JP2010095728A - 蛍光体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】半値幅の広い新たな蛍光体を提供する。
【解決手段】式[A]で表される結晶相を含有する蛍光体を、この結晶相に含有される金属元素を2種以上含有する合金を原料の少なくとも一部として用いて製造する。
3-x-y-z+w21.5x+y-w2Si6-w1-w2Alw1+w2y+w111-y-w1 [A]
(RはLa、Gd、Lu、Y及びScを示し、MはCe、Eu、Mn、Yb、Pr及びTbを示し、AはBa、Sr、Ca、Mg及びZnを示し、x、y、z、w1及びw2は、(1/7)≦(3−x−y−z+w2)/6<(1/2)、0≦(1.5x+y−w2)/6<(9/2)、0≦x<3、0≦y<2、0<z<1、0≦w1≦5、0≦w2≦5及び0≦w1+w2≦5を満たす数である。)
【選択図】なし

Description

本発明は、複合窒化物、酸窒化物等の窒素含有化合物からなる蛍光体及びその製造方法、並びに、それを用いた蛍光体含有組成物、発光装置、画像表示装置及び照明装置に関するものである。詳しくは、第1の発光体である半導体発光素子等の励起光源からの光の照射によって黄緑色ないし橙色光を発光する蛍光体及びその製造方法、並びに、それを含んだ蛍光体含有組成物、それを用いた高効率の発光装置、画像表示装置及び照明装置に関するものである。
窒化物は、製造のしやすさの点では酸化物に劣るものの、酸化物や他の無機化合物にない特性を持つものが少なくないことで知られている。現に二元系の窒化物であるSi、BN、AlN、GaN及びTiN等は、例えば基板材料や、半導体、発光ダイオード(light emitting diode。以下、適宜「LED」と略称する。)、構造用セラミックス、コーティング剤等様々な用途に使用されており、工業的規模での生産が行なわれている。
また、近年、三元系以上の元素から構成される窒化物について、多くの新規物質が製造されている。特に最近では、窒化珪素をベースとした多元系窒化物や酸窒化物において、優れた特性を有する蛍光体材料が開発されている。これらの蛍光体材料は、青色LED又は近紫外LEDによって励起され、黄色ないし赤色の発光を示すことが知られている。
前記のような青色LED又は近紫外LEDとこれらの蛍光体との組み合わせによって白色で発光する発光装置を構成することが出来る。
例えば、特許文献1には、窒化物系半導体の青色LED又はLDチップに、セリウム付活イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体のYの一部をLu、Sc、Gd、又はLaに置換した蛍光体を組み合わせた白色発光装置が記載されている。この白色発光装置によれば、LEDから発生する青色光と蛍光体から発生する黄色光との混色で白色の光が得られる。また、この白色発光装置は、すでに表示用途などとして実用化されている。
一方で、Ceを付活剤とした窒化物または酸窒化物からなる蛍光体として、JEM相シリコン酸窒化物を母体としたものが知られている(非特許文献1)。
また、窒化物を母体とした別の蛍光体としては、LaSi11:Ceが知られている(特許文献2)。
さらに、アルカリ土類金属元素、3価の希土類元素及び珪素を含有する公知の窒化物として、SrYbSi及びBaYbSiは、その空間群がP6mcであることが知られており(非特許文献2)、BaEu(Ba0.5Eu0.5)YbSi11は、その空間群がP23であることが知られている(非特許文献3)。
特開平10−190066号公報 特開2003−206481号公報
第316回蛍光体同学会講演予稿、23ページ Zeitschrift fur Anorganische undAllgemeine Chemie、1997年、623巻、212ページ H.Huppertz、博士論文、Bayreuth大学、1997
しかし、特許文献1に記載の白色発光装置は、発する光の演色性が低く、照明用途としては課題があった。即ち、前述のセリウム付活イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は発光スペクトル中に赤色の成分が少なかった。このため、セリウム付活イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体と青色LEDとを組み合わせたとしても、暖かさの感じられる、蛍光ランプで言われるところの電球色(JISZ8110)のように色温度が低く、かつ、演色性の高い照明光を得ることは難しかった。そのため、セリウム付活イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体よりも赤色成分を多く含み、半値幅の広い発光スペクトルを有する蛍光体が望まれていた。
ところが、非特許文献1に記載の蛍光体は、発光色は青色から緑色の範囲であった。また、特許文献2に記載された蛍光体は、青色に発光する蛍光体である。さらに、非特許文献2,3のいずれの文献においても、それらの蛍光体としての特性については明記されていない。したがって、特許文献1,2及び非特許文献1〜3などに記載された従来の蛍光体では、上記の課題を解決することは困難であった。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、半値幅の広い新たな蛍光体及びその製造方法、それを用いた蛍光体含有組成物、発光装置、照明装置並びに画像表示装置を提供することを目的とする。
本発明者等は上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、これまでに知られていない全く新しい窒化物及び酸窒化物等の窒素含有化合物を見出し、この窒素含有化合物の結晶相を含有する蛍光体が、高性能の黄緑色ないし橙色蛍光体として非常に優れた特性を示し、発光装置等の用途に好適に使用できることを見出した。さらに、製造方法についても検討し本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、下記式[A]で表される結晶相を含有し、該結晶相に含有される金属元素を2種以上含有する合金を原料の少なくとも一部として用いて製造されたことを特徴とする蛍光体に存する(請求項1)。
3-x-y-z+w21.5x+y-w2Si6-w1-w2Alw1+w2y+w111-y-w1 [A]
(式[A]中、RはLa、Gd、Lu、Y及びScからなる群より選ばれる少なくとも1種類の希土類元素を示し、MはCe、Eu、Mn、Yb、Pr及びTbからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属元素を示し、AはBa、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種類の二価の金属元素を示し、x、y、z、w1及びw2は、それぞれ以下の範囲の数値を示す。
(1/7)≦(3−x−y−z+w2)/6<(1/2)、0≦(1.5x+y−w2)/6<(9/2)、0≦x<3、0≦y<2、0<z<1、0≦w1≦5、0≦w2≦5及び0≦w1+w2≦5)
本発明の蛍光体は、波長460nmの光で励起したときの発光ピーク波長が480nm以上であることが好ましい(請求項2)。
また、本発明の蛍光体は、波長460nmの光で励起したときの発光スペクトルが下記式[B]を満たすことが好ましい(請求項3)。
I(B)/I(A)≦0.88 [B]
(上記式[B]において、I(A)は、500nm以上550nm以下の波長範囲に存在する、最高ピーク波長における発光強度を示し、I(B)は、該最高ピークの波長より45nm長波長側の波長における発光強度を示す。)
また、本発明の蛍光体は、CuKα線(1.54184Å)を用いて測定された粉末X線回折パターンにおいて、2θが17°以上20°以下の範囲にピークを有し、かつ、2θが21°以上24°以下の範囲に存在するピークの下記ピーク強度比Iが0.05以下であることが好ましい(請求項4)。
ここで、前記のピーク強度比Iは、2θが10゜以上60゜以下の範囲の粉末X線回折パターンにおいて、2θが17゜以上20゜以下の範囲に存在する最強ピークの高さImaxに対する、2θが21°以上24°以下の範囲に存在するピークの高さIの比(I)/Imaxである。なお、ピーク強度はバックグラウンド補正を行って得た値を用いるものとする。
さらに、前記式[A]において、x及びyがそれぞれ0<(1.5x+y−w2)/6<(9/2)、及び0<x<3を満たすことも好ましい(請求項5)。
また、本発明の蛍光体は、波長460nmの光で励起したときの発光色のCIE標準表色系における色度座標x、yが0.320≦x≦0.600、0.400≦y≦0.570であることが好ましい(請求項6)。
さらに、本発明の蛍光体は、波長460nmの光で励起したときの発光ピークの半値幅が100nm以上であることが好ましい(請求項7)。
本発明の別の要旨は、前記式[A]で表される結晶相を含有する蛍光体の製造方法であって、原料の少なくとも一部として、該結晶相に含有される金属元素を2種以上含有する合金を使用し、該合金を窒素含有雰囲気下で焼成する窒化処理工程を有することを特徴とする蛍光体の製造方法に存する(請求項8)。
また、原料としては合金及び窒化物を用いることが好ましい(請求項9)。
本発明の更に別の要旨は、本発明の蛍光体と、液体媒体とを含有することを特徴とする蛍光体含有組成物に存する(請求項10)。
本発明の更に別の要旨は、第1の発光体と、該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを有する発光装置であって、該第2の発光体として、本発明の蛍光体を1種以上含む第1の蛍光体を含有してなることを特徴とする発光装置に存する(請求項11)。
本発明の発光装置は、第2の発光体として、第1の蛍光体とは発光ピーク波長の異なる1種以上の蛍光体を含む第2の蛍光体を含有することが好ましい(請求項12)。
本発明の更に別の要旨は、本発明の発光装置を備えることを特徴とする照明装置に存する(請求項13)。
本発明の更に別の要旨は、本発明の発光装置を備えることを特徴とする画像表示装置に存する(請求項14)。
本発明によれば、赤色成分を多く含み、半値幅の広い蛍光を発することができる新たな蛍光体、並びに、それを用いた蛍光体含有組成物、発光装置、照明装置及び画像表示装置を提供することができる。
また、本発明の製造方法により得られる蛍光体は、発光強度等の発光特性にも優れたものである。
本発明の発光装置の一例における、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)との位置関係を示す模式的斜視図である。 図2(a)及び図2(b)は何れも、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。 本発明の照明装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明の実施例1、2及び3で製造した蛍光体の発光スペクトルを表す図である。 本発明の実施例3及び4並びに参考例1で製造した蛍光体の粉末X線回折パターンを表す図である。 本発明の実施例4〜8及び参考例1で製造した蛍光体の発光スペクトルを表す図である。 本発明の実施例14で製造した発光装置の発光スペクトルを表す図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
また、本明細書における色名と色度座標との関係は、すべてJIS規格に基づく(JIS Z8110及びZ8701)。
なお、本明細書中の蛍光体の組成式において、各組成式の区切りは読点(、)で区切って表わす。また、カンマ(,)で区切って複数の元素を列記する場合には、列記された元素のうち1種又は2種以上を任意の組み合わせ及び組成で含有していてもよいことを示している。例えば、「(Ca,Sr,Ba)Al:Eu」という組成式は、「CaAl:Eu」と、「SrAl:Eu」と、「BaAl:Eu」と、「Ca1−xSrAl:Eu」と、「Sr1−xBaAl:Eu」と、「Ca1−xBaAl:Eu」と、「Ca1−x−ySrBaAl:Eu」とを全て包括的に示しているものとする(但し、前記式中、0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)。
[1.蛍光体]
[1−1.蛍光体の結晶相]
本発明者等は、新規の蛍光体を得ることを目的として希土類元素とSiの窒化物及び酸窒化物系の探索を行なったところ、下記一般式[A]で表わされる組成範囲を有する結晶相を含有する物質を見出した。
即ち、本発明の蛍光体は、下記式[A]で表わされる結晶相を含有する。
3-x-y-z+w21.5x+y-w2Si6-w1-w2Alw1+w2y+w111-y-w1 [A]
(式[A]中、
RはLa、Gd、Lu、Y及びScからなる群より選ばれる少なくとも1種類の希土類元素を示し、
MはCe、Eu、Mn、Yb、Pr及びTbからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属元素を示し、
AはBa、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種類の二価の金属元素を示し、
x、y、z、w1及びw2は、それぞれ以下の範囲の数値を示す。
(1/7)≦(3−x−y−z+w2)/6<(1/2)
0≦(1.5x+y−w2)/6<(9/2)
0≦x<3
0≦y<2
0<z<1
0≦w1≦5
0≦w2≦5
0≦w1+w2≦5)
以下、一般式[A]で表わされる結晶相についてより詳細に説明する。
一般式[A]において、Rは、La、Gd、Lu、Y及びScからなる群より選ばれる少なくとも1種類の希土類元素を示す。中でも、Rは、La、Lu、及びYからなる群より選ばれる少なくとも1種類の希土類元素であることが好ましく、その中でもLaであることがより好ましい。
また、Rは、1種の希土類元素のみを用いてもよいが、2種以上の希土類元素を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。Rとして2種以上の希土類元素を使用することにより、本発明の蛍光体の励起波長や発光波長を調節することができる。
ただし、Rが2種以上の元素からなる場合には、La、Lu及びYからなる群より選ばれる少なくとも1種類の希土類元素(「第1の元素」という)を含むとともに、当該第1の元素を、R全量に対して、通常70モル%以上、中でも80モル%以上、特には95モル%以上使用することが好ましい。この際、前記Rのうち第1の元素以外の元素(「第2の元素」という)は、通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下、より好ましくは5モル%以下となる。これにより、発光強度を向上させることができる。
一般式[A]において、Mは、Ce、Eu、Mn、Yb、Pr及びTbからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属元素を示す。このとき、Mは付活元素として機能するものである。また、Mは、前記の金属元素のうち、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
中でも、Mとしては、発光効率及び発光ピーク波長の点で、少なくともCeを含有するものが好ましく、Ceのみを用いることがより好ましい。
付活元素であるCeは、本発明の蛍光体中において、少なくともその一部が3価のカチオンとして存在することになる。この際、付活元素Ceは3価及び4価の価数を取りうるが、3価のカチオンの存在割合が高い方が好ましい。具体的には、全Ce量に対するCe3+の割合は、通常20モル%以上、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
また、Ce以外の他の付活元素である、Eu、Mn、Yb、Pr及びTbについてもCeと同様に価数の異なるカチオンが共存する場合がある。この場合、それぞれの元素において、Eu2+、Mn2+、Yb2+、Pr3+及びTb2+の存在割合が高い方が好ましい。Eu2+、Mn2+及びPr3+においては、具体的には上記Ce3+の量として説明したのと同様の量が挙げられる。また、Yb2+及びTb2+においては、具体的には、それぞれの全元素量に対する2価のカチオンの割合が、通常10モル%以上、好ましくは20モル%以上、より好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上である。
なお、本発明の蛍光体に含まれる全Ce中のCe3+の割合は、例えば、X線吸収微細構造(X−ray Absorption Fine Structure)の測定によって調べることができる。すなわち、Ce原子のL3吸収端を測定すると、Ce3+とCe4+が別々の吸収ピークを示すので、その面積から比率を定量できる。また、本発明の蛍光体に含まれる全Ce中のCe3+の割合は、電子スピン共鳴(ESR)の測定によっても知ることができる。また、上述のMについて、Ceの場合と同様にX線吸収微細構造の測定により、目的とする価数の原子の量を測定することができる。
一般式[A]において、Aは、Ba、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種類の二価の金属元素を示す。この際、Aは、好ましくはSr、Ca及びMgからなる群より選ばれる少なくとも1種類の二価の金属元素であり、より好ましくはCa及びMgであり、更に好ましくはCaである。なお、上記Aとしては、これらの元素のうち何れか1種類のみを用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
前記一般式[A]で表わされる結晶相の基本系は、SiN四面体に囲まれて、RとAが共存する系である。一般式[A]で表わされる結晶相では3価のRを減少させて2価のAを増加させられる(以下、この置換を「R−A置換」という)が、このとき、Rの減少分だけAの増加が起こるのではなく、その1.5倍のAの増加が起こることにより電荷補償されるというユニークな結晶相である。
また、本発明の蛍光体では、上記R−A置換以外の方式でRの一部をAに置換してもよく、その場合、NアニオンがR置換数だけOアニオンに置換される。
さらに、上記の結晶相の基本系においては、Siの一部をAlで置換してもかまわない。このため、一般式[A]にAlが現われている。このとき、NアニオンがOアニオンに置換される、及び/又は、2価のAが3価のRに置換される。
一般式[A]において、1.5xは、上記R−A置換によりRの一部に置換したAの量を表わす数値であり、このときのxの値は、0以上、好ましくは0.002以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.03以上、また、3未満、好ましくは2.7以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.2以下の数値である。付活元素の含有割合が大きすぎると濃度消光が生じる可能性があるためである。
一般式[A]において、yは、上記R−A置換以外の方式でRの一部に置換したAの量を表わす数値であり小さいほど好ましいが、通常0以上、好ましくは0.01以上、また、通常2未満、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.3以下の数値を表わす。
一般式[A]において、zは、付活元素Mの量を表わす数値であり、0より大きく、好ましくは0.002以上、より好ましくは0.005以上、また、1未満、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下の数値を表わす。zの値が大きすぎると濃度消光により発光強度が低下する可能性がある。
一般式[A]において、Alの置換モル数はw1及びw2で表わされる。このw1の範囲は、0以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上であり、また、5以下、好ましくは2以下、より好ましくは1以下、更に好ましくは0.5以下である。一方、w2の範囲は、0以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上であり、また、5以下、好ましくは2以下、より好ましくは1以下、更に好ましくは0.5以下である。Alの置換により、本発明の蛍光体の発光色の色調を調節することができる。また、w1及びw2を前記の範囲とすることで結晶構造を保ったまま発光色を調整できる。
さらに、一般式[A]において、上述したx、y及びzは、以下の2つの式の関係を満たす。
(1/7)≦(3−x−y−z+w2)/6<(1/2)
0≦(1.5x+y−w2)/6<(9/2)
即ち、一般式[A]において、「(3−x−y−z+w2)/6」は、1/7以上、また、1/2未満の数値を表わす。
また、一般式[A]において、「(1.5x+y−w2)/6」は、0以上、また、9/2未満の数値を表わす。中でも、「(1.5x+y−w2)/6」は0より大きいことが好ましく、更にこのときxが0より大きいことがより好ましい。これにより、発光ピーク波長が長波長側にシフトさせることができる。
さらに、発光強度の観点から、一般式[A]において、酸素のモル数(y+w1)は、好ましくは2未満、より好ましくは1.7未満、更に好ましくは1.5未満である。また、製造しやすさの観点から、前記の酸素のモル数(y+w1)は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上である。
また、発光強度の観点から、一般式[A]において、Alのモル数(w1+w2)は、通常5以下、好ましくは3以下、より好ましくは1以下である。一方、下限としては、製造のしやすさの観点から0に近いことが好ましく、0であることが特に好ましい。
前記一般式[A]の化学組成のうち、好ましいものの具体例を以下に挙げるが、本発明の蛍光体が有する結晶相の組成は以下の例示に限定されるものではない。
