JP2004315664A - 触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】反応性を高める触媒の濃度分布を選択できる高炉用高反応性コークスを得ための製造方法を提供する。
【解決手段】炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質を溶媒中に溶解及び/または分散させた液体(触媒液)を、単一銘柄の石炭または複数銘柄の石炭からなる配合炭を乾留して製造したコークス表面から浸透させ、該コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与するものである。表面からの浸透深さは、コークスの気孔の性状、触媒液の物性などを調整して制御する。
【選択図】 なし
【解決手段】炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質を溶媒中に溶解及び/または分散させた液体(触媒液)を、単一銘柄の石炭または複数銘柄の石炭からなる配合炭を乾留して製造したコークス表面から浸透させ、該コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与するものである。表面からの浸透深さは、コークスの気孔の性状、触媒液の物性などを調整して制御する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉の燃料比を低減させ、生産性を向上させて高炉操業を実施可能とする高炉用高反応性コークスの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常の高炉においては、炉頂から鉄鉱石及び/または焼結鉱(以下、鉄鉱石等と記す。)と通常の高炉用コークスを層状に装入し、この鉄鉱石を高炉内で還元して、溶融状態にある銑鉄を製造している。
【0003】
ところで、高炉には、熱保存帯と呼ばれる温度が1000℃程度でほぼ一定の領域があり、この温度は通常の高炉用コークスのガス化温度に相当する。すなわち、高炉内でC+CO2=2COで表されるコークスのガス化反応が起こるためには、約1000℃以上の温度が必要となる。鉄鉱石等の還元は、その約70%が熱保存帯より高温領域で生じるが、温度が高くなるに伴い、還元平衡ガス組成が高CO濃度側になり、還元反応を進めるためには、より高いCO濃度組成のガスが必要となる。さらに、約1100℃以上で鉄鉱石等の融液生成が見られ、その結果として鉄鉱石等への還元ガスの浸透が抑制されてしまう。このため、熱保存帯温度が高いとCOガスによる鉄鉱石等の間接還元を有効に活用できず、還元効率もある値以上には向上しない。
【0004】
一方、従来から上記コークスのガス化反応性を高める高炉用高反応性コークスが提案されており、このようなコークスでは、高炉内のCO2がコークス表面に接した際、C+CO2=2COの反応がより低温から活発に行われる。また、その結果として、炉内に生じたCOガスが鉄鉱石等と有効に反応して、還元反応が促進される。
【0005】
C+CO2=2COの反応は吸熱反応であり、高炉における熱保存帯温度を低下させる効果がある。すなわち通常の高炉用コークス使用時は、1000℃程度の熱保存帯が生成し、その温度が殆ど変化しないのに対し、高炉用高反応性コークスを使用することによって熱保存帯温度を900〜950℃に低下させることが可能となる。その結果還元平衡ガス組成が低CO濃度側となり、還元平衡到達点に余裕ができるため還元がより進行することになり、還元効率が向上する。このため、高炉用高反応性コークスを通常の高炉用コークスの一部、或いは全量と置換して使用することができれば、高炉の還元効率が向上し、コークス比も低減できる。
【0006】
従来、このような高炉用高反応性コークスの製造方法として、コークスのガス化反応性が高くなるものの、一般には高炉用コークスの製造に適さない、非微粘結炭や一般炭を原料炭に配合するか(例えば、特許文献1参照)、或いはコークスのガス化反応を促進する触媒物質、すなわち、炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質としての役割を持つアルカリ金属やアルカリ金属化合物を石炭に配合し、これを加熱、乾留してコークスを製造するする方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、非微粘結炭や一般炭の配合による方法では、非微粘結炭や一般炭の配合比が小さいと反応性の向上効果が小さく、高炉の還元効率を向上させることができず、また、非微粘結炭や一般炭の配合比が大きいとコークス強度が著しく低下し、高炉の炉頂から装入する時に粉化してしまい、高炉の通気性が悪化するため、高炉で実際に使用することが困難であった。
【0008】
また、アルカリ類を石炭に配合する高炉用高反応性コークスの製造方法は、高炉の炉壁煉瓦損傷や付着物生成を促進し、高炉安定操業および寿命延長の面から好ましくない。また、鉄分を石炭と混合してコークス炉で乾留すると、コークス炉の炉壁を構成する珪石煉瓦と鉄分とが反応し、炉壁が損傷するため望ましくない。
【0009】
この点を改善した高炉用高反応性コークスの製造方法として、石炭に、石灰石、消石灰、ドロマイトなどのアルカリ土類金属化合物を混合し、コークス炉で乾留する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
一方、触媒を添加した配合炭をコークス炉で加熱、乾留する際、触媒物質によるコークス炉の炉壁への損傷や付着物の生成などによる影響を避けるために、 上記の反応を活性化させる触媒物質、たとえば、アルカリ土類金化合物、遷移金属化合物などを溶媒中に溶解または分散させた液体とコークスとを接触させ、触媒をコークスに付着させる高炉用高反応性コークスの製造方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0011】
また、中炭化度低流動性の準粘結炭を多量に含む少数銘柄配合炭を使用し、直径10μm未満の気孔の含有率が12〜15vol.%、直径10〜100μmの気孔の含有率が10〜15vol.%の気孔径分布を有する高反応性、高強度の高炉用コークスの製造方法がある(例えば、特開文献5参照)。
【0012】
【特許文献1】
特開2001−187887号公報
【特許文献2】
特開昭63−137989号公報
【特許文献3】
特開2001−348576号公報
【特許文献4】
特開2002−226865号公報
【特許文献5】
特開2001−187887号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、高炉内に装入されたコークスは、CO2との接触により、コークスの表面からC+CO2=2COの反応が進行する。従って反応界面に触媒が存在することは少なくとも必要である。また、コークスの反応性は、高炉の温度などの操業条件とも密接に関連し、高炉の操業条件に応じて反応性を有するコークスを使い分けることが好ましい。
【0014】
図1は、高反応性コークスにおける触媒の濃度分布を示す概念模式図であるが、図1に示すように、上記の特許文献3に開示されているような反応性を向上させる触媒物質を配合炭に混合してコークス化する方法では、得られたコーク中の触媒の濃度は、表面と中心部で同じであり(図1中の(b))、反応性の一様なコークスは得られるが、多様な反応性を要求される高炉の操業条件に対応するには十分ではない。
【0015】
また、特許文献4に開示された方法では、触媒がコークスの表面にしか存在せず、コークスの反応性が表面と内部とで大幅に異なるため(図1中(c))、コークスの高反応性を安定して持続することが困難であり、また、表面の触媒層厚さを制御することができないため、多様な反応性を必要とする高炉操業の要求応えることがてできず、安定した高炉操業を行う上では、使用には限界がある。また、特許文献5に記載の方法は、気孔分布の制御による反応性の向上を図るものであり、触媒については言及されてはおらず、反応性の確保、および反応性の選択性については十分とは言えないものである。
【0016】
従って、反応性が高くかつ、反応性を自由に選択できる高炉用高反応性のコークスの製造方法が求められていた。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の問題点を解決し、反応性を自由に選択できる高炉用高反応性コークスを得るための高炉用高反応性コークスの製造方法を提供するためになされたものであり、その要旨とするところは、以下のとおりである。
