従来の技術に示されるように、キャニスタがパージを必要とした時点で蒸発燃料の処理を目的としてエンジンを始動させた場合、燃費の悪化が避け難い問題となる。とりわけ、外部電源からの適宜の充電が可能に構成されたプラグインハイブリッド車両のように、比較的長期にわたってエンジンを始動させることなく走行可能に構成された車両においては、この種の燃費の悪化がより顕在化し易い。即ち、従来の技術には、燃費の悪化を生じさせることなく蒸発燃料を処理することが困難であるという技術的な問題点がある。
本発明は、係る問題点に鑑みてなされたものであり、蒸発燃料を処理するにあたっての燃費の悪化を抑制し得るハイブリッド車両の制御装置を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するため、本発明のハイブリッド車両の制御装置は、各々が動力源として機能する内燃機関及び少なくとも一の電動機と、前記内燃機関の燃料が蒸発してなる蒸発燃料を吸着可能な吸着手段を含み、該吸着された蒸発燃料を前記内燃機関の吸気系へ還流させることが可能な蒸発燃料処理装置とを備え、走行モードとして、第1のモードと、該第1のモードと較べて内燃機関の始動頻度が低い第2のモードとを選択可能なハイブリッド車両の制御装置であって、前記吸着手段における前記蒸発燃料の吸着量を特定する特定手段と、前記走行モードとして前記第2のモードが選択されている場合に、前記特定された吸着量に応じて前記走行モードを前記第1のモードに切り替える切り替え手段とを具備し、前記切り替え手段は、前記特定された吸着量が所定値以上である場合に前記走行モードを切り替え、前記第2のモードは、前記電動機の電源となる蓄電手段の蓄電残量が所定値未満となった場合を除き前記電動機の動力のみによるEV走行を維持するように構築された走行モードであり、前記第1のモードは、(1)前記ハイブリッド車両の要求出力が第1の基準値よりも高い場合及び(2)前記電動機の電源となる蓄電手段の蓄電残量が第2の基準値未満である場合の少なくとも一方において前記内燃機関の始動が要求されるように構築された走行モードであり、前記ハイブリッド車両の制御装置は、前記走行モードの切り替えがなされる場合に、前記特定された吸着量に基づいて前記第1の基準値及び前記第2の基準値のうち少なくとも一方を設定する基準値設定手段を更に具備することを特徴とする。
ハイブリッド車両は、動力源の動力を駆動輪に伝達する各種の動力伝達装置(例えば、単一又は複数の遊星歯車機構等を含み得る)と内燃機関及び電動機(例えば、モータやモータジェネレータ等の形態を採り得る)との物理的、機械的又は電気的な接続態様の如何に応じて各種の走行モードを選択可能に構成される。ここで、本発明に係る「走行モード」とは、ハイブリッド車両の走行条件(例えば、要求車速、要求出力、要求駆動力、要求トルク、或いは電動機の電源として機能するバッテリ等各種蓄電手段の充電状態等)と動力源の選択態様及び制御態様とを、一対一、一対多、多対一又は多対多に対応付けてなる制御ロジックを指す。
この種の走行モードは、実践的にみればハイブリッド車両における物理的、機械的又は電気的な各種の制約を受け得るにせよ、基本的には如何様に設定することも可能である。例えば、ハイブリッド車両は、選択可能な走行モードとして、電動機の電源として機能する各種蓄電手段の蓄電残量が閾値未満である場合等に限って内燃機関を始動させ、内燃機関を言わば補助的な動力源として使用することによって、電動機の動力のみを使用したEV走行を可及的に維持する走行モード(以下、適宜「EVモード」と称する)や、このような蓄電残量の制約に替えて又は加えて、電動機に要求される出力或いは回転速度が、電動機の物理的又は電気的な動作限界を規定する、或いはこれら各種制約が考慮されるにせよされないにせよ制御上の一基準値として設定される各種の上限値を超える場合(近未来的に超えることが避け難い旨の判断がなされる場合を含む)等において内燃機関を始動させると共に、電動機と駆動輪との間でなされる動力の入出力により内燃機関を可及的に高効率な(端的には、燃費率が良好な)動作領域で動作させる走行モード(以下、適宜「HVモード」と称する)等を含んでもよく、またこれらの技術因子が適宜複合された走行モードを含んでいてもよい。本発明のハイブリッド車両では、このような走行モードとして少なくとも第1のモードと第2のモードとを備える。
ここで、第1のモード及び第2のモードは、少なくとも内燃機関の始動頻度について、第1のモードの方が第2のモードよりも高くなるように、その相互関係が設定されている(従って、上記HVモードを第1のモード、上記EVモードを第2のモードとして夫々設定することもできる)。即ち、第2のモードは、第1のモードと較べ、環境負荷(HC、CO2或いはNOx等の排出による環境への影響を指す)が小さく、また走行距離数に対する燃料消費量(即ち、所謂「燃費」である)が小さい走行モードである。また、内燃機関が機関停止状態にある場合、ハイブリッド車両は実質的に電動機を動力源とするよりないから、内燃機関の始動頻度は、ハイブリッド車両の走行期間全体におけるEV走行がなされる期間の割合と相関する。より具体的には、当該割合が大きい程内燃機関の始動頻度は低くなる。従って、ハイブリッド車両の走行パターンを等しくして比較した場合、EV走行が行なわれるEV走行期間は、第2のモードの方が長くなる。
尚、第1及び第2のモード各々の精細な態様については、上記始動頻度に係る要件が満たされる限りにおいて、例えば予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて、ハイブリッド車両の要求性能、仕様又は仕向け等を勘案して決定される、言わば適合的な要素を含み得るものであってよく、少なくとも本発明の本質とは無関係である。例えば、EV走行が可能であるか否かを制御上判断するにあたって参照される各種の物理量、制御量又は指標値が、これら各モード間で相違していてもよい。
より具体的に例示すると、例えば第1のモードが、車速がV(km/h)以上で内燃機関が始動するように構築されている場合、第2のモードは、車速がV+α(α>0)以上の領域で内燃機関が始動するように構築されていてもよい。また、第1のモードが、電動機の電源として機能するバッテリ等の蓄電手段における蓄電残量がA未満となる領域で内燃機関が始動するように構築されているならば、第2のモードは、蓄電残量がA−β(β>0)未満の領域で内燃機関が始動するように構築されていてもよい。或いは、第1のモードが、ハイブリッド車両の要求出力がP(kw)以上で内燃機関が始動するように(即ち、電動機の制御上の上限出力がP(kw)であることと実質的に等価である)構築されている場合、第2のモードは、要求出力がP+γ(γ>0)以上の領域で内燃機関が始動するように(即ち、電動機の制御上の上限出力がP+γ(kw)であることと実質的に等価である)構築されていてもよい。また更に、EV走行が可能であるか否かを制御上判断するにあたって参照される判断指標の種類が、これら各モード間で相違していてもよい。例えば、第2のモードが、上記蓄電残量のみに基づいて内燃機関の始動可否を判断するように構築されている場合、第1のモードは、例えば上記蓄電残量に加えて上記要求出力を判断指標とするように構築されていてもよい。このような場合、各判断指標に係る基準値が同一であるとしても、内燃機関の始動頻度は、第1のモードの方が確実に高くなる。
一方、本発明のハイブリッド車両には、蒸発燃料を吸着可能な(尚、「吸着可能」とは、少なくとも一時的に対象物を捕捉可能であることを包括する概念であって、その物理的、機械的、電気的又は化学的態様は自由であり、従って場合によっては一般的に「吸着」なる言葉から連想される概念を超越していてもよい趣旨である)、例えばキャニスタ(キャニスタ内に設置される吸着材等を含む)等の吸着手段を含む蒸発燃料処理装置が備わる。この蒸発燃料処理装置は、好適な一形態として内燃機関の稼動時に吸気系に形成される負圧を利用して、吸着手段に吸着された蒸発燃料を例えば別途外界から導かれる大気等と共に内燃機関の吸気系に還流(即ち、パージ)させ得る構成となっている。尚、補足すると、蒸発燃料は結局のところ、内燃機関での燃焼反応に供する以外好適な処理の方法はないから、蒸発燃料処理装置は、蒸発燃料を内燃機関の稼動時に吸気系に還流させ得る構成を採るが、その物理的、機械的、電気的又は磁気的な構造は特に限定されず、負圧により半ば自動的に開閉するVSV(Vacuum Switching Valve)等の弁装置を有していてもよいし、適当な負圧が生じた時点で開弁するように適宜電気的に制御される弁装置等を有していてもよい。
