JP5292724B2 - 窒化物を母体とする蛍光体の製造方法 - Google Patents
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Description
この場合、得られる蛍光体は、酸窒化物蛍光体のみであり、酸素を含まない窒化物蛍光体は得られていない。
本発明は以下の(1)〜(11)を要旨とするものである。
(2) (1)において、得られた蛍光体に含まれる酸素が5重量%以下であることを特徴とする窒化物を母体とする蛍光体の製造方法。
(3) (1)又は(2)において、前記複合窒化物が、賦活元素を含むことを特徴とする窒化物を母体とする蛍光体の製造方法。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
以下に本発明の製造方法により製造される窒化物又は酸窒化物を母体とする蛍光体(以下「本発明の蛍光体」と称す。)の組成について説明する。
なお、本明細書において、蛍光体の母体とは、付活元素を固溶し得る結晶又はガラス(アモルファス)を意味し、付活元素を含有せずに、結晶又はガラス(アモルファス)それ自体が発光するものも含むものとする。
本発明の蛍光体は、付活元素M1、2価の金属元素M2、及び少なくともSiを含む4価の金属元素M4を含むことが好ましく、付活元素M1、2価の金属元素M2、3価の金属元素M3、及び少なくともSiを含む4価の金属元素M4を含むことがより好ましい。
M1 aM2 bM3 cM4 dNeOf [1]
(但し、a、b、c、d、e、fはそれぞれ下記の範囲の値である。
0.00001≦a≦0.15
a+b=1
0.5≦c≦1.5
0.5≦d≦1.5
2.5≦e≦3.5
0≦f≦0.5 )
尚、前記一般式[1]において、M1は前記付活元素M1を表し、M2は前記2価の金属元素M2を表し、M3は前記3価の金属元素M3を表し、M4は前記少なくともSiを含む4価の金属元素M4を表す。
1.84≦e≦4.17
となる。しかしながら、前記一般式[1]で表される蛍光体組成において、窒素の含有量を示すeが2.5未満であると蛍光体の収率が低下する傾向にある。また、eが3.5を超えても蛍光体の収率が低下する傾向にある。従って、eは通常2.5≦e≦3.5である。
M1’ a’Srb’Cac’M2’ d’Ale’Sif’Ng’ [2]
(但し、a’、b’、c’、d’、e’、f’、g’はそれぞれ下記の範囲の値である。
0.00001≦a’≦0.15
0.1≦b’≦0.99999
0≦c’<1
0≦d’<1
a’+b’+c’+d’=1
0.5≦e’≦1.5
0.5≦f’≦1.5
0.8×(2/3+e’+4/3×f’)≦g’≦1.2×(2/3+e’+4/3×f’))
a’+b’+c’+d’=1
を満足する。
酸素の含有量は蛍光体の発光特性低下が容認できる範囲で通常5重量%以下、好ましくは2重量%以下、最も好ましくは1重量%以下である。
本発明の蛍光体の製造方法では、以下の工程を経て本発明の蛍光体を製造する。即ち、まず、原料となる金属やその合金を秤量する(原料秤量工程)。そして、これらの原料を融解させて(融解工程)合金化して、蛍光体を構成する金属元素を2種以上含有する合金(以下、「蛍光体原料用合金」と称する場合がある。)を製造する。その後、蛍光体原料用合金を、後述の酸化物及び/又は酸窒化物の存在下、窒素含有雰囲気下で加熱することにより窒化を行なう(窒化処理工程。また、適宜、「二次窒化工程」ともいう)。また、これらの工程に加え、必要に応じて鋳造工程、粉砕工程、分級工程、一次窒化工程、冷却工程などを行なってもよい。
なお、蛍光体原料用合金としては、目的とする組成の蛍光体が得られればよく、1種または2種以上の蛍光体原料用合金を使用することもできる。
本発明の蛍光体の製造方法を用いて、例えば、前記一般式[1]で表される組成を有する蛍光体を製造する場合、下記一般式[3]の組成となるように、原料となる金属やその合金(以下、単に「原料金属」と言う場合がある。)を秤量して蛍光体原料用合金を製造することが好ましい(原料秤量工程)。
M1 aM2 bM3 cM4 d [3]
