射光の波長を変化させることができる。
本実施の形態では、レーザ光照射部2102の出射光の波長に応じてレーザ発振装置2101のファイバレーザ2103を制御することによりファイバレーザ2103の発振効率の最適化を図ることができる。以下、この発振効率の最適化について説明する。
例えば、図19(a)の状態では、レーザ光照射部2102からの出射光はグリーン光2111aである。したがって、レーザ発振装置2101から出射されるべき基本波は、波長変換素子2111から出射されるグリーン光2111aの基本波となる1064nm光であり、波長変換素子2112から出射されるオレンジ光の基本波となる1178nm光は不要となる。そこで、このときには、制御部2105は、1178nm光を発振させるファイバグレーティング2108bの反射波長の帯域がファイバグレーティング2108aの反射波長の帯域から外れるように、ファイバグレーティング2108bの温度制御や引っ張り応力付加制御を行う。このようにすることで、1178nm光の発振を停止させ、励起用レーザ2107の励起エネルギーのすべてをファイバグレーティング2109bによる1064nm光の発振に利用することができる。このため、ファイバグレーティング2109bによる1064nm光の発振効率を向上させることができる。
図20(a)に、ファイバレーザ2103の発振波長に対するファイバグレーティング2108a、2108b、2109a及び2109bの反射波長の帯域の関係を示す。上述したように、発振波長1178nmでは、ファイバグレーティング2108bの反射波長の帯域がファイバグレーティング2108aの反射波長の帯域から外れ、発振波長1064nmでは、ファイバグレーティング2109bの反射波長の帯域はファイバグレーティング2109aの反射波長の帯域内に位置している。
次に、図19(b)の状態では、レーザ光照射部2102からの出射光はオレンジ光2112aである。したがって、レーザ発振装置2101から出射されるべき基本波は、波長変換素子2112から出射されるオレンジ光2112aの基本波となる1178nm光であり、波長変換素子2111から出射されるグリーン光の基本波となる1064nm光は、基本的には不要となる。ただし、このとき、上記のグリーン光の発生時と同様に、1064nm光の発振を完全に停止させた場合、ASE光のジャイアントパルスの発生によりファイバレーザ2103を破壊してしまう。このため、制御部2105は、1064nm光を発振させるファイバグレーティング2109bの反射波長の帯域がファイバグレーティング2109aの反射波長の帯域のエッジにかかるように、ファイバグレーティング2109bの温度制御や引っ張り応力付加制御を行う。このようにすることで、1064nm光を弱く発振させることが可能となり、ASEのジャイアントパルスを防止することができる。そのため、励起用レーザ2107の励起エネルギーの大部分をファイバグレーティング2108bによる1178nm光の発振に利用することができる。このため、ASEを発生させること無く、ファイバグレーティング2108bによる1178nm光の発振効率を向上させることができる。
図20(b)に、ファイバレーザ2103の発振波長に対するファイバグレーティング2108a、2108b、2109a及び2109bの反射波長の帯域の関係を示す。上述したように、発振波長1064nmでは、ファイバグレーティング2109bの反射波長の帯域がファイバグレーティング2109aの反射波長の帯域のエッジにかかっており、発振波長1178nmでは、ファイバグレーティング2108bの反射波長の帯域はファイバグレーティング2108aの反射波長の帯域内に位置している。
次に、図19(c)の状態では、レーザ光照射部2102からの出射光は波長変換素子2111に入射される基本波である赤外光2111bである。したがって、レーザ発振装置2101から出射されるべき基本波は、波長変換素子2111から出射されるグリーン光2111aの基本波となる1064nm光であり、波長変換素子2112から出射されるオレンジ光の基本波となる1178nm光は不要となる。そこで、このときには、制御部2105は、1178nm光を発振させるファイバグレーティング2108bの反射波長の帯域がファイバグレーティング2108aの反射波長の帯域から外れるように、ファイバグレーティング2108bの温度制御や引っ張り応力付加制御を行う。このようにすることで、1178nm光の発振を停止させ、励起用レーザ2107の励起エネルギーのすべてをファイバグレーティング2109bによる1064nm光の発振に利用することができる。このため、ファイバグレーティング2109bによる1064nm光の発振効率を向上させることができる。また、波長変換素子2111の位相整合条件を不成立とすることにより、波長変換素子2111による波長変換効率を低下させ、それにより、未変換の赤外光2111bの取り出し量を増加させることができる。
