JP7428465B2 - 赤色蛍光体及び発光装置 - Google Patents

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本発明は、LED(Light Emitting Diode)又はLD(Laser Diode)用の赤色蛍光体、及びこの赤色蛍光体を用いた発光装置に関する。より詳しくは、輝度の高い赤色蛍光体、並びに、当該赤色蛍光体を用いることによる輝度に優れた発光装置に関する。
白色LEDは、半導体発光素子と蛍光体との組み合わせにより疑似白色光を発光するデバイスであり、その代表的な例として、青色LEDとYAG黄色蛍光体の組み合わせが知られている。しかし、この方式の白色LEDは、その色度座標値としては白色領域に入るものの、赤色発光成分が不足しているために、照明用途では演色性が低く、液晶バックライトのような画像表示装置では色再現性が悪いという問題がある。そこで、不足している赤色発光成分を補うために、YAG蛍光体とともに、赤色を発光する窒化物又は酸窒化物蛍光体を併用することが提案されている(特許文献1)。
赤色を発光する窒化物蛍光体としては、CaAlSiN3結晶相と同一の結晶構造を有する無機化合物を母体結晶として光学活性な元素を付活したものが知られ、なかでもEu2+で付活したCaAlSiN3蛍光体は特に高輝度で発光するとされている(特許文献2)。また、当該文献には、Caの一部をSrで置換することにより、発光ピーク波長が短波長側にシフトした蛍光体が得られることが記載されている。このEu2+付活した(Sr,Ca)AlSiN3蛍光体は、CaAlSiN3窒化物蛍光体よりも発光波長が短く、視感度が高い領域のスペクトル成分が増えることから、高輝度白色LED用の赤色蛍光体として有効である。
近年は照明装置やバックライト装置の更なる高輝度化のため、蛍光体の高輝度化の検討も多くなされている。例えば2価のユーロピウム付活酸窒化物緑色系発光蛍光体であるβ型サイアロン蛍光体では、波長600nmで励起した場合の吸収率を制御することによって、優れた蛍光特性を発現できるといった知見がある(特許文献3)。
一方、これらの蛍光体を用いて作製された発光素子パッケージにおいても光の吸収の制御に関して検討されており、赤色蛍光体の青色励起光以外の光の吸収を最小化することでパッケージの特性を向上させられることが知られており、この際、青色励起光以外の光の波長の選び方として、パッケージ作製の際に組み合わせる赤色蛍光体以外の蛍光体の蛍光スペクトルに着目する検討がなされている(特許文献4、5、6)。すなわち、特許文献6の図2に示されるような黄色蛍光体の蛍光特性に依存して、その図3(b)に示されるような赤色蛍光体の吸収率を定めることが従来検討されてきた。
特開2004-71726号公報 国際公開第2005/052087号 国際公開第2011/083671号 特開2016-20486号公報 特開2012-109592号公報 特開2012-246462号公報
しかし上述した従来技術においては、赤色蛍光体を付活するユーロピウムの量を多くして輝度を高めようとしても、蛍光特性を維持できない問題があった。すなわち、従来技術では蛍光特性の担保と高い輝度との両立が難しいという問題を解決できていなかった。このため、従来技術に係る赤色蛍光体を使って白色LEDなどの発光装置を作成しようとすると、組み合わせる他の蛍光体の特性と赤色蛍光体の特性の相性を厳密に調整しないと充分な白色光が得られず、発光装置の製造上の課題となっていた。
このため当該技術分野では、安定して高い輝度が得られるような赤色蛍光体が、高輝度の発光装置を製造する上で希求されてきている。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、二種類の特定波長で励起したときの吸収率の差の値を制御すると、輝度に優れた赤色蛍光体となることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち本発明は、以下を提供できる。
