JP5188123B2 - ゴムクローラ用スチールコード - Google Patents

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Description

本発明は、ゴムクローラに埋設して用いられるゴムクローラ用スチールコード(以下、単に「コード」とも称する)に関する。
一般に、無端状のゴムクローラには、車両等に装着されて使用に供される際に大きな張力がかかることとなる。このため、ゴムクローラ内部には、その長手方向に沿って、抗張体としてのスチールコードが、列状をなして埋設されている。このような無端状のゴムクローラは、通常、内部にスチールコードを埋設した有端状のゴムクローラ基体を作製した後、その両端から突出させたスチールコードを重ね合わせて、この重ね合わせ部(エンドレス部位)をさらにゴム加硫することにより製造される。
ゴムクローラに使用するスチールコードとしては、接着性の向上や腐食の原因となるスチールコード内の水分をなくす目的で、コード内部へのゴムの侵入性(ゴムぺネトレーション性、以下、「ゴムペネ性」ともいう)が良いコードが要求される。従来、この種のスチールコードとしては、1本のコアストランドの周囲に、これと同径の6本のシースストランドを撚り合わせたものが一般的であるが、かかるゴムぺネトレーション性を高める観点から、例えば、特許文献1では、シースストランドの撚り合わせ本数を5本にして、シースストランド相互間にゴムの侵入が可能な隙間を設けたスチールコードを弾性クローラに適用する技術が提案されている。
また、特許文献2には、スチールコードに係る改良技術として、コアストランドおよびシースストランドの少なくとも一方を、1本または複数本のフィラメントによるコアのまわりに、複数本のフィラメントによるシースの1層または複数層を撚り合わせてなるものとし、最外側シースを構成するフィラメントを、その内側のいずれか少なくとも1つの層を構成するフィラメントよりも太径としたことで、一部のフィラメントの先行破断を回避してスチールコードの耐久性能を向上したゴム物品補強用スチールコードが開示されている。
特開2001−114143号公報(特許請求の範囲等) 再表01/034900号公報(特許請求の範囲等)
ところで、上記のように、ゴムクローラのエンドレス部位においては、スチールコードが重なり合っている。そのため、ゴムクローラをスプロケットおよびアイドラーに巻き掛けして使用に供する際には、このコードのオーバーラップ部の内側に位置するスチールコードが、スプロケット等に巻き掛かった際には圧縮力を受けて座屈し、巻き掛かっていない際には正常な状態に戻るという繰り返しの歪みを受けることになる。このコードのオーバーラップ部の内側に位置するスチールコードにおいては、かかる繰り返し座屈に起因してフィラメントの疲労切断が生ずる場合があるため、これを防止することが求められていた。
そこで本発明の目的は、上記の問題を解消して、ゴムクローラ用として要求される良好なゴムのペネトレーション性を確保しつつ、座屈性についても改良したゴムクローラ用スチールコードを提供することにある。
本発明者は鋭意検討した結果、コアストランドおよびシースストランドからなる特定コード構造において、各ストランドの径の関係を所定に規定するとともに、コアストランドに対するシースストランドの巻き付け角度を特定の範囲に規定することで、ゴムペネ性を確保するとともに、コードの座屈に伴う疲労切断の発生を防止することが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のゴムクローラ用スチールコードは、3本のフィラメントからなるコアと、該コアの周囲に配置され、8本のフィラメントからなるシースとから構成された1本のコアストランドの周囲に、3本のフィラメントからなるコアと、該コアの周囲に配置され、8本のフィラメントからなるシースとから構成された6本のシースストランドが撚り合わされてなるスチールコードであって、
前記コアストランドおよびシースストランドの双方において、コアフィラメントとシースフィラメントとが同径であり、前記6本のシースストランドが互いに離間した状態で配置され、かつ、該シースストランドの、前記コアストランドに対する巻き付け角度θが10度以上であり、前記シースストランドの巻き付け密度ρが、0.90〜0.96の範囲内であることを特徴とするものである。
本発明においては、前記コアストランドの径Dcと前記シースストランドの径Dsとの比Dc/Dsは、好適には1.01〜1.20の範囲内である。さらに、前記シースストランドの巻き付け角度θは、12〜25度の範囲内であることが好ましい。本発明のコードは、好適には、前記シースストランドの巻き付け角度θが14.3度以上であり、かつ、前記シースストランドの巻き付け密度ρが0.96以下であるものである。
本発明によれば、上記構成としたことにより、ゴムのペネトレーション性を確保しつつ、座屈性を改良して、フィラメントの疲労切断を抑制できるゴムクローラ用スチールコードを実現することができる。したがって、かかるコードをゴムクローラに適用することで、ゴムクローラの耐久性を著しく向上することが可能である。
