JP5189305B2 - 粉末形状の分泌型IgA及び/又はIgG抗体誘導剤 - Google Patents
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Description
また本発明は、経鼻投与(鼻粘膜接種)することにより、当該分泌型IgA及び/又はIgG抗体の産生を誘導させ、それによりウイルスからの感染を防御する方法、さらには分泌型IgA及び/又はIgG抗体誘導剤に関する。
またそれに加えて最近、フラビウイルスの一種であるハンタウイルスによる感染症も大きく問題視される様になってきた。ハンタウイルス感染症は、ネズミを自然宿主とするハンタウイルスによる人獣共通感染症であり、該ウイルスはネズミの糞、尿中に排出され、多くは、新鮮な糞または乾燥した糞、尿中からエアロゾルとしてウイルスを吸い込むことにより感染するが、ネズミの咬傷でも感染するとされている。さらに、ネズミに触れたものを介して鼻、目又は口に触れることで感染すると考えられている。
特に、毎年の発生件数が数多く報告されている中国、極東ロシア、韓国等においては、かかる感染症に対するワクチンの提供は急務であるといえる。
したがって、より効果的な免疫応答発現のためには、ワクチンと同時に投与するアジュバントが、経鼻的に粘膜状への吸着性が良好な形態の接種方法の開発が望まれていた。
したがって、呼吸器粘膜上における分泌型IgA抗体の産生を誘導し、血清中でのIgG抗体応答が得られれば、効果的なハンタウイルスをはじめとするウイルス感染症の予防となり得る。
(1)Poly(I:C)誘導体又はアジュバントを凍結乾燥し粉末の形態にし、含有することを特徴とする分泌型IgA及び/又はIgG抗体誘導剤;
(2)ウイルス由来の不活化抗原、及びPoly(I:C)誘導体又はアジュバントを凍結乾燥し粉末の形態にしたことを特徴とする分泌型IgA及び/又はIgG抗体誘導剤;
(3)呼吸器粘膜に投与することを特徴とする上記1又は2に記載の分泌型IgA及び/又はIgG抗体誘導剤;
(4)ウイルスがウエストナイルウイルス、ハンタウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、インフルエンザウイルス、C型肝炎ウイルス、マラリア、眠り病である上記1〜3に記載の分泌型IgA及び/又はIgG抗体誘導剤。
(5)凍結乾燥粉末の形態にある、ウイルス由来の不活化抗原、及びPoly(I:C)誘導体又はアジュバントを投与することを特徴とするウイルス特異的IgA及び/又はIgG抗体を誘導させる方法;
(6)呼吸器粘膜に投与することを特徴とする上記5に記載の分泌型IgA及び/又はIgG抗体を誘導させる方法。
(7)呼吸器粘膜が鼻粘膜である上記6に記載のgA及び/又はIgG抗体を誘導させる方法;
(8)ウイルスがウエストナイルウイルス、ハンタウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、インフルエンザウイルス、C型肝炎ウイルス、マラリア、眠り病である上記5〜7に記載のウイルス特異的IgA及び/又はIgG抗体を誘導させる方法;
である。
分泌型IgA及び/又はIgG抗体は、外分泌液中の主要な免疫グロブリンであり、粘膜表面の感染防御に役立っている病原菌特異的IgA及び/又はIgG抗体であって、唾液、鼻汁、腸、気管などの分泌液中、あるいは初乳中に多くみられ、また血清中にも存在する。したがって、本発明が提供するワクチンを投与することによりこのIgA及び/又はIgG抗体の産生が効果的に誘導され、ウイルスによる感染を防御するものである。
また、本発明が提供するワクチンは、粉末として簡便に接種しうるものであり、その有用性は多大なものである。
事実、Poly(I:C)を含むTLRのリガンドである2本鎖RNAが、アジュバントとしてワクチンと共に投与された場合には、そのワクチン能を増強させるのではなく、二本鎖RNAであるPoly(I:C)自体が、種々の病原菌あるいはウイルス等の病原体の攻撃に対する防御免疫能を増強せしめ、特にウイルスまたは病原菌特異的IgA抗体及びIgG抗体を誘導させることによって病原体による感染を防御する。
