JP5183168B2 - 抗菌活性回復方法及び抗菌活性回復剤 - Google Patents

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Description

本発明は、特定の抗菌剤を含む物体の抗菌活性回復方法及び抗菌活性回復剤に関する。
従来から抗菌・抗黴塗料としては多くの提案がある。例えばヒノキチオールを塗料に加えて抗菌塗料とする提案(特許文献1)、イオン交換により第4級アンモニウムイオン又は3級イオンを導入したマガディアイト又はケニヤアイトを含む抗菌性珪酸を使用する提案(特許文献2)、茶殻を塗料に混合してダンボールに塗布する提案(特許文献3)、銀含有アルミニウム硫酸塩水酸化物粒子を抗菌剤とする提案(特許文献4)、銅又は亜鉛をカルボニル化合物に配位させた金属錯体を塗料に配合する提案(特許文献5)等がある。
特開2007−126602号公報 特開2007−106737号公報 特開2007−46182号公報 特開2007−39444号公報 特開2006−282647号公報
しかし、前記従来の抗菌剤は抗菌性及び抗黴性に問題があり、さらに高いものが望まれていた。そこで本発明者は、特定のアルミニウム塩を含む抗菌剤を既に提案している。
本発明は、抗菌性を長期にわたり維持できる抗菌活性回復方法及び抗菌活性回復剤を提供する。
本発明の抗菌活性回復方法は、有機樹脂とアルミニウム塩を含み、前記アルミニウム塩は前記有機樹脂に化学的に結合され、粒子又は繊維に形成されている抗菌剤を含む物体の抗菌活性回復方法であって、アルミニウム塩を含む水溶液を使用して洗浄することを特徴とする。
本発明の抗菌活性回復方法は、再生コラーゲン、ポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロースから選ばれる少なくとも1つの有機樹脂とアルミニウム塩を含み、前記アルミニウム塩は前記有機樹脂に化学的に結合され、粒子又は繊維に形成されている抗菌剤を含む物体の抗菌活性回復方法であって、次の式で表される塩基性塩化アルミニウム及び塩基性硫酸アルミニウムから選ばれる少なくとも一つのアルミニウム塩を含む水溶液を使用して洗浄することを特徴とする。
Al(OH) n Cl 3-n
Al 2 (OH) 2n (SO 4 3-n
但し、nは0.5〜2.5である。
本発明の抗菌活性回復剤は、再生コラーゲン、ポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロースから選ばれる少なくとも1つの有機樹脂とアルミニウム塩を含み、前記アルミニウム塩は前記有機樹脂に化学的に結合され、粒子又は繊維に形成されている抗菌剤を含む物体の抗菌活性回復剤であって、次の式で表される塩基性塩化アルミニウム及び塩基性硫酸アルミニウムから選ばれる少なくとも一つのアルミニウム塩を含む水溶液であることを特徴とする。
Al(OH)nCl3-n
Al2(OH)2n(SO43-n
但し、nは0.5〜2.5である。
本発明の抗菌活性回復方法及び抗菌活性回復剤は、アルミニウム塩を含む有機樹脂粒子又は繊維等の抗菌物体の抗菌性を回復し、長期にわたり抗菌性を維持できる。また、前記抗菌物体の抗菌性を繰り返し回復させることも可能である。
1.有機樹脂粉末及び繊維
(1)再生コラーゲン
本発明の再生コラーゲン粉末について、以下に説明する。本発明は、牛、豚、馬、鹿、兎、鳥、魚などの動物の皮膚、骨、腱などから可溶化コラーゲン溶液を製造し、架橋処理することにより、従来のコラーゲン粉末が有していた品質問題を解決しうる新規なコラーゲン粉末を提供しうるものである。さらに、可溶化コラーゲン水溶液を紡糸し、再生コラーゲン繊維とすることにより、コラーゲンの徹底的な精製と、紡糸による繊維化工程において緻密な架橋を行うことにより、全く新規なコラーゲン粉末を提供する。
上記再生コラーゲンの製造方法としては、例えば特開2002−249982号公報に開示されているように、原料は床皮の部分を用いるのが好ましい。床皮は、たとえば牛、豚、馬、鹿、兎、鳥、魚等の動物から得られるフレッシュな床皮や塩漬けした生皮より得られる。これら床皮は、大部分が不溶性コラーゲン繊維からなり、通常網状に付着している肉質部分を除去し、腐敗・変質防止のために用いた塩分を除去したのちに用いられる。また、前記動物の骨、腱など他の剤料も同様に用いることができる。
この不溶性コラーゲン繊維には、グリセライド、リン脂質、遊離脂肪酸等の脂質、糖タンパク質、アルブミン等のコラーゲン以外のタンパク質等、不純物が存在している。これらの不純物は、粉末化するにあたって光沢や強度等の品質、臭気等に多大な影響を及ぼす。したがって、たとえば石灰漬けにして不溶性コラーゲン繊維中の脂肪分を加水分解し、コラーゲン繊維を解きほぐした後、酸・アルカリ処理、酵素処理、溶剤処理等のような一般に行われている皮革処理を施し、予めこれらの不純物を除去しておくことが好ましい。
前記のような処理の施された不溶性コラーゲンは、架橋しているペプチド部を切断するために、可溶化処理が施される。前記可溶化処理の方法としては、一般に採用されている公知のアルカリ可溶化法や酵素可溶化法等を適用することができる。前記アルカリ可溶化法を適用する場合には、たとえば塩酸等の酸で中和することが好ましい。なお、従来から知られているアルカリ可溶化法の改善された方法として、特公昭46−15033号公報に記載された方法を用いても良い。
前記酵素可溶化法は、分子量が均一な再生コラーゲンを得ることができるという利点を有するものであり、本発明において好適に採用しうる方法である。かかる酵素可溶化法としては、たとえば特公昭43−25829号公報や特公昭43−27513号公報等に記載された方法を採用することができる。さらに、前記アルカリ可溶化法及び酵素可溶化法を併用しても良い。
このように可溶化処理を施したコラーゲンにpHの調整、塩析、水洗や溶剤処理等の操作をさらに施した場合には、品質等の優れた再生コラーゲンを得ることが可能なため、これらの処理を施すことが好ましい。得られた可溶化コラーゲンは、たとえば1〜15重量%、好ましくは2〜10重量%程度の所定濃度の原液になるように塩酸、酢酸、乳酸等の酸でpH2〜4.5に調整した酸性溶液を用いて溶解される。なお、得られたコラーゲン水溶液には必要に応じて減圧攪拌下で脱泡を施し、水不溶分である細かいゴミを除去するために濾過を行ってもよい。得られる可溶化コラーゲン水溶液には、さらに必要に応じてたとえば機械的強度の向上、耐水・耐熱性の向上、光沢性の改良、紡糸性の改良、着色の防止、防腐等を目的として安定剤、水溶性高分子化合物等の添加剤が適量配合されてもよい。
可溶化コラーゲン水溶液を、たとえば紡糸ノズルやスリットを通して無機塩水溶液に吐出することにより再生コラーゲンが形成される。無機塩水溶液としては、たとえば硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム等の水溶性無機塩の水溶液が用いられる。通常これらの無機塩の濃度は10〜40重量%に調整される。無機塩水溶液のpHは、たとえばホウ酸ナトリウムや酢酸ナトリウム等の金属塩や塩酸、ホウ酸、酢酸、水酸化ナトリウム等を配合することにより、通常pH2〜13、好ましくはpH4〜12となるように調整することが好ましい。pHが前記の範囲であれば、コラーゲンのペプチド結合が加水分解を受け難く、目的とするコラーゲン粉末が得られる。また、無機塩水溶液の温度は特に限定されないが、通常35℃以下であることが望ましい。温度が35℃以下であれば、可溶性コラーゲンが変性を起こさず、強度を高く維持でき、安定した製造ができる。なお、温度の下限は特に限定されないが、通常無機塩の溶解度に応じて適宜調整することができる。
