JP5379375B2 - 抗ウイルス性付与組成物及びそれを用いた抗ウイルス性製品の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明において「抗ウイルス性」は、例えば、気体又は液体中のウイルスの、抗ウイルス性が付与された対象物に接触した前後における、数及び/又は感染力価の変化(低減の程度)で評価することができる。本発明における抗ウイルス性の標的となるウイルスの種類は、特に制限されず、例えば、以下のウイルスが挙げられる。ヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルスなどのDNAウイルス。麻疹ウイルス、インフルエンザウイルス、SARSウイルス、ラッサ熱ウイルス、AIDSウイルス、ロタウイルス、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、ノロウイルス、狂犬病ウイルス、日本脳炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、デング熱ウイルス、C型肝炎ウイルス、ブタコレラウイルスなどのRNAウイルス。
本発明の抗ウイルス性付与組成物に含まれる再生コラーゲン繊維は、例えば、特開2002−249982号公報に開示されるもの、又はこれに由来するものを好ましく使用できる。前記再生コラーゲン繊維は、例えば、以下のようにして製造できる。まず、原料として、動物由来のコラーゲン繊維の原料、好ましくは、床皮の部分を準備する。床皮は、例えば牛、豚、馬、鹿、兎、鳥、魚等の動物から得られるフレッシュな床皮が使用でき、また、塩漬けした生皮から得ることもできる。これら床皮は、大部分が不溶性コラーゲン繊維からなる。床皮は、通常、網状に付着している肉質部分を除去し、腐敗・変質防止のための塩分を除去したのちに用いられる。また、前記動物の骨、腱など他の材料も同様に原料として用いることができる。前記の不溶性コラーゲン繊維には、グリセライド、リン脂質、遊離脂肪酸等の脂質、糖タンパク質、アルブミン等のコラーゲン以外のタンパク質等、不純物が存在している。これらの不純物は、粉末化するにあたって光沢や強度等の品質、臭気等に多大な影響を及ぼしうる。したがって、例えば石灰漬けにして不溶性コラーゲン繊維中の脂肪分を加水分解し、コラーゲン繊維を解きほぐした後、酸・アルカリ処理、酵素処理、溶剤処理等のような一般に行われている皮革処理を施し、予めこれらの不純物を除去しておくことが好ましい。
−CH2−CH(OX)−R (I)
(式中、Rは、R1−、R2−O−CH2−又はR2−COO−CH2−で表される置換基を示し、前記置換基中のR1は炭素数2以上の炭化水素基又はCH2Clであり、R2は炭素数4以上の炭化水素基を示し、Xは水素又は炭化水素基を示す。)
上記式(I)の好ましい例としては、グリシジル基、1−クロル−2−ヒドロキシプロピル基、1,2−ジヒドロキシプロピル基が挙げられる。加えて、グリシジル基がコラーゲン中の遊離アミノ基に付加した構造が挙げられる。さらには、前述の好ましい基に記載されたアルキル基に含まれる水酸基を開始点として、用いたエポキシ化合物が開環付加、及び/又は開環重合した構造が挙げられ、このときの付加及び又は重合の末端構造として、前述のアルキル基の構造を有しているものが挙げられる。前記再生コラーゲンの遊離アミノ基を構成するアミノ酸としては、リジン及びヒドロキシリジンが挙げられる。さらに、本来コラーゲンを構成するアミノ酸としてはアルギニンで存在するものの、前記再生コラーゲンを得るために、アルカリ条件下で加水分解を行う際に、一部加水分解が進行して生じたオルニチンのアミノ基もアルキル化反応される。加えて、ヒスチジンに含まれる2級アミンによっても反応が進行する。遊離アミノ基の修飾率は、アミノ酸分析により測定することが可能であり、アルキル化反応前の再生コラーゲン繊維のアミノ酸分析値、又は原料として用いたコラーゲンを構成する遊離アミノ酸の既知組成を基準に算出される。