実施の一形態について、図1ないし図10に基づいて説明する。
図1は、操作入力装置101の外観斜視図である。本実施の形態の操作入力装置101は、車両の運転席側及び助手席側を独立して温度調節可能な空調装置(図示せず)に接続されている。操作入力装置101は、車両内のインスツルメントパネル101aに設けられる。インスツルメントパネル101aには、正円形状の開口部101bが形成されている。そして、操作入力装置101は、インスツルメントパネル101aの開口部101bから迫り出し車両の後方に向けて突出するよう配置される。操作入力装置101は、略半球形状であって頂部に意匠面102を有している。操作入力装置101が上記のように配置される結果、意匠面102は露出して、車両後方側に向けられる。
操作入力装置101は、操作ノブ103を有する。操作ノブ103は、意匠面102を囲むように、操作ノブ103の軸Xに対する軸回り方向Rに回転自在に設けられている。軸回り方向Rは、意匠面102に弧状矢印104で示されている。また、この操作ノブ103は、軸回り方向Rに直交する傾倒方向Tに傾倒可能である。傾倒方向Tは、車両における左右方向に一致している。この傾倒方向Tは、意匠面102に三角印105で示されている。そして、操作ノブ103は、傾倒保持機構106(図10に基づいて後述)によって、左傾倒状態、中立状態、右傾倒状態のいずれかの状態で保持される。
意匠面102には、DUALポインタ107が設けられている。このDUALポインタ107は、操作ノブ103が左方向又は右方向のいずれかに傾倒された場合、空調装置に備わるコントローラ(図示せず)の制御によって点灯する。DUALポインタ107の点灯は、空調装置が「DUALモード」にあることを示す。DUALモードとは、運転席側又は助手席側のいずれか一方のみの温度調節を行うためのモードである。本実施の形態のDUALモード下では、操作者が操作ノブ103を回転させることによって、操作ノブ103の傾倒方向に対応する席の目標温度の変更が可能になる。DUALモードは、操作ノブ103が中立状態に戻され、さらに操作ノブ103に回転操作が加えられた場合に解除される。「DUALモード」の解除によって、空調装置は「通常モード」にモード移行し、DUALポインタ107は消灯する。通常モード下では、操作者が操作ノブ103を回転させることによって、運転席側及び助手席側の双方の目標温度の変更が可能になる。
意匠面102には、AUTOポインタ108も設けられている。このAUTOポインタ108は、意匠面102が押された場合、空調装置に備わるコントローラの制御によって、点灯/消灯が切り替わる。AUTOポインタ108の点灯は、空調装置が「AUTOモード」にあることを示す。AUTOモードとは、操作ノブ103の操作によって設定された目標温度に対し、車内の温度がその目標温度と同じになるように、風の温度、風量、および、送風方向を自動調整するよう空調装置が駆動するモードである。
意匠面102には、左右対称なる位置に「L」及び「R」という表示を有する。これらの表示と、DUALポインタ107と、AUTOポインタ108と、弧状矢印104と、三角印105とは、いずれも透明な部材で形成され、照明用LED121やポインタ用LED122(いずれも図2参照)からの光を透過させて光る照明部109となる。
図2は、前方から見た操作入力装置101の分解斜視図である。操作入力装置101は、基体としての基板111を備える。基板111には、短筒形状のホルダ112の一方の端面が固定される。以下、この端面を固定端面112aと呼ぶ。また、ホルダ112の固定端面112aとは反対側の端面を開放端面112bと呼ぶ。ホルダ112の外周には、リング形状のロータ113が位置付けられる。また、ホルダ112の外周であって、ロータ113よりも開放端面112b寄りの位置には、リング形状のベース114が取り付けられる。また、ホルダ112の開放端面112bの開口部112cには、スライダ115が挿入される。スライダ115は、ホルダ112よりも径の小さい短筒形状を有している。スライダ115には、その開口端面115aを覆うように、前述した意匠面102を有するプッシュノブ116が取り付けられる。