前記コラーゲンの遊離アミノ基を、β―位又はγ―位に水酸基又はアルコキシ基を有する炭素数主鎖が2〜20のアルキル基で修飾する。前記炭素数主鎖とは、アミノ基に結合したアルキル基の連続した炭素鎖を示すものであり、他の原子を介在して存在する炭素数は考慮しないものとする。遊離アミノ基を修飾する反応としては、通常知られているアミノ基のアルキル化反応を用いることができる。反応性、反応後の処理の容易さ等から前記β―位に水酸基又はアルコキシ基を有する炭素数2〜20のアルキル基は、下記一般式(2)で表わされる化合物であることが好ましい。
―CH2―CH(OX)―R (2)
(式中、Rは、R1−、R2−O−CH2−又はR2−COO−CH2−で表される置換基を示し、前記置換基中のR1は炭素数2以上の炭化水素基又はCH2Clであり、R2は炭素数4以上の炭化水素基を示し、Xは水素又は炭化水素基を示す。)
一般式(2)の好ましい例としては、グリシジル基、1−クロル―2―ヒドロキシプロピル基、1,2−ジヒドロキシプロピル基が挙げられる。加えて、グリシジル基がコラーゲン中の遊離アミノ基に付加した構造が挙げられる。さらには、前述の好ましい基に記載されたアルキル基に含まれる水酸基を開始点として、用いたエポキシ化合物が開環付加、及び又は開環重合した構造が挙げられ、このときの付加及び又は重合の末端構造として、前述のアルキル基の構造を有しているものが挙げられる。
前記再生コラーゲンの遊離アミノ基を構成するアミノ酸としては、リジン及びヒドロキシリジンが挙げられる。さらに、本来コラーゲンを構成するアミノ酸としてはアルギニンで存在するものの、前記再生コラーゲンを得るために、アルカリ条件下で加水分解を行う際に、一部加水分解が進行して生じたオルニチンのアミノ基もアルキル化反応される。加えて、ヒスチジンに含まれる2級アミンによっても反応が進行する。
遊離アミノ基の修飾率は、アミノ酸分析により測定することが可能であり、アルキル化反応前の再生コラーゲン繊維のアミノ酸分析値、又は原料として用いたコラーゲンを構成する遊離アミノ酸の既知組成を基準に算出される。尚、本発明におけるアミノ基の修飾では、β―位又はγ―位に水酸基又はアルコキシ基を有する炭素数2以上のアルキル基で修飾された構造が、遊離アミノ基の50%以上であれば良く、その他の部分は遊離アミノ基のままでもよいし他の置換基で修飾された構造であっても良い。再生コラーゲンの遊離アミノ酸の修飾率は50%以上である必要があり、より好ましくは、65%以上、更に好ましくは80%以上である。反応率が低い場合、耐熱性で良好な特性が得られない。
ここで、遊離アミノ基の修飾においては、通常、遊離アミノ基1つあたり1分子のアルキル化剤が反応する。もちろん2分子以上反応していてもよい。さらに、遊離アミノ基に結合したアルキル基のβ―位又はγ―位に存在する水酸基又はアルコキシ基又はその他の官能基を介して、分子内又は分子間での架橋反応が存在していても良い。アルキル化反応の具体例としては、エポキシ化合物の付加反応、α―位又はβ―位に水酸基又はこの誘導体を有するアルデヒド化合物の付加反応とこれに続く還元反応、β―位又はγ―位に水酸基又はアルコキシ基を有する炭素数2以上のハロゲン化物、アルコール及びアミン等の置換反応が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明において、アルキル化反応剤として使用しうる有機化合物としては、アルデヒド類、エポキシ類、フェノール誘導体等が挙げられる。この中では反応性・処理条件の容易さからエポキシ化合物による修飾反応が、優れた特性を示すことから好ましい。特に単官能エポキシ化合物が好ましい。
ここで用いられる単官能エポキシ化合物の具体例としては、たとえば、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン、酸化イソブチレン、酸化オクテン、酸化スチレン、酸化メチルスチレン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、グリシドール等のオレフィン酸化物類、グリシジルメチルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、ノニルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、ペンタデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、ポリエチレンオキシドグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類、蟻酸グリシジル、酢酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、安息香酸グリシジル等のグリシジルエステル類、グリシジルアミド類等が挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。
単官能エポキシ化合物のなかでも、再生コラーゲンの吸水率が低下するため、下記一般式(1)で表される単官能エポキシ化合物を用いて処理することが好ましい。
Figure 0005183168
但し、RはR1−、R2−O−CH2−またはR2−COO−CH2−で表される置換基を示し、R1は炭素数2以上の炭化水素基またはCH2Clであり、R2は炭素数4以上の炭化水素基を示す。
このようにして得られた再生コラーゲンは、水又は無機塩の水溶液で膨潤した状態になっている。この膨潤体は再生コラーゲンの重量に対して4〜15倍の水又は無機塩の水溶液を含有した状態が良い。水又は無機塩の水溶液の含有量が4倍以上では再生コラーゲン中のアルミニウム塩含有量が多いため、耐水性が充分となる。また15倍以下であれば、強度が低下せず、取扱い性は良好である。
膨潤した再生コラーゲンは、次いでアルミニウム塩の水溶液に浸漬する。このアルミニウム塩水溶液のアルミニウム塩としては、次の式、Al(OH)nCl3-n、又はAl2(OH)2n(SO43-n(式中、nは0.5〜2.5である)で表される塩基性塩化アルミニウム又は塩基性硫酸アルミニウムが好ましい。具体的には、例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ミョウバン等が用いられる。これらのアルミニウムは単独で又は2種以上混合して用いることができる。このアルミニウム塩水溶液のアルミニウム塩濃度としては、酸化アルミニウムに換算して0.3〜5重量%であることが好ましい。アルミニウム塩の濃度が0.3重量%以上であれば、再生コラーゲン繊維中のアルミニウム塩含有量が高く、耐水性が充分となる。また5重量%以下であれば、処理後もそれほど硬くなく、取り扱い性が良好である。