(但し、M1、M2、M3、M4、a、b、c、dはそれぞれ前記一般式[1]におけると同義である。)
なお、融解時に揮発やルツボ材質との反応等により損失する金属元素については、必要に応じて、予め過剰に秤量し添加してもよい。
原料の秤量後、当該原料を融解させて(融解工程)合金化して蛍光体原料用合金を製造する。得られる蛍光体原料用合金は本発明の蛍光体を構成する金属元素を2種以上含有するものである。この際、本発明の蛍光体を構成する金属元素を1つの蛍光体原料用合金が全て含有していなくても、2種以上の合金及び/又は金属を併用することにより、本発明の蛍光体を製造することができる。
例えば、抵抗加熱法、電子ビーム法、アーク融解法、高周波誘導加熱法(以下、「高周波融解法」と称する場合がある。)等を用いることができる。また、これらの方法を2種以上任意に組み合わせて融解することも可能である。
ただし、特に、Siと2価の金属元素M2としてアルカリ土類金属元素を含む蛍光体原料用合金を製造する場合、次の点に留意することが好ましい。
アーク融解・電子ビーム融解の場合は、以下の手順で融解を行う。
i)Si金属又はSiを含む合金を電子ビームあるいはアーク放電により融解する。
ii)次いで間接加熱によりアルカリ土類金属を融解し、Siとアルカリ土類金属とを含む合金を得る。
ここで、Siを含む溶湯にアルカリ土類金属が溶け込んだ後、電子ビームあるいはアーク放電により加熱・攪拌して混合を促進しても良い。
アルカリ土類金属元素を含む合金は酸素との反応性が高いため、大気中ではなく真空あるいは不活性ガス中で融解する必要がある。このような条件では通常、高周波融解法が好ましい。しかしながら、Siは半導体であり、高周波を用いた誘導加熱による融解が困難である。例えば、アルミニウムの20℃における比抵抗率は2.8×10−8Ω・mであるのに対し、半導体用多結晶Siの比抵抗率は105Ω・m以上である。このように比抵抗率が大きいものを直接高周波融解することは困難であるため、一般に導電性のサセプタを用い、熱伝導や放射によりSiに熱移動を行って融解する。
また、サセプタの材質は、原料の融解が可能であれば制限はなく、黒鉛、モリブデン、炭化珪素などが一般に用いられる。しかし、これらは、非常に高価であり、また、アルカリ土類金属と反応しやすいという問題点がある。一方、アルカリ土類金属を融解可能な坩堝(アルミナ、カルシアなど)は絶縁体であり、サセプタとして使用することが難しい。従って、アルカリ土類金属とSi金属とを坩堝に仕込んで高周波融解するにあたり、公知の導電性の坩堝(黒鉛など)をサセプタとして使用して、間接的な加熱によりSi金属とアルカリ土類金属とを同時に融解することは困難である。
i)Si金属を導電性の坩堝を使用して間接加熱により融解する。
ii)次に、絶縁性の坩堝を使用して、アルカリ土類金属を融解することにより、Siとアルカリ土類金属元素とを含む合金を得る。
i)Si金属と金属M(例えばAl、Ga)を導電性の坩堝を使用して間接加熱により融解し、導電性の合金(母合金)を得る。
ii)次いで、アルカリ土類金属耐性坩堝を使用して、i)の母合金を融解させた後、アルカリ土類金属を高周波により融解させることにより、Siとアルカリ土類金属元素とを含む合金を得る。
Siと2価の金属元素M2以外の金属Mとの母合金を用いる場合、その組成には特に制限はないが、母合金が導電性を有していることが好ましい。この場合、Siと金属Mとの混合割合(モル比)は、Siのモル数を1とした場合に、金属Mが、通常0.01以上、5以下の範囲となるようにして、アルカリ土類金属元素の沸点よりも融点の低い母合金を製造することが好ましい。
なお、Siを含む母合金に、さらにSi金属を加えることもできる。
付活元素M1を均一に分散させるため、また、付活元素M1の添加量は少量であるため、Si金属を融解させた後に付活元素M1の原料金属を融解させることが好ましい。
(1) Siと3価の金属元素M3との母合金を製造する。この際、好ましくはSiと3価の金属元素M3とは、一般式[3]におけるSi:M3比で合金化する。
(2) (1)の母合金を融解させた後、Srを融解させる。
(3) その後、Sr以外の2価の金属元素、付活元素M1を融解させる。
