JP5995329B2 - インフルエンザワクチン、組成物、および使用方法 - Google Patents

インフルエンザワクチン、組成物、および使用方法 Download PDF

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分野
本発明は、微生物学およびウイルス学の分野に関する。
背景
3種類のインフルエンザウイルス:A型、B型およびC型が存在し、それらの疫学的パターンは大きく異なる。インフルエンザA型ウイルスは、最もよく特徴付けされているウイルスであり、大規模な流行または世界的流行を引き起こす能力を有する、公衆衛生への最も深刻な驚異でもある。このウイルスはまた、抗原的に非常に多様であり、有効なワクチンの生産を難しくする。
インフルエンザに対するワクチンは、疾患を予防しかつ疾患の拡散を制御するための、最も効果的、安全、非毒性かつ経済的な武器の1つである。ワクチン接種の主要目的は、特異的な適応免疫応答を活性化することであり、主として疾患または疾患因子に関連する抗原に対するBリンパ球およびTリンパ球を生じることにある。
現在、インフルエンザに対するいくつかのワクチンが入手可能であり、主に不活性化ワクチンからなる。これらのワクチンは、2種類のA型抗原(例えばH1N1およびH3N2)および1種類のB型抗原を含むことができる。入手可能なワクチンは典型的には、ビリオン全体、分解産物、およびサブユニットのワクチンを含む。一般的に、これらのワクチンは、ワクチンが新興の流行の同一性に厳密に適合した場合に、ワクチン接種された個体の最大で90%に有効である。しかしながら、それらは、インフルエンザウイルスの抗原連続変異に対応するために毎年最新のものにされる必要がある。
さらに、季節性インフルエンザに対する、低温に適応させた鼻腔内用の弱毒生ワクチン(LAIV)が、最近記載されている。交差防御免疫が、H1N1株に感染したコットンラットにおけるH3N2ウイルスに対する防御を報告する試験で示された。しかしながら、LAIVに関連する主な懸念の1つは、新規な潜在感染株をもたらす、遺伝的復帰および野生型インフルエンザウイルスとの遺伝子再集合の可能性である。
本発明は、活性主薬として変異ボルデテラ(Bordetella)株を用いる、1つまたは複数のインフルエンザ株に対して免疫応答を誘発するワクチンおよび組成物を提供することにより、インフルエンザワクチン領域におけるこれらの問題および他の問題に対応する。
加えて、関連技術は、例えばヒトに百日咳を引き起こす能力を有するボルデテラ細菌に対して免疫応答を誘導するための、ボルデテラ株を用いる様々な種類のワクチンおよび組成物を記載している(WO2007104451(特許文献1)およびWO2003102170(特許文献2))が、該技術は、本発明の方法、組成物および/またはワクチンを用いる、哺乳動物においてインフルエンザウイルスへの免疫応答を誘発するための方法または組成物を開示していない。
よって、インフルエンザウイルス感染により引き起こされる疾患に対して広範な保護を提供することができる新規インフルエンザワクチンの必要性が存在する。
WO2007104451 WO2003102170
概要
本発明は、哺乳動物におけるインフルエンザ感染を治療または予防するための変異ボルデテラ株を含む組成物およびワクチンに関する。加えて、本発明はさらに、組成物およびワクチンを用いて、インフルエンザによる感染に対して哺乳動物を保護する方法および/または哺乳動物においてインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘発するための方法を提供する。
1つの局面において、本発明は、変異ボルデテラ株を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物においてインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘発する方法であって、菌株が、変異した百日咳毒素(ptx)遺伝子、欠失または変異した皮膚壊死(dnt)遺伝子、および異種ampG遺伝子を含む、方法を提供する。いくつかの局面において、ボルデテラ株は、百日咳菌(Bordetella pertussis)株を含む。いくつかのそのような局面において、野生型ボルデテラ株ampG遺伝子は、大腸菌(E. coli)ampG遺伝子により置換されている。他の局面において、ptx遺伝子の変異は、基質結合に関与するアミノ酸および/または触媒作用に関与するアミノ酸の置換を含む。いくつかのそのような局面において、基質結合に関与するアミノ酸の置換はR9Kを含み、触媒作用に関与するアミノ酸の置換はE129Gを含む。いくつかの局面において、ボルデテラ株は、三重変異体株を含む。いくつかのそのような局面において、ボルデテラ株は、BPZE1株を含む。他のそのような局面において、ボルデテラ株は弱毒化されている。いくつかの局面において、ボルデテラ株は生菌株を含む。他の局面において、ボルデテラ株は、異種ampG遺伝子以外の異種遺伝子を含まない。いくつかの局面において、ボルデテラ株は、異種抗原を哺乳動物の呼吸粘膜に運ぶための異種発現プラットフォームを含まない。他の局面において、本方法は、哺乳動物におけるインフルエンザ感染を予防または治療する段階をさらに含む。いくつかの局面において、ボルデテラ株は、インフルエンザ感染の前に投与される。いくつかのそのような局面において、ボルデテラ株は、インフルエンザ感染の約6週またはそれより前に投与される。他のそのような局面において、ボルデテラ株は、インフルエンザ感染の約12週またはそれより前に投与される。いくつかの局面において、インフルエンザウイルスは、H3またはH1を含む。他の局面において、インフルエンザウイルスは、N2またはN1を含む。
いくつかの局面において、インフルエンザウイルスは、H3およびN2を含む。他の局面において、インフルエンザウイルスはH1およびN1を含む。いくつかの局面において、免疫応答は、Th1免疫応答を含む。いくつかの局面において、菌株は、皮下投与(s.c.)、皮内投与(i.d.)、筋肉内投与(i.m.)、静脈内投与(i.v.)、経口投与もしくは鼻腔内投与により、または注入により、または吸入により、哺乳動物に投与される。他の局面において、菌株は鼻腔内に投与される。いくつかの他の局面において、菌株は、インフルエンザ感染に対する防御免疫の必要がある哺乳動物に投与される。いくつかの局面において、哺乳動物は子供である。いくつかの局面において、菌株は単回投与される。いくつかの局面において、菌株は、1回より多く投与される。いくつかのそのような局面において、菌株は2回投与される。他の局面において、約3週間離して2回投与される。いくつかの局面において、インフルエンザ感染に対する保護のレベルは、約60%を上回る。他の局面において、インフルエンザ感染に対する保護のレベルは、約50%を上回る。いくつかの局面において、哺乳動物はヒトである。
別の局面において、本発明は、H3N2インフルエンザウイルスによるヒトの感染の前にヒトに生の弱毒化されたBPZE1株を鼻腔内に投与する工程を含む、ヒトにおいてH3N2インフルエンザウイルスに対する防御免疫応答を誘発する方法であって、菌株がヒトの呼吸粘膜に異種抗原を運ぶための異種発現プラットフォームを含まない、方法を提供する。
別の局面において、本発明は、生ボルデテラ株をヒトに投与する工程を含む、ヒトにおいてインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘発する方法であって、菌株が、ヒトの呼吸粘膜に異種抗原を運ぶための異種発現プラットフォームを含まない、方法を提供する。
別の局面において、本発明は、変異したptx遺伝子、欠失または変異したdnt遺伝子、および異種ampG遺伝子を含む変異ボルデテラ株を哺乳動物に投与する工程を含む、インフルエンザ感染により引き起こされる疾患に対して哺乳動物を保護する方法を提供する。
別の局面において、本発明は、変異したptx遺伝子、欠失または変異したdnt遺伝子、および異種ampG遺伝子を含む変異ボルデテラ株を哺乳動物に投与する工程を含む、インフルエンザ感染に対する防御免疫を提供する。
別の局面において、本発明は、変異ボルデテラ株を含む、哺乳動物においてインフルエンザ感染を治療または予防するための組成物であって、菌株が、変異した百日咳毒素(ptx)遺伝子、欠失または変異した皮膚壊死(dnt)遺伝子、および異種ampG遺伝子を含む、組成物を提供する。いくつかの局面において、ボルデテラ株は、百日咳菌株を含む。他の局面において、野生型ボルデテラ株ampG遺伝子は、大腸菌ampG遺伝子に置換される。いくつかの局面において、ptx遺伝子の変異は、基質結合に関与するアミノ酸および/または触媒作用に関与するアミノ酸の置換を含む。他の局面において、基質結合に関与するアミノ酸の置換はR9Kを含み、触媒作用に関与するアミノ酸の置換はE129Gを含む。いくつかの局面において、ボルデテラ株は三重変異体株を含む。
別の局面において、本発明は、哺乳動物においてインフルエンザ感染を治療または予防するための本発明の組成物を含むワクチンを提供する。いくつかの局面において、ワクチンは、本明細書において記載のボルデテラ株組成物を含む。いくつかの局面において、ワクチンは、鼻腔内投与用に製剤化される。
別の局面において、本発明は、アクセション番号CNCM I-3585により特定されるボルデテラ株を提供する。
別の局面において、発明は、アクセション番号V09/009169により特定されるボルデテラ株を提供する。
[本発明1001]
哺乳動物においてインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘発する方法であって、該方法が、変異ボルデテラ(Bordetella)株を該哺乳動物に投与する工程を含み、菌株が、変異した百日咳毒素(ptx)遺伝子、欠失または変異した皮膚壊死(dnt)遺伝子、および異種ampG遺伝子を含む、方法。
[本発明1002]
ボルデテラ株が百日咳菌(Bordetella pertussis)株を含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
野生型ボルデテラ株ampG遺伝子が、大腸菌(E. coli)ampG遺伝子により置換されている、本発明1002の方法。
[本発明1004]
ptx遺伝子の変異が、基質結合に関与するアミノ酸および/または触媒作用に関与するアミノ酸の置換を含む、本発明1003の方法。
[本発明1005]
基質結合に関与するアミノ酸の置換がR9Kを含み、かつ触媒作用に関与するアミノ酸の置換がE129Gを含む、本発明1004の方法。
[本発明1006]
ボルデテラ株が三重変異体株を含む、本発明1001の方法。
[本発明1007]
ボルデテラ株がBPZE1株を含む、本発明1006の方法。
[本発明1008]
ボルデテラ株が弱毒化されている、本発明1001の方法。
[本発明1009]
ボルデテラ株が生菌株を含む、本発明1001の方法。
[本発明1010]
ボルデテラ株が、異種ampG遺伝子以外の異種遺伝子を含まない、本発明1001の方法。
[本発明1011]
ボルデテラ株が、異種抗原を哺乳動物の呼吸粘膜に運ぶための異種発現プラットフォームを含まない、本発明1001の方法。
[本発明1012]
哺乳動物におけるインフルエンザ感染を予防する段階または治療する段階をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1013]
ボルデテラ株が、インフルエンザ感染前に投与される、本発明1001の方法。
[本発明1014]
ボルデテラ株が、インフルエンザ感染の約6週またはそれより前に投与される、本発明1013の方法。
[本発明1015]
ボルデテラ株が、インフルエンザ感染の約12週またはそれより前に投与される、本発明1014の方法。
[本発明1016]
インフルエンザウイルスが、H3またはH1を含む、本発明1001の方法。
[本発明1017]
インフルエンザウイルスが、N2またはN1を含む、本発明1001の方法。
[本発明1018]
インフルエンザウイルスが、H3およびN2を含む、本発明1001の方法。
[本発明1019]
インフルエンザウイルスが、H1およびN1を含む、本発明1001の方法。
[本発明1020]
免疫応答が、Th1免疫応答を含む、本発明1001の方法。
[本発明1021]
菌株が、皮下(s.c)、皮内(i.d.)、筋肉内(i.m.)、静脈内(i.v.)、経口、もしくは鼻腔内投与により;または注入により、または吸入により哺乳動物に投与される、本発明1001の方法。
[本発明1022]
菌株が鼻腔内に投与される、本発明1001の方法。
[本発明1023]
菌株が、インフルエンザ感染に対して防御免疫の必要がある哺乳動物に投与される、本発明1001の方法。
[本発明1024]
哺乳動物が子供である、本発明1001の方法。
[本発明1025]
菌株が1回投与される、本発明1001の方法。
[本発明1026]
菌株が1回より多く投与される、本発明1001の方法。
[本発明1027]
菌株が2回投与される、本発明1026の方法。
[本発明1028]
約3週間離して2回投与される、本発明1027の方法。
[本発明1029]
インフルエンザ感染に対する保護のレベルが約60%を上回る、本発明1018の方法。
[本発明1030]
インフルエンザ感染に対する保護のレベルが約50%を上回る、本発明1019の方法。
[本発明1031]
哺乳動物がヒトである、本発明1001の方法。
[本発明1032]
ヒトにおいてH3N2インフルエンザウイルスに対する防御免疫応答を誘発する方法であって、該方法が、H3N2インフルエンザウイルスによるヒトの感染前に生の弱毒化BPZE1株を該ヒトに鼻腔内投与する工程を含み、菌株が、異種抗原をヒトの呼吸粘膜に運ぶための異種発現プラットフォームを含まない、方法。
[本発明1033]
ヒトにおいてインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘発する方法であって、該方法が、生のボルデテラ株を該ヒトに投与する工程を含み、菌株が、異種抗原をヒトの呼吸粘膜に運ぶための異種発現プラットフォームを含まない、方法。
[本発明1034]
インフルエンザ感染により引き起こされる疾患に対して哺乳動物を保護する方法であって、変異したptx遺伝子、欠失または変異したdnt遺伝子、および異種ampG遺伝子を含む変異ボルデテラ株を該哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
[本発明1035]
インフルエンザ感染に対して防御免疫をもたらす方法であって、変異したptx遺伝子、欠失または変異したdnt遺伝子、および異種ampG遺伝子を含む変異ボルデテラ株を哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
[本発明1036]
哺乳動物においてインフルエンザ感染を治療または予防するための組成物であって、変異した百日咳毒素(ptx)遺伝子、欠失または変異した皮膚壊死(dnt)遺伝子、および異種ampG遺伝子を含む変異ボルデテラ株を含む、組成物。
[本発明1037]
ボルデテラ株が百日咳菌株を含む、本発明1036の組成物。
[本発明1038]
野生型ボルデテラ株ampG遺伝子が、大腸菌ampG遺伝子により置換されている、本発明1037の組成物。
[本発明1039]
ptx遺伝子の変異が、基質結合に関与するアミノ酸および/または触媒作用に関与するアミノ酸の置換を含む、本発明1038の組成物。
[本発明1040]
基質結合に関与するアミノ酸の置換がR9Kを含み、かつ触媒作用に関与するアミノ酸の置換がE129Gを含む、本発明1039の組成物。
[本発明1041]
ボルデテラ株が三重変異体菌株を含む、本発明1036の組成物。
[本発明1042]
ボルデテラ株がBPZE1株を含む、本発明1041の組成物。
[本発明1043]
ボルデテラ株が弱毒化されている、本発明1036の組成物。
[本発明1044]
ボルデテラ株が生菌株を含む、本発明1036の組成物。
[本発明1045]
ボルデテラ株が、異種ampG遺伝子以外の異種遺伝子を含まない、本発明1036の組成物。
[本発明1046]
ボルデテラ株が、異種抗原を哺乳動物の呼吸粘膜に運ぶための異種発現プラットフォームを含まない、本発明1036の組成物。
[本発明1047]
薬学的に適した賦形剤、媒体および/または担体をさらに含む、本発明1036の組成物。
[本発明1048]
アジュバントをさらに含む、本発明1036の組成物。
[本発明1049]
インフルエンザ感染に影響を与えることができる低分子をさらに含む、本発明1036の組成物。
[本発明1050]
アクセション番号CNCM I-3585により特定されるボルデテラ株を含む組成物。
[本発明1051]
アクセション番号V09/009169により特定されるボルデテラ株を含む組成物。
[本発明1052]
哺乳動物におけるインフルエンザ感染を治療または予防するための、本発明1036の組成物を含むワクチン。
[本発明1053]
鼻腔内投与用に製剤化された、本発明1052のワクチン。
[本発明1054]
哺乳動物におけるインフルエンザ感染を治療または予防するための、本発明1050の組成物を含むワクチン。
[本発明1055]
鼻腔内投与用に製剤化された、本発明1054のワクチン。
[本発明1056]
哺乳動物におけるインフルエンザ感染を治療または予防するための、本発明1051の組成物を含むワクチン。
[本発明1057]
鼻腔内投与用に製剤化された、本発明1056のワクチン。
本発明のこれらのおよび他の特徴、局面、および利点は、以下の記載および添付の図面に関連してより良く理解されるようになる。
