JP2014218130A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】液化ガス燃料を使用するエンジンを搭載したハイブリッド車両に対し、EV走行中に、バッテリの状態に応じてエンジンを始動させる際、運転者の要求に応じた駆動力を得ることが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供する。【解決手段】LPG燃料を使用するエンジン1を搭載したハイブリッド車両において、EV走行中、燃料ポンプ10eが停止し且つ燃料還流管10fに備えられた電磁弁10iが閉鎖している状態で、バッテリ300の入出力制限や充電量等が所定値まで低下すると、電磁弁10iを開放すると共に燃料ポンプ10eを作動させ、燃料供給管10cおよび燃料タンク10dの比較的低温の燃料をデリバリパイプ10b内に流入させる。さらに入出力制限や充電量等が低くなって、エンジン始動要求が生じるとエンジン始動動作を実行する。これにより、エンジン始動時に気相燃料が噴射されることが回避できる。【選択図】図2

Description

本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に係る。特に、本発明は、液化ガス燃料を使用する内燃機関を搭載したハイブリッド車両において、電動機のみを走行駆動力源として走行している状態から内燃機関を始動する際の制御に関する。
従来、内燃機関(以下、「エンジン」という場合もある)の停止後に、燃料供給系内の燃料が高温となっている状況(例えば、エンジン本体からの輻射熱や熱伝導等によって燃料供給系の温度、特にデリバリパイプの温度が上昇し、燃料温度が飽和蒸気温度を超えている状況)では気相燃料(ベーパ)が発生する可能性がある。そして、この気相燃料が発生した状態でエンジンが再始動すると、適正な燃料噴射量が得られずドライバビリティの悪化を招いてしまう可能性がある。
このことに鑑み、エンジンの高温再始動時に、エンジンの始動を遅延させ、その遅延期間中に燃料ポンプを作動させることで、燃料循環路で燃料を循環させ、燃料供給系を冷却して気相燃料の発生を抑制することが提案されている(例えば特許文献1を参照)。
ところで、燃料としてLPG(Liquefied Petroleum Gas)等の液化ガス燃料を使用するエンジンを搭載した車両が知られている(例えば特許文献2を参照)。この液化ガス燃料は沸点が比較的低く気相燃料が発生しやすいため、この液化ガス燃料を使用するエンジンを搭載した車両に対して前記特許文献1の技術を適用することは、気相燃料の発生を抑制してドライバビリティの悪化を防止する上で有効である。
特開平9−184459号公報 特開2004−52560号公報
前記特許文献2では、前記液化ガス燃料を使用するエンジンをハイブリッド車両に搭載することが開示されている。このハイブリッド車両は、電動モータのみを駆動力源として走行する状態(以下、「EV走行」という)と、エンジンを駆動力源として走行する状態(以下、「HV走行」という)とが切り換え可能である。
前記EV走行では、バッテリに蓄電されている電力が使用されて電動モータが走行駆動力を発生する。このため、このEV走行が継続し、バッテリの蓄電量が所定量を下回った場合などにあっては、EV走行の継続が不能になることを考慮し、エンジン再始動要求の発生に伴ってエンジンが再始動してEV走行からHV走行に切り換えられることになる。
ところが、前記エンジンの再始動要求が生じた際に、前述の如く気相燃料の発生の抑制を目的としてエンジンの始動を遅延(燃料ポンプを作動させることによる燃料供給系の冷却時間だけ遅延)させると、この遅延期間にあっては、バッテリの電力量が十分に得られていないこと等に起因して運転者の要求に応じた駆動力が得られなくなりドライバビリティの悪化に繋がってしまう可能性がある。
なお、EV走行中、燃料供給系における燃料温度および燃料圧力を推定し、気相燃料の発生が懸念される状況となった際に燃料ポンプを作動させることで気相燃料の発生を抑制することが考えられる。しかし、これら燃料温度および燃料圧力を正確に推定することは難しく、また、気相燃料が発生する温度および圧力は燃料の性状によって異なるため、この手法は実用性に欠けるものである。
さらに、EV走行中、燃料ポンプを常時作動させることで気相燃料の発生を抑制することは可能であるが、これでは、無駄に燃料ポンプを作動させてしまう期間が生じ(燃料温度が比較的低く気相燃料が発生しない状況であるにも拘わらず燃料ポンプを作動させてしまう期間が生じ)、エネルギ効率の悪化を招いてしまうことになる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、液化ガス燃料を使用するエンジンを搭載したハイブリッド車両に対し、EV走行中に、バッテリの状態(充放電電力量の制限値等)に応じてエンジンを始動させる際、運転者の要求に応じた駆動力を得ることが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することにある。
−発明の解決原理−
前記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、液化ガス燃料を使用するエンジンを搭載したハイブリッド車両に対し、電動機のみを走行駆動力源とするEV走行中にエンジンの始動要求が生じる可能性があることをバッテリの状態に基づいて推定し、エンジン始動タイミングに先立って燃料ポンプを作動させることにより、燃料供給系内での気相燃料の発生が回避された状態でエンジンの始動タイミングが迎えられるようにしている。
−解決手段−
具体的に、本発明は、液化ガス燃料を使用する内燃機関と電動機とを駆動力源として備え、前記電動機のみで走行可能なハイブリッド車両の制御装置を前提とする。このハイブリッド車両の制御装置に対し、前記内燃機関における燃料供給系に、燃料タンクから燃料噴射弁に向けて前記液化ガス燃料を供給する燃料ポンプと、この燃料ポンプから供給された液化ガス燃料を貯留する燃料蓄圧容器と、この燃料蓄圧容器から前記燃料タンクへ液化ガス燃料を還流させる還流経路と、この還流経路に備えられて電気的に開度が制御可能な制御弁とを設ける。そして、前記電動機のみを走行駆動力源として走行している状態で、この電動機に電力を供給している蓄電池の状態量であって内燃機関始動要求に関連するパラメータが内燃機関始動要求値に近付いて所定の第1閾値に達したときに前記制御弁を開状態にすると共に前記燃料ポンプを作動させて前記燃料蓄圧容器内の燃料を還流経路に流す。また、その走行状態で、前記パラメータが前記内燃機関始動要求値である所定の第2閾値に達したときに前記内燃機関を始動させる構成としている。
この特定事項により、まず、電動機のみを走行駆動力源とする走行が開始された際には、内燃機関は駆動しないことから燃料ポンプは停止される。そして、この状態で、蓄電池の状態量であって内燃機関始動要求に関連するパラメータが内燃機関始動要求値に近付いて所定の第1閾値に達したときには、還流経路に備えられた制御弁を開状態にすると共に燃料ポンプを作動させて燃料蓄圧容器内の燃料を還流経路に流す。これにより、仮に、燃料蓄圧容器内に高温度の燃料が存在していたとしても、この燃料は燃料蓄圧容器から還流経路に流出され、燃料蓄圧容器には比較的低温度の燃料(燃料供給経路内や燃料タンク内の燃料)が流入されていくことになる。この動作により、燃料蓄圧容器内での気相燃料の発生は抑制された状態になる。そして、この電動機のみを走行駆動力源とする走行状態で、前記パラメータが前記内燃機関始動要求値である所定の第2閾値に達したときに前記内燃機関を始動させる。例えば、内燃機関の気筒内への燃料噴射や点火栓による点火等を行って内燃機関を始動させる。この内燃機関の始動の際には、前述した如く、燃料蓄圧容器内での気相燃料の発生が抑制された状態で気筒内への燃料噴射が行われるため、気相燃料が燃料噴射弁から噴射されてしまうといったことは回避される。このため、適正な燃料噴射量が得られた状態で内燃機関を始動させることができ、運転者の要求に応じた駆動力を得ることができる。
前記内燃機関始動要求に関連するパラメータ(蓄電池の状態量)としては、蓄電池の「充放電電力量の制限値」や「蓄電量」や「温度」が挙げられる。
前記パラメータが蓄電池の「充放電電力量の制限値」である場合の具体構成としては、前記電動機のみを走行駆動力源として走行する状態から前記内燃機関を走行駆動力源として走行する状態へ切り換えられる「充放電電力量の制限値」を前記第2閾値として予め記憶しておく。そして、前記第1閾値を、前記第2閾値である「充放電電力量の制限値」よりも所定量だけ高い「充放電電力量の制限値」として設定している。
また、前記パラメータが蓄電池の「蓄電量」である場合の具体構成としては、前記電動機のみを走行駆動力源として走行する状態から前記内燃機関を走行駆動力源として走行する状態へ切り換えられる「蓄電量」を前記第2閾値として予め記憶しておく。そして、前記第1閾値を、前記第2閾値である「蓄電量」よりも所定量だけ多い「蓄電量」として設定している。
また、前記パラメータが蓄電池の「温度」である場合の具体構成としては、前記蓄電池の「温度」が上昇している際に、前記電動機のみを走行駆動力源として走行する状態から前記内燃機関を走行駆動力源として走行する状態へ切り換えられる「蓄電池の温度」を前記第2閾値として予め記憶しておく。そして、前記第1閾値を、前記第2閾値である「蓄電池の温度」よりも所定量だけ低い「蓄電池の温度」として設定している。
また、前記蓄電池の「温度」が下降している際に、前記電動機のみを走行駆動力源として走行する状態から前記内燃機関を走行駆動力源として走行する状態へ切り換えられる「蓄電池の温度」を前記第2閾値として予め記憶しておく。そして、前記第1閾値を、前記第2閾値である「蓄電池の温度」よりも所定量だけ高い「蓄電池の温度」として設定している。
これらの特定事項によれば、内燃機関始動要求に関連するパラメータ(蓄電池の状態量)を具体化でき、制御の実用性を高めることができる。また、これら解決手段では、前記パラメータが第2閾値に達して走行状態が切り換わる(電動機のみを走行駆動力源として走行する状態から内燃機関を走行駆動力源として走行する状態へ切り換わる)前段階、つまり、パラメータが第1閾値に達した段階で、制御弁を開状態にすると共に燃料ポンプを作動させて燃料蓄圧容器内の燃料を還流経路に流すことになる。つまり、前記蓄電池の状態量に基づいて、内燃機関の再始動が行われる可能性があることを予測し、実際に内燃機関が再始動する前段階で燃料蓄圧容器内に比較的低温度の燃料を流入させておくことが可能になる。これにより、燃料蓄圧容器内での気相燃料の発生が抑制された状態で内燃機関を再始動させることが可能になり、適正な燃料噴射量が得られることによって運転者の要求に応じたドライバビリティを得ることができる。
前記第1閾値として具体的には、前記電動機のみを走行駆動力源とする走行状態において必要とされる上限駆動力の出力が可能な電力量が蓄電池に確保された状態の値として設定している。