このアルミニウム塩水溶液のpHは、例えば塩酸、硫酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等を用いて通常2.5〜5に調整する。このpHは、2.5以上であればコラーゲンの構造を良好に維持できる。pHが5以下であれば、アルミニウム塩の沈殿も生じず、均一に浸透し易くなる。このpHは、最初は2.2〜3.5に調整して充分にアルミニウム塩水溶液を再生コラーゲン内に浸透させ、その後に、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等を添加して3.5〜5に調整して処理を完結させることが好ましい。塩基性の高いアルミニウム塩を用いる場合には、2.5〜5の最初のpH調整だけでもかまわない。また、このアルミニウム塩水溶液の液温は特に限定されないが、50℃以下が好ましい。この液温が50℃以下であれば、再生コラーゲンの変性や変質は起きにくい。
このアルミニウム塩水溶液に再生コラーゲンを浸漬する時間は、3時間以上、好ましくは6〜25時間とする。この浸漬時間は、3時間以上であればアルミニウム塩の反応が進み、再生コラーゲンの耐水性が充分となる。また、浸漬時間の上限には特に制限はないが、25時間以内でアルミニウム塩の反応は充分に進行し、耐水性も良好となる。なお、アルミニウム塩が再生コラーゲン中に急激に吸収されて濃度むらを生じないようにするため、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩を適宜前記アルミニウム塩の水溶液に添加しても良い。
このようにアルミニウム塩で処理された架橋された再生コラーゲンは、次いで水洗、オイリング、乾燥を行う。こうして得られた再生コラーゲンは、従来法のクロム塩で処理されたような着色がほとんどなく、かつ、耐水性に優れたものとなる。一般にコラーゲンの変性(ゼラチン化)を防ぐため、加工時の温度履歴には注意が必要である。架橋後においても変性を防ぐためには、製造時、粉末化加工時・製品保管時の水分と温度の管理を再生コラーゲンの変性条件以下に保持することが必要である。大部分がゼラチン化したものは特性が変化しているため、目的であるコラーゲンの特性を発現することは困難である。変性防止の点において前記の再生コラーゲンを使用することは有利である。
(2)繊維化
前記のようにして得られた可溶化コラーゲン水溶液を繊維にするには、湿式紡糸法とエレクトロスピニング法がある。
A.湿式紡糸法
可溶化コラーゲン水溶液は、たとえば紡糸ノズルを通して無機塩水溶液に吐出することにより再生コラーゲン繊維を形成できる。無機塩水溶液としては、たとえば硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム等の水溶性無機塩の水溶液が用いられる。通常これらの無機塩の濃度は10〜40重量%に調整される。無機塩水溶液のpHは、たとえばホウ酸ナトリウムや酢酸ナトリウム等の金属塩や塩酸、ホウ酸、酢酸、水酸化ナトリウム等を配合することにより、通常pH2〜13、好ましくはpH4〜12となるように調整することが好ましい。pHが前記の範囲であれば、コラーゲンのペプチド結合が加水分解を受け難く、目的とする再生コラーゲン繊維が得られる。また、無機塩水溶液の温度は特に限定されないが、通常35℃以下であることが望ましい。温度が35℃以下であれば、可溶性コラーゲンが変性を起こさず、強度を高く維持でき、安定した製造ができる。なお、温度の下限は特に限定されないが、通常無機塩の溶解度に応じて適宜調整することができる。
再生コラーゲンは、水又は無機塩の水溶液で膨潤した状態になっている。この膨潤体は再生コラーゲンの重量に対して4〜15倍の水又は無機塩の水溶液を含有した状態が良い。水又は無機塩の水溶液の含有量が4倍以上では再生コラーゲン中のアルミニウム塩含有量が多いため、耐水性が充分となる。また15倍以下であれば、強度が低下せず、取扱い性は良好である。
膨潤した再生コラーゲン繊維は、次いでアルミニウム塩の水溶液に浸漬する。このアルミニウム塩水溶液のアルミニウム塩としては、次の式、Al(OH)nCl3-n、又はAl2(OH)2n(SO43-n(式中、nは0.5〜2.5である)で表される塩基性塩化アルミニウム又は塩基性硫酸アルミニウムが好ましい。具体的には、例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ミョウバン等が用いられる。これらのアルミニウムは単独で又は2種以上混合して用いることができる。このアルミニウム塩水溶液のアルミニウム塩濃度としては、酸化アルミニウムに換算して0.3〜5重量%であることが好ましい。アルミニウム塩の濃度が0.3重量%以上であれば、再生コラーゲン繊維中のアルミニウム塩含有量が高く、耐水性が充分となる。また5重量%以下であれば、処理後もそれほど硬くなく、取り扱い性が良好である。
このアルミニウム塩水溶液のpHは、例えば塩酸、硫酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等を用いて通常2.5〜5に調整する。このpHは、2.5以上であればコラーゲンの構造を良好に維持できる。pHが5以下であれば、アルミニウム塩の沈殿も生じず、均一に浸透し易くなる。このpHは、最初は2.2〜3.5に調整して充分にアルミニウム塩水溶液を再生コラーゲン内に浸透させ、その後に、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等を添加して3.5〜5に調整して処理を完結させることが好ましい。塩基性の高いアルミニウム塩を用いる場合には、2.5〜5の最初のpH調整だけでもかまわない。また、このアルミニウム塩水溶液の液温は特に限定されないが、50℃以下が好ましい。この液温が50℃以下であれば、再生コラーゲンの変性や変質は起きにくい。
このアルミニウム塩水溶液に再生コラーゲンを浸漬する時間は、3時間以上、好ましくは6〜25時間とする。この浸漬時間は、3時間以上であればアルミニウム塩の反応が進み、再生コラーゲンの耐水性が充分となる。また、浸漬時間の上限には特に制限はないが、25時間以内でアルミニウム塩の反応は充分に進行し、耐水性も良好となる。なお、アルミニウム塩が再生コラーゲン中に急激に吸収されて濃度むらを生じないようにするため、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩を適宜前記アルミニウム塩の水溶液に添加しても良い。
このようにアルミニウム塩で処理された架橋された再生コラーゲン繊維は、次いで水洗、オイリング、乾燥を行う。こうして得られた再生コラーゲン繊維は、従来法のクロム塩で処理されたような着色がほとんどなく、かつ、耐水性に優れたものとなる。一般にコラーゲンの変性(ゼラチン化)を防ぐため、加工時の温度履歴には注意が必要である。架橋後においても変性を防ぐためには、製造時、繊維化加工時・製品保管時の水分と温度の管理を再生コラーゲンの変性条件以下に保持することが必要である。大部分がゼラチン化したものは特性が変化しているため、目的であるコラーゲンの特性を発現することは困難である。変性防止の点において前記の再生コラーゲンを使用することは有利である。
また、コラーゲン溶液の紡糸の際には、溶液中又は紡出直前に顔料や染料を混合して着色することもできる(原着法)。使用する顔料や染料は用途に応じて、紡糸工程での溶出分離が無いこと、また使用製品の要求品質に対応して種類や色相を選択することができる。また必要に応じて、充填剤、老化防止剤、難燃剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
B.エレクトロスピニング法