このような蒸発燃料処理装置を備える場合、吸着手段に吸着された蒸発燃料は、内燃機関が稼動状態にあれば適宜燃焼室内での燃焼反応に供されるものの、内燃機関が機関停止状態にある場合には、その吸着量が増大し続けることとなる。この際、吸着量が、例えば吸着手段の構成或いは構造に応じて定まる限界値を超えた(即ち、飽和状態を超えた)場合等には、例えば燃料タンク、吸着手段或いはこれらを連通する管路部分等の内圧が過度に上昇すること等に起因して、蒸発燃料が大気に放出され、環境負荷を増大させるといった事態を招来しかねない。このような問題は、内燃機関の始動頻度が相対的に低い第2のモードにおいて顕著に生じ得る問題である。特に、環境負荷への影響を低減せしめるべく第2のモードを選択している場合には、全くの逆効果が得られる点において極めて望ましくない。
ところが、このような蒸発燃料の大気放出を抑止すべく、例えば当該内圧や吸着量等が過度に増大した場合等において内燃機関を始動させた場合、内燃機関は結局蒸発燃料の処理を目的として(即ち、蒸発燃料を燃焼させるためだけに)始動することとなって、先の解決すべき課題で述べた如く、自明的に燃費の悪化が生じることとなる。そこで、このような燃費の悪化を抑制しつつ蒸発燃料の大気放出を抑止するため、本発明のハイブリッド車両の制御装置は以下の如くに各手段が機能する。
本発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、その動作時には、例えばECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る特定手段により、吸着手段における蒸発燃料の吸着量が特定される。尚、本発明に係る「特定」とは、特定対象(本発明では、吸着量)又は特定対象と相関する物理量、制御量又は指標値(例えば、吸着手段のベーパ濃度、内燃機関が非稼動である時間或いは外気温等の環境条件等)を、所定の検出手段を介して直接的に又は間接的に検出すること、当該検出手段を介して直接的に又は間接的に検出された特定対象と相関する物理量、制御量又は指標値に基づいて予め然るべき記憶手段等に記憶されたマップ等から該当する値を選択すること、この種の特定対象と相関する物理量、制御量若しくは指標値又は選択された値等から、予め設定されたアルゴリズムや計算式に従って導出すること、或いはこのように検出、選択又は導出された値等を、例えば電気信号等の形で単に取得すること等を包括する広い概念である(例えば、推定するといった概念を含む趣旨である)。係る概念の範囲において、特定手段は如何にして吸着量を特定してもよい。
一方、本発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、その動作時には、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る切り替え手段が、走行モードとして第2のモードが選択されている場合に、この特定された吸着量に応じて走行モードを第1のモードに切り替える。尚、「吸着量に応じて切り替える」とは、走行モードが第1のモードと第2のモードとの間で選択的に切り替えられる点に鑑みれば、好適な一形態として、然るべき基準値を境としてこれらを二値的に切り替えることを含む趣旨である。但し、係る基準値は必ずしも固定値である必要はなく、ハイブリッド車両の環境条件や走行条件等に応じて可変であってもよい。
ここで、先述したように、第1のモードは、内燃機関の始動頻度が第2のモードよりも高く設定された走行モードであるから、第2のモードから第1のモードへ走行モードの切り替えがなされた場合には、必然的に内燃機関が始動する確率が高くなる。内燃機関が始動すれば、先述したように吸着手段に吸着された蒸発燃料を好適に処理することができるから、蒸発燃料の大気放出は未然に防がれ得る。
ここで特に、このような切り替えがなされたところで、内燃機関は、必ずしも切り替え後間を置かずして始動する訳ではない。即ち、内燃機関は、あくまで別途ハイブリッド車両の走行条件等により発生する始動要求に応じて始動する(いずれの走行モードであってもEV走行は可能である)のであり、切り替え手段による制御は、単にその始動要求が生じる確率を高める作用を有するに過ぎない。先に述べたように、第1のモードは、第2のモードとの相対関係が遵守される限りにおいて高い自由度を有しており、内燃機関を、ハイブリッド車両のシステム上都合の良い時点、或いは駆動輪への動力供給を要求された時点等において始動させることも容易にして可能である。従って、本発明によれば、内燃機関を始動させるにあたっての燃費の悪化を、少なくとも蒸発燃料の処理要求と内燃機関の始動要求とを直接的にリンクさせる技術思想に基づいた如何なる既存技術と比較しても抑制することが可能となるのである。即ち、本発明に係る技術思想は、上記既存の技術に係る技術思想と、その本質部分において明らかに異なっており且つそれらに対し明らかに優れるものである。
補足すれば、このように本発明が既存技術とその本質部分において相違し且つこれらに対し顕著な優位性を有する点に鑑みれば、本発明は、これら既存技術と併用することすら可能となる。即ち、走行モードの切り替えは、蒸発燃料の処理に直接的な関係はない(蒸発燃料が処理されない、という意味ではない)から、かような走行モードの切り替えがなされたとして、吸着手段がその飽和状態を超える可能性は、少なくとも完全には排除され難い。このような点を考慮すれば、好適な一形態として、走行モードの切り替え後、内燃機関が然るべき期間内に(好適な一形態として、例えば吸着手段が飽和状態を超える、或いは超えると予想される等、蒸発燃料の大気放出が生じる可能性が実践上無視し得ない程度に高まる時点までに)始動しない場合には、半ば強制的に(即ち、蒸発燃料の処理を目的として)内燃機関を始動させてもよい。
また、本発明のハイブリッド車両の制御装置において、切り替え手段は、特定された吸着量が所定値以上である場合に走行モードを切り替える。
このように吸着量に対し、閾値としての所定値を設けることにより、比較的簡便に本発明に係る実践上の利益を享受することができる。
また、本発明のハイブリッド車両の制御装置において、第2のモードは、電動機の電源となる蓄電手段の蓄電残量が所定値未満となった場合を除き電動機の動力のみによるEV走行を維持するように構築された走行モードである。
即ち、第2のモードは、上述したEVモードに相当する走行モードとして構築され、電源の蓄電残量が所定値以上(尚、「以上」とは境界値の設定如何により容易に「より大きい」と置換し得る概念であって、境界値がいずれの領域に含まれるかは本発明の本質に影響を与えない)である限りにおいて可及的にEV走行が維持される。従って、環境負荷を最小限に抑制することが可能となる。
更に、本発明のハイブリッド車両の制御装置において、第1のモードは、(1)ハイブリッド車両の要求出力が第1の基準値よりも高い場合及び(2)電動機の電源となる蓄電手段の蓄電残量が第2の基準値未満である場合の少なくとも一方において内燃機関の始動が要求されるように構築された走行モードであり、ハイブリッド車両の制御装置は、走行モードの切り替えがなされる場合に、特定された吸着量に基づいて第1の基準値及び第2の基準値のうち少なくとも一方を設定する基準値設定手段を更に具備する。
