JP5188842B2 - コークス処理システム及びコークス処理方法 - Google Patents

コークス処理システム及びコークス処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、コークス炉から高炉へ搬送されるコークスに対する処理を行うためのコークス処理システム及びコークス処理方法に関するものである。
コークス炉に供給される石炭や、当該石炭がコークス炉で乾留されることにより生成されたコークスに対して各種処理を行うことにより、高炉におけるCOとコークスの反応性を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献1〜3)。
特許文献1には、コークスの反応を活性化させるための触媒を水に溶解および分散させた後、当該液体をコークスと接触させることにより触媒をコークスに付着させる技術が開示されている。特許文献2には、コークスの反応を活性化させるための触媒を石炭に添加してコークス炉で乾留する技術が開示されている。特許文献3には、アルカリ土類金属および/または遷移金属を1質量%以上含有する石炭を配合炭中に2質量%以上配合してコークス炉で乾留する技術が開示されている。
特開2002−226865号公報 特開2001−348576号公報 特開2003−306681号公報
上記特許文献1のような方法では、触媒を水に溶解および分散させる工程が必要となるため、システムが複雑化するといった問題がある。また、コークスに水分が残る可能性もあり、高炉操業にとって好ましくない。
上記特許文献2のような方法では、石炭に触媒を混合することに起因して、コークス炉で生成されるコークスの強度(DI)が低下するおそれがある。このDIの低下を抑制するために、コークスを高強度化することができるような石炭配合とすることも考えられるが、その場合には、コークスの製造コストが高くなるといった問題がある。
上記特許文献3のような方法では、アルカリ土類金属および/または遷移金属を1質量%以上含有する石炭の配合率によっては、当該配合率が低い場合には触媒効果が小さくなり、当該配合率が高い場合には灰分が増加するといった問題がある。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、COとの反応性が高いコークスをより簡単な構成で製造することができるコークス処理システム及びコークス処理方法を提供することを目的とする。
第1の本発明に係るコークス処理システムは、コークス炉から高炉へ搬送されるコークスに対する処理を行うためのコークス処理システムであって、上記コークス炉から上記高炉へ搬送される上記コークスに対して、アルカリ土類金属を含む有機化合物からなる有機系粉体を散布することによって、当該有機系粉体を熱により溶融させて上記コークスに付着させる粉体散布装置を備えたことを特徴とする。
このような構成によれば、コークス炉から高炉へ搬送されるコークスに対して散布された有機系粉体が、熱により溶融してコークスに付着する。アルカリ土類金属を含む有機化合物からなる有機系粉体をコークスに付着させることにより、COとコークスの反応性を向上させることができる。特に、有機化合物を粉体のまま散布するので、有機化合物を水に溶解および分散させるような構成とは異なり、COとの反応性が高いコークスをより簡単な構成で製造することができる。また、水を用いることがなく、コークス水分が増加する懸念もない。
第2の本発明に係るコークス処理システムは、上記有機系粉体が、上記コークス炉から上記高炉へ搬送される上記コークスの熱により溶融して当該コークスに付着することを特徴とする。
このような構成によれば、コークスの熱により有機系粉体を溶融させて当該コークスに付着させることができるので、有機系粉体を溶融させるための熱源を別途設ける必要がない。したがって、COとの反応性が高いコークスをより簡単な構成で製造することができる。
第3の本発明に係るコークス処理システムは、上記コークス炉から搬送される上記コークスを冷却するための冷却装置を備え、上記粉体散布装置が、上記冷却装置により冷却された後の上記コークスに対して上記有機系粉体を散布し、上記有機系粉体の融点が、上記冷却装置により冷却された後の上記コークスの温度よりも低いことを特徴とする。
このような構成によれば、冷却された後のコークスに対して散布された有機系粉体が、コークスの余熱により溶融して当該コークスに付着する。これにより、冷却された後のコークスに対して有機系粉体を良好に付着させることができるので、COとコークスの反応性を効果的に向上させることができる。
