JP5181492B2 - 蛍光体原料及び蛍光体原料用合金の製造方法 - Google Patents
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Description
この場合、得られる蛍光体は、酸窒化物蛍光体のみであり、酸素を含まない窒化物蛍光体は得られていない。
このため、不純物の混入が少ない蛍光体原料が求められている。
また、蛍光体原料用合金においては、Siを先に融解し、次いでアルカリ土類金属を融解することにより、低沸点のアルカリ土類金属等の揮発を防ぎ、目的組成で、構成元素が均一に分布した合金を再現性よく得ることができることを見出した。
前記金属元素M 4 以外の金属元素が、付活元素M 1 及び2価の金属元素M 2 を含み、
パーティクルアナライザーによる分析によって得られる金属元素M4のうちいずれか一種の三乗根電圧と、金属元素M4以外の金属元素のいずれか一種の三乗根電圧との関係で示される同期分布図において、
その誤差の絶対偏差値が0.19以下であることを特徴とする蛍光体原料。
その誤差の絶対偏差値が0.4以下であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の蛍光体原料。
4価の金属元素M4が少なくともSiを含み、必要に応じてGe、Sn、Ti、Zr、及びHfからなる群から選ばれる1種以上の元素を含むことを特徴とする[1]から[5]のいずれかに記載の蛍光体原料。
[7] 前記3価の金属元素M 3 がAl、Ga、In、及びScからなる群から選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする[2]から[6]のいずれかに記載の蛍光体原料。
2価の金属元素M2の50モル%以上がCa及び/又はSrであり、
3価の金属元素M3の50モル%以上がAlであり、
少なくともSiを含む4価の金属元素M4の50モル%以上がSiであることを特徴とする蛍光体原料。
付活元素M1としてEuを、
2価の金属元素M2としてCa及び/又はSrを、
3価の金属元素M3としてAlを含むことを特徴とする蛍光体原料。
Si及び/又はSiを含む母合金を融解させた後、該融解物にアルカリ土類金属を融解させることを特徴とする蛍光体原料用合金の製造方法。
また、本発明によると、Siとアルカリ土類金属元素とを含む蛍光体原料用合金を工業的に製造することも可能となる。
本発明の蛍光体原料は、蛍光体の原料となり得るものであれば特に制限はないが、目的とする蛍光体の構成元素の2種類以上を含むものであり、各構成元素が均一に分布していることを特徴とする。
なお、付活元素M1、2価の金属元素M2、3価の金属元素M3、及び少なくともSiを含む4価の金属元素M4の好ましい元素は、後述の[蛍光体原料用合金]に記載のものと同様である。
本発明の蛍光体原料及び蛍光体原料用合金をパーティクルアナライザーで分析した場合、以下のような分析結果を有することが好ましい。
パーティクルアナライザーによる分析によって得られる、金属元素M4のうちいずれか一種の三乗根電圧と、金属元素M4以外の金属元素のいずれか一種の三乗根電圧との関係で示される同期分布図において、その誤差の絶対偏差値が、通常0.19以下、好ましくは0.17以下、より好ましくは0.15以下、更に好ましくは、0.13以下である。
ここで、金属元素M4以外の金属元素としては、付活元素M1、2価の金属元素M2、及び3価の金属元素M3からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、付活元素M1、及び2価の金属元素M2からなる群から選ばれる1種以上であることがより好ましい。
パーティクルアナライザーによる分析によって得られる金属元素M4のうちいずれか一種の三乗根電圧と、付活元素M1のうちいずれか一種の三乗根電圧との関係で示される同期分布図において、その誤差の絶対偏差値が通常0.4以下、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下、更に好ましくは、0.15以下である。
