JP6130139B2 - 耐圧版を有するケーソン構造物及びその構築方法 - Google Patents
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即ち、本発明の一つの局面によるケーソン工法は、沈設によりケーソンを設置するケーソン工法であって、ケーソンの沈設に先行して、ケーソンを支持するための支持杭を地盤に設置するステップと、ケーソンの底版で区画された圧気状態の作業室内を掘削しつつケーソンを沈設するステップと、作業室内において、作業室の上面の近傍に第1の鉄筋を、下面の近傍に第2の鉄筋を、それぞれ略水平方向に延在するように配筋するステップと、作業室内にコンクリートを打設することにより、第1及び第2の鉄筋とコンクリートを有し作業室の内面により規定される耐圧版を構築するステップと、を有するケーソン工法である。
また、本発明の更に別の局面によるケーソン工法は、支持杭の芯ずれの度合いに応じて、第1及び第2の鉄筋の少なくとも一方の強度及び配筋量の少なくとも一方を変更するステップを更に有する。
このような構成によれば、ケーソンを沈下させたとき等に支持杭の芯ずれが判明した場合に、芯ずれの度合いに応じて、第1及び第2の鉄筋の少なくとも一方の強度及び配筋量の少なくとも一方を変更することで、曲げモーメントの変化に耐える強度を有する耐圧版を構築することができる。このように、ケーソンを既に沈下させた段階であっても、耐圧版の強度を変更することで曲げモーメントの変化に対応できるため、沈下させたケーソンについては何ら変更する必要がない。
このような構成とすることで、せん断補強材を有する耐圧版を構築することができるため、耐圧版は、せん断力に対しても、より大きな抵抗力を発揮することができる。更には、ケーソンを沈下させたとき等に支持杭の芯ずれが判明した場合に、せん断補強材の強度及び配設量の少なくとも一方を支持杭の芯ずれの度合いに応じて変更することができるので、芯ずれによるせん断力の変化に対応可能な強度を有する耐圧版を構築することができる。
このような構成によれば、ケーソンを沈下させたとき等に支持杭の芯ずれが判明した場合に、作業室内に打設するコンクリートの強度を支持杭の芯ずれの度合いに応じて変更することができるので、耐圧版がせん断力の変化に対応するのに必要な強度を有するようにすることができる。なお、必要に応じて、コンクリートとせん断補強材の両方の効果により、耐圧版が必要な強度を有するようにすることも可能である。
これにより、支持杭の芯ずれが判明した場合に、支持杭の芯ずれの度合いに応じてせん断補強材を配設する範囲を決定し、その範囲内にのみせん断補強材を配設することができるため、効率的である。
このような構成のケーソン構造物によれば、支持杭の芯ずれにより曲げモーメントが変化するような場合であっても、上端筋と下端筋の両方を有する耐圧版によって、曲げモーメントの変化に耐えることができる。更には、耐圧版により、地震時の杭頭曲げモーメントに対抗することも可能となる。
このような構成のケーソン構造物によれば、せん断補強材を有する耐圧版は、せん断力及びその変化に対しても、より大きな抵抗力を発揮することができる。
本実施形態のニューマチックケーソン工法は、地盤中にケーソンの一部又は全部を沈設するものであり、地盤中に設置した支持杭によりケーソンを支持する。本実施形態の工法においては、ケーソン1(図2参照)の沈設に先行して、図1に示すように、支持杭2を地盤中に設置する。本例においては、支持杭2は場所打ち杭とし、ケーソン1を支持する予定の位置に支持杭2の上端が来るように、支持杭2を構築する。支持杭2の設置又は構築の方法は公知であるため、詳細な説明は省略する。なお、支持杭2は場所打ち杭に限らず、SC杭、鋼管杭等の既製杭であっても良い。
その場合、「イ」の支持杭2と、ずれの方向と反対側の「ウ」で示す支持杭2との間隔が広がることとなる。そうすると、「イ」の支持杭2と「ウ」の支持杭2の間の範囲及びその周辺において、曲げモーメントが比較的大きく変化し、局所的には曲げモーメントが予定していたもの(つまり、芯ずれが無い場合に想定される曲げモーメント)よりも大きくなることが考えられる。そこで、「イ」の支持杭2と「ウ」の支持杭2との間の範囲及びその周辺の領域である、図中bで示す領域内の上部鉄筋3及び下部鉄筋4について、より強度の高い鉄筋(例えば、径の太い鉄筋)を用いたり、配筋量を増加させたりすることにより、曲げモーメントの変化に対応する。