また、原料の融解時の雰囲気は蛍光体原料用合金が得られる限り任意であるが、不活性ガス雰囲気が好ましく、中でもアルゴン雰囲気が好ましい。なお、不活性ガスは1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、原料の融解時の圧力は蛍光体原料用合金が得られる限り任意であるが、1×103Pa以上が好ましく、1×105Pa以下が好ましい。更に、安全性の面から、大気圧以下で行なうことが望ましい。
原料の融解により蛍光体原料用合金が得られる。この蛍光体原料用合金は通常は合金溶湯として得られるが、この合金溶湯から直接蛍光体を製造するには技術的課題が多く存在する。そのため、この合金溶湯を金型に注入して成型する鋳造工程を経て、凝固体(以下適宜、「合金塊」という)を得ることが好ましい。
加熱工程に先立ち、蛍光体原料用合金は、所望の粒径の粉末状にすることが好ましい。そこで、鋳造工程で得られた合金塊は、次いで粉砕することにより、所望の粒径、粒度分布を有する蛍光体原料用合金粉末(以下、単に「合金粉末」と称す場合がある。)とすることが好ましい(粉砕工程)。粉砕方法に特に制限はないが、例えば、乾式法や、エチレングリコール、ヘキサン、アセトン等の有機溶媒を用いる湿式法で行うことが可能である。
この粉砕工程は、必要に応じて、粗粉砕工程、中粉砕工程、微粉砕工程等の複数の工程に分けてもよい。この場合、全粉砕工程を同じ装置を用いて粉砕することもできるが、工程によって使用する装置を変えてもよい。
なお、粉砕工程中に合金粉末の温度が上がらないように必要に応じて冷却してもよい。
上述したようにして得られた合金粉末は、例えば、バイブレーティングスクリーン、シフターなどの網目を使用した篩い分け装置;エアセパレータ等の慣性分級装置;サイクロン等の遠心分離機などを使用して、前述の所望の重量メジアン径D50及び粒度分布に調整してから、これ以降の工程に供することが好ましい(分級工程)。
なお、粒度分布の調整においては、粗粒子を分級し、粉砕機にリサイクルすることが好ましく、分級及び/又はリサイクルが連続的であることがさらに好ましい。
本発明では、後述の窒化処理工程において、窒化対象である蛍光体原料用合金(ここで、蛍光体原料用合金は、粉末状であっても塊状であってもよいが、粉末状であることが好ましい。)等を、窒化物又は酸窒化物の存在下で窒化処理を行うことを特徴とする。ここでは、窒化処理工程について説明する前に、前記窒化物又は酸窒化物について説明する。
本発明では、蛍光体原料用合金、及び前述の原料窒化物を含む蛍光体原料を、窒素含有雰囲気中で加熱することにより窒化する(窒化処理工程)。
ここで、前記蛍光体原料用合金の全部又は一部として、下記式[6]で表される窒素含有率が1重量%以上、好ましくは2重量%以上になるまで予め窒化した、窒素含有合金や、例えば、ガスアトマイズ法によって得ることができる、安息角が45度以下である蛍光体原料用合金粉末を用いてもよい。
窒素含有率(重量%)=(窒素含有量/窒素含有合金の重量)×100 …[6]
即ち、まず、蛍光体原料を焼成容器に充填する。ここで使用する焼成容器の材質は本発明の製造方法の効果が得られる限り任意であるが、例えば、窒化ホウ素、窒化珪素、炭素、窒化アルミニウム、タングステン等が挙げられる。中でも、窒化ホウ素が耐食性に優れることから好ましい。なお、前記の材質は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、加熱開始前に、焼成装置内に窒素を含むガスを流通して系内を十分にこの窒素含有ガスで置換することが好ましい。必要に応じて、系内を真空排気した後、窒素含有ガスを流通しても良い。
温度変化(℃/分)=時刻T分での温度−時刻(T−1)分での温度 …[B]
(蛍光体原料の質量)/{(焼成容器の質量)+(蛍光体原料の質量)} …[A]
蛍光体原料の質量(g)×比熱/
{(焼成容器の質量(g)×比熱)+(蛍光体原料の質量(g)×比熱)} …[A']
一方で、蛍光体、特に窒化物蛍光体の合成は、高温高圧下で反応を行なうため、通常は高価な反応装置を使用することになる。そのため、一回あたりの合金粉末の充填量を増やすことがコスト低減のためには望まれる。