なお、本発明におけるアミノ基の修飾では、β−位又はγ−位に水酸基又はアルコキシ基を有する炭素数2以上のアルキル基で修飾された構造が、遊離アミノ基の50%以上であれば良く、その他の部分は遊離アミノ基のままでもよいし他の置換基で修飾された構造であっても良い。再生コラーゲンの遊離アミノ酸の修飾率は50%以上である必要があり、より好ましくは65%以上、さらに好ましくは80%以上である。反応率が低い場合、耐熱性で良好な特性が得られない。ここで、遊離アミノ基の修飾においては、通常、遊離アミノ基1つあたり1分子のアルキル化剤が反応する。もちろん2分子以上反応していてもよい。さらに、遊離アミノ基に結合したアルキル基のβ−位又はγ−位に存在する水酸基又はアルコキシ基又はその他の官能基を介して、分子内又は分子間での架橋反応が存在していても良い。アルキル化反応の具体例としては、エポキシ化合物の付加反応、α−位又はβ−位に水酸基又はこの誘導体を有するアルデヒド化合物の付加反応とこれに続く還元反応、β−位又はγ−位に水酸基又はアルコキシ基を有する炭素数2以上のハロゲン化物、アルコール及びアミン等の置換反応が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明の抗ウイルス性付与組成物に含まれる再生コラーゲン粉末は、例えば、上記の再生コラーゲン繊維を粉砕することで得ることができる。具体的には、再生コラーゲン繊維を粉砕に適した繊維長もしくはサイズに切断するか、この切断したものをさらに粉砕するか、又は、再生コラーゲン繊維を直接粉砕することにより再生コラーゲン粉末とすることができる。再生コラーゲン粉末の製造に使用できるカッターは特に制限は無い。例えば、繊維のカットに通常使われる回転刃カッター、ベルトカッター、シャーリングマシン、カッターミル等で0.1mm〜数mm程度に切断する。さらに、このカット綿を、ローラーミル、ロッドミル、ボールミル(乾式、湿式)、ジェットミル、ピンミル、振動ミル、セントリフューガル(CF)ミル、遊星型ボールミル、グラインダーミル等せん断型ミル等の粉砕機を用いて微粉砕、又は、媒体攪拌型超微粉砕機等を用い超微粉砕する。ジルコニア製ボール等の硬質のボールを使用することで粉末へのボール素材の混入を防ぐ点及び粉砕効率の点から好ましく使用することができる。アルミナ製ボール等他の素材のボールを用いることもできる。その他の粉砕方法として、冷凍粉砕も使用できる。このようにして得られた再生コラーゲン粉末の平均粒子径(レーザ回折散乱法で測定される体積中位径)は0.01〜80μmであることが好ましく、後述するコーティング剤に使用する場合には、触感及びハンドリング向上の観点から、より好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは1〜10μmである。
本発明の抗ウイルス性付与組成物は、上述した再生コラーゲン繊維を含む繊維の形態であってもよく、上述した再生コラーゲン粉末を含む粉末の形態であってもよい。また、本発明の抗ウイルス性付与組成物は、例えば、前記再生コラーゲン繊維を含むシートや不織布の形態、あるいは、再生コラーゲン粉末を含むコーティング剤などの形態であってもよい。
本発明の抗ウイルス性付与組成物は、上述したとおり、再生コラーゲン粉末を含むコーティング剤の形態であってもよい。前記コーティング剤としては、マトリックス樹脂及び再生コラーゲン粉末などの有機フィラーを含有するものがあげられる。また、必要に応じて、有機溶剤又は水、シリカ粉末などの無機フィラー、着色剤(顔料)、可塑剤、老化防止剤等を加えることもできる。混合条件については、公知の条件であればよく、特に限定はない。前記マトリックス樹脂材料としては、一般の塗料に使用される樹脂であればどのようなものでも良い。