電動機のみを走行駆動力源とする走行状態においては、運転者のアクセル操作量が大きくなるなどして車両加速要求が大きくなるに従って電動機の出力が上限駆動力に近付いていく。この場合に、上限駆動力の出力が可能な電力量よりも低い電力量しか残存しない値を前記第1閾値としてしまうと、この第1閾値から第2閾値に達するまでの期間で要求駆動力が得られなくなる可能性がある。このため、本解決手段では、電動機のみを走行駆動力源とする走行状態において必要とされる上限駆動力の出力が可能な電力量が蓄電池に確保された状態の値として第1閾値を設定し、電動機の出力に余裕がある状況で制御弁を開状態にすると共に燃料ポンプを作動させて燃料蓄圧容器内の燃料を還流経路に流して内燃機関の始動要求に備えるようにしている。
また、前記内燃機関の始動時に電動機によるクランキングを行うものにあっては、前記前記第2閾値を、前記内燃機関のクランキングに必要な電力量が蓄電池に確保された状態の値として設定している。
つまり、内燃機関の始動に必要な電力(電動機によるクランキングを行う際の消費電力)が確保されている状態で、内燃機関の始動タイミングが迎えられるように第2閾値を設定している。これにより、前記パラメータが第2閾値に達して内燃機関を再始動させる際の始動性を良好に確保することができる。その結果、電動機のみを走行駆動力源として走行している状態から内燃機関を走行駆動力源として走行する状態への移行を円滑に行うことができ、駆動力不足等に起因するドライバビリティの悪化を防止することができる。
前記ハイブリッド車両の動力伝達系の構成として具体的には以下のものが挙げられる。つまり、前記内燃機関の出力軸が連結されるプラネタリキャリアと、第1の発電電動機が連結されるサンギヤと、第2の発電電動機が連結されるリングギヤとを備えた遊星歯車機構により構成される動力分割機構が備えられ、前記電動機のみを走行駆動力源として走行する際には、前記第2の発電電動機を走行駆動力源として走行する構成となっている。
本発明では、ハイブリッド車両において、電動機のみを走行駆動力源として走行している際、蓄電池の状態量に基づいて、内燃機関の始動要求が生じる前に燃料ポンプを作動させるようにしている。このため、燃料供給系において気相燃料の発生が抑制された状態で内燃機関を始動させることができる。
実施形態に係るハイブリッド車両の概略構成図である。 ハイブリッド車両に搭載されたエンジンの概略構成図である。 エンジンの1気筒のみを示す概略構成図である。 ハイブリッド車両の制御系を示すブロック図である。 バッテリ温度Tbと、基本出力制限Woutbおよび基本入力制限Winbとの関係の一例を示す図である。 バッテリの蓄電割合SOCと、出力制限用補正係数koおよび入力制限用第1補正係数ki1との関係の一例を示す図である。 予測充電継続時間Tchprと入力制限用第2補正係数ki2との関係の一例を示す図である。 要求トルク設定マップの一例を示す図である。 選択された走行モードそれぞれにおけるアクセル開度と要求トルクとの関係の一例を示す図である。 エンジンの動作点を説明するための図である。 駆動力源マップの一例を示す図である。 EV走行中にエンジンを再始動させる際の第1モータジェネレータおよびエンジンそれぞれの回転速度の変化を説明するための共線図である。 EV走行中のエンジン再始動制御の手順を示すフローチャート図である。 EV走行中のエンジン再始動時におけるバッテリの出力制限Wout、燃料ポンプおよび電磁弁の動作、デリバリパイプ内の燃料温度、エンジン始動フラグそれぞれの推移を示すタイミングチャート図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式のハイブリッド車両に本発明を適用した場合について説明する。また、本実施形態では液化ガス燃料としてLPGを使用するエンジン(内燃機関)に本発明を適用した場合について説明する。
図1は本実施形態に係るハイブリッド車両HVを示す概略構成図である。この図1に示すように、ハイブリッド車両HVは、車両走行用の駆動力を発生するエンジン1、主に発電機として機能する第1モータジェネレータMG1(第1の発電電動機)、主に電動機として機能する第2モータジェネレータMG2(第2の発電電動機)、動力分割機構3、リダクション機構4、カウンタドライブギヤ51、カウンタドリブンギヤ52、ファイナルギヤ53、デファレンシャル装置54、前輪車軸(ドライブシャフト)61,61、前輪(駆動輪)6L,6R、および、ECU(Electronic Control Unit)100などを備えており、このECU100により実行されるプログラム等によって本発明の制御装置が実現される。
なお、ECU100は、例えば、HV(ハイブリッド)ECU、エンジンECU、モータECU、バッテリECUなどによって構成されており、これらのECUが互いに通信可能に接続されている。
次に、エンジン1、燃料供給系、各モータジェネレータMG1,MG2、動力分割機構3、リダクション機構4、および、ECU100などの各部について説明する。
−エンジン−
図2および図3はエンジン1の概略構成を示す図である。なお、図3ではエンジン1の1気筒の構成のみを示している。
エンジン1は、火花点火式4気筒レシプロエンジンであり、ポート噴射式のインジェクタ(燃料噴射弁;以下、単に「インジェクタ」という)10aを備え、このインジェクタ10aから噴射された液化ガス燃料(以下、「LPG燃料」という)により燃焼室12内で混合気を生成するようになっている。なお、このインジェクタ10aは、LPG燃料を液相状態でミスト状に噴射するものであって、ECU100からの制御信号に応じて開弁開始時期および開弁期間が制御されるようになっている。
また、エンジン1の各気筒11(♯1〜♯4)内にはピストン13が設けられており、前記混合気の燃焼に伴ってこのピストン13が気筒11内で往復運動する。
前記各インジェクタ10a,10a,…は、それぞれ燃料蓄圧容器としてのデリバリパイプ10bに接続されており、このデリバリパイプ10bからLPG燃料が供給されるようになっている。これらインジェクタ10a,10a,…にLPG燃料を供給する燃料供給系の構成については後述する。
また、インジェクタ10aによって燃焼室12内に向けて噴射されたLPG燃料は、吸気通路14の一部を構成するインテークマニホールド14aを通って燃焼室12内へ導入される空気Aと共に混合気を形成し、点火プラグ15で着火されて燃焼する。混合気の燃焼圧力はピストン13に伝えられ、ピストン13を往復運動させる。吸気バルブ16は、吸気カムシャフト16aにより駆動される。この吸気カムシャフト16aは、クランクシャフト(エンジン1の出力軸)18から取り出される動力がタイミングベルト等によって伝達されて回転駆動される。なお、この吸気バルブ16の動弁系には図示しないVVT(Variable Valve Timing)機構が備えられ、吸気バルブ16のバルブ開閉タイミングが可変となっている。
ピストン13の往復運動はコネクティングロッド13aを介してクランクシャフト18に伝えられ、ここで回転運動に変換されて、エンジン1の出力として取り出される。このエンジン1の出力は、クランクシャフト18およびダンパ20(図1を参照)を介してインプットシャフト21に伝達される。このダンパ20は、例えばコイルスプリング式トランスアクスルダンパであってエンジン1のトルク変動を吸収する。
また、燃焼後の混合気は排気ガスExとなり、排気バルブ17の開弁動作に伴って排気通路19の一部であるエキゾーストマニホールド19aへ排出される。排気ガスExは、エキゾーストマニホールド19aの下流側に設けられた触媒コンバータ19bにより浄化された後、大気中へ放出される。前記排気バルブ17は、排気カムシャフト17aにより駆動される。この排気カムシャフト17aは、クランクシャフト18から取り出される動力がタイミングベルト等によって伝達されて回転駆動される。なお、この排気バルブ17の動弁系にもVVT機構が備えられていてもよい。
また、エンジン1は、吸気通路14におけるエアクリーナ14bの下流側に設けられたスロットルボディ8により吸入空気量が調整される。このスロットルボディ8は、バタフライバルブで成るスロットルバルブ81と、このスロットルバルブ81を開閉駆動するスロットルモータ82と、スロットルバルブ81の開度を検出するスロットル開度センサ103とを備えている。ECU100は、運転者(ドライバ)により操作されるアクセルの開度を検知するアクセル開度センサ101からの出力を取得して、スロットルモータ82に制御信号を送り、スロットル開度センサ103からのスロットルバルブ81の開度のフィードバック信号に基づいて、スロットルバルブ81を適切な開度に制御する。これにより、エンジン1の気筒11内へ導入する空気Aの量を調整する。なお、アクセルの開度とスロットルバルブ81の開度との関係は、後述する走行モード選択スイッチ120(図4を参照)によって選択される走行モードによって異なるものとなる。これら走行モードについては後述する。
前記触媒コンバータ19bの上流側(排気流れの上流側)の排気通路19には空燃比(A/F)センサ110が配置されている。このA/Fセンサ110は、空燃比に対してリニアな特性を示すセンサである。また、触媒コンバータ19bの下流側の排気通路19にはO2センサ111が配置されている。このO2センサ111は、排気ガス中の酸素濃度に応じて起電力を発生するものであり、理論空燃比に相当する電圧(比較電圧)よりも出力が高いときはリッチと判定し、逆に比較電圧よりも出力が低いときはリーンと判定する。これらA/Fセンサ110およびO2センサ111の出力信号は空燃比フィードバック制御(例えば、特開2010−007561号公報に記載の技術を参照)に用いられる。
−燃料供給系−
前記各インジェクタ10a,10a,…にLPG燃料を供給する燃料供給系は、図2に示すように、燃料タンク10d、燃料ポンプ10e、前記デリバリパイプ10b、燃料タンク10dとデリバリパイプ10bとを接続する燃料供給管(供給経路)10cおよび燃料還流管(還流経路)10fを備えている。
燃料タンク10dにはLPG燃料が液相状態で貯留されている。この燃料タンク10dは、耐圧性が要求されるため、ボンベ形状を成す金属製のものが使用されている。
燃料ポンプ10eは、電動ポンプで構成されており、前記ECU100からの制御信号に応じて作動と停止とが切り換えられる。また、この燃料ポンプ10eは、燃料タンク10dの底部に設置されており、燃料タンク10d内のLPG燃料が減少したときにも、確実にLPG燃料を汲み出すことができるようになっている。そして、この燃料ポンプ10eが作動すると、燃料タンク10d内のLPG燃料が燃料供給管10cを経てデリバリパイプ10bに圧送されることになる。
また、前記燃料タンク10dには、燃料タンク10d内のLPG燃料の温度を検出し、その検出結果に応じた電気信号を出力するタンク内燃料温度センサ115と、燃料タンク10d内のLPG燃料の圧力を検出し、その検出結果に応じた電気信号を出力するタンク内燃料圧力センサ116とが設けられている。