第4の本発明に係るコークス処理システムは、上記有機系粉体を加熱するための加熱装置を備え、上記有機系粉体が、上記加熱装置の加熱により溶融して、上記コークス炉から上記高炉へ搬送される上記コークスに付着することを特徴とする。
このような構成によれば、加熱装置の加熱により有機系粉体を溶融させてコークスに付着させるので、安定した熱で有機系粉体を良好に溶融させ、コークスに対して良好に付着させることができる。したがって、COとコークスの反応性を効果的に向上させることができる。
第5の本発明に係るコークス処理方法は、コークス炉から高炉へ搬送されるコークスに対する処理を行うためのコークス処理方法であって、上記コークス炉から上記高炉へ搬送される上記コークスに対して、アルカリ土類金属を含む有機化合物からなる有機系粉体を散布することによって、当該有機系粉体を熱により溶融させて上記コークスに付着させる粉体散布ステップを備えたことを特徴とする。
このような構成によれば、上記第1の本発明に係るコークス処理システムと同様の効果を奏するコークス処理方法を提供することができる。
第6の本発明に係るコークス処理方法は、上記有機系粉体が、上記コークス炉から上記高炉へ搬送される上記コークスの熱により溶融して当該コークスに付着することを特徴とする。
このような構成によれば、上記第2の本発明に係るコークス処理システムと同様の効果を奏するコークス処理方法を提供することができる。
第7の本発明に係るコークス処理方法は、上記コークス炉から搬送される上記コークスを冷却するための冷却ステップを備え、上記粉体散布ステップでは、上記冷却ステップにより冷却された後の上記コークスに対して上記有機系粉体を散布し、上記有機系粉体の融点が、上記冷却ステップにより冷却された後の上記コークスの温度よりも低いことを特徴とする。
このような構成によれば、上記第3の本発明に係るコークス処理システムと同様の効果を奏するコークス処理方法を提供することができる。
第8の本発明に係るコークス処理方法は、上記有機系粉体を加熱するための加熱ステップを備え、上記有機系粉体が、上記加熱ステップの加熱により溶融して、上記コークス炉から上記高炉へ搬送される上記コークスに付着することを特徴とする。
このような構成によれば、上記第4の本発明に係るコークス処理システムと同様の効果を奏するコークス処理方法を提供することができる。
本発明によれば、アルカリ土類金属を含む有機化合物からなる有機系粉体を粉体のまま散布し、熱により溶融させてコークスに付着させることができるので、COとの反応性が高いコークスをより簡単な構成で製造することができる。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るコークス処理システムの一例を示したブロック図である。このコークス処理システムは、コークス炉1、CDQ(乾式消火設備)2、粉体散布装置3及び高炉4などを備え、コークス炉1から高炉4へ搬送されるコークスに対する処理を行う。すなわち、コークス炉1で石炭が乾留されることにより生成されたコークスが、搬送路5を介して高炉4まで搬送される過程で、CDQ2や粉体散布装置3などにより各種処理が施されるようになっている。
コークス炉1から搬出されるコークスは、赤熱コークスであり、CDQ2の乾式消火処理によって所定の温度以下にまで冷却される。このCDQ2は、コークス炉1から搬送されるコークスを冷却するための冷却装置を構成している。CDQ2により冷却された後のコークスの温度は、200℃以下であることが好ましく、例えば130℃〜190℃の温度範囲内に設定されていてもよい。
粉体散布装置3は、コークス炉1から高炉4へ搬送されるコークスに対して、アルカリ土類金属を含む有機化合物からなる有機系粉体6を散布するものであり、この例では、CDQ2により冷却された後のコークスに対して有機系粉体6を散布するようになっている。粉体散布装置3は、CDQ2により冷却された直後のコークスに対して有機系粉体6を散布するようになっていることが好ましく、そのためには、図1のように粉体散布装置3をCDQ2の直後に設置してもよいし、有機系粉体6が熱分解を起こさないようにして粉体散布装置3をCDQ2に組み込んでもよい。
上記アルカリ土類金属としては、高炉4におけるコークスのCO反応に触媒効果を有するカルシウム(Ca)などを例示することができ、この場合、上記有機化合物としては、ステアリン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、オレイン酸カルシウムなどを例示することができる。