(1)一般式:MAlSiN3(MはCa、Srから選ばれる1種以上の元素)で示され、M元素の一部がEu元素で置換されており、主結晶相がCaAlSiN3結晶相と同一の構造を有する蛍光体であって、波長455nmの励起光に対する吸収率をa%、波長700nmの励起光に対する吸収率をb%としたとき、a-b≧85.0%である蛍光体。
(2)Eu含有率が0.40~4.00wt%である上記(1)に記載の蛍光体。
(3)M元素が少なくともSrを含有する上記(1)又は(2)に記載の蛍光体。
(4)85.0%≦a-b≦99.0%である上記(1)乃至(3)に記載の蛍光体。
(5)上記(1)乃至(4)に記載の蛍光体と、発光素子を有する発光装置。
本発明の実施形態によれば、赤色蛍光体としての蛍光特性を保ちつつ、輝度の高いCaAlSiN3系窒化物赤色蛍光体を提供することができ、LED等の発光素子と組み合わせることで高輝度な発光装置を提供することができる。発光装置としては、例えば照明装置、バックライト装置、画像表示装置及び信号装置が挙げられる。また本実施形態に係る赤色蛍光体を使うと、特に白色LED装置を作成する上で、組み合わせる他の蛍光体の特性との相性問題が発生しにくいという効果も奏する。
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
本明細書においては、別段の断わりが無いかぎりは、数値範囲はその下限値と上限値を含む範囲である。
本発明の実施形態で提供されるのは、一般式:MAlSiN3(M=Ca、Srから選ばれる1種以上の元素)で示され、M元素の一部がEu元素で置換されており、主結晶相がCaAlSiN3結晶相と同一の構造を有する赤色蛍光体である。本明細書においては、「蛍光体」という文言は、製造者により製造される蛍光体の製品を含む概念である。本明細書において蛍光体の「製品」とは、流通の対象となる品物のことを指し、一般に蛍光体粒子を主とする粒子の集合体であり、光学特性に影響を与えない程度の異相や製造工程上で混入不可避の不純物を含んでいることがある。
一般にCaAlSiN3結晶の骨格構造は、(Si,Al)-N4正四面体が結合することにより構成され、その間隙にCa原子が位置したものである。Ca2+のサイトは2価の陽イオンでも置換可能であり、例えばSr2+でも置換可能である。このCa2+で代表される2価の陽イオンが占めるサイトの一部が発光中心として作用するEu2+で置換されると、赤色蛍光体として機能することになる。
主結晶相がCaAlSiN3結晶相と同一の結晶構造を有する無機化合物とは、粉末X線回折パターンが、CaAlSiN3結晶と同一の回折パターンが認められるものであり、CaサイトへのSrまたはEuの置換に伴い、ピークシフトするものを含む。また必ずしも単相である必要はなく、発光を阻害しない範囲で異相を含んでいても構わないが、異相の量は後述するように少ない方が好ましい。
本発明の実施形態に係る蛍光体は、波長455nmで励起した場合の吸収率(以下、「455nm吸収率」と略記する)をa%、波長700nmで励起した場合の吸収率(以下、「700nm吸収率」と略記する)をb%としたとき、a-b≧85.0%である必要がある。好ましい実施形態においては、85.0%≦a-b≦99.0%であってよく、より好ましくは87.0%≦a-b≦99.0%、さらに好ましくは90.0%≦a-b≦99.0%とすることができる。またある実施形態においては、a-bの値が87.0%≦a-b≦94.0%、または90.0%≦a-b≦94.0%の範囲であってもよい。a-bが85.0%未満であるということは、aの値が小さいもしくはbの値が大きいということであるが、aの値が小さいと発光中心として作用するEuの455nmの波長の吸収率が低く、またbの値が大きいと非発光吸収による発光の阻害が大きいため、いずれにしても十分な輝度が得られない。本発明者は、a-bの値が85.0%以上であるか否かが、MAlSiN3構造を有するEu2+付活蛍光体において輝度性能を左右することを見出し、本発明を完成させたものである。すなわち、a-bの値が85.0%以上であれば、優れた蛍光特性を呈する結晶構造を有する蛍光体が得られる。一方、a-bの値が85.0%未満の場合、結晶構造に歪みが生じて透明性が悪化する、もしくは発光を阻害するような異相の量が無視できないほど多くなる、といった問題が発生する。