一般式[A]の化学組成のうち酸素が混入していないものとして好ましい例としては、La1.37Ce0.03Ca2.40Si11、La2.15Ce0.10Ca1.23Si11、La2.57Ce0.03Ca0.60Si11、La2.9Ce0.1Si11、La2.95Ce0.05Si11等が挙げられる。また、酸素が存在する例としては、La1.71Ce0.1Ca1.57Si0.4410.56、La1.17Ce0.03Ca2.20Si1.0010.00、La2.37Ce0.03Ca0.75Si0.3010.70、La2.8Ce0.1Si10.70.3、La2.9Ce0.1Si5.910.60.4等が挙げられる。
上述した一般式[A]で表わされる結晶相は、本質的には、アルカリ土類金属元素−希土類金属元素(「Ln」とする)−Si−N系の中で新しい構造(空間群とサイト構成比)をなすものである。以下、この結晶相と、公知物質の結晶相との違いを述べる。
一般式[A]で表わされる結晶相の空間群はP4bm又はその類似空間群であるのに対し、公知のSrYbSi、BaYbSiの空間群はP6mcであり(非特許文献2参照)、公知のBaEu(Ba0.5Eu0.5)YbSi11の空間群はP23である(非特許文献3参照)。このように、一般式[A]で表わされる結晶相は従来公知の蛍光体とは空間群が大きく異なる。また、一般式[A]で表わされる結晶相は、そのベースとなる粉末X線回折パターンが従来公知の蛍光体とは大きく異なり、結晶構造が異なることが明らかである。
なお、本発明の蛍光体は、その性能を損なわない限りにおいて、上記一般式[A]で表される結晶相の構成元素の一部が欠損又は他の原子で置換されていてもよい。その他の元素の例としては、以下のようなものが挙げられる。
例えば、一般式[A]において、Mの位置に、Nd、Sm、Dy、Ho、Er及びTmからなる群より選ばれる少なくとも1種類の遷移金属元素又は希土類元素が置換していてもよい。中でも、希土類元素であるSm及び/又はTmが置換していることが好ましい。
さらに、例えば、一般式[A]において、Alの全部又は一部をBに置き換えてもかまわない。BN容器に原料を入れて焼成して本発明の蛍光体を製造する場合、Bが得られる蛍光体に混入しうるため、前記のようにAlがBで置換された蛍光体が製造されうる。
また、例えば、一般式[A]において、O及び/又はNの位置に、S、Cl及び/又はF等の陰イオンが置換していてもよい。
さらに、一般式[A]において、Siの一部をGe及び/又はCに置換えることができる。その置換率は10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましく、0モル%が更に好ましい。
また、発光強度の大幅な減少を招かないという理由により、一般式[A]におけるR、A、Si、Al、O、Nの各サイトには、5モル%以下で元素が置換されていてもよいし、各サイトに10モル%以下で欠損が起こっていてもよい。ただし、両者とも0モル%がより好ましい。
ただし、本発明の利点を顕著に得るために、当該蛍光体全体が、上述した一般式[A]の化学組成を有する結晶相からなることが好ましい。
[1−2.蛍光体の特性]
本発明の蛍光体は、上述した一般式[A]で表わされる結晶相を含有する限り、その有する特性に制限は無いが、通常は、以下に説明する特性を有する。
[1−2−1.蛍光体の発光色に関する特性]
本発明の蛍光体は、通常は黄緑色〜橙色蛍光体に発光するものである。本発明の蛍光体が、その組成に前記一般式[A]におけるA元素(即ち、Ca等)を含まない場合は、通常は黄緑色〜黄色に発光する。一方、本発明の蛍光体が、その組成に前記一般式[A]におけるA元素(即ち、Ca等)を含む場合は、通常は黄色〜橙色(黄赤色)に発光する。また、付活元素であるCeの量によっても発光色は変化する。
本発明の蛍光体の蛍光の色度座標は、通常、(x,y)=(0.320,0.400)、(0.320,0.570)、(0.600,0.570)及び(0.600,0.400)で囲まれる領域内の座標となり、好ましくは、(x,y)=(0.380,0.430)、(0.380,0.560)、(0.580,0.560)及び(0.580,0.430)で囲まれる領域内の座標となる。よって、本発明の蛍光体の蛍光の色度座標においては、色度座標xは、通常0.320以上、好ましくは0.380以上であり、通常0.600以下、好ましくは0.580以下である。一方、色度座標yは、通常0.400以上、好ましくは0.430以上、また、通常0.570以下、好ましくは0.530以下である。
なお、蛍光の色度座標は、後述する発光スペクトルから算出することができる。さらに、前記の色度座標x,yの値は、波長460nmの光で励起したときの発光色のCIE標準座標系における色度座標の値を表わす。
[1−2−2.発光スペクトルに関する特性]
本発明の蛍光体が発する蛍光のスペクトル(発光スペクトル)に特に制限は無いが、波長460nmの光で励起した場合のその発光スペクトルの発光ピーク波長が、通常480nm以上、好ましくは510nm以上、より好ましくは530nm以上であり、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の範囲にあるものである。
なお、本発明の発光ピーク波長は、含有される結晶相の組成によって異なるものである。例えば、本発明の蛍光体が、その組成に前記一般式[A]におけるA元素(即ち、Ca等)を含まない場合は、波長460nmの光で励起した場合のその発光スペクトルの発光ピーク波長は、通常480nm以上、好ましくは500nm以上、より好ましくは515nm以上であり、また、通常600nm以下、好ましくは580nm以下、より好ましくは575nm以下の範囲となる。
また、本発明の蛍光体は、波長460nmの光で励起した場合の発光ピークの半値幅(full width at half maximum。以下適宜「FWHM」という。)が、通常100nm以上、好ましくは110nm以上、より好ましくは130nm以上である。このように半値幅が広いことにより、本発明の蛍光体を青色LED等と組み合わせた場合、発光装置等の演色性を良好にすることができる。また、本発明の蛍光体は、黄色の波長領域よりも長波長側(630nm〜690nm付近)にも充分な発光強度を有するため、青色LEDと組み合わせたとき、電球色の白色光が得られる。本特性は、本発明の蛍光体の方が公知のYAG:Ce蛍光体を大きく上回っている(市販のP46−Y3で126nm)。なお、発光ピークの半値幅の上限に制限は無いが、通常280nm以下である。
さらに、本発明の蛍光体のうち特にx=0の場合に代表されるような、アルカリ土類金属元素が極微量以下となるものの場合、波長460nmの光で励起したとき、その発光スペクトルは通常は下記式[B]を満たす特徴的な波形を示す。
I(B)/I(A)≦0.88 [B]
(上記式[B]において、I(A)は、500nm以上550nm以下の波長範囲に存在する最高ピーク波長における発光強度を示し、I(B)は該最高ピークの波長より45nm長波長側の波長における発光強度を示す。)
即ち、本発明の蛍光体は、前記のI(B)/I(A)が、通常0.88以下、好ましくは0.87以下、より好ましくは0.85以下である。このようにI(B)/I(A)が低いことにより黄緑色ないし緑色蛍光体として機能しうるという利点がある。なお、I(B)/I(A)の下限に制限はないが、通常0.5以上、好ましくは0.7以上である。
一般式[A]において二価の金属元素AとしてCaを含まない場合、本発明の蛍光体の発光スペクトルはこのように特徴的な波形になる傾向がある。したがって、二価の金属元素Aの含有量を調整することにより、発光スペクトルを前記の点で制御することが可能と推察される。
なお、本発明の蛍光体は王水等の強酸で洗浄しなくともこのように特徴的な発光スペクトルを発する。従来の蛍光体は強酸等により洗浄して所望以外の結晶相を除去しないとその蛍光体特有の発光スペクトルが得られないことが多かったことに比べれば、前記のように洗浄しなくても特徴的な発光スペクトルを示すことは本発明の蛍光体に特有の性質であるが、これは、後述するように合金を用いた製造方法によって製造したことによるものと推察される。
本発明の蛍光体の発光スペクトルの測定、並びにその発光領域、発光ピーク波長及びピーク半値幅の算出は、例えば、室温(通常は25℃)において、日本分光社製蛍光測定装置等の装置を用いて行なうことができる。
[1−2−3.励起波長]
本発明の蛍光体を励起する光の波長(励起波長)は本発明の蛍光体の組成などに応じて様々であるが、通常は近紫外領域から青色領域の波長範囲の光によって好適に励起される。励起波長の具体的な範囲を挙げると、通常300nm以上、好ましくは340nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下である。
[1−2−4.重量メジアン径]
本発明の蛍光体は、その重量メジアン径が、通常0.1μm以上、中でも0.5μm以上、また、通常30μm以下、中でも20μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径が小さすぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集してしまう傾向がある。一方、重量メジアン径が大きすぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向がある。
[1−2−5.耐薬品性]
本発明の蛍光体は、通常は、耐薬品性に優れている。例えば、本発明の蛍光体は、前記一般式[A]で表わされる結晶相が、酸強度が極めて強い王水に溶解せず、王水に浸漬した後でも蛍光を発することができる。このため、本発明の蛍光体は多様な環境下で使用することが可能であり、工業的に非常に有用である。
[1−2−6.温度特性]
本発明の蛍光体は、通常、温度特性にも優れる。具体的には、455nmの波長の光を照射した場合の25℃での発光スペクトル図中の最大発光ピーク強度値に対する130℃での発光スペクトル図中の最大発光ピーク強度値の割合が、通常60%以上であり、好ましくは65%以上、特に好ましくは70%以上である。
また、通常の蛍光体は温度上昇と共に発光強度が低下するので、該割合が100%を越えることは考えられにくいが、何らかの理由により100%を超えることがあっても良い。ただし150%を超えるようであれば、温度変化により色ずれを起こす傾向となる。
なお、上記温度特性を測定する場合は、例えば、発光スペクトル測定装置として大塚電子製MCPD7000マルチチャンネルスペクトル測定装置、ペルチェ素子による冷却機構とヒーターによる加熱機構を備えたステージ及び光源として150Wキセノンランプを備える装置を用いて、以下のように測定することができる。
ステージに蛍光体サンプルを入れたセルを載せ、温度を20℃から180℃の範囲で変化させる。蛍光体の表面温度が25℃又は130℃で一定となったことを確認する。次いで、光源から回折格子で分光して取り出した波長455nmの光で蛍光体を励起して発光スペクトル測定する。測定された発光スペクトルから発光ピーク強度を求める。ここで、蛍光体の励起光照射側の表面温度の測定値は、放射温度計と熱電対による温度測定値を利用して補正した値を用いる。
[1−2−7.量子効率]
本発明の蛍光体は、その外部量子効率が従来の蛍光体に比し、高いものである。外部量子効率として、具体的には、通常30%以上であり、より好ましくは35%以上であり、さらに好ましくは40%以上であり、特に好ましくは43%以上である。高発光強度の発光素子を設計するためには、外部量子効率は高いほど好ましい。
また、本発明の蛍光体の内部量子効率は、通常35%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上、さらに好ましくは50%以上である。ここで、内部量子効率とは、蛍光体が吸収した励起光の光子数に対する発光した光子数の比率を意味する。内部量子効率が低いと発光効率が低下する傾向にある。
さらに、本発明の蛍光体は、その吸収効率も高いほど好ましい。その値は、通常70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上である。外部量子効率は内部量子効率と吸収効率との積により求められるものであり、高い外部量子効率を有するためには吸収効率も高い方が好ましい。
(吸収効率、内部量子効率、及び外部量子効率の測定方法)
以下に、蛍光体の吸収効率α、内部量子効率η、及び、外部量子効率η、を求める方法を説明する。
まず、測定対象となる蛍光体サンプル(例えば、粉末状など)を、測定精度が保たれるように、十分に表面を平滑にしてセルに詰め、積分球などの集光装置に取り付ける。積分球などの集光装置を用いるのは、蛍光体サンプルで反射したフォトン、及び蛍光体サンプルから蛍光現象により放出されたフォトンを全て計上できるようにする、すなわち、計上されずに測定系外へ飛び去るフォトンをなくすためである。
この積分球などの集光装置に蛍光体を励起するための発光源を取り付ける。この発光源は、例えばXeランプ等であり、発光ピーク波長が例えば波長が455nmの単色光となるようにフィルターやモノクロメーター(回折格子分光器)等を用いて調整がなされる。この発光ピーク波長が調整された発光源からの光を、測定対象の蛍光体サンプルに照射し、発光(蛍光)および反射光を含むスペクトルを分光測定装置、例えば大塚電子株式会社製MCPD2000、MCPD7000などを用いて測定する。ここで測定されるスペクトルには、実際には、励起発光光源からの光(励起光)のうち、蛍光体に吸収されなかった反射光と、蛍光体が励起光を吸収して蛍光現象により発する別の波長の光(蛍光)が含まれる。すなわち、励起光近傍領域は反射スペクトルに相当し、それよりも長波長領域は蛍光スペクトル(ここでは、発光スペクトルと呼ぶ場合もある)に相当する。
吸収効率αは、蛍光体サンプルによって吸収された励起光のフォトン数Nabsを励起
光の全フォトン数Nで割った値である。
まず、後者の励起光の全フォトン数Nを、次のようにして求める。すなわち、励起光に対してほぼ100%の反射率Rを持つ物質、例えばLabsphere製「Spectralon」(波長400nmの励起光に対して98%の反射率Rを持つ。)等の反射板を、測定対象として、蛍光体サンプルと同様の配置で上述の積分球などの集光装置に取り付け、該分光測定装置を用いて反射スペクトルIref(λ)を測定する。この反射スペクト
ルIref(λ)から求めた下記(式a)の数値は、Nに比例する。
Figure 2010095728
ここで、積分区間は実質的にIref(λ)が有意な値を持つ区間のみで行ったものでよい。蛍光体サンプルによって吸収された励起光のフォトン数Nabsは下記(式b)で求められる量に比例する。
Figure 2010095728
ここで、I(λ)は、吸収効率αを求める対象としている蛍光体サンプルを取り付けたときの、反射スペクトルである。(式b)の積分区間は(式a)で定めた積分区間と同じにする。このように積分区間を限定することで、(式b)の第二項は、測定対象としている蛍光体サンプルが励起光を反射することによって生じたフォトン数に対応したもの、すなわち、測定対象としている蛍光体サンプルから生ずる全フォトンのうち蛍光現象に由来するフォトンを除いたものに対応したものになる。実際のスペクトル測定値は、一般にはλに関するある有限のバンド幅で区切ったデジタルデータとして得られるため、(式a)および(式b)の積分は、そのバンド幅に基づいた和分によって求まる。
以上より、αq=Nabs/N=(式b)/(式a)と求められる。
次に、内部量子効率ηを求める方法を説明する。ηは、蛍光現象に由来するフォトンの数NPLを蛍光体サンプルが吸収したフォトンの数Nabsで割った値である。
ここで、NPLは、下記(式c)で求められる量に比例する。
Figure 2010095728
この時、積分区間は、蛍光体サンプルの蛍光現象に由来するフォトンの有する波長範囲に限定する。蛍光体サンプルから反射されたフォトンの寄与をI(λ)から除くためである。具体的に(式c)の積分区間の下限は、(a)の積分区間の上端を取り、上限は、蛍光に由来のフォトンを含むのに必要十分な範囲とする。
以上により、内部量子効率ηは、η=(式c)/(式b)と求められる。
なお、デジタルデータとなったスペクトルから積分を行うことに関しては、吸収効率αを求めた場合と同様である。
そして、上記のようにして求めた吸収効率αと内部量子効率ηの積をとることで外部量子効率ηを求める。あるいは、η=(式c)/(式a)の関係から求めることもできる。ηは、蛍光に由来するフォトンの数NPLを励起光の全フォトン数Nで割った値である。
[1−2−8.不純物含有量]
本発明の蛍光体は、製造後に洗浄等の操作を行なわなくても不純物相が少ない。このように不純物相が少ないことは粉末X線回折パターンにより確認できる。
本発明の蛍光体は、CuKα線(1.54184Å)を用いて測定された粉末X線回折パターンにおいて、2θが17°以上20°以下の範囲にピークを有するものであり、2θが21°以上24°以下の範囲に存在するピークのピーク強度比Iが、通常0.05以下、好ましくは0.04以下である。このように不純物相が少ないと、洗浄等の工程を経なくても高い発光強度を実現できる。なお、下限に制限はなく、理想的には0であるが、通常は0.001以上である。
ここで、前記のピーク強度比Iは、2θが10゜以上60゜以下の範囲の粉末X線回折パターンにおいて、2θが17゜以上20゜以下の範囲に存在する最強ピークの高さImaxに対する、2θが21°以上24°以下の範囲に存在するピークの高さIの比(I)/Imaxである。ここで、ピーク強度はバックグラウンド補正を行って得た値を用いるものとする。
[1−3.本発明の蛍光体の利点]
上述したように、本発明の蛍光体は、赤色成分を多く含み、半値幅の広い蛍光を発することができる。即ち、本発明の蛍光体は、赤色の長波長領域に充分な発光強度を有し、また、発光スペクトルにおいて極めて半値幅の広い発光ピークを有する光を発することができる。したがって、本発明の蛍光体を白色発光装置に適用した場合には、その白色発光装置は、温かみのある、高演色性の白色光を発することが可能となる。
また、本発明の蛍光体は、通常、近紫外発光又は青色発光の半導体発光素子で特に効率よく励起され、黄緑色〜橙色の蛍光を発する蛍光体である。
さらに、本発明の蛍光体は、通常、従来から白色発光装置に多く使用されているYAG:Ce蛍光体に比べて温度上昇に伴う発光効率の低下が少ない。
[1−4.本発明の蛍光体の用途]
本発明の蛍光体の用途に制限は無いが、前記の利点を利用して、例えば、照明、画像表示装置等の分野に好適に使用できる。中でも、一般照明用LEDの中でも特に高出力ランプ、とりわけ高輝度、高演色で比較的色温度の低い電球色用白色LEDを実現する目的に適している。また、上記のように本発明の蛍光体が温度上昇に伴う発光効率の低下が小さいため、本発明の蛍光体を発光装置に用いれば、発光効率が高く、温度上昇に伴う発光効率の低下が少なく、高輝度で色再現範囲の広い優れた発光装置を実現することが可能である。
特に、本発明の蛍光体は、青色光又は近紫外光で励起可能であるという特性を生かして、各種の発光装置(例えば、後述する「本発明の発光装置」)に好適に用いることができる。この際、組み合わせる蛍光体の種類や使用割合を調整することで、様々な発光色の発光装置を製造することができる。特に、本発明の蛍光体は、通常は黄緑色〜橙色蛍光体であることから、青色光を発する励起光源と組み合わせれば、白色発光装置を製造することができる。これにより、いわゆる擬似白色(例えば、青色LEDと黄色の蛍光を発する蛍光体(黄色蛍光体)を組み合わせた発光装置の発光色)の発光スペクトルと類似した発光スペクトルを得ることもできる。
さらに、上記の白色発光装置に赤色の蛍光体を組み合わせ、さらに必要に応じて緑色蛍光体を組み合わせれば、赤色の演色性に極めて優れた発光装置や電球色(暖かみのある白色)に発光する発光装置を実現することができる。近紫外光を発する励起光源を使用した場合は、本発明の蛍光体に加えて青色蛍光体、赤色蛍光体及び/または緑色蛍光体の発光波長を調整することにより、好みの発光色が得られる白色光源にすることができる。
なお、発光装置の発光色としては白色に制限されない。例えば、本発明の蛍光体を波長変換材料として用いて発光装置を構成する場合、本発明の蛍光体以外に、その他の蛍光体等を組み合わせて、蛍光体の種類や使用割合を調整することにより、任意の色に発光する発光装置を製造することができる。こうして得られた発光装置を、画像表示装置の発光部(特に液晶用バックライトなど)や照明装置として使用することができる。
その他の蛍光体としては、例えば、青、青緑、緑、黄緑、黄色、橙色、赤色、または深赤色の発光を示す蛍光体が好ましい。特に、本発明の蛍光体と、緑色、または、赤色の蛍光体と、励起光源としての青色発光ダイオードとを組み合わせることにより、白色の発光装置を構成することができるので、より好ましい。さらに、本発明の蛍光体と、近紫外発光ダイオードと青色蛍光体と緑色蛍光体と赤色蛍光体とを組み合わせることによっても好ましい白色の発光装置を構成することができる。これらの白色発光装置には、深赤色に発光する蛍光体を追加することで更に演色性を向上させることができる。
[2.蛍光体の製造方法]
本発明の蛍光体の製造方法は、原料の少なくとも一部として、一般式[A]で表される結晶相に含有される金属元素を2種以上含有する合金(以下、適宜「蛍光体原料用合金」ということがある)を使用して製造する。通常は、前記の合金に必要に応じて他の原料を混合し、それを窒素含有雰囲気下で焼成する窒化処理工程(以下、適宜「二次窒化工程」ともいう)を経て本発明の蛍光体を得る。
工業的に広く使用されている金属単体の精製方法には、昇華精製、フローティングゾーン法、蒸留法等が知られている。このように金属単体は金属化合物に比べ精製が容易となる元素が多く存在する。したがって、蛍光体を製造するに当たり必要な金属元素単体を出発原料として用い、これらを合金化し、得られた蛍光体原料用合金から蛍光体を製造する方法のほうが、金属化合物を原料とする方法よりも純度の高い原料を得やすい点で優れている。また、付活元素の結晶格子内での均一分散という観点においても、構成元素となる原料が金属単体であれば、これらを融解し合金とすることにより、付活元素を容易に均一分布させることができる。