ステアリン酸カルシウムの融点は、179℃〜180℃程度である。クエン酸カルシウムの融点は、120℃程度である。オレイン酸カルシウムの融点は、83℃〜84℃程度である。したがって、これらの有機化合物を有機系粉体6として採用すれば、当該有機化合物の融点を、CDQ2により冷却された後のコークスの温度よりも低く設定することができる。このような温度設定によれば、コークス炉1から高炉4へ搬送されるコークスの熱、より具体的にはCDQ2により冷却された後のコークスの余熱によって、散布した有機系粉体6を溶融させてコークスに付着させることができる。
このように、アルカリ土類金属を含む有機化合物からなる有機系粉体6をコークスに付着させることにより、COとコークスの反応性を向上させることができる。特に、有機化合物を粉体のまま散布するので、有機化合物を水に溶解および分散させるような構成とは異なり、COとの反応性が高いコークスをより簡単な構成で製造することができる。
また、コークスの熱により有機系粉体6を溶融させて当該コークスに付着させることができるので、有機系粉体6を溶融させるための熱源を別途設ける必要がない。したがって、COとの反応性が高いコークスをより簡単な構成で製造することができる。特に、冷却された後のコークスに対して散布した有機系粉体6を、コークスの余熱により溶融させて当該コークスに付着させることにより、冷却された後のコークスに対して有機系粉体6を良好に付着させることができるので、COとコークスの反応性を効果的に向上させることができる。
なお、CDQ2の運転状態に応じて、当該CDQ2により冷却された後のコークスの温度にばらつきが生じる場合もある。このような場合には、上記のように融点の異なる複数種類の有機化合物を有機系粉体6として準備し、冷却された後のコークスの温度に応じた有機系粉体6を当該コークスに散布するような構成とすることも可能である。
上記有機化合物は、アルカリ土類金属を含むものであれば、有機分子量は特に限定されるものではない。また、コークスに対する有機化合物の付着量は、0.5wt%以上であることが好ましい。
図2は、図1のコークス処理システムにより行われる処理の一例を示したフローチャートである。コークス炉1で石炭が乾留されることにより生成されたコークスは、コークス炉1から搬送路5に搬出された後(ステップS101)、CDQ2の乾式消火処理により冷却される(ステップS102:冷却ステップ)。そして、CDQ2により冷却された後のコークスに対して、粉体散布装置3から有機系粉体6が散布されることにより(ステップS103:粉体散布ステップ)、当該有機系粉体6がコークスの熱により溶融して当該コークスに付着する(ステップS104)。
コークスの熱により溶融した有機系粉体6は、コークスの表面全体に付着することが好ましいが、表面の一部のみに付着した場合であっても、COとコークスの反応性を向上させることができる。コークスに付着した有機系粉体6は、高炉4までの搬送過程で融点以下にまで温度が低下することにより、コークスの表面に定着する。このようにして有機系粉体6が表面に付着(定着)したコークスは、搬送路5を介して高炉4に搬入される(ステップS105)。
本実施形態では、粉体散布装置3が、CDQ2により冷却された後のコークスに対して有機系粉体6を散布するような構成について説明したが、このような構成に限らず、コークス炉1から搬出され、搬送路5を介してCDQ2に至るまでの間に、コークスに対して有機系粉体6を散布するような構成であってもよい。
<第2実施形態>
第1実施形態では、有機系粉体6が、コークス炉1から高炉4へ搬送されるコークスの熱により溶融して当該コークスに付着するような構成について説明した。これに対して、第2実施形態では、有機系粉体6が、加熱装置の加熱により溶融してコークスに付着するようになっている点が異なっている。
図3は、本発明の第2実施形態に係るコークス処理システムの一例を示したブロック図である。このコークス処理システムは、加熱装置7を備えている点を除いて、第1実施形態と同様の構成を有しているため、同様の構成については、図に同一符号を付して説明を省略することとする。
加熱装置7は、有機系粉体6を加熱するためのものであり、粉体散布装置3から散布される有機系粉体6は、当該加熱装置7の加熱により溶融して、コークス炉1から高炉4へ搬送されるコークスに付着する。
