JP5180693B2 - 内視鏡用ライトガイド - Google Patents

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Description

本発明は内視鏡用ライトガイド、すなわち、内視鏡において観察部位を照明するための光を伝搬させるライトガイドに関するものである。
従来、人体の体腔内等に有る部位を観察したり手術したりするために、内視鏡が広く用いられている。このような内視鏡においては、被検体の観察部位を照明するために、屈曲可能なライトガイドが用いられている(なお、単に観察するだけではなく手術するような部位であっても、一般に観察は必要であるから、本明細書においては手術部位なども含めて「観察部位」と称することとする)。
この種のライトガイドは上述のように屈曲可能とするために、通常、少なくとも一部分が、複数の細いマルチモード光ファイバを束ねて構成される。特許文献1には、そのように構成された内視鏡用ライトガイドの一例が示されている。この内視鏡用ライトガイドは、照明光源から発せられた後に集光された照明光が一端面に照射されることによって照明光を受け入れ、その照明光を導波させて他端面から出射させ、観察部位を照明する。
また、従来の内視鏡用ライトガイドにおいては、複数の細いマルチモード光ファイバを束ねて構成した入射部や出射部が最密充填構造、つまりそれらの光ファイバどうしの間の空間が最小となる状態の構造を取るように、ガラスフォーミングを施すことも考えられている。このガラスフォーミングとは、束ねた複数のマルチモード光ファイバをガラス軟化点温度以下で加熱しながら外圧を加えて、それらの光ファイバを集結させる技術である。
ここで、そのように形成された最密充填構造の断面形状と、それを採用した内視鏡用ライトガイド5の一例を図10、11に示す。これらの図中の11が複数のマルチモード光ファイバであり、12はそれらを束ねて固化し、コネクタ化するための充填用接着剤である。また図11中の3は、ガラスフォーミングした部分を補強する補強構造である。つまり、上述のような加熱、外圧付加を行うことによりマルチモード光ファイバ11が折れやすくなるので、このような補強構造3が設けられる。また同図中の6は照明光7を発する照明光源、8は照明光7を集光して複数のマルチモード光ファイバ11の一端面(入射端面)側からその中に入射させる集光光学系、9はマルチモード光ファイバ11の他端面(出射端面)に密着配置された光学部品である。
特開平6−296584号公報
ところで、照明光の入射部となる一端部や、出射部となる他端部が複数の細い光ファイバを束ねて構成された従来の内視鏡用ライトガイドにおいては、その入射部や出射部が損傷しやすいという問題が認められている。
また、上記のような内視鏡用ライトガイドの出射部は、大きな拡がり角で照明光を出射させて観察部位の広い範囲を照明できるように、より大きいNA(開口数)を持つように形成されることが望ましい。他方、ライトガイドの入射部も、受光角(これは出射部の拡がり角に相当する)を大きくして照明光の利用効率を高めるために、より大きいNAを持つように形成されることが望ましい。従来の内視鏡用ライトガイドにおいては、この入射部や出射部のNAを大きくするという点で、まだ改良の余地が残されている。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、複数の光ファイバを束ねて構成された入射部やあるいは出射部が損傷し難く、そしてそれらの部分のNAをより大きくすることができる内視鏡用ライトガイドを提供することを目的とする。
本発明による内視鏡用ライトガイドは、前述したように少なくとも一部が束ねられた複数のマルチモード光ファイバから構成され、一端面から入射した照明光を伝搬させて他端面から観察部位に向けて出射させる内視鏡用ライトガイドにおいて、
束ねられた複数のマルチモード光ファイバからなる入射部(照明光の入射面となる上記一端面から内側の部分)および/または束ねられた複数のマルチモード光ファイバからなる出射部(照明光の出射面となる上記他端面から内側の部分)が、その他の部分と光ファイバの本数は同じとしたまま、先細りのテーパ形状とされていることを特徴とするものである。