(1)炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質を溶媒中に溶解及び/または分散させた液体を、単一銘柄の石炭または複数銘柄の石炭からなる配合炭を乾留して製造したコークス表面から浸透させ、該コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与することを特徴とする触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
(2)前記炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質が、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、遷移金属、および、遷移金属化合物のうちの1種または2種以上からなる混合物であることを特徴とする(1)に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
(3)前記炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質が、アルカリ土類金属および遷移金属の1種または2種以上を1質量%以上含有する石炭であることを特徴とする(1)に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法
(4)前記炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質を溶媒中に溶解および/または分散させた液体を前記コークスの表面に噴霧することによって浸透させ、コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
(5)前記炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質を溶媒中に溶解および/または分散させた液体中に、前記コークスを浸漬することによって浸透させ、コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
(6)前記単一銘柄の石炭または複数銘柄の石炭からなる配合炭の平均粒度を調整して、前記コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与することを特徴とする(1)〜(5)の何れか1項に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
(7)前記石炭(配合炭)の乾留速度を調整して、前記コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与することを特徴とする(1)〜(6)の何れか1項に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
(8)前記単一銘柄の石炭または複数銘柄の石炭からなる配合炭の強粘結炭の配合比率を調整することによって、前記コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与することを特徴とする(1)〜(7)の何れか1項に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
(9)前記炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質を溶媒中に溶解および/または分散させた液体中の粘度を調整することによって、前記コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与することを特徴とする(1)〜(8)の何れか1項に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
【0018】
【発明の実施の形態】
高炉においては、炉況に応じて適切な反応性を有するコークスを装入することが安定した操業を行なうためには重要なことであり、多様な反応性を有するコークスが要求される。例えば、高炉の炉頂から装入したコークスをなるべく低温で、しかも速い反応速度で反応させたい場合は、触媒物質が表面部に偏在しているコークスの方が好ましく、また、低温から反応させるものの、ある程度温度が上昇しても反応速度を速く保ちたい場合には、触媒物質が内部まで存在しているコークスが望ましい。
【0019】
このように高反応性に対する要求は多様であり、このような要求に対応するためには、反応性を幅広く制御できるコークスの製造方法が必要である。
【0020】
このため、発明者らは、コークスの反応性を幅広く制御でき、反応性が高くかつ反応性を自由に選択できる高炉用高反応性コークスを得るために検討を重ねた。その結果、コークスの触媒濃度を表面から内部にかけて変化させることによって、反応性が高くかつ反応性を自由に選択できる高炉用高反応性コークスを得ることができる製造方法を見出した。
【0021】
すなわち、本発明においては、配合炭を乾留して製造したコークスを、炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質を溶媒中に溶解及び/または分散させた液体(以下、触媒液とも記す)と接触させ、これをコークスの表面から浸透させ、該コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与するものである。
【0022】
なお、配合炭とは、通常、二種以上の銘柄の異なる石炭を配合したものである。本発明において、触媒は、配合炭に添加する場合のほか、単一銘柄の石炭に添加してもよい。なお、以下の説明において、便宜上、配合炭に単一銘柄の石炭も含むものとする。
【0023】
本発明において、コークスに触媒液を浸透させ、触媒物質の濃度分布を付与する方法は、配合炭を乾留して製造したコークス内に形成される気孔の構造の調整による方法、及び溶媒中に溶解及び/または分散させた液体、すなわち、触媒液の物性、例えば、粘度、の調整による方法の2つに大別される。
【0024】
コークス内に形成される気孔の性状の調整による方法は、1)配合炭の粒度を調整すること、2)乾留速度を調整すること、(3)石炭の炭種を選択調整すること、4)粘結補填材の配合比率を調整すること、等の方法がある。
【0025】
まず、1)配合炭の粒度が小さく粉砕されているほど、生成する塊コークスへの触媒液の浸透性は悪くなることが判った。これは、配合炭の粒度が小さいと、乾留過程において軟化溶融した石炭中に粗大な気孔の生成が抑制され、小さい気孔が多く生成するためである。発明者らは、粗大な気孔はコークス表面から内部まで通じる気孔となりやすいことを知見した。すなわち、粗大な気孔が多くなるほど、触媒液は内部まで浸透することができるのである。
【0026】
従って、配合炭の粒度を調整することによって、コークス中に形成される気孔の性状を調整することが可能となり、触媒液の浸透深さ、すなわち濃度分布を調整することができる。
【0027】
また、2)配合炭の乾留に際して、乾留速度が速いほど、生成する塊コークスへの触媒液の浸透性は悪くなることが判った。これは、乾留速度が速くなると、石炭の粘結性が向上して、生成した開気孔が溶融した石炭によって閉塞されて閉気孔となり、コークスの表面から内部に通じる気孔の数が減るためである。従って、配合炭の乾留速度を調整することによって、コークス中に形成される気孔の性状を調整することが可能となり、触媒液の浸透深さを調整することができる。
【0028】
具体的に乾留速度を調整するには、例えばコークス炉の炉温を変えれば良い。すなわち、炉温が高いほど乾留速度は速くなり、炉温が低いほど乾留速度は遅くなる。コークス炉に装入される石炭の水分を調整することでも乾留速度は変えることができ、水分が高いほど乾留速度は遅くなる。
【0029】
また、3)配合炭の配合に際して、強粘結炭の配合比率を高くすると、生成する塊コークスへの触媒液の浸透性は悪くなることが判った。これは、強粘結炭の配合比率が高いほど、配合炭(強粘結炭と非微粘結炭とを配合し混合したもの)の粘結性が向上し、生成した開気孔が溶融した石炭によって閉塞されて閉気孔となり、コークスの表面から内部に通じる気孔の数が減るためである。
【0030】
従って、配合炭中の強粘結炭の配合比率を調整することによって、コークス中に形成される気孔の性状を調整することが可能となり、触媒液の浸透深さ、すなわち濃度分布を調整することができる。
【0031】
また、4)配合炭には、強粘結炭を多量に配合する代わりに、ピッチ等の粘結補填剤を添加することがある。しかしながら、粘結補填材の添加比率が多いと、生成する塊コークスへの触媒液の浸透性は悪くなる。これは、上述の配合炭への強粘結炭の配合比率を高くしたのと同様に、配合炭の粘結性が向上し、生成した開気孔が溶融した石炭によって閉塞されて閉気孔となり、コークスの表面から内部に通じる気孔の数が減るためである。従って、配合炭への粘結補填剤の添加量を調整することによって、コークス中に形成される気孔の性状を調整することが可能となり、触媒液の浸透深さ、すなわち濃度分布を調整することができる。