例えば、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリルシリコーン系樹脂、エポキシエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマーからなる群から選ばれる樹脂を少なくとも一種含有する組成物とすることが好ましく、再生コラーゲン粉末の特性である吸放湿性や抗ウイルス性等の損なわない範囲で併用することも可能である。この中でも、耐磨耗性、耐寒性、耐屈曲性、耐油性等の点で、ポリウレタン系樹脂が好ましい。前記コーティング剤は、再生コラーゲン粉末と前記マトリックス樹脂材料とを有機溶媒又は水中で混合することで製造できる。前記コーティング剤は壁や天井等の固定物体に塗布してもよいし、基布シートに塗装して塗装シートとしても良い。前記基布シートとしては、壁紙や布、合成皮革、ポリ塩化ビニルレザー、人工皮革、又は合成樹脂成形品などが挙げられる。コーティングする方法は特に限定されず、例えば、グラビアプリンター法、スプレー法、ロールコーター法、リバースコーター法、ドクターナイフ法、刷毛塗り法、ディッピング法等を用いることができる。
したがって、本発明は、その他の態様において、抗ウイルス性製品の製造方法であって、本発明の抗ウイルス性付与組成物を成形、添加、混合、又は塗布する工程を含む製造方法である。前記成形工程としては、本発明の抗ウイルス性付与組成物を成形して、例えば、不織布、成形物などの製品を製造する工程が挙げられる。また、前記添加、混合、又は塗布する工程としては、上述した「対象製品」又はその材料若しくは部品に本発明の抗ウイルス性付与組成物を添加、混合、若しくは塗布する工程を含む。本発明の製造方法におけるこれらの工程は、抗ウイルス性の付与を目的として行われることが好ましく、抗ウイルス性が発揮される十分量の本発明の抗ウイルス性付与組成物が使用されることが好ましい。
本発明は、さらにその他の態様において、対象物に抗ウイルス性を付与する方法であって、前記対象物に本発明の抗ウイルス性付与組成物を添加、混合、又は塗布する工程を含む抗ウイルス性付与方法である。前記対象物としては、上述した「対象製品」又はその材料若しくは部品が挙げられ、前記添加、混合、又は塗布する工程としては、前記対象物に本発明の抗ウイルス性付与組成物を添加、混合、若しくは塗布する工程を含む。本発明の付与方法におけるこれらの工程は、抗ウイルス性の付与を目的として行われることが好ましく、抗ウイルス性が発揮される十分量の本発明の抗ウイルス性付与組成物が使用されることが好ましい。
牛の床皮を原料とし、アルカリで可溶化した皮片1200kg(コラーゲン分180kg)に30重量%に希釈した過酸化水素水溶液30gを投入後、乳酸水溶液で溶解し、pH3.5、固形分7.5重量%に調整した原液を作製した。原液を減圧下で撹拌脱泡機((株)ダルトン製、8DMV型)により撹拌脱泡処理し、ピストン式紡糸原液タンクに移送し、さらに減圧下で静置し、脱泡を行った。かかる原液をピストンで押し出した後、ギアポンプで定量送液し、孔径10μmの焼結フィルタで濾過後、孔径0.275mm、孔長0.5mm、孔数300の紡糸ノズルを通し、硫酸ナトリウム20重量%を含有してなる25℃の凝固浴(ホウ酸及び水酸化ナトリウムでpH11に調整)へ紡出速度5m/分で吐出した。
前記再生コラーゲン粉末(平均粒子径10μm)と精製水とを混合して再生コラーゲン粉末液(1重量% 再生コラーゲン粉末)を調製した。
0.06mg/mlカナマイシン、10%新生コウシ血清(FBS)を含むEagleMEM培地を細胞増殖培地として用い、CRFK細胞(大日本製薬株式会社製)を細胞培養用フラスコ中で単層培養した後、フラスコから細胞増殖培地を取り除いた。そこに、ノロウイルスの代替ウイルスであるネコカリシウイルス(Feline calicivirus vaccine strain)を接種し、細胞維持培地を加えた。37℃の炭酸ガスインキュベーター(CO2濃度5%)で2〜5日間培養した後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態を観察した。細胞に形態変化(細胞変性効果)が起こっていることを確認し、培養液を3000r/min、10分間遠心分離し、その上清をウイルス液とした。