次に、上記実施形態の変形例について、図6を参照しながら説明する。変形例によるニューマチックケーソン工法は、作業室11内にせん断補強材6を更に配設するものであり、当該工法により構築される耐圧版は、上記実施形態の耐圧版において、更にせん断補強材6を有したものとなる。こうすることにより、コンクリート5、鉄筋3、4、及び、せん断補強材6からなる耐圧版は、せん断力に対してもより大きな抵抗力を発揮することができる。そのため、支持杭2の芯ずれによって、上部構造におけるせん断力が変化する状況が生じたとしても、その変化に対抗し得る耐圧版とすることができる。
図6の例においては、せん断補強材6としてのせん断補強鉄筋を、作業室内11に略鉛直方向に設置した。せん断補強材6としてはこれに限らず、炭素繊維、鋼棒、鋼板等の鋼材その他のものを用いることができる。また、図6のようにせん断補強材6を略鉛直方向に設置するものに限らず、せん断補強材としての機能を発揮できる限り、斜め方向に設置するなど、設置方法は適宜選択可能である。
また、図5のフローチャートを用いて説明した方法と同様の手法により、支持杭2の芯ずれの度合いに応じて必要となるコンクリートの強度の変更の量及び変更の範囲を予めシミュレーションにより求めておき、支持杭2の芯ずれが判明した段階で、芯ずれの度合いに応じて、シミュレーション結果に基づき、コンクリートの強度を変更し、その変更の範囲を決定しても良い。
本発明は、前記各局面、前記実施形態及び前記各変形例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様も本発明に含まれる。
2 支持杭
3 上部鉄筋(上端筋)
4 下部鉄筋(下端筋)
5 コンクリート
6 せん断補強材
11 作業室
12 刃先
13 底版鉄筋
21 杭頭鉄筋
Claims (19)
- 沈設によりケーソンを設置するケーソン工法であって、
前記ケーソンの沈設に先行して、該ケーソンを支持するための支持杭を地盤に設置するステップと、
前記ケーソンの底版で区画された圧気状態の作業室内を掘削しつつ該ケーソンを沈設するステップと、
前記支持杭の芯ずれの度合いを計測するステップと、
前記作業室内に鉄筋を略水平方向に延在するように配筋するステップと、
前記作業室内にコンクリートを打設することにより、前記鉄筋と該コンクリートを有し該作業室の内面により規定される耐圧版を構築するステップと、を有することを特徴とするケーソン工法。 - 前記鉄筋は第1の鉄筋及び第2の鉄筋を含み、
前記配筋するステップは、前記作業室内において、該作業室の上面の近傍に前記第1の鉄筋を、該作業室の下面の近傍に前記第2の鉄筋を、それぞれ略水平方向に延在するように配筋することを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のケーソン工法。 - 前記支持杭の芯ずれの度合いに応じて、前記鉄筋の強度及び配筋量の少なくとも一方を変更する第1の変更ステップ、を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載のケーソン工法。
- 前記支持杭の芯ずれの度合いに応じて必要となる前記鉄筋の強度及び配筋量の変更の量を予めシミュレーションにより求めるステップを更に有し、
前記第1の変更ステップは、前記シミュレーションにより求められた前記鉄筋の強度及び配筋量の変更の量に基づき、前記支持杭の芯ずれの度合いに応じて前記鉄筋の強度及び配筋量の少なくとも一方を変更する、ことを特徴とする請求項3に記載のケーソン工法。 - 前記第1の変更ステップは、前記支持杭の芯ずれの度合いに応じて、前記鉄筋の強度及び配筋量の少なくとも一方を変更する範囲を決定する、ことを特徴とする請求項3又は4に記載のケーソン工法。
- 前記支持杭の芯ずれの度合いに応じて必要となる前記鉄筋の強度及び配筋量の変更の範囲を予めシミュレーションにより求めるステップを更に含み、
前記第1の変更ステップは、前記シミュレーションにより求められた前記鉄筋の強度及び配筋量の変更の範囲に基づき、前記支持杭の芯ずれの度合いに応じて前記鉄筋の強度及び配筋量の少なくとも一方を変更する範囲を決定する、ことを特徴とする請求項5に記載のケーソン工法。 - 前記作業室内にせん断補強材を配設するステップと、
前記支持杭の芯ずれの度合いに応じて、前記せん断補強材の強度及び配設量の少なくとも一方を変更する第2の変更ステップと、を更に有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のケーソン工法。 - 前記支持杭の芯ずれの度合いに応じて必要となる前記せん断補強材の強度及び配設量の変更の量を予めシミュレーションにより求めるステップを更に含み、