以上の観点から、目的とする蛍光体を構成する金属元素の少なくとも一部を含有する蛍光体原料用合金、好ましくは目的とする蛍光体を構成する金属元素すべてを含有する蛍光体原料用合金を原料とし、これを窒化して蛍光体を製造することにより、高性能な蛍光体を工業的に生産することができる。
以下、本発明の蛍光体の製造方法の一例として、この製造方法(以下、適宜「本発明に係る製造方法」という)について説明する。
[2−1.蛍光体原料用合金の用意]
本発明に係る製造方法では、まず、蛍光体の原料となる蛍光体原料用合金を用意する。蛍光体原料用合金を用意する際には、通常、金属単体、金属合金等の出発原料(以下、適宜「原料金属」ということがある)を融解させて蛍光体原料用合金を得る。この際、融解方法に制限は無いが、例えばアーク融解、高周波融解法などの公知の融解方法が使用できる。
[2−1−1.原料金属の秤量]
原料金属としては、金属、当該金属の合金などを用いることができる。また、本発明の蛍光体が含む元素に対応した原料金属は、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。ただし、原料金属の中でも、付活元素である金属元素Mの原料金属(例えば、Eu、Ceなどに対応した原料金属)としては、Eu金属やCe金属を使用することが好ましい。これらは原料の入手が容易であるからである。
蛍光体原料用合金の原料金属として使用される金属の純度は、高いことが好ましい。具体的には、合成される蛍光体の発光特性の点から、付活元素Mに対応した原料金属としては不純物が0.1モル%以下、好ましくは0.01モル%以下まで精製された金属を使用することが好ましい。また、付活元素M以外の元素の原料金属として使用される金属も、付活元素Mと同様の理由から、いずれも含有される不純物濃度は0.1モル%以下であることが好ましく、0.01モル%以下であることがより好ましい。例えば、不純物としてFe、Ni、及びCoからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する場合、各々の不純物元素の含有量は、通常500ppm以下、好ましくは100ppm以下である。
原料金属の形状に制限は無いが、通常、直径数mmから数十mmの粒状又は塊状のものが用いられる。なお、ここでは直径10mm以上のものを塊状、それ未満のものを粒状と呼んでいる。
また、アルカリ土類金属元素に対応する原料金属は、粒状、塊状など形状は問わないが、当該原料金属の化学的性質に応じて適切な形状を選択することが好ましい。例えば、Caは粒状、塊状のいずれでも大気中で安定であり、使用可能であるが、Srは化学的により活性であるため、塊状の原料を用いることが好ましい。
なお、融解時に揮発やルツボ材質との反応等により損失する金属元素については、必要に応じて、予め過剰に秤量し使用してもよい。
[2−1−2.原料金属の融解]
原料金属の秤量後、当該原料金属を融解させて合金化して蛍光体原料用合金を製造する(融解工程)。得られる蛍光体原料用合金は、本発明の蛍光体を構成する金属元素を2種以上含有するものである。なお、本発明の蛍光体を構成する金属元素を1つの蛍光体原料用合金が全て含有していなくても、後述の一次窒化工程又は二次窒化工程において、2種以上の蛍光体原料用合金及び/又は他の原料(金属等)を併用することにより、本発明の蛍光体を製造することができる。
原料金属を融解する方法に特に制限はなく、任意の方法を採用することができる。例えば、抵抗加熱法、電子ビーム法、アーク融解法、高周波誘導加熱法(以下、「高周波融解法」と称する場合がある。)等を用いることができる。また、これらの方法を2種以上任意に組み合わせて融解することも可能である。
また、融解時に用いることのできるルツボの材質としては、アルミナ、カルシア、黒鉛、モリブデン等が挙げられる。
ただし、Siとアルカリ土類金属元素等、同時に融解することのできない金属元素を含む蛍光体原料用合金を製造する場合は、母合金を製造した後で、他の金属原料を混合することにより蛍光体原料用合金を製造するとよい。この場合の詳細な方法については、国際公開第WO2006/106948号パンフレットを参照することができる。
ところで、いずれの原料金属を融解する場合でも、原料金属の融解時の具体的な温度条件及び融解させる時間は、用いる原料金属に応じて適切な温度及び時間を設定すればよい。
また、原料金属の融解時の雰囲気は蛍光体原料用合金が得られる限り任意であるが、不活性ガス雰囲気が好ましく、中でもアルゴン雰囲気が好ましい。なお、不活性ガスは1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、原料金属の融解時の圧力は蛍光体原料用合金が得られる限り任意であるが、1×10Pa以上が好ましく、1×10Pa以下が好ましい。更に、安全性の面から、大気圧以下で行なうことが望ましい。
[2−1−3.溶湯の鋳造]
上述した原料金属の融解により蛍光体原料用合金が得られる。この蛍光体原料用合金は通常は合金溶湯として得られるが、この合金溶湯から直接蛍光体を製造するには技術的課題が多く存在する。そのため、この合金溶湯を金型に注入して成型する鋳造工程を経て、凝固体(以下適宜、「合金塊」という)を得ることが好ましい。
ただし、この鋳造工程において溶融金属の冷却速度によって偏析が生じ、溶融状態で均一組成であった蛍光体原料用合金が組成分布に偏りを生じることもある。従って、冷却速度はできるだけ速いことが望ましい。また、金型は銅などの熱伝導性のよい材料を使用することが好ましく、熱が放散しやすい形状であることが好ましい。また、必要に応じて水冷などの手段により金型を冷却する工夫をすることも好ましい。
このような工夫により、例えば厚さに対して底面積の大きい金型を用い、溶湯を金型へ注湯後、できるだけ早く凝固させることが好ましい。
また、蛍光体原料用合金の組成によって偏析の程度は異なるので、必要な分析手段、例えばICP発光分光分析法などによって、得られた凝固体の数箇所より試料を採取して組成分析を行い、偏析の防止に必要な冷却速度を定めることが好ましい。
なお、鋳造時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気が好ましく、中でもアルゴン雰囲気が好ましい。この際、不活性ガスは1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[2−1−4.合金塊の粉砕]
加熱工程に先立ち、蛍光体原料用合金は、所望の粒径の粉末状にすることが好ましい。そこで、鋳造工程で得られた合金塊は、次いで粉砕することにより(粉砕工程)、所望の粒径、粒度分布を有する蛍光体原料用合金粉末(以下、単に「合金粉末」と称する場合がある。)とすることが好ましい。
粉砕方法に特に制限はないが、例えば、乾式法や、エチレングリコール、ヘキサン、アセトン等の有機溶媒を用いる湿式法で行うことが可能である。
以下、乾式法を例に詳しく説明する。
この粉砕工程は、必要に応じて、粗粉砕工程、中粉砕工程、微粉砕工程等の複数の工程に分けてもよい。この場合、全粉砕工程を同じ装置を用いて粉砕することもできるが、工程によって使用する装置を変えてもよい。
ここで、粗粉砕工程とは、合金粉末のおおよそ90重量%が粒径1cm以下になるように粉砕する工程であり、例えば、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、クラッシングロール、インパクトクラッシャーなどの粉砕装置を使用することができる。中粉砕工程とは、合金粉末のおおよそ90重量%が粒径1mm以下になるように粉砕する工程であり、例えば、コーンクラッシャー、クラッシングロール、ハンマーミル、ディスクミルなどの粉砕装置を使用することができる。微粉砕工程とは、合金粉末が後述する重量メジアン径になるように粉砕する工程であり、例えば、ボールミル、チューブミル、ロッドミル、ローラーミル、スタンプミル、エッジランナー、振動ミル、ジェットミルなどの粉砕装置を使用することができる。
中でも、不純物の混入を防止する観点から、最終の粉砕工程においては、ジェットミルを使用することが好ましい。ジェットミルを用いるためには、粒径2mm以下程度になるまで予め合金塊を粉砕しておくことが好ましい。ジェットミルでは、主に、ノズル元圧から大気圧に噴射される流体の膨張エネルギーを利用して粒子の粉砕を行うため、粉砕圧力により粒径を制御すること、不純物の混入を防止することが可能である。粉砕圧力は、装置によっても異なるが、ゲージ圧で通常0.01MPa以上、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上であり、通常2MPa以下、好ましくは0.4MPa未満、より好ましくは0.3MPa以下である。ゲージ圧が低すぎると得られる粒子の粒径が大きすぎる可能性があり、高すぎると得られる粒子の粒径が小さすぎる可能性がある。
さらに、いずれの場合も粉砕工程中に鉄等の不純物の混入が起こらないよう、粉砕機の材質と被粉砕物の関係を適切に選択することが好ましい。例えば、接粉部は、セラミックライニングが施されていることが好ましく、セラミックの中でも、アルミナ、窒化ケイ素、タングステンカーバイド、ジルコニア等が好ましい。なお、これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、合金粉末の酸化を防ぐため、粉砕工程は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスの種類に特に制限はないが、通常、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの気体のうち1種単独雰囲気又は2種以上の混合雰囲気を用いることができる。中でも、経済性の観点から窒素が特に好ましい。
さらに、雰囲気中の酸素濃度は合金粉末の酸化が防止できる限り制限はないが、通常10体積%以下、特に5体積%以下が好ましい。また、酸素濃度の下限としては、通常10ppm程度である。特定の範囲の酸素濃度とすることによって、粉砕中に合金の表面に酸化被膜が形成され、安定化すると考えられる。酸素濃度が5体積%より高い雰囲気中で粉砕工程を行う場合、粉砕中に粉塵が爆発する可能性があるため、粉塵を生じさせないような設備を設けることが好ましい。
なお、粉砕工程中に合金粉末の温度が上がらないように必要に応じて冷却してもよい。
[2−1−5.合金粉末の分級]
上述したようにして得られた合金粉末は、例えば、バイブレーティングスクリーン、シフターなどの網目を使用した篩い分け装置;エアセパレータ等の慣性分級装置;サイクロン等の遠心分離機などを使用して、所望の重量メジアン径D50及び粒度分布に調整(分級工程)してから、これ以降の工程に供することが好ましい。
なお、粒度分布の調整においては、粗粒子を分級し、粉砕機にリサイクルすることが好ましく、分級及び/又はリサイクルが連続的であることがさらに好ましい。
この分級工程についても、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスの種類に特に制限はないが、通常、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの1種単独雰囲気又は2種以上の混合雰囲気が用いられ、経済性の観点から窒素が特に好ましい。また、不活性ガス雰囲気中の酸素濃度は10体積%以下、特に5体積%以下が好ましい。
前記の分級によって調整される粒径は、合金粉末を構成する金属元素の活性度に応じて様々であるが、その重量メジアン径D50は、通常100μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは60μm以下、また、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。また、蛍光体原料用合金がSrを含有する場合は、雰囲気ガスとの反応性が高いため、合金粉末の重量メジアン径D50は、通常5μm以上、好ましくは8μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは13μm以上とすることが望ましい。合金粉末の粒径が前述の重量メジアン径D50の範囲よりも小さいと、窒化等の反応時の発熱速度が上昇する傾向にあるので、反応の制御が困難となる場合や、また、合金粉末が大気中で酸化されやすくなるので、得られる蛍光体に酸素が取り込まれやすくなる等、取り扱いが難しくなる場合がある。一方で、合金粉末の粒径が前述の重量メジアン径D50の範囲よりも大きいと、合金粒子内部での窒化等の反応が不十分となる場合がある。
[2−1−6.アトマイズ法等による合金の製造]
ところで、蛍光体原料用合金は、上述した方法により製造するほか、以下に説明する(a)〜(c)の工程を経て製造することもできる。これにより、安息角が45度以下である蛍光体原料用合金粉末を得ることができる。
(a)蛍光体を構成する金属に対応した原料金属のうち、2種以上を溶融させて、これらの元素を含む合金溶湯を用意する(融解工程)。
(b)合金溶湯を不活性ガス中で微細化する(微細化工程)。
(c)微細化した合金溶湯を凝固させ、合金粉末を得る(凝固工程)。
即ち、この方法は、合金溶湯をガス中で微細化し、これを凝固させて粉末を得るものである。前記(b)微細化工程及び(c)凝固工程は、例えば、合金溶湯を噴霧する方法、ロールやガス流により急冷し、リボン状に微細化する方法やアトマイズ法等により粉末化することが好ましく、中でもアトマイズ法を用いることが好ましい。
具体的には、国際公開第WO2007/135975号パンフレットに記載の公知の方法を、適宜変更して用いることができる。
[2−2.焼成工程]
上記のようにして得られた蛍光体原料用合金(ここで、蛍光体原料用合金は、粉末状であっても塊状であってもよいが、前述の合金粉末であることが好ましい。)は、窒素含有雰囲気下で焼成することにより窒化され、本発明の蛍光体となる。この焼成工程では、後述の二次窒化工程(即ち、窒化処理工程)を必須とし、必要に応じて下記の一次窒化工程を行う。
[2−2−1.原料の混合]
蛍光体原料用合金に含有される金属元素の組成が、一般式[A]で表される結晶相に含まれる金属元素の組成に一致していれば蛍光体原料用合金のみを焼成すればよい。一方、一致していない場合には、別の組成を有する蛍光体原料用合金、金属単体、金属化合物などを蛍光体原料用合金と混合して、原料中に含まれる金属元素の組成が一般式[A]で表される結晶相に含まれる金属元素の組成に一致するように調整し、焼成を行う。
なお、蛍光体原料用合金に含有される金属元素の組成が、一般式[A]で表される結晶相に含まれる金属元素の組成に一致している場合であっても、蛍光体原料用合金に窒化物又は酸窒化物(付活元素を含む窒化物又は酸窒化物であっても、本発明の蛍光体そのものであってもよい)を混合すると、国際公開第WO2007/135975号パンフレットに記載されている通り、窒化時の単位体積当たりの発熱速度を抑制し、窒化反応を円滑に進行させることができるようになるため、高特性の蛍光体が高い生産性で得られるようになる。本発明の蛍光体を製造するにあたっては、国際公開第WO2007/135975号パンフレットを参照し、適宜変更を加えることにより適切な窒化物又は酸窒化物の存在下で後述する二次窒化工程を行なってもよい。
本発明の蛍光体の製造に用いることのできる蛍光体原料用合金としては、例えば、LaSi、CeLa1−xSi(0<x<1)、LaSi、LaSi、LaSi、Ca24Si60、Ca28Si60、CaSi、Ca31Si60、Ca14Si19、CaSi、CaSi、CaSi、CaSi、CaLa3−xSi(0<x<3)、CeCaLa3−x−ySi(0<x<3、0<y<3)などの安定に存在する合金相を適宜組み合わせることが好ましい。
また、蛍光体原料用合金の別の例を挙げると、Siとアルカリ土類金属とを含む合金としては、例えば、CaSi、CaSi、CaSi、CaSi、CaSi、Ca14Si19、CaSi、SrSi、SrSi、SrSi、SrSi、SrSiなどが挙げられる。さらに、Si、アルミニウム、アルカリ土類金属を含む合金としては、例えば、Ca(Si1−xAl、Sr(Si1−xAl、Ba(Si1−xAl、Ca1−xSr(Si1−yAl等が挙げられる。これらの中でも、A(B 0.5Si0.5(A=Ca,Sr,Ba、B=Al,Ga)は、その超伝導特性に関して、特開2005−54182号公報、M.Imai ”Applied Physics Letters” 80(2002)1019−1021、M.Imai ”Physical Review B” 68、(2003)、064512等において検討が行なわれている。
また、この際、蛍光体原料用合金と混合して用いることができる金属化合物に制限はなく、例えば、窒化物、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、蓚酸塩、カルボン酸塩、ハロゲン化物等が挙げられる。具体的な種類は、これらの金属化合物の中から、目的物への反応性や焼成時におけるNO、SO等の発生量の低さ等を考慮して適宜選択すればよいが、本発明の蛍光体が窒素含有蛍光体である観点から、窒化物及び/又は酸窒化物を用いることが好ましい。中でも、窒素源としての役割も果たすため、窒化物を用いることが好ましい。
窒化物及び酸窒化物の具体例としては、AlN、Si、Ca、Sr、EuN等の蛍光体を構成する元素の窒化物、CaAlSiN、(Sr,Ca)AlSiN、(Sr,Ca)Si、CaSiN、SrSiN、BaSi等の蛍光体を構成する元素の複合窒化物等が挙げられる。
また、前記の窒化物は、微量の酸素を含んでいてもよい。窒化物における酸素/(酸素+窒素)の割合(モル比)は本発明の蛍光体が得られる限り任意であるが、通常5%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、更に好ましくは0.3%以下、特に好ましくは0.2%以下とする。窒化物中の酸素の割合が多すぎると輝度が低下する可能性がある。
金属化合物の重量メジアン径D50は、他の原料との混合に支障がない限り特に制限は無い。ただし、他の原料と混合しやすいことが好ましく、例えば、合金粉末と同程度であることが好ましい。金属化合物の具体的な重量メジアン径D50の値は、蛍光体が得られる限り任意であるが、200μm以下であることが好ましく、より好ましくは100μm以下、特に好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、また、0.1μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上である。
なお、上記の混合する蛍光体原料用合金、金属単体、金属化合物などは、いずれも、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
混合の時期は二次窒化工程以前であれば制限はない。したがって、後述する一次窒化工程の工程前、工程中、工程後のいずれであってもよく、また、これらのうち1又は2以上の時期に混合するようにしてもよい。ただし、一次窒化工程を行う場合には、通常は一次窒化工程の後、二次窒化工程の前に混合を行う。
具体例を挙げると、Caを含む蛍光体を製造する場合には、蛍光体を構成する金属元素の全てを含む合金は不安定であり、単一相の蛍光体を得ることは難しいため、蛍光体を構成する金属元素のうちの一部を含む蛍光体原料用合金と、その他の金属元素を含む金属化合物(例えば、金属窒化物)とを混合して全体として構成元素の全てを含む混合物を用意し、これを焼成して蛍光体を製造することが好ましい。これにより、製造時の操作が簡単になるとともに、蛍光体の発光効率を向上させることができる。
また、例えばCaを含まない蛍光体を製造する場合は、蛍光体を構成する金属元素の全てを含む蛍光体原料用合金を用意し、これを焼成して蛍光体を製造することが好ましい。これにより、少ない工程で良好な蛍光体を簡単に製造できる。また、従来のように合金を使用しない製造方法では原料に含まれる金属元素の組成比が焼成等により変化して所望の元素組成比を有する蛍光体が得られないことがあったが、蛍光体原料用合金を使用することにより、目的とする蛍光体の化学量論通りに金属元素を仕込むだけで、目的とする組成比を有する蛍光体を簡単に得ることができる。
[2−2−2.一次窒化工程]
本発明の蛍光体を工業的に効率よく製造する観点から、必要に応じて、二次窒化工程の前に一次窒化工程を行なう。この一次窒化工程は、蛍光体原料用合金を窒化することで、蛍光体原料用合金を予備的に窒化する工程である。具体的には、窒素含有雰囲気下、所定の温度域で所定の時間、蛍光体原料用合金を加熱することにより予備的な窒化を行なうことになる。このような一次窒化工程の導入により、二次窒化工程における合金と窒素との反応性を制御することができ、合金から蛍光体を工業的に生産することが可能となる。
なお、以下の説明において、一次窒化工程を経た蛍光体原料用合金を窒素含有合金ということがある。
なお、この一次窒化工程については、国際公開第WO2007/135975号パンフレットを参照し、適宜変更を加えて用いることができる。
[2−2−3.冷却及び粉砕工程]
一次窒化工程を行なった場合には、一次窒化工程終了後、二次窒化工程の前に、一次窒化工程で得られた窒素含有合金を一旦冷却してもよい(冷却工程)。この冷却工程については、国際公開第WO2007/135975号パンフレットを参照し、適宜変更を加えて用いることができる。
冷却後は、必要に応じて、粉砕及び/又は攪拌を行なう。粉砕後の窒素含有合金の重量メジアン径D50は、通常100μm以下であり、一次窒化工程前の合金粉末と同様であることが好ましい。
[2−2−4.二次窒化工程(窒化処理工程)]
二次窒化工程においては、蛍光体原料用合金に対して窒化処理を施すことにより、本発明の蛍光体を得る。この際、蛍光体原料用合金としては、一次窒化工程を経ていない蛍光体原料用合金(好ましくは、その合金粉末)を用いてもよく、一次窒化工程を経た蛍光体原料用合金(即ち、窒素含有合金。好ましくは、その合金粉末)を用いてもよく、両者を併用してもよい。さらに、必要に応じて蛍光体原料用合金以外の原料(例えば、金属単体、金属化合物など)を混合してもよい。以下、本発明の蛍光体の原料となる蛍光体原料用合金(窒素含有合金を含む)及びその他の原料をまとめて、適宜「蛍光体原料」という。