マウス適合H3N2ウイルスによる致死的攻撃に対するBPZE1処置マウスの保護率を示す。成体Balb/cマウスに、5×106cfuのBPZE1細菌を経鼻的に投与し、3週間後(黒四角)または6週間後(黒三角)のいずれかに致死用量(2LD50)のマウス適合H3N2ウイルスにより攻撃した。体重変化を毎日モニターし、体重が元の体重の20%を超えて減少した場合に、マウスを安楽死させた。生存率を非処置マウス(黒菱形)と比較した。1群あたり10匹の動物を評価した。結果は、3回の独立した実験の代表である。 BPZE1死細菌かBPZE1生細菌で処置されたマウスにおける、マウス適合H3N2ウイルスによる致死的攻撃に対する保護率を示す。成体Balb/cマウスに5×106cfuのBPZE1生細菌(黒三角)またはBPZE1死細菌(黒四角)を経鼻的に投与し、6週間後に致死用量(2LD50)のマウス適合H3N2ウイルスにより攻撃した。体重変化を毎日モニターし、体重が元の体重の20%を超えて減少した場合に、マウスを安楽死させた。生存率を未処置処置マウス(黒菱形)と比較した。1群あたり10匹の動物を評価した。結果は、2 回の独立した試験の代表である。 BPZE1生細菌で2回処置されたマウスにおける、マウス適合H3N2ウイルスによる致死的攻撃に対する保護率を示す。成体Balb/cマウスに、4週の間隔で5×106cfuのBPZE1細菌(黒四角)を2回経鼻的に投与し、4週間後に致死用量(2LD50)のマウス適合H3N2ウイルスにより攻撃した。体重変化を毎日モニターし、体重が元の体重の20%を超えて減少した場合に、マウスを安楽死させた。生存率を未処置処置マウス(黒菱形)と比較した。1群あたり10匹の動物を評価した。結果は、2回の独立した実験の代表である。 H1N1インフルエンザAウイルスによる致死的攻撃に対するBPZE1処置マウスの保護率を示す。成体Balb/cマウスに、5×106cfuのBPZE1生細菌を4週および3週の間隔で3回、経鼻的に投与した(黒三角)。動物を、最後のBPZE1処理の2週間後に致死用量(4LD50)のA/PR/8/34(H1N1)インフルエンザAウイルスで攻撃した。体重変化を毎日モニターし、体重が元の体重の20%を超えて減少した場合に、マウスを安楽死させた。生存率を未処置マウス(黒菱形)と比較した。1群あたり10匹の動物を評価した。結果は、2回の独立した実験の代表である。 保護されたマウス対保護されていないマウスの肺におけるウイルス量定量化を示す。成体Balb/cマウスに、5×106cfuのBPZE1生細菌を4週間隔で2回経鼻的に投与し、4週間後に致死用量(2LD50)のマウス適合H3N2ウイルスで攻撃した。1群あたり5匹の動物をウイルス攻撃の3日後に屠殺し、それらの肺を回収し、MDCK細胞の感染に対するTCID50のインビトロ決定のために個別に加工処理した。ウイルス量を未処置マウスで得られたものと比較した。結果は、3回の独立した実験の代表である。 致死的ウイルス攻撃後のBPZE1処置マウス対未処置マウスの肺における肺組織像および細胞浸潤物およびCD3+T細胞集団を示す。成体Balb/cマウスに5×106cfuのBPZE1生細菌を経鼻的に投与し、6週間後に致死用量(2LD50)のマウス適合H3N2ウイルスで攻撃した。ウイルス攻撃の3日後にマウスを安楽死させ、組織像解析(A)または細胞浸潤物の解析用気管支肺胞洗浄法(B)のために、それらの肺を個別に加工処理した。Aの説明文:感染した対照マウスは、重篤な炎症、肺水腫(黒矢印)および壊死細胞組織片による重篤な壊死性気管支炎(白矢印)を呈した。感染したBPZE1処置マウスは、最小限の炎症および気道傷害、ならびに軽度の気管支周囲傷害のみを示した。代表的な領域を示す。結果は、1群あたり40より多くの解析領域で同等であった(>5領域/部分、2部分/マウスおよび4マウス/群)。Bの説明文:a、攻撃していない未処置マウス;b、H3N2ウイルスで攻撃した未処置マウス;c、攻撃していないBPZE1処置マウス;d、H3N2ウイルスで攻撃したBPZE1処置マウス。一群あたり各時点で4匹の動物を個別に評価した。**、p≦0.01;***、p≦0.001。結果は、2回の独立した実験の代表である。(C)マウス肺におけるCD3+T細胞集団のFACS解析。致死性H3N2インフルエンザウイルス攻撃の3日後または5日後に、未処置対照マウスおよびBPZE1で2回処置したマウスを安楽死させ、それらの肺におけるCD3+T細胞集団をフローサイトメトリーにより解析した。1群あたり各時点で4匹の動物を個別に評価した。結果は、総肺細胞集団におけるCD3+T細胞のパーセンテージで示される。平均値±SD。凡例:a、攻撃していない未処置マウス;b、攻撃していないBPZE1処置マウス;c、H3N2ウイルスで処置しかつ3日後に屠殺した未処置マウス;d、H3N2ウイルスで攻撃しかつ3日後に屠殺したBPZE1処置マウス;e、H3N2ウイルスで攻撃しかつ5日後に屠殺した未処置マウス;f、H3N2ウイルスで攻撃しかつ5日後に屠殺したBPZE1処置マウス。***、P≦0.001。 致死的H3N2ウイルス攻撃後のBPZE1処置マウス対未処置マウスにおける炎症誘発性サイトカイン、抗炎症サイトカインおよびケモカインのプロファイルを示す。成体Balb/cマウスに5×106cfuのBPZE1生細菌を4週間隔で2回経鼻的に投与し、最後の投与の4週間後に致死用量(2LD50)のマウス適合H3N2ウイルスで攻撃した。ウイルス攻撃の1日後および3日後に、各時点で1群あたり5匹のマウスを屠殺し、気管支肺胞洗浄液(BALF)を収集した。14の炎症関連サイトカインおよびケモカインを、各個別のBALF試料において測定した。凡例:1、未処置の攻撃しないマウス;2、BPZE1で処置した攻撃しないマウス;3、未処置の攻撃されたマウスで攻撃の1日後に屠殺された;4、BPZE1で処置した攻撃されたマウスで攻撃の1日後に屠殺された;5、未処置の攻撃されたマウスで攻撃の3日後に屠殺された;6、BPZE1で処置した攻撃されたマウスで攻撃の3日後に屠殺された。*、p≦0.05;**、p≦0.01;***、p≦0.001。 交差防御における百日咳菌特異的免疫の役割を示す。(A)未処置(白三角)または抗H3N2(黒丸)または抗BPZE1(白丸)免疫血清を、マウス適合H3N2ウイルスによる致死的攻撃(2LD50)の1日前に成体未処置Balb/cマウスにipで注入した。体重変化を毎日モニターし、体重が元の体重の20%を超えて減少した場合に、マウスを安楽死させた。生存率を未処置マウス(黒三角)と比較した。1群あたり10匹の動物を評価した。(B)および(C)成体Balb/cマウスに、5×106cfuのBPZE1生細菌を経鼻的に投与し、6週間後に動物を安楽死させ、それらの脾臓を回収した。6匹の動物からのプール脾細胞(B)または個別の脾細胞(C)を、BPZE1溶解物または加熱不活性化H3N2ウイルス粒子のいずれかで刺激した。3Hチミジン取り込み(B)およびIFN-γELISPOTアッセイ(C)を下記の通りに行った。2つの異なる実験両方の代表とも同様の結果を示した;平均値±SD;*、p≦0.05、***、p≦0.001。
詳細な説明
緒言および概要
本発明は、哺乳動物においてインフルエンザ感染を治療または予防するための、変異ボルデテラ株を含む組成物およびワクチンに関する。加えて、本発明はさらに、組成物またはワクチンを使用して、インフルエンザによる感染に対して哺乳動物を保護する方法および/または哺乳動物においてインフルエンザウイルスに対する免疫応答を誘発するための方法を提供する。
特許請求の範囲および明細書において用いられる用語は、特別の定めのない限り、下記のように定義される。
本明細書で用いられる略語「PTX」は、百日咳毒素を指し、ADPリボシル化毒素を合成および分泌する。PTXは、5つの異なるサブユニット(S1〜S5と名付けられた)から構成され、各複合体は2コピーのS4を含む。サブユニットは、A-B構造で配置される。A成分は酵素的に活性でありかつS1サブユニットから形成され、一方でB成分は、受容体結合部分でありかつサブユニットS2〜S5で構成される。
本明細書で用いられる略語「DNT」は、百日咳皮膚壊死毒素を指し、マウスおよび他の実験動物において、皮内に注入されると局所病変を誘導しうる易熱性毒素である。
本明細書で用いられる略語「TCT」は、気管細胞毒素を指し、ボルデテラにより合成させる病原性因子である。TCTは、ペプチドグリカン断片であり、インターロイキン1産生および一酸化窒素合成酵素を誘導する能力を有する。それは、繊毛の静止をもたらす能力を有し、呼吸上皮細胞に対して致死効果を有する。
用語「弱毒化」は、免疫応答を刺激しかつ防御免疫を引き起こす能力があるが、一般的に疾患をもたらさない、弱く病原性が少ないボルデテラ株を指す。
用語「急速な防御免疫」は、ボルデテラに対する免疫が本発明の変異ボルデテラ株の投与後に短時間で付与されることを意味する。
用語「ボルデテラ株」または「菌株」は、百日咳菌(Bordetella pertussis)、パラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)、および気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)由来の菌株を含む。
用語「子供」は、0ヶ月と18歳の間の人間または哺乳動物であることが意図される。
「治療する」は、寛解(abatement)、緩解(remission)、症状を軽減することもしくは病状が患者により許容できるものとなること、変性もしくは衰微の速度が遅くなること、または変性の最終点を衰弱の程度がより少ないものとすることなどの任意の主観的または客観的パラメータを含む、疾患、状態または障害の治療または改善または予防の成功の任意の兆候を指す。症状の治療または改善は、医師による診察の結果を含む、主観的または客観的パラメータに基づくことができる。したがって、用語「治療する」は、本明細書に記載のような疾患、状態または障害に関連する症状もしくは状態の進行を予防するもしくは遅らせる、緩和する、または阻止するもしくは抑制するための、本発明の化合物または作用物質の投与を含む。用語「治療効果」は、対象における疾患、疾患の症状、または疾患の副作用の、軽減、消失、または予防を指す。本発明の方法を用いる「治療する」または「治療」は、本明細書に記載のような疾患、状態または障害に関連する疾患または障害の危険性が高いが、症状をまだ経験または示していない対象において症状の発症を予防すること、疾患または障害の症状を抑制すること(その進行を遅らせるまたは阻止すること)、疾患の症状または副作用の緩和をもたらすこと(対症療法を含む)、および(退行をもたらす)疾患の症状を緩和することを含む。治療は、(疾患の発症を妨げるもしくは遅らせる、またはそれらの臨床的もしくは準臨床的症状の発現を妨げるための)予防的抑制、または治療的抑制、または疾患もしくは状態の発現後の症状の緩和であることができる。
公知の薬物(または他の化合物)と本発明の組成物との「併用投与」は、該公知の薬物(または他の化合物)両方が治療効果または診断効果を有すると考えられるような時に、該薬物(または他の化合物)ならびに該組成物を投与することを意味する。そのような併用投与は、本発明の組成物の投与に対して薬物(または他の化合物)の同時投与(すなわち、同じ時に)、事前投与、または事後投与を含むことができる。当業者は、困難なく、特定の薬物(または他の化合物)ならびに本発明の組成物の投与の適当な時期、順番、および投与量を決定することができる。
用語「保護」および「予防」は、本明細書において区別なく用いられ、インフルエンザによる感染が妨げられることを意味する。
「予防ワクチン」は、このワクチンが将来の曝露の際にインフルエンザ感染を予防することを意味する。
用語「免疫原性組成物」または「組成物」は、組成物が免疫応答を誘導することができ、そのため抗原性であることを意味する。「免疫応答」とは、免疫系による任意の反応を意味する。これらの反応は、抗原に応答して生物の免疫系の活性を変更することを含み、例えば抗体産生、細胞媒介免疫の誘導、補体活性化、または免疫寛容の発生を含むことができる。
本明細書で用いられる用語「疾患」は、一般的に公知かつ当技術分野において理解される意味を有し、宿主個体の機能または満足な状態における任意の異常な状態を含む。医療専門家による具体的な疾患の診断は、直接の診察および/または1つまたは複数の診断試験の結果の考慮により行われうる。
用語「生ワクチン組成物」、「生ワクチン」、「細菌性生ワクチン」、および同様の用語は、インフルエンザに対して少なくとも部分的防御免疫をもたらす生のボルデテラ細菌の菌株を含む組成物を指す。
用語「経口」、「経腸」、「経腸的」、「経口的」、「非腸管外」および「非腸管外的」などは、消化管に沿った経路または方法による、個体への化合物または組成物の投与を指す。組成物の投与の「経口」経路の例は、液体または固体形態のワクチン組成物を口から嚥下すること、経鼻空腸管または胃瘻管を介するワクチン組成物の投与、ワクチン組成物の十二指腸内投与、および例えば本明細書に記載の細菌性生ワクチン株を放出する座剤を用いる直腸投与を含むがこれらに限定されない。
用語「局所投与」は、作用物質が皮膚または粘膜の外表面を横断し下層組織に入るような、皮膚または粘膜(鼻、肺および口の表面膜を含む)の外表面への薬剤の適用を指す。局所投与は、皮膚および周辺組織への作用物質の限定的分布、または作用物質が血流により処置領域から取り除かれる場合には、作用物質の全身性分布をもたらすことができる。好ましい形態において、作用物質は、経皮送達により、例えば経皮パッチを用いて送達される。経皮送達は、作用物質がほとんど浸透できない障壁として機能する皮膚(角質層および表皮)を横切る作用物質の拡散を指す。これに対し、真皮は多くの溶質および薬物の吸収に対して透過性であり、したがって局所投与は、表皮が擦過または別の方法で剥離されて真皮を曝露した皮膚を介して、より容易に行われる。未処置の皮膚を介しての吸収は、皮膚への適用の前に活性薬剤を油性媒体(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, current edition, Gennaro et al., eds.に記載されているような乳剤、皮膚軟化剤、および浸透促進剤など)と組み合わせることにより促進されうる(塗擦として公知の工程)。
用語「経鼻投与」は、活性成分が鼻腔の呼吸上皮に接触し、そこから全身循環内に吸収されるように、活性成分が対象の鼻道内に噴霧されるかまたは別の方法で導入されることによる投与の任意の形態を指す。経鼻投与はまた、中心鼻中隔と主な鼻道それぞれの側壁との間にある鼻腔の上部に位置する、嗅上皮と接触させる工程も含むことができる。嗅上皮を直接取り囲む鼻腔の領域は、空気流がない。よって、特定化された方法は典型的には、嗅上皮を横断する著しい吸収を達成するよう使用されなければならない。
用語「エアロゾル」は、治療適用部位へ圧力下の噴霧ガスにより運ばれる非常に微細な液体粒子または固体粒子を指す従来の意味で用いられる。本発明の薬学的エアロゾルは、液体担体および噴霧剤の混合物中に溶解、懸濁または乳化させることができる、治療的に活性な化合物を含む。エアロゾルは、溶液、懸濁液、乳剤、粉体、または半固体状調製物の形態でありうる。本発明のエアロゾルは、患者の気道を介した微細な固体粒子または液体ミストとしての投与を目的とする。炭化水素ガスまたは他の適切なガスを含むがこれらに限定されない様々な種類の噴霧剤が用いられうる。本発明のエアロゾルはまた、ガス内に実質的に均一な大きさの微細な液体粒子を生じさせる噴霧器により送達されうる。好ましくは、活性化合物を含む液体は、噴霧器から出た気流により患者の気道内へと運ばれうる小滴として分散する。
用語「回復する」は、疾患状態、例えばインフルエンザ関連疾患状態の治療における任意の治療的に有益な結果を指し、それらの予防、重症度もしくは進行の減少、緩解または治癒を含む。
全般的に、語句「良好な認容性を示す」は、治療の結果として生じかつ治療法の決定に影響を及ぼす、健康状態の有害な変化がないことを指す。
「相乗的相互作用」は、2つまたはそれより多い作用物質の組み合わせ効果がそれらの個別の効果の代数和より大きい相互作用を指す。
用語「インビトロ」は、生きている生物から分離して増殖する生細胞、例えば組織培養において増殖する生細胞において行われる工程を指す。
用語「インビボ」は、生きている生物において行われる工程を指す。
本明細書で用いられる用語「哺乳動物」は、ヒトおよび非ヒトの両方を含み、かつ限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、マウス、ウシ、ウマおよびブタを含む。
用語「十分な量」は、所望の効果を生ずるのに十分な量、例えば細胞中のタンパク質凝集を調節するのに十分な量を意味する。
用語「治療的有効量」は、疾患の症状が回復するのに有効な量である。治療的有効量は、予防が治療とみなされうることから、「予防的有効量」でありうる。
本明細書で用いられる用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」またはそれらの他の任意の変化型は、非排他的な包含をカバーすることを意図する。例えば、要素のリストを含む工程、方法、物、または装置は、それらの要素のみに限定される必要はなく、そのような工程または方法に明示的に記載されていないまたは固有である他の要素を含むことができる。さらに、そうではないと明示的に定めをした場合を除き、「または」は、包含的な「または」を指し、排除的な「または」を指さない。例えば、条件AまたはBは、以下の任意の1つにより適合される:Aが当てはまり(または存在し)Bが当てはまらない(存在しない)、Aが当てはまらず(または存在せず)Bが当てはまる(存在する)、およびAとB両方が当てはまる(または存在する)。
本発明は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生物系に限定されず、もちろん変更しうることが理解されるべきである。本明細書において用いられる用語は、特定の局面のみの記載を目的としており、限定を意図しないことも理解されるべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」および「その(the)」は、内容が他に明確に規定されていない限り、複数への言及を含む。よって、例えば、「(1つの)ワクチン(a vaccine)」との言及は、2つまたはそれより多くのワクチンの組み合わせなどを含む。