なお、前記の融点より100℃低い温度から融点より30℃低い温度までの温度域の温度とは、窒化処理の際の炉内温度、即ち、焼成装置の設定温度をさす。
窒化処理工程により得られた蛍光体は、必要に応じて再加熱工程を行ない、再度、加熱処理(再加熱処理)をすることにより粒子成長させても良い。これにより、粒子が成長し、蛍光体が高い発光を得ることが可能となる等、蛍光体の特性が向上する場合がある。
得られた蛍光体は、必要に応じて、分散工程、分級工程、洗浄工程、乾燥工程等の後処理工程を行なってから各種用途に用いてもよい。
分散工程では、窒化工程中の粒子成長、焼結などにより凝集している蛍光体に機械的な力を加え、解砕する。例えば、ジェットミルなどの気流による解砕や、ボールミル、ビーズミル等のメディアによる解砕などの方法が使用できる。
上記の手法により分散された蛍光体の粉末は、分級工程を行なうことにより所望の粒度分布に調整できる。分級には、例えば、バイブレーティングスクリーン、シフター等の網目を使用した篩い分け装置、エアセパレータ、水簸装置等の慣性分級装置や、サイクロン等の遠心分級機を使用することができる。
洗浄工程では、蛍光体を、例えばジョークラッシャー、スタンプミル、ハンマーミル等で粗粉砕した後、中性又は酸性の溶液(以下、「洗浄媒」と称する場合がある。)を用いて洗浄する。
ここで用いる中性の溶液としては、水を用いることが好ましい。使用可能な水の種類は、特に制限はないが、脱塩水又は蒸留水が好ましい。用いる水の電気伝導度は、通常0.0064mS/m以上、また、通常1mS/m以下、好ましくは0.5mS/m以下である。また、水の温度は、通常、室温(25℃程度)が好ましいが、好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上、また、好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下の温水又は熱水を用いることにより、目的とする蛍光体を得るための洗浄回数を低減することも可能である。
また、洗浄媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で行なってもよい。
撹拌時間は、蛍光体と上述のような洗浄媒とを十分に接触させることができるような時間であれば良く、通常1分以上、また、通常1時間以下である。
また、複数回の洗浄工程を行なう場合、洗浄工程の間に前述の粉砕工程や分級工程を行なっても良い。
即ち、洗浄後の蛍光体を、必要に応じて乾式ボールミル等で解砕ないし粉砕し、篩又は水簸により分級を行なって所望の重量メジアン径に整粒し、その後、当該蛍光体の10重量倍の水中で所定時間、例えば10分間撹拌して分散させた後、1時間静置することにより、水よりも比重の重い蛍光体粒子を自然沈降させる。このときの上澄み液の電気伝導度を測定し、その電気伝導度が、通常50mS/m以下、好ましくは10mS/m以下、より好ましくは5mS/m以下となるまで、必要に応じて上述の洗浄操作を繰り返す。
(1)結晶性の悪い窒化物等が加水分解して、例えばSr(OH)2などの水酸化物となり、水中に溶け出す。温水、あるいは希薄な酸で洗浄すると、これらが効率よく除去され、電気伝導度が低下する。一方で、洗浄媒の酸濃度が高過ぎたり、酸性の溶液にさらす時間が長過ぎたりすると、母体の蛍光体自体が分解する場合がある。
(2)前述の窒化処理工程において加熱時に使用する窒化ホウ素(BN)製ルツボから混入したホウ素が、水溶性のホウ素窒素−アルカリ土類化合物を形成して蛍光体に混入するが、上記洗浄によりこれが分解され、除去される。
上記洗浄後は、蛍光体を付着水分がなくなるまで乾燥させて、使用に供することができる。具体的な操作の例を挙げると、洗浄を終了した蛍光体スラリーを遠心分離機等で脱水し、得られた脱水ケーキを乾燥用トレイに充填すればよい。その後、100℃〜200℃の温度範囲で含水量が0.1重量%以下となるまで乾燥する。得られた乾燥ケーキを篩等に通し、軽く解砕し、蛍光体を得る。
例えば、本発明の製造方法により得られる蛍光体(以下、「本発明の蛍光体」と称する場合がある。)は、以下のような特性を有する。