再生コラーゲン粉末液10mlとウイルス液0.2mlとを混合し、130〜140r/minで振とうしながら室温で1時間保存した。ついで、混合液をフィルタ(孔径:0.20μm)でろ過して再生コラーゲン粉末を除去した後、細胞維持培地を用いて10倍に希釈した。
前記イーグル培地を用いてCRFK細胞を細胞培養用マイクロプレート(96穴)で単層培養した後、培地を取り除いた。各ウエルに前記細胞維持培地を0.1mlずつ加えた後、前記希釈液0.1mlを4穴ずつ接種した。37℃の炭酸ガスインキュベーター(CO2濃度5%)で4〜7日間培養した後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化(細胞変性効果)の有無を確認した。Reed−Muench法により50%組織培養感染価(medium tissue infections dose)(TCID50)を算出して再生コラーゲン粉末液1mlあたりのウイルス力価に換算した。得られた結果を下記表1に示す。
比較例1として、再生コラーゲン粉末液に替えて精製水を使用した以外は、実施例1と同様に行った。その結果を実施例1とあわせて下記表1に示す。
宿主である大腸菌(E.coli (F+)、NBRC13965、NITEより入手)を培地A10mlで37℃一晩培養した。培養した大腸菌0.1mlと大腸菌ファージ(coliphageQβ(以下、「ウイルス」とよぶ)、NBRC20012、NITEより入手)とを新たな培地A10mlに接種し、37℃で一晩培養した後、得られた培養液のウイルス量を後述する測定方法で測定した。新たな培地A0.1mlに大腸菌を接種し、その大腸菌数の10分の1量(ウイルス力価)となるようにウイルスを接種し、37℃で一晩培養してウイルス液を調製した。得られたウイルス液のウイルス量は2.4×1010個/mlであった。
培地A10mlで大腸菌を3〜4時間培養した。培養した大腸菌液0.1mlと適当に希釈したウイルス液0.1mlとを混合し、直ちにTOP−agar3.3mlを添加した後、bottom−agarに注ぎ、37℃で一晩培養した。そして、プレート上に出現した溶菌斑(プラーク)の数を計数してその個数をウイルス力価とした。
実施例1で作製した再生コラーゲン粉末(VMS)を30重量%となるようにポリウレタン樹脂(日本ポリウレタン工業社製)に混合し、これをPVC(軟質塩ビシート:龍田化学社製)にコーティングしたシートサンプル(PVC/PU/30%VMS、厚み30μm)を準備した。
比較例2として、PVC/PU/30%VMSに替えて、ポリウレタン樹脂(日本ポリウレタン工業社製)をPVC(軟質塩ビシート:龍田化学社製)にコーティングしたシート(PVC/PU、厚み30μm)を使用した以外は、実施例2と同様にして行った。その結果を実施例2とあわせて下記表3に示す。
比較例3として、前記TS繊維サンプルを前記ポリスチレンチューブに添加しない以外は、実施例3と同様にして行った。その結果を実施例3とあわせて下記表4に示す。
Claims (4)
- 抗ウイルス性製品の製造に用いる抗ウイルス性付与組成物であって、単官能エポキシ化合物及びアルミニウム塩で処理された再生コラーゲン粉末を含む、粉末又はコーティング剤の形態である、抗ウイルス性付与組成物。
- 抗ウイルス性製品の製造方法であって、請求項1記載の抗ウイルス性付与組成物を成形、添加、混合、又は塗布する工程を含む、抗ウイルス性製品の製造方法。
- 対象物に抗ウイルス性を付与する方法であって、前記対象物に請求項1記載の抗ウイルス性付与組成物を添加、混合、又は塗布する工程を含む、抗ウイルス性付与方法。
- 請求項1に記載の抗ウイルス性付与組成物を含む抗ウイルス性製品。
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