本発明のコラーゲン繊維の製造方法において使用するエレクトロスピニング装置の一例を、図1に示す。エレクトロスピニング装置1は、密閉容器2の上部に絶縁板3を備えている。絶縁板3には金属製ホルダー4に接続された金属製ノズル5が固定されている。金属製ホルダー4には、金属製ノズル5の反対側に送液配管7が接続されると共に、高圧電源6が接続されている。
送液配管7は、別の密閉容器8の内部に収容されている容器9へと通じており、容器9内には再生コラーゲン溶液10が満たされている。さらに、密閉容器8は、コンプレッサー11と接続しており、内部を加圧状態にすることができる。前記再生コラーゲン溶液10は、再生コラーゲン、水及びヘキサフルオロイソプロパノールで調製されており、例えば再生コラーゲン含量が5重量%以上10重量%以下、水とヘキサフルオロイソプロパノールの重量比が、8:2〜5:5の範囲内で調製されている。
コンプレッサー11をONにすると、密閉容器8の内部が加圧され、容器9内の再生コラーゲン溶液10は、送液配管7を通って金属製ノズル3へと送液される。
密閉容器2の内部には、金属製の網12が絶縁性の支柱13の上に設置され、金属製の網12は、アース14が施されている。そして、金属製の網12は、金属製ノズル5の真下に位置するように設置されている。
ここで、高圧電源6をONにすると、金属製ホルダー4を通して金属製ノズル5に高電圧が印加される。このとき、高電圧によって金属製ノズル5内を流れる再生コラーゲン溶液10に電荷が誘発し、蓄積される。金属製ノズル5から噴出された後、コラーゲン溶液は、プラスに帯電するために互いに反発する。
この反発力は、再生コラーゲン溶液の表面張力に対抗し、荷電臨界を超えると(表面張力を超えると)、コラーゲン溶液は帯電ミストになる。この帯電ミストの表面積は、体積に対して非常に大きいため、溶媒である水及びヘキサフルオロイソプロパノールが効率良く蒸発し、さらに体積の減少により電荷密度が高くなるため、コラーゲン溶液は帯電微少ミスト15へと分裂していく。
ここで溶媒とは、固体、液体あるいは気体の溶質(溶媒に溶かされるもの)を溶かす液体をいう。もっとも一般的に使用される水のほか、アルコールやアセトン、ヘキサンのような有機物も多く用いられ、これらの有機物は有機溶媒と呼ばれる。本発明では溶質であるコラーゲンを溶かす溶媒として、水及びヘキサフルオロイソプロパノールを用いている。
金属製ノズル5は高電圧を印加され、金属製の網12はアースされているので、金属製ノズル5と金属製の網12との間には、強い電界が形成されている。帯電微少ミスト15は、互いに反発しながら、形成された電界により金属製の網12に向かって進行するが、途中で溶媒である水及びヘキサフルオロイソプロパノールが揮散し、繊維化した再生コラーゲン(再生コラーゲン繊維)として、金属製の網12上に捕集される。このとき、金属製ノズル5に付与された荷電と反対の符号を有する荷電を金属製の網に付与してもよい。
なお、金属製ノズル5の内径は、0.1mm以上2.0mm以下であることが好ましく、0.1mm以上1.0mm以下であることがより好ましい。
金属製ホルダー4(及び金属製ノズル5)に印加する電圧は、1kV以上50kV以下の直流電圧であることが好ましく、10kV以上35kV以下の直流電圧であることがより好ましい。
金属製ノズル5からの再生コラーゲン溶液の吐出速度は、0.01mL/分以上10mL/分以下であることが好ましい。この吐出速度は、密閉容器8内を加圧するコンプレッサー11の出力を制御することにより、調整することが可能である。
なお、ここでは、ホルダー、ノズル及び網を全て金属製としたが、金属製に限らず導電性剤料であればよい。また、密閉容器2を用いずに、開放系で再生コラーゲン溶液をエレクトロスピニングしてもよい。
金属製の網12に捕集された再生コラーゲン繊維には、スプレーノズル20からAl(OH)nCl3-n、又はAl2(OH)2n(SO43-n(式中、nは0.5〜2.5である)で表される塩基性塩化アルミニウム又は塩基性硫酸アルミニウム、具体的には、例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ミョウバン等のアルミニウム塩水溶液21がスプレーされる。このアルミニウム塩水溶液のアルミニウム塩濃度は、酸化アルミニウムに換算して0.3〜5重量%の範囲が好ましい。このアルミニウム塩水溶液のスプレーにより、前記再生コラーゲン繊維はアルミ架橋される。
図2は金属製の網に換えてシリンダー22を使用した例である。金属製ノズルから吐出された再生コラーゲン繊維はシリンダー22に巻き取られ、同時にスプレーノズル20からアルミニウム塩水溶液がスプレーされ、前記再生コラーゲン繊維はアルミ架橋される。
再生コラーゲン繊維中の金属単体として換算したアルミニウムの含量は、0.4〜70重量%の範囲が好ましい。さらに好ましい範囲は0.5〜50重量%であり、特に好ましくは、1〜40重量%の範囲である。
本発明の再生コラーゲン繊維の直径は50nm〜70μmの範囲が好ましい。さらに好ましい直径は100nm〜5μmの範囲である。このように細い繊度であると、比表面積が大きくなり、細菌や黴との接触面積が大きくなることから、抗菌、抗黴には好ましい。
(3)粉末化
本発明においては、上記の方法により得られた再生コラーゲンを、粉砕することで架橋された再生コラーゲンからなるコラーゲン粉末(再生コラーゲン粉末)とすることができる。再生コラーゲンが繊維あるいはフィルムの場合には、粉砕に適した繊維長もしくはサイズに切断するか、この切断したものをさらに粉砕するか、もしくは、繊維やフィルムを直接粉砕することにより再生コラーゲン粉末とすることができる。再生コラーゲン粉末の製造に使用できるカッターは特に制限は無い。例えば、繊維のカットに通常使われる回転刃カッター、ベルトカッター、シャーリングマシン、カッターミル等で0.1mm〜数mm程度に切断する。さらに、このカット綿を、ローラーミル、ロッドミル、ボールミル(乾式、湿式)、ジェットミル、ピンミル、振動ミル、セントリフューガル(CF)ミル、遊星型ボールミル、グラインダーミル等せん断型ミル等の粉砕機を用いて微粉砕、また媒体攪拌型超微粉砕機等を用い超微粉砕する。ジルコニア製ボール等の硬質のボールを使用することで粉末へのボール素剤の混入を防ぐ点及び粉砕効率の点から好ましく使用することができる。アルミナ製ボール等他の素剤のボールを用いることもできる。その他の粉砕方法として、冷凍粉砕も使用できる。このようにして得られた再生コラーゲン粉末の平均粒子径は0.01〜80μmであることが好ましい。
また、再生コラーゲン粉末の金属単体として換算したアルミニウムの含量は、0.1〜70重量%の範囲が好ましい。さらに好ましい範囲は0.2〜50重量%であり、特に好ましくは、1〜40重量%の範囲である。
本発明に用いられる再生コラーゲン粉末の粒子径としては、0.1〜数mm程度でも抗菌性を示すが、平均粒子径が0.01〜80μmまで微粉砕することでより抗菌性が向上する。また、感触の観点から、平均粒子径は1〜20μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。平均粒径が、上記範囲よりも大きいと、コーティング剤を塗布した後の塗装面がザラザラ感のある感触となり、好ましくない。また、1μm以上であると、ハンドリング性が良好である。