前述した操作ノブ103は、アッパー部材117とアンダー部材118とにより構成される。アッパー部材117は、略半球形状をなしており、中央に正円形状のリング穴117aを有している。アッパー部材117は、プッシュノブ116の意匠面102側に位置付けられ、リング穴117aから意匠面102を露出させている。アンダー部材118は、ベース114と略同じ内径を有し、ベース114よりも外径が大きいリング形状の部材である。アンダー部材118は、ホルダ112の外周であって、ベース114と基板111とに挟まれる位置に配置される。このアンダー部材118とアッパー部材117とが組み付けられることで、操作ノブ103が構成される。
以上に述べた要素のうち、ロータ113とアンダー部材118とホルダ112とベース114とスライダ115とプッシュノブ116とアッパー部材117は、いずれも正面側から見て円形状に形成されており、ホルダ112の軸X(図1参照)と同軸になるよう配置されている。
基板111は、略正方形形状の平板である。基板111には、ホルダ112の固定端面112a側に設けられた雌ネジ孔112d(図3参照)に雄ネジ119(図3参照)を用いてネジ留めするためのネジ孔120が設けられている。基板111の表面側には、照明用LED121とポインタ用LED122とが配置されている。照明用LED121は、左右方向に等間隔に三つ配置されている。照明用LED121は、照明部109に向けて光を発する。この照明用LED121は、車載された夜間照明用スイッチ(図示せず)に連動し、空調装置のコントローラ(図示せず)の制御により点灯/消灯する。
空調コントローラの制御について、詳細に述べる。空調コントローラは、夜間照明用のスイッチがオン状態で、かつ、操作ノブ103が中立位置にあるときには、3つの照明用LED121を点灯させ照明部109全体を照明する。一方、空調装置のコントローラは、夜間照明用スイッチがオン状態で、かつ、操作ノブ103が左傾倒位置にあるときには、3つの照明用LED121の内、左側及び中央の照明用LED121を点灯させるとともに右側の照明用LED121を消灯し、照明部109の「R」表示部分の照明をやめる。これは、操作ノブ103の左傾倒によって前面側が覆われる「R」表示部分の照明光が、操作ノブ103とプッシュノブ116との間から外部に漏れるのを防止するための制御である。また、空調装置のコントローラは、夜間照明用スイッチがオン状態で、かつ、操作ノブ103が右傾倒位置にあるときには、3つの照明用LED121の内、右側および中央の照明用LED121を点灯させるとともに左側の照明用LED121を消灯し、照明部109の「L」表示部分の照明をやめる。これは、操作ノブ103を左傾倒させた場合と同様に、操作ノブ103の右傾倒によって前面側から覆われる「L」表示部分の照明光が、操作ノブ103とプッシュノブ116との間から外部に漏れるのを防止するための制御である。なお、操作ノブ103の傾倒位置は、後述する傾倒検知部159によって検知可能であり、空調装置のコントローラは、傾倒検知部159からの信号によって操作ノブ103の傾倒位置を判断する。
また、ポインタ用LED122は、中央に位置する一の照明用LED121を挟んで上下対称となる位置に二つ配置されている。ポインタ用LED122から発せられた光は、導光部材123(後述)を介して、AUTOポインタ108やDUALポインタ107に伝達される。この上側のポインタ用LED122は、クリックスイッチとしてのタクトスイッチ124のオン/オフに連動して、空調装置のコントローラ(図示せず)の制御により点灯/消灯する。タクトスイッチ124は、基板111の表面側であって、中央に位置する照明用LED121と右側に位置する照明用LED121との間に設けられる。タクトスイッチ124は、内部に板バネ(図示せず)が配置されており、クリック動作がなされた後にその板バネの付勢力によって復帰するモーメンタリ(自動復帰)式のものである。
基板111の表面側には、フォトインタラプタ125も設けられている。フォトインタラプタ125は、透過型のものであって、溝125aが左右方向に向き、検出光(図示せず)が上下方向に向くよう配置される。このフォトインタラプタ125は、検出光の波形の位相が90度ずれるように二つ配置される。
基板111の表面側には、左右方向に揺動する揺動体126aを有する揺動スイッチ126も設けられている。揺動スイッチ126は、二方向三接点スイッチであり、揺動体126aの向きに応じて、左側に向けられた状態、中立状態、右側に向けられた状態とでそれぞれ異なる電気信号が出力される。