即ち、第1のモードは、上述したHVモードに相当する走行モードとして構築され、例えばハイブリッド車両の要求出力が第1の基準値よりも高い(或いは近未来的に高くなると推定される)場合、又は蓄電手段の蓄電残量が第2の基準値未満である場合、或いはその両方が満たされる場合に、内燃機関の始動が要求される。従って、例えば内燃機関の動作効率が低くなり易い低車速軽負荷領域等においてEV走行を行い、且つ例えば電動機の動力のみでは要求出力を満たし難い高負荷領域等では内燃機関の動力と電動機の動力を協調的に制御して内燃機関を適当な(例えば、燃費率が最小となる)動作点で動作させつつ要求出力を満たす等といった、経済性能、環境性能及び動力性能等を含む総合的な性能において優れた走行態様がドライバに提供され得る(補足すれば、上記EVモードは、その性質上、相対的にみて動力性能が犠牲になり易い)。
また、蓄電残量が第2の基準値未満である場合において内燃機関の始動が要求される場合、蓄電残量が過度に低下することによる各種の不利益(例えば、蓄電手段を共用する各種の電装系の動作が阻害される等の不利益)の発生も防止される。尚、第2のモードが、蓄電残量が所定値未満となった場合に内燃機関の始動が要求されるように構築されている場合、蓄電残量について設定されるこの第2の基準値とは、係る所定値よりも大きい値であるのが望ましい。
ここで、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、例えばECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る基準値設定手段を備えており、走行モードの切り替えがなされるに際して(切り替えに先んじてもよいし、切り替え後になされてもよい)、特定された吸着量に基づいて、第1の基準値或いは第2の基準値(第1のモードの構築態様による)が設定される構成となっている。
即ち、特定された吸着量に応じて第1或いは第2の基準値(好適にはその両方)が二値的、段階的に又は連続的に可変である。このため、例えば吸着量が少ない(とは言え、実践的にみれば、走行モードを第1のモードに切り替えるべき旨の判断がなされる程度には多い)程、第1の基準値(尚、第1の基準値とは、実質的には電動機の制御上の上限出力と等価である)を相対的に大きく(基準値に対する減算項としての補正量を小さくすることを含む)、また第2の基準値を相対的に小さく(基準値に対する加算項としての補正量を小さくすることを含む)する(言い換えれば、吸着量が少ない程内燃機関を始動させ難く(即ち、吸着量が多い程内燃機関を始動させ易く)する)等、内燃機関の始動頻度を、蒸発燃料の大気放出を招来しない範囲で的確に設定することが可能となり、第1のモードにおいても可及的にEVモードを維持することが可能となる。
本発明のハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記特定された吸着量に基づいて、前記走行モードの切り替えがなされた後の前記第1のモードの継続期間を設定する継続期間設定手段と、該設定された継続期間が経過した場合に前記走行モードを前記第2のモードに復帰させる復帰手段とを更に具備する。
この態様によれば、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る継続期間設定手段により、蒸発燃料の処理要求に応じた走行モードの切り替え(即ち、切り替え手段による走行モードの切り替え)がなされた後の第1のモードの継続期間が設定される。また、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る復帰手段により、この設定された継続期間が経過した後、走行モードが再び第2のモードに復帰せしめられる。
従って、この態様によれば、内燃機関の始動頻度の低い第2のモードにより、蒸発燃料の処理に際して燃費の悪化を抑制するといった効果を維持しつつ、可及的にEV走行を継続することが可能となり、環境負荷を可及的に低減することが可能となる。
尚、この際、他の要求により第2のモードを選択すべきでない旨の判断がなされる場合には、第2のモードへの復帰が延期又は中止されてもよい。
また、継続期間設定手段により設定される継続期間とは、直接的又は間接的に係る継続期間を規定し得る限りにおいて必ずしも時間そのものでなくてよい。例えば、継続期間設定手段は、第1のモードが選択された後の、必要パージ量、積算空気量、内燃機関の稼働時間(連続稼動時間であっても積算稼動時間であってもよい)、航続距離、内燃機関の冷却水温が所定値以上である期間、或いは燃料消費量等として、継続期間を設定してもよい。
本発明のハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記ハイブリッド車両は、所定の外部電源から供給される外部電力により充電可能に構成され且つ前記電動機の電源として機能する蓄電手段を備える。
この態様によれば、例えばハイブリッドシステム専用のバッテリ(例えば、1〜2V程度の単セルが数百個直列に配設された出力数百Vの充電可能なバッテリ等の態様を採り得る)等、電動機の電源として機能する蓄電手段が、外部電源(例えば家庭に設置された設置型の又は可搬性を有する各種電源(好適な一形態として、例えば家庭用コンセント及び専用又は汎用の充電プラグ等を適宜含む)、或いは市街地又は郊外地に、専用又は汎用のインフラ設備等として設置された(好適な一形態として、例えばガソリンスタンドやそれに類するインフラ施設等に付設されていてもよい)各種電源等を指す)から供給される外部電力(即ち、ハイブリッド車両内部で生成される電力とは異なる)により適宜に充電され得る構成を有しており、ハイブリッド車両が、所謂プラグインハイブリッド車両として構成される。
この種のプラグインハイブリッド車両においては、蓄電手段の蓄電残量を、ハイブリッド駆動装置による電力生成(例えば、電動機がモータジェネレータとして構成される場合に、車両減速時になされる電力回生、或いは、電動機が主として動力源として機能するモータジェネレータと、主として発電機として機能するモータジェネレータとの少なくとも二種類存在する場合に、後者により内燃機関の動力の一部を利用する形でハイブリッド車両の走行中になされる電力生成)と較べて遥かに自由に制御可能であり、必然的にEV走行を相対的に長期にわたって継続可能である。
また、ドライバの意思により適宜蓄電残量の回復を図り得る点に鑑みれば、プラグインハイブリッド車両においては、より高い要求出力及び車速の領域で、またより低い蓄電残量の領域で、EV走行を継続させることが可能となり得る(即ち、EV走行を選択可能な領域が、通常のハイブリッド車両よりも拡大し得る)。即ち、プラグインハイブリッド車両においては、主たる走行モードとして第2のモードを選択することが可能となり得、内燃機関の始動頻度が極めて低下し易いため、蒸発燃料の処理がより重要な意味を持つ。即ち、本発明のハイブリッド車両の制御装置は、この種のプラグインハイブリッド車両に対して顕著に効果的である。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
<発明の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両10の構成について説明する。ここに、図1は、ハイブリッド車両10の構成を概念的に表してなる模式的なブロック図である。
図1において、ハイブリッド車両10は、減速機構11及び車輪12、並びにECU100、エンジン200、モータジェネレータMG1(以下、適宜「MG1」と略称する)、モータジェネレータMG2(以下、適宜「MG2」と略称する)、動力分割機構300、PCU400、バッテリ500、充電プラグ600、リレー回路700及び燃料供給システム800を備えた、本発明に係る「ハイブリッド車両」の一例である。
減速機構11は、エンジン200及びモータジェネレータMG2から出力された動力に応じて回転可能に構成された、デファレンシャルギア(不図示)等を含んでなるギア機構であり、これら動力源の回転速度を所定の減速比に従って減速可能に構成されている。減速機構11の出力軸は、ハイブリッド車両10の車軸(符号省略)に連結されており、これら動力源の動力は、回転速度が減速された状態で当該車軸及び当該車軸に連結された、駆動輪としての車輪12に伝達されるように構成されている。