なお上記入射部のテーパ率は、36%未満とされていることが望ましい。なお、この場合のテーパ率は、(テーパ化によって減少した直径分)/(テーパ化前の直径)で規定する。
また照明光の出射面となる上記他端面には、凹面形状の透明部材が密着配置されていることが特に望ましい。
マルチモード光ファイバにおいては、入射あるいは出射するビームの径(コアの直径)とビーム拡がり角θとの積が保たれる関係がある。なお光ファイバの開口数NA=sinθである。本発明の内視鏡用ライトガイドにおいては、上記の通り、束ねられた複数のマルチモード光ファイバからなる入射部および/または出射部が、その他の部分と光ファイバの本数は同じとしたまま、先細りのテーパ状とされているので、該入射部および/または出射部の端面のコア径が、その他の部分と比べてより小さくなる。
そこで上記の関係から、入射部および/または出射部におけるビーム拡がり角θがより大きくなるので、つまりNAがより大きくなるので、入射部においてはより高い利用効率で照明光が入射するようになり、一方出射部においては、観察部位のより広い範囲を照明可能となる。図12には、このことを分かりやすく示してある。この図中11がマルチモード光ファイバ、11aがそのコアであり、(a)、(b)はそれぞれテーパ無しの場合、テーパ有りの場合を示している。ここでは、光ファイバが1本の場合を示してあるが、それらが複数本束ねられた場合も事情は同じである。
また、上述のような入射部および/または出射部を先細りのテーパ状とすることにより、その部分は損傷に強いものとなる。以下、その点について詳しく説明する。図13は、従来の内視鏡用ライトガイドの入射部あるいは出射部となる端部の断面形状を概略的に示すものである。図示の通りこの端部は、複数のマルチモード光ファイバ11が束ねられて充填用接着剤12により固定された状態となっており、それが例えば円筒状のコネクタハウジング内に収容される。本発明者の研究によると、従来の内視鏡用ライトガイドにおいては、それら複数のマルチモード光ファイバ11が最密充填構造を取るのが困難になっていることが分かった。つまり同図に示す通り、マルチモード光ファイバ11どうしの間に、充填用接着剤12が介在することが避けられない状態となっている。そのため、充填用接着剤12が経時変化して劣化したとき、ライトガイドの端部全体が損傷を受けやすくなるのである。
それに対して本発明の内視鏡用ライトガイドにおいては、上記の通り、束ねられた複数のマルチモード光ファイバからなるライトガイド端部、つまり入射部および/または出射部が、その他の部分と光ファイバの本数は同じとしたまま、先細りのテーパ状とされているために、このライトガイド端部の断面形状は図2に示すようなものとなる。つまりこの場合は、複数のマルチモード光ファイバ11が最密充填構造あるいはそれに近い構造を取るようになって、光ファイバどうしの間に充填用接着剤12が全く介在しないか、あるいは少量しか介在しない状態となる。そうであれば、充填用接着剤12が劣化することによってライトガイド端部、つまり入射部および/または出射部が損傷しやすくなることが防止される。
なお、先に図10および図11に示した従来の内視鏡用ライトガイド5においても、複数のマルチモード光ファイバ11が最密充填構造を取るので、充填用接着剤12の劣化による強度低下の問題は起こり難いと言える。しかしその従来の内視鏡用ライトガイド5においては、ガラスフォーミングによる強度低下を補うための補強構造3が設けられるため、その部分において内視鏡用ライトガイドが屈曲し難くなる。具体的な例を挙げると、補強構造3が存在するために、屈曲し得ない部分の長さが10cm以上に亘ることもある。そうであると、特に小さい体腔内に挿入される内視鏡においては、観察性能が損なわれる事態も発生し得る。
それに対して本発明の内視鏡用ライトガイドは、特にガラスフォーミングを施すことを必要としない、つまり上述のような補強構造を必要としないものであるから、屈曲不可能な部分が長くなって観察性能が損なわれるという問題を招くことがない。