【0032】
このような手段により、配合炭を乾留して製造したコークス内に形成される気孔の構造を調整し、触媒液の浸透深さを調整できるので、コークスの表面から内部にかけて触媒物質の濃度分布を制御し、濃度分布の異なる高反応性コークスを得ることが出来る(図1中の(a),(a’)を参照)。
【0033】
また、生成するコークスの気孔率を調整して濃度分布を付与する方法の他に、上述のように、触媒液の物性、例えば粘性を調整してコークスへの触媒物質の浸透深さを調整し、触媒濃度分布の異なるコークスを得ることが出来る。
【0034】
触媒物質を溶解および/または分散させる溶媒としては、例えば、水、アルコールを用いることができる。すなわち、コークスの気孔の性状同じであればが、触媒液の粘性が小さければ、内部に浸透しやすく浸透深さは大きくなる。また、粘性が大きければ、内部へは浸透し難くなるため浸透深さ小さくなるためである。触媒液の粘性を調整するには、溶媒に、粘性を増加させる添加剤を加える方法がある。例えば水溶性接着剤として代表的なポリビニルアルコール、ポリビニールアルコール−アクリル酸共重合体、ポリ酢酸ビニルなどがあり、ゼラチンやデンプン,セルロース、カルボキシメチルセルロースなども用いることができる。
【0035】
なお、触媒液に関し、触媒物質を溶解させるとは、触媒がイオンとして溶媒に溶けている状態を意味し、分散とは、触媒物質が粒子或いはコロイド状態で分散していることを意味する。
【0036】
このような方法により、触媒物質の濃度分布を調整することができるので、高炉の操業におけるコークスの反応速度の要求に従って、所要の触媒物質の濃度分布を想定し、その所要の濃度分布が得られるように、上述の、1)配合炭の粒度を調整すること、2)乾留速度を調整すること、(3)配合炭中の石炭の炭種を選択調整すること、4)粘結補填材の配合比率を調整する等のいずれか、或いは組み合わせることによって、気孔の性状を調整したコークスを製造し、製造したコークスに触媒液を接触させることによって表面から触媒液を浸透させ、触媒物質の濃度分布の異なるコークスを得ることが出来る。このとき、例えば、粘性を調整する物質を触媒液に添加するなど、触媒液の物性を調整することにより、浸透深さを調整することもでき、所要の濃度分布を得るようにすることが出来る。
【0037】
このためには、図2(a)〜(d)に示すように、触媒液の表面からの浸透深さと、配合炭の粒度との関係、コークスの乾留速度との関係(あるいは炉温との関係)、配合炭への強粘結炭の配合比率との関係、配合炭への粘結補填剤の添加量との関係などを、触媒液の物性、例えば粘性のレベル、毎にそれぞれ求めておくことが必要である。これに基づいて、上記の高炉操業から要求された反応性に適した濃度分布が得られるような上記の条件を設定して、配合炭を乾留し、次いで触媒液と接触させることによって所定の触媒濃度分布を有するコークスを得ることが出来る。
【0038】
上記の触媒液の表面からの浸透深さと、上記の諸条件との関係は、触媒液の物性、接触時間とも関連することから、触媒液の物性、例えば、触媒物質の種類、触媒物質の粒度、溶媒の種類、或いはさらに、触媒との接触時間を考慮して、求めておくことが好ましい。
【0039】
本発明におけるコークスの製造プロセスは、図3に示すように所定の比率に配合した原料炭を所定の粒度に粉砕し、あるいは所定の粒度に粉砕された原料炭を所定の比率に配合し、この配合炭をコークス炉に装入するか、或いはブリケットなどに成型してシャフト炉に装入するかした後、所定の乾留速度で加熱、乾留して塊状或いは成型コークスを得る。次いで、このコークスを上述の触媒液に接触させて触媒物質を表面から浸透させるものである。
【0040】
このとき、上述のように、コークスを所定の触媒液に接触させたときに、所定の浸透深さの濃度分布が得られるように、予め求めておいた関係に基づいて、配合炭の粒度、強粘結炭の配合比率、粘結補填剤の添加量、乾留速度のいずれか一つ以上を調整しておくことが必要である。
【0041】
触媒物質をコークスの表面から浸透させるには、触媒物質を溶媒に溶解及び/または分散させた液体、すなわち触媒液をコークスの表面に噴霧するか、あるいは触媒液中に浸漬するなどして、コークスの表面に接触させる方法を採用することができる。
【0042】
例えば、コークスの表面からの浸透深さが小さくて良く、かつ浸透性が極めて良好な触媒液である場合は、噴霧する方法は好適である。なお、触媒液が噴霧に適した濃度とすることが必要であることは言うまでもない。
【0043】
一方、コークスの表面からの浸透深さを大きくすることが必要で、かつ粘性が高く浸透性が極めて小さい触媒液である場合は、浸漬する方法が好適である。
【0044】
例えば、乾留後の塊状或いは成型コークスを搬送するコンベアの途中、或いは乗り継ぎ箇所に、噴霧装置を設け、触媒液をコークスに噴射する方法や、搬送コンベアの内の一部を網目状のコンベアとし、搬送経路の途中に触媒液を満たした触媒液槽を設け、網目状コンベアの上にコークスを載せたまま、触媒液槽中を通過させる方法などによって触媒液とコークスを接触させ、触媒物質を浸透させる方法など、適宜採用することができる。
【0045】
コークスは、配合炭をコークス炉で乾留した塊状のコークスとしても、また、配合炭を成型してシャフト炉等で乾留した成型コークスとしても何れも良い。
【0046】
ここで、コークスの反応性を高めるためにコークスの内部に浸透させる触媒物質、すなわち、炭素と二酸化炭素とから、一酸化炭素を生じる反応を活性化させる作用がある物質としては、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、遷移金属、および、遷移金属化合物のうちの1種または2種以上からなる混合物、アルカリ土類金属および遷移金属の1種または2種以上を1質量%以上含有する石炭を用いることができる。
【0047】
なお、コークスの反応性とは、900℃から1300℃程度の高温域におけるCO2との反応性であり、一般的には、JIS K2151のコークス類の試験方法に記載の反応性試験方法により測定されるものである。
【0048】
上記触媒物質としてのアルカリ金属とは、周期律表1族に属する元素、Li,Na,K,Rb、Cs,Frの総称であり、アルカリ金属化合物とは、アルカリ金属の水酸化物、酸化物、過酸化物、窒化物、炭化物の他、ハロゲン化物、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩などの塩および複塩等を意味する。
【0049】
本発明の製造方法においては、アルカリ金属化合物の1種以上を用いれば良く、2種以上のアルカリ金属化合物の混合物、あるいは2種以上のアルカリ金属を含む化合物を用いても良い。
【0050】
また、上記触媒物質としてのアルカリ土類金属とは、周期律表2族に属する元素、Be,Mg,Ca,Sr,Baの総称であり、アルカリ土類金属化合物とは、アルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、過酸化物、窒化物、炭化物の他、ハロゲン化物、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩などの塩および複塩等を意味する。
【0051】
本発明の製造方法においては、アルカリ土類金属化合物の1種以上を用いれば良く、2種以上のアルカリ土類金属化合物の混合物、あるいは2種以上のアルカリ土類金属を含む化合物を用いても良い。
【0052】
なお、上記アルカリ土類金属化合物の代表的なものとしては、石灰石(CaCO3)、生石灰(CaO)、消石灰(Ca(OH)2)あるは、ドロマイト(MgCO3)等があるが、これらは製鉄プロセスにおいて従来から工業的に利用されているため、容易かつ安価に入手することができ、自然界に豊富な資源として用いることができる。
【0053】
また、上記触媒物質としての遷移金属とは、不完全に満たされたd殻をもつ原子またはそのような陽イオンを生じる元素であり、周期律表の3族から11族までの元素、つまり Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、Mn、Tc、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Cu、Agなどであり、遷移金属化合物とは、これらの遷移金属の水酸化物、酸化物、過酸化物、窒化物、炭化物の他、ハロゲン化物、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩などの塩および複塩等を意味する。