量、時間などの測定可能な値を指す場合に、本明細書で用いられる「約」は、特定された値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、およびいっそうより好ましくは±0.1%の変動(本開示の方法を実施するのに適した変動)を包含することを意図している。
インフルエンザウイルス型
本発明は概して、哺乳動物におけるインフルエンザウイルス感染を治療または予防するために用いられる。本発明により標的とされうる3種類のインフルエンザウイルスが存在する:インフルエンザA、B、およびC。インフルエンザA型ウイルスは、ウイルスの表面上の2つのタンパク質に基づきサブタイプに分けられる。これらのタンパク質は、ヘマグルチニン(H)およびノイラミニダーゼ(N)と名付けられる。インフルエンザAウイルスは、これらの2つのタンパク質に基づきサブタイプに分けられる。16個の異なるヘマグルチニンサブタイプ、H1、H2、H3、H5、H4、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15またはH16、および9個の異なるノイラミニダーゼサブタイプ、N1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8、またはN9が存在し、それらの全ては、野鳥のインフルエンザAウイルスの中で見いだされている。インフルエンザAウイルスは、A(H1N1)およびA(H3N2)を含み、その両方とも哺乳動物における治療または予防のために本発明により標的とされうるインフルエンザウイルスの例である。インフルエンザウイルス感染により典型的に引き起こされる疾患および症状は、以下を含み得る:発熱、咳、くしゃみ、疼痛、疲労、頭痛、なみだ眼、鼻充血、および腹痛。本発明は、これらの疾患を治療または予防するために用いられうる。
組成物
ボルデテラ株
本発明は、哺乳動物における免疫応答を誘発するための免疫原性組成物またはワクチンとして用いられうる、変異ボルデテラ株を提供する。1つの局面において、変異ボルデテラ株は、変異したptx遺伝子、欠失または変異したdnt遺伝子、および異種ampG遺伝子を含む。異種ampG遺伝子産物は、気管細胞毒素の産生量を多量に減らすことができる。1つの局面において、菌株はBPZE1である。変異される出発菌株は、百日咳菌、パラ百日咳菌、および気管支敗血症菌を含む任意のボルデテラ株であることができる。1つの局面において、変異ボルデテラ株を得るために用いられる出発菌株は、百日咳菌である。別の局面において、菌株は三重変異体ボルデテラ株である。別の局面において、ボルデテラ株は、アクセション番号CNCM I-3585により特定される。別の局面において、ボルデテラ株は、アクセション番号V09/009169により特定される。
本発明は、上記変異体のみに限定されない。アデニル酸シクラーゼ(AC)欠損変異体、リポ多糖(LPS)欠損変異体、繊維状赤血球凝集素(FHA)および任意のbvg制御系成分などの他の追加の変異が行われうる。
本発明の変異ボルデテラ株の構成は、菌株中のボルデテラampG遺伝子を異種ampG遺伝子と置換することから始めることができる。当技術分野において公知の任意の異種ampG遺伝子が本発明において用いられうる。これらの例は、培地中に一世代あたり極少量のペプチドグリカン断片を放出する全てのグラム陰性細菌を含むことができる。グラム陰性菌の例は、大腸菌(Escherichia coli)、サルモネラ菌(Salmonella)、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、シュードモナス(Pseudomonas)、モラクセラ(Moraxella)、ヘリコバクター(Helicobacter)、ステノトロホモナス(Stenotrophomonas)、およびレジオネラ(Legionella)などを含むが、これらに限定されない。典型的には、ボルデテラampG遺伝子を異種ampG遺伝子と置換することにより、結果として生じる菌株において産生される気管細胞毒素(TCT)の量は、1%未満の残存TCT活性を示す。別の局面において、結果として生じる菌株により示されるTCT毒素の量は、約0.6%から1%の間の残存TCT活性または約0.4%から3%の間の残存TCT活性または約0.3%から5%の間の残存TCT活性である。
PTXは、百日咳菌感染の全身作用を担う主要な病原性因子であり、かつ主要な防御抗原の1つである。その性質のために、天然のptx遺伝子は、酵素的に活性な成分S1が酵素的に不活性な毒素をコードするように、しかし百日咳毒素の免疫原性の性質が影響を受けないように、変異型に置換されうる。これは、配列の9位のアルギニン(Arg)リジン(Lys)と置換すること(R9K)により達成されうる。さらに、129位のグルタミン酸(Glu)は、グリシン(Gly)に置換されうる(E129G)。一般的に、これらのアミノ酸位置はそれぞれ、基質結合および触媒作用に関与する。他の局面において、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,713,072号に記載の変異、ならびに毒素活性を低減することができる任意の公知のまたは他の変異などの、他の変異も行われうる。1つの局面において、最初にptxオペロンを除去するために対立遺伝子交換が用いられ、次いでその変異型が挿入されうる。
本発明の別の局面において、dnt遺伝子が、対立遺伝子交換を用いてボルデテラ株から取り除かれうる。完全除去の他に、酵素活性はまた、点変異によっても阻害されうる。DNTは、N末端領域にある受容体結合ドメインおよびC末端部分にある触媒ドメインにより構成されるため、Cys-1305をAla-1305に置換するdntの点変異が、DNTの酵素活性を阻害する(Kashimoto T., Katahira J, Cornejo WR, Masuda M, Fukuoh A, Matsuzawa T, Ohnishi T, Horiguchi Y. (1999) Identification of functional domains of Bordetella dermonecrotizing toxin. Infect. Immun. 67: 3727-32.)。
変異したptx遺伝子および阻害されたかまたは欠失するdnt遺伝子を挿入する対立遺伝子交換の他に、遺伝子のオープンリーディングフレームが、遺伝子配列またはプラスミドの挿入により分断化されうる。この方法もまた、本発明において企図される。変異体株を生ずる他の方法は、当技術分野において概して周知である。
本発明の1つの局面において、変異株は、BPZE1株と呼ばれ、ブタペスト条約に基づきFrance、Parisにあるthe Collection Nationale de Cultures de Microorganismes (CNCM)に2006年3月9日に寄託され、かつ番号CNCM I-3585が付与されている。BPZE1に導入された変異は概して、弱毒化をもたらすが、細菌がコロニー形成して生き残り続けることも可能とする。よって、別の局面において、本発明はBPZE1を提供し、BPZE1投与を必要とする哺乳動物に投与した場合、BPZE1は粘膜免疫および全身免疫を誘導することができる。本発明の別の局面において、3コピーのM2eペプチドを発現するBPZE1組換え株がつくられた。この株は、ブタペスト条約に基づきPort Melbourne、Victoria、Australia 3207にあるthe National Measurement Institute (以前はAGAL)に2009年4月27日に寄託され、アクセション番号V09/009169が付与されている。M2eは、インフルエンザウイルス由来のM2タンパク質の細胞外部分である。それは、全インフルエンザAウイルスの中で高度に保存されていて、インフルエンザAウイルスに対する抗体媒介防御を誘導することが示されている。組換えM2e産生BPZE1株は、(例えば、生細菌の経鼻投与によって)実質的な抗M2e抗体応答を(局所的におよび全身的に)誘発し、H1N1およびH3N2の攻撃に対してBPZE1細菌単独の場合に匹敵する有意な保護を可能とする。
本発明の変異ボルデテラ株は、インフルエンザウイルス感染の治療または予防のための免疫原性組成物において用いられうる。そのような免疫原性組成物は、免疫応答、哺乳動物における抗体応答および/またはT細胞応答のいずれかを高めるのに有用である。例えば、T細胞応答は、インフルエンザ感染またはその結果/疾患/症状に対して哺乳動物を保護するようなものでありうる。
本発明の変異ボルデテラ株は、ワクチンまたは免疫原性組成物において生菌株として用いられうる。1つの局面において、生菌株は経鼻投与用に用いられ、一方で化学的にまたは加熱により死滅させた菌株は全身投与または粘膜投与用に用いられうる。他の局面において、菌株は弱毒化される。
本発明の他の局面において、菌株は、上記の異種ampG遺伝子以外の任意の異種遺伝子を含まない。さらに他の局面において、菌株は、異種発現プラットフォームを含まない(例えばWO2007104451参照)。典型的には、異種発現プラットフォームは異種抗原を運ぶ。1つの局面において、異種発現プラットフォームは、哺乳動物の呼吸粘膜に異種抗原を送達するために用いられうる。
アジュバント
本発明の組成物は、アジュバントを含む他の免疫調節剤と共に投与されうる。本明細書で用いる用語「アジュバント」は、免疫応答を高める化合物または混合物を指す。具体的には、組成物はアジュバントを含むことができる。本発明と共に使用するためのアジュバントは、下記に記載の1つまたは複数の事項を含むことができるが、これらに限定されない。
無機物含有アジュバント組成物
本発明においてアジュバントとしての使用に適した無機物含有組成物は、アルミニウム塩およびカルシウム塩などの無機塩を含む。本発明は、水酸化物(例えば、オキシ水酸化物)、リン酸塩(例えば、ヒドロキシリン酸、オルトリン酸)、および硫酸塩など(例えば、Vaccine Design . . . (1995) eds. Powell & Newman. ISBN: 030644867X. Plenum.の第8章および第9章参照)のような無機塩、または異なる無機化合物の混合物(例えば、任意で過剰のリン酸塩を伴う、リン酸塩と水酸化物との混合物)を含み、該化合物は任意の適当な形態(例えば、ゲル、結晶、および非結晶など)をとり、かつ該塩への吸着が好ましい。無機物含有組成物は金属塩の粒子としても製剤化されうる(WO/0023105)。
アルミニウム塩は、Al3+の用量が一用量あたり0.2 mgと1.0 mgの間となるように本発明の組成物中に含まれうる。
油乳剤アジュバント
本発明においてアジュバントとしての使用に適した油乳剤組成物は、MF59(マイクロフルイダイザーを用いてミクロン以下の粒子に製剤化した、5%スクアレン、0.5% Tween 80、および0.5% Span 85)などのスクアレン-水乳剤を含むことが出来る。例えば、WO90/14837参照。Podda, "The adjuvanted influenza vaccines with novel adjuvants: experience with the MF59-adjuvanted vaccine", Vaccine 19: 2673-2680, 2001も参照のこと。
他の関連する局面において、組成物において用いるためのアジュバントは、ミクロン以下の水中油型乳剤である。本明細書において用いるためのミクロン以下の水中油型乳剤の例は、4〜5%w/v スクアレン、0.25〜1.0%w/v Tween 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸)および/または0.25〜1.0%Span85(トリオレイン酸ソルビタン)、および任意でN-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1'-2'-ジパルミトイル-s-n-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(MTP-PE)を含むミクロン以下の水中油型乳剤など、任意で様々な量のMTP-PEを含むスクアレン/水乳剤、例えば「MF59」として公知のミクロン以下の水中油型乳剤を含む(International Publication No. WO90/14837;その全体が参照により本明細書に組み入れられるU.S. Pat. Nos. 6,299,884および6,451,325;およびOtt et al., "MF59--Design and Evaluation of a Safe and Potent Adjuvant for Human Vaccines" in Vaccine Design: The Subunit and Adjuvant Approach (Powell, M. F. and Newman, M. J. eds.) Plenum Press, New York, 1995, pp. 277-296)。MF59は、4〜5%w/v スクアレン(例えば、4.3%)、0.25〜0.5%w/v Tween 80および0.5%w/v Span 85を含むことができ、任意で様々な量のMTP-PEを含み、モデル110Yマイクロフルイダイザー(Microfluidics, Newton, MA)などのマイクロフルイダイザーを用いてミクロン以下の粒子に製剤化される。例えば、MTP-PEは、約0〜500 μg/用量、または0〜250 μg/用量、または0〜100 μg/用量の量で存在しうる。
組成物において用いるための、ミクロン以下の水中油型乳剤、それを作製する方法、およびムラミルペプチドなどの免疫賦活剤は、International Publication No. WO90/14837 and U.S. Pat. Nos. 6,299,884および6,451,325に詳細に記載されており、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA)もまた、本発明におけるアジュバントとして用いられうる。
サポニンアジュバント製剤
サポニン製剤もまた、本発明においてアジュバントとして用いられうる。サポニンは、ステロール配糖体の異種グループであり、広範な植物種の樹皮、葉、茎、根および花にも見いだされるトリテルペノイド配糖体である。シャボンノキ(Quillaia saponaria Molina tree)の樹皮由来のサポニンは、アジュバントとして広く研究されている。サポニンはまた、スミラクス オルナタ(Smilax ornata)(サルサパリラ)、ギプソフィラ パニキュラータ(Gypsophilla paniculata)(ブライダルベール)、およびサポナリア オフィシナリス(Saponaria officianalis)(カスミソウ)から商業的に入手されうる。サポニンアジュバント製剤は、QS21などの精製された製剤、ならびに免疫刺激複合体(ISCOM;下記参照)などの脂質製剤を含むことができる。
サポニン組成物は、高速薄層クロマトグラフィー(HPLC)および逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を用いて精製されている。QS7、QS17、QS18、QS21、QH-A、QH-BおよびQH-Cを含む、これらの技術を用いて特異的に精製された画分が同定されている。QS21の産生の方法は、U.S. Pat. No. 5,057,540に開示される。サポニン製剤はまた、コレステロールなどのステロールも含むことができる(WO96/33739参照)。
サポニンとコレステロールとの組み合わせは、ISCOMと呼ばれる独特の粒子を形成するために用いられうる。ISCOMは典型的には、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリンなどのリン脂質も含む。任意の公知のサポニンは、ISCOM中で用いられうる。例えば、ISCOMは、1つまたは複数のQuil A、QHAおよびQHCを含むことができる。ISCOMは、EP0109942、WO96/11711、およびWO96/33739にさらに記載される。任意で、ISCOMは、追加の界面活性剤を欠くことができる。WO00/07621参照。
サポニンを基剤とするアジュバントの開発の記載は、Barr, et al., "ISCOMs and other saponin based adjuvants", Advanced Drug Delivery Reviews 32: 247-27, 1998で見いだされうる。Sjolander, et al., "Uptake and adjuvant activity of orally delivered saponin and ISCOM vaccines", Advanced Drug Delivery Reviews 32: 321-338, 1998も参照のこと。
ビロソームおよびウイルス様粒子(VLP)
ビロソームおよびウイルス様粒子(VLP)もまた、本発明においてアジュバントとして用いられうる。これらの構造体は概して、1つまたは複数のウイルス由来タンパク質を含み、任意でリン脂質と組み合わされるかまたはリン脂質と共に製剤化される。それらは、概して非病原性、非複製的であり、かつ概していかなる天然のウイルスゲノムも含まない。ウイルスタンパク質は、組換えで産生されるか、または全ウイルスから単離されうる。ビロソームまたはVLPでの使用に適したこれらのウイルスタンパク質は、インフルエンザウイルス(HAまたはNAなど)、B型肝炎ウイルス(コアタンパク質またはカプシドタンパク質など)、E型肝炎、麻疹ウイルス、シンドビスウイルス、ロタウイルス、口蹄病ウイルス、レトロウイルス、ノーウォークウイルス、ヒトパピローマウイルス、HIV、RNAファージ、QBファージ(コートタンパク質など)、GAファージ、frファージ、AP205ファージ、およびTy(レトロトランスポゾンTyタンパク質plなど)に由来するタンパク質を含む。