二次窒化工程における窒化処理は、蛍光体原料を、例えばルツボ、トレイ等の焼成容器に充填して窒素含有雰囲気下で加熱することにより行なう。具体的には、以下の手順により行なう。
即ち、まず、蛍光体原料を焼成容器に充填する。ここで使用する焼成容器の材質は、例えば、窒化ホウ素、窒化珪素、炭素、窒化アルミニウム、タングステン等が挙げられる。中でも、窒化ホウ素が耐食性に優れることから好ましい。なお、前記の材質は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、ここで使用する焼成容器の形状は任意である。例えば、焼成容器の底面が、円形、楕円形等の角のない形や、三角形、四角形等の多角形であってもよいし、焼成容器の高さも加熱炉に入る限り任意であり、低いものでも高いものでもよい。中でも、放熱性のよい形状を選択することが好ましい。
この蛍光体原料を充填した焼成容器を、焼成装置(「加熱炉」と称する場合もある。)に納める。ここで使用する焼成装置としては、本発明の効果が得られる限り任意であるが、装置内の雰囲気を制御できる装置が好ましく、さらに圧力も制御できる装置が好ましい。例えば、熱間等方加圧装置(HIP)、抵抗加熱式真空加圧雰囲気熱処理炉等が好ましい。
また、加熱開始前に、焼成装置内に窒素を含むガスを流通して系内を十分にこの窒素含有ガスで置換することが好ましい。必要に応じて、系内を真空排気した後、窒素含有ガスを流通しても良い。
窒化処理の際に使用する窒素含有ガスとしては、窒素元素を含むガス、例えば窒素、アンモニア、或いは窒素と水素の混合気体等が挙げられる。なお、窒素含有ガスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。系内の酸素濃度は製造される蛍光体の酸素含有量に影響し、余り高い含有量となると高い発光が得られなくなるため、窒化処理雰囲気中の酸素濃度は、低いほど好ましく、通常0.1体積%以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは10ppm以下、更に好ましくは5ppm以下とする。また、必要に応じて、炭素、モリブデン等の酸素ゲッターを系内加熱部分に入れて、酸素濃度を低下させても良い。なお、酸素ゲッターは、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
窒化処理は、窒素含有ガスを充填した状態或いは流通させた状態で蛍光体原料を加熱することにより行なうが、その際の圧力は大気圧よりも幾分減圧、大気圧或いは加圧の何れの状態でも良い。ただし、大気中の酸素の混入を防ぐためには大気圧以上とすることが好ましい。圧力を大気圧未満にすると加熱炉の密閉性が悪い場合には多量の酸素が混入して特性の高い蛍光体を得ることができない可能性がある。窒素含有ガスの圧力は少なくともゲージ圧で0.2MPa以上が好ましく、0.5MPa以上がより好ましく、0.92MPa以上が更に好ましい。あるいは、20MPa以上の高圧下で加熱することもできる。また、200MPa以下が好ましい。
蛍光体原料の加熱温度は本発明の蛍光体が得られる限り任意であるが、通常800℃以上、好ましくは1000℃以上、更に好ましくは1200℃以上、また、通常2200℃以下、好ましくは2100℃以下、更に好ましくは2000℃以下である。加熱温度が800℃より低いと、窒化処理に要する時間が非常に長くなる可能性がある。一方、加熱温度が2200℃より高いと、生成する窒化物が揮発或いは分解し、得られる窒化物蛍光体の化学組成がずれて、特性の高い蛍光体が得られず、また、再現性も悪いものとなる可能性がある。
また、加熱温度は、蛍光体原料用合金の組成等によっても異なるが、蛍光体原料用合金の融点より通常300℃以上、中でも400℃以上、更には500℃以上、特には700℃以上高い温度であることが好ましい。なお、合金の融点は、熱重量・示差熱(thermogravimetry-differential thermal analysis)測定により求めることができるものであり、合金の組成によって異なるが通常1000℃以上1400℃以下である。また、前記の温度は、加熱処理の際の炉内温度、即ち、焼成装置の設定温度をさす。
窒化処理を充分に行なうためには、蛍光体原料用合金の融点前後、好ましくは前記融点よりも150℃低い温度以上、前記融点よりも100℃高い温度以下の温度範囲(例えば、800℃以上1600℃以下の温度範囲)においては、昇温速度を減速することが好ましい。
昇温速度を減速する温度域において、昇温速度は通常5℃/分以下であり、好ましくは3℃/分以下である。これよりも速い昇温速度では、急激な反応熱の蓄積を避けることができず、高輝度の蛍光体が得られない傾向にある。また、昇温速度の下限には特に制限はないが、通常、生産性の観点から0.2℃/分以上であり、好ましくは0.5℃/分以上である。
窒化処理時の加熱時間(最高温度での保持時間)は、蛍光体原料と窒素との反応に必要な時間で良いが、通常1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、更に好ましくは60分以上とする。加熱時間が1分より短いと窒化反応が完了せず特性の高い蛍光体が得られない可能性がある。また、加熱時間の上限は生産効率の面から決定され、通常24時間以下である。
また、二次窒化工程は、必要に応じて、複数回に渡って繰り返して行なってもよい。この場合、1回目の焼成(即ち、一次焼成)の条件と2回目の焼成(即ち、二次焼成)以降の焼成条件は、いずれも上述の通りである。二次焼成以降の条件は、一次焼成と同じ条件でもよく異なる条件に設定してもよい。
このように蛍光体原料に対して窒化処理することにより、窒化物又は酸窒化物を母体とする本発明の蛍光体を得ることができる。
ところで、二次窒化工程においては、一度に大量の蛍光体原料について窒化処理を行なう場合、その他の条件によっては、窒化反応が急激に進行し、本発明の蛍光体の特性を低下させる可能性がある。そこで、一度に大量の蛍光体原料の加熱処理を行いたい場合、昇温条件を調整すると、急激な窒化反応の進行をさらに抑えることができ、好ましい。この場合、国際公開第WO2007/135975号パンフレットを参照し適宜変更を加えて用いることができる。
以上のように蛍光体原料用合金(窒素含有合金であってもよい)を窒化することにより、本発明の蛍光体を製造することができる。
[2−2−5.二次窒化工程(窒化処理工程)における留意点]
上述したように、窒化反応は発熱反応であるため、二次窒化工程(即ち、窒化処理工程)において一度に大量の蛍光体原料を加熱により窒化しようとすると急激な発熱を伴う暴走反応が起こり、その発熱により蛍光体原料の構成元素の一部が揮発したり蛍光体原料用合金の粒子同士が融着したりすることが多く、得られる蛍光体の発光特性が低下する場合や蛍光体が得られない場合がある。そこで、国際公開第WO2007/135975号パンフレットに記載の公知の方法に適宜変更を加えて採用し、二次窒化工程における温度変化の範囲を調整することが好ましい。これにより、一度に処理する蛍光体原料の量を増やしても、急激な窒化反応の進行を抑制することができ、高特性な蛍光体を工業的に生産することが可能となる。
[2−2−6.フラックス]
二次窒化工程においては、良好な結晶を成長させる観点から、反応系にフラックスを共存させてもよい。フラックスの種類は特に制限されないが、例としては、NHCl、NHF・HF等のハロゲン化アンモニウム;NaCO、LiCO等のアルカリ金属炭酸塩;LiCl、NaCl、KCl、CsCl、LiF、NaF、KF、CsF等のアルカリ金属ハロゲン化物;CaCl、BaCl、SrCl、CaF、BaF、SrF、MgCl、MgF等のアルカリ土類金属ハロゲン化物;BaO等のアルカリ土類金属酸化物;AlF等のハロゲン化アルミニウム;ZnCl、ZnF等のハロゲン化亜鉛、酸化亜鉛等の亜鉛化合物;Bi等の周期表第15族元素化合物;LiN、Ca、Sr、Ba、BN等のアルカリ金属、アルカリ土類金属又は第13族元素の窒化物などが挙げられる。さらに、フラックスの例としては、LaF、LaCl、GdF、GdCl、LuF、LuCl、YF、YCl、ScF、ScCl、等の希土類元素のハロゲン化物、La、Gd、Lu、Y、Sc等の希土類元素の酸化物も挙げられる。このうち好ましくはハロゲン化物であり、この中でも、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、Znのハロゲン化物、希土類元素のハロゲン化物が好ましい。また、これらのハロゲン化物の中でも、フッ化物、塩化物が好ましい。
なお、フラックスは1種のみを使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
フラックスの使用量は、原料の種類やフラックスの材料等によっても異なるが、蛍光体原料全体に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上、また、通常20重量%以下、更には5重量%以下の範囲が好ましい。フラックスの使用量が少な過ぎると、フラックスの効果が現れない可能性があり、フラックスの使用量が多過ぎると、フラックス効果が飽和したり、母体結晶に取り込まれて発光色を変化させたり、輝度低下を引き起こしたり、焼成炉の劣化を引き起こしたりする可能性がある。
[2−3.その他の工程]
本発明に係る製造方法においては、上述した工程以外にも、必要に応じてその他の工程を行ってもよい。その例を挙げると、得られた蛍光体に対して行なう工程として、再焼成工程、粉砕工程、洗浄工程、分級工程、表面処理工程、乾燥工程などが挙げられる。
[2−3−1.再焼成工程]
二次窒化工程により得られた蛍光体は、必要に応じて再焼成工程を行ない、再度、加熱処理(再焼成処理)をすることにより粒子を成長させても良い。これにより、粒子が成長し、蛍光体が高い発光を得ることが可能となる等、蛍光体の特性が向上する場合がある。
この再焼成工程では、蛍光体を一度室温まで冷却してから、再度加熱を行なってもよい。再焼成処理を行なう場合の加熱温度は、通常1300℃以上、好ましくは1400℃以上、より好ましくは1450℃以上、特に好ましくは1500℃以上であり、また、通常1900℃以下、好ましくは1850℃以下、より好ましくは1800℃以下、特に好ましくは1750℃以下である。温度が低すぎると蛍光体粒子を成長させる効果が小さくなる傾向にある。一方、温度が高すぎると無駄な加熱エネルギーを消費してしまうだけでなく、蛍光体が分解する場合がある。また、蛍光体の分解を防止するためには雰囲気ガスの一部となる窒素の圧力を非常に高くすることになるため、製造コストが高くなる傾向にある。
蛍光体の再焼成処理時の雰囲気は、基本的には窒素ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気又は還元性雰囲気が好ましい。なお、不活性ガス及び還元性ガスは、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、雰囲気中の酸素濃度は、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下、より好ましくは10ppm以下とする。酸素濃度が250ppmを越えるような酸素含有ガス中や大気中など酸化雰囲気下で再焼成処理をすると、蛍光体が酸化され、目的の蛍光体を得ることができない可能性がある。ただし、0.1ppm〜10ppmの微量酸素を含有する雰囲気とすることで比較的低温での蛍光体の合成が可能となるので好ましい。
再焼成処理時の圧力条件は、大気中の酸素の混入を防ぐためには大気圧以上の圧力とすることが好ましい。圧力が低すぎると、前述の焼成工程と同様に、焼成装置の密閉性が悪い場合には多量の酸素が混入し、特性の高い蛍光体を得ることができない可能性がある。
再焼成処理時の加熱時間(最高温度での保持時間)は、通常1分間以上、好ましくは10分間以上、より好ましくは30分間以上であり、また、通常100時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下である。加熱時間が短すぎると粒子成長が不十分となる傾向にある。一方、加熱時間が長すぎると、無駄な加熱エネルギーが消費される傾向にあり、また、蛍光体の表面から窒素が脱離して発光特性が低下する場合もある。
[2−3−2.粉砕工程]
粉砕工程には、例えば、ハンマーミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミル、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の粉砕機、乳鉢と乳棒を用いる粉砕などが使用できる。このとき、生成した蛍光体結晶の破壊を抑え、二次粒子の解砕等の目的とする処理を進めるためには、例えば、アルミナ、窒化珪素、ZrO、ガラス等の容器中にこれらと同様の材質又は鉄芯入りウレタン等のボールを入れてボールミル処理を10分〜24時間程度の間で行うことが好ましい。この場合、有機酸やヘキサメタリン酸などのアルカリリン酸塩等の分散剤を0.05重量%〜2重量%用いても良い。
[2−3−3.洗浄工程]
洗浄工程は、例えば、脱イオン水等の水、エタノール等の有機溶剤、アンモニア水等のアルカリ性水溶液などで行うことができる。また、使用されたフラックスを除去する等、蛍光体の表面に付着した不純物相を除去し発光特性を改善するなどの目的のために、例えば、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸;又は、酢酸などの有機酸の水溶液を使用することもできる。この場合、酸性水溶液中で洗浄処理した後に、水で更に洗浄することが好ましい。
洗浄の程度としては、洗浄後の焼成物を重量比で10倍の水に分散後、1時間静置して得られる上澄み液のpHが中性(pH5〜9程度)となる程度まで洗浄を行うことが好ましい。前記の上澄み液が塩基性又は酸性に偏っていると、後述の液体媒体等と混合するときに液体媒体等に悪影響を与える可能性があるためである。
また、上記洗浄の程度は、洗浄後の蛍光体を重量比で10倍の水に分散後、1時間静置して得られる上澄み液の電気電導度でも表すことができる。前記電気伝導度は、発光特性の観点からは低いほど好ましいが、生産性も考慮すると通常10mS/m以下、好ましくは5mS/m以下、より好ましくは4mS/m以下となるまで洗浄処理を繰り返し行うことが好ましい。
電気伝導度の測定方法としては、蛍光体の10重量倍の水中で所定時間(例えば10分間)撹拌して分散させた後、1時間静置することにより、水よりも比重の重い粒子を自然沈降させ、このときの上澄み液の電気伝導度を東亜ディケーケー社製電気伝導度計「EC METER CM−30G」等を用いて測定すればよい。洗浄処理、及び電気伝導度の測定に用いる水としては、特に制限はないが、脱塩水又は蒸留水が好ましい。中でも特に電気伝導度が低いものが好ましく、通常0.0064mS/m以上、また、通常1mS/m以下、好ましくは0.5mS/m以下のものを用いる。なお、電気伝導度の測定は、通常、室温(25℃程度)にて行う。
[2−3−4.分級工程]
分級工程は、例えば、水篩を行う、あるいは、各種の気流分級機や振動篩など各種の分級機を用いることにより行うことができる。中でも、ナイロンメッシュによる乾式分級を用いると、重量メジアン径10μm程度の分散性の良い蛍光体を得ることができる。
また、ナイロンメッシュによる乾式分級と、水簸処理とを組み合わせて用いると、重量メジアン径20μm程度の分散性の良い蛍光体を得ることができる。
ここで、水篩や水簸処理では、通常、水媒体中に0.1重量%〜10重量%程度の濃度で蛍光体粒子を分散させるため、また、蛍光体の変質を抑えるために、水媒体のpHを、通常4以上、好ましくは5以上、また、通常9以下、好ましくは8以下とする。また、上記のような重量メジアン型の蛍光体粒子を得るに際して、水篩及び水簸処理では、例えば50μm以下の粒子を得てから、30μm以下の粒子を得るといった、2段階での篩い分け処理を行う方が作業効率と収率のバランスの点から好ましい。また、下限としては、通常1μm以上、好ましくは5μm以上のものを篩い分ける処理を行うのが好ましい。
[2−3−5.表面処理工程]
得られた本発明の蛍光体を用いて発光装置を製造する際には、耐湿性等の耐候性を一層向上させるために、又は後述する発光装置の蛍光体含有部における樹脂に対する分散性を向上させるために必要に応じて、蛍光体の表面を異なる物質で被覆する等の表面処理を行っても良い。
蛍光体の表面に存在させることのできる物質(以下、任意に「表面処理物質」と称する。)としては、例えば、有機化合物、無機化合物、およびガラス材料などを挙げることができる。
有機化合物としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレン等の熱溶融性ポリマー、ラテックス、ポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
無機化合物としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ゲルマニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化硼素、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ビスマス等の金属酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウム等の金属窒化物、燐酸カルシウム、燐酸バリウム、燐酸ストロンチウム等のオルト燐酸塩、ポリリン酸塩、燐酸ナトリウムと硝酸カルシウムとの組合せのようなアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の燐酸塩とカルシウム塩との組合せ、等が挙げられる。
ガラス材料としては、例えばホウ珪酸塩、ホスホ珪酸塩、アルカリ珪酸塩等が挙げられる。
これらの表面処理物質は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
前記の表面処理により得られる本発明の蛍光体は、表面処理物質の存在が前提であるが、その態様は、例えば下記のものが挙げられる。
(i)前記表面処理物質が連続膜を構成して蛍光体表面を被覆する態様。
(ii)前記表面処理物質が多数の微粒子となって、蛍光体の表面に付着することにより蛍光体表面を被覆する態様。
蛍光体の表面への表面処理物質の付着量ないし被覆量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、蛍光体の重量に対して、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上であり、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。蛍光体に対する表面処理物質量が多すぎると蛍光体の発光特性が損なわれることがあり、少なすぎると表面被覆が不完全となって、耐湿性、分散性の改善が見られないことがある。
また、表面処理により形成される表面処理物質の膜厚(層厚)は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10nm以上、好ましくは50nm以上であり、通常2000nm以下、好ましくは1000nm以下である。この膜厚が厚すぎると蛍光体の発光特性が損なわれることがあり、薄すぎると表面被覆が不完全となって、耐湿性、分散性の改善が見られないことがある。
表面処理の方法には特に限定は無いが、例えば下記のような金属酸化物(酸化珪素)による被覆処理法を挙げることができる。
本発明の蛍光体をエタノール等のアルコール中に混合して、攪拌し、さらにアンモニア水等のアルカリ水溶液を混合して、攪拌する。次に、加水分解可能なアルキル珪酸エステル、例えばテトラエチルオルト珪酸を混合して、攪拌する。得られた溶液を3分間〜60分間静置した後、スポイト等により蛍光体表面に付着しなかった酸化珪素粒子を含む上澄みを除去する。次いで、アルコール混合、攪拌、静置、上澄み除去を数回繰り返した後、120℃〜150℃で10分〜5時間、例えば2時間の減圧乾燥工程を経て、表面処理蛍光体を得る。
蛍光体の表面処理方法としては、この他、例えば球形の酸化珪素微粉を蛍光体に付着させる方法(特開平2−209989号公報、特開平2−233794号公報)、蛍光体に珪素系化合物の皮膜を付着させる方法(特開平3−231987号公報)、蛍光体微粒子の表面をポリマー微粒子で被覆する方法(特開平6−314593号公報)、蛍光体を有機材料、無機材料及びガラス材料等でコーティングする方法(特開2002−223008号公報)、蛍光体の表面を化学気相反応法によって被覆する方法(特開2005−82788号公報)、金属化合物の粒子を付着させる方法(特開2006−28458号公報)等の公知の方法を用いることができる。
[3.蛍光体含有組成物]
本発明の蛍光体はいずれも、液体媒体と混合して用いることもできる。特に、本発明の蛍光体を発光装置等の用途に使用する場合には、これを液体媒体中に分散させた形態で用い、封止した後、熱や光によって硬化させて用いるのが好ましい。本発明の蛍光体を液体媒体中に分散させたものを、適宜「本発明の蛍光体含有組成物」と呼ぶものとする。
[3−1.蛍光体]
本発明の蛍光体含有組成物に含有させる本発明の蛍光体の種類に制限は無く、上述したものから任意に選択することができる。また、本発明の蛍光体含有組成物に含有させる本発明の蛍光体は、1種のみであってもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。更に、本発明の蛍光体含有組成物には、本発明の効果を著しく損なわない限り、本発明の蛍光体以外の蛍光体を含有させてもよい。
[3−2.液体媒体]
本発明の蛍光体含有組成物に使用される液体媒体としては、該蛍光体の性能を目的の範囲で損なわない限りにおいて特に限定されない。例えば、所望の使用条件下において液状の性質を示し、本発明の蛍光体を好適に分散させるとともに、好ましくない反応を生じないものであれば、任意の無機系材料及び/又は有機系材料が使用できる。