またa-bの値を大きくするためにはaの値を大きくしていく必要があるが、aの値を大きくするためには単純にEu量を増やしていけば良いというわけではない。Euの量が過剰となると濃度消光として知られる損失現象が起こり逆に輝度が低下するからである。すなわち、蛍光体原料に含めるEuの仕込量を増やしていっても、輝度がそれに比例して高まるとは限らない。また蛍光体の用途にも依るが、a-bの値を過度に高くすることは、製造方法を徒に複雑にしてしまうことがある。そのため、より好ましい実施形態においては、濃度消光を起こさず、かつ非発光吸収を抑え、かつ製造方法を簡略化する観点から、赤色蛍光体を発光装置用途に適用させる上でa-bの最大値を99.0%としてもよい。
なお、bを700nm吸収率として定めるのは、以下の理由による。発光装置に使用可能なCaAlSiN3系窒化物蛍光体中に存在するEu2+が赤色光に変換できる波長の光は400nm~700nmであるため、これよりも長波長域に存在する吸収はEu2+の発光に関与しない吸収、つまり母体材料の発光を伴わない吸収となる。ここでCaAlSiN3系窒化物蛍光体において、700nm近傍にて、外部量子効率は低い一方で内部量子効率が高くなりやすいことに本発明者は着目した。波長700nmにおいて母体材料の発光を伴わない吸収が大きいと、内部量子効率が高いので発光にはつながらない光子の生成が増大し、かつエネルギーの浪費が激しくなって、蛍光体としての性能に悪影響を及ぼす。したがって、非発光吸収となる最短波長である700nmにおける吸収を小さくすることにより、赤色蛍光体自体の蛍光特性を保ちつつ輝度を高められる効果を奏することを本発明者は見出した。すなわち、組み合わせる他の蛍光体の特性に依存することなく、赤色蛍光体自体の特性であるaの値およびbの値に基づいて、蛍光特性の担保と高輝度の両立ができるような赤色蛍光体の構造を定めることができる。
700nmよりも長波長側での非発光吸収の割合を制御するには、CaAlSiN3系窒化物蛍光体の結晶性を高めたり、可視光を吸収する不純物や異相を低減したりすればよい。より具体的には、製造時の原料の仕込み比率や、焼成温度、焼成時間(保持時間)、および焼成雰囲気圧力などの焼成条件の設定、ひいては蛍光体の平均粒径などの各種パラメータの組み合わせによって、蛍光体の結晶性を高めかつ不純物や異相を低減することで、a-bの値を適切に調整可能である。
またaを455nm吸収率として定めるのは、455nmはCaAlSiN3系窒化物蛍光体における典型的な励起波長であり、その吸収率が蛍光体の輝度を評価する上で適切なパラメータとなるためである。
455nm吸収率(a%)は、455nmで励起した場合における450~465nmの波長範囲のスペクトルから励起光フォトン数(Qex)と励起反射光フォトン数(Qref)を算出し、a(%)=((Qex-Qref)/Qex)×100の式より求めたものである。同様に波長700nm(b%)は、700nmで励起した場合における695~710nmの波長範囲のスペクトルから励起光フォトン数(Q´ex)と励起反射光フォトン数(Q´ref)を算出し、b(%)=((Q´ex-Q´ref)/Q´ex)×100の式より求めたものである。