本実施の形態ではさらに、レーザ発振装置2101の点灯スイッチ2106及びレーザ光照射部2102のシャッター2114を用いることにより、レーザ光を出射させるタイミングをユーザにより決定可能とし、それにより、ファイバレーザ2103による消費電力の低減を図ることができる。以下、この消費電力の低減について説明する。
図21は、点灯スイッチ2106及びレーザ光照射部2102によるレーザ光照射部2102の出射動作の処理手順を示すフローチャートである。まず、レーザ光源装置2100のユーザにより点灯スイッチ2106がONされると(ステップS201)、点灯スイッチ2106から制御部2105へ点灯指令が通知される(ステップS202)。
制御部2105は、点灯スイッチ2106からの点灯指令に基づき電源部2104を制御することにより励起用レーザ2107にあらかじめ定められた駆動電流により励起用レーザ2107を点灯させる(ステップS203)。制御部2105は、励起用レーザ2107の点灯により発生する、波長変換素子2111及び2112から出射された可視光の戻り光を、フォトダイオード2115及び2116によりモニターする。そして、そのモニター結果を用いて、波長変換素子2111及び2112の出力強度が最大となるように、ファイバグレーティング2108b及び2109bの反射波長の制御により、ファイバレーザ2103の発振波長を変化させる(ステップS204)。ここで、ファイバグレーティング2108b及び2109bの反射波長の制御は、上述したように、温度制御によっても良いし、引っ張り応力付加制御によっても良い。
次に、制御部2105は、波長変換素子2111及び2112の出力が安定したところで(ステップS205YES)、レーザ光照射部2102のシャッター2114を開き、レーザ光照射部2102から波長変換素子2111及び2112の出射光を照射する(ステップS206)。一方、上記のステップS205において、出力が安定しなければ(ステップS205NO)、上記のステップS204及び205を繰り返す。
このようにして、点灯スイッチ2106及びレーザ光照射部2102によるレーザ光照射部2102の出射動作が行なわれる。
本実施の形態では、波長変換素子2111及び2112の位相整合条件を満たす方法として、ファイバレーザ2103の発振波長を変化させることを採用することで、点灯スイッチ2106の操作から可視レーザ光の出射までを200μs以下で実行することができる。
なお、上述したように、波長変換素子2111及び2112の温度制御により位相整合条件を満足させる場合、波長変換素子2111及び2112の熱容量が小さいものが望ましい。熱容量の小さな波長変換素子を用いることにより、温度制御する際の時定数を小さくし、短い時間で位相整合条件を満足させることが可能となるからである。
このように、点灯スイッチ2106の操作からレーザ光照射部2102からの光発射までの時間を短縮することで、ファイバレーザ2103を動作状態で待機させる必要が無くなり、大幅な低消費電力化を実現することができる。
本実施の形態では、発振波長ごとに異なるレーザ光照射部2102を使用する際において、レーザ光照射部2102の先端にプローブを付加することにより、レーザ光照射部2102の照射範囲を決定することができる。図22に、レーザ光照射部2102の出射面にプローブを付加した概略構成を示す。
図22に示すように、レーザ光照射部2102の出射面にプローブ2701が設けられている。プローブ2701の内部には、波長変換素子2111の出射光に対して例えば10%程度の反射率を有する反射ミラー2702が配置されている。波長変換素子2111の出射光は、反射ミラー2702により一部が反射され、その反射光は再び波長変換素子2111を通過し、ファイバ2117を通してレーザ発振装置2101のフォトダイオード2115によりモニターされることになる。このようにすることで、上記の反射光の有無により、プローブの装着/未装着を検出することが可能となり、レーザ光照射部2102の誤使用を防止することができる。また、出射光の波長範囲により使用するプローブの種類が異なる場合には、それぞれのプローブに適した波長範囲の光の反射に適した反射ミラーを設けることにより、使用波長に対するプローブの誤使用を防止することができる。