本発明の蛍光体の発光色は、化学組成等を調整することにより、青色、青緑色、緑色、黄緑色、黄色、橙色、赤色等、所望の発光色とすることができる。
例えば、本発明の蛍光体が、前記のSr置換量が多い蛍光体であり、かつ、付活元素M1としてEuを含有する場合、橙色ないし赤色蛍光体としての用途に鑑みて、ピーク波長465nmの光で励起した場合における発光スペクトルを測定した場合に、以下の特徴を有することが好ましい。
本発明の蛍光体は、その重量メジアン径D50が、通常3μm以上、中でも5μm以上、また、通常30μm以下、中でも20μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径D50が小さすぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集してしまう傾向があり好ましくない。一方、重量メジアン径D50が大きすぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向があり好ましくない。
なお、本発明における蛍光体の重量メジアン径D50は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置等の装置を用いて測定することができる。
本発明の蛍光体は、温度特性にも優れるものである。具体的には、波長455nmにピークを有する光を照射した場合における25℃での発光スペクトル図中の発光ピーク強度値に対する150℃での発光スペクトル図中の発光ピーク強度値の割合が、通常55%以上であり、好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。
また、通常の蛍光体は温度上昇と共に発光強度が低下するので、該割合が100%を越えることは考えられにくいが、何らかの理由により100%を超えることがあっても良い。ただし150%を超えるようであれば、温度変化により色ずれを起こす傾向となる。
本発明の蛍光体は、その内部量子効率が高いほど好ましい。その値は、通常0.5以上、好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上である。内部量子効率が低いと発光効率が低下する傾向にあり、好ましくない。
後述の各実施例及び各比較例において、各種の評価は以下の手法で行った。
発光スペクトルは、励起光源として150Wキセノンランプを、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)用いて測定した。励起光源からの光を焦点距離が10cmである回折格子分光器に通し、波長450nm〜475nmの励起光のみを光ファイバーを通じて蛍光体に照射した。励起光の照射により蛍光体から発生した光を焦点距離が25cmである回折格子分光器により分光し、300nm以上800nm以下の波長範囲においてスペクトル測定装置により各波長の発光強度を測定し、パーソナルコンピュータによる感度補正等の信号処理を経て発光スペクトルを得た。なお、測定時には、受光側分光器のスリット幅を1nmに設定して測定を行なった。
発光ピーク波長は、得られた発光スペクトルから読み取った。
また、発光ピーク強度は、参考例2の蛍光体の発光ピーク強度を基準とした相対値で表した。
また、JIS Z8724に準拠して算出したXYZ表色系における刺激値Yから、後述する参考例2における蛍光体の刺激値Yの値を100%とした相対輝度を算出した。なお、輝度は、励起青色光をカットして測定した。
ICP発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry;以下「ICP法」と称する場合がある。)により、ジョバイボン社製ICP化学分析装置「JY 38S」を使用して分析した。
(合金の製造)
金属元素組成比がAl:Si=1:1(モル比)となるように各原料金属を秤量し、黒鉛ルツボに充填し、高周波誘導式溶融炉を用いてアルゴン雰囲気下で原料金属を溶融したその後、ルツボから金型へ注湯して凝固させ、金属元素組成比がAl:Si=1:1である合金(母合金)を得た。
板状合金の中心部 Eu:Sr:Ca:Al:Si=0.009:0.782:0.212:1:0.986、