本発明の蛍光体のEu含有率は、0.40~4.00wt%であるのが好ましく、より好ましくは1.00~4.00wt%、さらに好ましくは1.60~3.00wt%とすることができる。Euは蛍光体の発光を担う原子、すなわち発光中心であるから、その含有率が極端に少ない(例えば0.40wt%未満である)と蛍光体としての機能を発揮できないおそれがある。しかしながらEuの含有率が高くなりすぎる(例えば4.00wt%超である)と、Eu原子間のエネルギー伝達による、蛍光体の濃度消光として知られる損失現象が起こるため、逆に蛍光体の輝度が低下する傾向が見られることがある。
本発明の蛍光体は、少なくともSrを含むことが好ましい。Srを含有すると、含有しないものに比べ、発光波長が短くなるため、視感度が高い領域のスペクトル成分が増えることから、高輝度白色LED用の赤色蛍光体として有効である。好ましい実施形態においては、蛍光体がCaとSrの両方を含むことができ、M元素中のSrの割合は特に規定されないが、35~45wt%であるのが好ましい。
本発明の赤色蛍光体の製造方法は、a-bの値を適切に得られる限りにおいて特に限定はなく、従来のCaAlSiN3系の蛍光体と同様の製造方法を用いつつ、a-bが適切に得られるように製造条件を調整して行うことができる。
各々の製造方法で製造されるサンプルの状態は、原料配合や焼成条件によって、粉体状、塊状、焼結体と様々であり、解砕、粉砕及び/又は分級操作を組み合わせて焼成物を用途に合わせたサイズの粉末にすることができる。例えばLED用蛍光体として好適に使用する場合には、蛍光体の平均粒径が5~35μmとなる様に調整するのが好ましい。平均粒径が大きすぎる(例えば35μm超である)と、白色LEDとして製造する際の封止樹脂への分散性が悪くなってしまい、輝度が低下し、また製造安定性も低くなる問題がありうる。また平均粒径が小さすぎる(例えば5μm未満である)と、外部量子効率が低下してしまう場合がある。なお本明細書において平均粒径とは、質量メジアン径(D50)のことを指す。質量メジアン径は例えば、JIS R1622:1995およびR1629:1997に準じて、レーザー回折散乱法で測定した累積分布曲線から得られる体積メジアン径から換算・算出することができる。
本発明の実施形態に係る蛍光体を製造するにあたっての焼成工程での焼成温度は、a-bの適切な値を得られるものであれば特には限定されないが、例えば1500℃以上2000℃以下、より好ましくは1700℃以上2000℃以下、さらに好ましくは1700℃以上1950℃以下の範囲とすることができる。焼成温度が低すぎる(例えば1500℃未満である)場合、原料の未反応残存量が多くなる問題が発生する場合がある。また焼成温度が高すぎる(例えば2000℃超である)場合には、主結晶構造(主相)が分解するおそれがある。
また当該焼成工程での焼成時間も、a-bの適切な値を得られるものであれば特には限定されないが、例えば1時間以上24時間以下の範囲、好ましくは4時間以上24時間以下の範囲とすることで、原料の未反応残存量を減らし、粒成長不足を少なくすることが可能である。
また当該焼成工程での焼成雰囲気の圧力も、a-bの適切な値を得られるものであれば特には限定されない。一般に雰囲気圧力が高いほど蛍光体の分解温度は高くなるが、工業的生産性を考慮すると1MPa未満であることが好ましい。
蛍光体の製造に当たっては、不純物を除去する目的で酸処理工程、結晶性を向上する目的でアニール処理工程などの後処理工程を更に行っても良い。
本発明の蛍光体は、蛍光体と発光素子を有する発光装置に使用することができる。特に350nm以上500nm以下の波長を含有する紫外光や可視光を励起源として照射することにより、波長605nm以上650nm以下にピークを有する発光をするため、紫外LED又は青色LEDといった発光光源と組み合わせることにより、あるいはさらに緑~黄色蛍光体及び/又は青色蛍光体と組み合わせることにより、容易に白色光など目的の発光色が得られる。
本発明をさらに実施例を示し、詳細に説明する。但し、本発明は実施例に示した内容のみに限定されるものではない。
(製造方法)