例えば、粉体散布装置3がCDQ2から離れた位置に設けられている場合には、CDQ2により冷却された直後のコークスの温度が、粉体散布装置3から散布される有機系粉体6の融点よりも高い場合であっても、当該有機系粉体6が散布される際には、コークスの温度が上記融点以下にまで低下し、良好に溶融しない場合がある。また、有機系粉体6の融点が、CDQ2により冷却された直後のコークスの温度よりも高い場合には、CDQ2により冷却された直後のコークスに有機系粉体6を散布したとしても、当該有機系粉体6を良好に溶融させてコークスに付着させることができない。その他、冷却後のコークスの温度がCDQと比べて低いCWQ(コークス湿式消火法)を用いた場合や、外部購入又は作り置きした貯留コークスのように、冷却後に長時間が経過しているコークスを使用する場合などにも、そのまま有機系粉体6をコークスに散布したとしても、当該有機系粉体6を良好にコークスに付着させることができない場合がある。
このような場合であっても、本実施形態のように加熱装置7で有機系粉体6を加熱するような構成であれば、有機系粉体6を良好に溶融させてコークスに付着させることができる。特に、加熱装置7からの安定した熱で有機系粉体6を良好に溶融させ、コークスに対して良好に付着させることができるので、COとコークスの反応性を効果的に向上させることができる。また、CDQ2の運転状態に応じて、当該CDQ2により冷却された後のコークスの温度にばらつきが生じる場合であっても、上述のように融点の異なる複数種類の有機化合物を有機系粉体6として準備する必要がない。
なお、加熱装置7が、粉体散布装置3から散布される有機系粉体6を融点以上にまで加熱するような構成であれば、図3のように粉体散布装置3及び加熱装置7がCDQ2とは別個に設けられたような構成に限らず、有機系粉体6が熱分解を起こさないようにして粉体散布装置3及び加熱装置7がCDQ2に組み込まれたような構成であってもよい。
図4は、図3のコークス処理システムにより行われる処理の一例を示したフローチャートである。コークス炉1で石炭が乾留されることにより生成されたコークスは、コークス炉1から搬送路5に搬出された後(ステップS201)、CDQ2の乾式消火処理により冷却される(ステップS202:冷却ステップ)。そして、CDQ2により冷却された後のコークスに対して、粉体散布装置3から有機系粉体6が散布されるとともに(ステップS203:粉体散布ステップ)、当該有機系粉体6が加熱装置7で加熱されることにより(ステップS204:加熱ステップ)、当該有機系粉体6が溶融してコークスに付着する(ステップS205)。
加熱装置7の加熱により溶融した有機系粉体6は、コークスの表面全体に付着することが好ましいが、表面の一部のみに付着した場合であっても、COとコークスの反応性を向上させることができる。コークスに付着した有機系粉体6は、高炉4までの搬送過程で融点以下にまで温度が低下することにより、コークスの表面に定着する。このようにして有機系粉体6が表面に付着(定着)したコークスは、搬送路5を介して高炉4に搬入される(ステップS206)。
<実施例>
図5は、有機系粉体6を付着させたコークスのCOとの反応性を測定するために用いられる熱間反応性試験装置100の一例を示した概略図である。この熱間反応性試験装置100は、試料装填部としての反応管101が反応管蓋102で塞がれることにより構成され、ガス導入口103から反応管101内にガスを導入することができるとともに、反応管101内のガスをガス排出口104から排出することができるようになっている。
この熱間反応性試験装置100を用いて試験を行う前の前処理工程として、CDQ2により冷却された後のコークスを採取し、粒径を19mm〜21mmに調整することによりベースコークスを作成した。このベースコークスを乾燥機で200℃に加熱し、熱せられた状態のまま、有機系粉体6としてのステアリン酸カルシウムを入れたビーカーの中に投入することにより、ステアリン酸カルシウムを溶融させてベースコークスに付着させた。
その後、上記のようにして作成した供試料を、熱間反応性試験装置100の反応管101内に装填し、ガス導入口103から窒素ガス(N)を5L/minで15分間導入した。このようにして、反応管101内の空気を窒素ガスで置換させた後、反応管101を1100℃に設定した電気炉に挿入した。そして45分後に、ガス導入口103から導入するガスを窒素ガスから二酸化炭素ガス(CO)に切り替え、当該二酸化炭素ガスをコークス試料と2時間反応させた。
以上のような実験により得られた反応後のコークス試料の重量(反応後重量)と、反応前のコークス試料の重量(反応前重量)とに基づいて、下記数式(1)又は(2)によりCRI(CO反応量に関する指標)を求めることができる。なお、加熱やCO反応により、コークスだけでなくステアリン酸カルシウム(StCa)も減量するが、下記数式(1)は当該減量も含めた計算式であり、下記数式(2)は当該減量を含めない計算式である。