無機系材料としては、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液(例えばシロキサン結合を有する無機系材料)等を挙げることができる。
有機系材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体例を挙げると、ポリメタアクリル酸メチル等のメタアクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。
これらの中で特に照明など大出力の発光装置に本発明の蛍光体を用いる場合には、耐熱性や耐光性等を高めることを目的として、液体媒体として珪素含有化合物を使用することが好ましい。
珪素含有化合物とは、分子中に珪素原子を有する化合物をいい、例えば、ポリオルガノシロキサン等の有機材料(シリコーン系材料)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機材料、及びホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。中でも、ハンドリングの容易さ等の点から、シリコーン系材料が好ましい。
上記シリコーン系材料とは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば一般組成式(i)で表される化合物及び/またはそれらの混合物が挙げられる。
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2・・・式(i)
一般組成式(i)において、RからRは、有機官能基、水酸基、水素原子からなる群から選択されるものを表す。なお、RからRは、同じであってもよく、異なってもよい。
また、上記式(i)において、M、D、T及びQは、各々0以上1未満の数であり、且つ、M+D+T+Q=1を満足する数である。
該シリコーン系材料は、半導体発光素子の封止に用いる場合、液状のシリコーン系材料を用いて封止した後、熱や光によって硬化させて用いることができる。
シリコーン系材料を硬化のメカニズムにより分類すると、通常、付加重合硬化タイプ、縮重合硬化タイプ、紫外線硬化タイプ、パーオキサイド架硫タイプなどのシリコーン系材料を挙げることができる。これらの中では、付加重合硬化タイプ(付加型シリコーン系材料)、縮合硬化タイプ(縮合型シリコーン系材料)、紫外線硬化タイプが好適である。以下、付加型シリコーン系材料、及び縮合型シリコーン系材料について説明する。
付加型シリコーン系材料とは、ポリオルガノシロキサン鎖が、有機付加結合により架橋されたものをいう。代表的なものとしては、例えばビニルシランとヒドロシランとをPt触媒などの付加型触媒の存在下反応させて得られるSi−C−C−Si結合を架橋点に有する化合物等を挙げることができる。これらは市販のものを使用することができ、例えば付加重合硬化タイプの具体的商品名としては信越化学工業社製「LPS−1400」「LPS−2410」「LPS−3400」等が挙げられる。
一方、縮合型シリコーン系材料とは、例えば、アルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合で得られるSi−O−Si結合を架橋点に有する化合物を挙げることができる。その具体例としては、下記一般式(ii)及び/又は(iii)で表わされる化合物、及び/又はそのオリゴマーを加水分解・重縮合して得られる重縮合物が挙げられる。
m+ m−n (ii)
(式(ii)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンより選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Yは、1価の有機基を表わし、mは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、nは、X基の数を表わす1以上の整数を表わす。但し、m≧nである。)
(Ms+ s−t−1 (iii)
(式(iii)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンより選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Yは、1価の有機基を表わし、Yは、u価の有機基を表わし、sは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、tは、1以上、s−1以下の整数を表わし、uは、2以上の整数を表わす。)
また、縮合型シリコーン系材料には、硬化触媒を含有させてもよい。この硬化触媒としては、例えば、金属キレート化合物などを好適なものとして用いることができる。金属キレート化合物は、Ti、Ta、Zrの何れか1以上を含むものが好ましく、Zrを含むものが更に好ましい。なお、硬化触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
このような縮合型シリコーン系材料としては、例えば特開2007−112973号〜112975号公報、特開2007−19459号公報、及び、特願2006−176468号明細書に記載の半導体発光デバイス用部材が好適である。
縮合型シリコーン系材料の中で、特に好ましい材料について、以下に説明する。
シリコーン系材料は、一般に半導体発光素子や素子を配置する基板及びパッケージ等との接着性が弱いことが課題とされるが、密着性が高いシリコーン系材料として、特に、以下の特徴〔1〕〜〔3〕のうち1つ以上を有する縮合型シリコーン系材料が好ましい。
〔1〕ケイ素含有率が20重量%以上である。
〔2〕後に詳述する方法によって測定した固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(a)及び/又は(b)のSiに由来するピークを少なくとも1つ有する。
(a)ピークトップの位置がテトラメトキシシランを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク。
(b)ピークトップの位置がテトラメトキシシランを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク。
〔3〕シラノール含有率が0.1重量%以上、10重量%以下である。
本発明においては、上記の特徴〔1〕〜〔3〕のうち、特徴〔1〕を有するシリコーン系材料が好ましく、上記の特徴〔1〕及び〔2〕を有するシリコーン系材料がより好ましく、上記の特徴〔1〕〜〔3〕を全て有するシリコーン系材料が特に好ましい。
以下、上記の特徴〔1〕〜〔3〕について説明する。
[3−2−1.特徴〔1〕(ケイ素含有率)]
本発明に好適なシリコーン系材料のケイ素含有率は、通常20重量%以上であるが、中でも25重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。一方、上限としては、SiOのみからなるガラスのケイ素含有率が47重量%であるという理由から、通常47重量%以下の範囲である。
なお、シリコーン系材料のケイ素含有率は、例えば以下の方法を用いて誘導結合高周波プラズマ分光(inductively coupled plasma spectrometry:以下適宜「ICP」と略する。)分析を行い、その結果に基づいて算出することができる。
{ケイ素含有率の測定}
シリコーン系材料を白金るつぼ中にて大気中、450℃で1時間、次いで750℃で1時間、950℃で1.5時間保持して焼成し、炭素成分を除去した後、得られた残渣少量に10倍量以上の炭酸ナトリウムを加えてバーナー加熱し溶融させ、これを冷却して脱塩水を加え、更に塩酸にてpHを中性程度に調整しつつケイ素として数ppm程度になるよう定容し、ICP分析を行う。
[3−2−2.特徴〔2〕(固体Si−NMRスペクトル)]
本発明に好適なシリコーン系材料の固体Si−NMRスペクトルを測定すると、有機基の炭素原子が直接結合したケイ素原子に由来する前記(a)及び/又は(b)のピーク領域に少なくとも1本、好ましくは複数本のピークが観測される。
ケミカルシフト毎に整理すると、本発明に好適なシリコーン系材料において、(a)に記載のピークの半値幅は、分子運動の拘束が小さいために、全般に後述の(b)に記載のピークの場合より小さく、通常3.0ppm以下、好ましくは2.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上の範囲である。
一方、(b)に記載のピークの半値幅は、通常5.0ppm以下、好ましくは4.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上、好ましくは0.4ppm以上の範囲である。
上記のケミカルシフト領域において観測されるピークの半値幅が大き過ぎると、分子運動の拘束が大きくひずみの大きな状態となり、クラックが発生し易く、耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる場合がある。例えば、四官能シランを多用した場合や、乾燥工程において急速な乾燥を行い大きな内部応力を蓄えた状態などにおいて、半値幅範囲が上記の範囲より大きくなる。
また、ピークの半値幅が小さ過ぎると、その環境にあるSi原子はシロキサン架橋に関わらないことになり、三官能シランが未架橋状態で残留する例など、シロキサン結合主体で形成される物質より耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる場合がある。
但し、大量の有機成分中に少量のSi成分が含まれるシリコーン系材料においては、−80ppm以上に上述の半値幅範囲のピークが認められても、良好な耐熱・耐光性及び塗布性能は得られない場合がある。
本発明に好適なシリコーン系材料のケミカルシフトの値は、例えば以下の方法を用いて固体Si−NMR測定を行い、その結果に基づいて算出することができる。また、測定データの解析(半値幅やシラノール量解析)は、例えばガウス関数やローレンツ関数を使用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽出する方法で行う。
{固体Si−NMRスペクトル測定及びシラノール含有率の算出}
シリコーン系材料について固体Si−NMRスペクトルを行う場合、以下の条件で固体Si−NMRスペクトル測定及び波形分離解析を行う。また、得られた波形データより、シリコーン系材料について、各々のピークの半値幅を求める。また、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することによりシラノール含有率を求める。
{装置条件}
装置:Chemagnetics社 Infinity CMX-400 核磁気共鳴分光装置
29Si共鳴周波数:79.436MHz
プローブ:7.5mmφCP/MAS用プローブ
測定温度:室温
試料回転数:4kHz
測定法:シングルパルス法
Hデカップリング周波数:50kHz
29Siフリップ角:90゜
29Si90゜パルス幅:5.0μs
繰り返し時間:600s
積算回数:128回
観測幅:30kHz
ブロードニングファクター:20Hz
基準試料:テトラメトキシシラン
シリコーン系材料については、512ポイントを測定データとして取り込み、8192ポイントにゼロフィリングしてフーリエ変換する。
{波形分離解析法}
フーリエ変換後のスペクトルの各ピークについてローレンツ波形及びガウス波形或いは両者の混合により作成したピーク形状の中心位置、高さ、半値幅を可変パラメータとして、非線形最小二乗法により最適化計算を行う。
なお、ピークの同定は、AIChE Journal, 44(5), p.1141, 1998年等を参考にする。
[3−2−3.特徴〔3〕(シラノール含有率)]
本発明に好適なシリコーン系材料は、シラノール含有率が、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、また、通常10重量%以下、好ましくは8重量%以下、更に好ましくは5重量%以下の範囲である。シラノール含有率を低くすることにより、シラノール系材料は経時変化が少なく、長期の性能安定性に優れ、吸湿・透湿性何れも低い優れた性能を有する。但し、シラノールが全く含まれない部材は密着性に劣るため、シラノール含有率に上記のごとく最適な範囲が存在する。
なお、シリコーン系材料のシラノール含有率は、例えば上記[3−2−2.特徴〔2〕(固体Si−NMRスペクトル)]の{固体Si−NMRスペクトル測定及びシラノール含有率の算出}の項において説明した方法を用いて固体Si−NMRスペクトル測定を行い、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することにより算出することができる。
また、本発明に好適なシリコーン系材料は、適当量のシラノールを含有しているため、通常は、デバイス表面に存在する極性部分にシラノールが水素結合し、密着性が発現する。極性部分としては、例えば、水酸基やメタロキサン結合の酸素等が挙げられる。
また、本発明に好適なシリコーン系材料は、通常、適当な触媒の存在下で加熱することにより、デバイス表面の水酸基との間に脱水縮合による共有結合を形成し、更に強固な密着性を発現することができる。
一方、シラノールが多過ぎると、系内が増粘して塗布が困難になったり、活性が高くなり加熱により軽沸分が揮発する前に固化したりすることによって、発泡や内部応力の増大が生じ、クラックなどを誘起する場合がある。
[3−3.液体媒体の含有率]
液体媒体の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の蛍光体含有組成物全体に対して、通常50重量%以上、好ましくは75重量%以上であり、通常99重量%以下、好ましくは95重量%以下である。液体媒体の量が多い場合には特段の問題は起こらないが、半導体発光装置とした場合に所望の色度座標、演色指数、発光効率等を得るには、通常、上記のような配合比率で液体媒体を用いることが望ましい。一方、液体媒体が少な過ぎると流動性がなく取り扱い難くなる可能性がある。
液体媒体は、本発明の蛍光体含有組成物において、主にバインダーとしての役割を有する。液体媒体は、一種のみを用いてもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。例えば、耐熱性や耐光性等を目的として珪素含有化合物を使用する場合は、当該珪素含有化合物の耐久性を損なわない程度に、エポキシ樹脂など他の熱硬化性樹脂を含有してもよい。この場合、他の熱硬化性樹脂の含有量は、バインダーである液体媒体全量に対して通常25重量%以下、好ましくは10重量%以下とすることが望ましい。
[3−4.その他の成分]
なお、本発明の蛍光体含有組成物には、本発明の効果を著しく損なわない限り、蛍光体及び液体媒体以外に、その他の成分を含有させてもよい。また、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[3−5.蛍光体含有組成物の利点]
本発明の蛍光体含有組成物によれば、本発明の蛍光体を所望の位置に容易に固定できる。例えば、本発明の蛍光体含有組成物を発光装置の製造に用いる場合、本発明の蛍光体含有組成物を所望の位置に成形し、液体媒体を硬化させれば、当該液体媒体で本発明の蛍光体を封止することができ、所望の位置に本発明の蛍光体を容易に固定することが可能となる。
[4.発光装置]
本発明の発光装置(以下、適宜「発光装置」という)は、第1の発光体(励起光源)と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを有する発光装置であって、該第2の発光体として本発明の蛍光体を少なくとも1種以上、第1の蛍光体として含有するものである。
本発明の発光装置は、具体的には、第1の発光体として後述するような励起光源を用い、第2の発光体として使用する蛍光体の種類や使用割合を調整し、公知の装置構成を任意にとることにより、任意の色に発光する発光装置を製造することができる。
例えば、青色光を発する励起光源と本発明の黄緑色ないし橙色の蛍光を発する蛍光体(黄緑色ないし橙色蛍光体)とを組み合わせれば、いわゆる擬似白色(例えば、青色LEDと黄色蛍光体を組み合わせた発光装置の発光色)の発光スペクトルと類似した発光スペクトルを得ることもできる。更に、この白色発光装置に赤色の蛍光を発する蛍光体(赤色蛍光体)を組み合わせ、さらに必要に応じて緑色蛍光体を組み合わせれば、赤色の演色性に極めて優れた発光装置や電球色(暖かみのある白色)に発光する発光装置を実現することができる。また、近紫外光を発する励起光源に、青色の蛍光を発する蛍光体(青色蛍光体)、緑色蛍光体及び赤色蛍光体を組み合わせても、白色発光装置を製造することができる。
ここで、該白色発光装置の白色とは、JIS Z 8701により規定された、(黄みの)白、(緑みの)白、(青みの)白、(紫みの)白及び白の全てを含む意であり、このうち好ましくは白である。
またさらに、必要に応じて、緑色蛍光体(緑色の蛍光を発する蛍光体)、青色蛍光体、橙色ないし赤色蛍光体、他種の黄色蛍光体等を組み合わせて、蛍光体の種類や使用割合を調整し、任意の色に発光する発光装置を製造することもできる。
本発明の蛍光体は、何れか一種のみを使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の発光装置の発光スペクトルにおける緑色領域の発光ピークとしては、515nm〜535nmの波長範囲に発光ピークを有するものが好ましく、赤色領域の発光ピークとしては580nm〜680nmの波長範囲に発光ピークを有するものが好ましく、青色領域の発光ピークとしては430nm〜480nmの波長範囲に発光ピークを有するものが好ましく、黄色領域の発光ピークとしては540nm〜580nmの波長範囲に発光ピークを有するものが好ましい。
なお、発光装置の発光スペクトルは、気温25±1℃に保たれた室内において、オーシャン オプティクス社製の色・照度測定ソフトウェア及びUSB2000シリーズ分光器(積分球仕様)を用いて20mA通電して測定を行うことができる。この発光スペクトルの380nm〜780nmの波長領域のデータから、JIS Z8701で規定されるXYZ表色系における色度座標として色度値(x,y,z)を算出できる。この場合、x+y+z=1の関係式が成立する。本明細書においては、前記XYZ表色系をXY表色系と称している場合があり、通常(x,y)で表記している。
また、発光効率は、前述のような発光装置を用いた発光スペクトル測定の結果から全光束を求め、そのルーメン(lm)値を消費電力(W)で割ることにより求められる。消費電力は、20mAを通電した状態で、Fluke社のTrue RMS Multimeters Model 187&189を用いて電圧を測定し、電流値と電圧値の積で求められる。
また、本発明の発光装置は平均演色評価数(Ra)及び特殊演色評価数R9が、通常80以上のものであり、好ましくは90以上、より好ましくは95以上のものである。
[4−1.発光装置の構成(発光体)]
(第1の発光体)
本発明の発光装置における第1の発光体は、後述する第2の発光体を励起する光を発光するものである。
第1の発光体の発光波長は、後述する第2の発光体の吸収波長と重複するものであれば、特に制限されず、幅広い発光波長領域の発光体を使用することができる。通常は、紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体が使用され、近紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体を使用することが特に好ましい。
第1の発光体の発光ピーク波長の具体的数値としては、通常200nm以上が望ましい。このうち、近紫外光を励起光として用いる場合には、通常300nm以上、好ましくは330nm以上、より好ましくは360nm以上が望ましく、また、通常420nm以下のピーク発光波長を有する発光体を使用することが望ましい。また、青色光を励起光として用いる場合には、通常420nm以上、好ましくは430nm以上が望ましく、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下のピーク発光波長を有する発光体を使用することが望ましい。何れも、発光装置の色純度の観点からである。
第1の発光体としては、一般的には半導体発光素子が用いられ、具体的には発光LEDや半導体レーザーダイオード(semiconductor laser diode。以下、適宜「LD」と略称する。)等が使用できる。その他、第1の発光体として使用できる発光体としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス発光素子、無機エレクトロルミネッセンス発光素子等が挙げられる。但し、第1の発光体として使用できるものは本明細書に例示されるものに限られない。
中でも、第1の発光体としては、GaN系化合物半導体を使用したGaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、前記蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、20mAの電流負荷に対し、通常GaN系LEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDにおいては、AlGaN発光層、GaN発光層又はInGaN発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でもInGaN発光層を有するものは発光強度が非常に強いので特に好ましく、GaN系LEDにおいては、InGaN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが発光強度は非常に強いので特に好ましい。
なお、上記においてX+Yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、及び基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlGaN層、GaN層、又はInGaN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高くて好ましく、更にヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率が更に高いため、より好ましい。