ロータ113は、リング形状の部材である。ロータ113の基板111側を向く面には、スリット127が形成されている。ロータ113は、このスリット127を有する面をフォトインタラプタ125の溝125aの内部に位置付けるよう配置される。そして、フォトインタラプタ125では、スリット127を通過する検出光を検出することで、ロータ113の回転が検知される。すなわち、フォトインタラプタ125とロータ113のスリット127とは、回転検知部128を構成する。また、ロータ113の外周右側面には、突出部129が形成されている。突出部129については、図4に基づいて後述する。
アンダー部材118は、ロータ113よりも内径が大きいリング状の部材である。アンダー部材118の外周面には、アッパー部材117の組付部117b(図3参照)と係合する被組付部118aが形成されている。また、アンダー部材118の内周右側面には、溝部130が形成されている。溝部130については、図4に基づいて後述する。
ホルダ112は、固定端面112a寄りの外周に、開放端面112bの外周よりも外周径を小さく形成された小径部131を有する。そして、小径部131にはロータ113が配設されている。ロータ113は、ホルダ112に同軸上で回動自在に支持されている。ここで、開放端面112b寄りの外周を、大径部132と称する。大径部132の外周上面及び小径部131の外周上面には、それぞれ、内側に凹んだ凹部133が形成されている。それぞれの凹部133には、ホルダ112の外周面から外側に向けて軸部134が突設されている。また、大径部132の外周には、ベース114の軸回り方向Rの回転動作を規制するための回転規制受部135が設けられている。回転規制受部135は、ベース114の回転規制突部136(後述)に対応させて四つ設けられている。回転規制受部135については、図8に基づいて後述する。また、ホルダ112の大径部132側には、開放端面112b側の方向に開口するバネ受孔151が設けられている。バネ受孔151にはスプリング152が挿入され、さらにスチールボール153が挿入される。
ベース114は、内径がホルダ112の大径部132の外径よりも大きいリング形状の部材である。ベース114の内周には、左右方向に延びる四つの回転規制突部136が設けられている。回転規制突部136は、基板111に対して傾斜する斜辺136aを有する。回転規制突部136については、図8に基づいて後述する。
図3は、後方から見た操作入力装置101の分解斜視図である。引き続き、ベース114について説明する。ベース114の内周上方には、操作部137が設けられている。操作部137は、ベース114の内周の上方から垂下し、さらに基板111に向けて延びる突設部材138の先端に形成され、揺動スイッチ126の揺動体126aと係合するよう凹形状に形成されている。また、ベース114の内周下方には、傾倒保持部材139が設けられている。傾倒保持部材139については、図10に基づいて後述する。また、突設部材138及び傾倒保持部材139にはそれぞれ、対向する位置に、ホルダ112の軸部134が嵌合する軸受孔140が形成されている。軸部134が軸受孔140に嵌合することによって、ベース114は軸部134に軸支され、傾倒方向Tに傾倒自在にホルダ112に支持される。また、ベース114の外周面で突設部材138の外側にあたる位置には、バネ受孔147が設けられている。バネ受孔147にはスプリング148が挿入され、さらにスチールボール149が挿入される。
スライダ115は、ベース114及びホルダ112の内部に位置付けられる部材で、突設部材138や傾倒保持部材139に干渉しない形状に形成されている。スライダ115の外周面で左側、右側及び下方の三箇所には、ホルダ112の軸X(図1参照)方向に伸びるスライドガイド溝141が形成されている。スライドガイド溝141は、ホルダ112の内周面に形成されたスライドガイド142(図2参照)に係合する。スライドガイド142によって、スライダ115はホルダ112にスライド自在に保持される。スライダ115は、基板111に向く端部に、タクトスイッチ124(図2参照)に接触する接触部115bが形成されている。
図2に基づく説明に戻る。スライダ115の内側には、棒状の導光部材123を保持する導光部材保持孔143が設けられている。また、スライダ115は、ホルダ112の軸X方向に光を通過させるよう、この軸X方向に連通する形状に形成されている。
