JP5181290B2 - 既存杭を利用した新設構造物の構造および既存杭を利用した新設構造物の構築方法 - Google Patents
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しかし、既存杭を撤去して新設杭を施工する方法では、既存杭の撤去にかかるコストや労力が大きく、特に、既存杭が場所打ちコンクリート杭の場合には撤去に莫大なコストや労力がかかる。また、既存杭周辺の地盤は既存杭が引き抜かれた後に緩んでしまうことがあった。また、既存杭を地盤中に残存させたまま新設杭を施工する方法では、新設杭の設置位置に制約があるため、新設杭の施工が困難であったり、新設構造物の設計に制約が出ることがあった。
特許文献1によれば、既存構造物を支持する既存杭を残して既存構造物を撤去し、既存杭の上に厚い鉄筋コンクリートスラブなどのマット基礎を設けて、マット基礎の上に新設構造物を構築する方法が提案されている。特許文献1による方法では、新設構造物の鉛直荷重を既存杭およびマット基礎によって十分に支持できると共に、既存杭を再利用することにより、既存杭の撤去や埋め戻しが不要になり、新設杭の施工は必要に応じて行えばよいので、新設構造物の構築にかかるコストや労力を軽減させることができる。
また、特許文献2によれば、既存杭を避けて新設杭を打設し、既存杭と新設杭との上にマット基礎を設けて、マット基礎の上に新設建物を構築する方法が提案されている。支持地盤に達している既存杭はマット基礎とは定着させずに、マット基礎から受ける鉛直力を主に負担し、新設杭はマット基礎と剛接合により一体化させて、マット基礎から受ける地震水平力を負担しているので、新設杭は水平力に抵抗できる長さであればよく、必ずしも支持地盤に達している必要はない。特許文献2による方法では、既存杭を再利用できて、新設杭の施工も軽減できるので、新設構造物の構築にかかるコストや労力を軽減させることができる。
既存構造物が存在している状態では、実際の既存杭の状況や設置位置が図面と一致しているかを確認することができない。そして、既存構造物の撤去後に、例えば、既存杭の劣化などによって既存杭が杭基礎として耐力が不十分であることや、既存杭の設置位置が図面と異なることなどが判明すると、新設構造物自体の設計変更を行わなければならないこともあり、新設構造物の設計や工期、コストなどに変更が生じてしまうという問題があった。
また、本発明に係る既存杭を利用した新設構造物の構築方法では、既存構造物を支持する既存杭を残して既存構造物を撤去し、既存杭の上端部の周辺の地盤を壺掘りして既存杭の上端部を切除し、壺掘りされた地盤の周辺の地盤よりも剛性の低い材料で構成された埋め戻し材を配設した地盤の上に新設構造物を構築することを特徴とする。
本発明では、既存杭の上端部の周辺の地盤を壺掘りして既存杭の上端部を切除し、埋め戻し材を配設した地盤に新設構造物が構築されることにより、新設構造物は既存杭を杭基礎とする構造物でなく、直接基礎構造物として既存杭の残存した地盤に構築することができる。
また、既存杭は上端部のみ撤去し、再利用するので既存杭の撤去にかかるコストや労力を低減させることができる。
本発明では、既存杭が残存する地盤に新設の杭または地盤改良体を配設することにより、地盤の支持力が足りない場合にも地盤の補強ができて、新設構造物の沈下量を均等にさせることができる。新設の杭または地盤改良体は、地盤の既存杭の残存する領域に既存杭に混ざって配設されてもよく、また、地盤の既存杭の残存する領域を外れた新設構造物の下に配設されてもよく、地盤の既存杭の残存する領域および領域外の新設構造物の下に配設してもよい。
図1は既存杭に支持された既存構造物の一例を示す図、図2は既存杭の切除を説明する図、図3は既存杭の切除した部分の埋め戻しを説明する図、図4は本発明の第一の実施の形態による既存杭を利用した新設構造物の一例を示す図である。
切除される既存杭12の上端部12aの長さLは、既存杭12の杭径Dの1〜3倍ほどの長さとする。