前記第2の変更ステップは、前記シミュレーションにより求められた前記せん断補強材の強度及び配設量の変更の量に基づき、前記支持杭の芯ずれの度合いに応じて前記せん断補強材の強度及び配設量の少なくとも一方を変更する、ことを特徴とする請求項7に記載のケーソン工法。 - 前記第2の変更ステップは、前記支持杭の芯ずれの度合いに応じて、前記せん断補強材の強度及び配設量の少なくとも一方を変更する範囲を決定する、ことを特徴とする請求項7又は8に記載のケーソン工法。
- 前記支持杭の芯ずれの度合いに応じて必要となる前記せん断補強材の強度及び配設量の変更の範囲を予めシミュレーションにより求めるステップを更に含み、
前記第2の変更ステップは、前記シミュレーションにより求められた前記せん断補強材の強度及び配設量の変更の範囲に基づき、前記支持杭の芯ずれの度合いに応じて前記せん断補強材の強度及び配設量の少なくとも一方を変更する範囲を決定する、ことを特徴とする請求項9に記載のケーソン工法。 - 前記配設するステップは、前記支持杭の芯ずれの度合いに応じて、前記せん断補強材を配設する範囲を決定する、ことを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載のケーソン工法。
- 前記支持杭の芯ずれの度合いに応じて必要となる前記せん断補強材の配設の範囲を予めシミュレーションにより求めるステップを更に含み、
前記配設するステップは、前記シミュレーションにより求められた前記せん断補強材の配設の範囲に基づき、前記支持杭の芯ずれの度合いに応じて前記せん断補強材を配設する範囲を決定する、ことを特徴とする請求項11に記載のケーソン工法。 - 前記支持杭の芯ずれの度合いに応じて、前記コンクリートの強度を変更する第3の変更ステップ、を更に有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のケーソン工法。
- 前記支持杭の芯ずれの度合いに応じて必要となる前記コンクリートの強度の変更の量を予めシミュレーションにより求めるステップを更に有し、
前記第3の変更ステップは、前記シミュレーションにより求められた前記コンクリートの強度の変更の量に基づき、前記支持杭の芯ずれの度合いに応じて前記コンクリートの強度を変更する、ことを特徴とする請求項13に記載のケーソン工法。 - 前記第3の変更ステップは、前記支持杭の芯ずれの度合いに応じて、前記コンクリートの強度を変更する範囲を決定する、ことを特徴とする請求項13又は14に記載のケーソン工法。
- 前記支持杭の芯ずれの度合いに応じて必要となる前記コンクリートの強度の変更の範囲を予めシミュレーションにより求めるステップを更に有し、
前記第3の変更ステップは、前記シミュレーションにより求められた前記コンクリートの強度の変更の範囲に基づき、前記支持杭の芯ずれの度合いに応じて前記コンクリートの強度を変更する範囲を決定する、ことを特徴とする請求項15に記載のケーソン工法。 - 沈設によりケーソンを設置するケーソン工法であって、
前記ケーソンの沈設に先行して、該ケーソンを支持するための支持杭を地盤に設置するステップと、
前記ケーソンの底版で区画された圧気状態の作業室内を掘削しつつ該ケーソンを沈設するステップと、
前記作業室内に鉄筋を配筋するステップと、
前記作業室内にコンクリートを打設することにより、前記鉄筋と該コンクリートを有し該作業室の内面により規定される耐圧版を構築するステップと、を有するケーソン工法であって、
前記鉄筋は前記耐圧版の上面側を引き延ばすように作用する曲げモーメントに対して抵抗力を発揮する上端筋と、前記耐圧版の下面側を引き延ばすように作用する曲げモーメントに対して抵抗力を発揮する下端筋とを含み、
前記配筋するステップは、前記作業室内において、該作業室の上面の近傍に前記上端筋を、該作業室の下面の近傍に前記下端筋を、それぞれ略水平方向に延在するように配筋することを含む、ことを特徴とするケーソン工法。 - 沈設により設置されるケーソンと、
前記ケーソンを支持する支持杭と、
前記ケーソンと前記支持杭の間に設置される鉄筋コンクリート製の耐圧版であって、耐圧版の上面側を引き延ばすように作用する曲げモーメントに対して抵抗力を発揮する上端筋と、耐圧版の下面側を引き延ばすように作用する曲げモーメントに対して抵抗力を発揮する下端筋の両方を有する耐圧版と、を有することを特徴とするケーソン構造物。 - 前記耐圧版は更に、せん断補強材を有する、ことを特徴とする請求項18に記載のケーソン構造物。
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