プッシュノブ116は、円板形状の部材である。プッシュノブ116の左右端部には、スライダ115の外周面の左右に設けられた係合爪144に係合する係合孔145が設けられている。プッシュノブ116とスライダ115とは、スライド体150を構成する。
アッパー部材117に関し、その形状については、図5に基づいて後述する。また、リング穴117aとプッシュノブ116の意匠面102との関係、及び、組付部117bとアンダー部材118の被組付部118aとの関係については前述した。アッパー部材117の内周面には、クリック溝146(図3参照)が、円周方向に等間隔に設けられている。クリック溝146は、ベース114に取り付けられスプリング148に付勢されたスチールボール149が突き当たる。操作ノブ103を回転操作する操作者は、アッパー部材117の回転によってスチールボール149がアッパー部材117の内周面を転がりクリック溝146に嵌まる度に、操作ノブ103からクリック感を受ける。
図4は、係合部154を示す正面図である。ロータ113に突出形成されている突出部129は、短い円筒形状の突起であり、その軸方向から見ると正円形状となっている。この突出部129の先端は、円筒形状の後端よりも径が大きい半円球形状に形成されている。また、アンダー部材118に設けられている溝部130は、アンダー部材118の内周面に設けられ軸X(図1参照)方向を長手とする二つの長尺部材155によって形成される。操作入力装置101において、突出部129は溝部130に軸X方向に導入される。その結果、ロータ113と操作ノブ103の一部をなすアンダー部材118とは一体的に回転するようになる。また、溝部130が軸X方向に設けられているので、操作ノブ103の一部をなすアンダー部材118は、ロータ113に干渉されることなく傾倒する(図5参照)。すなわち、突出部129と溝部130とは、係合部154を構成する。なお、別の実施の形態として、突出部129がアンダー部材118に、溝部130がロータ113に、それぞれ設けられていても良い。
図5は、操作入力装置101を底面側から見た断面図である。操作ノブ103は、アッパー部材117とアンダー部材118とが組み付けられて形成される。このとき、ベース114は、アッパー部材117とアンダー部材118との間に挟まれて固定される。ここで、アッパー部材117の内周面に形成されベース114と接触するアッパー接触領域157は、ベース114の表面にフィットするようリング形状に形成されている。同様に、アンダー部材118がベース114と接触するアンダー接触領域158も、ベース114の表面にフィットするようリング形状に形成されている。
操作ノブ103は、正面側から見て左右に曲面部156を有している。曲面部156は、軸部134の軸方向から見ると、軸部134を中心とする円弧Qを描く形状に形成されている。また、スライド体150を構成するプッシュノブ116は、アッパー部材117の内周面にフィットする球面形状に形成されている。
スライド体150を構成するスライダ115は、意匠面102に対する操作者の押下操作によって、スライドガイド142(図2参照)に沿って基板111に近づくようホルダ112の軸Xの方向にスライドする。このスライド動作によって、スライダ115の接触部115bは、タクトスイッチ124をクリックする。クリック動作後、スライダ115は、タクトスイッチ124に内蔵された板バネ(図示せず)の付勢力により、基板111から離反する方向にスライドする。なお、別の実施の形態として、スライダ115と基板111との間に、スライダ115を基板111から離反させる向きに付勢するスプリングを配置してもよい。
図5に示すように、ホルダ112やスライダ115の内側には、軸X方向に延びる細長い空間が設けられている。このため、照明用LED121から発せられる光は、プッシュノブ116まで到達し、照明部109(図1参照)を通過して、「L」や「R」等の文字(図1参照)を光らせる。
図6は、操作入力装置101を左側面側から見た断面図である。スライダ115には、プッシュノブ116のDUALポインタ107およびAUTOポインタ108に対応する位置に、導光部材保持孔143が形成される。導光部材保持孔143には、軸Xに長さ方向が向くように、導光部材123が配置される。導光部材123は、基板111に配置されたポインタ用LED122からの光を一方の端面で受けると、他方の端面にまでその光を導く部材である。このため、導光部材123は、ポインタ用LED122からの光をDUALポインタ107やAUTOポインタ108まで導き、これらを光らせる。