実施例1の蛍光体の原料として、α型窒化ケイ素粉末(Si34、SN-E10グレード、宇部興産社製)65.6g、窒化アルミニウム粉末(AlN、Eグレード、トクヤマ社製)57.6g、酸化ユーロピウム粉末(Eu23、RUグレード、信越化学工業社製)4.9gを予め予備混合し、次いで水分が1質量ppm以下、酸素分が1質量ppm以下である窒素雰囲気に保持したグローブボックス中で予備混合した混合物に窒化カルシウム粉末(Ca32、Materion社製)9.0g、窒化ストロンチウム粉末(Sr32、純度2N、高純度化学研究所社製)112.9gをさらに加えて乾式混合し、原料混合粉末を得た。この原料混合粉末250.0gを、タンタル製の蓋付き容器に充填した。
原料混合粉体を充填した容器をグローブボックスから取出し、カーボンヒーターの電気炉に速やかにセットし、炉内を0.1Pa以下まで十分に真空排気した。真空排気したまま、加熱を開始し、600℃で窒素ガスを導入し、炉内雰囲気圧力を0.9MPaとした。ガス導入後1950℃まで昇温し、保持温度を1950℃とし8時間の焼成を行った。
冷却後、炉から回収した試料は赤色の塊状物であり、この塊状物を乳鉢で解砕し、目開き75μmの篩を全通させた。
前記篩を通過した粉末を塩酸と水で洗浄し、乾燥させて実施例1の蛍光体を得た。
(結晶構造の確認)
得られた実施例1の蛍光体は、X線回折装置(株式会社リガク製、UltimaIV)を用い、CuKα線を用いた粉末X線回折パターンによりその結晶構造を確認した。この結果、得られた実施例1の蛍光体の粉末X線回折パターンには、CaAlSiN3結晶と同一の回折パターンが認められ、CaAlSiN3結晶相と同一の結晶構造を有する化合物のみが得られていることが分かった。
(Euの定量分析)
得られた実施例1の蛍光体中のEu含有率は、加圧酸分解法により前記蛍光体を溶解させた後、ICP発光分光分析装置(株式会社リガク製、CIROS-120)を用いて定量分析して求めた。その結果、実施例1の蛍光体中のEu含有率は1.61wt%であった。
(吸収率の評価)
蛍光体の吸収率は次の様に測定を行った。まず、反射率が99%の標準反射板(Labsphere社製、CSRT-99-020、スペクトラロン)を積分球に取り付け、この積分球に、発光光源(Xeランプ)から455nmの波長に分光した単色光を光ファイバーを用いて導入した。この単色光を励起源とした励起スペクトルを分光光度計(大塚電子社製、MCPD-7000)を用いて測定した。その際、450~465nmの波長範囲のスペクトルから励起光フォトン数(Qex)を算出した。次いで、標準反射板の代わりに凹部のセルに表面が平滑になる様に充填した蛍光体をセットし、蛍光体の蛍光スペクトルを測定、得られたスペクトルデータから励起反射光フォトン数(Qref)を算出した。得られた二種類のフォトン数から、455nm吸収率 a(=((Qex-Qref)/Qex)×100)を求めた。さらに、同様な方法で波長700nmの励起光での励起スペクトル、蛍光スペクトルを測定し、励起光フォトン数(Q´ex)と励起反射光フォトン数(Q´ref)を算出した。この際、励起光フォトン数(Q´ex)は695~710nmの波長範囲のスペクトルから算出した。得られた二種類のフォトン数から、700nm吸収率 b(=((Q´ex-Q´ref)/Q´ex)×100)を求めた。実施例1の蛍光体の波長455nm吸収率aは、96.4%、波長700nm吸収率bは、4.6%であった。
(蛍光強度の評価)
蛍光強度は、ローダミンBと副標準光源により校正した分光蛍光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、F-7000)を用いて評価した。光度計に付属の固体試料ホルダーを使用し、励起波長455nmでの蛍光スペクトルを求めた。この結果、実施例1の蛍光体が発した蛍光スペクトルのピーク波長は630nmであった。なお蛍光体の輝度は、測定装置や条件によって変化するため、実施例1の蛍光強度の値を100%として、他の実施例、比較例の評価基準とした。本発明では、蛍光強度の値が90%以上であれば、本発明の目的である輝度を満たすと判定した。