デリバリパイプ10bは、圧送された燃料を液相のまま貯留する燃料蓄圧容器としての機能を有している。このデリバリパイプ10b内の余剰燃料は燃料還流管10fを経て燃料タンク10dに還流されるようになっている。具体的に、この燃料還流管10fにはプレッシャレギュレータ10gおよび電磁弁(本発明でいう「電気的に開度が制御可能な制御弁」)10iが設けられており、電磁弁10iが開放状態にある場合には、デリバリパイプ10b内の燃料圧力が燃料タンク10d内の圧力よりも所定圧力(例えば0.4MPa)だけ高くなった際にプレッシャレギュレータ10gが開放されて燃料の一部が燃料タンク10dに向けて還流されることになる。これにより、デリバリパイプ10bの内部圧力は所定値(燃料タンク10d内の圧力に対して所定値だけ高い圧力)に調圧され、インジェクタ10aからの燃料噴射が安定的に行われるようになっている。例えば、燃料タンク10d内の圧力が0.4MPaとなっており、プレッシャレギュレータ10gが開弁する差圧(プレッシャレギュレータ10gのデリバリパイプ側圧力と燃料タンク側圧力との差圧)も0.4MPaとなっている場合には、デリバリパイプ10b内の燃料圧力は0.8MPaに調整されることになる。これら値はこれに限定されるものではなく適宜設定される。
また、前記電磁弁10iは、ECU100からの制御信号に応じて開放状態と閉鎖状態とが切り換えられる。例えば、後述するEV走行中において、デリバリパイプ10b内の燃料圧力が所定圧力に上昇するまでは電磁弁10iは閉鎖状態とされ、この燃料圧力が所定圧力に上昇した場合には電磁弁10iが開放されてデリバリパイプ10b内のLPG燃料を燃料タンク10dに戻すようになっている。これによりデリバリパイプ10b内の燃料圧力の過上昇を防止する。
前記燃料還流管10fにおける前記デリバリパイプ10bとプレッシャレギュレータ10gとの間には、燃料還流管10f内のLPG燃料の温度(デリバリパイプ10b内のLPG燃料の温度と同等)を検出し、その検出結果に応じた電気信号を出力する燃料温度センサ113と、燃料還流管10f内のLPG燃料の圧力(デリバリパイプ10b内のLPG燃料の圧力と同等)を検出し、その検出結果に応じた電気信号を出力する燃料圧力センサ114とが設けられている。
前記燃料供給管10cには遮断弁10hが配設されている。この遮断弁10hは、前記ECU100からの制御信号に応じて開放状態と閉鎖状態とが切り換えられる。また、この遮断弁10hは、前記電磁弁10iと同様に、EV走行中において、デリバリパイプ10b内の燃料圧力が所定圧力に上昇するまでは閉鎖状態とされ、この燃料圧力が所定圧力に上昇した場合には開放されてデリバリパイプ10b内のLPG燃料を燃料タンク10dに戻し得るように逆流を許容する。
このような燃料供給系の構成により、エンジン1の駆動中にあっては、前記電磁弁10iおよび遮断弁10hが共に開放し、燃料ポンプ10eが作動する。これにより、燃料ポンプ10eからデリバリパイプ10bに圧送されたLPG燃料のうちインジェクタ10aから気筒内に噴射されたLPG燃料以外の余剰のLPG燃料が、デリバリパイプ10b内の圧力上昇に伴うプレッシャレギュレータ10gの開弁動作によって燃料還流管10fから燃料タンク10d内に戻されるといったLPG燃料の循環が行われる。このエンジン1の駆動中におけるLPG燃料の循環により、デリバリパイプ10b内の圧力および温度は所定範囲内に維持され、沸点が比較的低いLPG燃料であってもデリバリパイプ10b内において液相状態が維持されることになる。
−モータジェネレータ−
前記第1モータジェネレータMG1は、前記インプットシャフト21に対して相対回転自在に支持された永久磁石からなるロータMG1Rと、3相巻線が巻回されたステータMG1Sとを備えた交流同期発電機であって、発電機として機能するとともに電動機(電動モータ)としても機能する。また、第2モータジェネレータMG2も同様に、インプットシャフト21に対して相対回転自在に支持された永久磁石からなるロータMG2Rと、3相巻線が巻回されたステータMG2Sとを備えた交流同期発電機であって、電動機(電動モータ)として機能するとともに発電機としても機能する。
図4に示すように、第1モータジェネレータMG1および第2モータジェネレータMG2は、それぞれインバータ200を介してバッテリ(蓄電池)300に接続されている。インバータ200はECU100によって制御され、そのインバータ200の制御により各モータジェネレータMG1,MG2の回生または力行(アシスト)が設定される。回生時の回生電力はインバータ200を介してバッテリ300に充電される。また、各モータジェネレータMG1,MG2の駆動用電力はバッテリ300からインバータ200を介して供給される。
前記バッテリ300は、前記バッテリECU(図示省略)によって管理されている。このバッテリECUには、バッテリ300を管理するために必要となる信号、例えば、バッテリ300の端子間に設置された電圧センサ117からの端子間電圧Vb,バッテリ300の正極側の出力端子に取り付けられた電流センサ118からの充放電電流Ib,バッテリ300に取り付けられたバッテリ温度センサ119からのバッテリ温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ300の状態に関するデータを通信により前記HVECUに出力する。また、バッテリECUは、バッテリ300を管理するために、電流センサ117により検出された充放電電流Ibの積算値に基づいてバッテリ300に蓄えられている蓄電量の全容量(蓄電容量)に対する割合である蓄電割合SOC(State of Charge)を演算している。この蓄電割合SOCはバッテリ300の充電量(蓄電残量)と一義的に対応しているため、以下では、このSOCをバッテリ300の充電量として表す場合もある。
−動力分割機構−
図1に示すように、動力分割機構3は、複数の歯車要素の中心で自転する外歯歯車のサンギヤS3と、サンギヤS3に外接しながらその周辺を自転しつつ公転する外歯歯車のピニオンギヤP3と、ピニオンギヤP3と噛み合うように中空環状に形成された内歯歯車のリングギヤR3と、ピニオンギヤP3を支持するとともに、このピニオンギヤP3の公転を通じて自転するプラネタリキャリアCA3とを有する遊星歯車機構によって構成されている。プラネタリキャリアCA3はエンジン1側のインプットシャフト21に回転一体に連結されている。サンギヤS3は、第1モータジェネレータMG1のロータMG1Rに回転一体に連結されている。
そして、このような構成の動力分割機構3において、プラネタリキャリアCA3に入力されるエンジン1の出力トルクに対して、第1モータジェネレータMG1による反力トルクがサンギヤS3に入力されると、出力要素であるリングギヤR3には、エンジン1から入力されたトルクより大きいトルクが現れる。この場合、第1モータジェネレータMG1は発電機として機能する。第1モータジェネレータMG1が発電機として機能するときには、プラネタリキャリアCA3から入力されるエンジン1の駆動力が、サンギヤS3側とリングギヤR3側とにそのギヤ比に応じて分配される。
一方、エンジン1の始動要求時にあっては、第1モータジェネレータMG1が電動機(スタータモータ)として機能し、この第1モータジェネレータMG1の駆動力がサンギヤS3およびプラネタリキャリアCA3を介してクランクシャフト18に与えられてエンジン1がクランキングされる。
また、車両の走行中にあっては、動力分割機構3において、リングギヤR3の回転速度(出力軸回転速度)が一定であるときに、第1モータジェネレータMG1の回転速度を上下に変化させることにより、エンジン1の回転速度を連続的に(無段階に)変化させることができる。つまり、動力分割機構3が変速部として機能する。
−リダクション機構−
リダクション機構4は、複数の歯車要素の中心で自転する外歯歯車のサンギヤS4と、キャリヤ(トランスアクスルケース)CA4に回転自在に支持され、サンギヤS4に外接しながら自転する外歯歯車のピニオンギヤP4と、ピニオンギヤP4と噛み合うように中空環状に形成された内歯歯車のリングギヤR4とを有する遊星歯車機構によって構成されている。リダクション機構4のリングギヤR4と、前記動力分割機構3のリングギヤR3と、カウンタドライブギヤ51とは互いに一体となっている。また、サンギヤS4は第2モータジェネレータMG2のロータMG2Rと回転一体に連結されている。
このリダクション機構4は、第2モータジェネレータMG2の駆動力を適宜の減速比で減速する。この減速された駆動力は、カウンタドライブギヤ51、カウンタドリブンギヤ52、ファイナルギヤ53、デファレンシャル装置54、および、ドライブシャフト61,61を介して左右の駆動輪6L,6Rに伝達される。
−ECU−
ECU100は、エンジン1の運転制御、エンジン1およびモータジェネレータMG1,MG2の協調制御などを含む各種制御を実行する電子制御装置であって、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびバックアップRAMなどを備えている。
ROMには、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPUは、ROMに記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAMはCPUでの演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAMは図示しないパワースイッチ(イグニッションスイッチ)のOFF時などにおいて保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
ECU100には、図4に示すように、前記アクセル開度センサ101、レゾルバで構成されクランクシャフト18の回転角度位置を検出するクランクポジションセンサ102、前記スロットル開度センサ103、シフト操作装置7に備えられたシフトレバー71の操作位置を検出するシフトポジションセンサ104、車輪6L,6Rの回転速度を検出する車輪速センサ105、ブレーキペダルに対する踏力(ブレーキ踏力)を検出するブレーキペダルセンサ106、エンジン1の冷却水温度を検出する水温センサ107、吸入空気量を計測するエアフローメータ108、吸入空気温度を検出する吸気温センサ109、前記A/Fセンサ110、O2センサ111、吸気カムシャフト16aの近傍に配設されて気筒判別センサとして使用されるカムポジションセンサ112、前記各燃料温度センサ113,115、各燃料圧力センサ114,116、前記電圧センサ117、電流センサ118、バッテリ温度センサ119等が接続されており、これらの各センサからの信号がECU100に入力されるようになっている。