尚、減速機構11の構成は、エンジン200及びモータジェネレータMG2から供給される動力を、その動力に基づいた軸体の回転速度を減速しつつ車軸に伝達可能である限りにおいて何ら限定されず、単にデファレンシャルギア等を含んでなる構成を有していてもよいし、複数のクラッチ及びブレーキ並びに遊星歯車機構により構成される所謂リダクション機構として複数の変速比を得ることが可能に構成されていてもよい。
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、ハイブリッド車両10の動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明に係る「ハイブリッド車両の制御装置」の一例である。ECU100は、ROMに格納された制御プログラムに従って、後述する走行モード切り替え処理を実行することが可能に構成されている。
尚、ECU100は、本発明に係る「特定手段」、「切り替え手段」、「基準値設定手段」、「継続期間設定手段」及び「復帰手段」の夫々一例として機能するように構成された一体の電子制御ユニットであり、これら各手段に係る動作は、全てECU100によって実行されるように構成されている。但し、本発明に係るこれら各手段の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれら各手段は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
エンジン200は、ハイブリッド車両10の動力源の一つとして機能するように構成された、本発明に係る「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンである。エンジン200の詳細な構成は、後に図2を参照する形で詳述する。
モータジェネレータMG1は、バッテリ500を充電するための或いはモータジェネレータMG2に電力を供給するための発電機として、更にはエンジン200の動力をアシストする電動機として機能するように構成された電動発電機である。
モータジェネレータMG2は、本発明に係る「電動機」の一例たる電動発電機であり、エンジン200と共にハイブリッド車両10の動力源の一つとなる電動機として、或いはバッテリ500を充電するための発電機として機能するように構成されている。
尚、これらモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2は、例えば同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える。但し、他の形式のモータジェネレータであっても構わない。
動力分割機構300は、エンジン200の動力をMG1及び車軸へ分配することが可能に構成された遊星歯車機構である。尚、動力分割機構300の構成は公知の各種態様を採り得るため、ここではその詳細な説明を省略するが、簡略的に説明すると、動力分割機構300は、中心部に設けられたサンギアと、サンギアの外周に同心円状に設けられたリングギアと、サンギアとリングギアとの間に配置されてサンギアの外周を自転しつつ公転する複数のピニオンギアと、後述するクランクシャフト205の端部に結合され、各ピニオンギアの回転軸を軸支するプラネタリキャリアとを備える。
このサンギアは、サンギア軸を介してMG1のロータ(符合は省略)に結合され、リングギアは、リングギア軸を介してMG2の不図示のロータに結合されている。リングギア軸は、車軸と連結されており、MG2が発する動力は、リングギア軸を介して車軸へと伝達され、同様に車軸を介して伝達される車輪12からの駆動力は、リングギア軸を介してMG2に入力される。係る構成の下、動力分割機構300により、エンジン200が発する動力は、プラネタリキャリアとピニオンギアとによってサンギア及びリングギアに伝達され、エンジン200の動力が2系統に分割される。この際、サンギアに伝達される動力によって、モータジェネレータMG1が正回転側に駆動されると、モータジェネレータMG1により発電が行われる構成となっている。
PCU400は、バッテリ500から取り出した直流電力を交流電力に変換して、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給すると共に、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ500に供給することが可能に構成された不図示のインバータ等を含み、バッテリ500と各モータジェネレータとの間の電力の入出力を、或いは各モータジェネレータ相互間の電力の入出力(即ち、この場合、バッテリ500を介さずに各モータジェネレータ相互間で電力の授受が行われる)を制御することが可能に構成された電力制御ユニットである。PCU400は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によってその動作が制御される構成となっている。
バッテリ500は、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を駆動するための電力に係る電源として機能することが可能に構成された充電可能な蓄電池であり、本発明に係る「蓄電手段」の一例である。ここで、バッテリ500は、ハイブリッド車両10の車外に設置される外部電源20により、適宜充電可能に構成されている。即ち、バッテリ500は、各モータジェネレータの発電作用により生じる電力の他に、外部電源20からの電力供給によっても充電される構成となっており、ハイブリッド車両10は、所謂プラグインハイブリッド車両として構成されている。
バッテリ500にはSOCセンサ510が付設されている。SOCセンサ510は、バッテリ500のSOC(State Of Charge:充電状態)を検出可能に構成されたセンサである。SOCセンサ510は、バッテリ500のSOCを、満充電状態を100(%)、完全放電状態を0(%)として規格化されたSOC値(以下、単に「SOC」と略称する)として検出可能に構成されており、SOCセンサ510と電気的に接続されたECU100に対し、検出されたSOCを一定又は不定の周期で送出する構成となっている。
充電プラグ600は、リレー回路700の入力端子と電気的に接続されており、且つ外部電源20との電気的な接続を可能とする金属製のプラグである。尚、外部電源20は、例えば家庭用の100V電源であってもよいし、市街地や郊外の然るべきインフラ施設(例えば、ガソリンスタンドやサービスステーション)等にインフラ設備として設置されるものであってもよく、その物理的、機械的、機構的、電気的又は化学的態様は何ら限定されない趣旨である。
リレー回路700は、充電プラグ600側の入力端子と、バッテリ500側の出力端子との間の電気的な接続状態を二値的に且つ選択的に切り替え可能なスイッチング回路である(図1では接続されていない状態が示されている)。リレー回路700は、ECU100と電気的に接続されており、当該接続状態は、ECU100により制御される構成となっている。尚、入力端子と出力端子とが電気的に接続された状態において、バッテリ500は充電プラグ600と電気的に接続された状態となり、充電プラグ600が外部電源20と接続されている場合には、半ば自動的にバッテリ500への通電がなされ、充電が開始される構成となっており、入力端子と出力端子とが接続されていない状態において、バッテリ500は充電プラグ600から解放され、充電プラグ600が外部電源20と接続されている又はいないに関係なく、バッテリ500への通電が停止される構成となっている。
燃料供給システム800は、エンジン200に対し、燃料たるガソリンを供給可能に構成された装置である。尚、燃料供給システム800については、後に図2を参照する形で詳述する。
ここで、図2を参照し、エンジン200及び燃料供給システム800の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、エンジン200及び燃料供給システム800の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