ここで、金属元素M4及び付活元素M1以外に蛍光体原料に含まれる元素としては、2価の金属元素M2、及び3価の金属元素M3からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、2価の金属元素M2であることがより好ましい。
パーティクルアナライザーによる分析によって得られる付活元素M1のうちいずれか一種の三乗根電圧と、付活元素M1以外の金属元素のいずれか一種の三乗根電圧との関係で示される同期分布図において、その誤差の絶対偏差値が通常0.4以下、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.15以下である。
ここで、付活元素M1以外に蛍光体原料に含まれる元素としては、2価の金属元素M2、3価の金属元素M3、及び金属元素M4からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、2価の金属元素M2、及び金属元素M4からなる群から選ばれる1種以上であることがより好ましく、金属元素M4であることがさらに好ましい。
個々のサンプル粒子の質量を直接測定することは困難であるため、パーティクルアナライザーでは、プラズマ中でサンプル粒子をイオン化することにより、励起して発光させ、その発光強度を測定している。
ここで、測定された発光強度は本来、各粒子中に含まれる元素の質量に関連するものである。パーティクルアナライザーでは、サンプル粒子を真球であると仮定して、発光強度の三乗根を算出することにより、サンプル粒子の粒径に相関する値(以下、「三乗根電圧(値)」と称する場合がある。)を出力し、この値を用いて粉末状のサンプルに関する情報を得ている。測定対象とした2種以上の元素が同一粒子内に含まれているか否かは、それぞれの元素の発光現象が同時に起きたか否かで判断することができる。
合金Aについてパーティクルアナライザーで分析すると、Sr原子、Ca原子、Al原子、Si原子、Eu原子それぞれの発光強度(ここで、発光強度は質量に比例する。)が、光電子増倍管の検出電圧として測定される。前記の三乗根電圧は、測定された検出電圧(発光強度)の三乗根として求められるものであり、サンプル粒子の粒径に相関するものである。
なお、通常の場合、バッグラウンドの測定を行い、装置ノイズの影響を無くするためにノイズカットレベルを設定する。
誤差(x)=d/H …[A]
ここで、正側の誤差は正の値、負側の誤差は負の値を取る。
本発明における誤差の絶対偏差値は、下記式[B]で求めることができる。なお、誤差の算出において、軸上のデータは計算されない。
本発明の蛍光体原料用合金は、次のような元素を均一に含むものである。
M1 aM2 bM3 cM4 d [1]
M1 aM2 bM3 cM4 dNeOf [2]
(但し、a、b、c、d、e、fはそれぞれ下記の範囲の値である。
0.00001≦a≦0.15
a+b=1
0.5≦c≦1.5
0.5≦d≦1.5
2.5≦e≦3.5
0≦f≦0.5 )
即ち、eは窒素の含有量を示す係数であり、M2 IIM3 IIIM4 IVN3を基本結晶構造とすれば
1.84≦e≦4.17
となるが、2.5≦e≦3.5の範囲外では蛍光体の収率が低下する傾向にある。
本発明の蛍光体原料用合金の製造方法は、少なくともSiを含む4価の金属元素M4と、2価の金属元素M2としてアルカリ土類金属元素の1種以上とを含む蛍光体原料用合金を製造する場合に特に適している製造方法である。
例えば、前述の一般式[1]の組成となるように、原料となる金属やその合金を秤量し、これを融解させて合金化するものであるが、その際に、高融点(高沸点)のSi及び/又はSiを含む合金を融解させた後、低融点(低沸点)のアルカリ土類金属を融解させることを特徴とする。