板状合金の端面 Eu:Sr:Ca:Al:Si=0.009:0.756:0.210:1:0.962
であり、分析精度の範囲において実質的に同一組成であった。従って、Euを始め、各々の元素が均一に分布していると考えられた。
前述のようにして得られた合金粉末10gを窒化ホウ素製ルツボ(内径54mm)に充填し、熱間等方加圧装置(HIP)内にセットした。装置内を5×10−1Paまで真空排気した後、300℃に加熱し、300℃で真空排気を1時間継続した。その後、窒素を1MPaまで充填し、冷却した後、0.1MPaまで放圧し、再び1MPaまで窒素を充填する操作を二回繰り返した。加熱開始前に50MPaまで窒素を充填し、600℃/時で炉内温度950℃まで昇温し、同時に内圧を135MPaまで約50MPa/時で昇圧した。続いて、炉内温度950℃から1150℃まで66.7℃/時で昇温し、同時に内圧を135MPaから160MPaまで昇圧した。その後、炉内温度1850℃、内圧180MPaになるまで約600℃/時で昇温、昇圧し、この温度及び圧力で1時間保持した。得られた焼成物を粉砕、洗浄、分級して重量メジアン径D50が8μmである蛍光体を得た。
金属元素組成比がEu:Ca:Al:Si=0.008:0.992:1:1(モル比)となるように、Ca3N2(CERAC社製200mesh pass)、AlN(トクヤマ社製グレードF)、Si3N4(宇部興産社製SN−E10)、及びEu2O3(信越化学社製)をアルゴン雰囲気中で秤量し、アルミナ乳鉢を用いて混合した。得られた原料混合物を窒化ホウ素製ルツボへ充填し、雰囲気加熱炉中にセットした。装置内を1×10−2Paまで真空排気した後、排気を中止し、装置内へ窒素を0.1MPaまで充填した後、1600℃まで昇温し、1600℃で5時間保持した。得られた焼成物をアルミナ乳鉢で粉砕し、粒径100μm以下のものを採取して目的の複合窒化物蛍光体を得た。励起波長465nmにおける、この蛍光体の発光ピーク波長は648nmであった。以下、この蛍光体を「参考例2の蛍光体」と略記する。
参考例1で得られた合金粉末18.6gと参考例1の蛍光体10gを混合したものを窒化ホウ素製ルツボに充填したこと以外は、参考例1と同様の条件で窒化処理したところ、参考例1の蛍光体と同一構造の蛍光体が得られた。この蛍光体について、前述の方法で465nm励起による発光スペクトルを測定した。得られた発光スペクトルから、参考例2の蛍光体を100%として発光ピーク強度、及び輝度を求めた。その結果を表1に示す。
参考例1で得られた合金粉末22.9gと参考例1の蛍光体5.7gを混合したものを窒化ホウ素製ルツボに充填したこと以外は、参考例1と同様の条件で窒化処理したところ、参考例1の蛍光体と同一構造の蛍光体が得られた。この蛍光体について、前述の方法で465nm励起による発光スペクトルを測定した。得られた発光スペクトルから、参考例2の蛍光体を100%として発光ピーク強度、及び輝度を求めた。その結果を表1に示す。
参考例1で得られた合金粉末28.5gと参考例1の蛍光体15.3gを混合したものを窒化ホウ素製ルツボに充填したこと以外は、参考例1と同様の条件で窒化処理したところ、参考例1の蛍光体と同一構造の蛍光体が得られた。この蛍光体について、前述の方法で465nm励起による発光スペクトルを測定した。得られた発光スペクトルから、参考例2の蛍光体を100%として発光ピーク強度、及び輝度を求めた。その結果を表1に示す。
参考例1で得られた合金粉末25.7gと参考例1の蛍光体2.9gを混合したものを窒化ホウ素製ルツボに充填したこと以外は、参考例1と同様の条件で窒化処理したところ、参考例1の蛍光体と同一構造の蛍光体が得られた。この蛍光体について、前述の方法で465nm励起による発光スペクトルを測定した。得られた発光スペクトルから、参考例2の蛍光体を100%として発光ピーク強度、及び輝度を求めた。その結果を表1に示す。
参考例1で得られた合金粉末27.2gと参考例1の蛍光体1.4gを混合したものを窒化ホウ素製ルツボに充填したこと以外は、参考例1と同様の条件で窒化処理したところ、参考例1の蛍光体と同一構造の蛍光体が得られた。この蛍光体について、前述の方法で465nm励起による発光スペクトルを測定した。得られた発光スペクトルから、参考例2の蛍光体を100%として発光ピーク強度、及び輝度を求めた。その結果を表1に示す。