細菌性誘導体または微生物性誘導体
本発明での使用に適したアジュバントは、以下のような細菌性誘導体または微生物性誘導体を含む。
(1)腸内細菌リポ多糖(LPS)の非毒性誘導体
そのような誘導体は、モノホスホリルリピドA(MPL)および3-O-脱アシル化MPL(3 dMPL)を含む。3 dMPLは、3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドAと4、5 または6アシル化鎖の混合物である。3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドAの「小粒子」形態の例は、EP 0 689 454に開示されている。そのような3 dMPLの「小粒子」は、0.22ミクロン膜を通って無菌濾過されるほど小さい (EP 0 689 454参照)。他の非毒性LPS誘導体は、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体、例えばRC-529などのモノホスホリルリピドA模倣物を含む。Johnson et al., Bioorg Med Chem Lett 9: 2273-2278, 1999参照。
(2)リピドA誘導体
リピドA誘導体はOM-174などの大腸菌由来のリピドAの誘導体を含むことができる。OM-174は、例えば、Meraldi et al., "OM-174, a New Adjuvant with a Potential for Human Use, Induces a Protective Response with Administered with the Synthetic C-Terminal Fragment 242-310 from the circumsporozoite protein of Plasmodium berghei", Vaccine 21: 2485-2491, 2003;およびPajak, et al., "The Adjuvant OM-174 induces both the migration and maturation of murine dendritic cells in vivo", Vaccine 21: 836-842, 2003に記載されている。
(3)免疫賦活性オリゴヌクレオチド
本発明においてアジュバントとしての使用に適した免疫賦活性オリゴヌクレオチドは、CpGモチーフ(非メチル化シトシンとその後に続くグアノシンを含み、リン酸結合で連結される配列)を含むヌクレオチド配列を含むことができる。パリンドローム配列またはpoly(dG)配列を含む細菌の二本鎖RNAまたはオリゴヌクレオチドもまた、免疫賦活性であることが示されている。
CpGは、ホスホロチオエート修飾などのヌクレオチド修飾/類似体を含むことができ、二本鎖または一本鎖であることができる。任意で、グアノシンは、2'-デオキシ-7-デアザグアノシンなどの類似体と置換されうる。類似体置換の例としてKandimalla, et al., "Divergent synthetic nucleotide motif recognition pattern: design and development of potent immunomodulatory oligodeoxyribonucleotide agents with distinct cytokine induction profiles", Nucleic Acids Research 31: 2393-2400, 2003; WO02/26757 およびWO99/62923を参照。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、Krieg, "CpG motifs: the active ingredient in bacterial extracts?", Nature Medicine (2003) 9(7): 831-835; McCluskie, et al., "Parenteral and mucosal prime-boost immunization strategies in mice with hepatitis B surface antigen and CpG DNA", FEMS Immunology and Medical Microbiology (2002) 32:179-185; W098/40100; U.S. Pat. No. 6,207,646; U.S. Pat. No. 6,239,116およびU.S. Pat. No. 6,429,199でさらに論じられている。
CpG配列は、モチーフGTCGTTまたはTTCGTTなどのToll様受容体(TLR9)を対象としうる。Kandimalla, et al., "Toll-like receptor 9: modulation of recognition and cytokine induction by novel synthetic CpG DNAs", Biochemical Society Transactions (2003) 31 (part 3): 654-658を参照。CpG配列は、CpG-A ODNなどのTh1免疫応答を誘導するのに特異的であることができるか、またはCpG-B ODNなどのB細胞応答を誘導するのにより特異的であることができる。CpG-A ODNおよびCpG-B ODNは、Blackwell, et al., "CpG-A-Induced Monocyte IFN-gamma-Inducible Protein-10 Production is Regulated by Plasmacytoid Dendritic Cell Derived IFN-alpha", J. Immunol 170: 4061-4068, 2003; Krieg, "From A to Z on CpG", TRENDS in Immunology 23: 64-65, 2002、およびWO01/95935で論じられている。
いくつかの局面において、CpGオリゴヌクレオチドは、5'末端が受容体認識に利用できるように構成されうる。任意で、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列は、それらの3'末端で結合し、「イムノマー(immunomer)」を形成することができる。例えば、Kandimalla, et al., "Secondary structures in CpG oligonucleotides affect immunostimulatory activity", BBRC 306: 948-95, 2003; Kandimalla, et al., "Toll-like receptor 9: modulation of recognition and cytokine induction by novel synthetic GpG DNAs", Biochemical Society Transactions 31: 664-658, 2003; Bhagat et al., "CpG penta- and hexadeoxyribonucleotides as potent immunomodulatory agents" BBRC 300: 853-861, 2003、およびWO03/035836を参照。
(4)ADPリボシル化毒素およびその無毒化誘導体
細菌のADPリボリシル化毒素およびその無毒化された誘導体は、本発明においてアジュバントとして使用されうる。例えば、毒素は、大腸菌(すなわち、大腸菌易熱性エンテロトキシン(LT))、コレラ(CT)、または百日咳(PTX)に由来しうる。粘膜アジュバントとしての無毒化されたADPリボシル化毒素の使用はWO95/17211に、非経口アジュバントとしてはWO98/42375に記載されている。いくつかの局面において、アジュバントは、LT-K63、LT-R72、およびLTR192Gなどの無毒化されたLT変異体であることができる。ADPリボシル化毒素およびその無毒化された誘導体、具体的にはLT-K63およびLT-R72のアジュバントとしての使用は、そのそれぞれが参照によりそれらの全体が本明細書に特に組み入れられる、以下の参考文献に見いだされうる:Beignon, et al., "The LTR72 Mutant of Heat-Labile Enterotoxin of Escherichia coli Enahnces the Ability of Peptide Antigens to Elicit CD4+T Cells and Secrete Gamma Interferon after Coapplication onto Bare Skin", Infection and Immunity 70: 3012-3019, 2002; Pizza, et al., "Mucosal vaccines: non toxic derivatives of LT and CT as mucosal adjuvants", Vaccine 19: 2534-2541, 2001; Pizza, et al., "LTK63 and LTR72, two mucosal adjuvants ready for clinical trials" Int. J. Med. Microbiol 290: 455-461, 2003; Scharton-Kersten et al., "Transcutaneous Immunization with Bacterial ADP-Ribosylating Exotoxins, Subunits and Unrelated Adjuvants", Infection and Immunity 68: 5306-5313, 2000; Ryan et al., "Mutants of Escherichia coli Heat-Labile Toxin Act as Effective Mucosal Adjuvants for Nasal Delivery of an Acellular Pertussis Vaccine: Differential Effects of the Nontoxic AB Complex and Enzyme Activity on Th1 and Th2 Cells" Infection and Immunity 67: 6270-6280, 2003; Partidos et al., "Heat-labile enterotoxin of Escherichia coli and its site-directed mutant LTK63 enhance the proliferative and cytotoxic T-cell responses to intranasally co-immunized synthetic peptides", Immunol. Lett. 67: 09-216, 1999; Peppoloni et al., "Mutants of the Escherichia coli heat-labile enterotoxin as safe and strong adjuvants for intranasal delivery of vaccines", Vaccines 2: 285-293, 2003; およびPine et al., (2002) "Intranasal immunization with influenza vaccine and a detoxified mutant of heat labile enterotoxin from Escherichia coli (LTK63)" J. Control Release 85: 263-270, 2002。アミノ酸置換に関する参照番号は好ましくは、参照によりその全体が本明細書に特に組み入れられる、Domerighini et al., Mol Microbiol 15: 1165-1167, 1995に記載のADPリボシル化毒素のAサブユニットとBサブユニットの配列に基づく。
生体接着剤および粘膜接着剤
生体接着剤および粘膜接着剤もまた、本発明においてアジュバントとして用いられうる。適当な生体接着剤は、エステル型ヒアルロン酸マイクロスフェアを含む(Singh et al., J. Cont. Rele. 70 :267-276, 2001)か、またはポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖類およびカルボキシメチルセルロースの架橋誘導体などの粘膜接着剤を含むことができる。キトサンおよびその誘導体もまた、本発明においてアジュバントとして用いられうる。例えばWO99/27960参照。
アジュバント微小粒子
微小粒子もまた、本発明においてアジュバントとして用いられうる。生分解性および/または非毒性である材料(例えば、ポリ(αヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、およびポリカプロラクトンなど)およびポリ(ラクチド-co-グリコリド)から形成された微小粒子(すなわち、直径約100 nmから約150 μm、または直径200 nmから約30 μm、または直径約500 nmから約10 μmの粒子)が想定され、任意で(例えばSDSにより)負の電荷を持つ表面または(例えばCTABなどのカチオン性界面活性剤により)正の電荷を持つ表面を有するように処理される。
アジュバントリポソーム
アジュバントとしての使用に適したリポソーム製剤の例は、U.S. Pat. No. 6,090,406、U.S. Pat. No. 5,916,588、およびEP 0 626 169に記載されている。
I.ポリオキシエチレンエーテル製剤およびポリオキシエチレンエステル製剤
本発明における使用に適したアジュバントはまた、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステルも含む。WO99/52549。そのような製剤は、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤をオクトキシノールとの併用(WO01/21207)で、ならびにポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステル界面活性剤をオクトキシノールなどの少なくとも1つの追加の非イオン界面活性剤との併用(WO01/21152)でさらに含むことができる。
いくつかの局面において、ポリオキシエチレンエーテルは、以下を含むことができる:ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル(ラウレス9)、ポリオキシエチレン-9-ステオリル(steoryl)エーテル、ポリオキシエチレン-8-ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン-4-ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン-35-ラウリルエーテル、またはポリオキシエチレン-23-ラウリルエーテル。
ポリホスファゼン(PCPP)
アジュバントとして用いるためのPCPP製剤は、例えばAndrianov et al., "Preparation of hydrogel microspheres by coacervation of aqueous polyphophazene solutions", Biomaterials 19: 109-115, 1998、およびPayne et al., "Protein Release from Polyphosphazene Matrices", Adv. Drug. Delivery Review 31: 185-196, 1998に記載されている。
ムラミルペプチド
本発明においてアジュバントとしての使用に適したムラミルペプチドの例は、N-アセチル-ムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノルムラミル-1-アラニル-d-イソグルタミン(nor-MDP)、およびN-アセチルムラミル-1-アラニル-d-イソグルタミニル-1-アラニン-2-(1'-2'-ジパルミトイル-s-n-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン MTP-PE)を含むことができる。
イミダゾキノロン化合物
本発明においてアジュバントとしての使用に適したイミダゾキノロン化合物の例は、イミキモドおよびその相同体を含むことができ、Stanley, "Imiquimod and the imidazoquinolones: mechanism of action and therapeutic potential" Clin Exp Dermatol 27: 571-577, 2002およびJones, "Resiquimod 3M", Curr Opin Investig Drugs 4: 214-218, 2003にさらに記載されている。
ヒト免疫調節剤
本発明においてアジュバントとしての使用に適したヒト免疫調節剤は、インターロイキン(例えばIL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、およびIL- 12など)、インターフェロン(例えばインターフェロンγ)、マクロファージコロニー刺激因子、および腫瘍壊死因子などのサイトカインを含むことができる。
アジュバントの組み合わせ
本発明はまた、上記で特定したアジュバントの1つまたは複数の局面の組み合わせも含むことができる。例えば、アジュバント組成物は以下を含むことができる:
(1)サポニンおよび水中油型乳剤 (WO99/11241);
(2)サポニン(例えばQS21)+非毒性LPS誘導体(例えば3dMPL) (WO94/00153参照);