なお、第1の発光体は、1個のみを用いてもよく、2個以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(第2の発光体)
本発明の発光装置における第2の発光体は、上述した第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する発光体であり、第1の蛍光体として前述の本発明の蛍光体を含有するとともに、その用途等に応じて適宜、後述する第2の蛍光体(橙色ないし赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体、黄色蛍光体等)を含有する。また、例えば、第2の発光体は、第1及び第2の蛍光体を封止材料中に分散させて構成される。
上記第2の発光体中に用いられる、本発明の蛍光体以外の蛍光体の組成には特に制限はない。その例を挙げると、結晶母体となる、Y、YVO、ZnSiO、YAl12、SrSiO等に代表される金属酸化物、SrSi等に代表される金属窒化物、Ca(POCl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物、YS、LaS等に代表される酸硫化物等にCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Cu、Au、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを付活元素又は共付活元素として組み合わせたものが挙げられる。
結晶母体の好ましい例としては、例えば、(Zn,Cd)S、SrGa、SrS、ZnS等の硫化物;YS等の酸硫化物;(Y,Gd)Al12、YAlO、BaMgAl1017、(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al1017、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al1017、BaAl1219、CeMgAl1119、(Ba,Sr,Mg)O・Al、BaAlSi、SrAl、SrAl1425、YAl12等のアルミン酸塩;YSiO、ZnSiO等の珪酸塩;SnO、Y等の酸化物;GdMgB10、(Y,Gd)BO等の硼酸塩;Ca10(PO(F,Cl)、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl等のハロリン酸塩;Sr、(La,Ce)PO等のリン酸塩等を挙げることができる。
但し、上記の結晶母体、付活元素及び共付活元素は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体は近紫外から可視領域の光を吸収して可視光を発するものであれば用いることが可能である。
具体的には、蛍光体として以下に挙げるものを用いることが可能であるが、これらはあくまでも例示であり、本発明で使用できる蛍光体はこれらに限られるものではない。なお、以下の例示では、前述の通り、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。
(第1の蛍光体)
本発明の発光装置における第2の発光体は、第1の蛍光体として、少なくとも上述の本発明の蛍光体を含有する。本発明の蛍光体は、何れか1種のみを使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、第1の蛍光体としては、本発明の蛍光体以外にも、本発明の蛍光体と同色の蛍光を発する蛍光体(同色併用蛍光体)を用いてもよい。例えば、本発明の蛍光体が緑色蛍光体の場合には、第1の蛍光体として、本発明の蛍光体と共に他種の緑色蛍光体を併用することができ、また、本発明の蛍光体が橙色ないし赤色蛍光体の場合には、第1の蛍光体として、本発明の蛍光体と共に他種の橙色ないし赤色蛍光体を併用することができ、また、本発明の蛍光体が青色蛍光体の場合には、第1の蛍光体として、本発明の蛍光体と共に他種の青色蛍光体を併用することができ、また、本発明の蛍光体が黄色蛍光体の場合には、第1の蛍光体として、本発明の蛍光体と共に他種の黄色蛍光体を併用することができる。
これらの蛍光体としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。
(緑色蛍光体)
該緑色蛍光体の発光ピーク波長は、通常500nmより大きく、中でも510nm以上、さらには515nm以上であることが好ましく、また、通常550nm以下、中でも540nm以下、さらには535nm以下の範囲であることが好ましい。この発光ピーク波長λpが短過ぎると青味を帯びる傾向がある一方で、長過ぎると黄味を帯びる傾向があり、何れも緑色光としての特性が低下する可能性がある。
また、緑色蛍光体の発光ピークの半値幅としては、通常40nm〜80nmの範囲である。
また、緑色蛍光体は、外部量子効率が、通常60%以上、好ましくは70%以上のものであり、重量メジアン径は通常1μm以上、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10mμ以上であり、通常30μm以下、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。
該緑色蛍光体の具体例を挙げると、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行う(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体等が挙げられる。
また、その他の緑色蛍光体としては、SrAl1425:Eu、(Ba,Sr,Ca)Al:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ba)AlSi:Eu、(Ba,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn)Si:Eu、(Ba,Ca,Sr,Mg)(Sc,Y,Lu,Gd)(Si,Ge)24:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、YSiO:Ce,Tb等のCe,Tb付活珪酸塩蛍光体、Sr−Sr:Eu等のEu付活硼酸リン酸塩蛍光体、SrSi−2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、ZnSiO:Mn等のMn付活珪酸塩蛍光体、CeMgAl1119:Tb、YAl12:Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体、Ca(SiO:Tb、LaGaSiO14:Tb等のTb付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Ga:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体、Y(Al,Ga)12:Ce、(Y,Ga,Tb,La,Sm,Pr,Lu)(Al,Ga)12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、CaScSi12:Ce、Ca(Sc,Mg,Na,Li)Si12:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaSc:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、Eu付活βサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、BaMgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、SrAl:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体、LaPO:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体、(Y,Ga,Lu,Sc,La)BO:Ce,Tb、NaGd:Ce,Tb、(Ba,Sr)(Ca,Mg,Zn)B:K,Ce,Tb等のCe,Tb付活硼酸塩蛍光体、CaMg(SiOCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In):Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体やチオガレート蛍光体、(Ca,Sr)(Mg,Zn)(SiOCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、MSi:Eu、MSi12:Eu(但し、Mはアルカリ土類金属元素を表わす。)等のEu付活酸窒化物蛍光体等を用いることも可能である。
また、緑色蛍光体としては、ピリジン−フタルイミド縮合誘導体、ベンゾオキサジノン系、キナゾリノン系、クマリン系、キノフタロン系、ナルタル酸イミド系等の蛍光色素、テルビウム錯体等の有機蛍光体を用いることも可能である。
以上例示した緑色蛍光体は、何れか一種のみを使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(橙色ないし赤色蛍光体)
該橙色ないし赤色蛍光体の発光ピーク波長は、通常570nm以上、好ましくは580nm以上、より好ましくは585nm以上、また、通常780nm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは680nm以下の波長範囲にあることが好適である。
このような橙色ないし赤色蛍光体としては、例えば、赤色破断面を有する破断粒子から構成され、赤色領域の発光を行う(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Euで表わされるユーロピウム賦活アルカリ土類シリコンナイトライド系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、赤色領域の発光を行う(Y,La,Gd,Lu)S:Euで表わされるユーロピウム賦活希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体等が挙げられる。
また、赤色蛍光体の発光ピークの半値幅としては、通常1nm〜100nmの範囲である。
また、赤色蛍光体は、外部量子効率が、通常60%以上、好ましくは70%以上のものであり、重量メジアン径は通常1μm以上、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10mμ以上であり、通常30μm以下、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。
更に、特開2004−300247号公報に記載された、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、及びMoよりなる群から選ばれる少なくも1種類の元素を含有する酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体であって、Al元素の一部又は全てがGa元素で置換されたアルファサイアロン構造をもつ酸窒化物を含有する蛍光体も、本発明において用いることができる。なお、これらは酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体である。
また、そのほか、赤色蛍光体としては、(La,Y)S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体、Y(V,P)O:Eu、Y:Eu等のEu付活酸化物蛍光体、(Ba,Mg)SiO:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、LiW:Eu、LiW:Eu,Sm、Eu、Eu:Nb、Eu:Sm等のEu付活タングステン酸塩蛍光体、(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、YAlO:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、Ca(SiO:Eu、LiY(SiO:Eu、(Sr,Ba,Ca)SiO:Eu、SrBaSiO:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Y,Gd)Al12:Ce、(Tb,Gd)Al12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu等のEu付活酸化物、窒化物又は酸窒化物蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、BaMgSi:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)(Zn,Mg)Si:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn等のMn付活ゲルマン酸塩蛍光体、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La):Eu,Bi等のEu,Bi付活酸化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)S:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸硫化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)VO:Eu,Bi等のEu,Bi付活バナジン酸塩蛍光体、SrY:Eu,Ce等のEu,Ce付活硫化物蛍光体、CaLa:Ce等のCe付活硫化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgP:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn):Eu,Mn等のEu,Mn付活リン酸塩蛍光体、(Y,Lu)WO:Eu,Mo等のEu,Mo付活タングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)Si:Eu,Ce(但し、x、y、zは、1以上の整数を表わす。)等のEu,Ce付活窒化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba,Mg)10(PO(F,Cl,Br,OH):Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、((Y,Lu,Gd,Tb)1−x−yScCe(Ca,Mg)1−r(Mg,Zn)2+rSiz−qGe12+δ等のCe付活珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
赤色蛍光体としては、β−ジケトネート、β−ジケトン、芳香族カルボン酸、又は、ブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体からなる赤色有機蛍光体、ペリレン系顔料(例えば、ジベンゾ{[f,f’]−4,4’,7,7’−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1’,2’,3’−lm]ペリレン)、アントラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料を用いることも可能である。
以上の中でも、赤色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Ce、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、(La,Y)S:Eu又はEu錯体を含むことが好ましく、より好ましくは(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Ce、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr)S:Eu又は(La,Y)S:Eu、もしくはEu(ジベンゾイルメタン)・1,10−フェナントロリン錯体等のβ−ジケトン系Eu錯体又はカルボン酸系Eu錯体を含むことが好ましく、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Sr,Ca)AlSi(N,O):Eu又は(La,Y)S:Euが特に好ましい。
また、以上例示の中でも、橙色蛍光体としては(Sr,Ba)SiO:Euが好ましい。
なお、橙色ないし赤色蛍光体は、1種のみを用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(青色蛍光体)
該青色蛍光体の発光ピーク波長は、通常420nm以上、好ましくは430nm以上、より好ましくは440nm以上、また、通常490nm以下、好ましくは480nm以下、より好ましくは470nm以下、更に好ましくは460nm以下の波長範囲にあることが好適である。
また、青色蛍光体の発光ピークの半値幅としては、通常20nm〜80nmの範囲である。
また、青色蛍光体は、外部量子効率が、通常60%以上、好ましくは70%以上のものであり、重量メジアン径は通常1μm以上、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10mμ以上であり、通常30μm以下、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。
このような青色蛍光体としては、規則的な結晶成長形状としてほぼ六角形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行う(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Euで表わされるユーロピウム賦活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行う(Mg,Ca,Sr,Ba)(PO(Cl,F):Euで表わされるユウロピウム賦活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行う(Ca,Sr,Ba)Cl:Euで表わされるユウロピウム賦活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、青緑色領域の発光を行う(Sr,Ca,Ba)Al:Eu又は(Sr,Ca,Ba)Al1425:Euで表わされるユウロピウム賦活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
また、そのほか、青色蛍光体としては、Sr:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)Al:Eu又は(Sr,Ca,Ba)Al1425:Eu、BaMgAl1017:Eu、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Tb,Sm、BaAl13:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa:Ce、CaGa:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu、(Ba,Sr,Ca)(PO(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu付活ハロリン酸塩蛍光体、BaAlSi:Eu、(Sr,Ba)MgSi:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Sr:Eu等のEu付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体、YSiO:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaWO等のタングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)BPO:Eu,Mn、(Sr,Ca)10(PO・nB:Eu、2SrO・0.84P・0.16B:Eu等のEu,Mn付活硼酸リン酸塩蛍光体、SrSi・2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、SrSiAl19ON31:Eu、EuSiAl19ON31等のEu付活酸窒化物蛍光体、La1−xCeAl(Si6−zAl)(N10−z)(ここで、x、及びyは、それぞれ0≦x≦1、0≦z≦6を満たす数である。)、La1−x−yCeCaAl(Si6−zAl)(N10−z)(ここで、x、y、及びzは、それぞれ、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦6を満たす数である。)等のCe付活酸窒化物蛍光体等を用いることも可能である。
また、青色蛍光体としては、例えば、ナフタル酸イミド系、ベンゾオキサゾール系、スチリル系、クマリン系、ピラリゾン系、トリアゾール系化合物の蛍光色素、ツリウム錯体等の有機蛍光体等を用いることも可能である。
以上の例示の中でも、青色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)MgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO(Cl,F):Eu又は(Ba,Ca,Mg,Sr)SiO:Euを含むことが好ましく、(Ca,Sr,Ba)MgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO(Cl,F):Eu又は(Ba,Ca,Sr)MgSi:Euを含むことがより好ましく、BaMgAl1017:Eu、Sr10(PO(Cl,F):Eu又はBaMgSi:Euを含むことがより好ましい。また、このうち照明用途及びディスプレイ用途としては(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Eu又は(Ca,Sr,Ba)MgAl1017:Euが特に好ましい。
