JP5187259B2 - Icp発光分析装置及びicp発光分析方法 - Google Patents

Icp発光分析装置及びicp発光分析方法 Download PDF

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Description

本発明は、プラズマの軸方向観測及び横方向観測の双方を行うことが可能なICP発光分析装置及びICP発光分析方法に関する。
ICP発光分析には、プラズマトーチから試料等が噴出する方向であるプラズマの軸方向の光を分光部に導入して分析を行う軸方向観測と、それに対して垂直な方向からの光を分光部に導入して分析を行う横方向観測とがある。プラズマ化した試料は、プラズマトーチから発生した無極放電プラズマの内部において、軸方向に延びた形状で分布する。そのため、横方向観測は試料のプラズマ光の一部のみを分析することになるため、感度はそれほど高くない。しかし、自己吸収現象や共存物質の影響が小さいため、正確な測定を行うことができる。一方、軸方向観測は、共存物質の影響や自己吸収現象の影響により正確性に劣るが、より多くのプラズマ光を分光部に導入することができるため、高い感度で測定を行うことができる。
このように、軸方向観測及び横方向観測にはそれぞれに長所及び短所があるため、どちらの観測を行うかは、試料の種類や濃度、分析の目的に応じて決定がなされる。具体的には、試料中の濃度が低い場合には、感度が高いことが必要になるが、共存物質の影響は無視できるため、プラズマの軸方向から光を分光部に取り入れることが行われる。一方、試料中の濃度が高い場合には感度は不要になるが、正確さが求められるため、プラズマの横方向から光を分光部に取り入れることが行われている。
そのため軸方向観測と、横方向観測とを比較的簡易に切り換えることが可能な機構を備えたICP発光分析装置が従来知られており、一般に利用されている。このような装置の一例として、特許文献1に記載の技術がある。
ここで、従来の一般的なICP発光分析装置の例を説明する。ICP発光分析装置の基本的構成は、周囲に誘導コイルが巻き付けられたプラズマトーチ、軸方向光導入部、横方向光導入部、そして分光部から成る。横方向光導入部の内部には、プラズマの横方向観測と軸方向観測とを切り換えるための光路切換装置が設置されている。プラズマトーチのプラズマと分光部の入口スリットとを結ぶ光路の切り換えは可動式ミラーを用いることにより行い、ミラーの角度を適宜変化させることにより、プラズマから発せられるプラズマ光を軸方向から観測するか又は横方向から観測するかを択一的に切り換えることができる。
軸方向観測時には、オリフィスを含む軸方向光導入口から導入されたプラズマ光が、適宜ミラーによって進行方向を変えつつ、分光部に導入される。このとき、プラズマ光は軸
方向観測光路を形成する。
横方向観測時には、横方向光導入口から導入されたプラズマ光が、適宜ミラーによって進行方向を変えつつ分光部に導入される。このとき、プラズマ光は横方向観測光路を形成する。
特開2003‐344292号公報
ここで、分光部の入口スリットに使われるスリットは、大きく分類すると、ピンホール型スリット(以下、「ピンホール型スリット」という。)と、直線型スリット(以下、「直線型スリット」という。)の2種類の形状のスリットがあるが、何れの形状のスリットを用いるかは、分光部の種類に依存する。例えば、エシェル型分光器の場合は、ピンホール型スリットを使用し、ツェルニ・ターナー(Czerney Turner)型分光器を使用した場合は、直線型スリットを使用する。
しかし、ピンホール型スリットは、軸方向観測の場合に、プラズマ発生方向の中心軸近傍の光を分光部へ導入するためには適するが、横方向観測の場合には、プラズマ発生方向の中心軸に対して直交する方向から、中心軸近傍のある部分についての光を導入するに止まるため、十分な光を導入することができず、得られた信号がノイズに埋もれてしまう場合がある。
一方、直線型スリットは、横方向観測の場合は、十分な光を導入できるメリットがあるが、軸方向観測をした場合に、バックグラウンド部分の光を多く取り込んでしまい、十分な感度が得られない。
よって、いずれの形状のスリットも一長一短であり、軸方向観測の場合は、プラズマ発生方向の中心軸近傍の光を分光部へ導入すればよいため、ピンホール型スリットを用いることが望ましいが、横方向観測の場合は、プラズマ発生方向の中心軸に対して直交する方向から、中心軸近傍のある部分についての光を導入するため、十分な光を得るためには直線形状の入口スリットを用いることが望ましい。