(3)サポニン(例えばQS21)+非毒性LPS誘導体(例えば3dMPL)+コレステロール;
(4)サポニン(例えばQS21)+3dMPL+IL-12(任意で+ステロール) (WO98/57659);
(5)例えばQS21および/または水中油型乳剤と3dMPLとの組み合わせ (European patent applications 0835318、0735898および0761231参照);
(6)ミクロン以下の乳剤へと微小流動化されるかまたはボルテックスされて、より大きな粒子サイズの乳剤を生じる、10%スクアラン、0.4% Tween 80、5%プルロニックブロックポリマーL121およびthr-MDPを含むSAF;
(7)2%スクアレン、0.2% Tween 80、およびモノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)からなる群に由来する細菌の細胞壁成分の1つまたは複数、好ましくはMPL+CWS(Detox)を含む、Ribiアジュバントシステム(RAS)(Ribi Immunochem);ならびに
(8)1つまたは複数の無機塩(アルミニウム塩など)+LPSの非毒性誘導体(3dPMLなど)。
アルミニウム塩およびMF59は、注入可能なインフルエンザワクチンと共に使用するためのアジュバントの例である。細菌の毒素および生体接着剤は、経鼻ワクチンなどの粘膜送達ワクチンと共に使用するためのアジュバントの例である。上述の全てのアジュバントおよび当業者に一般的に公知の他のアジュバントは、当技術分野において周知の技術を用いて鼻腔内投与用に製剤化されうる。
製剤および担体
インフルエンザウイルス感染に関連する疾患の治療または予防のための方法(下記に詳細に記載される)もまた、本発明により包含される。前記本発明の方法は、本発明の組成物の治療的有効量を投与する工程を含む。本発明の組成物は、薬学的組成物に製剤化されうる。これらの組成物は、1つまたは複数の菌株に加えて、薬学的に許容可能な賦形剤、担体、緩衝剤、安定化剤、または当業者に周知の他の材料を含むことができる。そのような材料は、典型的には非毒性であるべきであり、かつ典型的には活性成分の有効性に干渉すべきではない。担体または他の材料の厳密な性質は、投与の経路、例えば、経口経路、静脈内経路、皮膚もしくは皮下経路、経鼻経路、筋肉内経路、または腹腔内経路に依存しうる。
経口投与のための薬学的組成物は、錠剤、カプセル、粉末または液体の形態でありうる。錠剤は、ゼラチンまたはアジュバントなどの固体担体を含むことができる。液体薬学的組成物は概して、水、石油、動物もしくは野菜の油、鉱油、または合成油などの液体担体を含む。生理的食塩水、デキストロース、もしくは他の糖溶液、またはエチレングリコール、プロピレングリコール、もしくはポリエチレングリコールなどのグリコールが含まれうる。
静脈内、皮膚もしくは皮下への注入、または病気の部位での注入では、活性成分は、発熱物質を含まないかつ適当なpH、等張性および安定性を有する、非経口的に許容可能な水溶液という形である。当業者は、例えば塩化ナトリウム注射液、リンゲル液、または乳酸リンゲル液などの等張性媒体を用いて適切な溶液を調製することが十分にできる。保存剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤、および/または他の添加剤が必要に応じて含まれうる。
投与は好ましくは、「治療的有効量」または「予防的有効量」(場合によっては、予防が治療とみなされうるが)であり、これは個体に有益性を示すのに十分である。投与される実際の量、ならびに投与の速度および時間経過は、治療される疾患の性質および重症度による。治療の処方、例えば投薬量などの決定は、一般医および他の医師の責任の範囲内であり、典型的には治療されるべき障害、個別の患者の状態、送達の部位、投与の方法および実行者に公知の他の因子を考慮する。上記の技術およびプロトコルの例は、Remington's Pharmaceutical Science, Mack Publishing Company, Easton, PA (「Remington's」)の最新版で見いだされうる。
典型的には、組成物は、単独でまたは他の治療と組み合わせて、治療されるべき状態に応じて同時または連続的のいずれかで投与されうる。
方法
投与経路
本発明の組成物は一般的に、哺乳動物に直接投与される。直接送達は、非経口注入(例えば、皮下に、腹腔内に、皮内に、静脈内に、筋肉内に、または組織の間質腔に)により、または粘膜投与、例えば直腸投与、経口投与(例えば錠剤、スプレー)、膣内投与、局所投与、経皮(transdermal)(例えばWO99/27961参照)もしくは経皮(transcutaneous)(例えばWO02/074244およびWO02/064162参照)投与、吸入、鼻腔内投与(例えばWO03/028760参照)、眼投与、耳投与、肺投与または他の粘膜投与により達成されうる。組成物はまた、皮膚の表面への直接導入により局所的に投与されうる。局所投与は、任意のデバイスを利用することなく、または包帯または包帯様デバイスを利用する組成物とむきだしの皮膚とを接触させることにより達成されうる(例えばU.S. Pat. No. 6,348,450参照)。
いくつかの局面において、投与の様式は、非経口免疫、粘膜免疫、または粘膜免疫と非経口免疫の組み合わせである。他の局面において、投与の様式は、1〜3週間離して合計1〜2回のワクチン接種での、非経口免疫、粘膜免疫、または粘膜免疫と非経口免疫との組み合わせである。関連する局面において、投与の経路は鼻腔内送達を含むがこれに限定されない。
投与法および投与量
本発明は、インフルエンザウイルス、例えばH3N2に影響を与えることができる免疫応答(例えばTH1免疫応答)を誘発するための哺乳動物への変異ボルデテラ株の投与を含むことができる。本発明の変異ボルデテラ株の例は、上記に記載されている。典型的には、変異ボルデテラ株の投与は、インフルエンザウイルスに対する防御免疫を介して、哺乳動物、例えばヒトにおけるインフルエンザウイルス感染を治療または予防するために用いられる。いくつかの局面において、変異ボルデテラ株投与は、インフルエンザウイルス感染前の投与によりインフルエンザ感染を予防するために用いられる。典型的には、変異ボルデテラ株は、インフルエンザウイルス感染の約1週未満、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週、またはそれ以上前に哺乳動物に投与される。
1つの局面において、インフルエンザウイルスによる感染を治療または予防するための方法は、その必要がある対象に本発明の組成物、例えばBPZE1を単回で投与する工程を含む。関連する局面において、投与する工程は、粘膜に、例えば鼻腔内において行われる。
他の局面において、本発明の組成物は、1回より多く、例えば2回投与される。投与の回数は、必要に応じて様々であり、例えば哺乳動物へ投与される回数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多い回数でありうる。1つの局面において、インフルエンザウイルスによる感染を治療または予防するための方法は、その必要がある対象に本発明の第1の免疫原性組成物(例えばBPZE1を含む)を投与し、続いて第2の免疫原性組成物(例えばBPZE1を含む)を投与する工程を含む。典型的には、組成物の各投与間の時間範囲は、約1〜6日、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90週、またはそれ以上でありうる。関連する局面において、各投与間の時間範囲は約3週間である。他の局面において、プライム・ブースト法を用いることができ、ここで本発明の組成物は「初回免疫」工程で送達され、引き続いて本発明の組成物は「追加免疫」工程で送達されうる。
組成物は典型的には、全身免疫および/または粘膜免疫を誘発する、例えば全身免疫および/または粘膜免疫の増強を誘発するために用いられうる。例えば、免疫応答は、血清IgGおよび/または腸内IgA免疫応答の誘導により特徴付けることができる。典型的には、インフルエンザ感染に対する保護のレベルは、50%を超える、例えば60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上でありうる。1つの局面において、保護のレベルは100%でありうる。他の局面において、保護のレベルは、50%未満、例えば20%である。他の局面において、各投与量中の細菌の数は、哺乳動物において効果的な免疫応答を達成するように調整される。各投与量中の細菌数またはcfuは、約1、10、100、1000、10000、100000、1000000、5×106、もしくはそれ以上、またはこれらの各投与量の間の任意の投与量でありうる。
他の局面において、本発明はまた、組成物と1つまたは複数の別の作用物質との同時投与も含むことができる。典型的には、種々の組成物/作用物質が、任意の順番で送達されうる。したがって、複数の異なる組成物または作用物質の送達を含む局面において、変異ボルデテラ株は、インフルエンザ感染に影響をあたえることができる作用物質、例えば薬物、siRNA、miRNA、免疫原性ペプチド、または低分子の前に全て送達される必要はない。作用物質の他の例は、ノイラミニダーゼ阻害剤およびM2阻害剤(アダマンタン類)を含む。例えば、初回免疫する工程は1つまたは複数の作用物質の送達を含むことができ、追加免疫する工程は1つまたは複数の変異ボルデテラ株の送達を含むことができる。他の局面において、変異ボルデテラ株の複数回投与は、作用物質の複数回投与を伴うことができる。投与は、任意の順番で実施されうる。よって、本明細書に記載の1つまたは複数の変異ボルデテラ株および1つまたは複数の作用物質は、例えば免疫応答を誘発するために、任意の順番かつ当技術分野において公知の任意の投与経路を介して同時投与されうる。
本発明において、投薬治療は、単回投与スケジュールまたは複数回投与スケジュールに準じうる。例えば、複数回投与は、初回免疫スケジュールおよび/または追加免疫スケジュールで用いられうる。複数回投与スケジュールにおいて、様々な用量が、同一経路または異なる経路、例えば非経口初回免疫および粘膜追加免疫、粘膜初回免疫および非経口追加免疫などにより与えられうる。他の局面において、投与計画は、中和特性を有する抗体をもたらす抗体反応の力価を増強することができる。インビトロ中和アッセイは、中和抗体を試験するために用いられうる(例えばAsanaka et al., J Virology 102: 10327, 2005; Wobus et al., PLOS Biology 2; e432;およびDubekti et al., J Medical Virology 66: 400参照)。
免疫応答の有効性または存在を決定するための試験
治療処置の有効性を評価する1つの方法は、本発明の組成物の投与後に感染をモニターする工程を含む。予防処置の有効性を評価する1つの方法は、本発明の組成物の投与後に組成物中の抗原に対する免疫応答をモニターする工程を含む。本発明の組成物の免疫原性を評価する別の方法は、タンパク質またはタンパク質混合物を単離し、免疫ブロットにより患者の血清または粘膜分泌物をスクリーニングすることである。タンパク質と患者血清との間の陽性反応は、患者がすでに組成物への免疫応答を開始していることを示す。
治療処置の有効性を確認する別の方法は、本発明の組成物の投与後に感染をモニターする工程を含む。予防処置の有効性を確認する1つの方法は、本発明の組成物の投与後に組成物中の抗原に対する全身性免疫応答(IgG1およびIgG2a産生のレベルをモニターする工程など)および粘膜性免疫応答(IgA産生のレベルを産生する工程など)の両方をモニターする工程を含む。典型的には、血清特異的抗体反応は免疫処置後だが攻撃前に決定されるが、一方で粘膜特異的抗体反応は免疫処置後かつ攻撃後に決定される。本発明の免疫原性組成物は、宿主、例えばヒトへの投与の前に、インビトロおよびインビボ動物モデルで評価されうる。
本発明の組成物の有効性はまた、感染の動物モデル、例えばマウスを組成物により攻撃することによりインビボで決定されうる。組成物は、攻撃菌株と同じ菌株に由来してもよいし、由来しなくてもよい。インビボ有効性モデルは以下を含むことができるが、これらに限定されない:(i)ヒトの菌株を用いるマウス感染モデル;(ii)マウスにおいて特に病原性である菌株などのマウス適合菌株を用いるマウスモデルであるマウス疾患モデル;および(iii)ヒト単離株を用いる霊長類モデル。
本発明により誘導される免疫応答は、TH1免疫応答およびTH2応答の一方または両方でありうる。免疫応答は、改良された免疫応答、または増強された免疫応答、または変更された免疫応答であることができる。免疫応答は、全身免疫応答および粘膜免疫応答の一方または両方であることができる。例えば、免疫応答は、増強された全身反応および/または粘膜反応であることができる。増強された全身免疫および/または粘膜免疫は、増強されたTH1免疫応答および/またはTH2免疫応答に反映される。例えば、増強された免疫応答は、IgG1および/またはIgG2aおよび/またはIgAの産生の増加を含むことができる。別の局面において、粘膜免疫応答は、TH2免疫応答であることができる。例えば、粘膜免疫応答は、IgAの産生の増加を含むことができる。
典型的には、活性化TH2細胞は抗体産生を増強し、そのため細胞外感染に応答するのに有用である。活性化TH2細胞は典型的には、IL-4、IL-5、IL-6およびIL-10の1つまたは複数を分泌することができる。TH2免疫応答はまた、将来の保護のためにIgG1、IgE、IgA、および/または免疫記憶B細胞の産生をもたらすこともできる。一般に、TH2免疫応答は、TH2免疫応答に関連するサイトカイン(IL-4、IL-5、IL-6およびIL-10など)の1つまたは複数の増加、またはIgG1、IgE、IgAおよび免疫記憶B細胞の産生の増加の1つまたは複数を含むことができる。例えば、増強されたTH2免疫応答は、IgG1産生の増加を含むことができる。
TH1免疫応答は、CTLの増加、TH1免疫応答に関連するサイトカイン(IL-2、IFN-γ、およびTNF-αなど)の1つまたは複数の増加、活性化マクロファージの増加、NK活性の増加、またはIgG2aの産生の増加の1つまたは複数を含むことができる。例えば、増強されたTH1免疫応答は、IgG2a産生の増加を含むことができる。
本発明の組成物、具体的には1つまたは複数の本発明の菌株を含む免疫原性組成物は、単独または他の作用物質との組み合わせのいずれかで、任意でTh1反応および/またはTh2反応を誘発することのできる免疫調節剤と共に用いられうる。
本発明の組成物は、細胞媒介免疫応答ならびに体液性免疫応答の両方を誘発し、インフルエンザ感染に効果的に対応することができる。この免疫応答は好ましくは、将来的に1つまたは複数の感染性抗原への曝露に際し迅速に応答することができる長期持続(例えば中和)抗体および細胞媒介免疫を誘導する。
対象および哺乳動物
本発明の組成物は典型的には、哺乳動物対象、例えばヒトにおけるインフルエンザウイルス株を予防または治療するためのものである。いくつかの局面において、対象は、高齢者(例えば>65歳)、子供(例えば<5歳)、入院患者、医療従事者、軍隊もしくは兵隊、食料取扱者、妊婦、慢性疾患患者、および海外旅行に出かける人々を含むことができる。組成物は概して、これらのグループならびに一般集団または医師により必要であると考えられる他の集団に適している。
キット
本発明はまた、本発明の組成物の容器の1つまたは複数を含むキットも提供する。組成物は、液体形態であることができ、または凍結乾燥されることもできる。組成物に適した容器は、例えばビン、バイアル、シリンジ、および試験管を含む。容器は、ガラスまたはプラスチックを含む様々な材料から形成されうる。容器は、滅菌アクセスポートを備えることができる(例えば、容器は、皮下注射針により刺し通すことができるストッパーを有する静脈内溶液バッグまたバイアルであることができる)。
キットはさらに、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、またはブドウ糖液などの薬学的に許容可能な緩衝剤を含む第2の容器を含む。それはさらに、緩衝剤などの他の薬学的に許容可能な製剤化溶液、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジまたは他の送達デバイスを含む、最終使用者に有用な他の材料も含むことができる。キットはさらに、アジュバントを含む第3の成分も含むことができる。
キットはまた、免疫を誘導する方法、感染を予防する方法、または感染を治療するための方法のための取扱説明書を含む添付文書も含むことができる。添付文書は、未承認の添付文書案であることができ、または食品医薬品局(FDA)または他の規制機関により承認された添付文書であることができる。
本発明はまた、本発明の組成物を予め充填した送達デバイスも提供する。
薬学的組成物は一般的に、無菌で、実質的に等張性であるように、かつ米国食品医薬品局の製造管理および品質管理に関する基準(GMP)の規制の全てに完全にのっとって製剤化される。
前述の記載から、組成物および方法の様々な変更および変形が当業者に思い浮かぶであろう。添付の特許請求の範囲の範囲内であるそのような変更の全ては、特許請求の範囲の範囲内に含まれるべきであることが意図される。各記載範囲は、範囲の全組み合わせおよび部分的組み合わせ、ならびにそれらに含まれる特定の数字を含む。
前述の発明は、理解を明確にする目的で例として詳細に記載されているが、当業者には、特定の変形および変更が本開示により理解され、かつ限定ではなく例として示される添付の特許請求の範囲の範囲内で過度の実験なく実施されうることが明らかである。
例示的局面
以下は、本発明を行うための特定の局面の実施例である。実施例は、例示のみを目的として提供され、本発明の範囲を限定することを決して意図しない。用いられる数(例えば、量、および温度など)について正確さを確保するために努力がなされているが、もちろん多少の実験誤差および偏差は許容されるべきである。