以下、本発明の好適実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明の一好適実施形態に係るゴムクローラ用スチールコードの断面図を示す。図示する本発明のゴムクローラ用スチールコード10は、3本のフィラメント11からなるコアと、その周囲に配置され、8本のフィラメント12からなるシースとから構成された1本のコアストランド1の周囲に、3本のフィラメント21からなるコアと、その周囲に配置され、8本のフィラメント22からなるシース2とから構成された6本のシースストランド2が撚り合わされてなるものである。
本発明のコードにおいては、図示するように、6本のシースストランド2が互いに離間した状態で配置され、かつ、シースストランド2の、コアストランド1に対する巻き付け角度θが10度以上であることが重要である。ここで、シースストランド2のコアストランド1に対する巻き付け角度θとは、図2(a)のコアストランドの外周に沿う概略展開図に示すように、コアストランド1の長手方向Xと、その周囲に撚り合わされたシースストランド2の長手方向Yとの交差角度である。
一般に、スチールコードを構成するシースストランドの巻き付け角度は、スチールコード長手方向に対して大きければ大きいほど巻き付け数も多くなるので、折れにくさという点では向上する。しかし、スチールコードの巻き付け数が多くなるということは、その分スチールコード間にゴムが侵入しにくくなり、侵入するゴムの量も少なくなるので、水分が入ると錆びやすくなる。そこで、本発明においては、シースストランドの巻き付け角度を規定するとともに、シースストランド間に隙間を設けることで、フィラメントの疲労座屈が発生せず、かつ、1本のコアストランドの周辺に6本のシースストランドを撚り合わせてなるコード構造においても良好なゴムペネトレーション性を確保しうるスチールコードを実現したものである。
まず、巻き付け角度θについて説明する。図2(b)に示すように、コアストランドの長手方向Xに沿うシースストランドの1ピッチの長さをPとすれば、シースストランドの中心が通る巻き付け幅がDc+Dsで表されるので、図2(a)の展開図より、巻き付け角度θとDc+Dsとの間には、tanθ=π(Dc+Ds)/Pの関係が成立する。これより、巻き付け角度θはθ=tan−1π(Dc+Ds)/Pで求められる。
本発明のコードにおいては、この巻き付け角度θを10度以上とすることで、座屈の発生を効果的に防止することが可能となった。一方で、かかる巻き付け角度θの値としては、角度θが大きくなれば座屈の現象が少なくなるが、一方で、シースストランド同士の隙間が減ってゴムペネトレーションが悪くなるという問題が生ずる。これは、シースストランドのコード軸方向に対する傾きが大きくなりすぎて、コード断面で見たときのフィラメントが楕円形状となり、隣接シースストランド間の隙間がなくなってしまうためである。また、巻き付け角度θが大きくなりすぎると、コード強力についても低下する。特に、巻き付け角度θが25度を超えるとこの傾向が顕著である。かかる観点から、巻き付け角度θは、12〜25度の範囲内とすることが、座屈性とゴムペネ性とを両立できる範囲として、特に好適である。
また、本発明において、6本のシースストランド2を互いに離間した状態で配置するためには、コアストランド1の径Dcをシースストランド2の径Dsより大きくすることが必要である。これにより、シースストランド2同士の間に隙間を設けて、ゴムペネトレーション性を確保することができる。好適には、コアストランド1の径Dcとシースストランド2の径Dsとの比Dc/Dsを、1.01〜1.20の範囲内とする。これらストランド径の比Dc/Dsが、1.01より小さいとゴムペネトレーションが不十分となるおそれがあり、1.20より大きいとコード強力が不足するおそれがある。
また、本発明において好適には、シースストランドの巻き付け角度θに加えて、その巻き付け密度ρについても規定することで、ゴムペネ性のさらなる向上を図ることができる。シースストランドの巻き付け密度ρについては、図2(a)に示すように、コード断面あたりのLの範囲にシースストランドのn本が並列するとすれば、cosθ=L/π(Dc+Ds)およびL・ρ=nDsより、ρ=nDs/π(Dc+Ds)cosθとなる。本発明のスチールコードにあってはn=6であるので、ρ=6・Ds/π(Dc+Ds)cosθが得られる。かかる巻き付け密度ρは、上記したシースストランド同士の隙間を表すものということができ、巻き付け密度ρは1.0未満である。本発明において実用的なゴムペネ性を考えると、巻き付け密度ρは好適には0.96以下、より好適には0.90〜0.96の範囲である。
さらに、本発明においてより具体的には、シースストランドの巻き付け角度θおよび巻き付け密度ρを複合的に考慮すれば、図1に示すような、3本のフィラメント11からなるコアと、その周囲に配置され、8本のフィラメント12からなるシースとから構成された1本のコアストランド1の周囲に、3本のフィラメント21からなるコアと、その周囲に配置され、8本のフィラメント22からなるシースとから構成された6本のシースストランド2を撚り合わせてなるスチールコードであって、コアストランド径Dcとシースストランド径Dsとの比Dc/Dsが1.01〜1.20であるとともに、シースストランドの巻き付け角度θが14.3度以上であって、かつ、シースストランドの巻き付け密度ρが0.96以下であるものとすることが好適である。これにより、座屈性とゴムペネ性との双方を同時に、かつ、バランスよく改良することができ、双方の特性を最も良好に満足できるものとすることができる。