【0054】
代表的な遷移金属としては、鉄、遷移金属化合物としては、酸化鉄があるが、製鉄プロセスにおいては、資源として再利用するには劣質な、鉄粉、酸化鉄や、鉄粉、鉄酸化物を含むスラリーを容易かつ安価に入手することができるというメリットがある。
【0055】
これらの触媒としての作用は、アルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属が、コークスのガス化反応において、コークスとCO2との間で電子の授受を行う媒体として作用するためと考えられる。アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属とを混合して用いた場合には、アルカリ土類金属と遷移金属間でも電子の授受が行われ、コークスとCO2との間での電子授受をさらに活発化し触媒作用が活性化する。
【0056】
本発明では、コークスの反応性を高める触媒物質として、アルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属の1種または2種以上を1質量%以上含有する石炭を用いても、上記と同様な効果が得られる。
【0057】
本発明において、アルカリ土類金属のうちで、特に、Caを含有する石炭や、遷移金属のうちで、特に、Feを含有する石炭は入手しやすいため好ましい。
【0058】
これは、石炭中のアルカリ土類金属または遷移金属が、コークスとCO2との間で電子の授受を行う媒体として作用し、触媒としての役割を果たすためである。
【0059】
このような触媒作用はアルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属が組み合わせて含有する石炭の方が、アルカリ土類金属と、遷移金属との間でも電子の授受が行われ、コークスとCO2との間での電子授受をさらに活発化するため、触媒の相乗作用でコークスのガス化反応性をより活性化させる。
【0060】
なお、コークスのガス化反応性を高めるために、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属を含有する石炭は、石炭中にアルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属の1種または2種以上が、含有量の合計で1質量%以上含有しすることが好ましい。
【0061】
この含有量が1質量%未満であると、触媒作用によるコークスのガス化反応性の効果が充分に得られなくなる。
【0062】
これらの触媒物質、すなわち、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、遷移金属、および、遷移金属化合物のうちの1種または2種以上からなる混合物、アルカリ土類金属および遷移金属の1種または2種以上を1質量%以上含有する石炭のなどを、単独または組み合わせて使用することができる。
【0063】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を説明する。
【0064】
強粘結炭を所定量(表1)含む配合炭を、表1に示すような粒度に粉砕した後、粘結補填剤として軟ピッチを所定量添加して混合し、炉幅400mm、炉高1000mm、炉長1000mmの試験コークス炉に装入密度0.80t/m3で装入し、所定の炉温で、乾留時間18.5時間の条件で乾留した。
【0065】
ここで用いた強粘結炭は、揮発分22%、最高流動度の対数値が3.0の石炭である。また、強粘結炭と配合する相手方の石炭は、平均の揮発分、平均の最高流動度の対数値がそれぞれ、28%、2.2である。
【0066】
乾留したコークスは窒素で冷却した後、表1に示すような触媒物質を溶媒に分散させた液体に浸漬する、あるいは液体を噴霧した後、乾燥した。
【0067】
ここで、Na2CO3、CaCl2およびFe2Cl3は、溶液中の質量百分率が5質量%となるように、完全に水に溶解させた。
【0068】
また、発明例4で用いた石炭Aは、石炭中のカルシウム含有濃度が1.5質量%の、揮発分37%の石炭であり、−0.3mm以下の粒度に粉砕して、10質量%の溶液となるように水に分散させた。
【0069】
溶媒は、発明例1〜9は水とし、発明例10はエタノール10%水溶液を用いた。
【0070】
浸漬時間、噴霧時間は共に10秒間とした。
【0071】
なお、ドラム強度は、JIS K2151に記載のコークスの回転強度試験方法のドラム法により測定した、150回転後の15mm篩上指数である。また、反応性は、JIS K2151のコークス類の試験方法に記載の反応性試験方法により測定されるものである。ここでは乾留後コークスの表層部の反応性を評価するため、コークス試料をドラム試験機で30回衝撃を与えて発生した表層部の粉について反応性を測定した。
【0072】
揮発分とは、JIS M8812記載の石炭の揮発分定量方法によって測定された無水ベースの揮発分(%)である。
【0073】
最高流動度とは、JIS M8801記載の石炭の流動性試験方法によって測定された流動度(DDPM)のことであるである。
【0074】
乾留後コークスについては、半径方向の触媒元素の濃度分布を測定し、触媒浸透深さを下記のように定義した。すなわち、触媒元素濃度が平均濃度の1.5倍になる位置を、中心からの距離でx(mm)とし、半径をr(mm)とした時、100−x/r×100(%)で表した。すなわち、中心まで浸透している時は100%、全く浸透していない時は0%となる。ここで対象とする触媒元素は、発明例6ではナトリウム、発明例8では鉄、発明例1〜5,7,9についてはカルシウムである。
【0075】
発明例1〜3は、浸透深さが20%となるように調整した場合である。発明例からわかるように、平均粒度、炉温、溶媒を調整することにより、浸透深さを20%に調整できていることがわかる。
【0076】
発明例4〜8は、浸透深さが10%となるように調整した場合である。発明例からわかるように、強粘結炭比、粘結補填剤添加比、触媒添加方法を調整することにより、浸透深さを10%に調整できていることがわかる。また、触媒物質の種類が変わっても、10%に調整できていることがわかる。
【0077】
発明例9は、浸透深さが2%となるように調整した場合である。発明例からわかるように、2%に調整できていることがわかる。
【0078】
【表1】
【0079】
【発明の効果】
本発明により、コークスの表面から内部にかけて触媒濃度分布の異なる反応性の高い高炉用高反応性コークスを得ることができる。これによって、高炉の操業条件に適した反応性を持った高反応性のコークスを適切に選択できるため、高炉の安定したかつ効率的な操業が可能となる。また、本発明の方法は、製造されたコークスに触媒を浸透させるので、触媒物質によるコークス炉の炉壁煉瓦の損傷がなく、効率的に高反応性のコークスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】高反応性コークスにおける触媒の濃度分布を示す概念模式図であり、a)は従来の、b)は、本発明のそれぞれ濃度分布を示すものである。
【図2】本発明のコークスを製造するために、触媒物質の浸透距離と調整する要素との関係を示す概念図であり、a)は、配合炭の平均粒子径と、b)は配合炭の乾留速度と、c)は、配合炭中の強粘結炭の配合比率と、d)は、粘結補填剤の比率と、触媒物質の浸透距離と関係をそれぞれ示すものである。
【図3】本発明のコークス製造プロセスの一例を示すフロー図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉の燃料比を低減させ、生産性を向上させて高炉操業を実施可能とする高炉用高反応性コークスの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常の高炉においては、炉頂から鉄鉱石及び/または焼結鉱(以下、鉄鉱石等と記す。)と通常の高炉用コークスを層状に装入し、この鉄鉱石を高炉内で還元して、溶融状態にある銑鉄を製造している。
【0003】
ところで、高炉には、熱保存帯と呼ばれる温度が1000℃程度でほぼ一定の領域があり、この温度は通常の高炉用コークスのガス化温度に相当する。すなわち、高炉内でC+CO2=2COで表されるコークスのガス化反応が起こるためには、約1000℃以上の温度が必要となる。鉄鉱石等の還元は、その約70%が熱保存帯より高温領域で生じるが、温度が高くなるに伴い、還元平衡ガス組成が高CO濃度側になり、還元反応を進めるためには、より高いCO濃度組成のガスが必要となる。さらに、約1100℃以上で鉄鉱石等の融液生成が見られ、その結果として鉄鉱石等への還元ガスの浸透が抑制されてしまう。このため、熱保存帯温度が高いとCOガスによる鉄鉱石等の間接還元を有効に活用できず、還元効率もある値以上には向上しない。