上記粉砕機の種類や粉砕時間によって得られる再生コラーゲン粉末の粒子径を適宜調節することも可能である。例えば振動ミルを使用した場合、1時間〜数十時間で、平均粒子径として5〜80μm程度のものが得られるが、0.01〜5μmの平均粒子径のものを得る場合には破砕した再生コラーゲン粉末を分級することで得られる。分級は風ひ分級でも良いし、水中で分級してもよい。
再生コラーゲン粉末の平均粒子径は10μm以下、かつ粒子の95重量%が粒径50μm以下とするのが好ましい。さらに好ましくは、平均粒子径5μm以下、かつ粒子の95重量%が粒径20μm以下となるようにする。前記範囲であれば、塗装物の触感はさらっと感を発揮でき、吸放湿性も好適である。
本発明の再生コラーゲン粉末は、接触冷温感に優れる。接触冷温感とは、剤料の温かさ(冷たさ)を指す感性因子(触感)であり、通常、表面示差熱(Qmax)が指標として用いられる。PVCレザーでは、Qmaxが大きく、すなわち、熱移動が大きく、冷たい触感が得られる。本皮は、Qmaxが小さく、温かい触感が得られる。本発明の再生コラーゲン粉末をコーティングしたシートは、本皮と同じ成分であるコラーゲンを含有するため、PVCレザーよりも、表面示差熱(Qmax)が低く、より本皮に近い「温かい」触感を得ることができる。
本発明のコラーゲン粉末は、白色度に優れる。本発明のコラーゲン粉末は、コラーゲン繊維の製造段階で、充分に精製され、不純物が取り除かれているため、白色度が高く、黄色味も少ない。
前記粒子分布及び平均粒子径は市販の粒度分布計で測定できる。例えば、レーザ回折散乱法によるマイクロトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製“MT3300”)などを用いて測定できる。分散媒としては例えばメタノールを用いる。また、粒子屈折率はコラーゲンの屈折率である1.44を用いる。
本発明の再生コラーゲン粉末は、リン吸着能を有する。吸着する対象であるリンは、リン元素を含むもの、又はリン化合物であれば特に限定されない。例えば、リン酸構造体を吸着することができる。ここで、リン酸構造体とは、リン酸、リン酸塩、リン酸エステルなどのリン酸骨格を有する物質をいう。リン元素は、自然界では一般にリン酸構造体の形で存在する場合が多く、本発明のリン吸着剤がリンを吸着する好ましい方法としては、単にリンを含む水溶液とリン吸着剤である再生コラーゲン粉末、あるいは担持体との混合物であるリン吸着体とを混ぜ合わせるだけでよい。より効率的な吸着をするにはリン吸着剤あるいは同吸着体をできるだけ溶液中に均一に分散させることが望ましい。
本発明のコーティング剤組成物中、前記再生コラーゲン粉末は0.1〜70重量%添加するのが好ましい。さらに好ましくは2〜60重量%であり、とくに好ましくは5〜60重量%である。0.1重量%以上であれば有効な抗菌性が認められる。70重量%以下であれば、コーティング剤として好ましい流動性がある。
(2)カルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコール
本発明においては、有機樹脂粉末としてカルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコールも使用できる。カルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコールも、架橋前は水に可溶なマトリックス樹脂ゲル成分であり、アルミニウム塩を接触させることにより架橋され、アルミニウム塩が樹脂のゲル成分に化学的に結合させ、水不溶化樹脂にすることができる。すなわち、カルボキシメチルセルロースは−COOH基と−OH基を有することから、アルミニウム塩で架橋できる。また、ポリビニルアルコールは−OH基を有することから、アルミニウム塩で架橋できる。ポリビニルアルコールとして、−COOH基を導入したものを用いてもよい。−COOH基の導入量は、例えば0.1〜5モル%程度とすることができる。
カルボキシメチルセルロースとしては、例えばシグマ(SIGMA)社製“カルボキシメチルセルロースナトリウム塩”がある。ポリビニルアルコールとしては、例えば日本酢ビ・ポバール社製“アニオン変性PVA(Aシリーズ)”グレード:AF17がある。
繊維化及び粉末化は、再生コラーゲン粉末及び繊維化と同一の手段によりできる。
2.マトリックス樹脂
マトリックス樹脂としては、一般の塗料に使用される樹脂であればどのようなものでも良い。例えば、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリルシリコーン系樹脂、エポキシエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマーからなる群から選ばれる樹脂を少なくとも一種含有する組成物とすることが好ましく、再生コラーゲン粉末の特性である吸放湿性や化学物質吸着性等の損なわない範囲で併用することも可能である。この中でも、耐磨耗性、耐寒性、耐屈曲性、耐油性等の点で、ポリウレタン系樹脂が好ましい。ポリウレタン系樹脂/再生コラーゲン粉末をコーティング剤に用いると、再生コラーゲン粉末の特徴である吸放湿性、皮革様の感触、特に「さらっとした」触感が得られ、ベタツキも無く触感良好となる。また、さらに、シリカ微粉末を配合することで、「しっとりとした触感」となり、高級感を発揮できる。ポリウレタン系樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリカプロラクトン系ポリウレタン樹脂、シリコーン共重合タイプ、水系ポリウレタン樹脂などが挙げられる。
3.コーティング剤
本発明のコーティング剤は、マトリックス樹脂及び再生コラーゲン粉末などを含有する。また、必要に応じて、有機溶剤又は水、シリカ粉末などの無機フィラー、着色剤(顔料)、可塑剤、老化防止剤等を加えることもできる。混合条件については、公知の条件であればよく、特に限定はない。
有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン系樹脂の場合、樹脂の溶解性から、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、イソプロパノールなどの有機溶剤が好ましい。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、近年、環境負荷やVOCの問題、あるいは溶剤回収・廃棄に関するコスト、労力の問題から、水性ポリウレタン樹脂や、水性アクリル樹脂が注目されており、これらの水系樹脂も使用可能である。
このようにして得られた再生コラーゲン粉末とマトリックス樹脂剤料とを混合することで、抗菌性または抗黴性に優れたコーティング剤組成物を得ることができる。また、本発明のコーティング剤は、耐水性、ホルムアルデヒド吸着性、吸放湿性、濡れ性、つや消しなどの点に優れたものである。
本発明のコーティング剤は壁や天井等の固定物体に塗布してもよいし、基布シートに塗装した塗装シートとしても良い。塗装シートとしては、壁紙や布、合成皮革、ポリ塩化ビニルレザー、人工皮革、あるいは合成樹脂成形品がある。コーティングする方法は特に限定されず、例えば、グラビアプリンター法、スプレー法、ロールコーター法、リバースコーター法、ドクターナイフ法、刷毛塗り法、ディッピング法等を用いることができる。