図2において、エンジン200は、気筒201内において燃焼室に点火プラグ(符号省略)の一部が露出してなる点火装置202による点火動作を介して混合気を燃焼せしめると共に、係る燃焼による爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクティングロッド204を介してクランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成されている。また、クランクシャフト205の近傍には、クランクシャフト205の回転位置(即ち、クランク角)を検出するクランクポジションセンサ206が設置されている。尚、エンジン200は、紙面と垂直な方向に4本の気筒201が直列に配されてなる直列4気筒エンジンであるが、個々の気筒201の構成は相互に等しいため、図2においては一の気筒201についてのみ説明を行うこととする。
尚、本発明に係る「内燃機関」とは、ガソリンエンジンに限らず、軽油を燃料とするディーゼルエンジン又はアルコールとガソリンとの混合燃料を使用可能なバイフューエルエンジン等の形態を有していてもよい。また、ガソリンエンジンであるにせよ、その気筒配列は、直列型式に限定されない。
エンジン200において、外部から吸入された空気は吸気管207を通過し、吸気ポート210において、インジェクタ212から噴射された燃料と混合されて前述の混合気となる。この際、燃料は、燃料供給システム800により供給される構成となっている。尚、燃料を噴射する噴射手段の形態は、図示するような所謂吸気ポート噴射型インジェクタの構成を採らずともよく、例えば、フィードポンプ或いは他の低圧ポンプにより圧送される燃料の圧力を更に高圧ポンプによって昇圧せしめ、高温高圧の気筒201内部へ燃料を直接噴射することが可能に構成された、所謂直噴インジェクタ等の形態を有していてもよい。
気筒201内部と吸気管207とは、吸気バルブ211の開閉によってその連通状態が制御されている。気筒201内部で燃焼した混合気は排気となり吸気バルブ211の開閉に連動して開閉する排気バルブ213の開弁時に排気ポート214を介して排気管215に導かれる。
一方、吸気管207における、吸気ポート210の上流側には、図示せぬクリーナを経て導かれた吸入空気に係る吸入空気量を調節するスロットルバルブ208が配設されている。このスロットルバルブ208は、ECU100と電気的に接続されたスロットルバルブモータ209によってその駆動状態が制御される構成となっている。尚、スロットルバルブモータ209は、基本的にはドライバの意思を反映したアクセル開度Taに応じたスロットル開度が得られるように、ECU100により駆動制御されるが、その駆動制御に際してドライバの意思が介在する必要は必ずしもなく(無論、ドライバの意思に反することのない範囲である)、言わば自動的にスロットル開度を調整することも可能である。即ち、スロットルバルブ208は、一種の電子制御式スロットルバルブとして構成されている。
排気管215には、三元触媒216が設置されている。三元触媒216は、エンジン200から排出されるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、及びNOx(窒素酸化物)を夫々浄化することが可能に構成された排気浄化装置である。
また、排気管215には、エンジン200の排気空燃比を検出することが可能に構成された空燃比センサ217が設置されている。更に、気筒201を収容するシリンダブロックに設置されたウォータジャケットには、エンジン200を冷却するために循環供給される冷却水(LLC)に係る冷却水温を検出するための水温センサ218が配設されている。
一方、図2において、燃料供給システム800は、燃料タンク801を有する。燃料タンク801は、金属材料で形成された貯留装置である。燃料タンク801内部には、燃料FLが貯留される構成となっている。
燃料タンク801内部には、燃料タンク801内部の圧力たるタンク内圧Piを検出可能に構成された圧力センサ802が設置されている。圧力センサ802は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたタンク内圧Piは、ECU100により一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
燃料タンク801内部には、フューエルポンプ803が配設されている。フューエルポンプ803は、燃料タンク801内部の燃料貯留空間から燃料FLを吸い上げることが可能に構成されたポンプ装置であり、吸い上げられた燃料FLは、フューエルポンプ803に接続されたフィードパイプ804を介して、先述したインジェクタ212の燃料噴射弁に圧送供給される構成となっている。
燃料タンク801には、給油管805が接続されており、その内部において燃料タンク801の燃料貯留空間に連通している。給油時には、この給油管805の先端部分に取り付けられたフューエルキャップが取り外され、燃料たるガソリンが給油管805を介して燃料タンク801内部に給油される構成となっている。
燃料タンク801の下部には、燃料FLの温度たる燃料温度Tfを検出可能に構成された温度センサ806が設置されている。温度センサ806は、ECU100と電気的に接続されており、検出された燃料温度Tfは、ECU100により一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
燃料タンク801の上方には、燃料タンク801内部に貯留された燃料FLの液面上部空間とブリーザ配管810とを適宜に連通させることが可能に構成されたベントバルブ809が備わる。
ベントバルブ809は、燃料タンク801の内圧とブリーザ配管810との差圧が所定値に達すると開弁するように構成されたバルブ装置である。ベントバルブ809は、その開弁時において、蒸発燃料(ベーパ)を含む空気を、ブリーザ配管810を介して後述するキャニスタ811に供給することが可能に構成される。
ベントバルブ809は、ROV(Roll Over Valve)807及びCOV(Cut Off Valve)808を介して上記液面上部空間と連通する構成となっている。
ROV807は、給油時の液面上昇により閉弁し、ベントバルブ809と燃料タンク801との連通を遮断するように構成されている。また、ROV807は、車両転倒時等においてもベントバルブ809と燃料タンク801との連通を遮断する構成となっており、ブリーザ配管810を介して燃料FLが外部に漏洩しない構成となっている。
COV808は、ROV807と並列配置されており、ROV807よりも更に液面が上昇した場合にベントバルブ809と燃料タンク801との連通を遮断するように構成されている。COV808は、給油時の液面上昇に際しては、ROV807の閉弁後も開弁状態を維持するが、車両旋回による液面の動揺等により液面がCOV808まで到達するような場合には閉弁し、ベントバルブ809と燃料タンク801との連通を遮断するように構成されており、ベントバルブ809を介して燃料FLが外部に漏洩しない構成となっている。
キャニスタ811は、内部に蒸発燃料を吸着保持可能な活性炭等の吸着材812を備えた、本発明に係る「吸着手段」の一例たるベーパ吸着装置である。キャニスタ811は、先述したブリーザ配管810、大気連通管813及びパージ用配管814の三種類の配管に接続されている。
大気連通管813は、ハイブリッド車両10の車外空間と連通する管状部材である。大気連通管813は、後述するパージコントロールバルブ815が閉弁し且つ先に述べたベントバルブ809が開弁している場合には、ブリーザ配管810を介してキャニスタ811に流入するガスのうち吸着材812によるベーパ吸着後に残留する清浄な空気を車外へ導くと共に、パージコントロールバルブ815が開弁し且つベントバルブ809が閉弁している場合には、車外から外気をキャニスタ811に導くように構成されている。
パージ用配管814は、一端部がキャニスタ811の下方に接続され、他端部が吸気管207のスロットルバルブ208上流側(気筒と反対側)に接続された、パージガスの通路である。