合金の製造に使用する金属の純度は、合成される蛍光体の発光特性の点から、付活元素M1の金属原料としては不純物が0.1モル%以下、好ましくは0.01モル%以下まで精製された金属を使用することが好ましい。付活元素M1としてEuを使用する場合には、Eu原料としてEu金属を使用することが好ましい。付活元素M1以外の元素の原料としては、2価、3価、4価の各種金属等を使用する。付活元素M1と同様の理由から、いずれも含有される不純物濃度は0.1モル%以下であることが好ましく、0.01モル%以下であることがより好ましい。例えば、不純物としてFe、Ni、及びCoからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する場合、各々の元素の含有量は、通常500ppm以下、好ましくは100ppm以下である。
原料金属の形状に制限は無いが、通常、直径数mmから数十mmの粒状又は塊状のものが用いられる。
2価の金属元素M2としてアルカリ土類金属元素を用いる場合、その原料としては、粒状、塊状など形状は問わないが、原料の化学的性質に応じて適切な形状を選択するのが好ましい。例えば、Caは粒状、塊状のいずれでも大気中で安定であり、使用可能であるが、Srは化学的により活性であるため、塊状の原料を用いることが好ましい。
原料金属を融解する方法に特に制限はなく、例えば、以下のようにして原料金属の秤量、融解を行う。
原料金属の秤量にあたっては、融解時に揮発やルツボ材質との反応等により損失する金属元素については、必要に応じて、予め過剰に秤量し添加してもよい。
原料金属の融解にあたっては、特に、Siと2価の金属元素M2としてアルカリ土類金属元素を含む蛍光体原料用合金を製造する場合、以下の問題点があるため、高融点(高沸点)のSi金属及び/又はSiを含む合金を融解させた後、低融点(低沸点)のアルカリ土類金属を融解させることが好ましい。
さらに、このようにSi金属を融解した後にアルカリ土類金属の融解を行うことにより、得られる合金の純度が向上し、それを原料とする蛍光体の特性が著しく向上するという効果も奏される。
以下、(1)アーク融解法・電子ビーム法の場合、(2)高周波融解法の場合を例に更に詳しく説明する。
アーク融解・電子ビーム融解の場合は、以下の手順で融解を行う。
i)Si金属又はSiを含む合金を電子ビームあるいはアーク放電により融解する。
ii)次いで間接加熱によりアルカリ土類金属を融解し、Siとアルカリ土類金属とを含む合金を得る。
ここで、Siを含む溶湯にアルカリ土類金属が溶け込んだ後、電子ビームあるいはアーク放電により加熱・攪拌して混合を促進しても良い。
アルカリ土類金属元素を含む合金は酸素との反応性が高いため、大気中ではなく真空あるいは不活性ガス中で融解する必要がある。このような条件では通常、高周波融解法が好ましい。しかしながら、Siは半導体であり、高周波を用いた誘導加熱による融解が困難である。例えば、アルミニウムの20℃における比抵抗率は2.8×10−8Ω・mであるのに対し、半導体用多結晶Siの比抵抗率は105Ω・m以上である。このように比抵抗率が大きいものを直接高周波融解することは困難であるため、一般に導電性のサセプタを用い、熱伝導や放射によりSiに熱移動を行って融解する。サセプタとしては、ディスク状、管状なども可能であるが坩堝を用いることが好ましい。サセプタの材質としては、黒鉛、モリブデン、炭化珪素などが一般に用いられるが、これらはアルカリ土類金属と反応しやすいという問題点がある。一方、アルカリ土類金属を融解可能な坩堝(アルミナ、カルシアなど)は絶縁体であり、サセプタとして使用することが難しい。従って、アルカリ土類金属とSi金属とを坩堝に仕込んで高周波融解するにあたり、公知の導電性の坩堝(黒鉛など)をサセプタとして使用して、間接的な加熱によりSi金属とアルカリ土類金属とを同時に融解することは困難である。そこで、次のような順序で融解することで、この問題点を解決する。
i)Si金属を導電性の坩堝を使用して間接加熱により融解する。
ii)次に、絶縁性の坩堝を使用して、アルカリ土類金属を融解することにより、Siとアルカリ土類金属元素とを含む合金を得る。
i)Si金属と金属M(例えばAl、Ga)を導電性の坩堝を使用して間接加熱により融解し、導電性の合金(母合金)を得る。
ii)次いで、アルカリ土類金属耐性坩堝を使用して、i)の母合金を融解させた後、アルカリ土類金属を高周波により融解させることにより、Siとアルカリ土類金属元素とを含む合金を得る。