本発明のコーティング剤は、他の抗菌剤または抗黴剤、例えばAgを含む組成物又は化合物、ピリジン系化合物などを新たに添加する必要がない点で経済性に安価なものとなる。もちろん、他の抗菌剤または抗黴剤と併用してもかまわない。
4.菌
菌としては、細菌と真菌に分類されるが、通常これらのいずれにも効果を有するような素剤は少なく、このような機能を有するものが望まれている。一般に細菌の分類としては、以下に示すように細胞壁にペプチドグリカンを多量に持つグラム陽性菌、リポポリサッカライドを持つグラム陰性菌、及びその他の菌に大別される。グラム陽性菌としては、更に、グラム陽性球菌とグラム陽性桿菌に大別される。
グラム陽性球菌には、通性嫌気性および好気性球菌があり、属としては、ミクロコッカス属、スタフィロコッカス属、連鎖球菌属のストレプトコッカス属およびエンテロコッカス属があり、スタフィロコッカス属の黄色ぶどう球菌、メチシリン耐性黄色ぶどう球菌(MRSA)、連鎖球菌属では化膿連鎖球菌、B群連鎖球菌、肺炎連鎖球菌、緑色連鎖球菌が病原菌として知られている。
グラム陽性桿菌には、コリネバクテリウム属、リステリア属、エリジペロスリックス属、バチルス属、マイコバクテリウム属に分類され、病原菌としてはコリネバクテリウム属のジフテリア菌、リステリア属のリステリア・モノサイトゲネス、エリジペロスリックス属のブタ丹毒菌、バチルス属の炭そ菌、セレウス菌、マイコバクテリウム属の結核菌が主なものである。
グラム陰性菌としては、グラム陰性桿菌が主なものである。
グラム陰性桿菌としては、好気性グラム陰性桿菌とグラム陰性通性嫌気性桿菌を挙げることができる。
好気性グラム陰性桿菌の主な菌属として、Pseudomonas, Burkholderia, Rastonia, Legionella, Brucella, Bordetella, Alcaligenes, Francisella などが挙げられる。病原性を持つものとして、Pseudomonas属の緑膿菌、Legionella属のレジオネラ・ニューモフィラ、Brucella属のマルタ熱菌、ウシ流産熱菌、ブタ流産菌などが知られている。
グラム陰性通性嫌気性桿菌は、腸内細菌科、ビブリオ科、パスツレラ科に分類され、腸内細菌科はさらに大腸菌属、クレブシエラ属、セラチア属、プロテウス属、エルシニア属に分類され、病原性を持つものとして、大腸菌属ではO157などの大腸菌、サルモネラ菌、赤痢菌、クレブシエラ属では肺炎桿菌、セラチア属では霊菌、プロテウス属ではProteus vulgaris, Proteus mirabilis、エルシニア属ではペスト菌が知られている。またビブリオ科はビブリオ属のコレラ菌、パスツレラ科はパスツレラ属のPasturella multocidaが病原性菌として知られている。
その他の菌としては、グラム陽性、陰性の両方が存在する菌群として、偏性嫌気性菌、らせん菌群があり、以下のような菌が知られている。
偏性嫌気性菌としては、偏性芽胞形成菌、偏性嫌気性グラム陽性無芽胞桿菌、偏性嫌気性グラム陰性無芽胞桿菌、嫌気性グラム陽性球菌、嫌気性グラム陰性球菌に分類され、病原菌としては、偏性芽胞形成菌の破傷風菌、ボツリヌス菌、ウエルシュ菌、ディフィシル菌が挙げられる。
らせん菌群としては、カンピロバクター属のC. fetus, C. jejuni, C. colitが病原菌として知られている。
上記の細菌が様々な病原菌において知られている。特に、食中毒や院内感染でよく検出される以下、大腸菌、黄色ぶどう球菌、緑膿菌、MRSA、セレウス菌、肺炎桿菌は抗菌剤の対象菌として極めて重要なものであるといえる。
5.真菌類(酵母と黴)
本発明の抗菌活性回復剤はリン吸着能を回復させる機能があることから、抗黴性回復にも適用可能である。
黴としては、Aspergillus属、Penicillium属、Cladosporium属、Alternaria属、Fusarium属、Aureobasidium属、Trichoderma属、Chaetomium属、に分類される。対象となる黴としては、JIS Z 2911に挙げられた、例えば、(第1群)アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・テレウス、ユーロチウム・トノヒルム、(第2群)ペニシリニウム・シトリナム、ペニシリニウム・フニクロスム、(第3群)リゾプス・オリゼ、(第4群)クラドスポリウム・クラドスポリオイデス(クロカワ黴)、オーレオバシジウム・プルランス、グリオクラジウム・ビレンス、(第5群)ケトミウム・グロボスム、フザリウム・モニリホルメ、ミロテシウム・ベルカリア、などの黴が考えられる。
酵母としては、Candida属、Rhodotorula属、Saccharomyces属、に分類される。
本発明のコーティング剤は、上記細菌、及び上記酵母に該当する真菌に対して増殖阻害効果を有する。
また、本発明の抗黴剤は、上記黴に該当する真菌に対して増殖阻害効果を有する。
本発明は、抗菌性回復のみだけではなく、抗黴性も回復できる。すなわち、いずれの性能をも持ち合わせる場合を否定するものではなく、両立する場合もある。
本発明のコーティング剤の金属単体としてのアルミニウムの定量は、粉末を湿式酸化分解したのちに原子吸光分析により測定する。塗膜も前記と同様の方法により測定できる。なお、金属単体としてのアルミニウムとは、アルミニウム原子及びこれの会合体のみを示す。
6.抗菌剤を含む物体
本発明の抗菌剤を含む物体は、前記抗菌剤が粒子の場合、マトリックス樹脂と混合され、シート状に塗布、又は繊維上に塗布されていることが好ましい。また、抗菌剤が繊維の場合、別の繊維と混合されていることが好ましい。ここで別の繊維とは、ポリエステル繊維、アクリル(モダアクリルを含む)繊維、ナイロン繊維、ポリオレフィン繊維等の合成繊維、コットン、ウール、麻等の天然繊維、レーヨン等の化学繊維をいう。この繊維は織物、編み物、不織布、カーペット等に形成されていてもよいし、そのままフィルター等の繊維としても使用できる。また、例えば医療関係のユニホーム衣服や帽子、マスクなどに縫製されていてもよい。前記塗装物又は繊維混合物において、抗菌剤は0.1〜70重量%添加されていることが好ましい。
7.抗菌活性回復方法及び抗菌活性回復剤
本発明は、次の式で表される塩基性塩化アルミニウム及び塩基性硫酸アルミニウムから選ばれる少なくとも一つのアルミニウム塩を含む水溶液を使用して、抗菌剤を含む物体を洗浄する。
Al(OH)nCl3-n、又はAl2(OH)2n(SO43-n
但し、nは0.5〜2.5である。
これにより、抗菌剤は活性を回復できる。前記抗菌活性回復剤のアルミニウム塩の濃度は、酸化アルミニウム換算で0.008重量%以上であることが好ましい。上限はアルミニウム塩の種類にもよるが、限界溶解度以下の範囲である。実施例では0.8重量%までの回復性を確認している。
本発明の抗菌剤はリン吸着能があることに起因して抗菌性を発揮する。しかし、リン吸着が飽和すると抗菌性は飽和状態となる。そこで、本発明の抗菌活性回復方法及び抗菌活性回復剤により、リン吸着能を回復させ、細菌の養分であるリンを奪い取り、抗菌性を長期にわたり維持できる。このような抗菌活性回復方法及び抗菌活性回復剤は、例えば医療機関の衣類、寝具類、カーテン等のインテリア製品、カーペット、履物類等、抗菌性が長期にわたり必要な物体の抗菌活性回復に有用である。
以下、具体的実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。下記の実施例において、単に「%」と表示しているのは、「wt%」を意味する。