【0004】
一方、従来から上記コークスのガス化反応性を高める高炉用高反応性コークスが提案されており、このようなコークスでは、高炉内のCO2がコークス表面に接した際、C+CO2=2COの反応がより低温から活発に行われる。また、その結果として、炉内に生じたCOガスが鉄鉱石等と有効に反応して、還元反応が促進される。
【0005】
C+CO2=2COの反応は吸熱反応であり、高炉における熱保存帯温度を低下させる効果がある。すなわち通常の高炉用コークス使用時は、1000℃程度の熱保存帯が生成し、その温度が殆ど変化しないのに対し、高炉用高反応性コークスを使用することによって熱保存帯温度を900〜950℃に低下させることが可能となる。その結果還元平衡ガス組成が低CO濃度側となり、還元平衡到達点に余裕ができるため還元がより進行することになり、還元効率が向上する。このため、高炉用高反応性コークスを通常の高炉用コークスの一部、或いは全量と置換して使用することができれば、高炉の還元効率が向上し、コークス比も低減できる。
【0006】
従来、このような高炉用高反応性コークスの製造方法として、コークスのガス化反応性が高くなるものの、一般には高炉用コークスの製造に適さない、非微粘結炭や一般炭を原料炭に配合するか(例えば、特許文献1参照)、或いはコークスのガス化反応を促進する触媒物質、すなわち、炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質としての役割を持つアルカリ金属やアルカリ金属化合物を石炭に配合し、これを加熱、乾留してコークスを製造するする方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、非微粘結炭や一般炭の配合による方法では、非微粘結炭や一般炭の配合比が小さいと反応性の向上効果が小さく、高炉の還元効率を向上させることができず、また、非微粘結炭や一般炭の配合比が大きいとコークス強度が著しく低下し、高炉の炉頂から装入する時に粉化してしまい、高炉の通気性が悪化するため、高炉で実際に使用することが困難であった。
【0008】
また、アルカリ類を石炭に配合する高炉用高反応性コークスの製造方法は、高炉の炉壁煉瓦損傷や付着物生成を促進し、高炉安定操業および寿命延長の面から好ましくない。また、鉄分を石炭と混合してコークス炉で乾留すると、コークス炉の炉壁を構成する珪石煉瓦と鉄分とが反応し、炉壁が損傷するため望ましくない。
【0009】
この点を改善した高炉用高反応性コークスの製造方法として、石炭に、石灰石、消石灰、ドロマイトなどのアルカリ土類金属化合物を混合し、コークス炉で乾留する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
一方、触媒を添加した配合炭をコークス炉で加熱、乾留する際、触媒物質によるコークス炉の炉壁への損傷や付着物の生成などによる影響を避けるために、 上記の反応を活性化させる触媒物質、たとえば、アルカリ土類金化合物、遷移金属化合物などを溶媒中に溶解または分散させた液体とコークスとを接触させ、触媒をコークスに付着させる高炉用高反応性コークスの製造方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0011】
また、中炭化度低流動性の準粘結炭を多量に含む少数銘柄配合炭を使用し、直径10μm未満の気孔の含有率が12〜15vol.%、直径10〜100μmの気孔の含有率が10〜15vol.%の気孔径分布を有する高反応性、高強度の高炉用コークスの製造方法がある(例えば、特開文献5参照)。
【0012】
【特許文献1】
特開2001−187887号公報
【特許文献2】
特開昭63−137989号公報
【特許文献3】
特開2001−348576号公報
【特許文献4】
特開2002−226865号公報
【特許文献5】
特開2001−187887号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、高炉内に装入されたコークスは、CO2との接触により、コークスの表面からC+CO2=2COの反応が進行する。従って反応界面に触媒が存在することは少なくとも必要である。また、コークスの反応性は、高炉の温度などの操業条件とも密接に関連し、高炉の操業条件に応じて反応性を有するコークスを使い分けることが好ましい。
【0014】
図1は、高反応性コークスにおける触媒の濃度分布を示す概念模式図であるが、図1に示すように、上記の特許文献3に開示されているような反応性を向上させる触媒物質を配合炭に混合してコークス化する方法では、得られたコーク中の触媒の濃度は、表面と中心部で同じであり(図1中の(b))、反応性の一様なコークスは得られるが、多様な反応性を要求される高炉の操業条件に対応するには十分ではない。
【0015】
また、特許文献4に開示された方法では、触媒がコークスの表面にしか存在せず、コークスの反応性が表面と内部とで大幅に異なるため(図1中(c))、コークスの高反応性を安定して持続することが困難であり、また、表面の触媒層厚さを制御することができないため、多様な反応性を必要とする高炉操業の要求応えることがてできず、安定した高炉操業を行う上では、使用には限界がある。また、特許文献5に記載の方法は、気孔分布の制御による反応性の向上を図るものであり、触媒については言及されてはおらず、反応性の確保、および反応性の選択性については十分とは言えないものである。
【0016】
従って、反応性が高くかつ、反応性を自由に選択できる高炉用高反応性のコークスの製造方法が求められていた。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の問題点を解決し、反応性を自由に選択できる高炉用高反応性コークスを得るための高炉用高反応性コークスの製造方法を提供するためになされたものであり、その要旨とするところは、以下のとおりである。
(1)炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質を溶媒中に溶解及び/または分散させた液体を、単一銘柄の石炭または複数銘柄の石炭からなる配合炭を乾留して製造したコークス表面から浸透させ、該コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与することを特徴とする触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
(2)前記炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質が、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、遷移金属、および、遷移金属化合物のうちの1種または2種以上からなる混合物であることを特徴とする(1)に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
(3)前記炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質が、アルカリ土類金属および遷移金属の1種または2種以上を1質量%以上含有する石炭であることを特徴とする(1)に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法
(4)前記炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質を溶媒中に溶解および/または分散させた液体を前記コークスの表面に噴霧することによって浸透させ、コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
(5)前記炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質を溶媒中に溶解および/または分散させた液体中に、前記コークスを浸漬することによって浸透させ、コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
(6)前記単一銘柄の石炭または複数銘柄の石炭からなる配合炭の平均粒度を調整して、前記コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与することを特徴とする(1)〜(5)の何れか1項に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