ここで、「パージガス」とは、大気連通管813を介して適宜導かれる外気と吸着材812に吸着保持されたベーパとの混合体(ベーパの吸着量がゼロであれば、即ち外気そのもの)であり、係るパージガスは、エンジン200の稼動時に、パージ用配管814を介して吸気管207に供給され、パージ(即ち、蒸発燃料を吸気系へ戻す処理)がなされる構成となっている。
パージコントロールバルブ815は、パージ用配管814上に設置された公知の電磁制御弁である。パージコントロールバルブ815の弁体は、図示せぬ電磁アクチュエータにより、パージコントロールバルブ815の上流側と下流側(この場合の上流側及び下流側とは、パージガスの流れ方向を基準とした方向概念であって、上流側とは即ちキャニスタ側であり、下流側とは即ちスロットルバルブ208側を指す)との連通を遮断する遮断位置と、当該上流側と下流側とを連通せしめる連通位置との間で二値的に位置制御がなされる構成となっている。このアクチュエータを駆動する不図示の駆動系は、ECU100と電気的に接続された状態にあり、ECU100による制御に従って駆動される。即ち、パージコントロールバルブ815は、ECU100によりその開閉状態が制御される構成となっている。
一方、エンジン200が稼動状態にある場合、吸気管207には主として吸気行程において負圧が形成される。従って、エンジン200が稼動状態にある場合、パージコントロールバルブ815の弁体位置を上記連通位置に制御することによってパージコントロールバルブ815の上流側と下流側とを連通せしめれば、エンジン負圧により大気連通管813を介して外気が導かれ、係る外気が、パージ用配管814へ到達する途上において吸着材812に保持されたベーパと適宜混合されることによって、上述したパージガスとしてパージ用配管814を介して吸気管207へ供給されるのである。
尚、パージコントロールバルブ815は、吸気管207に形成されるエンジン負圧に応じて半ば自動的にその開閉状態が変化するVSVとして構成されていてもよい。この場合、エンジン200が稼動状態にあれば、エンジン負圧波と同期して絶えずパージコントロールバルブ815が開閉を繰り返すこととなり、パージ量の制御精度は、電磁制御弁等開弁期間を制御し得る性質の弁装置と較べて低下するものの、システム構成を簡素化することが可能となる。
<実施形態の動作>
<走行モードの詳細>
ハイブリッド車両10では、動力源の選択態様及び制御態様を規定する走行モードとして、HVモードとEVモードとのうち一方が選択される構成となっている。
HVモードは、ハイブリッド車両10の車速V(km/h)が予め設定された上限車速VL以上となる場合、バッテリ500のSOC(%)が予め設定されたSOC下限値SOCL(即ち、本発明に係る「第2の基準値」の一例)未満となる場合、及びハイブリッド車両10の出力Phの要求値たる要求出力Pn(kw)がモータジェネレータMG2に対し予め設定されたモータ上限出力値PmL(即ち、本発明に係る「第1の基準値」の一例)よりも大きい場合について、エンジン200をその燃費率が最小となる動作点で動作させつつ、ハイブリッド車両10の車軸に供給すべき動力に対する実際の動力の過不足分が、モータジェネレータMG2を介した動力の入出力により賄われるようにエンジン200とモータジェネレータMG2とを協調制御するように構築された、本発明に係る「第1のモード」の一例たる走行モードである。尚、HVモードにおいて、上記走行条件以外の走行条件については、基本的に(減速時等は除く)モータジェネレータMG2のみを動力源としたEV走行が実行される。
EVモードは、上記HVモードと比較して環境負荷を軽減し得るようにエンジン200の稼動期間が短く抑えられた(即ち、エンジン200の始動頻度が低い)、別言すれば可及的にEV走行を行うように構築された、本発明に係る「第2のモード」の一例たる走行モードである。
より具体的に述べると、EVモードにおいて、エンジン200は、バッテリ500のSOCが下限値SOCL0(SOCL0<SOCL1であり、本発明に係る、蓄電残量の「所定値」の一例である)未満となった場合にのみ、その始動が要求される。従って、EVモードにおいて、ハイブリッド車両の車速V及び出力Phの上限値は、モータジェネレータMG2の物理的、機械的又は電気的な動作限界により決定される。
尚、このような点に鑑みれば、第2のモードにおいては、要求車速が高い場合や要求出力が高い場合の少なくとも一部において、ハイブリッド車両10の車速V或いは出力Phが要求値を下回る可能性があるが、HC、CO2及びNOxの排出量低減に伴う環境負荷の軽減を目的とする点に鑑みれば、実践上さしたる問題は生じない。また特に、ハイブリッド車両10のように外部電源20からの充電が可能に構成されたプラグインハイブリッド車両においては、モータジェネレータMG1による発電或いは減速時のエネルギ回生等によりバッテリ500の充電を行うよりない他のハイブリッド車両と較べれば、バッテリ500のSOCを比較的自由なタイミングで所望量回復させることが可能であり、車速、要求出力及びSOCの制限が緩和される。従って、ハイブリッド車両10において、EVモードを主たる走行モードとして選択することが比較的容易にして可能となる。
本実施形態において、これら二種類の走行モードのうちいずれを選択すべきかについては、ECU100により実行される走行モード切り替え処理により決定される。但し、ハイブリッド車両10では、係る処理とは別に、ドライバの意思に基づいた所定の操作手段(例えば、シフトレバー、各種ボタンスイッチ或いは操作ダイアル等)の操作によりマニュアル的に走行モードの選択を行うことも可能であり、このような操作がなされた場合には、システム上問題が生じない限りにおいてドライバの意思が優先される。例えば、走行モード切り替え処理においてEVモードの実施要件が満たされたとして、ドライバが上述した車速や要求出力の制限を嫌ってHVモードの実行を所望している場合には、走行モードはHVモードに設定される。
一方、EVモードが選択されている場合、HVモードに対して必然的にエンジン200の始動頻度は低下する。他方、エンジン200が稼動しているか否かにかかわらず、燃料タンク801内部に貯留された燃料FLはその蒸発速度の高低はさておき幾らかなり蒸発し得るから、生じた蒸発燃料は、給油時の液面上昇によるタンク内圧の上昇を待たずとも適宜ベントバルブ809を押し開き、キャニスタ811の吸着材812に適宜吸着されることとなる。
ここで、上述したように、エンジン200が稼動状態になければ吸気管207に負圧が生じないから、パージコントロールバルブ815を開閉させたとして蒸発燃料をパージすることができない(実践的には、エンジン200が非稼動である場合、吸気管207への蒸発燃料の漏洩を防ぐため、パージコントロールバルブ815は絶えず閉弁状態に制御される)。
このため、余りに長期にわたってエンジン200が非稼動となると、蒸発燃料の吸着量が吸着材812の保持限界を超える(即ち、キャニスタ811が飽和状態を超える)可能性がある。このようにキャニスタ811が飽和状態を越えた場合、或いは近未来的にそのような事態に直面すると予測される場合、大気連通管813を介して蒸発燃料が外界に放出することを防止するために、エンジン200を稼動させ先述のパージを実行する必要がある。
ところが、このような理由によるエンジン200の始動は、ハイブリッド車両10の車軸に出力すべき動力の観点から見れば必ずしも必要ではない上、必ずしもエンジン200を効率的な動作点で動作させ得るものとは限らない(即ち、蒸発燃料の大気放出を防止するためだけに燃料をエンジン200内で強制的に燃焼させているに過ぎない)から、燃費の観点からは望ましくない。そこで、走行モード切り替え処理は、これらの問題を好適に解決しつつ走行モードの切り替えがなされるように構成されている。
ここで、図3を参照して、走行モード切り替え処理の詳細について説明する。ここに、図3は、走行モード切り替え処理のフローチャートである。