Siと2価の金属元素M2以外の金属Mとの母合金を用いる場合、その組成には特に制限はないが、母合金が導電性を有していることが好ましい。この場合、Siと金属Mとの混合割合(モル比)は、Siのモル数を1とした場合に、金属Mが、通常0.01以上、5以下の範囲となるようにして、アルカリ土類金属元素の沸点よりも融点の低い母合金を製造することが好ましい。
なお、Siを含む母合金に、さらにSi金属を加えることもできる。
付活元素M1を均一に分散させるため、また、付活元素M1の添加量は少量であるため、Si金属を融解させた後に付活元素M1の原料金属を融解させることが好ましい。
(1) Siと3価の金属元素M3との母合金を製造する。この際、好ましくはSiと3価の金属元素M3とは、一般式[1]におけるSi:M3比で合金化する。
(2) (1)の母合金を融解させた後、Srを融解させる。
(3) その後、Sr以外の2価の金属元素、付活元素M1を融解させる。
原料金属の融解により製造された合金溶湯から直接窒素含有合金を製造することもできるが、原料金属の融解により製造された合金溶湯を金型に注入して成型する鋳造工程を経て、凝固体(合金塊)を得ることが好ましい。ただし、この鋳造工程において溶融金属の冷却速度によって偏析が生じ、溶融状態で均一組成であったものが組成分布に偏りが生じることもある。従って、冷却速度はできるだけ速いことが望ましい。また、金型は銅などの熱伝導性のよい材料を使用することが好ましく、熱が放散しやすい形状であることが好ましい。また、必要に応じて水冷などの手段により金型を冷却する工夫をすることも好ましい。
鋳造工程で得られた合金塊は次いで粉砕することにより、所望の粒径、粒度分布を有する合金粉末を調製することができる。粉砕方法としては、乾式法や、エチレングリコール、ヘキサン、アセトン等の有機溶媒を用いる湿式法で行うことが可能である。以下、乾式法を例に詳しく説明する。
この粉砕工程は、必要に応じて、粗粉砕工程、中粉砕工程、微粉砕工程等の複数の工程に分けてもよい。この場合、全粉砕工程を同じ装置を用いて粉砕することもできるが、工程によって使用する装置を変えてもよい。
また、粉砕中に合金粉末の温度が上がらないように必要に応じて冷却してもよい。
粉砕工程で粉砕された合金粉末は、バイブレーティングスクリーン、シフターなどの網目を使用した篩い分け装置、エアセパレータ等の慣性分級装置、サイクロン等の遠心分離機を使用して、後述の所望の重量メジアン径D50及び粒度分布に調整される。
粒度分布の調整においては、粗粒子を分級し、粉砕機にリサイクルすることが好ましく、分級及び/又はリサイクルが連続的であることがさらに好ましい。
本発明の蛍光体原料を用いた蛍光体の製造方法には特に制限はなく、蛍光体原料の組成や種類、あるいは目的とする蛍光体に合わせて適宜選択すればよい。
即ち、まず、窒化処理原料である合金塊或いは合金粉をるつぼ、或いはトレイに充填する。ここで使用するるつぼ或いはトレイの材質としては、窒化ホウ素、窒化珪素、窒化アルミニウム、タングステン、モリブデン等が挙げられるが、窒化ホウ素が耐食性に優れることから好ましい。
なお、焼成工程を一次焼成と二次焼成とに分割し、混合工程により得られた原料混合物をまず一次焼成した後、ボールミル等で再度粉砕してから二次焼成を行なってもよい。
粉砕処理には、原料の混合工程に使用できるとして列挙した粉砕機が使用できる。洗浄は、脱イオン水等の水、メタノール、エタノール等の有機溶剤、アンモニア水等のアルカリ性水溶液等で行なうことができる。分級処理は、篩分や水篩を行なう、或いは、各種の気流分級機や振動篩等各種の分級機を用いることにより行なうことができる。中でも、ナイロンメッシュによる乾式分級を用いると、重量メジアン径20μm程度の分散性の良い蛍光体を得ることができる。
また、必要に応じて燐酸カルシウムやシリカによるコーティング等、表面処理を施してもよい。
なお、以下において、粉末X線回折測定法、及びパーティクルアナライザー測定方法の詳細は次の通りである。
測定装置:PANalytical社製 PW1700型
粉末X線回折測定条件:
X線源:Cu−Kα線(λ=1.54184Å)、
出力設定:40kV・30mA