また、運転席近傍には走行モード選択スイッチ120が設けられている。この走行モード選択スイッチ120は、運転者の操作により、走行モードとして、パワーモード、エコモード、EV走行モードの選択(切り換え)が可能となっている。この走行モード選択スイッチ120が操作された際、その選択された走行モードに応じた出力信号がECU100に入力されるようになっている。
走行モードがパワーモードに選択された場合には、車輪6L,6Rに向けて出力されるトルクを高めると共にエンジン1の回転速度を高めて運転者によるアクセル操作量に対するトルク出力の応答性が向上するようにエンジン1および各モータジェネレータMG1,MG2が制御される。また、走行モードがエコモードに選択された場合には、走行用の動力の出力応答性よりも燃費の改善を優先させながら走行されるようにエンジン1および各モータジェネレータMG1,MG2が制御される。また、必要に応じてエンジン1は停止される。また、走行モードがEV走行モードに選択された場合には、エンジン1を停止し、第2モータジェネレータMG2のみを走行駆動力源とする走行が行われる。また、走行モード選択スイッチ120上の何れの走行モードも選択されていない場合には、通常モードとしてのノーマルモードとなる。なお、走行モード選択スイッチ120としては、前記各走行モードが選択可能なダイヤル式スイッチであってもよいし、パワーモードスイッチ、エコモードスイッチおよびEV走行モードスイッチそれぞれが独立した押し込み式スイッチで構成されたものであってもよい。
また、ECU100には、エンジン1のスロットルバルブ81を開閉駆動するスロットルモータ82、前記インジェクタ10a、前記点火プラグ15の点火タイミングを調整するイグナイタ15a、前記燃料ポンプ10e、前記遮断弁10h、前記電磁弁10iなどが接続されている。
そして、ECU100は、前記した各種センサからの出力信号や走行モード選択スイッチ120からの走行モード選択信号等に基づいて、エンジン1のスロットル開度制御(吸入空気量制御)、燃料噴射量制御、および、点火時期制御などのエンジン1の各種制御を実行する他、ハイブリッドシステム全体の制御(各モータジェネレータMG1,MG2のトルク制御等)を行う。また、ECU100は、後述するEV走行を行っている状態からエンジン1を始動するエンジン再始動制御も行う。
さらに、ECU100(バッテリECU)は、バッテリ300を管理するために、前記電流センサ118にて検出された充放電電流Ibの積算値や、バッテリ温度センサ119にて検出されたバッテリ温度Tbなどに基づいて、バッテリ300の充電状態(SOC)や、バッテリ300の入力制限Winおよび出力制限Woutなどを演算する(詳しくは後述する)。
また、ECU100には前記インバータ200が接続されている。インバータ200は、各モータジェネレータMG1,MG2それぞれの制御用のIPM(Intelligent Power Module:インテリジェントパワーモジュール)を備えている。その各IPMは、複数(例えば6個)の半導体スイッチング素子(例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ))などによって構成されている。
インバータ200は、例えば、ECU100からの指令信号(例えば、第1モータジェネレータMG1のトルク指令値、第2モータジェネレータMG2のトルク指令値)に応じてバッテリ300からの直流電流を、モータジェネレータMG1,MG2を駆動する電流に変換する一方、エンジン1の動力により第1モータジェネレータMG1で発電された交流電流、および、回生ブレーキにより第2モータジェネレータMG2で発電された交流電流を、バッテリ300に充電するための直流電流に変換する。また、インバータ200は、第1モータジェネレータMG1で発電された交流電流を、走行状態に応じて、第2モータジェネレータMG2の駆動用電力として供給する。
−Win,Woutの演算手法−
ここで前記バッテリ300の入力制限Winおよび出力制限Woutの演算手法について説明する。
これら入力制限Winおよび出力制限Woutを演算するためのルーチンとしては、これら値を演算するために使用するデータの入力処理、予測充電継続時間Tchprの設定処理、入力制限Winおよび出力制限Woutの演算処理が順に行われる。以下、具体的に説明する。
まず、バッテリ300の蓄電割合SOC、バッテリ温度Tb、アクセル開度Acc、ブレーキペダルポジションBP、車速Vなどのデータを入力する処理を実行する。
前記バッテリ300の蓄電割合SOCは、電流センサ118により検出された充放電電流Ibの積算値に基づいて演算される。また、バッテリ温度Tb、アクセル開度Acc、ブレーキペダルポジションBP、車速Vは、それぞれバッテリ温度センサ119、アクセル開度センサ101,ブレーキペダルセンサ106,車輪速センサ105により検出される。
これらデータが入力されると、車速V、アクセル開度AccおよびブレーキペダルポジションBPに基づいて、バッテリ300が充電される際の充電継続時間Tchの予測値としての予測充電継続時間Tchprを設定する。
具体的には、車速V、アクセル開度AccおよびブレーキペダルポジションBPと、予測充電継続時間Tchprとの関係を予め定めて予測充電継続時間設定用マップを作成し、この予測充電継続時間設定用マップを前記ECU100のROMに記憶しておく。そして、各センサから取得した車速V、アクセル開度AccおよびブレーキペダルポジションBPを予測充電継続時間設定用マップに当て嵌めることによって予測充電継続時間Tchprを導出するようにしている。
この予測充電継続時間Tchprは、車速Vが高いほど長くなる傾向となり、ブレーキペダルポジションBPが大きいほど(ブレーキ踏み込み量が多いほど)短くなる傾向となり、アクセル開度Accが大きいほど長くなる傾向となるように設定される。この理由を以下に説明する。バッテリ300の充電継続時間Tchは、通常、運転者がアクセルペダルを離したりブレーキペダルを踏み込んだりする減速要求の継続時間が長いほど長くなる。本実施形態では、このことを踏まえ、車速Vが高いほど減速要求時にその継続時間が長くなることが多いと考えられ、ブレーキペダルポジションBPが大きいほど運転者が急減速を要求しているために継続時間としては短くなることが多いと考えられ、アクセル開度Accが大きいほどその後に運転者が減速要求を行うときに継続時間が長くなることが多いと考えられるとの判断に基づいて、車速V、ブレーキペダルポジションBPおよびアクセル開度Accに応じて予測充電継続時間Tchprを設定するものとしている。
続いて、バッテリ300の蓄電割合SOC、バッテリ温度Tbおよび予測充電継続時間Tchprに基づいてバッテリ300の入力制限Winおよび出力制限Woutの演算処理を行う。
バッテリ300の出力制限Woutの演算処理としては、まず、バッテリ温度Tbに基づいて出力制限Woutの基本値としての基本出力制限Woutbを設定し、バッテリ300の蓄電割合SOCに基づいて出力制限用補正係数koを設定する。そして、基本出力制限Woutbに出力制限用補正係数koを乗算して出力制限Woutを求めるようにしている。
また、バッテリ300の入力制限Winの演算処理としては、まず、バッテリ温度Tbに基づいて入力制限Winの基本値としての基本入力制限Winbを設定する。また、バッテリ300の蓄電割合SOCに基づいて入力制限用第1補正係数ki1を設定し、予測充電継続時間Tchprに基づいて入力制限用第2補正係数ki2を設定し、バッテリ300を保護するためやバッテリ300の劣化を抑制するための劣化抑制補正係数ki3を設定する。そして、基本入力制限Winbに、入力制限用第1補正係数ki1、入力制限用第2補正係数ki2および劣化抑制補正係数ki3をそれぞれ乗算して入力制限Winを求めるようにしている。
図5は、バッテリ温度Tbと、基本出力制限Woutbおよび基本入力制限Winbとの関係の一例を示している。また、図6は、バッテリ300の蓄電割合SOCと、出力制限用補正係数koおよび入力制限用第1補正係数ki1との関係の一例を示している。また、図7は、予測充電継続時間Tchprと入力制限用第2補正係数ki2との関係の一例を示している。バッテリ温度Tbと、基本出力制限Woutbおよび基本入力制限Winbとの関係や、バッテリ300の蓄電割合SOCと、出力制限用補正係数koおよび入力制限用第1補正係数ki1との関係や、予測充電継続時間Tchprと入力制限用第2補正係数ki2との関係については公知(例えば特開2012−96647号公報)であるため、詳細な説明は省略する。
以上がバッテリ300の入力制限Winおよび出力制限Woutの演算手法である。なお、これら値の演算手法としては、前述したものには限定されない。
−ハイブリッドシステムにおける駆動力の流れ−
このように構成されたハイブリッド車両HVは、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて、駆動輪6L,6Rに出力すべきトルク(要求トルク)を計算し、この要求トルクに対応する要求駆動力により走行するように、エンジン1と各モータジェネレータMG1,MG2とが運転制御される。図8は、前記ノーマルモード選択時において、アクセル開度Accおよび車速Vに応じて要求トルクTrを求める要求トルク設定マップの一例を示している。この要求トルク設定マップは、前記ECU100のROMに記憶されており、アクセル開度Accと車速Vとが与えられることで要求トルクTrを抽出するものとなっている。
なお、前記走行モード選択スイッチ120の操作によってパワーモードやエコモードが選択された場合には、その選択されたモードに応じて、アクセル開度に応じた要求トルクが変更されることになる。図9は、選択された走行モードそれぞれにおけるアクセル開度と要求トルクとの関係の一例を示す図である。この図9における実線はノーマルモード選択時におけるアクセル開度と要求トルクとの関係を示している。また、図9における破線はパワーモード選択時におけるアクセル開度と要求トルクとの関係を示している。さらに、図9における一点鎖線はエコモード選択時におけるアクセル開度と要求トルクとの関係を示している。この図9から解るように、同一アクセル開度であっても、パワーモード選択時にはノーマルモード選択時に比べて要求トルクは高く設定され、逆に、エコモード選択時にはノーマルモード選択時に比べて要求トルクは低く設定されることになる。
走行モードに応じた要求トルクを求めるための具体的な手法としては、例えば、図9に基づいて、ノーマルモード選択時に対するパワーモード選択時およびエコモード選択時それぞれの要求トルク補正係数を求め(ノーマルモード選択時の補正係数を「1」とした場合、パワーモード選択時の補正係数は「1」よりも大きな値となり、エコモード選択時の補正係数は「0」〜「1」の間の値となる)、図8(ノーマルモード選択時の要求トルク設定マップ)から求められる要求トルクに前記要求トルク補正係数を乗算することによって、現在選択されている走行モードに応じた要求トルクを求めることが挙げられる。また、図8に示したような要求トルク設定マップを、各走行モード(ノーマルモード、パワーモード、エコモード)それぞれに対応して作成しておき、これらをECU100のROMに記憶させて、現在選択されている走行モードに応じた要求トルク設定マップを読み出すことで要求トルクを求めるようにしてもよい。なお、要求トルクを求めるための手法としてはこれらに限定されるものではない。