参考例1で得られた合金粉末18.6gを窒化ホウ素製ルツボに充填したこと以外は、参考例1と同様の条件で窒化処理を行った。得られた蛍光体について、前述の方法で465nm励起による発光スペクトルを測定した。得られた発光スペクトルから、参考例2の蛍光体を100%として発光ピーク強度、及び輝度を求めた。その結果を表1に示す。
参考例1で得られた合金粉末28.5gを窒化ホウ素製ルツボに充填したこと以外は、参考例1と同様の条件で、窒化処理を行ったところ、わずかに表面が赤色を帯びた黒色の塊が得られ、発光を示さなかった。
即ち、合金を原料として蛍光体を製造する場合、反応容器への充填量が多いと得られる蛍光体の発光特性が低下する傾向にあり(比較例1)、特に充填量が多い場合には、蛍光体が得られない場合がある(比較例2)。
これに対して、窒化物原料を共存させて窒化処理を行った場合には、合金の充填量が多くても発光特性に優れた蛍光体を得ることができる(実施例1〜5)。
Claims (11)
- 蛍光体を構成する金属元素を2種以上含有する合金と、前記蛍光体を構成する元素の複合窒化物であって、少なくともSiとSi以外の金属元素1種以上を含む窒化物と、を含む蛍光体原料を、窒素含有雰囲気下で加熱することを特徴とする窒化物を母体とする蛍光体の製造方法。
- 請求項1において、得られた蛍光体に含まれる酸素が5重量%以下であることを特徴とする窒化物を母体とする蛍光体の製造方法。
- 請求項1又は2において、前記複合窒化物が、賦活元素を含むことを特徴とする窒化物を母体とする蛍光体の製造方法。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、該蛍光体原料が前記複合窒化物を1重量%以上含有することを特徴とする窒化物を母体とする蛍光体の製造方法。
- 請求項1ないし4のいずれか1項において、該蛍光体が、少なくともSiを含む4価の金属元素M4と、Si以外の金属元素の1種以上とを含むことを特徴とする窒化物を母体とする蛍光体の製造方法。
- 請求項5において、該蛍光体が、付活元素M1と、2価の金属元素M2と、少なくともSiを含む4価の金属元素M4とを含むことを特徴とする窒化物を母体とする蛍光体の製造方法。
- 請求項6において、該蛍光体が、2価の金属元素M2としてアルカリ土類金属元素を含むことを特徴とする窒化物を母体とする蛍光体の製造方法。
- 請求項5ないし7のいずれか1項において、該蛍光体が、さらに3価の金属元素M3を含むことを特徴とする窒化物を母体とする蛍光体の製造方法。
- 請求項8において、付活元素M1がCr、Mn、Fe、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、2価の金属元素M2がMg、Ca、Sr、Ba、及びZnからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、3価の金属元素M3がAl、Ga、In、及びScからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、少なくともSiを含む4価の金属元素M4がSi、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfからなる群から選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする窒化物を母体とする蛍光体の製造方法。
- 請求項6ないし9のいずれか1項において、該蛍光体が、付活元素M1としてEu及び/又はCeを含むことを特徴とする窒化物を母体とする蛍光体の製造方法。
- 請求項9又は10において、2価の金属元素M2の50モル%以上がCa及び/又はSrであり、3価の金属元素M3の50モル%以上がAlであり、少なくともSiを含む4価の金属元素M4の50モル%以上がSiであることを特徴とする窒化物を母体とする蛍光体の製造方法。
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