なお、青色蛍光体は、1種のみを用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(黄色蛍光体)
該黄色蛍光体の発光ピーク波長は、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあることが好適である。
また、黄色蛍光体の発光ピークの半値幅としては、通常60nm〜200nmの範囲である。
また、黄色蛍光体は、外部量子効率が、通常60%以上、好ましくは70%以上のものであり、重量メジアン径は通常1μm以上、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10mμ以上であり、通常30μm以下、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。
このような黄色蛍光体としては、各種の酸化物系、窒化物系、酸窒化物系、硫化物系、酸硫化物系等の蛍光体が挙げられる。
特に、RE12:Ce(ここで、REは、Y、Tb、Gd、Lu、及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わし、Mは、Al、Ga、及びScからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わす。)やM 12:Ce(ここで、Mは2価の金属元素、Mは3価の金属元素、Mは4価の金属元素を表わす。)等で表わされるガーネット構造を有するガーネット系蛍光体、AE:Eu(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg、及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わし、Mは、Si、及び/又はGeを表わす。)等で表わされるオルソシリケート系蛍光体、これらの系の蛍光体の構成元素の酸素の一部を窒素で置換した酸窒化物系蛍光体、AEAlSi(N,O):Ce(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わす。)等のCaAlSiN構造を有する窒化物系蛍光体等のCeで付活した蛍光体が挙げられる。
また、その他、黄色蛍光体としては、CaGa:Eu、(Ca,Sr)Ga:Eu、(Ca,Sr)(Ga,Al):Eu等の硫化物系蛍光体、Ca(Si,Al)12(O,N)16:Eu等のsialon構造を有する酸窒化物系蛍光体等のEuで付活した蛍光体を用いることも可能である。
また、黄色蛍光体としては、例えば、brilliant sulfoflavine FF (Colour Index Number 56205)、basic yellow HG (Colour Index Number 46040)、eosine (Colour Index Number 45380)、rhodamine 6G (Colour Index Number 45160)等の蛍光染料等を用いることも可能である。
なお、黄色蛍光体は、1種のみを用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(第2の蛍光体)
本発明の発光装置における第2の発光体は、その用途に応じて、上述の第1の蛍光体以外にも蛍光体(即ち、第2の蛍光体)を含有していてもよい。この第2の蛍光体は、第1の蛍光体とは発光ピーク波長が異なる蛍光体である。通常、これらの第2の蛍光体は、第2の発光体の発光の色調を調節するために使用されるため、第2の蛍光体としては第1の蛍光体とは異なる色の蛍光を発する蛍光体を使用することが多い。
上記のように、第1の蛍光体として緑色蛍光体を使用する場合には、第2の蛍光体としては、例えば橙色ないし赤色蛍光体、青色蛍光体、黄色蛍光体等の緑色蛍光体以外の蛍光体を用いる。第1の蛍光体として橙色ないし赤色蛍光体を使用する場合には、第2の蛍光体としては、例えば緑色蛍光体、青色蛍光体、黄色蛍光体等の橙色ないし赤蛍光体以外の蛍光体を用いる。第1の蛍光体として青色蛍光体を使用する場合には、第2の蛍光体としては、例えば緑色蛍光体、橙色ないし赤色蛍光体、黄色蛍光体等の青色蛍光体以外の蛍光体を用いる。第1の蛍光体として黄色蛍光体を使用する場合には、第2の蛍光体としては、例えば緑色蛍光体、橙色ないし赤色蛍光体、青色蛍光体等の黄色蛍光体以外の蛍光体を用いる。
該緑色蛍光体、橙色ないし赤色蛍光体、青色蛍光体及び黄色蛍光体の例としては、前記第1の蛍光体の項で記載したのと同様の蛍光体を挙げることができる。
本発明の発光装置に使用される第2の蛍光体の重量メジアン径は、通常10μm以上、中でも12μm以上が好ましく、また、通常30μm以下、中でも25μm以下が好ましい。重量メジアン径が小さ過ぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集してしまう傾向がある。一方、重量メジアン径が大き過ぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向がある。
(第2の蛍光体の組み合わせ)
本発明の蛍光体は、通常は黄緑色ないし橙色に発光することから、本発明の蛍光体と、第1の発光体として青色光を発光するもの(通常は、420nm以上500nm以下の波長範囲に発光ピークを有するもの)とを組み合わせれば、白色発光装置を得ることができる。演色性を向上させたい場合や色調を調整したい場合は、適宜、第1の発光体の発光ピーク波長を調整したり、第2の蛍光体を混合したりするとよい。上記第2の蛍光体としては、1種類の蛍光体のみを使用してもよく、2種以上の蛍光体を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、第1の蛍光体と第2の蛍光体との比率も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。従って、第2の蛍光体の使用量、並びに、第2の蛍光体として用いる蛍光体の組み合わせ及びその比率等は、発光装置の用途等に応じて任意に設定すればよい。
また、本発明の蛍光体は、他の蛍光体と混合(ここで、混合とは、必ずしも蛍光体同士が混ざり合っている必要はなく、異種の蛍光体が組み合わされていることを意味する。)して用いることができる。特に、上記に記載の組み合わせで蛍光体を混合すると、好ましい蛍光体混合物が得られる。なお、混合する蛍光体の種類やその割合に特に制限はない。
好適な組み合わせの例を挙げると、第1の発光体として青色光を発光するもの(通常は、420nm以上500nm以下の波長範囲に発光ピークを有するもの)を用い、第1の蛍光体として本発明の蛍光体を用い、第2の蛍光体として橙色ないし赤色蛍光体(通常は570nm以上780nm以下の波長範囲に発光ピークを有するもの)、及び/又は緑色蛍光体(通常は500nm以上550nm以下の波長範囲に発光ピークを有するもの)を用いたものが挙げられる。
また、別の好適な組み合わせの例を挙げると、第1の発光体として近紫外光を発光するもの(通常は、300nm以上420nm以下の波長範囲に発光ピークを有するもの)を用い、第1の蛍光体として本発明の蛍光体を用い、第2の蛍光体として、青色蛍光体(通常は、420nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有するもの)を用いたものが挙げられる。また、この組み合わせに、さらに、橙色ないし赤色蛍光体、及び/又は緑色蛍光体を加えても良い。
(封止材料)
本発明の発光装置において、上記第1及び/又は第2の蛍光体は、通常、封止材料である液体媒体に分散させて封止した後、熱や光によって硬化させて用いられる。
該液体媒体としては、前述の[3.蛍光体含有組成物]の項で記載したのと同様のものが挙げられる。
また、該液体媒体は、封止部材の屈折率を調整するために、高い屈折率を有する金属酸化物となり得る金属元素を含有させることができる。高い屈折率を有する金属酸化物を与える金属元素の例としては、Si、Al、Zr、Ti、Y、Nb、B等が挙げられる。これらの金属元素は単独で使用されてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で併用されてもよい。
このような金属元素の存在形態は、封止部材の透明度を損なわなければ特に限定されず、例えば、メタロキサン結合として均一なガラス層を形成していても、封止部材中に粒子状で存在していてもよい。粒子状で存在している場合、その粒子内部の構造はアモルファス状であっても結晶構造であってもよいが、高屈折率を与えるためには結晶構造であることが好ましい。また、その粒子径は、封止部材の透明度を損なわないために、通常は、半導体発光素子の発光波長以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、特に好ましくは30nm以下である。例えばシリコーン系材料に、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化ニオブ等の粒子を混合することにより、上記の金属元素を封止部材中に粒子状で存在させることができる。
また、上記液体媒体としては、更に、拡散剤、フィラー、粘度調整剤、紫外線吸収剤等公知の添加剤を含有していてもよい。なお、これらの添加剤は、1種のみを用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[4−2.発光装置の構成(その他)]
本発明の発光装置は、上述の第1の発光体及び第2の発光体を備えていれば、そのほかの構成は特に制限されないが、通常は、適当なフレーム上に上述の第1の発光体及び第2の発光体を配置してなる。この際、第1の発光体の発光によって第2の発光体が励起されて(即ち、第1及び第2の蛍光体が励起されて)発光を生じ、且つ、この第1の発光体の発光及び/又は第2の発光体の発光が、外部に取り出されるように配置されることになる。この場合、第1の蛍光体と第2の蛍光体とは必ずしも同一の層中に混合されなくてもよく、例えば、第1の蛍光体を含有する層の上に第2の蛍光体を含有する層が積層する等、蛍光体の発色毎に別々の層に蛍光体を含有するようにしてもよい。
また、本発明の発光装置では、上述の励起光源(第1の発光体)、蛍光体(第2の発光体)及びフレーム以外の部材を用いてもよい。その例としては、前述の封止材料が挙げられる。該封止材料は、発光装置において、蛍光体(第2の発光体)を分散させる目的以外にも、励起光源(第1の発光体)、蛍光体(第2の発光体)及びフレーム間を接着する目的で用いたりすることができる。
[4−3.発光装置の実施形態]
以下、本発明の発光装置について、具体的な実施の形態を挙げて、より詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
本発明の発光装置の一例における、励起光源となる第1の発光体と、蛍光体を有する蛍光体含有部として構成された第2の発光体との位置関係を示す模式的斜視図を図1に示す。図1中の符号1は蛍光体含有部(第2の発光体)、符号2は励起光源(第1の発光体)としての面発光型GaN系LD、符号3は基板を表す。相互に接触した状態をつくるために、LD(2)と蛍光体含有部(第2の発光体)(1)とそれぞれ別個に作製し、それらの面同士を接着剤やその他の手段によって接触させてもよいし、LD(2)の発光面上に蛍光体含有部(第2の発光体)を製膜(成型)させてもよい。これらの結果、LD(2)と蛍光体含有部(第2の発光体)(1)とを接触した状態とすることができる。
このような装置構成をとった場合には、励起光源(第1の発光体)からの光が蛍光体含有部(第2の発光体)の膜面で反射されて外にしみ出るという光量損失を避けることができるので、装置全体の発光効率を良くすることができる。
図2(a)は、一般的に砲弾型と言われる形態の発光装置の代表例であり、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。該発光装置(4)において、符号5はマウントリード、符号6はインナーリード、符号7は励起光源(第1の発光体)、符号8は蛍光体含有樹脂部、符号9は導電性ワイヤ、符号10はモールド部材をそれぞれ指す。
また、図2(b)は、表面実装型と言われる形態の発光装置の代表例であり、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。図中、符号22は励起光源(第1の発光体)、符号23は蛍光体含有部(第2の発光体)としての蛍光体含有樹脂部、符号24はフレーム、符号25は導電性ワイヤ、符号26及び符号27は電極をそれぞれ指す。
[4−4.発光装置の用途]
本発明の発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能であるが、色再現範囲が広く、且つ、演色性も高いことから、中でも照明装置や画像表示装置の光源として、とりわけ好適に用いられる。
[4−4−1.照明装置]
本発明の発光装置を照明装置に適用する場合には、前述のような発光装置を公知の照明装置に適宜組み込んで用いればよい。例えば、図3に示されるような、前述の発光装置(4)を組み込んだ面発光照明装置(11)を挙げることができる。
図3は、本発明の照明装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。この図3に示すように、該面発光照明装置は、内面を白色の平滑面等の光不透過性とした方形の保持ケース(12)の底面に、多数の発光装置(13)(前述の発光装置(4)に相当)を、その外側に発光装置(13)の駆動のための電源及び回路等(図示せず。)を設けて配置し、保持ケース(12)の蓋部に相当する箇所に、乳白色としたアクリル板等の拡散板(14)を発光の均一化のために固定してなる。
そして、面発光照明装置(11)を駆動して、発光装置(13)の励起光源(第1の発光体)に電圧を印加することにより光を発光させ、その発光の一部を、蛍光体含有部(第2の発光体)としての蛍光体含有樹脂部における前記蛍光体が吸収し、可視光を発光し、一方、蛍光体に吸収されなかった青色光等との混色により演色性の高い発光が得られ、この光が拡散板(14)を透過して、図面上方に出射され、保持ケース(12)の拡散板(14)面内において均一な明るさの照明光が得られることとなる。
[4−4−2.画像表示装置]
本発明の発光装置を画像表示装置の光源として用いる場合には、その画像表示装置の具体的構成に制限は無いが、カラーフィルターとともに用いることが好ましい。例えば、画像表示装置として、カラー液晶表示素子を利用したカラー画像表示装置とする場合は、上記発光装置をバックライトとし、液晶を利用した光シャッターと赤、緑、青の画素を有するカラーフィルターとを組み合わせることにより画像表示装置を形成することができる。
このときのカラーフィルター透過後の光による色再現範囲としては、NTSC比で、通常60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%以上であり、通常150%以下である。
また、カラーフィルター全体からの透過光の量に対する、各カラーフィルターからの透過光の量(光の利用効率)としては、通常20%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは28%以上、さらに好ましくは30%以上である。利用効率は高ければ高いほど好ましいが、赤、緑及び青の3つのフィルターを用いている関係上、通常33%以下となる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
[原料試薬について]
蛍光体の製造には、市販原料として窒化ランタン粉末(高純度化学社製)、窒化ケイ素粉末(Si。電気化学社製、平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93重量%、α型含有量92%)、酸化セリウム粉末(信越化学社製)を使用した。その他の本発明の蛍光体の原料として、合成により得たCaSiN粉末を使用した。
[測定方法]
[発光スペクトル]
発光スペクトルは、励起光源として150Wキセノンランプを、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)を用いて測定した。励起光源からの光を焦点距離が10cmである回折格子分光器に通し、波長460nmの励起光のみを光ファイバーを通じて蛍光体に照射した。励起光の照射により蛍光体から発生した光を焦点距離が25cmである回折格子分光器により分光し、300nm以上800nm以下の波長範囲においてスペクトル測定装置により各波長の発光強度を測定し、パーソナルコンピュータによる感度補正等の信号処理を経て発光スペクトルを得た。なお、測定時には、受光側分光器のスリット幅を1nmに設定して測定を行なった。
[発光ピークの半値幅]
発光ピークの半値幅(以下、「半値幅」と称する場合がある。)は、上述の方法で得られた発光スペクトルから、算出した。
[色度座標]
x、y表色系(CIE 1931表色系)の色度座標は、上述の方法で得られた発光スペクトルの420nm〜800nmの波長領域のデータから、JIS Z8724に準じた方法で、JIS Z8701で規定されるXYZ表色系における色度座標xとyとして算出した。
[励起スペクトルの測定]
励起スペクトルの測定は、室温下において、蛍光分光光度計F−4500型(株式会社日立製作所製)を用いて行なった。
[温度特性の測定]
温度特性の測定は、発光スペクトル測定装置として大塚電子製MCPD7000マルチチャンネルスペクトル測定装置、輝度測定装置として色彩輝度計BM5A、ペルチェ素子による冷却機構とヒーターによる加熱機構を備えたステージ及び光源として150Wキセノンランプを備える装置を用いて、下記手順で行なった。
ステージに蛍光体のサンプルを入れたセルを載せ、温度を20℃、25℃、60℃、100℃、135℃及び175℃と段階的に変化させ、蛍光体の表面温度を確認し、次いで、光源から回折格子で分光して取り出した波長455nmの光で蛍光体を励起して、発光スペクトルを測定した。測定された発光スペクトルから、発光ピーク強度を求めた。ここで、蛍光体の励起光照射側の表面温度の測定値としては、放射温度計と熱電対による温度測定値を利用して補正した値を用いた。
そして、得られた発光ピーク強度から約20℃〜約175℃における補正温度−発光強度曲線を作成し、この補正温度−発光強度曲線から130℃と25℃における発光強度の値I(130)及びI(25)を読み取り、温度特性I(130)/I(25)を算出した。なお、I(130)及びI(25)は、補正前の温度130℃と25℃における発光強度と大きく異ならなかった。
[内部量子効率、外部量子効率、及び吸収効率]
以下のようにして、蛍光体の吸収効率α、内部量子効率η、外部量子効率η、を求めた。まず、測定対象となる蛍光体サンプルを、測定精度が保たれるように、十分に表面を平滑にしてセルに詰め、積分球に取り付けた。
この積分球に、蛍光体を励起するための発光光源(150WのXeランプ)から光ファイバーを用いて光を導入した。前記の発光光源からの光の発光ピーク波長を455nmの単色光となるようにモノクロメーター(回折格子分光器)等を用いて調整した。この単色光を励起光として、測定対象の蛍光体サンプルに照射し、分光測定装置(大塚電子株式会社製MCPD7000)を用いて、蛍光体サンプルの発光(蛍光)および反射光についてスペクトルを測定した。積分球内の光は、光ファイバーを用いて分光測定装置に導いた。
吸収効率αは、蛍光体サンプルによって吸収された励起光のフォトン数Nabsを励起
光の全フォトン数Nで割った値である。
まず、後者の励起光の全フォトン数Nは、下記(式a)で求められる数値に比例する。そこで、励起光に対してほぼ100%の反射率Rを持つ反射板であるLabsphere製「Spectralon」(450nmの励起光に対して98%の反射率Rを持つ。)を、測定対象として、蛍光体サンプルと同様の配置で上述の積分球に取り付け、励起光を照射し、分光測定装置で測定することにより反射スペクトルIref(λ)を測定し、下記(式a)の値を求めた。
Figure 2010095728
ここで、積分区間は、励起波長が455nmに対して、410nm〜480nmとした。
蛍光体サンプルによって吸収された励起光のフォトン数Nabsは下記(式b)で求めら
れる量に比例する。
Figure 2010095728
そこで、吸収効率αを求める対象としている蛍光体サンプルを取り付けたときの、反射スペクトルI(λ)を求めた。(式b)の積分範囲は(式a)で定めた積分範囲と同じにした。実際のスペクトル測定値は、一般にはλに関するある有限のバンド幅で区切ったデジタルデータとして得られるため、(式a)および(式b)の積分は、そのバンド幅に基づいた和分によって求めた。
以上より、α=Nabs/N=(式b)/(式a)を計算した。
次に、内部量子効率ηを以下のようにして求めた。内部量子効率ηは、蛍光現象に由来するフォトンの数NPLを蛍光体サンプルが吸収したフォトンの数Nabsで割った値である。
ここで、NPLは、下記(式c)で求められる量に比例する。そこで、下記(式c)で求められる量を求めた。
Figure 2010095728
積分区間は、励起波長455nmに対して、481nm〜800nmとした。
以上により、η=(式c)/(式b)を計算し、内部量子効率ηを求めた。
なお、デジタルデータとなったスペクトルから積分を行うことに関しては、吸収効率αを求めた場合と同様に行った。
そして、上記のようにして求めた吸収効率αと内部量子効率ηの積をとることで外部量子効率ηを求めた。
[実施例1]
(蛍光体原料用合金の製造)