本発明の実施は、他に指示の無い限り、当技術分野の技術の範囲内で、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術および薬学の通常の方法を用いる。そのような技術は、文献で十分に説明されている。例えば、T.E. Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties (W.H. Freeman and Company, 1993); A.L. Lehninger, Biochemistry (Worth Publishers, Inc., current addition); Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition, 1989); Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan eds., Academic Press, Inc.); Remington's; Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed. (Plenum Press) Volumes A and B, 1992)を参照のこと。
材料および方法
細菌の菌株および増殖条件
本試験で用いられる細菌の菌株は、非活性型の百日咳毒素(PT)およびバックグラウンドレベルの気管細胞毒素(TCT)を生ずる、皮膚壊死性(DNT)のコード遺伝子を欠失したストレプトマイシン耐性TohamaI誘導体である、百日咳菌BPZE1である(22)。BPZE1細菌を、37℃で72時間、1%グリセロール、10%羊脱繊維血および100 μg/mlストレプトマイシン(Sigma Chemical CO., St Louis, Mo.)を追加したボルデ・ジャング(BG)寒天培地(Difco, Detroit, Mich.)上で増殖させた。以前に記載された通り(Menozzi FD, et al., "Identification and purification of transferring- and lactoferrin-binding proteins of Bordetella pertussis and Bordetella bronchiseptica", Infect, Immun 59: 3982-3988, 1991)に、1 g/l ヘプタキス(2,6-ジ-o-メチル)β-シクロデキストリン(Sigma)を含むStainer-Scholte(SS)培地中で液体培養を行った。加熱失活は95℃、1時間で行われた。
鼻腔内感染
6〜8週齢の雌Balb/cマウスを、特定病原体を含まない条件下で個別に換気されたケージ内で維持し、かつ全ての実験をシンガポール国立大学の動物試験委員会(the National University of Singapore animal study board)のガイドラインの下で行った。BPZE1処置については、以前に記載された通りに(Mielcarek N, et al., "Intranasal priming with recombinant Bordetella pertussis for the induction of a systemic immune response against a heterologous antigen", Infect immune 65: 544-550, 1997)、鎮静剤を投与したマウスに、約5×106コロニー形成単位(cfu)のBPZE1の生細菌または死細菌を含む0.05% Tween80(Sigma)を追加した20 μl 滅菌PBS(PBST)を、(示したように)1回、2回または3回鼻腔内投与した。インフルエンザ感染については、鎮静剤を投与したマウスに、ペニシリンおよびストレプトマイシンを追加した20 μl滅菌PBS中の、約2×106 TCID50のマウス適合A/Aichi/2/68 (H3N2)ウイルス(継代数10)(Narasaraju T, et al., "Adaptation of human influenza H3N2 virus in a mouse pneumonitis model: insights into viral virulence, tissue tropism and host pathogenesis", Microbes Infect 11: 2-11, 2009)または4致死量(LD)50のH1N1(A/PR/8/34)インフルエンザウイルス(ATCC# VR-95)を、経鼻的に投与した。1群あたり10匹のマウスを用いて体重減少に基づく生存率を決定し、マウスは、体重が元の体重の20%を超えて減少した時に安楽死させた。
ウイルス価の決定
マウスの肺を回収し、機械的破砕(Omniホモジナイザー)を用いてホモジナイズし、WHOにより報告された改変法(WHO, "WHO Manual on Animals Influenza Diagnosis and Surveillance" (World Health Organization, Geneva), 2002)を用いる50%組織培養感染量(TCID50)アッセイにより生存ウイルスの存在について試験した。簡単に言うと、96ウェルプレート中の90%コンフルエントなメイディン・ダービー・イヌ腎臓(MDCK)細胞に10倍に連続的に希釈した肺ホモジネート100 μlを播種した。プレートを加湿インキュベータ(5% CO2)中35℃で3日間インキュベートした。TCID50を50%の細胞変性効果(CPE)の減少により決定し、log TCID50/肺を導いた。各時点で1群あたり5匹のマウスを個別に評価した。
病理組織検査
ウイルス攻撃の3日後に、1群あたり4匹のマウスを屠殺し、それらの肺を収集した。肺を取り出し、10%ホルマリンを含むPBS中で固定した。固定化後、肺をパラフィンで包埋し、薄片に切り、H&Eで染色した。
気管支肺胞洗浄液(BALF)中の細胞浸潤
屠殺した動物の肺の中に1 mlの滅菌PBSを注入し、処理の間に両方の肺が膨張することを確実にする1つの洗浄工程を行うことにより、個々のBALFを回収した。次いで、BALFを400gで10分間遠心分離し、上清を取り出し、サイトカイン検出のために−80℃で保存した。BALF細胞の総数を、血球計数器を用いて決定した。細胞をサイトスピン装置(Thermo Shandon)を用いてスライド・ガラス上にスポットし、改変Wright染色法で染色した(Kimman TG, et al., "Development and antigen specificity of the lymphoproliferation response of pigs to pseudorabies virus: dichotomy between secondary B- and T-cell responses", Immunology 86: 372-378, 1995)。異なる細胞型の同定を、標準的な形態学的基準を用いて行った。結果は、総細胞集団に対する各細胞のパーセンテージとして表す。1スライドあたり合計500細胞を検討した。1群あたり4匹のマウスを個別に評価した。
FACS解析
マウスを屠殺し、それらの肺を収集し、1%FCSおよび2 U/ml DNaseI (Qiagen)を有するRPMI中に0.5 mg/ml Liberase (Roche)を含有する2 ml消化バッファー中で、肺を37℃、15分間消化し、600 g、室温で20分間、Ficoll-PaqueTMPLUS (GE)で遠心分離することにより、単細胞懸濁液を調製した。細胞を収集し、滅菌FACSバッファー(2%FCS、5 mM EDTAを含むPBS)で2回洗浄した。106個の細胞をFITC標識抗マウスCD3抗体(eBioscience)で染色し、CyAnTM ADP血球計算器(Dako)で解析した。各時点で1群あたり5匹のマウスを個別に評価した。
サイトカインおよびケモカインの解析
BALF上清中のサイトカインおよびケモカインの産生を、Procartaサイトカインプロファイリングキットを用いて製造者の使用説明書(Panomics)に従って測定した。Ab結合ビーズ、検出Abおよびストレプトアビジン-PE複合体と共にインキュベーションした後に、試料をBio-Plex機器(Bio-Rad)にかけた。以下の増殖因子、サイトカイン、および炎症メディエーターのレベルを評価した:GM-CSF、KC、IL-1β、IL-6、IFN-γおよびTNF-α、IFN-α、MCP-1、RANTES、IL-10。加えて、TGF-βレベルを、ヒト/マウスTGFβ1 ELISAキット(eBioscience)を用いて製造者の使用説明書に従って測定した。
受身伝達実験
高力価抗百日咳菌免疫血清は、5×106cfuのBPZE1生細菌を4週間隔で2回経鼻的に感染させた10匹の成体Balb/cマウスで生じさせた。別群の10匹の成体未処置Balb/cマウスに105.5 TCID50の加熱不活性化したヒト/Aichi/2/68 (H3N2)ウイルス(HI-H3N2)を含む完全フロインドアジュバントを腹腔内に(ip.)注入し、2週間後に同量のHI-H3N2ウイルスを含む不完全フロインドアジュバントで追加免疫した。各マウス群からの免疫血清を追加免疫の2週間後に収集し、プールし、抗百日咳抗体力価および抗インフルエンザ抗体力価をELISAにより測定した。さらに、HI-H3N2血清について、中和抗体の存在を中和アッセイにより試験した。免疫血清を、ろ過滅菌し、56℃で30分間加熱不活性化し、将来の使用まで−80℃で保存した。対照未処置マウスからの血清もまた、陰性対照として収集した。
6〜8週齢のレシピエントBalb/cマウスに、マウス適合H3N2ウイルスによるウイルス攻撃の1日前に、200 μlの未処理の免疫血清、抗BPZE1免疫血清、または抗H3N2免疫血清をip注入した。体重減少をモニターし、生存率を決定した。1群あたり10匹のマウスをアッセイした。
T細胞増殖アッセイ
リンパ球増殖を、他に記載されているように(Bao Z, et al., "Glycogen synthase kinase-3beta inhibition attenuates asthma in mice", Am J Respir Crit Care Med 176: 431-438, 2007)、トリチウム化(3H)チミジンの取り込みにより測定した。簡単にいうと、未処置マウスおよびBPZE1処置マウス(1群あたり6匹のマウス)由来の脾臓を無菌状態下で収集し、プールした。単細胞懸濁液を調製し、室温で600 gで20分間 Ficoll-PaqueTMPLUS (GE)で遠心分離した。単離した脾細胞を、96ウェル丸底プレート(NUNC)中に、100 μl培地(10%FCS、5×10-5 M β-メルカプトエタノール、2 mM L-グルタミン、10 mM HEPES、200 U/mlペニシリン、200 μg/mlストレプトマイシンを追加したRPMI640)中に2×105 細胞/ウェルの濃度で播種した。20 μg/mlのBPZE1全細胞溶解物または加熱不活性化した105 TCID50のマウス適合H3N2インフルエンザウイルス(HI-H3N2)(試験抗原)を含む培地100 μlを脾細胞に添加した。非感染卵羊水100 μlおよび5 μg/mlコンカナバリン A (conA)を含む培地100 μlを、それぞれ偽対照および生存対照として用いた。37℃で5%CO2雰囲気でのインキュベーションの3日後に、培養物に0.4 μCi [3H]チミジンを含む20 μl RPMI完全培地を適用した。インキュベーションの18時間後に、細胞を収集し、洗浄し、取り込まれた放射活性をTopCount NXT(商標)マイクロプレートシンチレーション・ルミネセンスカウンター(PerkinElmer)で測定した。結果は、試験抗原の存在下での[3H]チミジン取り込みの平均値と試験抗原の非存在下での[3H]チミジン取り込みの平均値との間の比率に対応する刺激指数(SI)として表される。SI>2は陽性と考えられる。各試料を4重にアッセイした。
IFN-α ELISPOTアッセイ
抗原特異的IFN-γ産生脾細胞の頻度を、製造者の使用説明書に従ってBDマウスELISPOTセット(BD PharMingen)を用いるELISPOTアッセイにより決定した。簡単に言うと、未処置マウスおよびBPZE1処置マウス由来の個々の脾臓の単細胞懸濁液を調製し、5 μg/mlの抗IFN-γ抗体を含む滅菌PBS 100 μlにより予めコーティングした96ウェルマイクロプレート(Millipore, Bedford, MA)中で一晩、4℃で平板培養し、3回洗浄し、10%FCSを含むRPMI 1640により室温で2時間ブロックした。次いで、細胞を、20 μg/mlのBPZE1全細胞溶解物、または加熱不活性化した105 TCID50のマウス適合H3N2インフルエンザウイルス(HI-H3N2)、または5 μg/ml conAと共に、5%CO2雰囲気中、37℃で12〜20時間インキュベートした。次いで、プレートを洗浄し、続いてビオチン結合抗マウスIFN-γ抗体を室温で2時間添加した。洗浄後に、ストレプトアビジン-HRP複合体を添加し、室温で1時間インキュベートした。ウェルを再び洗浄し、スポットが見えるまで3-アミノ-9-エチル-カルバゾール(AEC)基質溶液で展開させた。乾燥後に、スポットを形成した細胞数をBioreader(登録商標)4000 (Biosystem)により計数した。1群あたり6匹の動物を個別にアッセイした。
統計解析
他に指定のない限り、バーは平均値±SDを表し、平均値を* p≦0.05、**p≦0.01および***p≦0.001の5%有意水準を有する双方向独立スチューデントt検定を用いて比較した。
実施例1:生弱毒百日咳菌の単回経鼻投与はH3N2インフルエンザ攻撃を防ぐ。
マウス適合H3N2インフルエンザウイルスを、成体Balb/cマウス内へのA/Aichi/2/68(H3N2)ウイルスの肺から肺への連続的継代を通じて入手した(Narasaraju T, et al., "Adaptation of human influenza H3N2 virus in a mouse pneumonitis model: insights into viral virulence, tissue tropism and host pathogenesis", Microbes Infect 11: 2-11, 2009)。継代数10(P10)の株は、高い病原性を示し、感染動物の様々な器官において壊死性および炎症性の病変を伴う肺外拡散をもたらした。2×106 TCID50のP10ウイルス懸濁液の経鼻投与は、4日以内に動物の死をもたらした(Narasaraju T, et al., "Adaptation of human influenza H3N2 virus in a mouse pneumonitis model: insights into viral virulence, tissue tropism and host pathogenesis", Microbes Infect 11: 2-11, 2009)。
成体Balb/cマウスにBPZE1生細菌を経鼻的に接種し、その3週間後または6週間後のいずれかにおいて致死量のマウス適合H3N2ウイルスで攻撃した。体重変化に基づく生存率は、経鼻BPZE1処置の3週間後に攻撃されたマウスは有意に保護されないが、一方でマウスがBPZE1処置の6週間後に攻撃された場合には60%保護を達成することを示した(図1)。
実施例2:BPZE1生細菌は致死性H3N2攻撃を防ぐが、BPZE1死細菌は防がない。
成体Balb/cマウスにBPZE1生細菌またはBPZE1死細菌を1回経鼻的に投与し、その後、BPZE1処置の6週間後に致死量のマウス適合H3N2ウイルスで攻撃した。結果は、死細菌はH3N2に対していかなる有意な保護ももたらさなかったことを示し(図2)、マウス肺の細菌定着は保護メカニズムを誘導するのに必要であることを示唆した。
実施例3:追加免疫の効果。
最後のBPZE1投与の4週間後に行われるマウス適合H3N2ウイルスによる致死的攻撃の前に、BPZE1生細菌を4週間隔で2回、Balb/cマウスに経鼻的に投与した。最小限の体重変化を伴う100%保護率が、BPZE1処置動物について得られた(図3)。同様の保護率が、ウイルス攻撃が追加免疫の2週間後に行われた場合に達成された。これらのデータは、BPZE1生細菌の2回目の経鼻投与が、保護効果を増強しただけでなく、保護メカニズムを惹起するのに必要な時間を短縮させたということを示した。
実施例4:BPZE1細菌はH1N1ウイルス攻撃に対する保護をもたらす。
インフルエンザAウイルスに対するBPZE1細菌の保護能をさらに探った。BPZE1生細菌で1回経鼻的に処置したマウスは、6週間後に行われたヒトA/PR/8/34 (H1N1)インフルエンザAウイルスによる致死的攻撃に対して保護されなかった(データ示さず)。しかしながら、BPZE1生細菌の3回連続投与は、H1N1ウイルスに対して50%保護を与えた(図4)。これらの観察は、BPZE1細菌は、その有効性は変動的であるものの、全てのインフルエンザAウイルスに対して防御する可能性を有しうることを示した。
実施例5:ウイルス量は保護されたマウスにおいて低減されない。
インフルエンザAウイルスに対する交差防御をさらに特徴付けるために、BPZE1細菌で2回処置したマウスおよび対照マウスの肺におけるウイルス量を定量化した。マウス適合H3N2ウイルスに感染したマウスにおけるウイルス価のピークに対応する感染3日後に、ウイルス量を確認した(Narasaraju T, et al., "Adaptation of human influenza H3N2 virus in a mouse pneumonitis model: insights into viral virulence, tissue tropism and host pathogenesis", Microbes Infect 11: 2-11, 2009)。ウイルス量の有意差は、2つの動物群間で観察されなかった(図5)。この結果は、BPZE1処置動物で惹起される交差防御メカニズムはウイルス粒子および/または感染細胞を直接標的としていないことを示唆した。