また、本発明にいう不活化抗原とは、感染能を失わせた抗原をいい、完全ウイルス粒子であるビリオン、不完全ウイルス粒子、ビリオン構成粒子、その翻訳後修飾体、ビリオン非構成タンパク質、その翻訳後修飾体、感染防御抗原、中和反応のエピトープなどを挙げられることができる。不活化は、例えば、物理的(例えば、X線照射、熱、超音波)、化学的(ホルマリン、水銀、アルコール、塩素)などの操作により行うことができる。
かかる凍結乾燥形態にある分泌型IgA及び/又はIgG抗体誘導剤の投与は、微粉末を粘膜投与することにより行うことができる。脊椎動物における粘膜には、消化器、呼吸器、排出器、生殖器などの特に外通性の中腔器官の内壁が含まれる。したがって、本発明の好ましい投与形態である粘膜投与としては、例えば、鼻腔投与(経鼻投与)、口腔投与、膣内投与、上気道投与、肺胞投与などをあげることができる。そのなかでも鼻腔内粘膜投与が好ましい。鼻腔は特に、ハンタウイルスをはじめとするフラビウイルスによる呼吸器感染症疾患、あるいはインフルエンザウイルス感染経路の門戸であることから、粘膜投与により分泌型IgA抗体反応を引き起こし、粘膜上皮細胞中に分泌型IgA抗体を産生させること、及び血清中にIgG抗体を産生させることは、これらの感染症の防御に結びつくものである。
合成二本鎖RNAとしてPoly(I:C)をアジュバントとして用いて、不活化抗原として不活化ウイルスまたはサブユニット抗原の中和抗体惹起能、ひいては抗病原体効果を確認した。
(材料)
マウス:BALB/cマウス(6週齢、雌性)
ウイルス:ハンタウイルス株(国立感染症研究所(東京)から入手した)。
ワクチン:ハンタウイルス株(国立感染症研究所);エーテル処理不活化ワクチン
アジュバント:ポジティブコントロールとしてCTB*[CTB(コレラ毒素Bサブユニット)、0.1%CT(コレラ毒素)を含む]、Poly(I:C)
6週齢のBALB/cマウス(日本SLC(株)、東京)各群5匹ずつ用いた。ハンタウイルス株ワクチン1μgを、それぞれのアジュバントとしてPoly(I:C)、0.1μg、1μg、3μg、10μgと共に凍結乾燥品とし、マウスの鼻に接種し、その3週間後同量のワクチンを、アジュバント無し、もしくはアジュバント有りのものとして経鼻接種し、さらに2週間後に100pfuのハンタウイルスを片鼻に1.2μLずつ接種し感染を行った。
コントロールとしてPoly(I:C)10μgおよび1μgのみ、ワクチンのみ、処置なしの群をおいた。
感染3日後に、鼻腔洗浄液、血清を回収し、鼻腔洗浄液中のIgAおよび血清中のIgGをELISA法により、また、鼻腔洗浄液中のウイルス価を、MDCK細胞を用いたプラークアッセイで測定した。
なお、対照群として2.5μg、10μg、25μgのCTB*(CTB、0.1%CTを含む)を同様に25μLのPBSに溶解した溶液を脳内に接種した群をおいた。
(1)Poly(I:C)をアジュバントに用いた経鼻ハンタウイルスワクチンによる抗体誘導と感染防御について
Poly(I:C)の粘膜アジュバント能を評価した。6週間前に1μgのワクチンを0.1μg〜10μgに量を振ったPoly(I:C)と共に経鼻接種し、さらに2週間前に同量のワクチンを、ワクチンのみまたはアジュバントと共に経鼻接種した。経鼻粘膜でのIgA抗体応答と、血中IgG応答を表1にまとめた。
その結果、表1に示した結果からも判明するように、鼻腔粘膜にIgAの応答のためには、最低で0.1μgのPoly(I:C)を初回免疫時に使用すると応答が認められることが判明した。
2回の免疫ともに、Poly(I:C)を用いると、Poly(I:C)1μgの量で鼻腔洗浄液中に100ng/mL以上のIgAの分泌がみられ、初回のみの免疫の場合には3μgのPoly(I:C)添加で、100ng/mL以上の特異的IgA抗体の誘導が認められた。
血清中のIgGの産生も同時に検討したが、その産生は、IgAの分泌に相関するものであり、1μgのワクチンをPoly(I:C)と共に4週間間隔で2回免疫すると、1.6μg/mLの血中IgGが得られた。
これに対し、Poly(I:C)を併用して経鼻ワクチン接種を2回行った群では、完全にウイルス増殖が抑制されており、また、ワクチン単独で1μg以上を2回免疫した群、ならびに3μg以上のPoly(I:C)を初回免疫時のみ使用した群では、全くウイルス抑制効果は認められなかった。
これらの結果をまとめて表2に示した。