本実施の形態において、励起用レーザ2107の励起エネルギーを校正することで、レーザの立ち上げ時から所望の出力でかつ安定した可視レーザ光を得ることができる。例えば、レーザ発振装置2101のフォトダイオード2115及び2116によるモニター結果と波長変換素子2111及び2112の実際の出力強度とを校正する校正モードを設ければよい。レーザ発振装置2101にレーザ光照射部2102の出射光を直接取り込むことにより、実際の出力強度とフォトダイオード2115及び2116のモニター結果とから、実際の出力強度とモニター結果との相関を取る操作を行う。この相関データを補正データとして制御部2105内のレジスタ等の記憶媒体に格納する。この操作により、励起用レーザ2107の立ち上げ時から所望の出力でかつ安定した可視レーザ光を得ることができる。
なお、従来より、図23に示すように、ファイバレーザ2103の出力の増大によりファイバグレーティング2108b及び2109bが発振光により加熱され、不均一な熱膨張が発生して反射波長の帯域幅が広くなることがあった。例えば、図24に、波長変換素子2111及び2112を分極反転周期長25mmのMg:LiNbO3結晶を擬似位相整合により構成した場合における、ファイバレーザ2103のレーザ光の基本波の半値幅と、基本波から高調波への波長変換効率(規格化された波長変換効率)との関係を示す。図24に示すように、ファイバグレーティング2108b及び2109b反射波長の帯域幅が広くなる結果、ファイバレーザ2103から出射される基本波の半値幅が広くなり、波長変換素子2111及び2112による波長変換効率が低下するという課題がある。通常、Mg:LiNbO3結晶を用いた波長変換素子の最大波長変換効率は6.5%/W程度であるが、基本波の半値幅が大きくなると波長変換効率を最大限引き出すことが困難となってしまう。このため、最大波長変換効率の90%以上で波長変換素子を使用するためには、ファイバレーザ2103のレーザ光の基本波の半値幅は0.06nm以下であることが望ましい。本実施の形態では、この課題に対し、ファイバグレーティング2108b及び2109bに引っ張り応力を与えながら固定することにより、部分的な熱膨張を均一化することが可能となる。そのため、図25に示すように、ファイバレーザ2103の出力が増加した場合においても、基本波の帯域幅の広がりが抑制され、基本波から可視光への波長変換効率の低下を防止することができる。
本実施の形態において、ファイバレーザ2103の励起用レーザ光源2107には、波長915nm及び波長976nmのレーザを用いることが一般的であるが、ファイバレーザ2103を励起できるものであれば、これらの波長以外のレーザ光源を用いてもよい。
また、波長変換素子2111及び2112は、分極反転周期構造のMgO:LiNbO3を用いたが、他の材料や構造の波長変換素子、例えば、分極反転周期構造のリン酸チタニルカリウム(KTP)やMg:LiTaO3を用いてもよい。
なお、ファイバレーザ2103のレーザ光の基本波の発振波長の範囲は、特に、医療用装置の分野に限れば、血液中に含まれるヘモグロビンの吸収スペクトルとの関係から、1028〜1064nmと1120〜1200nmであることが望ましい。
以上説明したように、本発明の実施の形態5によれば、レーザ光の光学的な損失を小さくすることにより、装置全体の消費電力を低減することができる。また、互いに違う波長の偏光方向を直交させることによりモード間競合を防止し、安定したレーザ光出力を得ることができる。さらに、発振波長によりレーザ共振器のQ値を可変とすることにより、レーザ発振器の効率低下を抑えながら、不用意なレーザ光のパルス発振を防止できる。それにより、装置の信頼性を向上させることができる。
上記の実施の形態5に係るレーザ光源装置は、高輝度で低消費電力であるので、眼科等で使用される医療用装置の分野で有用であるとともに、レーザディスプレイ等の表示装置としても応用可能である。