実施例1の蛍光体の焼成温度、Eu含有率、蛍光ピーク波長、455nm吸収率a、700nm吸収率b、その差分a-bの値、蛍光スペクトルの発光強度を以下に示す表1にまとめた。
Figure 0007428465000001
(実施例5)
実施例5は、実施例1と同じ原料粉末を使用し、Si34を62.1g、Ca32を2.8g、Sr32を120.0g、AlNを54.7g、Eu23を10.3gの比率で配合したこと以外は実施例1と同じ条件で作製した。
(比較例1)
比較例1は、実施例1と同じ原料粉末を使用し、Si34を64.7g、Ca32を3.2g、Sr32を124.4g、AlNを56.7g、Eu23を1.0gの比率で配合した。さらに焼成工程でガス導入後1850℃まで昇温し、保持温度を1850℃とし8時間の焼成を行ったこと以外は実施例1と同じ条件で作製した。
(比較例2)
比較例2は、実施例1と同じ原料粉末を使用し、Si34を63.1g、Ca32を8.7g、Sr32を108.6g、AlNを55.3g、Eu23を14.3gの比率で配合したこと以外は実施例1と同じ条件で作製した。
(実施例2~4、比較例3)
実施例2~4は、焼成工程でガス導入後、それぞれ1900℃、1850℃、1750℃まで昇温し、保持温度をそれぞれ1900℃、1850℃、1750℃とし8時間の焼成を行ったこと、比較例3では、焼成工程でガス導入後1650℃まで昇温し、保持温度を1650℃とし8時間の焼成を行ったこと以外は実施例1と同じ条件で作製した。
実施例2~4、比較例1~3で得られた蛍光体をX線回折装置にて結晶構造を確認したところ、いずれもCaAlSiN3結晶相と同一の結晶構造を有する化合物が得られていることが分かった。また実施例2~4、及び比較例1~3で得られた蛍光体のEu含有率、蛍光ピーク波長、455nm吸収率a、700nm吸収率b、その差分a-b、発光強度を、実施例1と同様に測定し、その結果を表1に示した。なお、同じ配合比でEu源を加えた実施例1~4で、焼成温度が高くなるにつれてEu含有率が小さくなっていたことについては、焼成時にEu23等として揮発した量が増加し、その結果得られた蛍光体中のEu含有率が低下したためと考えられる。この結果からは、a-bの制御がEu量の多寡のみで決まるわけではないことが裏づけられる。すなわち本明細書に言うa-bの値は、結晶構造の歪みの程度や異相の量、異相との混合状態、不純物の多寡といった要素を含む、赤色蛍光体の製品としての構成を反映する指標であると言うこともできる。すなわち本発明の実施形態に係る赤色蛍光体は、そのa-bの値から、従来技術に係る赤色蛍光体とは製品としての構成が異なるものであると考えることができる。
表1に示される実施例、比較例の結果から、a-bを特定の範囲に規定した本発明の赤色蛍光体は、蛍光強度が相対的に高いことが判る。
本発明のCaAlSiN3系の蛍光体は、青色光により励起され、高輝度の赤色発光を示すことから、青色光を光源とする白色LED用蛍光体として好適に使用できるものであり、照明器具、画像表示装置などの発光装置に好適に使用できる。

Claims (3)

  1. 一般式:MAlSiN3(MはCa、Srから選ばれる1種以上の元素)で示され、M元素の一部がEu元素で置換されており、主結晶相がCaAlSiN3結晶相と同一の構造を有する蛍光体であって、波長455nmの励起光に対する吸収率をa%、波長700nmの励起光に対する吸収率をb%としたとき、91.8%≦a-b≦93.8%であり、
    Eu含有率が1.61~2.81wt%である蛍光体。
  2. M元素が少なくともSrを含有する請求項1に記載の蛍光体。
  3. 請求項1又は2に記載の蛍光体と、発光素子を有する発光装置。
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