6週間前に1μgのワクチンとPoly(I:C)を10μg、3μgおよび1μg併用して経鼻接種し、2週間前にワクチンのみで追加免疫し、40LD50のハンタウイルス20μLを感染させ、肺炎の防御能を調べた。
ワクチンを接種しない群では、マウスは1週間以内に前例(5/5)が死亡し、ウイルス感染3日後の肺のウイルス価も106pfu以上であった。
これに対してワクチン接種群では、1μg以上のPoly(I:C)を併用接種することで、全マウスは生存していた。この結果を表3に示す。
(材料)
ワクチン:エーテル処理ハンタウイルスHAワクチン;ホルマリン不活化全ウイルス粒NCワクチン(Inactivated whole particle vaccine)
マウス:BALB/cマウス(6週齢、雌性)
(方法)
ハンタウイルスのホルマリン不活化全ウイルス粒子NCワクチン(Inactivated whole particle vaccine)0.1μgを、Poly(I:C)[100−1000bp:東レ]0.1μgと共に凍結乾燥させ、併用経鼻ハンタウイルスワクチンのワクチン成分としてマウス:BALB/cマウス(6週齢、雌性)に投与し、3週間後に同じワクチンを2回目投与した。
その1週間後にマウスの鼻洗浄液と血清中の抗体応答を、それぞれ粘膜および全身の防御免疫の指標として測定した。
それらの結果を表4に示した。
しかも、ワクチンとPoly(I:C)とをそれぞれ0.1μgで用いたときであっても、spilit−product vaccineをCTB*と併用して安全なウイルス感染阻止が予測されるアジュバント活性の陽性対照群と同等の応答を示した。
さらにこれらの応答は、spilit−product vaccineをPoly(I:C)と共に用いた場合よりも高かった。
以上の事実から、spilit−product vaccineのみならず、他の形態のワクチンを使用した場合でも、Poly(I:C)併用経鼻ワクチンの有用性が確認された。
(材料)
ウイルス:ハンタウイルス
Poly(I:C):
サイズ(L):1〜300bp(Fluka)
サイズ(M):100〜1000bp(東レ)
サイズ(H):>3.3×106bp(Fluka)
Poly(A:U)
マウス:BALB/cマウス(6週齢、雌性)
(方法)
ハンタウイルスのspilit−product vaccine(0.4μg)を、種々の大きさのPoly(I:C)の0.1μgとともに凍結乾燥させ、この凍結乾燥粉末をBALB/cマウス(6週齢、雌性)に経鼻接種し、3週間後に同じワクチンを2回目投与した。
その1週間後にマウスの鼻洗浄液と血清中のHAとNAに対する抗体応答を、それぞれ粘膜および全身の防御免疫の指標として測定した。
その結果を表7に示した。
感染実験用マウスとして、新生マウス(suckling mouse)を用いた感染実験を行った。
経鼻投与により、新生マウスに抗原(ハンタウイルス)とアジュバントとしてPoly(I:C)を凍結乾燥し、粉末状のワクチンを鼻粘膜上に投与し、そのときの抗体価を測定した。
抗原1μg及びPoly(I:C) 10μgを凍結乾燥させ、その凍結乾燥粉末を用いて、3週間間隔で2回接種を行い、その1週間後にマウスの鼻洗浄液と血清中の抗体応答を測定した。そのときのマウス鼻洗浄液1mL中のIgA抗体価は200ng/mL程度であり、血清中のIgG抗体価は3〜4μg/mLであった。
また、抗原1μg及びPoly(I:C) 3μgの凍結乾燥粉末を、3週間間隔で2回経鼻的に接種を行い、その1週間後にマウスの鼻洗浄液と血清中の抗体応答を測定したときのマウス鼻洗浄液1mL中のIgA抗体価は100ng/mL程度であり、血清中のIgG抗体価は2〜3μg/mLであった。
本発明のワクチンは、粉末状のワクチンとして簡便に鼻粘膜上に接種し得るものであり、その有用性は多大なものである。
Claims (2)
- ハンタウイルス由来の不活化抗原、及びPoly(I:C)誘導体又はアジュバントを凍結乾燥し、粉末の形態にしたことを特徴とする分泌型IgA及び/又はIgG抗体誘導剤。
- 呼吸器粘膜に投与することを特徴とする請求項1に記載の分泌型IgA及び/又はIgG抗体誘導剤。
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