図3において、ECU100は、キャニスタ811における蒸発燃料の吸着量Dvp(即ち、本発明に係る「吸着手段における蒸発燃料の吸着量」の一例)が基準値Dvpth以上であるか否か、又は後述する閾値変更フラグFGが「1」であるか否かを判別する(ステップS101)。
吸着量Dvpが基準値Dvpth以上であるか否かを判別するにあたって、ECU100は、走行モード切り替え処理のプロセスとは別に推定する吸着量Dvpを参照する。尚、この吸着量Dvpの推定は、ハイブリッド車両10の稼動状態に限らず、燃料タンク801内において燃料の蒸発が生じる点に鑑み、ハイブリッド車両10がソーク状態にある場合においても絶えず実行されている。
ここで、ベントバルブ809の開弁時にキャニスタ811に導かれた蒸発燃料が全てキャニスタ811の吸着材に吸着されるとすれば、エンジン200が機関停止状態にある場合(即ち、パージコントロールバルブ815が閉弁状態に維持されパージが全く行われない場合であって、上記ソーク状態も含む)における、燃料タンク801のタンク内圧Piと燃料温度Tfとに基づいて、吸着量Dvpを推定することが可能となる。本実施形態では、予めROMに、係るタンク内圧Pi、燃料温度Tf及びエンジン200の停止期間の長さと吸着量Dvpとを対応付けた吸着量マップが記憶されており、ECU100は、圧力センサ802により検出されるタンク内圧Pi、温度センサ806により検出される燃料温度Tf及び内蔵タイマによりカウントされるエンジン停止期間の長さとに対応する一の吸着量Dvpを当該吸着量マップより取得することによって吸着量Dvpを推定する。
尚、このような吸着量Dvpの推定態様は一例に過ぎず、吸着量Dvpの取得に当たっては、公知の各種態様を採用することができる。例えば、キャニスタ811における蒸発燃料の吸着量を直接検出し得るように構成された検出手段がキャニスタ811に付設され、その検出結果がECU100により一定又は不定の周期で参照可能に構成されていてもよい。
尚、吸着量Dvpに対し設定される基準値Dvpthとは、少なくともキャニスタ811の飽和状態に対応する吸着量(言い換えれば、吸着材の吸着限界量)よりは小さい値であって、且つ好適には、エンジン200が停止し続けた場合に蒸発燃料の大気放出を招来する可能性が実践上無視し得ない程度に高い旨に相当する値に設定されている。このような基準値Dvpthは、適合の要素が強く、具体的な数値は如何様に設定されてもよいが、例えば、キャニスタ811の飽和状態に対応する吸着量を100とした場合に概ね70〜80程度の値であってもよい。
一方、閾値変更フラグFGとは、前述したHVモードにおけるSOC下限値SOCL及びモータ上限出力値PmLが、各々について設定された後述する基準値から変更されたか否かを表すフラグであり、ECU100により、これらが基準値から変更された場合には「1」に、また変更されない場合には「0」に設定される。閾値変更フラグFGの初期値は「0」である。
ECU100は、吸着量Dvpが基準値Dvpth未満であり且つ閾値変更フラグFGが「0」である場合(ステップS101:NO)、走行モードとしてEVモードを選択する(ステップS102)。
尚、ステップS102が実行されるに際して、何らかの要因によりEVモードの実行許可条件が満たされない場合、EVモードは選択されず、走行モードはHVモードに設定される。このような実行許可条件が満たされない場合とは、例えば、先に述べたようにドライバがHVモードの実行を所望している場合や、或いはモータジェネレータMG2に物理的、機械的又は電気的な何らかの不具合が生じている場合等を含む。
ステップS102が実行されると、走行モード切り替え処理は終了する。尚、走行モード切り替え処理は、ハイブリッド車両10がシステムオンの状態(即ち、ソーク状態以外)において、所定の周期で繰り返し実行される処理であり、ステップS102を経て一旦終了したとしても、然るべきタイミングで再びステップS101から実行される。
ECU100は、吸着量Dvpが基準値Dvpth以上であるか、又は閾値変更フラグFGが「1」である場合(ステップS101:YES)、走行モードとしてHVモードを選択する(ステップS103)。走行モードがHVモードに設定されると、更にECU100は、閾値変更フラグFGが「1」であるか否かを判別する(ステップS104)。
閾値変更フラグFGが「0」である場合(ステップS104:NO)、ECU100は、必要パージ量PGtgを設定する(ステップS105)。ここで、必要パージ量PGtgとは、キャニスタ811における蒸発燃料の吸着量Dvpを所定値未満(理想的には、ゼロ又はゼロ付近の小さい値)に減少させるために要するパージガスの流量である。
但し、パージガスは先に述べたように大気連通管813を介して導かれる大気と吸着した蒸発燃料との混合ガスであるから、必要パージ量PGtgは必ずしも吸着量Dvpと一致しない。尚、必要パージ量PGtgは、後述するように、蒸発燃料の処理を目的としたHVモードの継続期間を規定する値となる。即ち、ステップS105に係る動作は、本発明に係る「継続期間設定手段」に係る動作の一例である。
必要パージ量PGtgを設定するにあたって、ECU100は、予めROMに格納された必要パージ量マップを参照する。ここで、図4を参照し、必要パージ量マップの詳細について説明する。ここに、図4は、必要パージ量マップに規定される必要パージ量PGtgの特性を模式化してなる特性図である。
図4において、縦軸に必要パージ量PGtgが、また横軸には吸着量Dvpが示されている。図示の通り、必要パージ量PGtgは、吸着量Dvpに対し増加関数として設定されており、吸着量Dvpが多い程多くなる。必要パージ量マップには、図4に例示する関係が数値化されて格納されている。
図3に戻り、ECU100は、ステップS105において、必要パージ量マップから吸着量Dvpに対応する一の必要パージ量PGtgを選択的に取得することによって、必要パージ量PGtgを設定する。ここで、閾値変更フラグFGの初期値は先述したように「0」であるから、ここでは、処理がステップS104からステップS105を経たものとして説明を続ける。
必要パージ量PGtgが設定されると、ECU100は、後述する積算パージ量PGが、係る設定された必要パージ量PGtg以上であるか否かを判別する(ステップS107)。積算パージ量PGは、必要パージ量PGtgが設定されて以降のパージ量の積算値であり、この時点では初期値たる「0」を採る。従って、この段階では、ステップS107に係る判別は「NO」側に分岐する。
積算パージ量PGが必要パージ量PGtg未満である場合(ステップS107:NO)、ECU100は、閾値変更フラグFGが「1」であるか否かを判別する(ステップS108)。ここで、閾値変更フラグFGは未だ初期値たる「0」のままであるから、ステップS108は「NO」側に分岐し、ECU100は、ステップS112及びステップS113を実行する。
ステップS112において、ECU100は、モータ上限出力値PmLを変更する。より具体的には、基準値PmL0からモータ上限出力補正値ΔPmを減じた値を新たにモータ上限出力値PmLとして設定する。
モータ上限出力補正値ΔPmを設定するにあたって、ECU100は、予めROMに格納されたモータ上限出力補正値マップを参照する。ここで、図5を参照し、モータ上限出力補正値マップの詳細について説明する。ここに、図5は、モータ上限出力補正値マップに規定されるモータ上限出力補正値ΔPmの特性を模式化してなる特性図である。
図5において、縦軸にモータ上限出力補正値ΔPmが、また横軸には吸着量Dvpが示されている。図示の通り、モータ上限出力補正値ΔPmは、吸着量Dvpに対し増加関数として設定されており、吸着量Dvpが多い程多くなる。モータ上限出力補正値マップには、図5に例示する関係が数値化されて格納されている。
図3に戻り、ECU100は、ステップS112において、モータ上限出力補正値マップから吸着量Dvpに対応する一のモータ上限出力補正値ΔPmを選択的に取得することによって、モータ上限出力補正値ΔPmを設定し、基準値PmL0から減算することによってモータ上限出力値PmLを変更する。