(実施例1)
(1)再生コラーゲン粉末の作製
牛の床皮を原料とし、アルカリで可溶化した皮片1200kg(コラーゲン分180kg)に30重量%に希釈した過酸化水素水溶液30gを投入後、乳酸水溶液で溶解し、pH3.5、固形分7.5重量%に調整した原液を作製した。原液を減圧下で撹拌脱泡機((株)ダルトン製、8DMV型)により撹拌脱泡処理し、ピストン式紡糸原液タンクに移送し、さらに減圧下で静置し、脱泡を行った。かかる原液をピストンで押し出した後、ギアポンプで定量送液し、孔径10μmの焼結フィルターで濾過後、孔径0.275mm、孔長0.5mm、孔数300の紡糸ノズルを通し、硫酸ナトリウム20重量%を含有してなる25℃の凝固浴(ホウ酸及び水酸化ナトリウムでpH11に調整)へ紡出速度5m/分で吐出した。
次に、得られた再生コラーゲン繊維(300本、20m)を、エピクロロヒドリン1.7重量%、水酸化ナトリウム0.0246重量%、及び硫酸ナトリウム17重量%を含有した水溶液1.32kgに25℃で4時間浸漬した後、さらに反応液温度を43℃に昇温して2時間含浸した。
反応終了後に反応液を除去後、流動型装置にて1.32kgの25℃の水を用いて3回バッチ水洗を行った。この後、硫酸アルミニウム5重量%(Al2(OH)2n(SO43-n、但し、nは0.5〜2.5である)、クエン酸三ナトリウム塩0.9重量%、水酸化ナトリウム1.2重量%を含有した水溶液1.32kgに30℃で含浸し、反応開始から2時間後、3時間後及び4時間にそれぞれ5重量%水酸化ナトリウム水溶液13.2gを反応液に添加し、合計6時間反応させた。反応終了後に反応液を除去後、流動型装置にて1.32kgの25℃の水を用いて3回バッチ水洗を行った。
ついで、作製した繊維の一部をアミノ変性シリコーンのエマルジョン及びプルロニック型ポリエーテル系静電防止剤からなる油剤を満たした浴槽に浸漬して油剤を付着させた。50℃に設定した熱風対流式乾燥機内部で繊維束の一方の端を固定し、他方の端に繊維1本に対して2.8gの重りを吊り下げ2時間緊張下で乾燥させ、60deci texの再生コラーゲン繊維を得た。
得られた再生コラーゲン繊維を物理的に粉砕した。すなわち、まず再生コラーゲン繊維2kgをカッターミルSF−8(三力製作所製)にて1mm前後の長さに細断し、同社製サイクロンCYC−600型にて回収した。次に、振動ミル(株式会社トーケン製)を用い粉砕を行った。粉砕条件としては、容量4Lのアルミナ製容器に同じアルミナ製のボール(径19mm)を充填容量80%、細断したコラーゲン繊維を充填容量として40%(500g)で入れ、4〜12時間粉砕処理を実施した。その結果、4時間の粉砕では平均粒子径33μm、15時間の粉砕では平均粒子径10μmの粉末を得ることができた。得られた粒子の平均粒子径は10μmであった。
(2)再生コラーゲン粉末の抗菌性回復試験
前記で得られた平均粒径10μmの再生コラーゲン粉末をL−broth(試験管)に終濃度0.25重量%になるように添加し、一晩(12時間)、37℃で振とうした。振とう後の同粉末分散溶液を3本のチューブに分注し、20mlの水にて3回洗浄後、各々終濃度1重量%になるように水を加えた。次に、内3チューブそれぞれに酸化アルミニウム換算で8重量%の硫酸アルミニウム(Al2(OH)2n(SO43-n、但し、nは0.5〜2.5である。)水溶液を、終濃度0.008重量%、0.08重量%、0.8重量%になるように添加し、37℃で3時間振とう処理した。振とう処理後の各チューブ内の粉末を20mlの水で3回洗浄後、それぞれ粉末濃度として1重量%になるように新しいL−brothを添加、さらにこれに大腸菌を加え37℃で一晩(12時間)培養した。その結果、硫酸アルミニウムを添加したチューブすべてで生育が見られなかった。よって、一度培地飽和によって抗菌性を失った再生コラーゲン粉末を低濃度の硫酸アルミニウムで洗浄処理することにより、その抗菌性を回復できることが確認できた。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1の平均粒径10μの再生コラーゲン粉末をL−brothに終濃度0.25重量%になるように添加し、一晩(12時間)、37℃で振とうした。振とう後の同粉末分散溶液をチューブに分注し、20mlの水にて3回洗浄後、終濃度1重量%になるように水を加えた。次に、このチューブを37℃で3時間振とう処理した。振とう処理後のチューブ内の粉末を20mlの水で3回洗浄後、粉末濃度として1重量%になるように新しいL−brothを添加、さらにこれに大腸菌を加え37℃で一晩(12時間)培養した。その結果、大腸菌の十分な生育が見られた。結果を表1に示す。
Figure 0005183168
(備考)*培地処理済み粉末:L−brothに0.25重量%再生コラーゲン粉末を添加し、一晩(12時間)、37℃で振とうした。
(実施例2)
(1)繊維径70μmの再生コラーゲン繊維の抗菌性回復試験
繊維径70μmの再生コラーゲン繊維をL−brothにそれぞれ終濃度0.25重量%になるように2チューブに添加し、一晩(12時間)、37℃で振とうした。振とう後、30mlの水にて3回洗浄後、各々終濃度10重量%になるように水を加えた。次に、2チューブそれぞれに酸化アルミニウム換算で8重量%の硫酸アルミニウム溶液を終濃度0.08重量%、0.8重量%になるように添加し、37℃で3時間振とう処理した。振とう処理後の各チューブ内の粉末を30mlの水で3回洗浄後、それぞれ粉末濃度として10重量%になるように新しいL−brothを添加、さらにこれに大腸菌を加え37℃で一晩(12時間)培養した。その結果、硫酸アルミニウム添加のチューブで生育が見られなかった。結果を表2に示す。
(比較例2)
繊維径70μmの再生コラーゲン繊維をL−brothに終濃度0.25重量%になるように3チューブに添加し、一晩(12時間)、37℃で振とうした。振とう後、30mlの水にて3回洗浄後、終濃度10重量%になるように水を加えた。次に、3チューブ中1チューブに酸化アルミニウム換算で8重量%の硫酸アルミニウム溶液を終濃度0.008重量%になるように添加し、1チューブにはシャンプー(花王社製)を1%W/Vで添加した。これは通常の繊維洗浄には効果があるためである。もう1チューブは無添加とした。この3チューブを37℃で3時間振とう処理した。振とう処理後の各チューブ内の粉末を30mlの水で3回洗浄後、それぞれ繊維濃度として10重量%になるように新しいL−brothを添加、さらにこれに大腸菌を加え37℃で一晩(12時間)培養した。その結果、硫酸アルミニウム無添加および0.008重量%添加、シャンプー添加の3チューブともに大腸菌の十分な生育が見られた。よって一度培地飽和によって抗菌性を失った繊維径70μmの再生コラーゲン繊維を水あるいは極低濃度の硫酸アルミニウム、またシャンプーで処理してもその抗菌性を回復させることはできなかった。結果を表2に示す。
Figure 0005183168
(備考)*培地処理済み繊維:L−brothに0.25重量%で70μm径の再生コラーゲン繊維を添加し、一晩(12時間)、37℃で振とうした。
(実施例3)
(1)繊維径18μmの再生コラーゲン繊維の抗菌性回復試験