前記エンジン1およびモータジェネレータMG1,MG2の運転制御として具体的には、燃料消費量の削減を図るために、要求トルクが比較的低い運転領域にあっては、第2モータジェネレータMG2を利用して前記要求トルクが得られるようにする。一方、要求トルクが比較的高い運転領域にあっては、第2モータジェネレータMG2を利用すると共に、エンジン1を駆動し、これら駆動力源(走行駆動力源)からの駆動力により、前記要求トルクが得られるようにする。
より具体的には、車両の発進時や低速走行時等であってエンジン1の運転効率が低い場合には、バッテリ300の充電量SOCが所定量以上であることを条件として、第2モータジェネレータMG2のみにより走行(以下、「EV走行」または「モータ走行」という)を行う。また、車室内に配置された前記走行モード選択スイッチ120によって運転者がEV走行モードを選択している場合にもEV走行を行う。
一方、エンジン1を駆動させる通常走行(以下、「HV走行」または「エンジン走行」という)時には、例えば前記動力分割機構3によりエンジン1の駆動力を2経路に分け、その一方の駆動力で駆動輪6L,6Rの直接駆動(直達トルクによる駆動)を行い、他方の駆動力で第1モータジェネレータMG1を駆動して発電を行う。このとき、第1モータジェネレータMG1の駆動により発生する電力で第2モータジェネレータMG2を駆動して駆動輪6L,6Rの駆動補助を行う(電気パスによる駆動)。
このように、前記動力分割機構3が差動機構として機能し、その差動作用によりエンジン1からの動力の主部を駆動輪6L,6Rに機械的に伝達し、そのエンジン1からの動力の残部を第1モータジェネレータMG1から第2モータジェネレータMG2への電気パスを用いて電気的に伝達することにより、電気的に変速比が変更される電気式無段変速機としての機能が発揮される。これにより、駆動輪6L,6Rの回転速度およびトルクに依存することなく、エンジン回転速度およびエンジントルクを自由に操作することが可能となり、駆動輪6L,6Rに要求される駆動力を得ながらも、燃料消費率が最適化されたエンジン1の運転状態(後述する最適燃費動作ライン上の運転状態)を得ることが可能となる。
具体的に、図10を用いて説明する。この図10は横軸をエンジン回転速度とし、縦軸をエンジントルクとしたエンジン1の動作点を表す図である。図中の実線は最適燃費動作ラインであって、前述した動力分割機構3を利用した電気的変速機能によって、エンジン1を、この最適燃費動作ライン上の運転状態に制御することが可能となっている。具体的には、アクセル開度等に応じて決定される要求パワーライン(図中に二点鎖線で示すライン)と、前記最適燃費動作ラインとの交点(図中の点A)をエンジン1の目標動作点(目標運転点)としてハイブリッドシステムが制御されることになる。
また、高速走行時には、さらにバッテリ300からの電力を第2モータジェネレータMG2に供給し、この第2モータジェネレータMG2の出力を増大させて駆動輪6L,6Rに対して駆動力の追加(駆動力アシスト;力行)を行う。
前記EV走行とHV走行との切り換えは図11に示す駆動力源マップに従って行われる。この駆動力源マップは、車速Vと要求トルクTrとに基づいて走行モード(EV走行およびHV走行)を選択するためのマップである。この駆動力源マップにおける実線Bよりも低車速側および低要求トルク側がEV走行領域とされ、バッテリ300の充電量SOCが所定量以上であることを条件として、第2モータジェネレータMG2のみを走行駆動力源としたEV走行を行う。また、実線Bよりも高車速側および高要求トルク側がHV走行領域とされ、エンジン1を走行駆動力源とした(また、必要に応じて第2モータジェネレータMG2の駆動力を併用した)HV走行を行う。
さらに、減速時には、第2モータジェネレータMG2が発電機として機能して回生発電を行い、回収した電力をバッテリ300に蓄える。なお、バッテリ300の充電量(残容量;SOC)が低下し、充電が特に必要な場合には、エンジン1の出力を増加して第1モータジェネレータMG1による発電量を増やしてバッテリ300に対する充電量を増加する。また、低速走行時においても必要に応じてエンジン1の出力を増加する制御を行う場合もある。例えば、前述のようにバッテリ300の充電が必要な場合や、エアコンディショナ等の補機を駆動する場合や、エンジン1の冷却水の温度を所定温度まで上げる場合などである。
また、本実施形態のハイブリッド車両HVにおいては、車両の運転状態やバッテリ300の状態によって、燃費を改善させるために、エンジン1を停止させる。そして、その後も、ハイブリッド車両HVの運転状態やバッテリ300の状態を検知して、エンジン1を再始動させる。このように、ハイブリッド車両HVにおいては、エンジン1が間欠運転(エンジン停止と再始動とを繰り返す運転)される。
ここでEV走行中にエンジン始動要求が生じ、それに伴ってエンジン1を始動させてHV走行に移行する際の動作について説明する。エンジン始動要求としては、運転者の車両加速要求(アクセルペダルの踏み増しによる要求トルクの増大)などによって車速Vおよび要求トルクTrが、前記駆動力源マップ(図11)におけるEV走行領域からHV走行領域に移行した際に生じる。また、バッテリ300の状態量によってもエンジン始動要求は生じる。具体的には、出力制限Woutが所定の閾値以下に低下した場合、入力制限Winが所定の閾値以下に低下した場合、充電量SOCが所定の閾値以下に低下した場合、バッテリ温度Tbが所定範囲を逸脱した場合、つまり、バッテリ温度Tbが上昇して所定の閾値以上に達した場合やバッテリ温度Tbが下降して所定の閾値以下に達した場合には、エンジン始動要求が生じてEV走行からHV走行に移行する。前記各閾値は本発明でいう第2閾値(内燃機関始動要求値)に相当する。つまり、バッテリ300の状態量であってエンジン始動要求に関連するパラメータの閾値として、エンジン再始動要求が生じる(EV走行中にエンジン始動要求が生じる)閾値である。
図12は、EV走行中にエンジン始動要求が生じてエンジン1を再始動させる際の第1モータジェネレータMG1およびエンジン1それぞれの回転速度の変化を説明するための共線図である。図中の左側のS軸は第1モータジェネレータMG1の回転速度であるサンギヤS3の回転速度を示し、C軸はエンジン1の回転速度であるプラネタリキャリアCA3の回転速度を示し、R軸は第2モータジェネレータMG2の回転速度をリダクション機構4のギヤ比で除した値であるリングギヤR4の回転速度Nrを示している。
ここでは、図12に実線で示すようにエンジン1の回転速度が「0」で第1モータジェネレータMG1の回転速度がNmI(負回転)となっているEV走行状態から、破線で示すように第1モータジェネレータMG1の回転速度をNmII(正回転)まで変化させてエンジン1の回転速度をNeIIへ引き上げて(クランキングして)エンジン1を再始動させる場合について説明する。具体的には、第1モータジェネレータMG1を電動機として駆動させることによって、動力分配機構3のサンギヤS3を正回転側に駆動することにより、ピニオンギヤP3ならびにキャリヤCA3を介してエンジン1のクランクシャフト18に正回転向きの正駆動力を入力させる(図12における正駆動力を示す矢印を参照)。これにより、エンジン1がクランキングされる。このクランキングの開始と略同時に、インジェクタ10aからの燃料の供給および点火プラグ15の点火を行うことにより、エンジン1が始動される。そして、エンジン回転速度が自律回転可能な回転速度(例えば完爆時の回転速度)まで上昇したときに、第1モータジェネレータMG1によるクランキングを終了する。
このようなエンジン1の再始動が行われる場合にあっては、前述した如く再始動開始時における第1モータジェネレータMG1の回転が負回転であった場合、すなわち前記インプットシャフト21の正転方向(車両前進方向)の回転を正方向とした場合における負方向の回転(回転速度NmI<0)であった場合には、この第1モータジェネレータMG1の回転速度が「0」となるまで第1モータジェネレータMG1により発電(バッテリ300に対する電気エネルギの供給)が行われ、第1モータジェネレータMG1の回転方向が正回転方向となった以降は放電(バッテリ300からの電気エネルギの持ち出し)が行われる。
このため、エンジン1の再始動開始時における車速V(またはリングギヤR4の回転速度Nr)が高いほど第1モータジェネレータMG1の負回転側の回転速度NmIは高くなっており、EV走行状態からのエンジン再始動に伴う第1モータジェネレータMG1の回転速度引き上げ量が増加するため、第1モータジェネレータMG1により発電される発電量(バッテリ300に供給される電気エネルギ)が増加する傾向にある。
−EV走行中のエンジン再始動制御−
次に、本実施形態の特徴とする動作であるEV走行中におけるエンジン再始動制御について説明する。
まず、このEV走行中におけるエンジン再始動制御の概略について説明する。
前記EV走行中にあっては、エンジン1が駆動されないため、エンジン1に燃料を供給する必要がないことから燃料ポンプ10eを停止してしまうと燃料供給系(燃料供給管10c、デリバリパイプ10b、燃料還流管10fなど)にLPG燃料が流れない状況になる。つまり、上述した燃料供給系におけるLPG燃料の循環が行われない状況になる。このような状況において、エンジン本体からの輻射熱や熱伝導等によって燃料供給系、特にデリバリパイプ10b内の温度が上昇し、燃料温度が飽和蒸気温度を超えた場合には、デリバリパイプ10b内に気相燃料が発生することになる。このようにデリバリパイプ10b内に気相燃料が発生した状態で、バッテリ300の蓄電量SOCが所定量を下回るなどしてエンジンの再始動要求が生じてEV走行からHV走行に切り換わった際(エンジン1が再始動した際)には、インジェクタ10aから気相燃料が噴射されることになり、適正な燃料噴射量が得られなくなる。その結果、運転者の要求に応じた駆動力が得られなくなり、ドライバビリティの悪化を招いてしまう可能性がある。
また、前記特許文献1に開示されているように気相燃料の発生を抑制することを目的としてエンジンの始動を遅延させて燃料ポンプを作動させることで、デリバリパイプ内を冷却した後にエンジンを再始動させるようにした場合、この遅延期間にあっては運転者の要求に応じた駆動力が得られなくなり、この場合にもドライバビリティの悪化に繋がってしまうことになる。