酸素濃度1ppm未満、水蒸気濃度1ppm未満の高純度窒素雰囲気のグローブボックス内で、金属元素組成比がCe:La:Si=0.1:2.9:6(モル比)となるように、かつ、合計量が2gとなるようにCe、La及びSiの各原料金属(いずれも金属単体を用いた。)を秤量し、軽く混合した。得られた原料金属の混合物を、アーク溶解炉(大亜真空株式会社製ACM−CO1P)に導入し、炉内を1×10−2Paに真空排気した後、アルゴンを導入し、アルゴン雰囲気下で原料金属に電流を約100mA流して、溶融した。溶融した金属が電磁誘導の原理により充分回転するのを確認した後、電流印加を停止し、自然放冷により凝固させ、金属元素組成比がCe:La:Si=0.1:2.9:6(モル比)である蛍光体原料用合金を得た。得られた蛍光体原料用合金が均一な上記組成の合金となっていることをエネルギー分散型X線分析装置付走査型電子顕微鏡(SEM−EDX;堀場製作所製EX−250)にて確認した。
上記と同じグローブボックス内で、アルミナ乳鉢とナイロンメッシュの篩を用いて、蛍光体原料用合金を粉砕し、粒径37μm以下の合金粉末とし、これを窒化処理用の原料とした。
(二次窒化工程)
(一次焼成)
得られた合金粉末2gを窒化ホウ素製ルツボ(内径20mm)に充填し、熱間等方加圧装置(HIP)内にセットした。装置内を5×10−1Paまで真空排気した後、11MPaまで窒素を充填してから、昇温速度15℃/分で炉内温度1050℃まで昇温し、内圧が25MPaにまで増圧しているのを確認後、炉内温度1050℃から1205℃まで3℃/分で昇温し、内圧が27MPaに到達した。その後、炉内温度を1205℃で30分間保持し、3℃/分で昇圧して炉内温度が1750℃、内圧が33MPaに到達した時点で降温を開始し、窒化処理を終了した。
得られた窒化粉(窒素含有合金)を、同じグローブボックス内で、アルミナ乳鉢とナイロンメッシュの篩を用いて、粉砕し、粒径37μm以下の粉末とし、これを下記の二次焼成用の原料(一次焼成物)とした。
(二次焼成)
得られた窒素含有合金(即ち、一次焼成物)を約1g、窒化ホウ素製ルツボ(内径20mm)に充填し、熱間等方加圧装置(HIP)内にセットした。装置内を5×10−1Paまで真空排気した後、25MPaまで窒素を充填してから、15℃/分で炉内温度1300℃まで昇温し、次いで、炉内温度1300℃から2000℃まで10℃/分で昇温したところ、内圧が90MPaに到達した。炉内温度を2000℃で3時間保持した後、降温を開始し、焼成を終了した。
得られた焼成物を、上記と同じグローブボックス内で、アルミナ乳鉢を用いて粉砕することにより、蛍光体を得た。
(発光特性の測定)
得られた蛍光体について、上述した要領で発光特性を測定した。測定された発光スペクトルを図4に示し、発光強度、発光ピーク波長、半値幅、CIE色度座標などの発光特性を表3に示す。
図4より、原料として合金を用いて製造した本実施例のLaSi11:Ce蛍光体は、その発光スペクトルが、発光ピークを二つ有し、低波長側のピークが、それよりも約45nm高波長側にあるピークより顕著に高くなっていることがわかる。
また、本実施例で測定された発光スペクトルにおいて、高波長側のピーク高さ/低波長側のピーク高さの比を表すI(B)/I(A)値は、0.852という低い値となった。
本実施例のLaSi11:Ce蛍光体は、上記のような発光スペクトルを有するため、黄緑色の発光色を呈するという特徴を有する。
[実施例2]
(蛍光体原料用合金の製造)
実施例1の(蛍光体原料用合金の製造)と同様の条件で合金粉末を製造した。なお、実施例1と同様に、粉末の秤量、充填の各工程は全て、水分1ppm以下酸素1ppm以下の窒素雰囲気を保持することができるグローブボックス中で操作を行なった。
(二次窒化工程)
(一次焼成)
この合金粉末約0.7gを窒化ホウ素製ルツボにいれ、これを黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットし、以下の要領で焼成した。即ち、まずターボ分子ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から800℃まで毎分20℃の速度で加熱し、800℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.92MPaとし、毎分3℃で1500℃まで昇温し、1500℃で58.5時間保持することにより、一次焼成を行った。得られた焼成物を上記と同じグローブボックス内で粉砕し、粉末(一次焼成物)を得た。
(二次焼成)
この一次焼成物について、以下の条件で二次窒化工程を行った。即ち、前記一次焼成において、800℃からの温度プログラムを、毎分1.5℃で1500℃まで昇温し、1500℃で3時間保持し、1500℃から毎分15℃/分で1750℃まで昇温し、1750℃で7時間保持するようにプログラムに変えたこと以外は、前記一次焼成と同様の条件で製造することにより、本実施例の蛍光体を得た。
(発光特性の測定)
得られた蛍光体について、上述した要領で発光特性を測定した。測定された発光スペクトルを図4に示し、発光特性を表3に示す。
また、本実施例で測定された発光スペクトルにおいて、高波長側のピーク高さ/低波長側のピーク高さの比を表すI(B)/I(A)値は、0.816と顕著に低いものであった。
また、本実施例で得られた蛍光体は、緑色の発光を示した。
さらに、本実施例で得られた蛍光体の温度特性I(130)/I(25)は74%であった。
また、本実施例で得た蛍光体について、CuKα線(1.54184Å)を用いて粉末X線回折パターンを測定した。その結果を、蛍光体原料として合金を使用せずに製造した参考例1の蛍光体(後述)と比較すると、蛍光体原料として合金を使用して製造した本実施例の蛍光体は、不純物相が極めて少なく、LaSi11結晶構造の単一相が得られていることがわかった。また、本実施例の蛍光体では、2θ値が21°〜24°の範囲における最高ピーク(不純物相のピークを示す。)の強度の、目的相の001面のピーク強度に対する比が、0.027と小さかった。
[実施例3]
実施例2の二次焼成において、800℃を超える焼成温度プログラムを、800℃から毎分0.27℃で1500℃まで昇温し、1500℃で58.5時間保持し、1500℃から毎分15℃で1750℃まで昇温し、1750℃で39時間保持するようにプログラムに変えたこと以外は、実施例2と同様の条件で製造することにより、本実施例の蛍光体を得た。
得られた蛍光体について、上述した要領で発光特性を測定した。測定された発光スペクトルを図4に示し、発光特性を表3に示す。
また、本実施例で測定された発光スペクトルにおいて、高波長側のピーク高さ/低波長側のピーク高さの比を表すI(B)/I(A)値は、0.845と顕著に低いものであった。
また、本実施例で得られた蛍光体は、緑色の発光を示した。
さらに、本実施例で得られた蛍光体の温度特性I(130)/I(25)は68%であった。
また、本実施例で得られた蛍光体について量子効率を測定したところ、内部量子効率は53.4%、吸収効率は82.0%、外部量子効率は43.8%であった。
さらに、本実施例で得た蛍光体について、CuKα線(1.54184Å)を用いて粉末X線回折パターンを測定した。その結果を図5に示す。図5において、粉末X線回折パターンのピークには、正方晶の指数付けがなされている。蛍光体原料として合金を使用せずに製造した参考例1の蛍光体(後述)と比較すると、蛍光体原料として合金を使用して製造した本実施例の蛍光体は、不純物相が極めて少なく、LaSi11結晶構造の単一相が得られていることがわかる。また、本実施例の蛍光体では、2θが17°以上20°以下の範囲に存在する目的相の001面のピーク強度に対する、2θが21°以上24°以下の範囲における最高ピーク(不純物相のピークを示す。)の強度の比(即ち、ピーク強度比I)が、0.027と小さかった。
また、実施例1〜3の発光スペクトルより、Ca等のA元素を含まない蛍光体を、蛍光体原料として合金を用いて製造すると、その発光色が黄緑色となることがわかる。
[実施例4]
(蛍光体原料の一つであるCaSiNの製造)
まず、CaSiN粉末を以下の要領で合成した。窒化カルシウム粉末(Ca)と窒化ケイ素粉末とを、1:0.946の重量割合で秤量し、乳棒と乳鉢で10分間混合を行なった後に、得られた混合物を、窒化ホウ素製のルツボに入れた。なお、粉末の秤量、混合、充填の各工程は全て、水分1ppm以下酸素1ppm以下の窒素雰囲気を保持することができるグローブボックス中で操作を行なった。そして、混合物の入った窒化ホウ素製ルツボを黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットし、以下の要領で焼成した。即ち、まず拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から800℃まで毎分20℃の速度で加熱し、800℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.92MPaとし、毎分15℃で1750℃まで昇温し、1750℃で2時間保持して焼成した。焼成後に得られた試料を同じグローブボックス内で粗粉砕して、原料の一つであるCaSiNの粉を得た。
(蛍光体原料用合金の製造)
実施例1の(蛍光体原料用合金の製造)において、金属元素組成比がCe:La:Si=1:4:10(モル比)となるように各原料金属の秤量値を変えたこと以外は、実施例1と同様に操作を行って、金属元素組成比がCe:La:Si=1:4:10(モル比)であるLaCeSi10合金(蛍光体原料用合金)の粉末を得た。
(二次窒化工程)
上記で得られたLaCeSi10合金粉末、窒化ランタン粉末、窒化ケイ素粉末、及びCaSiN粉末を、LaCeSi10合金粉末のCeモル数、窒化ランタン粉末のLaモル数、CaSiN粉末のCaモル数、及び(窒化ケイ素粉末のSiモル数+LaCeSi10合金粉末のSiモル数)の値が、それぞれ、表1の仕込み組成のCe、La、Ca、Siの各モル数と比例するように、実施例1と同じグローブボックス内で秤量、及び混合した。
得られた混合物のうち、その約0.7gを窒化ホウ素製のルツボに入れ、その窒化ホウ素製ルツボを黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。ターボ分子ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から800℃まで毎分20℃の速度で加熱し、800℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.92MPaとし、毎分3℃で1580℃まで昇温し、1580℃で57時間保持後、1580℃から毎分22℃/分で2000℃まで昇温し、2000℃で5分間保持することにより、焼成を行った。得られた蛍光体を、上記と同じグローブボックス内でアルミナ乳鉢を用いて粉砕し、本実施例の蛍光体粉末を得た。
(発光特性の測定)
得られた蛍光体について、上述した要領で発光特性を測定した。測定された発光スペクトルを図6に示し、発光特性を表3に示す。
本実施例の蛍光体は、高い発光強度を示し、Ca等のA元素を含まない実施例1〜3の蛍光体よりも発光ピークが長波長側にシフトしており、また、半値幅が140nmと大きく、演色性向上に寄与できる黄色蛍光体であることがわかる。
さらに、本実施例で得られた蛍光体について、CuKα線(1.54184Å)を用いて粉末X線回折パターンを測定した。その結果を図5に示す。図5から、蛍光体原料として合金を使用したことにより、不純物相が極めて少ない正方晶P4bm又はその類似構造の単一相が得られていることがわかる。また、本実施例の蛍光体では、2θが17°以上20°以下の範囲に存在する目的相の001面のピーク強度に対する、2θが21°以上24°以下の範囲における最高ピーク(不純物相のピークを示す。)の強度の比(即ち、ピーク強度比I)が、0.028と小さかった。
また、本実施例で得られた蛍光体について、酸素窒素分析計により分析したところ、前記式[A]におけるO(酸素)のモル比(y+w1に相当する。)が0.24であり、N(窒素)のモル比(11−y−w1に相当する。)が11.76であった。
[実施例5]
実施例4で得られた蛍光体粉末(一次焼成物)に対し、次のような条件で二次焼成を行なった。
蛍光体用原料を実施例4の蛍光体粉末に代え、800℃からの温度プログラムを、毎分20℃で1200℃まで昇温し、次に、毎分13℃で1580℃まで昇温し、1580℃で6時間保持するようにしたこと以外は、実施例4(二次窒化工程)と同様の操作を行い、本実施例の蛍光体を得た。
得られた蛍光体について、上述した要領で発光特性を測定した。測定された発光スペクトルを図6に示し、発光特性を表3に示す。図6から、再焼成処理を行なうと発光強度が向上することがわかる。
[実施例6〜8]
実施例5において、蛍光体原料を、実施例4の蛍光体粉末にそれぞれ0.45重量%、0.9重量%、及び1.36重量%のMgFを添加し混合したものに代えたこと以外は、実施例4(二次窒化工程)の工程と同様に操作を行い、それぞれ実施例8,6,7の蛍光体粉末を得た。
得られた蛍光体について、上述した要領で発光特性を測定した。測定された発光スペクトルを図6に示し、発光特性を表3に示す。フラックスであるMgFが適量存在する状態で窒化処理工程を行うことにより、発光強度が向上することがわかる。
[実施例9、10]
実施例4で得られた蛍光体粉末(一次焼成物)(実施例9)と、実施例6で得られた蛍光体粉末(二次焼成物)(実施例10)とを、それぞれ約0.7g秤量した。これらを別々に窒化ホウ素坩堝に入れ、モリブデン製ヒーターの電気炉に導入し、約8MPaまで真空引きした後、水素含有窒素ガス(水素:窒素=4:96(体積比))を常圧まで導入し、水素4%含有窒素ガスを0.5L/分で流しながら、毎分5℃/分の昇温速度で1400℃まで昇温し、1400℃で1時間加熱することにより、窒素−水素処理(再焼成工程)を行った。得られた蛍光体粉末を軽く粉砕して、それぞれ実施例9と実施例10の蛍光体を得た。
得られた蛍光体について、上述した要領で発光特性を測定した。測定された発光特性を表3に示す。この結果から、窒素−水素処理を行うことにより、発光強度が向上することがわかる。これは、付活元素であるCeの還元状態が変化することにより、発光に良い影響を与えたものと考えられる。
[実施例11、12]
実施例3において、二次焼成を行なう際に、一次焼成物の他に実施例4で製造したのと同様のCaSiN粉末を加えて混合してから二次窒化工程を行なったこと以外は、実施例3と同様の操作を行ない蛍光体を製造した。
なお、一次焼成物とCaSiN粉末とを混合する際に、表1に記載の仕込み組成Ca0.75La2.4Ce0.1Si11(実施例11)、Ca1.35La2.0Ce0.1Si11(実施例12)となるように、窒素含有合金とCaSiN粉末との重量比の調整を行なった。このようにして、実施例11と実施例12の蛍光体粉末を得た。
得られた蛍光体について、上述した要領で発光特性を測定した。測定された発光特性を表3に示す。この結果から、黄緑色発光の蛍光体を、蛍光体原料として合金を使用して製造する過程においてCaを添加することにより、黄色発光に変化させることができることがわかる。
なお、実施例11の蛍光体の温度特性I(130)/I(25)は65%であった。
[実施例13]
実施例1(蛍光体原料用合金の製造)において、原料金属としてCa金属を追加し、金属元素の仕込み組成比をCe:Ca:La:Si=0.1:0.2:2.8:6(モル比)に変えたこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、Ce0.1Ca0.2La2.8Si合金を製造した。
続いて、得られた合金を原料として、実施例1と同様の条件で一次焼成、二次焼成、及び粉砕を行なうことにより、仕込み組成がCa0.2La2.8Ce0.1Si10.80.2である酸窒化物蛍光体粉末を得た。
得られた蛍光体について、上述した要領で発光特性を測定した。測定された発光特性を表3に示す。また、本実施例で得られた蛍光体は、黄色発光を示した。
[実施例14]
実施例2で得られた仕込み組成La2.9Ce0.1Si11の蛍光体粉末と、青色発光GAN系LEDチップ(Cree社製460EZ)とを組み合わせて、白色発光装置を作製した。なお、上記の蛍光体粉末を分散し、封止するために、封止材シリコーン樹脂(信越化学工業製SCR−1011)と分散材(徳山製QS−30)を使用した。実施例2の蛍光体粉末:封止材:分散材の重量比は、それぞれ5.1:97.0:3.0とし、これらの混合物を70℃で1時間加熱後、150℃で5時間加熱して硬化させることにより、蛍光体含有部を形成させ、表面実装型の白色発光装置を得た。
得られた発光装置による発光スペクトルを図7に、そのスペクトル特性を表4に示す。表4の色度座標x値とy値にみられるように、本蛍光体1種類だけで白色発光が容易に実現することがわかる。
また、得られた発光装置の平均演色評価数は65であったが、色度座標のx値を0.45付近に、y値を0.41付近に近付ければ平均演色評価数は向上するものと思われる。
[参考例1]
実施例4(二次窒化工程)において、合金を使用せず、酸化セリウム粉末、窒化ランタン粉末、窒化ケイ素粉末、及びCaSiN粉末を表1の秤量値で秤量・混合したものを蛍光体原料として用い、800℃からの焼成用温度プログラムを、毎分22℃/分で2000℃まで昇温し、2000℃で5分保持するようにしたプログラムに変えたこと以外は、実施例4(二次窒化工程)と同様の操作を行い、参考例1の蛍光体粉末を得た。
また、本参考例で得た蛍光体について、CuKα線(1.54184Å)を用いて粉末X線回折パターンを測定した。その結果を図5に示す。図5から分かるように、蛍光体原料として合金を使用せずに製造した場合でも正方晶P4bm又はその類似構造が主相として得られるが、蛍光体原料として合金を使用して製造したものより不純物相がやや多くなる傾向にあることがわかる。LaからCaへの置換率xが低いほどその傾向がみえた。本参考例(x=0.5)の蛍光体の粉末X線回折パターンの2θ値21〜24°の範囲における最高ピーク(不純物相のピーク)強度の、目的相の001面のピーク強度に対する比が0.118と、蛍光体原料として合金を使用して製造したものに比べて大きかった。
本参考例で得られた蛍光体について、上述した要領で発光特性を測定した。測定された発光スペクトルを図6に示し、発光特性を表3に示す。実施例2〜8で製造された本発明の蛍光体が、蛍光体原料として合金を使用しない本参考例の蛍光体より顕著に発光強度が高いことがわかる。
Figure 2010095728
Figure 2010095728
Figure 2010095728
Figure 2010095728
本発明は産業上の任意の分野で使用可能であり、特に、照明、画像表示装置等の光を使用する用途に用いて特に好適である。
1:第2の発光体
2:面発光型GaN系LD
3:基板
4:発光装置
5:マウントリード
6:インナーリード
7:第1の発光体
8:蛍光体含有樹脂部
9:導電性ワイヤー
10:モールド部材
11:面発光照明装置
12:保持ケース
13:発光装置
14:拡散板
22:第1の発光体
23:第2の発光体
24:フレーム
25:導電性ワイヤ
26,27:電極

Claims (3)

  1. 下記式[A]で表される結晶相を含有する蛍光体の製造方法であって、
    原料の少なくとも一部として、該結晶相に含有される金属元素を2種以上含有する合金を使用し、
    該合金を窒素含有雰囲気下で焼成する窒化処理工程を有する
    ことを特徴とする蛍光体の製造方法。
    3-x-y-z+w21.5x+y-w2Si6-w1-w2Alw1+w2y+w111-y-w1 [A]
    (式[A]中、
    RはLa、Gd、Lu、Y及びScからなる群より選ばれる少なくとも1種類の希土類元素を示し、
    MはCe、Eu、Mn、Yb、Pr及びTbからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属元素を示し、
    AはBa、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種類の二価の金属元素を示し、
    x、y、z、w1及びw2は、それぞれ以下の範囲の数値を示す。
    (1/7)≦(3−x−y−z+w2)/6<(1/2)
    0≦(1.5x+y−w2)/6<(9/2)
    0≦x<3
    0≦y<2
    0<z<1
    0≦w1≦5
    0≦w2≦5
    0≦w1+w2≦5)
  2. 原料として、該合金及び窒化物を用いる
    ことを特徴とする請求項1に記載の蛍光体の製造方法。
  3. 下記式[A]で表される結晶相を含有し、
    該結晶相に含有される金属元素を2種以上含有する合金を原料の少なくとも一部として用いて製造され、
    波長460nmの光で励起したときの発光スペクトルが下記式[B]を満たす
    ことを特徴とする蛍光体。
    3-x-y-z+w21.5x+y-w2Si6-w1-w2Alw1+w2y+w111-y-w1 [A]
    (式[A]中、
    RはLa、Gd、Lu、Y及びScからなる群より選ばれる少なくとも1種類の希土類元素を示し、
    MはCe、Eu、Mn、Yb、Pr及びTbからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属元素を示し、
    AはBa、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種類の二価の金属元素を示し、
    x、y、z、w1及びw2は、それぞれ以下の範囲の数値を示す。
    (1/7)≦(3−x−y−z+w2)/6<(1/2)
    0≦(1.5x+y−w2)/6<(9/2)
    0≦x<3
    0≦y<2
    0<z<1
    0≦w1≦5
    0≦w2≦5
    0≦w1+w2≦5)
    I(B)/I(A)≦0.88 [B]
    (上記式[B]において、
    I(A)は、500nm以上550nm以下の波長範囲に存在する、最高ピーク波長における発光強度を示し、
    I(B)は、該最高ピークの波長より45nm長波長側の波長における発光強度を示す。)
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