(7)前記石炭(配合炭)の乾留速度を調整して、前記コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与することを特徴とする(1)〜(6)の何れか1項に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
(8)前記単一銘柄の石炭または複数銘柄の石炭からなる配合炭の強粘結炭の配合比率を調整することによって、前記コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与することを特徴とする(1)〜(7)の何れか1項に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
(9)前記炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質を溶媒中に溶解および/または分散させた液体中の粘度を調整することによって、前記コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与することを特徴とする(1)〜(8)の何れか1項に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
【0018】
【発明の実施の形態】
高炉においては、炉況に応じて適切な反応性を有するコークスを装入することが安定した操業を行なうためには重要なことであり、多様な反応性を有するコークスが要求される。例えば、高炉の炉頂から装入したコークスをなるべく低温で、しかも速い反応速度で反応させたい場合は、触媒物質が表面部に偏在しているコークスの方が好ましく、また、低温から反応させるものの、ある程度温度が上昇しても反応速度を速く保ちたい場合には、触媒物質が内部まで存在しているコークスが望ましい。
【0019】
このように高反応性に対する要求は多様であり、このような要求に対応するためには、反応性を幅広く制御できるコークスの製造方法が必要である。
【0020】
このため、発明者らは、コークスの反応性を幅広く制御でき、反応性が高くかつ反応性を自由に選択できる高炉用高反応性コークスを得るために検討を重ねた。その結果、コークスの触媒濃度を表面から内部にかけて変化させることによって、反応性が高くかつ反応性を自由に選択できる高炉用高反応性コークスを得ることができる製造方法を見出した。
【0021】
すなわち、本発明においては、配合炭を乾留して製造したコークスを、炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質を溶媒中に溶解及び/または分散させた液体(以下、触媒液とも記す)と接触させ、これをコークスの表面から浸透させ、該コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与するものである。
【0022】
なお、配合炭とは、通常、二種以上の銘柄の異なる石炭を配合したものである。本発明において、触媒は、配合炭に添加する場合のほか、単一銘柄の石炭に添加してもよい。なお、以下の説明において、便宜上、配合炭に単一銘柄の石炭も含むものとする。
【0023】
本発明において、コークスに触媒液を浸透させ、触媒物質の濃度分布を付与する方法は、配合炭を乾留して製造したコークス内に形成される気孔の構造の調整による方法、及び溶媒中に溶解及び/または分散させた液体、すなわち、触媒液の物性、例えば、粘度、の調整による方法の2つに大別される。
【0024】
コークス内に形成される気孔の性状の調整による方法は、1)配合炭の粒度を調整すること、2)乾留速度を調整すること、(3)石炭の炭種を選択調整すること、4)粘結補填材の配合比率を調整すること、等の方法がある。
【0025】
まず、1)配合炭の粒度が小さく粉砕されているほど、生成する塊コークスへの触媒液の浸透性は悪くなることが判った。これは、配合炭の粒度が小さいと、乾留過程において軟化溶融した石炭中に粗大な気孔の生成が抑制され、小さい気孔が多く生成するためである。発明者らは、粗大な気孔はコークス表面から内部まで通じる気孔となりやすいことを知見した。すなわち、粗大な気孔が多くなるほど、触媒液は内部まで浸透することができるのである。
【0026】
従って、配合炭の粒度を調整することによって、コークス中に形成される気孔の性状を調整することが可能となり、触媒液の浸透深さ、すなわち濃度分布を調整することができる。
【0027】
また、2)配合炭の乾留に際して、乾留速度が速いほど、生成する塊コークスへの触媒液の浸透性は悪くなることが判った。これは、乾留速度が速くなると、石炭の粘結性が向上して、生成した開気孔が溶融した石炭によって閉塞されて閉気孔となり、コークスの表面から内部に通じる気孔の数が減るためである。従って、配合炭の乾留速度を調整することによって、コークス中に形成される気孔の性状を調整することが可能となり、触媒液の浸透深さを調整することができる。
【0028】
具体的に乾留速度を調整するには、例えばコークス炉の炉温を変えれば良い。すなわち、炉温が高いほど乾留速度は速くなり、炉温が低いほど乾留速度は遅くなる。コークス炉に装入される石炭の水分を調整することでも乾留速度は変えることができ、水分が高いほど乾留速度は遅くなる。
【0029】
また、3)配合炭の配合に際して、強粘結炭の配合比率を高くすると、生成する塊コークスへの触媒液の浸透性は悪くなることが判った。これは、強粘結炭の配合比率が高いほど、配合炭(強粘結炭と非微粘結炭とを配合し混合したもの)の粘結性が向上し、生成した開気孔が溶融した石炭によって閉塞されて閉気孔となり、コークスの表面から内部に通じる気孔の数が減るためである。
【0030】
従って、配合炭中の強粘結炭の配合比率を調整することによって、コークス中に形成される気孔の性状を調整することが可能となり、触媒液の浸透深さ、すなわち濃度分布を調整することができる。
【0031】
また、4)配合炭には、強粘結炭を多量に配合する代わりに、ピッチ等の粘結補填剤を添加することがある。しかしながら、粘結補填材の添加比率が多いと、生成する塊コークスへの触媒液の浸透性は悪くなる。これは、上述の配合炭への強粘結炭の配合比率を高くしたのと同様に、配合炭の粘結性が向上し、生成した開気孔が溶融した石炭によって閉塞されて閉気孔となり、コークスの表面から内部に通じる気孔の数が減るためである。従って、配合炭への粘結補填剤の添加量を調整することによって、コークス中に形成される気孔の性状を調整することが可能となり、触媒液の浸透深さ、すなわち濃度分布を調整することができる。
【0032】
このような手段により、配合炭を乾留して製造したコークス内に形成される気孔の構造を調整し、触媒液の浸透深さを調整できるので、コークスの表面から内部にかけて触媒物質の濃度分布を制御し、濃度分布の異なる高反応性コークスを得ることが出来る(図1中の(a),(a’)を参照)。
【0033】
また、生成するコークスの気孔率を調整して濃度分布を付与する方法の他に、上述のように、触媒液の物性、例えば粘性を調整してコークスへの触媒物質の浸透深さを調整し、触媒濃度分布の異なるコークスを得ることが出来る。
【0034】
触媒物質を溶解および/または分散させる溶媒としては、例えば、水、アルコールを用いることができる。すなわち、コークスの気孔の性状同じであればが、触媒液の粘性が小さければ、内部に浸透しやすく浸透深さは大きくなる。また、粘性が大きければ、内部へは浸透し難くなるため浸透深さ小さくなるためである。触媒液の粘性を調整するには、溶媒に、粘性を増加させる添加剤を加える方法がある。例えば水溶性接着剤として代表的なポリビニルアルコール、ポリビニールアルコール−アクリル酸共重合体、ポリ酢酸ビニルなどがあり、ゼラチンやデンプン,セルロース、カルボキシメチルセルロースなども用いることができる。
【0035】
なお、触媒液に関し、触媒物質を溶解させるとは、触媒がイオンとして溶媒に溶けている状態を意味し、分散とは、触媒物質が粒子或いはコロイド状態で分散していることを意味する。
【0036】
このような方法により、触媒物質の濃度分布を調整することができるので、高炉の操業におけるコークスの反応速度の要求に従って、所要の触媒物質の濃度分布を想定し、その所要の濃度分布が得られるように、上述の、1)配合炭の粒度を調整すること、2)乾留速度を調整すること、(3)配合炭中の石炭の炭種を選択調整すること、4)粘結補填材の配合比率を調整する等のいずれか、或いは組み合わせることによって、気孔の性状を調整したコークスを製造し、製造したコークスに触媒液を接触させることによって表面から触媒液を浸透させ、触媒物質の濃度分布の異なるコークスを得ることが出来る。このとき、例えば、粘性を調整する物質を触媒液に添加するなど、触媒液の物性を調整することにより、浸透深さを調整することもでき、所要の濃度分布を得るようにすることが出来る。
【0037】