この点に鑑み、本実施形態では、EV走行中におけるエンジン再始動制御にあっては、まず、バッテリ300の状態量であってエンジン始動要求(内燃機関始動要求)に関連するパラメータがエンジン始動要求値(内燃機関始動要求値)に近付いて所定の第1閾値に達したときに前記電磁弁10iおよび遮断弁10hを開状態にすると共に前記燃料ポンプ10eを作動させて前記デリバリパイプ10b内のLPG燃料を燃料還流管10fに流す。これにより、デリバリパイプ10b内の比較的高温度のLPG燃料を燃料タンク10dに向けて流出させると共に、燃料供給管10c内や燃料タンク10d内の比較的低温度の燃料をデリバリパイプ10b内に導入して、このデリバリパイプ10b内での気相燃料の発生を抑制する。そして、その走行状態(EV走行状態)で、前記パラメータが前記エンジン始動要求値である所定の第2閾値に達したときにエンジン1の再始動を行うようにしている。
また、前記バッテリ300の状態量であってエンジン始動要求に関連するパラメータとしては、バッテリ300の充放電電力量の制限値、つまり前記入力制限Winおよび出力制限Woutや、バッテリ300の蓄電量、つまり前記蓄電量SOCや、バッテリ300の温度(前記バッテリ温度センサ119によって検出されるバッテリ温度Tb)等が挙げられる。
以下、EV走行中におけるエンジン再始動制御について具体的に説明する。
図13は本実施形態に係るEV走行中におけるエンジン再始動制御の手順を示すフローチャート図である。この図13に示すフローチャートは、ハイブリッドシステムの稼働中において数msec毎に実行される。また、このフローチャートはバッテリ300の充電量SOCが十分に確保されている状況で開始される。
まず、ステップST1において、前記ECU100に予め記憶されているEV走行フラグがONとなっているか否かを判定する。このEV走行フラグは、後述するEV走行条件が成立してEV走行が実施されている場合にONとされ、このEV走行条件が成立していない場合(EV走行条件が解除された場合)にはOFFとされる。
EV走行フラグがOFFでありステップST1でNO判定された場合にはステップST2に移る。
ステップST2では、EV走行条件が成立したか否かを判定する。つまり、前記間欠運転においてエンジン1を停止させてEV走行に移行する条件が成立したか否かを判定する。このEV走行条件として具体的には、バッテリ300の充電量SOCが所定量以上となっていることを条件として、車速Vおよび要求トルクTrが、前記駆動力源マップ(図11)におけるHV走行領域からEV走行領域に移行した際に成立する。つまり、車速Vの低下によってHV走行領域からEV走行領域に移行した場合や、要求トルクTrの低下によってHV走行領域からEV走行領域に移行した場合にEV走行条件が成立することになる。また、車両走行中に、運転者が前記走行モード選択スイッチ120を操作してEV走行モードを選択した場合にもEV走行条件が成立したと判定される。なお、EV走行条件としては、これらには限定されない。
このEV走行条件が成立しておらず、ステップST2でNO判定された場合には、そのままリターンされる。つまり、ハイブリッド車両HVは停車中またはHV走行中であって、その状態が継続されることになる。
一方、EV走行条件が成立し、ステップST2でYES判定された場合には、ステップST3に移る。このステップST3では、EV走行条件の成立に伴い、エンジン1を停止させてEV走行が開始される。つまり、インジェクタ10aからの燃料噴射および点火プラグ15の点火動作を共に停止してエンジン1を停止させ、前記第2モータジェネレータMG2のみを走行駆動力源とするEV走行が開始される。この場合に、第2モータジェネレータMG2が発生する駆動トルクは、図8に示した要求トルク設定マップ等から求められる要求トルクに従って設定される。また、このEV走行の開始に伴い、前記燃料ポンプ10eが停止されると共に、前記電磁弁10iおよび遮断弁10hが共に閉鎖される。これにより、燃料供給系におけるLPG燃料の流れが停止されることになる。さらに、前記EV走行フラグがONとされる。これら燃料ポンプ10eの停止や各弁10h,10iの閉鎖は、EV走行の開始と略同時に実行するようにしてもよいし、EV走行が開始された後、所定時間(例えば数sec)経過後に実行するようにしてもよい。
このようにしてEV走行が開始された後、ステップST4に移り、以下の(a1)〜(e1)のうち少なくとも一つの条件が成立したか否かを判定する。
(a1) 出力制限Woutが所定の第1閾値α1以下になったこと、
(b1) 入力制限Winが所定の第1閾値β1以下になったこと、
(c1) バッテリ300の充電量SOCが所定の第1閾値γ1以下になったこと、
(d1) バッテリ温度Tbが所定の上昇側第1閾値δ1以上になったこと、
(e1) バッテリ温度Tbが所定の下降側第1閾値ε1以下になったこと、
前記各条件における第1閾値α1〜ε1としては、前記EV走行中にエンジン始動要求が生じる閾値である前記第2閾値に対して所定の偏差を存した値として予め実験やシミュレーションによって設定されている。
具体的に、前記(a1)の条件における第1閾値α1は第2閾値(後述するα2)よりも所定量だけ高い値に設定されている。この(a1)の条件におけるパラメータである出力制限Woutは、前述した如くバッテリ300の充電量SOCやバッテリ温度Tbに相関のある値であり、この充電量SOCが少なくなってEV走行の継続が不能になる状況や、バッテリ温度Tbの変化によってEV走行で出力可能なパワーが低下して要求パワーが出力できなくなる状況(図5における基本出力制限Woutbの変化に伴う出力可能なパワーの変化を参照)を認識できるパラメータとなっている。そして、充電量SOCが少なくなってEV走行の継続が不能になる状況や、バッテリ温度Tbが変化して要求パワーが出力できなくなる状況になるとエンジン1が再始動されることになる。このため、出力制限Woutが所定の第1閾値α1以下になったか否かを判断することによって、このままEV走行が継続された場合に、EV走行からHV走行へ切り換えられる可能性があるか否かが判定できることになる。
また、前記(b1)の条件における第1閾値β1は第2閾値(後述するβ2)よりも所定量だけ高い値に設定されている。この(b1)の条件におけるパラメータである入力制限Winも、前述した如くバッテリ300の充電量SOCやバッテリ温度Tbに相関のある値であり、この充電量SOCが多くなってバッテリ300の過充電に至る可能性がある状況や、バッテリ温度Tbの変化によってEV走行で出力可能なパワーが低下して要求パワーが出力できなくなる状況(図5における基本入力制限Winbの変化に伴う出力可能なパワーの変化を参照)を認識できるパラメータとなっている。前記バッテリ300の過充電に至る可能性がある状況の一つとしては、EV走行状態からエンジン1が再始動される場合が挙げられる。具体的には、図12を用いて前述した如く、エンジン再始動開始時における第1モータジェネレータMG1の回転が負回転であった場合に、第1モータジェネレータMG1の回転速度が「0」になるまでの第1モータジェネレータMG1の発電によってバッテリ300が過充電となることが挙げられる。このため、前記第1閾値β1としては、このエンジン再始動時におけるバッテリ300の過充電が生じない値として設定されている。そして、充電量SOCの過充電に至る可能性がある状況や、バッテリ温度Tbが変化して要求パワーが出力できなくなる状況になるとエンジン1が再始動されることになる。このため、入力制限Winが所定の第1閾値β1以下になったか否かを判断することによって、このままEV走行が継続された場合に、EV走行からHV走行へ切り換えられる可能性があるか否かが判定できることになる。
また、前記(c1)の条件における第1閾値γ1は第2閾値(後述するγ2)よりも所定量だけ高い値に設定されている。この(c1)の条件におけるパラメータである充電量SOCはEV走行の継続が不能になる状況を認識できるパラメータとなっている。そして、充電量SOCが少なくなってEV走行の継続が不能になる状況になるとエンジン1が再始動されることになる。このため、充電量SOCが所定の第1閾値γ1以下になったか否かを判断することによって、このままEV走行が継続された場合に、EV走行からHV走行へ切り換えられる可能性があるか否かが判定できることになる。
また、前記(d1)の条件における第1閾値δ1は第2閾値(後述するδ2)よりも所定量だけ低い値に設定されている。さらに、前記(e1)の条件における第1閾値ε1は第2閾値(後述するε2)よりも所定量だけ高い値に設定されている。これら(d1),(e1)の条件におけるパラメータであるバッテリ温度Tbは、EV走行で出力可能なパワーが低下して要求パワーが出力できなくなる状況(図5における基本出力制限Woutbの変化に伴う出力可能なパワーの変化、および、基本入力制限Winbの変化に伴う出力可能なパワーの変化を参照)を認識できるパラメータとなっている。そして、要求パワーが出力できなくなる状況になるとエンジン1が再始動されることになる。このため、バッテリ温度Tbが、所定の上昇側第1閾値δ1以上になったか否か、または、所定の下降側第1閾値ε1以下になったか否かを判断することによって、このままEV走行が継続された場合に、EV走行からHV走行へ切り換えられる可能性があるか否かが判定できることになる。なお、前記バッテリ温度Tbはバッテリ300の劣化度合いに影響を与えるパラメータである。このため、この劣化度合いに影響を与えるバッテリ温度Tbに達するとエンジン1が再始動されることを考慮して前記第1閾値δ1,ε1を設定するようにしてもよい。
前述した如く前記第2閾値に対する各第1閾値の偏差は、実験やシミュレーションに基づいて予め設定されている。例えば、種々の走行状況を考慮し、前記パラメータの値が第1閾値に達してから第2閾値に達するまでの期間が数sec(例えば2sec)以上確保されるように設定される。具体例について挙げると、バッテリ300の充電量SOCが「35%」まで低下した時点でエンジン始動要求が生じる場合にあっては、前記第1閾値γ1としては「40%」が設定されている。また、バッテリ300の充電量SOCが「70%」まで上昇した時点でエンジン始動要求が生じる場合にあっては、前記第1閾値δ1としては「65%」が設定されている。これらの値はこれに限定されるものではない。
また、前記各条件において設定されている第1閾値(特に、(a1),(c1)の条件における第1閾値)は、EV走行状態において必要とされる上限駆動力の出力が可能な電力量がバッテリ300に確保された状態の値として設定されている。その理由について以下に説明する。EV走行にあっては、運転者のアクセル操作量が大きくなるなどして車両加速要求が大きくなるに従って第2モータジェネレータMG2の出力が上限駆動力に近付いていく。この場合に、上限駆動力の出力が可能な電力量よりも低い電力量しか残存しない値を前記第1閾値としてしまうと、この第1閾値から第2閾値に達するまでの期間で要求駆動力が得られなくなる可能性がある。このため、本実施形態では、EV走行状態において必要とされる上限駆動力の出力が可能な電力量がバッテリ300に確保された状態の値として第1閾値を設定し、第2モータジェネレータMG2の出力に余裕がある状況で、燃料ポンプ10eの起動と電磁弁10iおよび遮断弁10hの開放とを行ってデリバリパイプ10b内の燃料を燃料還流管10fに流してエンジン1の始動要求に備えるようにしている。