Figure 0005188842
Figure 0005188842
図6は、数式(1)及び(2)により算出したCRI(%)とステアリン酸カルシウムの付着量(%)との関係を示したグラフである。「ステアリン酸Ca込」が数式(1)により算出した値、「ステアリン酸Ca無」が数式(2)により算出した値である。このグラフから、コークスに対するステアリン酸カルシウムの付着量が増加するほど、CRIの値が高くなり、COとコークスの反応性が向上していることが分かる。特に、ステアリン酸カルシウムの付着量が3%以上の場合には、ベースコークスと比較してCOとの反応性が大幅に向上している。
以上のような実験結果から分かるように、コークスに対するステアリン酸カルシウムの付着量を増加させることで、COとコークスの高反応性化を図ることができる。また、コークスに対するステアリン酸カルシウムの付着量を制御することにより、COとコークスの反応性を制御することも可能である。
次に、上記実験により得られた反応後のコークスを供試料として、熱間反応後強度(CSR)の試験を行った。具体的には、供試料をI型ドラム試験機に装填し、毎分20回転の速さで30分間、計600回転させた。その後、取り出した試料を9.5mm以下の粒子のみ通過させる篩にかけ、篩上に残った粒子の重量(篩上重量)を測定した。このような実験により得られた篩上重量と、I型ドラム試験機に装填する前の供試料の重量(供試料重量)とに基づいて、下記数式(3)により反応後強度を求めることができる。
Figure 0005188842
図7は、数式(3)により算出したCSR(%)とCRI(%)との関係を操業値と比較して示したグラフである。操業値とは、実際に操業している高炉4にステアリン酸カルシウムを付着させずに供給しているコークス(操業上のコークス)について、上記数式(1)及び(3)を用いて算出されたCSR及びCRIの各値を意味している。このグラフから、ステアリン酸カルシウムを付着させたコークスと操業上のコークスとを比較すると、ステアリン酸カルシウムを付着させた方が、同等のCRIの値に対するCSRの値が高く、コークスの強度が高いことが分かる。
図7に示された操業値から、CRIの値が大きくなるほどCSRの値が小さくなること、すなわち、COとコークスの反応性が高くなるほどコークスの強度が低下することが分かるが、上記実験結果から、コークスにステアリン酸カルシウムを付着させることにより、同等の反応性であってもコークスの強度を低下しにくくすることができることが分かった。
次に、ステアリン酸カルシウムを付着させたコークスのCO反応試験時に発生するガスの測定を行った。ステアリン酸カルシウムのような有機物塩は、加熱によって熱分解し、熱量をもったガスが発生する。そこで、ステアリン酸カルシウムのCRI測定時におけるCO反応下での熱分解状況を調査した。具体的には、コークスのみの場合と、コークスにステアリン酸カルシウムを混合(例えば10%)した場合とで、それぞれ加熱反応時のガスを採取し、ガスの組成・発生量を測定した。なお、採取したガスの全量から、二酸化炭素ガスの導入量を差し引くことにより、発生ガス量を補正した。
上記のような実験により得られた各ガスの発生率(%)に基づいて、各ガスの発熱量(カロリー)を算出した。すなわち、熱分解して発生した各ガスの1Nm当たりのカロリーに各ガスの発生率を乗算し、100で除算する。例えば、発生するガスのうち水素(H)を例にとってみると、コークスのみで反応させた場合の水素の発生率は1.61%であった。また、水素の発熱量は、2570kcal/Nmである。したがって、発生ガス1Nm当たりの水素による発熱量は、次式のようになる。同様に、実験で発生した他のガスについても、その組成から発生ガス1Nm当たりに寄与する発熱量を求めることができる。
Figure 0005188842
また、コークスにステアリン酸カルシウムを配合して反応させた場合の各ガスの発生率Bと、コークスのみを反応させた場合の各ガスの発生率Cと、コークスに対するステアリン酸カルシウムの配合率Dとに基づいて、下記数式(α)により、ステアリン酸カルシウムのみを反応させた場合の各ガスのガス発生率Aを求めることができる。このようにして得られた各ガスの発生率に各ガスの1Nm当たりのカロリーを乗算し、100で除算することにより、ステアリン酸カルシウムのみが反応時に熱分解して発生するガス1Nm当たりの各ガスによる発熱量を求めることができる。
Figure 0005188842
下記表1に、以上のような演算により算出された各ガスの発熱量を、コークス(ベースコークス)のみを反応させた場合と、コークスにステアリン酸カルシウムを配合して反応させた場合と、数式αで算出したステアリン酸カルシウムのみを反応させた場合とに分けて示すとともに、それぞれの場合における各ガスの発熱量の合算値を示す。