測定時光学条件:発散スリット=1°
散乱スリット=1°
受光スリット=0.2mm
回折ピークの位置 2θ(回折角)
測定範囲:2θ=10〜89.95°
スキャン速度:0.05度(2θ)/sec,連続スキャン
試料調製:めのう乳鉢を用いて人力で粉砕し、試料成形治具(旧Philips社製
PW1001/00型)を使って成形
サンプルホルダー:PANalytical社製 PW1781/00型
試料部寸法
外径:53mm
内径:27mm
深さ:2.6mm
パーティクルアナライザー(HORIBA製作所製、DP−1000)を用いて測定を行った。具体的な測定条件等は以下の通りである。粉末状のサンプル(数mg程度)を、装置に付属の低流量サンプラーを用いてメンブランフィルター(孔径0.4μm)上に捕集した。次いで、捕集したサンプルを吸引してプラズマ中に導入し、各々の元素特有の発光波長で発光させ、その時の発光強度を検出電圧として測定し、その三乗根(即ち、前述の三乗根電圧)を求めた。得られた各元素の三乗根電圧のヒストグラムを以下、各元素の粒度分布図と称する。
なお、測定条件は以下の通りとした。
プラズマガス:0.1%酸素含有Heガス
ガス流量:260mL/min
Al:検出波長は、308.217nm、Gainは、1.2とした。
Si:検出波長は、288.160nm、Gainは、1.0とした。
Eu:検出波長は、420.505nm、Gainは、1.0とした。
Ca:検出波長は、393.370nm、Gainは、0.6とした。
Sr:検出波長は、346.445nm、Gainは、0.8とした。
なお、測定は、1スキャン当たり基準となる元素(Si)の信号が得られる粒子の個数が1000粒子程度となるように行い、15スキャン行った。その中から、明らかに異常値と判定されるデータを省き、最低合計4000粒子以上のデータについて解析を行った。
各誤差(x)を、下記式[A]で算出した。
誤差(x)=d/H ・・・[A]
また、上記誤差の絶対偏差値を、下記式[B]で算出した。なお、誤差の算出において、軸上のデータは計算しなかった。
〈母合金の製造〉
金属元素組成比がAl:Si=1:1(モル比)となるように各金属を秤量し、黒鉛るつぼを用い、アルゴン雰囲気で高周波誘導式溶融炉を用いて原料金属を溶融した後、るつぼから金型へ注湯して凝固させ、金属元素組成元素比がAl:Si=1:1である合金(母合金)を得た。
Eu:Sr:Ca:Al:Si=0.008:0.792:0.2:1:1(モル比)となるよう母合金、その他原料金属を秤量した。炉内を5×10−2Paまで真空排気した後、排気を中止し、炉内にアルゴンを所定圧まで充填した。カルシアるつぼ内の母合金を溶解し、次いでSrを溶解し、Eu、Caを加えて、全成分が融解した溶湯が誘導電流により攪拌されるのを確認後、るつぼから溶湯を水冷された銅製の金型(厚さ40mmの板状)へ注湯して凝固させた。
板の中心部 Eu:Sr:Ca:Al:Si=0.009:0.782:0.212:1:0.986、
板の端面 Eu:Sr:Ca:Al:Si=0.009:0.756:0.21:1:0.962
であり、分析精度の範囲において実質的に同一組成であった。従って、Euを始め、各々の元素が均一に分布していると考えられた。
尚、パーティクルアナライザーには4台の分光器(ch1〜ch4)が付属しており、それぞれの分光器で波長特性が異なる。装置メーカー推奨の分光器を選択して分析を行った。使用した分光器は、図3〜7中、例えば、(ch1)のように表示されている。図10〜13においても同様である。
〈蛍光体の製造〉
実施例1で得られた板状合金塊を、窒素気流中でメジアン径D5020μmに粉砕して得た合金粉末を、窒化ホウ素製トレイに充填し、熱間等方加圧装置(HIP)内にセットし、装置内を5×10−1Paまで真空排気した後、300℃に加熱し、300℃で真空排気を1時間継続した。その後、窒素を1MPa充填し、冷却後に0.1Paまで放圧し、再び1MPaまで窒素を充填する操作を2回繰り返した。その後装置内圧を190MPaに保ちながら昇温速度10℃/分で1900℃まで加熱し、この温度で1時間保持して目的の複合窒化物蛍光体Sr0.792Ca0.2AlSiN3:Eu0.008を得た。