尚、モータ上限出力値PmLの基準値たるPmL0とは、蒸発燃料の処理を目的としない通常のHVモードにおけるモータジェネレータMG2の上限出力値である。先に述べたように、HVモードは、ハイブリッド車両10の要求出力Pnがモータ上限出力値PmLを超えた場合にエンジン200の始動要求が生じるように構築されているから、ステップS112が実行されることにより、モータ上限出力値PmLが基準値PmL0である場合と比較してエンジン200の始動頻度は上昇する。
一方、ステップS113において、ECU100は、SOC下限値SOCLを変更する。より具体的には、基準値SOCL1(SOCL1>SOCL0)に対し、下限SOC補正値ΔSOCを加算した値を新たにSOC下限値SOCLとして設定する。
下限SOC補正値ΔSOCを設定するにあたって、ECU100は、予めROMに格納された下限SOC補正値マップを参照する。ここで、図6を参照し、下限SOC補正値マップの詳細について説明する。ここに、図6は、下限SOC補正値マップに規定される下限SOC補正値ΔSOCの特性を模式化してなる特性図である。
図6において、縦軸に下限SOC補正値ΔSOCが、また横軸には吸着量Dvpが示されている。図示の通り、下限SOC補正値ΔSOCは、吸着量Dvpに対し増加関数として設定されており、吸着量Dvpが多い程多くなる。下限SOC補正値マップには、図6に例示する関係が数値化されて格納されている。
図3に戻り、ECU100は、ステップS113において、下限SOC補正値マップから吸着量Dvpに対応する一の下限SOC補正値ΔSOCを選択的に取得することによって、下限SOC補正値ΔSOCを設定し、基準値SOCL1に対し加算することによってSOC下限値SOCLを変更する。
尚、SOC下限値SOCLの基準値たるSOCL1とは、蒸発燃料の処理を目的としない通常のHVモードにおけるバッテリ500のSOCの下限値である。先に述べたように、HVモードは、バッテリ500のSOCがSOC下限値SOCL未満に低下した場合にエンジン200の始動要求が生じるように構築されているから、ステップS113が実行されることにより、SOC下限値SOCLが基準値SOCL1である場合と比較してエンジン200の始動頻度は上昇する。
ステップS112及びステップS113が実行されると、ECU100は、閾値変更フラグFGを「1」に変更する(ステップS114)。閾値変更フラグFGが「1」に変更されると、走行モード切り替え処理は終了する。
閾値変更フラグFGが「1」に変更されると、次なるタイミングで実行される走行モード切り替え処理における、ステップS104が「YES」側に分岐し、ECU100は、積算パージ量PGを算出する(ステップS106)。ここで、積算パージ量PGは、走行モードがHVモードに切り替えられた後にエンジン200が始動することによって実行された蒸発燃料のパージにおいて、吸気管207に還流せしめられたパージガスの積算量である。
ECU100は、予めROMに、エンジン200の機関回転速度(吸気管207に形成される負圧の大きさを規定する指標となる)及びパージコントロールバルブ815の開弁期間とパージガス量との関係を数値化してなるパージガス量マップを保持しており、所定周期で係るパージガス量マップからパージガス量を取得すると共に、当該取得されたパージガス量を積算することによって積算パージ量PGを常に更新し且つ記憶している。
一方、ステップS112及びステップS113に係る基準値の変更を経た後、積算パージ量PGが必要パージ量PGtg未満である期間については、ステップS108に係る判別処理が「YES」側に分岐して、走行モード切り替え処理が終了する。従って、このような期間については、変更されたモータ上限出力PmL及びSOC下限値SOCLに従った(即ち、エンジン200の始動頻度が、これらが上記基準値を採る場合と比較して高められた)HVモードが実行されることとなる。
このような期間を経て積算パージ量PGが必要パージ量PGtg以上となると(ステップS107:YES)、ECU100は、モータ上限出力PmLを基準値PmL0に戻し(ステップS109)、更にSOC下限値SOCLを基準値SOCL1に戻して(ステップS110)、閾値変更フラグFGを「0」に戻す(ステップS111)。ステップS111が実行されると、走行モード切り替え処理は終了する。
ステップS111を経た後、次なるタイミングで実行される走行モード切り替え処理においては、ステップS101に係る判別処理は「NO」側に分岐し、ステップS102により、走行モードが基本的にEVモードに復帰する(即ち、本発明に係る「復帰手段」の動作の一例である)。但し、先述したように何らかの理由により走行モードがHVモードのまま維持される場合、モータ上限出力PmL及びSOC下限値SOCLは夫々上記基準値に設定されており、通常のHVモードが実行される。
以上説明したように、本実施形態に係る走行モード切り替え処理によれば、(1)キャニスタ811における蒸発燃料の吸着量Dvpが基準値Dvpth以上である場合にハイブリッド車両10の走行モードがEVモードからHVモードに切り替えられ、(2)切り替え後のHVモードにおけるモータ上限出力PmL及びSOC下限値SOCLが、夫々基準値に対して減少側及び増加側に補正され、(3)積算パージ量PGが必要パージ量PGtgに達した場合に走行モードがEVモードに復帰せしめられる。
ここで、上記(1)によれば、エンジン200の始動頻度を上昇させ、蒸発燃料の処理機会を増やすことが可能となる。また、エンジン200は、HVモードにおいて必ずしも絶えず稼動状態に置かれる訳ではなく、動作効率の比較的高い走行条件において稼動し、且つ稼動時においても、モータジェネレータMG2との協調制御により、その動作点が可及的に高効率な動作点に維持される。従って、蒸発燃料は、このようにエンジン200が高効率な動作状態にある場合にパージされ燃焼に供されることになり、蒸発燃料の処理(パージ)に際した燃費の悪化が可及的に抑制される。
また、上記(2)によれば、HVモードにおいてエンジン200の始動頻度を規定するモータ上限出力PmL及びSOC下限値SOCLが、キャニスタ811における蒸発燃料の吸着量が多い程エンジン200の始動頻度が上昇するように変更されるため、エンジン200の稼動期間が不足することにより蒸発燃料の処理が遅滞して蒸発燃料の大気放出を招来するといった事態が好適に防止される。
更に、上記(3)によれば、蒸発燃料の処理が終了した暁には、速やかに走行モードがEVモードに復帰することとなり、EVモードによる環境負荷軽減に係る利益が可及的に享受される。即ち、本実施形態によれば、燃費の悪化を抑制しつつ蒸発燃料を好適に処理することが可能となるのである。
尚、本実施形態において、蒸発燃料の処理を目的としたHVモード(即ち、吸着量Dvpに応じてモータ上限出力PmL及びSOC下限値SOCLが基準値から変更されるHVモード)の継続期間は、必要パージ量PGtgにより規定されるが、本発明の趣旨に鑑みれば、係る継続期間は他の指標値により規定されても構わない。例えば、エンジン200の積算空気量(例えば、エアフローメータの検出値を利用することにより推定可能である)、エンジン200の連続稼動時間若しくは積算稼働時間、ハイブリッド車両10の航続距離、エンジン200の冷却水温が所定値以上となる期間の長さ、又はエンジン200の燃料消費量等に基づいて、蒸発燃料が好適に処理されたか否かに係る判別を行うことも可能である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド車両の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
10…ハイブリッド車両、100…ECU、200…エンジン、201…気筒、203…ピストン、205…クランクシャフト、300…動力分割機構、400…PCU、500…バッテリ、600…充電プラグ、700…リレー回路、800…燃料供給システム、801…燃料タンク、802…圧力センサ、806…温度センサ、809…ベントバルブ、810…ブリーザ配管、811…キャニスタ、812…吸着材、813…大気連通管、814…パージ用配管、815…パージコントロールバルブ。