埋め戻し材2は、壺掘りされた地盤Gの周辺の地盤Gよりも剛性が低い材料とし、例えば砂、粘土、原位置発生土、流動化処理土などを採用する。
既存杭12の配設されている複合地盤G1を、既存杭12とその周囲の原地盤とからなる所定面積の単位周期構造体の集合体とし、単位周期構造体は剛性の異なる原地盤と既存杭12との複合体で、複合体全体の剛性を等価とみなせる剛性(以下、これを等価剛性という)を有する単一の均質体とみなす。また、単位周期構造体の面積に対する既存杭12の面積の比を改良率とする。
図1に示す既存構造物11を既存杭12を残して撤去し、図2に示すように既存杭12の上端部12aの周辺の地盤Gを壺掘りし、上端部12aをはつって切除する。そして、図3に示すように、壺掘りされた地盤Gに埋め戻し材2を配設して複合地盤G1を形成する。そして、図4に示すように、この複合地盤G1の上に新設構造物10を構築する。
また、既存杭12は上端部12aのみを切除し他は再利用するので、既存杭12の撤去にかかる労力やコストを軽減することができる。
また、複合地盤G1の沈下量の予測算定を等価剛性評価法に基づいて行うので、沈下量を容易に算定できて、複合地盤G1を均質な地盤とみなして新設構造物10を設計することができる。
図5は、本発明の第二の実施の形態による既存杭を利用した新設構造物の一例を示す図である。
図5に示すように、新設構造物20は、例えば鉄筋コンクリートなどの構造物で、既存杭12の残存する領域より広い範囲の地盤Gに接地して構築される。第一の実施の形態と同様に、新設構造物20が構築される地盤Gの支持力や沈下量が算定されて、地盤Gの支持力が不足している部分や、沈下量にばらつきが生じる部分に新設杭3を配設して複合地盤G2を形成する。
図6は既存杭の残存する地盤と新設構造物とを示す平面図および断面図、図7は、図6に示すA−A,B−B、C−C測線における新設構造物の基礎スラブおよび階ごとの沈下量を示す図である。
既存杭12は、図示しない既存構造物を支持していた場所打ちコンクリート杭で、杭径Dは1.0mである。切除される既存杭12の上端部12a長さLは1.0mで、既存杭12の上端部12aが切除された部分には埋め戻し材2が配設されている。
新設構造物30を構築するにあたり、複合地盤G1及び原地盤G3の沈下量および支持力を算定し、新設の杭や地盤改良体の打ち増しは必要ないと判断した。
また、上記の第二の実施の形態では、地盤Gの既存杭12が残存する領域の内外に新設杭3を配設して、この地盤Gに新設構造物20を構築しているが、地盤Gの既存杭12が残存する領域内に新設杭3を配設して、この領域内に新設構造物を構築してもよく、また、新設杭3を配設せずに地盤Gの既存杭12が残存する領域の内外にわたって新設構造物を構築してもよい。
要は、本発明において所期の機能が得られればよいのである。
3 新設杭
10 新設構造物
11 既存構造物
12 既存杭
G 地盤
Claims (3)
- 既存構造物を支持する既存杭を残して前記既存構造物を撤去し、前記既存杭の残存する地盤の上に構築される新設構造物の構造であって、
前記既存杭の上端部の周辺の地盤が壺掘りされて前記既存杭の上端部が切除され、埋め戻し材が配設された地盤の上部に前記新設構造物が構築され、
前記埋め戻し材は壺掘りされた前記地盤の周辺の地盤よりも剛性の低い材料であることを特徴とする既存杭を利用した新設構造物の構造。 - 前記既存杭が残存する地盤に新設の杭または地盤改良体が配設されることを特徴とする請求項1に記載の既存杭を利用した新設構造物の構造。
- 既存構造物を支持する既存杭を残して前記既存構造物を撤去し、前記既存杭の上端部の周辺の地盤を壺掘りして前記既存杭の上端部を切除し、壺掘りされた前記地盤の周辺の地盤よりも剛性の低い材料で構成された埋め戻し材を配設した地盤の上に新設構造物を構築することを特徴とする既存杭を利用した新設構造物の構築方法。
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