これら(a1)〜(e1)の何れの条件も成立しておらず、ステップST4でNO判定された場合には、バッテリ300の状態量の変化に起因してエンジン1が再始動する可能性は未だ無いとして、そのままリターンされる。つまり、EV走行を継続する。
このようにしてEV走行が継続されると、EV走行フラグがONされていることで(前記ステップST3でONされたことで)、ステップST1ではYES判定されてステップST4に移ることになる。つまり、このステップST4でYES判定されるまで(前記(a1)〜(e1)のうち少なくとも一つの条件が成立するまで)、ステップST1,ST4の動作を繰り返すことになる。
一方、前記(a1)〜(e1)のうち少なくとも一つの条件が成立し、ステップST4でYES判定された場合には、ステップST5に移り、エンジン1が再始動する可能性がある(バッテリ300の状態量の変化に起因してエンジン1が再始動する可能性がある)として、燃料ポンプ10eを起動すると共に、電磁弁10iおよび遮断弁10hを共に開放させる。これにより、EV走行中であっても燃料供給系でのLPG燃料の循環を行い、燃料タンク10d内のLPG燃料をデリバリパイプ10bに供給すると共に、このデリバリパイプ10b内のLPG燃料を燃料タンク10d内に向けて戻す。これにより、デリバリパイプ10b内のLPG燃料が入れ替わっていくことになり、このデリバリパイプ10b内のLPG燃料の温度は次第に低下していき気相燃料の発生が抑制される。
なお、このように燃料ポンプ10eの起動と電磁弁10iおよび遮断弁10hの開放とを行った状態にあっては、インジェクタ10aの燃料噴射停止状態および点火プラグ15の点火停止状態は継続され、エンジン始動要求が生じるまで(バッテリ300の状態量の変化に起因してエンジン始動要求が生じるまで)エンジン1の停止状態は維持される。また、前記燃料ポンプ10eを起動させるタイミングと、電磁弁10iおよび遮断弁10hを開放させるタイミングとは必ずしも一致させておく必要はない。例えば、電磁弁10iおよび遮断弁10hを開放させ、その後に、燃料ポンプ10eを起動させるようにしてもよい。
このように、EV走行中において燃料ポンプ10eが起動され且つ電磁弁10iおよび遮断弁10hが共に開放される状態となった後、ステップST6に移り、以下の(a2)〜(e2)のうち少なくとも一つの条件が成立したか否かを判定する。
(a2) 出力制限Woutが所定の第2閾値α2以下になったこと、
(b2) 入力制限Winが所定の第2閾値β2以下になったこと、
(c2) バッテリ300の充電量SOCが所定の第2閾値γ2以下になったこと、
(d2) バッテリ温度Tbが所定の上昇側第2閾値δ2以上になったこと、
(e2) バッテリ温度Tbが所定の下降側第2閾値ε2以下になったこと、
前記各条件における第2閾値α2〜ε2は、前述したように、EV走行中にエンジン始動要求が生じる閾値(本発明でいう「内燃機関始動要求値である所定の第2閾値」)に設定されている。
これら(a2)〜(e2)の何れの条件も成立しておらず、ステップST6でNO判定された場合には、未だエンジン始動要求は生じていない(エンジン始動に至るバッテリ300の状態量には達していない)として、ステップST8に移る。
一方、前記(a2)〜(e2)のうち少なくとも一つの条件が成立し、ステップST6でYES判定された場合には、ステップST7に移る。
このステップST6でYES判定される場合としては、(i)出力制限Woutが第1閾値α1となった後に(前記条件(a1)が成立した後に)第2閾値α2まで低下した(前記条件(a2)が成立した)場合、(ii)入力制限Winが第1閾値β1となった後に(前記条件(b1)が成立した後に)第2閾値β2まで低下した(前記条件(b2)が成立した)場合、(iii)バッテリ300の充電量SOCが第1閾値γ1となった後に(前記条件(c1)が成立した後に)第2閾値γ2まで低下した(前記条件(c2)が成立した)場合、(iv)バッテリ温度Tbが上昇側第1閾値δ1まで上昇した後に(前記条件(d1)が成立した後に)第2閾値δ2まで上昇した(前記条件(d2)が成立した)場合、(v)バッテリ温度Tbが下降側第1閾値ε1まで下降した後に(前記条件(e1)が成立した後に)第2閾値ε2まで下降した(前記条件(e2)が成立した)場合に限らず、その他の状態量同士の組み合わせによってステップST6でYES判定される場合もある。例えば、バッテリ300の充電量SOCが第1閾値γ1となった後に(前記条件(c1)が成立した後に)、出力制限Woutが第2閾値α2まで低下した(前記条件(a2)が成立した)場合や、出力制限Woutが第1閾値α1となった後に(前記条件(a1)が成立した後に)、バッテリ温度Tbが第2閾値δ2まで上昇した(前記条件(d2)が成立した)場合等である。
ステップST6でYES判定されてステップST7に移ると、エンジン始動要求が生じたとして、エンジン始動制御を実行する。つまり、前記第1モータジェネレータMG1の駆動力をサンギヤS3およびプラネタリキャリアCA3を介してクランクシャフト18に与えてエンジン1をクランキングさせながら、インジェクタ10aの燃料噴射および点火プラグ15の点火を実施することにより、エンジン1を再始動させる。また、このエンジン始動制御の実行に伴い、前記EV走行フラグをOFFにする。
なお、エンジン始動制御では、第1モータジェネレータMG1の駆動力を利用したエンジン1のクランキングによりバッテリ300の蓄電量が消費されることになる。従って、エンジン始動制御が実行される際には、バッテリ300の充電量SOCとしては、少なくともエンジン始動制御に必要な電力量を確保しておく必要がある。このため、前記第2閾値としては、このエンジン始動制御に必要な電力量が確保された範囲内におけるバッテリ300の状態量を考慮して設定されることになる。これにより、EV走行からHV走行へ切り換わる際の駆動力不足を回避することが可能になる。
また、このエンジン始動制御に必要な電力量としては、エンジン1の慣性が大きいほど、また車速が低いほど大きな電力量が必要になり、エンジン始動制御で消費される電力量も多くなる傾向にある。このため、このようにエンジン始動制御に必要な電力量が多くなる状況であるほど、前記第2閾値(特にα2,γ2)としては高い値に設定して(車速等に応じて第2閾値を逐次更新して)バッテリ300の蓄電量が十分に確保されている状況でエンジン始動制御が開始されるようにしている。また、この第2閾値の更新に伴って第1閾値の更新も行われる。つまり、第2閾値が高い値に更新された場合には、それに伴い第1閾値も高い値に更新する。これは、アクセル開度等が第1閾値に達してから第2閾値に達するまでの時間を適切に確保することで、デリバリパイプ10b内のLPG燃料の入れ替わり時間を確保するためである。
前記(a2)〜(e2)の何れの条件も成立しておらず(未だ、エンジン始動要求は生じておらず)ステップST8に移った場合には、以下の(a3)〜(d3)の全ての条件が成立しているか否かを判定する。
(a3) 出力制限Woutが所定の第3閾値α3以上になったこと、
(b3) 入力制限Winが所定の第3閾値β3以上になったこと、
(c3) バッテリ300の充電量SOCが所定の第3閾値γ3以上になったこと、
(d3) バッテリ温度Tbが所定の下降側第3閾値ε3以上で且つ所定の上昇側第3閾値δ3以下の範囲になったこと、
前記(a3)の第3閾値α3は前記第1閾値α1よりも高い値に設定されている。また、前記(b3)の第3閾値β3は前記第1閾値β1よりも高い値に設定されている。また、前記(c3)の第3閾値γ3は前記第1閾値γ1よりも高い値に設定されている。また、前記(d3)の下降側第3閾値ε3は前記下降側第1閾値ε1よりも高い値に設定されている。さらに、前記(d3)の上昇側第3閾値δ3は前記上昇側第1閾値δ1よりも低い値に設定されている。これら第3閾値α3〜ε3は実験やシミュレーションに基づいて設定される。
これら(a3)〜(d3)のうち少なくとも一つの条件が成立しておらず、ステップST8でNO判定された場合には、未だエンジン始動要求は生じていないものの、バッテリ300の状態量の変化に起因するエンジン始動要求が生じる可能性があるとして、そのままリターンされる。つまり、燃料ポンプ10eを起動すると共に電磁弁10iおよび遮断弁10hを共に開放させた状態でのEV走行を継続する。この状態が継続された場合には、ステップST1,ST4〜ST6,ST8の動作を繰り返すことになる。
一方、前記(a3)〜(d3)の全ての条件が成立しており、ステップST8でYES判定された場合には、ステップST9に移り、バッテリ300の状態量の変化に起因してエンジン1が再始動される状況にはないとして、燃料ポンプ10eを停止すると共に、電磁弁10iおよび遮断弁10hを共に閉鎖する。これにより、燃料供給系におけるLPG燃料の流れが停止されることになる。この場合、前記燃料ポンプ10eを停止させるタイミングと、電磁弁10iおよび遮断弁10hを共に閉鎖させるタイミングとは必ずしも一致させておく必要はない。例えば、燃料ポンプ10eを停止させ、その後に、電磁弁10iおよび遮断弁10hを閉鎖させるようにしてもよい。
以上の動作が繰り返されることにより、EV走行中におけるエンジン再始動時には、デリバリパイプ10b内での気相燃料の発生が抑制された状態でエンジン1の再始動が行われることになる。
図14は、本実施形態におけるEV走行中のエンジン再始動時における出力制限Wout、燃料ポンプ10eおよび電磁弁10iの動作、デリバリパイプ10b内の燃料温度、エンジン始動フラグそれぞれの推移を示すタイミングチャート図である。
EV走行の開始に伴って燃料ポンプ10eが停止され且つ電磁弁10iが閉鎖されると(図13におけるステップST2でYES判定されたことによるステップST3の動作)、デリバリパイプ10b内のLPG燃料温度が次第に上昇していく。そして、出力制限Woutが低下していき、その値が第1閾値α1に達した時点(図14におけるタイミングt1)で、燃料ポンプ10eを起動すると共に、電磁弁10iを開放する(図13におけるステップST4でYES判定されたことによるステップST5の動作)。これによりデリバリパイプ10b内のLPG燃料温度は次第に低下していく。
その後、出力制限Woutがさらに低下していき、その値が第2閾値α2に達した時点(図14におけるタイミングt2)で、エンジン始動制御が開始される(図13におけるステップST6でYES判定されたことによるステップST7の動作)。