この蛍光体について、後述の方法で波長465nm励起による発光スペクトルを測定した。得られた発光スペクトルから後述の比較例3の蛍光体の発光強度を100%として相対発光ピーク強度を求めたところ、100%であり、比較例3の蛍光体の輝度を100%として相対輝度を求めたところ、186%であった。発光波長は630nmであった。
蛍光体の発光スペクトルは、励起光源として150Wキセノンランプを、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)用いて測定した。励起光源からの光を焦点距離が10cmである回折格子分光器に通し、波長465nmの励起光のみを光ファイバーを通じて蛍光体に照射した。励起光の照射により蛍光体から発生した光を焦点距離が25cmである回折格子分光器により分光し、300nm以上、800nm以下の波長範囲においてスペクトル測定装置により各波長の発光強度を測定し、パーソナルコンピュータによる感度補正等の信号処理を経て発光スペクトルを得た。
実施例1における蛍光体原料用合金の製造において、金属元素組成比がEu:Sr:Al:Si=0.008:0.992:1:1となるように各金属及び母合金を秤量したこと以外は実施例1と同様の条件で合金を製造した。
この合金についてICP法で組成分析を行ったところ、仕込み組成と一致した。従って、Euを始め、各々の元素が均一に分布していると考えられた。
得られた合金の粉末X線回折パターンを図8に示す。図8において、指数付けされた破線はSr(Si0.5Al0.5)2のピークを示し、指数付けされていない破線はAl2Si2Srのピークを示している。図9においても同様である。
図8に示されるように、得られた合金は、主相がSr(Si0.5Al0.5)2と類似した粉末X線回折パターンを示した。また、図8から、得られた合金が単一相であることが確認された。
実施例2で得られた板状合金を、参考例1と同様の条件で、粉砕し、焼成した。得られた複合窒化物から、非発光部分を除去し、水洗、及び乾燥して蛍光体Sr0.992AlSiN3:Eu0.008を得た。
得られた蛍光体について、粉末X線回折測定を行った結果、CaAlSiN3と同型の斜方晶の結晶相が生成していた。
また、この蛍光体について、参考例1と同様の方法で発光スペクトルを測定し、発光ピーク強度、相対輝度、及び発光ピーク波長を求めたところ、相対発光ピーク強度は96%、相対輝度は239%であり、発光ピーク波長は609nmであった。
実施例1の<蛍光体原料用合金の製造>において、金属元素組成比がEu:Sr:Ca:Al:Si=0.006:0.494:0.5:1:1となるように各金属及び母合金を秤量したこと以外は実施例1と同様の条件で重量約5kgの板状合金を製造した。
得られた合金について、ICP法により組成分析を行ったところ、分析精度の範囲において仕込み組成と一致した。従って、Euを始め、各々の元素が均一に分布していると考えられる。
得られた合金は、主相がSr(Si0.5Al0.5)2と類似した粉末X線回折パターンを示した。また、粉末X線回折パターンから、得られた合金が単一相であることが確認された。
実施例3で得られた板状合金を、参考例1と同様の条件で、粉砕し、焼成し、蛍光体Sr0.494Ca0.5AlSiN3:Eu0.006を得た。
得られた蛍光体について、粉末X線回折測定を行った結果、CaAlSiN3と同型の斜方晶の結晶相が生成していた。
また、この蛍光体について、参考例1と同様の方法で発光スペクトルを測定し、発光ピーク強度、相対輝度、及び発光ピーク波長を求めたところ、相対発光ピーク強度は85%、相対輝度は128%であり、発光ピーク波長は641nmであった。
実施例1の<蛍光体原料用合金の製造>において、金属元素組成比がEu:Sr:Ca:Al:Si=0.006:0.694:0.3:1:1となるように各金属及び母合金を秤量したこと以外は実施例1と同様の条件で重量約5kgの板状合金を製造した。