実施例6:BPZE1処置はインフルエンザにより誘導される免疫症状およびリンパ球枯渇からマウスを保護する。
肺免疫症状は、感染したBPZE1処置動物および対照マウスからの肺切片の組織像によって調べられた。予想通りかつ以前に記載された通り(Narasaraju T, et al., "Adaptation of human influenza H3N2 virus in a mouse pneumonitis model: insights into viral virulence, tissue tropism and host pathogenesis", Microbes Infect 11: 2-11, 2009)に、感染した対照マウスは、炎症性細胞を伴う重篤な炎症、壊死性残屑で満たされた細気管支および肺胞を伴う重篤な気管支肺炎および間質性肺炎、ならびに重度の肺気腫および中程度の浮腫を呈した(図7A)。対照的に、保護されたBPZE1処置マウスの肺では、軽度の炎症、気道および肺胞の微小な傷害、ならびに軽度の浮腫に関連する脈管周囲/細気管支周囲の軽度の傷害のみが観察された。
保護された動物および保護されていない動物から回収された気管支肺胞洗浄液(BALF)中に存在する細胞集団についても調べた。両動物群由来のBALF中に存在する細胞の総数は同等であった(11.8×105 対16.1×105)が、BPZE1処置マウスでは有意に多数のマクロファージおよび少数の好中球が見られた(図6B)。
さらに、保護されたマウスおよび保護されていないマウスの肺に存在するリンパ球集団を解析した。高病原性のH1N1(1918)およびH5N1インフルエンザウイルスに感染したマウス(Kash JC, et al., "Genomic analysis of increased host immune and cell death responses induced by 1918 influenza virus", Nature 443: 578-581, 2006; Uiprasertkul M, et al., "Apoptosis and Pathogenesis of Avian Influenza A (H5N1) Virus in Humans", Emerg Infect Dis 13: 708-712, 2007; Lu X, et al., "A mouse model for the evaluation of pathogenesis and immunity to influenza A (H5N1) viruses isolated from humans", J Virol 73: 5903-5911, 1999)、ならびに本研究で用いるマウス適合H3N2ウイルス株に感染したマウス(Narasaraju T, et al., "Adaptation of human influenza H3N2 virus in a mouse pneumonitis model: insights into viral virulence, tissue tropism and host pathogenesis", Microbes Infect 11: 2-11, 2009)において、リンパ球の枯渇が実際に報告されている。ここでは、Balb/cマウスを、BPZE1細菌で2回処置し、4週間後にマウス適合H3N2ウイルスで攻撃した。マウスの肺を、T細胞集団のFACS解析のためにインフルエンザ攻撃の3日後および5日後に収集した。ウイルス攻撃の3日後、感染した対照マウスおよびBPZE1処置マウスにおけるCD3+Tリンパ球のパーセンテージは、攻撃前の動物で見られるパーセンテージと同等であった(図6C)。しかしながら、以前に報告されたように(Narasaraju T, et al., "Adaptation of human influenza H3N2 virus in a mouse pneumonitis model: insights into viral virulence, tissue tropism and host pathogenesis", Microbes Infect 11: 2-11, 2009)、ウイルス攻撃の5日後の感染対照動物において、有意なCD3+T細胞枯渇が観察された(図6C)。対照的に、保護されたBPZE1免疫動物では、T細胞集団は攻撃前後で一定であり(図6C)、インフルエンザにより誘導されるリンパ球の枯渇をBPZE1処置が防いだことを示唆した。
実施例7:炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの産生は、保護されたBPZE1処置マウスで抑制される。
致死性H3N2ウイルス攻撃の1日後および3日後に、主要な炎症誘発性サイトカインおよびケモカインを、保護されたBPZE1処置マウスから回収したBALFで測定し、保護されていないマウスと比較した。保護された動物群のBALFで測定された全ての炎症誘発性サイトカインおよびケモカインは、保護されていないマウスで測定されたものより有意に少なかった(図7)。インフルエンザで誘導される免疫症状に寄与しかつ疾患重症度に相関する主要な炎症誘発性サイトカインであるIL-1β、IL-6、IFN-γおよびTNF-αについて、1日目および3日目の両方で違いが観察された(de Jong MD, et al., "Fatal outcome of human influenza A (H5N1) is associated with high viral load and hypercytokinemia", Nat Med 12: 1203-1207, 2006; Beigel JH, et al., "Avian influenza A (H5N1) infection in humans:, N Engl J Med 353: 1374-1385, 2005; Peiris JS, et al., "Re-emergence of fatal human influenza A subtype H5N1 disease", Lancet 363: 617-619, 2004; Schmitz N, et al., "Interleukin-1 is responsible for acute lung immunopatholoy but increases survival of respiratory influenza virus infection", J Virol 79: 6441-6448, 2005)。IFN-α、MCP-1およびRANTESのレベルはウイルス攻撃の1日後に有意な減少が見られたが、IL-12(p70)、GM-CSFおよびKCの産生は攻撃の3日後に低下した。著しいことに、保護された動物群においてIL-12産生の完全な抑制が見られ、IFN-γのレベルの低下と一致した。
さらに、保護された動物と保護されていない動物との間で抗炎症性サイトカインIL-10およびTGF-βのレベルの有意差は検出されず、交差防御メカニズムにおいて1型制御性T細胞(Tr1)の関与は除外された(図7)。
実施例8:百日咳菌特異的適応免疫は、交差防御に関与しない。
BPZE1処置動物における交差反応性(および防御性)抗体および/またはT細胞の存在を調べた。第1に、百日咳菌とインフルエンザA H3N2およびH1N1ウイルスとの間で一致するエピトープは、BLAST検索により同定されなかった(データ示さず)。第2に、BPZE1処置マウス由来の免疫血清は、ELISAアッセイにおいてH3N2全ウイルス粒子と反応せず、インビトロ中和アッセイにおいてウイルスの中和もしなかった(データ示さず)。第3に、インビボ受動伝達実験において、高力価抗BPZE1免疫血清はH3N2致死的攻撃に対していかなる保護も付与しなかったが、加熱不活性化H3N2ウイルスに対して生じた免疫血清は100%の保護率を与えた(図8A)。第4に、増殖アッセイおよびIFN-γELISPOTアッセイは、BPZE1処置マウス由来の脾細胞がH3N2ウイルス粒子による刺激に対し、それぞれ増殖しないおよびIFN-γを産生しないことを示した(図8BおよびC)。全体的には、これらのデータは、百日咳菌特異的免疫がインフルエンザAウイルスに対する交差防御においていかなる役割も果たしていないことを強く支持する。
考察
高い致死率を伴う重篤な呼吸器疾患および免疫症状は、ヒトならびに他の哺乳動物種における高病原性鳥インフルエンザウイルス感染の顕著な特徴となっている。しかしながら、重篤な免疫症状作用の原因となる基礎をなすメカニズムは、未だ十分に解明されていない。具体的には、ウイルス量、免疫症状および疾患転帰の間の関係は依然として分かりにくい。複数の以前の研究が、インフルエンザ感染の動物モデルにおいてウイルス負荷の有意な減少なしに、死亡率および免疫症状の減少を報告している;例えば、MIP-1α遺伝子を破壊されたマウスにおいて、炎症細胞浸潤および肺損傷が減少するがウイルス排除が遅れることが観察されている(Cook DN, et al., "Requirement of MIP-1 alpha for an inflammatory response to viral infection", Science 269: 1583-1585, 1995)。同様に、CCR2(MCP-1の主要な受容体)欠失マウスは、死亡率の減少を呈したが、肺細胞浸潤および組織損傷の減少に関連するウイルス負荷の有意な上昇を呈した(Dawson TC, et al., "Contrasting effects of CCR5 and CCR2 deficiency in the pulmonary inflammatory response to influenza A virus", Am J Pathol 156: 1951-1959, 2000)。これに対し、IL-1Rノックアウトマウスは、ウイルス排除の遅れに関連する死亡率の増加を示したが、重篤な症状は少なかった(Schmitz N, et al., "Interleukin-1 is responsible for acute lung immunopatholoy but increases survival of respiratory influenza virus infection", J Virol 79: 6441-6448, 2005)。
本明細書で本発明者らは、インフルエンザAウイルスに対する百日咳菌によって媒介される交差防御は、肺におけるウイルス量の低下をもたらさないことを報告している。代わりに、保護されたBPZE1処置マウスは、最小限の肺免疫症状ならびに主要な炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの産生の減少を呈した。本発明者らの発見は、疾患の重症度は高いサイトカイン/ケモカインレベルと強く相関するという一般的な合意と一致する(La Gruta NL, et al, "A question of self-preservation: immunopathology in influenza virus infection", Immunol Cell Biol 85: 85-92 2007)。宿主免疫系の無制御活性化による血清および肺における過剰レベルのケモカインおよびサイトカインにより特徴付けられる、サイトカインストームは、再構築された1918 H1N1およびH5N1インフルエンザウイルスに感染した実験動物(Kash JC, et al., "Genomic analysis of increased host immune and cell death responses induced by 1918 influenza virus", Nature 443: 578-581, 2006; Simon AK, et al., "Tumor necrosis factor- related apoptosis-inducing ligand in T cell development: sensitivity of human thymocytes", Proc Natl Acad Sci USA 98: 5158-5163, 2001; Kobasa O, et al., "Aberrant innate immune response in lethal infection of macaques with the 1918 influenza virus", Nature 445: 319- 323, 2007; Tumpey TM, et al., "Characterization of the reconstructed 1918 Spanish influenza pandemic virus", Science 310: 77-80, 2005)、ならびにヒト(de Jong MD, et al., "Fatal outcome of human influenza A (H5N1) is associated with high viral load and hypercytokinemia", Nat Med 12: 1203-1207, 2006; Beigel JH, et al., "Avian influenza A (H5N1) infection in humans:, N Engl J Med 353: 1374-1385, 2005; Uiprasertkul M, et al., "Apoptosis and Pathogenesis of Avian Influenza A (H5N1) Virus in Humans", Emerg Infect Dis 13: 708-712, 2007; Peiris JS, et al., "Re-emergence of fatal human influenza A subtype H5N1 disease", Lancet 363: 617-619, 2004)においての致死的転帰と実際に相関した。さらに、組織学的指標および病理学的指標は、高病原性インフルエンザウイルスに関連する少なくともいくつかの極度の病状の媒介における、過剰な宿主反応が果たす重要な役割を強く示唆する。しかしながら、インフルエンザ感染中の各個別のサイトカインの役割は、多くの場合ポジティブおよびネガティブ両方の作用を有し、依然として不明確である;それらの産生は、免疫エフェクター細胞の感染部位への動員および/または活性化を通じてのウイルス排除に重要でありうるが、それらの炎症特性は組織損傷をももたらしうる(La Gruta NL, et al., "A question of self-preservation: immunopathology in influenza virus infection", Immunol Cell Biol 85: 85-92 2007)。
保護されたBPZE1処置動物の呼吸器官における炎症誘発性サイトカインおよびケモカイン産生の減少は、細胞浸潤および免疫細胞活性化に影響を与えた可能性がある;保護された動物のBALFにおいて好中球数の有意な低下が実際に観察されたが、これはKCおよびTNF-α(両方のサイトカインとも感染組織において好中球の動員および活性化に関与する)のレベルの低下とも一致する(La Gruta NL, et al., "A question of self-preservation: immunopathology in influenza virus infection", Immunol Cell Biol 85: 85-92 2007; Kips JC, et al., "Tumor necrosis factor causes bronchial hyperresponsiveness in rats", Am Rev Respir Dis 145: 332-336, 1992; Headley AS, et al., "Infections and the inflammatory response in acute respiratory distress syndrome", Chest 111: 1306-1321, 1997)。さらに、保護された動物で測定されたIL-12の産生抑制は、ナチュラルキラー(NK)細胞および細胞障害性CD8+T細胞などのいくつかの免疫細胞の活性化を低下させた可能性がある。両細胞型は、有害な可能性があり、炎症性メディエーターの放出に関する免疫病理に関与していると記載されている(La Gruta NL, et al., "A question of self-preservation: immunopathology in influenza virus infection", Immunol Cell Biol 85: 85-92 2007)。一貫して、NK細胞およびCD8+T細胞の活性化の顕著な特徴であるIFN-γ産生は、保護された動物から回収したBALFにおいて有意な低下が見られた。加えて、IFN-γ産生の低下は、酸化的バースト、抗原提示の誘導、およびケモカイン産生を含む、ウイルスに対する好中球の反応に影響を与えることができる(Ellis TN and Beaman BL, "Interferon-gamma activation of polymorphonuclear neutrophil function", Immunology 112: 2-11, 2004; Farrar MA and Schreiber RD, "The molecular cell biology of interferon-gamma and its receptor", Annu Rev Immunol 11: 571, 1993)。