Figure 0005188842
この表1によれば、コークスにステアリン酸カルシウムを10%配合することにより、コークスのみを反応させた場合と比べて重炭化水素の量が増加し、発熱量の合算値が3000kcal/Nm程度増加していることが分かる。このような結果から、コークスにステアリン酸カルシウムを付着させることで、高炉4内で発生するガスのエネルギーを増加させることができ、製鉄所内のエネルギーなどとして再利用することができる。
以上の実施形態では、アルカリ土類金属の一例として、カルシウム(Ca)を例にとって説明したが、このような構成に限らず、カルシウム以外のアルカリ土類金属、例えばベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)などを含む有機化合物からなる有機系粉体を用いることも可能である。
本発明の第1実施形態に係るコークス処理システムの一例を示したブロック図である。 図1のコークス処理システムにより行われる処理の一例を示したフローチャートである。 本発明の第2実施形態に係るコークス処理システムの一例を示したブロック図である。 図3のコークス処理システムにより行われる処理の一例を示したフローチャートである。 有機系粉体を付着させたコークスのCOとの反応性を測定するために用いられる熱間反応性試験装置の一例を示した概略図である。 数式(1)及び(2)により算出したCRI(%)とステアリン酸カルシウムの付着量(%)との関係を示したグラフである。 数式(3)により算出したCSR(%)とCRI(%)との関係を操業値と比較して示したグラフである。
符号の説明
1 コークス炉
2 CDQ
3 粉体散布装置
4 高炉
5 搬送路
6 有機系粉体
7 加熱装置

Claims (8)

  1. コークス炉から高炉へ搬送されるコークスに対する処理を行うためのコークス処理システムであって、
    上記コークス炉から上記高炉へ搬送される上記コークスに対して、アルカリ土類金属を含む有機化合物からなる有機系粉体を散布することによって、当該有機系粉体を熱により溶融させて上記コークスに付着させる粉体散布装置を備えたことを特徴とするコークス処理システム。
  2. 上記有機系粉体が、上記コークス炉から上記高炉へ搬送される上記コークスの熱により溶融して当該コークスに付着することを特徴とする請求項1に記載のコークス処理システム。
  3. 上記コークス炉から搬送される上記コークスを冷却するための冷却装置を備え、
    上記粉体散布装置が、上記冷却装置により冷却された後の上記コークスに対して上記有機系粉体を散布し、
    上記有機系粉体の融点が、上記冷却装置により冷却された後の上記コークスの温度よりも低いことを特徴とする請求項2に記載のコークス処理システム。
  4. 上記有機系粉体を加熱するための加熱装置を備え、
    上記有機系粉体が、上記加熱装置の加熱により溶融して、上記コークス炉から上記高炉へ搬送される上記コークスに付着することを特徴とする請求項1に記載のコークス処理システム。
  5. コークス炉から高炉へ搬送されるコークスに対する処理を行うためのコークス処理方法であって、
    上記コークス炉から上記高炉へ搬送される上記コークスに対して、アルカリ土類金属を含む有機化合物からなる有機系粉体を散布することによって、当該有機系粉体を熱により溶融させて上記コークスに付着させる粉体散布ステップを備えたことを特徴とするコークス処理方法。
  6. 上記有機系粉体が、上記コークス炉から上記高炉へ搬送される上記コークスの熱により溶融して当該コークスに付着することを特徴とする請求項5に記載のコークス処理方法。
  7. 上記コークス炉から搬送される上記コークスを冷却するための冷却ステップを備え、
    上記粉体散布ステップでは、上記冷却ステップにより冷却された後の上記コークスに対して上記有機系粉体を散布し、
    上記有機系粉体の融点が、上記冷却ステップにより冷却された後の上記コークスの温度よりも低いことを特徴とする請求項6に記載のコークス処理方法。
  8. 上記有機系粉体を加熱するための加熱ステップを備え、
    上記有機系粉体が、上記加熱ステップの加熱により溶融して、上記コークス炉から上記高炉へ搬送される上記コークスに付着することを特徴とする請求項5に記載のコークス処理方法。
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