得られた合金について、ICP法により組成分析を行ったところ、Eu:Sr:Ca:Al:Si=0.0064:0.703:0.295:1:1となり、分析精度の範囲において仕込み組成と一致した。従って、Euを始め、各々の元素が均一に分布していると考えられる。
得られた合金は、主相がSr(Si0.5Al0.5)2と類似した粉末X線回折パターンを示した。また、粉末X線回折パターンから、得られた合金が単一相であることが確認された。
実施例4で得られた板状合金を、参考例1と同様の条件で、粉砕し、焼成し、蛍光体Sr0.694Ca0.3AlSiN3:Eu0.006を得た。
得られた蛍光体について、粉末X線回折測定を行った結果、CaAlSiN3と同型の斜方晶の結晶相が生成していた。
また、この蛍光体について、参考例1と同様の方法で発光スペクトルを測定し、発光ピーク強度、相対輝度、及び発光ピーク波長を求めたところ、相対発光ピーク強度は92%、相対輝度は173%であり、発光ピーク波長は631nmであった。
実施例1における<蛍光体原料用合金の製造>において、金属元素組成比がEu:Sr:Si=0.016:1.984:5となるように各金属を秤量する。次いでアルゴン雰囲気でアーク溶解を行い、原料金属を融解させる。この際、まず、ケイ素にアークが当たるようにする。また、溶湯が電流で攪拌されて均一になるようにする。原料金属が融解したことを確認し、金型へ注湯する。金型内で急冷することにより付活元素であるEu等の構成元素が均一に分散した微細な結晶相を有する合金塊が得られる。
得られた合金塊の粉末X線回折パターンは、SrSi2と同定されるパターンが主相であり、少量のSiが検出される。粉末X線回折パターンでは、主相以外に他に少量のSrSi、Sr4Si7、Sr5Si3、Sr7Si相が検出される場合がある。
実施例5で得られる合金塊を窒素雰囲気中でアルミナ乳鉢を用いて粉砕し、目開き53μmの篩いを通過させる。得られた合金粉末を窒化ホウ素製容器に充填する。装置内を真空排気した後、排気を中止し、装置内へ窒素を0.92MPaまで充填した後、1800℃まで加熱し、2時間保持して蛍光体Sr1.984Si5N8:Eu0.016を得る。
得られる蛍光体は純度の高いSr2Si5N8相の粉末X線回折パターンを示す。
また、この蛍光体について、参考例1と同様の方法で発光スペクトルを測定すると、波長610nm以上620nm以下の範囲に発光ピークを有する発光スペクトルが観測され、比較例3と同等程度の発光ピーク強度が観測される。
金属元素組成比をEu:Sr:Si=0.04:1.96:5としたこと以外は、実施例5と同様の条件で合金を製造する。
実施例6で得られる合金を用いて、参考例5と同様の条件で蛍光体を製造し、蛍光体Sr1.96Si5N8:Eu0.04を得る。
得られる蛍光体は純度の高いSr2Si5N8相の粉末X線回折パターンを示す。
また、この蛍光体について、参考例1と同様の方法で発光スペクトルを測定すると、波長630nm付近に発光ピークを有する発光スペクトルが観測され、比較例3と同等程度の発光ピーク強度が観測される。
実施例1における蛍光体原料用合金の製造において、金属元素組成比がEu:Sr:Ca:Al:Si=0.008:0.792:0.2:1:1となるように各金属及び母合金を秤量し、融解を試みたが、Siを溶解することができす、合金を得ることはできなかった。
実施例1における蛍光体原料用合金の製造において、金属元素組成比がEu:Sr:Al:Si=0.008:0.992:1:1となるように各金属を秤量し、アルゴン雰囲気中でアーク溶解を行い、原料金属をほぼ同時に融解させた。
得られた合金の粉末X線回折パターンを図9に示す。
実施例2(図8)と比較例2(図9)を比較すると、実施例2の方がより結晶性及び純度の高い金属間化合物であることが分かる。
金属元素組成比がEu:Ca:Al:Si=0.008:0.992:1:1となるように、Eu2O3(レアメタリック製)、Ca3N2(SERAC製 200mesh pass)、AlN(トクヤマ製 グレードF)、及びSi3N4(宇部興産製 SN−E10)をアルゴン雰囲気中で秤量し、アルゴン雰囲気中でアルミナ乳鉢を用いて20分間、人力で混合し、蛍光体原料を得た。
得られた蛍光体原料について前述の方法により、パーティクルアナライザーで分析した。