このためには、図2(a)〜(d)に示すように、触媒液の表面からの浸透深さと、配合炭の粒度との関係、コークスの乾留速度との関係(あるいは炉温との関係)、配合炭への強粘結炭の配合比率との関係、配合炭への粘結補填剤の添加量との関係などを、触媒液の物性、例えば粘性のレベル、毎にそれぞれ求めておくことが必要である。これに基づいて、上記の高炉操業から要求された反応性に適した濃度分布が得られるような上記の条件を設定して、配合炭を乾留し、次いで触媒液と接触させることによって所定の触媒濃度分布を有するコークスを得ることが出来る。
【0038】
上記の触媒液の表面からの浸透深さと、上記の諸条件との関係は、触媒液の物性、接触時間とも関連することから、触媒液の物性、例えば、触媒物質の種類、触媒物質の粒度、溶媒の種類、或いはさらに、触媒との接触時間を考慮して、求めておくことが好ましい。
【0039】
本発明におけるコークスの製造プロセスは、図3に示すように所定の比率に配合した原料炭を所定の粒度に粉砕し、あるいは所定の粒度に粉砕された原料炭を所定の比率に配合し、この配合炭をコークス炉に装入するか、或いはブリケットなどに成型してシャフト炉に装入するかした後、所定の乾留速度で加熱、乾留して塊状或いは成型コークスを得る。次いで、このコークスを上述の触媒液に接触させて触媒物質を表面から浸透させるものである。
【0040】
このとき、上述のように、コークスを所定の触媒液に接触させたときに、所定の浸透深さの濃度分布が得られるように、予め求めておいた関係に基づいて、配合炭の粒度、強粘結炭の配合比率、粘結補填剤の添加量、乾留速度のいずれか一つ以上を調整しておくことが必要である。
【0041】
触媒物質をコークスの表面から浸透させるには、触媒物質を溶媒に溶解及び/または分散させた液体、すなわち触媒液をコークスの表面に噴霧するか、あるいは触媒液中に浸漬するなどして、コークスの表面に接触させる方法を採用することができる。
【0042】
例えば、コークスの表面からの浸透深さが小さくて良く、かつ浸透性が極めて良好な触媒液である場合は、噴霧する方法は好適である。なお、触媒液が噴霧に適した濃度とすることが必要であることは言うまでもない。
【0043】
一方、コークスの表面からの浸透深さを大きくすることが必要で、かつ粘性が高く浸透性が極めて小さい触媒液である場合は、浸漬する方法が好適である。
【0044】
例えば、乾留後の塊状或いは成型コークスを搬送するコンベアの途中、或いは乗り継ぎ箇所に、噴霧装置を設け、触媒液をコークスに噴射する方法や、搬送コンベアの内の一部を網目状のコンベアとし、搬送経路の途中に触媒液を満たした触媒液槽を設け、網目状コンベアの上にコークスを載せたまま、触媒液槽中を通過させる方法などによって触媒液とコークスを接触させ、触媒物質を浸透させる方法など、適宜採用することができる。
【0045】
コークスは、配合炭をコークス炉で乾留した塊状のコークスとしても、また、配合炭を成型してシャフト炉等で乾留した成型コークスとしても何れも良い。
【0046】
ここで、コークスの反応性を高めるためにコークスの内部に浸透させる触媒物質、すなわち、炭素と二酸化炭素とから、一酸化炭素を生じる反応を活性化させる作用がある物質としては、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、遷移金属、および、遷移金属化合物のうちの1種または2種以上からなる混合物、アルカリ土類金属および遷移金属の1種または2種以上を1質量%以上含有する石炭を用いることができる。
【0047】
なお、コークスの反応性とは、900℃から1300℃程度の高温域におけるCO2との反応性であり、一般的には、JIS K2151のコークス類の試験方法に記載の反応性試験方法により測定されるものである。
【0048】
上記触媒物質としてのアルカリ金属とは、周期律表1族に属する元素、Li,Na,K,Rb、Cs,Frの総称であり、アルカリ金属化合物とは、アルカリ金属の水酸化物、酸化物、過酸化物、窒化物、炭化物の他、ハロゲン化物、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩などの塩および複塩等を意味する。
【0049】
本発明の製造方法においては、アルカリ金属化合物の1種以上を用いれば良く、2種以上のアルカリ金属化合物の混合物、あるいは2種以上のアルカリ金属を含む化合物を用いても良い。
【0050】
また、上記触媒物質としてのアルカリ土類金属とは、周期律表2族に属する元素、Be,Mg,Ca,Sr,Baの総称であり、アルカリ土類金属化合物とは、アルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、過酸化物、窒化物、炭化物の他、ハロゲン化物、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩などの塩および複塩等を意味する。
【0051】
本発明の製造方法においては、アルカリ土類金属化合物の1種以上を用いれば良く、2種以上のアルカリ土類金属化合物の混合物、あるいは2種以上のアルカリ土類金属を含む化合物を用いても良い。
【0052】
なお、上記アルカリ土類金属化合物の代表的なものとしては、石灰石(CaCO3)、生石灰(CaO)、消石灰(Ca(OH)2)あるは、ドロマイト(MgCO3)等があるが、これらは製鉄プロセスにおいて従来から工業的に利用されているため、容易かつ安価に入手することができ、自然界に豊富な資源として用いることができる。
【0053】
また、上記触媒物質としての遷移金属とは、不完全に満たされたd殻をもつ原子またはそのような陽イオンを生じる元素であり、周期律表の3族から11族までの元素、つまり Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、Mn、Tc、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Cu、Agなどであり、遷移金属化合物とは、これらの遷移金属の水酸化物、酸化物、過酸化物、窒化物、炭化物の他、ハロゲン化物、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩などの塩および複塩等を意味する。
【0054】
代表的な遷移金属としては、鉄、遷移金属化合物としては、酸化鉄があるが、製鉄プロセスにおいては、資源として再利用するには劣質な、鉄粉、酸化鉄や、鉄粉、鉄酸化物を含むスラリーを容易かつ安価に入手することができるというメリットがある。
【0055】
これらの触媒としての作用は、アルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属が、コークスのガス化反応において、コークスとCO2との間で電子の授受を行う媒体として作用するためと考えられる。アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属とを混合して用いた場合には、アルカリ土類金属と遷移金属間でも電子の授受が行われ、コークスとCO2との間での電子授受をさらに活発化し触媒作用が活性化する。
【0056】
本発明では、コークスの反応性を高める触媒物質として、アルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属の1種または2種以上を1質量%以上含有する石炭を用いても、上記と同様な効果が得られる。
【0057】
本発明において、アルカリ土類金属のうちで、特に、Caを含有する石炭や、遷移金属のうちで、特に、Feを含有する石炭は入手しやすいため好ましい。
【0058】
これは、石炭中のアルカリ土類金属または遷移金属が、コークスとCO2との間で電子の授受を行う媒体として作用し、触媒としての役割を果たすためである。
【0059】
このような触媒作用はアルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属が組み合わせて含有する石炭の方が、アルカリ土類金属と、遷移金属との間でも電子の授受が行われ、コークスとCO2との間での電子授受をさらに活発化するため、触媒の相乗作用でコークスのガス化反応性をより活性化させる。
【0060】
なお、コークスのガス化反応性を高めるために、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属および/または遷移金属を含有する石炭は、石炭中にアルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属の1種または2種以上が、含有量の合計で1質量%以上含有しすることが好ましい。
【0061】
この含有量が1質量%未満であると、触媒作用によるコークスのガス化反応性の効果が充分に得られなくなる。