しかし、従来の発光分析装置においては、入口スリットの形状は、分光部の種類に依存しており、プラズマの観察方向に適したスリット形状の選択は行われていない。そこで、本発明においては、プラズマの観測方向に合わせて、観測方向に適応した形状のスリットに切り換えて使用するICP発光分析装置及びICP発光分析方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、プラズマトーチと分光部の入口スリット間の光路にプラズマの軸方向観察の第1光路と横方向観察の第2光路を有するICP発光分析装置において、前記入口スリットとして使用するピンホール形状の第1スリットと、前記入口スリットとして使用する直線形状の第2スリットと、前記第1スリットと前記第2スリットを切り換える切換手段とを備えることを特徴とするICP発光分析装置である。
前記課題を解決するためになされた第2の発明は、第1の発明において、プラズマの軸方向観察を行う場合は前記入口スリットを前記第1スリットに切り換え、プラズマの横方向観察を行う場合は前記入口スリットを前記第2スリットに切り換える制御手段を備えることを特徴とするICP発光分析装置である。
前記課題を解決するためになされた第3の発明は、第2の発明において、前記制御手段は、前記入口スリットに前記第2スリットを用いてプラズマの横方向観測を行う際に分光干渉が生じた場合、前記入口スリットを前記第2スリットから前記第1スリットへ切り換える制御も可能なことを特徴とするICP発光分析装置である。
前記課題を解決するためになされた第4の発明は、プラズマトーチと分光部の入口スリット間の光路にプラズマの軸方向観察の第1光路と横方向観察の第2光路を有するICP発光分析装置を用いて行うICP発光分析方法において、プラズマの軸方向観察を行う場合は前記入口スリットにピンホール形状の第1スリットを使用してICP発光分析を行い、プラズマの横方向観察を行う場合は前記入口スリットに直線形状の第2スリットを使用してICP発光分析を行うことを特徴とするICP発光分析方法である。
前記課題を解決するためになされた第5の発明は、第4の発明において、前記入口スリットに前記第2スリットを用いてプラズマの横方向観測を行う際に分光干渉が生じた場合、前記入口スリットを前記第2スリットから前記第1スリットへ切り換えてICP発光分析を行うことを特徴とする発光分析方法である。
本発明によれば、ピンホール型スリットと直線型スリットを切り換えて使用することができるため、軸方向観測の場合はピンホール型スリットを用い、横方向観測の場合は直線型スリットを用いることが可能になる。軸方向観測の場合は、ピンホール型スリットを用いて、プラズマ発生方向の中心軸近傍の光をピンホールの領域に限定して、分光部へ導入することができるため、バックグラウンドの導入を防止することができる。一方、横方向観測の場合は、直線型スリットに切り換え、プラズマ発生方向の中心軸に対して直交する方向から、直線状に設けられたスリットの領域における中心軸近傍の光を分光部へ導入する。直線型スリットの方が、ピンホール型スリットと比べて、分光部へプラズマ光を導入することができる領域が広いため、より多くのプラズマ光を分光部へ導入することができ、横方向観測の精度があがる。以上のようにして、精度の高い発光分析を軸方向観測と横方向観測の両方向の観測において行うことができる。
さらに、直線型スリットを用いて横方向観察の発光分析をしていた場合に、光量が多いことに起因して分光干渉が発生した場合に、直線型スリットをピンホール型スリットに切り換えることにより、分光部に導入される光量が減少するため、分光干渉を防止することができる。
本発明のプラズマの軸方向観測時におけるICP発光分析装置の概略図である。 本発明のプラズマの横方向観測時におけるICP発光分析装置の概略図である。 本発明に用いるプラズマトーチと分光部の光路上に設置する入口スリットの概略図である。
以下、本発明に係るICP発光分析装置の実施形態について、図1と図2を用いて説明する。
図1は、本発明のプラズマの軸方向観測時におけるICP発光分析装置の概略図である。また、図2は、本発明のプラズマの横方向観測時におけるICP発光分析装置の概略図である。本発明のICP発光分析装置は、プラズマトーチ11と分光部1との間に、第1光導入部31及び第2光導入部32を備えている。第1光導入部31は、プラズマを軸方向観測したプラズマ12の光を分光部1内に導入するための機構である。第2光導入部32は、プラズマを軸に対して鉛直方向に観測した横方向観測のプラズマ光を分光部1内に導入するための機構である。それぞれの導入部31 、32の内部には、プラズマ光を所定の方向に反射させるためのミラーが所定個数設けられ、プラズマ光を最終的に分光部1に導入するための第1光路21(図1)又は第2光路32(図2)が形成される。