本実施の形態の操作入力装置101は、以上に述べたように各部が組み合わさって構成される。その結果、操作者は、操作入力装置101の操作ノブ103を操作するだけで、操作対象を変更し、かつ、操作対象に対する目標温度の設定を別個独立に行うことができる。その操作について、以下に述べる。
図7は、操作入力装置101の回転動作を示す、一部を破断させた正面図である。前述したように、操作ノブ103は、アッパー部材117とアンダー部材118とが組み付けられて構成されている。そして、アンダー部材118に設けられた溝部130には、ロータ113に設けられた突出部129が入り込んでいる(図7(a))。溝部130は、ホルダ112の軸X方向に延びており、このため、アンダー部材118が軸回り方向Rに動くと、溝部130は突出部129に干渉する。ここで、突出部129が設けられているロータ113は、ホルダ112(図2参照)の小径部131の外周に、回転自在に配設されている。このため、アンダー部材118とロータ113とは、軸回り方向Rに連動する(図7(b))。一方、ホルダ112は、基板111(図2参照)に固定されている。また、スライダ115(図2参照)やプッシュノブ116は、ベース114や操作ノブ103と係合していない。このため、意匠面102は、操作ノブ103の回転動作に連動しない(図7(b))。
フォトインタラプタ125では、操作ノブ103の回転によりスリット127を通過する検出光(図示せず)が変化する。フォトインタラプタ125は、検出光の位相を90度変えるよう二つ設けられているため、フォトインタラプタ125から出力される電気信号によって、操作ノブ103の回転量だけでなく、操作ノブ103が軸回り方向Rのどちら向きに回転したかを把握することもできる。
図8は、ベース114の動きを示す平面図である。なお、説明の便宜上、図8の平面図では、ベース114を180度回転させて示している。前述したように、ベース114に設けられた軸受孔140には、ホルダ112に設けられた軸部134が嵌合する。このため、ベース114は、ホルダ112に傾倒方向Tに傾倒自在に軸支される。
ベース114の内周面には、回転規制突部136が突設されている(図8(b)及び図8(c)にのみ、点線で示す)。回転規制突部136は、概ね三角形形状の平板部材であり、ベース114の中心に向かうように配置されている。この回転規制突部136の底辺は、ベース114の中心から外側に向けて高くなる斜辺136aとなっている。一方、ホルダ112の大径部132の外周面には、回転規制突部136の下方にあたる位置に、回転規制受部135が突設されている。回転規制受部135は、上方に向けられた平坦な当接面135aを有する。当接面135aは、ベース114が傾倒することで下方に下がった回転規制突部136の斜辺136aと当接する。その結果、ベース114の傾倒動作は所定の位置で規制される。
図9は、操作入力装置101の傾倒動作を示す、底面側から見た断面図である。前述したように、ベース114は、アッパー部材117とアンダー部材118とに挟まれている。このため、ベース114が傾倒方向Tに傾倒すると、操作ノブ103も連動して傾倒する。ここで、アンダー部材118に設けられた溝部130は、ホルダ112の軸X方向に向けて形成されているため、操作ノブ103が傾倒方向Tに傾倒しても、ロータ113に設けられた突出部129によって操作ノブ103の傾倒動作が干渉されることはない。さらに、プッシュノブ116の表面は、アッパー部材117の内周面にフィットする球面形状となっているため、プッシュノブ116によっても操作ノブ103の傾倒動作が干渉されることはない。
また、操作ノブ103には、軸部134を中心とする正円形状を描く曲面部156を有している。このため、操作ノブ103が傾倒しても、操作ノブ103とインスツルメントパネル101aとの間隔が広がることがなく、開口部101bからゴミ等の異物が侵入しにくい。また、インスツルメントパネル101aに配置した操作入力装置101に対し、操作ノブ103を傾倒する操作を行っても、その操作によって外観が変化することなく、見栄えも良い。