【0062】
これらの触媒物質、すなわち、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、遷移金属、および、遷移金属化合物のうちの1種または2種以上からなる混合物、アルカリ土類金属および遷移金属の1種または2種以上を1質量%以上含有する石炭のなどを、単独または組み合わせて使用することができる。
【0063】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を説明する。
【0064】
強粘結炭を所定量(表1)含む配合炭を、表1に示すような粒度に粉砕した後、粘結補填剤として軟ピッチを所定量添加して混合し、炉幅400mm、炉高1000mm、炉長1000mmの試験コークス炉に装入密度0.80t/m3で装入し、所定の炉温で、乾留時間18.5時間の条件で乾留した。
【0065】
ここで用いた強粘結炭は、揮発分22%、最高流動度の対数値が3.0の石炭である。また、強粘結炭と配合する相手方の石炭は、平均の揮発分、平均の最高流動度の対数値がそれぞれ、28%、2.2である。
【0066】
乾留したコークスは窒素で冷却した後、表1に示すような触媒物質を溶媒に分散させた液体に浸漬する、あるいは液体を噴霧した後、乾燥した。
【0067】
ここで、Na2CO3、CaCl2およびFe2Cl3は、溶液中の質量百分率が5質量%となるように、完全に水に溶解させた。
【0068】
また、発明例4で用いた石炭Aは、石炭中のカルシウム含有濃度が1.5質量%の、揮発分37%の石炭であり、−0.3mm以下の粒度に粉砕して、10質量%の溶液となるように水に分散させた。
【0069】
溶媒は、発明例1〜9は水とし、発明例10はエタノール10%水溶液を用いた。
【0070】
浸漬時間、噴霧時間は共に10秒間とした。
【0071】
なお、ドラム強度は、JIS K2151に記載のコークスの回転強度試験方法のドラム法により測定した、150回転後の15mm篩上指数である。また、反応性は、JIS K2151のコークス類の試験方法に記載の反応性試験方法により測定されるものである。ここでは乾留後コークスの表層部の反応性を評価するため、コークス試料をドラム試験機で30回衝撃を与えて発生した表層部の粉について反応性を測定した。
【0072】
揮発分とは、JIS M8812記載の石炭の揮発分定量方法によって測定された無水ベースの揮発分(%)である。
【0073】
最高流動度とは、JIS M8801記載の石炭の流動性試験方法によって測定された流動度(DDPM)のことであるである。
【0074】
乾留後コークスについては、半径方向の触媒元素の濃度分布を測定し、触媒浸透深さを下記のように定義した。すなわち、触媒元素濃度が平均濃度の1.5倍になる位置を、中心からの距離でx(mm)とし、半径をr(mm)とした時、100−x/r×100(%)で表した。すなわち、中心まで浸透している時は100%、全く浸透していない時は0%となる。ここで対象とする触媒元素は、発明例6ではナトリウム、発明例8では鉄、発明例1〜5,7,9についてはカルシウムである。
【0075】
発明例1〜3は、浸透深さが20%となるように調整した場合である。発明例からわかるように、平均粒度、炉温、溶媒を調整することにより、浸透深さを20%に調整できていることがわかる。
【0076】
発明例4〜8は、浸透深さが10%となるように調整した場合である。発明例からわかるように、強粘結炭比、粘結補填剤添加比、触媒添加方法を調整することにより、浸透深さを10%に調整できていることがわかる。また、触媒物質の種類が変わっても、10%に調整できていることがわかる。
【0077】
発明例9は、浸透深さが2%となるように調整した場合である。発明例からわかるように、2%に調整できていることがわかる。
【0078】
【表1】
【0079】
【発明の効果】
本発明により、コークスの表面から内部にかけて触媒濃度分布の異なる反応性の高い高炉用高反応性コークスを得ることができる。これによって、高炉の操業条件に適した反応性を持った高反応性のコークスを適切に選択できるため、高炉の安定したかつ効率的な操業が可能となる。また、本発明の方法は、製造されたコークスに触媒を浸透させるので、触媒物質によるコークス炉の炉壁煉瓦の損傷がなく、効率的に高反応性のコークスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】高反応性コークスにおける触媒の濃度分布を示す概念模式図であり、a)は従来の、b)は、本発明のそれぞれ濃度分布を示すものである。
【図2】本発明のコークスを製造するために、触媒物質の浸透距離と調整する要素との関係を示す概念図であり、a)は、配合炭の平均粒子径と、b)は配合炭の乾留速度と、c)は、配合炭中の強粘結炭の配合比率と、d)は、粘結補填剤の比率と、触媒物質の浸透距離と関係をそれぞれ示すものである。
【図3】本発明のコークス製造プロセスの一例を示すフロー図である。
Claims (9)
- 炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質を溶媒中に溶解及び/または分散させた液体を、単一銘柄の石炭または複数銘柄の石炭からなる配合炭を乾留して製造したコークス表面から浸透させ、該コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与することを特徴とする触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
- 前記炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質が、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、遷移金属、および、遷移金属化合物のうちの1種または2種以上からなる混合物であることを特徴とする請求項1記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
- 前記炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質が、アルカリ土類金属および遷移金属の1種または2種以上を1質量%以上含有する石炭であることを特徴とする請求項1に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
- 前記炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質を溶媒中に溶解および/または分散させた液体を前記コークスの表面に噴霧することによって浸透させ、コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与することを特徴とする請求項1〜3項のいずれか1項に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
- 前記炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質を溶媒中に溶解および/または分散させた液体中に、前記コークスを浸漬することによって浸透させ、コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与することを特徴とする請求項1〜3項のいずれか1項に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
- 前記単一銘柄の石炭または複数銘柄の石炭からなる配合炭の平均粒度を調整して、前記コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
- 前記単一銘柄の石炭または複数銘柄の石炭からなる配合炭の乾留速度を調整して、前記コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
- 前記単一銘柄の石炭または複数銘柄の石炭からなる配合炭の強粘結炭の配合比率を調整することによって、前記コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
- 前記炭素と二酸化炭素から一酸化炭素を生じる反応を活性化させる触媒物質を溶媒中に溶解および/または分散させた液体中の粘度を調整することによって、前記コークスの表面から内部に触媒物質の濃度分布を付与することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の触媒濃度分布の異なる高炉用高反応性コークスの製造方法。
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