また、プラズマ12の観測方向は、厳密にプラズマ12の軸方向又は横方向である必要はないことはもちろんであり、分析精度を向上させるために観測方向を自由に調節しても構わない。観測方向の調節は、各光導入部に対するプラズマトーチ1の角度を変化させることや、ミラーの角度を変えることによって行えばよい。
プラズマ12から分光部1までの光路中には、横方向観測と軸方向観測を選択的に切り換えるための観測光選択手段としてミラー2、可動式ミラー3、ミラー4が設けられており、この可動式ミラー3を駆動部41により動かすか、又はその角度を調節すること等により、分光部1に第1光路21の光を導入するか等の方法により、又は第2光路22の光を導入するかのいずれかを選択することができる。観測光選択手段は可動式ミラー3に限らず、いかなる機構や手段を利用しても構わない。なお、光路は、図1に示す軸方向観測の場合は、軸方向観測の光路を第1光路として実線で表し、横方向観測の光路は破線で表している。一方、図2に示す横方向観測の場合は、横方向観測の光路を第2光路22として実線で表し、軸方向観測の光路は破線で表している。
また、プラズマトーチ11と分光部1の間の光路上には、分光部の入口スリットが設けられている。この入口スリットは、ピンホール型スリット13又は直線型スリット14のいずれを用いるか選択することが可能である。入口スリットの選択は、駆動部42を設けていずれの形状のスリットを用いるか選択してもよいし、ユーザが手動で着脱してもよい。
図1に示すように、軸方向観測を行う場合は、入口スリットにピンホール型スリット13を使用する。プラズマの軸方向観測を行う場合は、軸方向のプラズマはドーナツ構造をしており、プラズマの発生方向の中心軸の近傍に導入された試料は、温度の低い中心軸の近傍に効率よく導入されるため、効率よく発光する。試料はプラズマの中心軸の近傍に多く存在し、主に中心軸の近傍で分析に用いられるプラズマが発光する。一方、中心軸の周囲の温度の高い部分からは、プラズマガスからの発光があり、分析時のバックグラウンドとなる。よって、軸方向観測を行う場合は、中心軸近傍の光を取り込み、中心軸周囲の光は取り込まないことが望ましい。よって、軸方向観測を行う場合に用いるスリットの形状は、中心軸近傍の光を取り込み、中心軸周囲の光は取り込まない大きさの形状にすることが望ましい。具体的には、本発明に用いるプラズマトーチと分光部の光路上に設置する入口スリットの概略図である図3の(a) に示すように直径が数十μ程度のピンホール型スリットを用いる。ただし、かかるスリットの形状は、中心軸近傍の光を取り込み、中心軸周囲の光は取り込まない大きさの形状であれば、円形であっても、四角形等であっても構わない。
また、図2に示すように、プラズマの横方向観察をする場合は、プラズマの軸方向に対して垂直方向に設置された第2光導入部32を通り、ミラー4を通る第2光路22により、分光部1へ光が導入される。この場合、可動式ミラー3は、光路上に設けられていない。そして、横方向観察に用いる入口スリットには、直線型スリット14を使用する。横方向観測の場合、得られるプラズマ光は、プラズマ発生方向の中心軸に対して直交する方向のプラズマ光であるため、多くの領域から中心軸のプラズマ光を得る必要がある。そこで、スリットの高さを高くした直線型スリット14を使用し、直線状に設けられたスリットの領域における中心軸近傍の光を分光部へ導入する。具体的に、直線型スリット14は、図3(b)に示すように、幅が数10μmに対して、高さが数mm程度のスリットを用いるが、横方向分析を行う場合に必要な光量を確保できる幅と高さであれば、適宜変更をなし得る。
本発明は、プラズマトーチ11と分光部1の間の入口スリットを、軸方向観測時の場合はピンホール型スリット13を用い、横方向観測をする場合は直線型スリット14を使用することになる。入口スリットにいずれのスリットを用いるかの選択は、両スリットに接続された駆動部42が、軸方向観測時の場合はピンホール型スリット13をプラズマトーチ11と分光部1の間の光路上に設置し、横方向観測をする場合は直線型スリット14をかかる光路上に設置することにより行えばよい。また、軸方向観測時又は横方向観測を切り換える際に、可動式ミラー3等の光路選択手段が切り替わる際に、連動して自動的に切り換え可能なものとしてもよい。後者の場合は、光路の切り換え時に連動して使用するスリットの形状も切り替わるため、これまでと同じ操作や所要時間で、精度の高い分析が可能になる。そして、自動で行わない場合でも、ユーザが手動により、軸方向観測を行う場合はピンホール型スリット13を入口スリット取り付け部(図示しない)に取り付け、横方向観測を行う場合は、入口スリット取り付け部からピンホール型スリット13を外し、直線型スリット14を取り付けることによって行ってもよい。