本発明のコードにおいては、上記ストランド径比Dc/Ds、シースストランドの巻き付け角度θおよび巻き付け密度ρについて満足するものであればよく、各ストランドを構成するフィラメントの径や材質等については特に制限されるものではない。好適には、コアストランド1およびシースストランド2の双方において、コアフィラメントとシースフィラメントとを同径とする。これにより、スチールコード製造時の生産が向上するとの効果を得ることができる。
また、本発明のコードを構成する6本のシースストランド2の周囲には、1本のラッピングワイヤを配置することもできるが(図示せず)、このラッピングワイヤは、本発明の所期の目的である座屈性やゴムペネ性に影響を及ぼさないため、あってもなくても構わない。
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
図1に示す、コアストランド1およびシースストランド2がいずれも3本のコアフィラメントと8本のシースフィラメントとからなる7×(3+8)構造のスチールコードを、コアストランドの径Dc、シースストランドの径Ds、並びに、シースストランドのコアストランドに対する巻き付け角度θおよび巻き付け密度ρを下記の表1および表2中に示すように変えて作製した。
ここで、実施例1のスチールコードは、コアストランド径Dcが1.16mm、シースストランド径Dsが1.08mmで、シースストランドの1ピッチの長さPは27mmであった。また、実施例4のスチールコードは、コアストランド径が1.54mm、シースストランド径が1.50mmで、シースストランドの1ピッチの長さPは51mmであった。
得られた各スチールコードを実際のゴムクローラに使用して、座屈の発生およびゴムのペネトレーションを観察した。なお、試験に用いたクローラは幅寸法が30cm、長さ方向に埋設された芯金の数は90本、芯金の中央間隔が52.5mmであり、クローラの用途はミニショベル用であった。
<座屈試験>
各ゴムクローラについて、屈曲試験機で30万回の屈曲試験を行った。対抗するスプロケットの歯数は21であった。屈曲後、スチールコードのオーバーラップ部を解剖してスチールコードの切断の有無を確認した。フィラメント切断なしの場合を○、フィラメント切断ありの場合を×とした。
<ゴムのペネトレーション試験>
各ゴムクローラから取り出したスチールコードをほぐして、ゴムペネ性を確認した。ストランドのコアまでゴムが侵入している場合を○、そうでない場合を×とした。
これらの結果を、下記の表1および表2に示す。
Figure 0005188123
Figure 0005188123
上記表1,表2に示すように、本発明に係るストランド径の条件および巻き付け角度、さらには巻き付け密度の条件を満足する実施例においては、座屈の発生がなく、かつ、ゴムペネ性に優れたスチールコードが得られることが確認できた。
本発明によれば、各ストランドの径の条件とともに、コアストランドに対するシースストランドの巻き付け角度θおよび巻き付け密度ρを適切な範囲に選択することにより、従来技術にはない大きな効果を奏することができる。このことから、本発明のスチールコードは全てのゴムクローラに採用することが可能であり、これによってゴムクローラの耐久性が特に優れたものとなる。
本発明の一実施の形態に係るスチールコード(7×(3+8)構造)を示す断面図である。 コアストランドに対するシースストランドの巻き付け角度θ、および、巻き付け密度ρに係る説明図である。
符号の説明
1 コアストランド
2 シースストランド
11,21 コアフィラメント
12,22 シースフィラメント
Dc コアストランドの直径
Ds シースストランドの直径
P シースストランドの1ピッチ長さ
θ シースストランドの巻き付け角度

Claims (4)

  1. 3本のフィラメントからなるコアと、該コアの周囲に配置され、8本のフィラメントからなるシースとから構成された1本のコアストランドの周囲に、3本のフィラメントからなるコアと、該コアの周囲に配置され、8本のフィラメントからなるシースとから構成された6本のシースストランドが撚り合わされてなるスチールコードであって、
    前記コアストランドおよびシースストランドの双方において、コアフィラメントとシースフィラメントとが同径であり、前記6本のシースストランドが互いに離間した状態で配置され、かつ、該シースストランドの、前記コアストランドに対する巻き付け角度θが10度以上であり、前記シースストランドの巻き付け密度ρが、0.90〜0.96の範囲内であることを特徴とするゴムクローラ用スチールコード。
  2. 前記コアストランドの径Dcと前記シースストランドの径Dsとの比Dc/Dsが、1.01〜1.20の範囲内である請求項記載のゴムクローラ用スチールコード。
  3. 前記シースストランドの巻き付け角度θが、12〜25度の範囲内である請求項1または2記載のゴムクローラ用スチールコード。
  4. 前記シースストランドの巻き付け角度θが14.3度以上であり、かつ、前記シースストランドの巻き付け密度ρが0.96以下である請求項1〜のうちいずれか一項記載のゴムクローラ用スチールコード。
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