一方、出力制限Woutが第1閾値α1に達して燃料ポンプ10eの起動および電磁弁10iの開放が行われた場合であっても、その後に、回生動作が行われたりバッテリ300の温度が改善される等して出力制限Woutが第2閾値α2に達することなく第3閾値α3まで上昇した場合には(図14におけるタイミングt3)、図14に一点鎖線で示すように、燃料ポンプ10eを停止すると共に電磁弁10iを閉鎖する(図13におけるステップST8でYES判定されたことによるステップST9の動作)。この場合、その後のデリバリパイプ10b内でのLPG燃料の流れは停止することになるので、このデリバリパイプ10b内の燃料温度としては、一定に維持されるか、または、デリバリパイプ10bからの受熱(熱伝導)等によって徐々に上昇していくことになる。
以上説明したように、本実施形態では、EV走行中に、バッテリ300の状態量であってエンジン始動要求に関連するパラメータ(入力制限Winや、出力制限Woutや、蓄電量SOC等)が所定の第1閾値に達したときには、燃料ポンプ10eを起動すると共に電磁弁10iを開放してデリバリパイプ10b内の燃料を燃料還流管10fに流すようにしている。これにより、仮に、デリバリパイプ10b内に高温度の燃料が存在していたとしても、この燃料はデリバリパイプ10bから燃料還流管10fに流出され、デリバリパイプ10bには比較的低温度の燃料(燃料供給管10c内や燃料タンク10d内の燃料)が流入されていくことになり、デリバリパイプ10b内での気相燃料の発生は抑制された状態になる。そして、このEV走行中に、前記パラメータが前記第2閾値に達したときにエンジン1が始動することになるため、このエンジン1の始動の際には、デリバリパイプ10b内での気相燃料の発生が抑制された状態で気筒内への燃料噴射が行われる。その結果、気相燃料がインジェクタ10aから噴射されてしまうといったことが回避され、適正な燃料噴射量が得られることによって運転者の要求に応じたドライバビリティを得ることができる。
−他の実施形態−
以上説明した実施形態では、FF方式のハイブリッド車両に本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限られることなく、FR(フロントエンジン・リアドライブ)方式のハイブリッド車両や、4輪駆動方式のハイブリッド車両にも適用できる。また、外部電源によるバッテリ300の充電(プラグイン充電)を可能としたプラグインハイブリッド車両にも本発明は適用可能である。
また、前記実施形態では、第1モータジェネレータMG1および第2モータジェネレータMG2の2つの発電電動機が搭載されたハイブリッド車両HVに本発明を適用した場合について説明したが、一つの発電電動機が搭載されたハイブリッド車両や3つ以上の発電電動機が搭載されたハイブリッド車両にも本発明は適用可能である。
また、本発明の適用が可能なエンジン1としては、気筒数やエンジン形式(直列型やV型や水平対向型等の別)については特に限定されない。
また、液化ガス燃料を使用するエンジン1としてはLPGを使用するものに限らず、液化天然ガス(LNG)、ジメチルエーテル、液体水素等を使用するものであってもよい。
また、前記実施形態では、液化ガス燃料のみを使用するエンジン1を搭載したハイブリッド車両HVに本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、複数種類の燃料を使用するバイフューエルタイプのエンジンを搭載したハイブリッド車両に対しても適用可能である。
さらに、燃料供給系における燃料温度および燃料圧力の検出箇所としては、燃料還流管10fには限定されず、デリバリパイプ10b内であってもよい。
また、前記実施形態では、燃料還流管10fに電磁弁10iおよびプレッシャレギュレータ10gを設けていたが、電磁弁10iの開閉制御によってデリバリパイプ10bの内部圧力を調整可能とする構成とした場合には、前記プレッシャレギュレータ10gは必要なくなる。
また、前記実施形態では、バッテリ300の状態量(エンジン始動要求に関連するパラメータ)のみに基づいて燃料ポンプ10eおよび電磁弁10iの制御を行うようにしていた。本発明はこれに限らず、燃料還流管10fに設けられた燃料温度センサ113および燃料圧力センサ114のセンシング値から気相燃料の発生の有無を判定し、気相燃料が発生していると判定した場合に、燃料ポンプ10eを起動すると共に電磁弁10iを開放するといった制御を組み合わせてもよい。
本発明は、LPG等の液化ガス燃料を使用するエンジンを搭載したハイブリッド車両に対し、EV走行からHV走行への移行時の制御に適用可能である。
1 エンジン(内燃機関)
3 動力分割機構
10a インジェクタ(燃料噴射弁)
10b デリバリパイプ(燃料貯留容器)
10d 燃料タンク
10e 燃料ポンプ
10f 燃料還流管(還流経路)
10i 電磁弁(制御弁)
15 点火プラグ
100 ECU
117 電圧センサ
118 電流センサ
119 バッテリ温度センサ
300 バッテリ(蓄電池)
MG1 第1モータジェネレータ(第1の発電電動機)
MG2 第2モータジェネレータ(第2の発電電動機)
HV ハイブリッド車両
S3 サンギヤ
R3 リングギヤ
CA3 プラネタリキャリア

Claims (8)

  1. 液化ガス燃料を使用する内燃機関と電動機とを駆動力源として備え、前記電動機のみで走行可能なハイブリッド車両の制御装置において、
    前記内燃機関における燃料供給系には、燃料タンクから燃料噴射弁に向けて前記液化ガス燃料を供給する燃料ポンプと、この燃料ポンプから供給された液化ガス燃料を貯留する燃料蓄圧容器と、この燃料蓄圧容器から前記燃料タンクへ液化ガス燃料を還流させる還流経路と、この還流経路に備えられて電気的に開度が制御可能な制御弁とが設けられており、
    前記電動機のみを走行駆動力源として走行している状態で、この電動機に電力を供給している蓄電池の状態量であって内燃機関始動要求に関連するパラメータが内燃機関始動要求値に近付いて所定の第1閾値に達したときに前記制御弁を開状態にすると共に前記燃料ポンプを作動させて前記燃料蓄圧容器内の燃料を還流経路に流し、
    その走行状態で、前記パラメータが前記内燃機関始動要求値である所定の第2閾値に達したときに前記内燃機関を始動させる構成となっていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  2. 請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置において、
    前記パラメータは、前記蓄電池の「充放電電力量の制限値」であり、
    前記電動機のみを走行駆動力源として走行する状態から前記内燃機関を走行駆動力源として走行する状態へ切り換えられる「充放電電力量の制限値」が前記第2閾値として予め記憶されており、前記第1閾値は、前記第2閾値である「充放電電力量の制限値」よりも所定量だけ高い「充放電電力量の制限値」として設定されていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  3. 請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置において、
    前記パラメータは、前記蓄電池の「蓄電量」であり、
    前記電動機のみを走行駆動力源として走行する状態から前記内燃機関を走行駆動力源として走行する状態へ切り換えられる「蓄電量」が前記第2閾値として予め記憶されており、前記第1閾値は、前記第2閾値である「蓄電量」よりも所定量だけ多い「蓄電量」として設定されていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  4. 請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置において、
    前記パラメータは、前記蓄電池の「温度」であり、
    前記蓄電池の「温度」が上昇している際に、前記電動機のみを走行駆動力源として走行する状態から前記内燃機関を走行駆動力源として走行する状態へ切り換えられる「蓄電池の温度」が前記第2閾値として予め記憶されており、前記第1閾値は、前記第2閾値である「蓄電池の温度」よりも所定量だけ低い「蓄電池の温度」として設定されていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  5. 請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置において、
    前記パラメータは、前記蓄電池の「温度」であり、
    前記蓄電池の「温度」が下降している際に、前記電動機のみを走行駆動力源として走行する状態から前記内燃機関を走行駆動力源として走行する状態へ切り換えられる「蓄電池の温度」が前記第2閾値として予め記憶されており、前記第1閾値は、前記第2閾値である「蓄電池の温度」よりも所定量だけ高い「蓄電池の温度」として設定されていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  6. 請求項1〜5のうち何れか一つに記載のハイブリッド車両の制御装置において、
    前記第1閾値は、前記電動機のみを走行駆動力源とする走行状態において必要とされる上限駆動力の出力が可能な電力量が蓄電池に確保された状態の値として設定されていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  7. 請求項1〜6のうち何れか一つに記載のハイブリッド車両の制御装置において、
    前記内燃機関の始動時に電動機によるクランキングを行うものにあっては、前記第2閾値は、前記内燃機関のクランキングに必要な電力量が蓄電池に確保された状態の値として設定されていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  8. 請求項1〜7のうち何れか一つに記載のハイブリッド車両の制御装置において、
    前記ハイブリッド車両の動力伝達系には、前記内燃機関の出力軸が連結されるプラネタリキャリアと、第1の発電電動機が連結されるサンギヤと、第2の発電電動機が連結されるリングギヤとを備えた遊星歯車機構により構成される動力分割機構が備えられており、
    前記電動機のみを走行駆動力源として走行する際には、前記第2の発電電動機を走行駆動力源として走行する構成となっていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US10611257B2 (en) 2017-04-25 2020-04-07 Subaru Corporation Control apparatus of electric vehicle
CN113460028A (zh) * 2020-03-31 2021-10-01 丰田自动车株式会社 混合动力车辆的控制装置及控制方法
CN115447556A (zh) * 2022-09-02 2022-12-09 一汽解放汽车有限公司 混合动力车的控制方法、装置和电子设备

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