一方、アッパー部材117のアッパー接触領域157、及び、アンダー部材118のアンダー接触領域158は、いずれもベース114の表面にフィットするリング形状に形成されている。このため、操作ノブ103は、ベース114に対して回転することができる。ところで、操作ノブ103を傾倒させると、操作ノブ103の回転軸とロータ113の回転軸がずれることになる。このため、操作ノブ103が傾倒している状態では、操作ノブ103に備わる溝部130に対し、ロータ113に備わる突出部129が鋭角方向に接することがある。この場合でも、突出部129の先端は後端よりも径が大きい半円球形状に形成されているため、突出部129の先端および後端が溝部130の内壁に引っかかることがなくなる。その結果、操作者は、操作ノブ103をスムーズに回転させることができる。
ここで、再び図8を参照する。ベース114から垂下する突設部材138の先端には、凹形状に形成された操作部137が形成されている。そして、この凹形状には、揺動スイッチ126の揺動体126aが入り込んでいる(図8(b))。このため、ベース114が傾倒方向Tに揺動することによって揺動体126aは揺動し、揺動スイッチ126から出力される電気信号が変化する。すなわち、操作部137と揺動スイッチ126とは、ベース114の傾倒を検知する傾倒検知部159を構成する。このように、ベース114の傾倒移動を1つのスイッチで検知することが可能であり、部品点数を少なくできる。
ところで、揺動スイッチ126は、ホルダ112の外周上面に形成された凹部133内に位置付けられる。また、操作部137を有する突設部材138も、図2に基づいて前述したように、この凹部133内に位置付けられている。すなわち、傾倒検知部159は、凹部133内に位置付けられている。そして、凹部133によって、傾倒検知部159をロータ113の内側に配置することができ、ひいては操作入力装置101全体の小型化を図ることが可能になる。
図10は、傾倒保持機構106の動きを示す正面図である。なお、この図10は、傾倒保持機構106の動きを図6の矢印Aの方向から見た矢視図でもある。ベース114の内周面に設けられている傾倒保持部材139は、右片139aと左片139bとこれらを接続する接続片139cとを有するコ字形状を有していて、下方に開くよう設けられている。傾倒保持部材139の内側で接続片139cには、四つの球状突起160が列状に設けられている。
傾倒保持部材139の内側には、ホルダ112に設けられたバネ受孔151、スプリング152及びスチールボール153が位置付けられる。スチールボール153は、球状突起160の間に列状に形成される三つのボール保持凹部161のうちのいずれかに当接する。そして、スチールボール153は、スプリング152に付勢されて傾倒保持部材139を動かないように保持する。すなわち、傾倒保持部材139とスプリング152とスチールボール153とは、ホルダ112に対するベース114の傾倒状態を保持する傾倒保持機構106を構成する。
図10(a)には、操作ノブ103が中立状態にある場合の傾倒保持機構106が示されている。ここで、操作者が操作ノブ103を右方向に傾倒させるよう操作ノブ103に力を加えると、球状突起160はスチールボール153を押し下げ、ベース114全体が右方向に傾倒し、スチールボール153は、左隣のボール保持凹部161に嵌まり込む。この状態で、傾倒保持部材139は、スチールボール153に保持される。その結果、操作ノブ103は、右方向に傾倒されたままの状態が維持される(図10(b))。操作ノブ103が左方向に傾倒された場合も、操作ノブ103は、傾倒保持機構106によって左方向に傾倒されたままの状態が維持される。このように、傾倒保持機構106によって、操作ノブ103は、左傾倒状態、中立状態、右傾倒状態のいずれかの状態が維持される。
操作者は、空調装置における運転席側や助手席側の目標温度を設定するために、以上に述べたような動きをする操作ノブ103に力を加えて左右いずれかの方向に倒し、その状態で操作ノブ103を軸回り方向Rの方向に回転させる。操作ノブ103が傾倒されることで、揺動スイッチ126からは、操作ノブ103が傾倒された方向に対応した電気信号が出力される。また、操作ノブ103が回転されることで、フォトインタラプタ125からは、操作ノブ103の回転量及び回転の向きに対応した電気信号が出力される。これらの電気信号を受信した空調装置のコントローラ(図示せず)は、受信した電気信号に応じた処理を行い、運転席側の目標温度と助手席側の目標温度とを別個独立に変化させ、その変化後の目標温度に応じた空調制御を行う。