繊維径18μmの再生コラーゲン繊維をL−brothに終濃度0.25重量%になるように2チューブに添加し、一晩(12時間)、37℃で振とうした。振とう後、30mlの水にて3回洗浄後、各々終濃度10重量%になるように水を加えた。次に、2チューブそれぞれに酸化アルミニウム換算で8重量%の硫酸アルミニウム溶液を終濃度0.008重量%、0.08重量%になるように添加し、37℃で3時間振とう処理した。振とう処理後の各チューブ内の粉末を30mlの水で3回洗浄後、それぞれ繊維濃度として10重量%になるように新しいL−brothを添加、さらにこれに大腸菌を加え37℃で一晩(12時間)培養した。その結果、硫酸アルミニウムを添加した2チューブすべてで生育が見られなかった。よって一度培地飽和によって抗菌性を失った繊維径18μの再生コラーゲン繊維を極低濃度の硫酸アルミニウムで処理することにより、その抗菌性を回復できることが確認できた。結果を表3に示す。
(比較例3)
繊維径18μmの再生コラーゲン繊維をL−brothに終濃度0.25重量%になるように添加し、一晩(12時間)、37℃で振とうした。振とう後、30mlの水にて3回洗浄後、終濃度10重量%になるように水を加えた。次にこのチューブを37℃で3時間振とう処理した。振とう処理後のチューブ内の粉末を30mlの水で3回洗浄後、終濃度として10重量%になるように新しいL−brothを添加、さらにこれに大腸菌を加え37℃で一晩(12時間)培養した。その結果、大腸菌の十分な生育が見られた。結果を表3に示す。
Figure 0005183168
(備考)*培地処理済み繊維:L−brothに0.25重量%で18μm径の再生コラーゲン繊維を添加し、一晩(12時間)、37℃で振とうした。
(実施例4)
(1)再生コラーゲン粉末含有ポリウレタン樹脂コーティング塩ビシートの抗菌性回復試験
厚さ0.4mmの塩ビシート上に実施例1で得られた再生コラーゲン粉末を10重量%混合したポリウレタン樹脂塗料をコーティングし、塗装物を得た。再生コラーゲン粉末を含むポリウレタン樹脂塗膜の厚さは約3μmであった。同シートをマウスパッドとして4月間使用したもの、また十分量の培地(L−broth)にて処理したものを1シート、以上2シートについて硫酸アルミニウム溶液(酸化アルミニウム換算で0.08重量%のもの)で処理し、水洗、乾燥後のシートについて抗菌性の回復度を調べた。マウスパッドとして使用したシートは、4月間、一日5〜8時間平均で1月あたり15〜20日程度の頻度で使用したものを用いた。また培地処理シートは、5cm四方の同シートを20mlの培地に3時間浸積処理したものである。硫酸アルミニウム処理した各シートの抗菌性はJIS Z 2801に順ずる方法で調べた。結果、下記比較例4に記載している方法で処理したマウスパッド使用し、培地処理シートで硫酸アルミニウムで処理しなかったものがそれぞれ9.6x106個/ml、6.6x107個/mlであったのに対し、硫酸アルミニウム処理したものはそれぞれ1.1x105個/ml、1.4x105個/mlと明らかな抗菌性の回復が見られた。なお対照として、プラスチック(ポリプロピレン)製の培養プレート内面、および上記試験シートで未使用のものについて、硫酸アルミニウムを添加せず代わりに同量の水を添加する以外上記処理品と同様の処理を行い、生菌数を測定した。結果を表4に示す。
(比較例4)
硫酸アルミニウム溶液を添加する代わりに同量の水を添加すること以外は実施例4とまったく同様の手順でシート処理、抗菌性評価を行った。結果を表4に示す。
Figure 0005183168
以上の実施例、比較例から、本実施例の抗菌活性回復剤は、リン吸着能を回復させ、細菌の養分であるリンを奪い取り、抗菌性を長期にわたり維持できることが確認できた。
本発明のコラーゲン繊維の製造方法において使用するエレクトロスピニング方法の一例を示す概略図である。 本発明他のエレクトロスピニング法を用いた紡糸方法を示す拡大概略図である。
符号の説明
1 エレクトロスピニング装置
2 密閉容器
3 絶縁板
4 金属製ホルダー
5 金属製ノズル
6 高圧電源
7 送液配管
8 別の密閉容器
9 容器
10 再生コラーゲン溶液
11 コンプレッサー
12 金属製の網
13 支柱
14 アース
15 帯電微小ミスト(再生コラーゲン繊維)
20 スプレーノズル
21 アルミニウム塩水溶液
22 巻き取りシリンダー

Claims (11)

  1. 再生コラーゲン、ポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロースから選ばれる少なくとも1つの有機樹脂とアルミニウム塩を含み、前記アルミニウム塩は前記有機樹脂に化学的に結合され、粒子又は繊維に形成されている抗菌剤を含む物体の抗菌活性回復方法であって、
    次の式で表される塩基性塩化アルミニウム及び塩基性硫酸アルミニウムから選ばれる少なくとも一つのアルミニウム塩を含む水溶液を使用して洗浄することを特徴とする抗菌活性回復方法。
    Al(OH) n Cl 3-n
    Al 2 (OH) 2n (SO 4 3-n
    但し、nは0.5〜2.5である。
  2. 前記有機樹脂は、前記アルミニウム塩で架橋されている請求項に記載の抗菌活性回復方法。
  3. 前記有機樹脂は、さらに有機化合物からなる架橋成分を含み、架橋成分は下記一般式(1)で表される単官能エポキシ化合物である請求項に記載の抗菌活性回復方法。
    Figure 0005183168
    但し、RはR1−、R2−O−CH2−またはR2−COO−CH2−で表される置換基を示し、R1は炭素数2以上の炭化水素基またはCH2Clであり、R2は炭素数4以上の炭化水素基を示す。
  4. 前記有機樹脂に化学的に結合されているアルミニウム塩は次の式で表される塩基性塩化アルミニウム又は塩基性硫酸アルミニウムである請求項1に記載の抗菌活性回復方法。
    Al(OH)nCl3-n
    Al2(OH)2n(SO43-n
    但し、nは0.5〜2.5である。
  5. 前記抗菌剤粒子の平均粒子径は0.01〜80μmである請求項1に記載の抗菌活性回復方法。
  6. 前記繊維の直径は、50nm〜70μmの範囲である請求項1に記載の抗菌活性回復方法。
  7. 前記抗菌剤を含む物体中、前記抗菌剤は0.1〜70重量%添加されている請求項1〜のいずれかに記載の抗菌活性回復方法。
  8. 前記抗菌剤が粒子の場合、マトリックス樹脂と混合され、シート又は繊維上に塗布されている請求項1に記載の抗菌活性回復方法。
  9. 前記抗菌剤が繊維の場合、別の繊維と混合されている請求項1に記載の抗菌活性回復方法。
  10. 再生コラーゲン、ポリビニルアルコール及びカルボキシメチルセルロースから選ばれる少なくとも1つの有機樹脂とアルミニウム塩を含み、前記アルミニウム塩は前記有機樹脂に化学的に結合され、粒子又は繊維に形成されている抗菌剤を含む物体の抗菌活性回復剤であって、
    次の式で表される塩基性塩化アルミニウム及び塩基性硫酸アルミニウムから選ばれる少なくとも一つのアルミニウム塩を含む水溶液であることを特徴とする抗菌活性回復剤。
    Al(OH)nCl3-n
    Al2(OH)2n(SO43-n
    但し、nは0.5〜2.5である。
  11. 前記抗菌活性回復剤のアルミニウム塩の濃度が、酸化アルミニウム換算で0.008重量%以上である請求項10に記載の抗菌活性回復剤。
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