興味深いことに、それぞれ単球の動員およびマクロファージへの分化に関与するMCP-1およびGM-CSFのレベルが低いのにもかかわらず、保護されたBPZE1処置マウスのBALFにおいて有意に多数のマクロファージが観察された。一方で、肺胞マクロファージ(AM)および組織常在性ではないマクロファージがBALFで回収される主要なマクロファージ集団を構成することに注意を払うべきである(Jakubzick C, et al., "Modulation of dendritic cells trafficking to and from the airways", J Immunol 176: 3578-3584, 2006)。そのため、感染した対照マウスと比べて保護されたマウスがそれらの組織においてマクロファージ集団の減少を呈する可能性があると考えられる。
AMは、T細胞の機能を調節することにより(Strickland DH, et al., "Regulation of T-cell function in lung tissue by pulmonary alveolar macrophages", Immunology 80: 266-272, 1993)、樹状細胞の成熟を抑制することにより (Holt PG, et al., "Down-regulation of the antigen presenting function(s) of pulmonary dendritic cells in vivo by resident alveolar macrophages", J Exp Med 111: 397-407, 1993; Bilyk N and Holt PG, "Inhibition of the immunosuppressive activity of resident pulmonary alveolar macrophages by granulocyte/macrophage colony stimulating factor", J Exp Med 111: 1773-1777 ', 1993; Stumbles PA, et al., "Airway dendritic cells: co-ordinators of immunological homeostasis and immunity in the respiratory tract", APMIS 111: 741-755, 2003)、および腸間膜リンパ節への遊走を抑制することにより(Jakubzick C, et al., "Modulation of dendritic cells trafficking to and from the airways", J Immunol 176: 3578-3584, 2006)、炎症反応に対する抑制効果を呈することが示されている。そのため、インフルエンザ攻撃により誘導される多数の肺胞マクロファージが、保護されたBPZE1処置動物における炎症の抑制/制御に寄与したと仮定することができる。
さらに、本発明者らは、ウイルス攻撃の際に、保護されたBPZE1処置動物ではCD3+T細胞集団に変化はないが、感染した対照マウスではCD3+T細胞の比率の有意な減少が見られたことを見いだした。高病原性インフルエンザ感染の間のリンパ球枯渇は以前に報告されており(Kash JC, et al., "Genomic analysis of increased host immune and cell death responses induced by 1918 influenza virus", Nature 443: 578-581, 2006; Uiprasertkul M, et al., "Apoptosis and Pathogenesis of Avian Influenza A (H5N1) Virus in Humans", Emerg Infect Dis 13: 708-712, 2007; Narasaraju T, et al., "Adaptation of human influenza H3N2 virus in a mouse pneumonitis model: insights into viral virulence, tissue tropism and host pathogenesis", Microbes Infect 11: 2-11, 2009; Lu X, et al., "A mouse model for the evaluation of pathogenesis and immunity to influenza A (H5N1) viruses isolated from humans", J Virol 73: 5903-5911, 1999)、実験的証拠は可能性のあるメカニズムとしてアポトーシスを示唆している(Uiprasertkul M, et al., "Apoptosis and Pathogenesis of Avian Influenza A (H5N1) Virus in Humans", Emerg Infect Dis 13: 708-712, 2007; Lu X, et al., "A mouse model for the evaluation of pathogenesis and immunity to influenza A (H5N1) viruses isolated from humans", J Virol 73: 5903-5911, 1999)。保護された動物と保護されていない動物との間でウイルス量に差は観察されないため、リンパ球アポトーシスは、ウイルス自身の直接的な細胞溶解作用ではありえない。代わりに、本発明者らのデータは、H5N1に感染したヒトおよびマウスでは宿主免疫応答のサイトカイン調節異常および過剰活性化によりリンパ球アポトーシスが引き起こされる可能性があることを示唆する以前の研究と一致する(Uiprasertkul M, et al., "Apoptosis and Pathogenesis of Avian Influenza A (H5N1) Virus in Humans", Emerg Infect Dis 13: 708-712, 2007; Maines TR, et al., "Pathogenesis of emerging avian influenza viruses in mammals and the host innate immune response", Immunol Rev 225: 68-84, 2008)。具体的には、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)を含むTNF-αおよび関連するTNFスーパーファミリメンバーは、T細胞アポトーシスを誘導することが公知である(Simon AK, et al., "Tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand in T cell development: sensitivity of human thymocytes", Proc Natl Acad Sci USA 98: 5158-5163, 2001; Wang J, et al., "The critical role of LIGHT, a TNF family member, in T cell development", J Immunol 167: 5099-5105, 2001)。一貫して、インフルエンザ攻撃に対して保護されたBPZE1マウスのBALFにおいて、低レベルのTNF-αが測定され、そのために潜在的にT細胞アポトーシスの低下につながった。
交差防御を担う保護メカニズムは、いまだ特定されていない。しかしながら、本発明者らのデータは、百日咳菌特異的な適応免疫(交差反応性抗体およびT細胞を含む)は関与しないことを実証する。BPZE1生細菌は保護を付与するがBPZE1死細菌は付与しないという観察は、細菌の肺定着、すなわち長期に渡る宿主免疫系への曝露が、保護メカニズムを誘導するのに必要であることを示す。さらに、BPZE1生細菌で1回処置されかつ3週間後にインフルエンザH3N2ウイルスで攻撃されたマウスは有意に保護されなかったので、保護メカニズムの誘導は、生じるのに3週間より多くを必要とする。しかしながら、2回目のBPZE1処置は、保護メカニズムを誘導し保護率を増強するのに必要な時間を短縮することができ、このことは、いくつかの免疫記憶細胞はより早く応答することができる初回免疫の際に産生され、大部分の免疫記憶細胞はBPZE1細菌との2回目の遭遇の際に産生されていることを示唆した。最後に、BPZE1生細菌の3回連続経鼻投与はヒトA/PR/8/34 (H1N1)インフルエンザウイルスに対して50%保護を付与するのに必要であることが、観察された。H3N2ウイルスおよびH1N1ウイルスの攻撃に対して達成される保護率の違いは、両方のウイルスにより誘導される分子疾患メカニズムが異なっていることを示唆する。しかしながら、保護有効性はサブタイプ間で異なり得るが、百日咳菌はインフルエンザAウイルスに対する期待がもてる万能ワクチンである。
百日咳菌の病原性因子の活性の多くは、宿主防御システムを抑制、破壊および回避するために、免疫調節に充てられる(Carbonetti NH, "Immunomodulation in the pathogenesis of Bordetella pertussis infection and disease", Curr Opin Pharmacol 7: 1-7, 2007)。百日咳菌に対する免疫応答は、Toll様受容体(TLR)4シグナル伝達を通じて開始および制御され、気道において炎症反応を阻害しかつ症状を限定することができる樹状細胞(DC)による抗炎症サイトカインIL-10産生を誘導する(Higgins SC, et al., "Toll-like receptor 4- mediated innate IL-10 activates antigen-specific regulatory T cells and confers resistance to Bordetella pertussis by inhibiting inflammatory pathology", J Immunol 171: 3119-3127, 2003)。百日咳菌で産生される主要な付着因子である繊維状赤血球凝集素(FHA)は、IL-10産生を刺激し、マクロファージおよびDCによるTLR誘導性IL-12産生を阻害し、IL-10を分泌する1型制御性T(Tr1)細胞の発生をもたらすことが示された(McGuirk P, et al., "Pathogen-specific T regulatory 1 cells induced in the respiratory tract by a bacterial molecule that stimulates interleukin 10 production by dendritic cells: a novel strategy for evasion of protective T helper type 1 responses by Bordetella pertussis", J Exp Med 195: 221-231, 2002)。興味深いことに、最近、T細胞により媒介される大腸炎モデルにおいて、FHAの全身投与が腸炎を減少させることが見いだされ、これはFHAの抗炎症役割を裏付ける(Braat H, et al., "Prevention of experimental colitis by parenteral administration of a pathogen-derived immunomoculatory molecule", Gut 56: 351-357, 2007)。しかしながら本発明では、保護されたマウスと保護されていないマウスとの間でIL-10とTGFの比率に差は見られず、百日咳菌により付与されるインフルエンザAウイルスに対する交差防御における、FHAにより媒介されるTr1誘導の関与の可能性は除外される。
本明細書において本発明者らは、重篤な間質性肺炎のBalb/cマウスモデルにおいて、百日咳の原因微生物である百日咳菌(BPZE1)の弱毒株の事前経鼻投与が、マウス適合H3N2インフルエンザAウイルスによる致死的攻撃に対して、およびより少ない程度でヒトH1N1(A/PR/8/34)インフルエンザAウイルスに対して、効果的で持続的な保護をもたらしたことを報告している。この交差防御に関与する細胞および分子プレーヤーはいまだ同定されていないが、本発明者らのデータは、百日咳菌特異的な適合免疫およびTr1媒介性の下方制御は関与していない可能性があることを示す。重要なことには、本発明者らは、交差防御はウイルス量の減少をもたらさないことを見いだした。代わりに、保護されたBPZE1処置マウスは最小限の肺免疫症状を呈し、それらのBALFにおける好中球浸潤の減少ならびに様々な主要な炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの産生の低下と一致している。よって、本発明者らの発見は、インフルエンザAウイルスにより誘導される致死的な間質性肺炎に対する保護が、炎症の減弱およびサイトカインストームの抑制を通じて達成されうることを強く示唆し、病原性インフルエンザAウイルス感染に対する保護の有効な予防手段としてのBPZE1細菌の使用の可能性を実証している。
本明細書において引用された全ての刊行物および特許出願は、各個別の刊行物または特許出願が全ての目的のために参照により組み入れられるよう具体的にかつ個別に指示されているように、それらの全体が全ての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
前述の発明は、理解の明確化を目的して例証および実例として多少詳しく記載されているが、特定の変化および変更が添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱しない範囲でそこになしうることは、本発明の教示に照らし当業者には容易に明らかである。
参照
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Claims (10)

  1. インフルエンザA型ウイルス感染により引き起こされる、哺乳動物対象における肺免疫症状を減少するための薬剤の製造における、変異した百日咳毒素(ptx)遺伝子、欠失または変異した皮膚壊死(dnt)遺伝子、および、異種ampG遺伝子を含む生の弱毒化された百日咳菌株の使用であって、生の弱毒化された百日咳菌株は哺乳動物対象においてコロニー形成できる菌株であり、かつ、薬剤におけるインフルエンザウイルス抗原の存在を必要とすることなく、哺乳動物対象においてインフルエンザA型ウイルスによって誘導される肺免疫症状を減少させる免疫応答を誘発する菌株であり、薬剤はインフルエンザA型ウイルス感染前に予防的有効量で鼻腔内に投与するための薬剤である、使用。
  2. 哺乳動物対象がインフルエンザA型ウイルスに感染することになる哺乳動物対象であり、薬剤が、哺乳動物対象の肺でコロニー形成するための十分な量であって、哺乳動物対象においてインフルエンザA型ウイルスによって誘導される肺免疫症状を減少させる免疫応答を誘発するための十分な量で投与される薬剤である、請求項1記載の使用。
  3. 生の弱毒化された百日咳菌株の少なくとも1回目の用量と2回目の用量が対象に投与される、請求項1記載の使用。
  4. 1回目の用量の投与から1-3週間で2回目の用量が対象に投与される、請求項3記載の使用。
  5. インフルエンザA型ウイルス感染により引き起こされる、哺乳動物対象における肺免疫症状を減少するための薬剤の製造における、変異した百日咳毒素(ptx)遺伝子、欠失または変異した皮膚壊死(dnt)遺伝子、および、異種ampG遺伝子を含む生の弱毒化された百日咳菌株の使用であって、生の弱毒化された百日咳菌株は、哺乳動物対象においてコロニー形成できる菌株であり、薬剤は、インフルエンザA型ウイルス感染前に予防的有効量で鼻腔内に投与するための薬剤であり、かつ、インフルエンザウイルス抗原を含まない薬剤である、使用。
  6. インフルエンザA型ウイルス感染により引き起こされる、哺乳動物対象における肺免疫症状を減少するための薬学的組成物であって、変異した百日咳毒素(ptx)遺伝子、欠失または変異した皮膚壊死(dnt)遺伝子、および、異種ampG遺伝子を含む生の弱毒化された百日咳菌株を活性成分として含み、かつ、インフルエンザA型ウイルス感染前に予防的有効量で鼻腔内に投与するための薬学的組成物であり、生の弱毒化された百日咳菌株は、哺乳動物対象においてコロニー形成できる菌株であり、かつ、インフルエンザウイルス抗原の存在を必要とすることなく、哺乳動物対象においてインフルエンザA型ウイルスによって誘導される肺免疫症状を減少させる免疫応答を誘発する菌株である、薬学的組成物
  7. 哺乳動物対象がインフルエンザA型ウイルスに感染することになる哺乳動物対象であり、哺乳動物対象の肺でコロニー形成するための十分な量であって、哺乳動物対象においてインフルエンザA型ウイルスによって誘導される肺免疫症状を減少させる免疫応答を誘発するための十分な量で投与される、請求項6記載の薬学的組成物。
  8. 生の弱毒化された百日咳菌株の少なくとも1回目の用量と2回目の用量が対象に投与される、請求項6記載の薬学的組成物。
  9. 1回目の用量の投与から1-3週間で2回目の用量が対象に投与される、請求項8記載の薬学的組成物。
  10. インフルエンザA型ウイルス感染により引き起こされる、哺乳動物対象における肺免疫症状を減少するための薬学的組成物であって、1)変異した百日咳毒素(ptx)遺伝子、欠失または変異した皮膚壊死(dnt)遺伝子、および、異種ampG遺伝子を含む生の弱毒化された百日咳菌株を活性成分として含み、2)インフルエンザウイルス抗原を含まず、かつ3)インフルエンザA型ウイルス感染前に予防的有効量で鼻腔内に投与するための薬学的組成物であり、生の弱毒化された百日咳菌株は、哺乳動物対象においてコロニー形成できる菌株である、薬学的組成物
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