得られた蛍光体について、上述の方法で発光スペクトルを測定したところ、発光波長は648nmであった。
表1から、実施例1に代表される本発明の蛍光体原料は、比較例3に代表される公知の蛍光体原料と比較して、誤差の絶対偏差値の値が小さく、構成元素が均一に分布した蛍光体原料であることがわかる。特に、付活元素M1であるEuにおいて、実施例1と比較例3の誤差の絶対偏差値の差が顕著である。本発明の蛍光体原料では、比重が大きく、かつ、含有量が少ない(即ち、蛍光体原料中に均一に分布させることが難しい)付活元素をも蛍光体原料中に均一に分布していることがわかる。さらに、このような本発明の蛍光体原料を用いると、構成元素を均一に分布させることができ、輝度等の発光特性に優れた蛍光体が得られると考えられる。
Claims (11)
- 少なくともSiを含む4価の金属元素M4と、金属元素M4以外の金属元素の1種以上とを含有する合金よりなる蛍光体原料であって、
前記金属元素M 4 以外の金属元素が、付活元素M 1 及び2価の金属元素M 2 を含み、
パーティクルアナライザーによる分析によって得られる金属元素M4のうちいずれか一種の三乗根電圧と、金属元素M4以外の金属元素のいずれか一種の三乗根電圧との関係で示される同期分布図において、
その誤差の絶対偏差値が0.19以下であることを特徴とする蛍光体原料。 - 前記金属元素M4以外の金属元素が、更に3価の金属元素M3 を含むことを特徴とする請求項1に記載の蛍光体原料。
- 前記パーティクルアナライザーによる分析によって得られる金属元素M4のうちいずれか一種の三乗根電圧と、付活元素M1のうちいずれか一種の三乗根電圧との関係で示される同期分布図において、
その誤差の絶対偏差値が0.4以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光体原料。 - 前記2価の金属元素M2として、アルカリ土類金属元素を含む合金であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の蛍光体原料。
- 前記付活元素M1がCr、Mn、Fe、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群から選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の蛍光体原料。
- 前記2価の金属元素M2がMg、Ca、Sr、Ba、及びZnからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、
4価の金属元素M4が少なくともSiを含み、必要に応じてGe、Sn、Ti、Zr、及びHfからなる群から選ばれる1種以上の元素を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の蛍光体原料。 - 前記3価の金属元素M 3 がAl、Ga、In、及びScからなる群から選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載の蛍光体原料。
- 請求項7において、
2価の金属元素M2の50モル%以上がCa及び/又はSrであり、
3価の金属元素M3の50モル%以上がAlであり、
少なくともSiを含む4価の金属元素M4の50モル%以上がSiであることを特徴とする蛍光体原料。 - 請求項7又は8において、
付活元素M1としてEuを、
2価の金属元素M2としてCa及び/又はSrを、
3価の金属元素M3としてAlを含むことを特徴とする蛍光体原料。 - 請求項1から9のいずれか一項に記載の蛍光体原料用合金の製造方法であって、
Si及び/又はSiを含む母合金を融解させた後、該融解物にアルカリ土類金属を融解させることを特徴とする蛍光体原料用合金の製造方法。 - 請求項10において、高周波誘導加熱法により、Si及び/又はSiを含む母合金とアルカリ土類金属とを融解させることを特徴とする蛍光体原料用合金の製造方法。
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