また、空調装置のコントローラは、タクトスイッチ124から送信される電気信号に応じて、AUTOモードへのモード切替を行い、AUTOモードであれば設定された温度に対応して風の温度、風量、および、送風方向の自動制御を行う。このように、本実施の形態の操作入力装置101によれば、操作ノブ103を動かすことにより、ベース114を傾倒する操作とロータ113を回転する操作とを独立させて行うことが出来る。すなわち、本実施の形態の操作入力装置101によれば、一つの操作ノブ103のみで、操作対象を変更でき個々の操作対象に対する設定を別個独立に行うことができる。また、本実施の形態の操作入力装置101によれば、操作対象の選択と個々の操作対象に対する設定とを操作ノブ103から手を離すことなく、一連の切替操作によって行うことが出来る。さらに、本実施の形態の操作入力装置101では、操作ノブ103は傾倒保持機構106によって操作した傾倒位置に保持されるため、操作者が操作ノブ103を傾倒位置に保持しておく動作は不要であり、操作ノブ103の回転操作を簡単に力を入れることなく行うことができる。
なお、操作入力装置101は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更、追加を行って実施することが可能である。例えば、本実施形態においては、フォトインタラプタ125を用いて回転検知部128を構成しているが、これに限定されるものではなく、例えば、揺動スイッチ、あるいは、ロータ113側に可動接点、基板111側に複数の固定接点を設けて構成するような周知の回転検知機構を採用してもよい。また、本実施形態においては、傾倒検知部159を1つの揺動スイッチ126を用いて構成しているが、これに限定されるものではなく、例えば、2つのプッシュスイッチ、あるいは、ベース114の操作部137側に可動接点、基板111側に複数の固定接点を設けて、ベース114の操作部137の傾倒を検知するようにしてもよい。また、本実施形態においては、ホルダ112に対するベース114の傾倒状態を保持する傾倒保持機構106を設けているが、これに代えて、例えば、傾倒状態の操作ノブ103から操作者が手を離すと操作ノブ103を中立位置に自動復帰させる自動復帰機構を設けるようにしてもよい。この自動復帰機構は、本実施形態の傾倒保持部材139の球状突起160及びボール保持凹部161に代えて、傾倒保持部材139に中立位置を頂点とする逆V字状の凹部を設けることで、簡単に構成することが可能である。
なお、上記の説明では、操作入力装置101を空調装置における目標温度を設定する操作に用いる場合について述べた。本実施の形態の操作入力装置101は、このような用途だけでなく、例えば、運転席側と助手席側とのそれぞれに吹き出される空調装置からの風量調節(ファン)操作や、吹き出し口からの送風方向の操作の用途に用いてもよい。
また、操作入力装置の用途は、運転席側と助手席側とを個別に調整するだけに限らず、例えば、操作ノブが中央位置では目標温度設定操作、操作ノブを左に傾倒させると風量調節操作、右に傾倒させると吹き出し口からの送風方向の操作、というように、全く独立した別の操作対象を、操作ノブの傾倒方向にそれぞれ対応させるようにして構成してもよい。この場合、操作ノブの傾倒方向に対応する操作対象を示すマーク等を、操作ノブの左右のインスツルメントパネル上、または、操作ノブの意匠面に標記するようにしてもよい。また、操作ノブの傾倒によって現在選択されている操作対象の操作画面を車内に設けられたディスプレイ上に表示するようにしてもよい。さらに、操作入力装置は、空調装置を操作するものに限定されるものではなく、複数の操作対象を有して複数の回転式操作入力装置が必要なあらゆる機器に採用可能である。
101…操作入力装置、103…操作ノブ、106…傾倒保持機構、111…基板(基体)、112…ホルダ、112a…固定端面(一端側)、112b…開放端面(他端側)、113…ロータ、114…ベース、117a…リング穴、124…タクトスイッチ、126…揺動スイッチ、126a…揺動体、128…回転検知部、129…突出部、130…溝部、131…小径部、132…大径部、133…凹部、134…軸部、136…回転規制突部、137…操作部、150…スライド体、154…係合部、159…傾倒検知部、T…傾倒方向、R…軸回り方向(回転方向)