また、本発明におけるICP発光分析装置は、軸方向観測時又は横方向観測以外のタイミングで、ピンホール型スリット13と直線型スリット14を切り換えることも可能である。具体的には、直線型スリット14を用いて発光分析をしていた場合に、光量が多いことに起因して分光干渉が発生した場合に、ピンホール型スリット13に切り換えれば、分光部に導入される光量が減少するため、分光干渉を防止することができる。例えば、エシェル型分光器を備えたICP発光分析装置は、短波長域は分解能がよいため、分光干渉が生じる心配は殆どないが、分解能が悪い長波長域においては、スリットの高さ方向の分光干渉が発生することがある。本発明では、横方向観測を行う場合、入口スリットに直線型スリット14を用いて観測を行う旨をこれまで説明してきたが、エシェル型分光器を備えたICP発光分析装置を使用して横方向観測を行う場合に、長波長領域で分光干渉が生じた場合は、入口スリットを直線型スリット14からピンホール型スリット13に変更すれば、分光干渉を防ぐことができる。
この場合、分光干渉量に応じて自動的に駆動部42を駆動させて、直線型スリット14からピンホール型スリット13へ切り換えるとよい。また、ユーザが実際に分析をしながら分光干渉量に応じて任意で切り換えてもよい。ユーザが任意で切り換える際は、ボタンを押す等によって駆動部42を駆動させて、入口スリットを切り換えてもよいし、ユーザの手によって入口スリットを着脱することで変更してもよい。
このようにして、プラズマの軸方向観測又は横方向観測というパラメータにより、入口スリットをピンホール型又は直線型に切り換えると共に、直線型スリットを用いて横方向観察を行っていた場合に分光干渉が発生した場合は、ピンホール型スリットに切り換えることを組み合わせることにより、より精度の高い分析が可能になる。
1 分光部
2 ミラー
3 可動式ミラー
4 ミラー
11 プラズマトーチ
12 プラズマ
13 ピンホール型スリット
14 直線型スリット
21 第1光路
22 第2光路
31 第1光導入部
32 第2光導入部
41 駆動部
42 駆動部

Claims (5)

  1. プラズマトーチと分光部の入口スリット間の光路にプラズマの軸方向観察の第1光路と横方向観察の第2光路を有するICP発光分析装置において、
    前記入口スリットとして使用するピンホール形状の第1スリットと、
    前記入口スリットとして使用する直線形状の第2スリットと、
    前記第1スリットと前記第2スリットを切り換える切換手段とを備えることを特徴とするICP発光分析装置。
  2. プラズマの軸方向観察を行う場合は前記入口スリットを前記第1スリットに切り換え、プラズマの横方向観察を行う場合は前記入口スリットを前記第2スリットに切り換える制御手段を備えることを特徴とする請求項1に記載されたICP発光分析装置。
  3. 前記制御手段は、前記入口スリットに前記第2スリットを用いてプラズマの横方向観測を行う際に分光干渉が生じた場合、前記入口スリットを前記第2スリットから前記第1スリットへ切り換える制御も可能なことを特徴とする請求項2に記載されたICP発光分析装置。
  4. プラズマトーチと分光部の入口スリット間の光路にプラズマの軸方向観察の第1光路と横方向観察の第2光路を有するICP発光分析装置を用いて行うICP発光分析方法において、
    プラズマの軸方向観察を行う場合は前記入口スリットにピンホール形状の第1スリットを使用してICP発光分析を行い、
    プラズマの横方向観察を行う場合は前記入口スリットに直線形状の第2スリットを使用してICP発光分析を行うことを特徴とするICP発光分析方法。
  5. 前記入口スリットに前記第2スリットを用いてプラズマの横方向観測を行う際に分光干渉が生じた場合、前記入口スリットを前記第2スリットから前記第1スリットへ切り換えてICP発光分析を行うことを特徴とする請求項4に記載されたICP発光分析方法。
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