また、本発明の内視鏡用ライトガイドにおいて、特に入射部のテーパ率が36%未満とされている場合には、テーパ状としたことによる損失が、実用上問題の無い程度に抑えられる。その詳しい理由は、後に本発明の実施形態に沿って詳しく説明する。
また、本発明の内視鏡用ライトガイドにおいて特に、照明光の出射面となる上記他端面に凹面形状の透明部材が密着配置されている場合は、該他端面から出射した照明光がその凹面形状の作用により発散するので、照明範囲をさらに広くする効果が得られる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による内視鏡用ライトガイド10の側面形状を示すものである。この内視鏡用ライトガイド10は、全長に亘って複数のマルチモード光ファイバ11が束ねられて構成されている。そして、束ねられた複数のマルチモード光ファイバ11の一端部(図中の左端部)11a、他端部(図中の右端部)11bはそれぞれ円筒状のコネクタハウジング13内に収容され、その中で充填用接着剤12によって固定されている。
上記一端部11aおよび他端部11bはそれぞれ先細りのテーパ形状とされ、一端部11aはその端面から照明光が入射する入射部とされ、他端部11bはその端面から照射光を出射させる出射部とされている。なお、テーパ形状とされた一端部11aおよび他端部11bにおける光ファイバ11の本数は、その他の部分と同じままとされている。
以上の構成を有する内視鏡用ライトガイド10は基本的に、図11に示したものと同様にして使用される。すなわち、一端部11a側の端面に、集光された照明光が照射されることにより該照明光が複数のマルチモード光ファイバ11内に入射する。マルチモード光ファイバ11内に入射した照明光はそこを伝搬した後、他端部11b側の端面から出射して、人体の体腔内等にある観察部位を照明する。
次に、上記構成の内視鏡用ライトガイド10を作製する方法について、図2を参照して説明する。まず複数の細径のマルチモード光ファイバ11を集結させたバンドル体11Bが用意され、その一部が例えば30mmほどの加熱長さを有するヒータHによって例えば500℃以上に加熱され、その加熱部分が延伸加工される(1)。それにより、該バンドル体11Bの加熱延伸部分がテーパ化する(2)。次に、バンドル体11Bの別の部分にも上記と同じ加工が施され、その部分がテーパ化する(3)。次に、上述のようにしてテーパ化した2つの部分を切断する(4)。その後、テーパ化されている一端部11aおよび他端部11bを各々コネクタハウジング13内に収容し、熱硬化型の充填用接着剤12によって周りの隙間を埋めつつ該ハウジング13接着固定し、両端部11aおよび11bの端面を光学研磨すると内視鏡用ライトガイド10が完成する(5)。
なおマルチモード光ファイバ11としては、一例としてクラッド部を含む外径が80μm以下で、コアの外径が60〜70μm程度のものが好適に用いられる。またその一端部11aおよび他端部11bのテーパ部の長さは、一般的なコネクタハウジング13内に収容可能な15mm程度とされる。
本実施形態の内視鏡用ライトガイド10においては、照明光の入射部である一端部11aおよび出射部である他端部11bが先細りのテーパ形状とされているため、入射部においてはより高い利用効率で照明光が入射するようになり、一方出射部においては、観察部位のより広い範囲を照明可能となる。その詳しい理由は、先に図12を参照して説明した通りである。
また本実施形態の内視鏡用ライトガイド10においては、一端部11aおよび他端部11bが先細りのテーパ状とされているために、それらの端部の断面形状は図2に示すようなものとなる。つまりこの場合は、複数のマルチモード光ファイバ11が最密充填構造あるいはそれに近い構造を取るようになって、それらどうしの間に充填用接着剤12が全く介在しないか、あるいは少量しか介在しない状態となる。そうであれば、充填用接着剤12が劣化することによって一端部11aおよび他端部11bが損傷しやすくなることが確実に防止される。
また、この内視鏡用ライトガイド10においては、図11に示したような補強構造3は不要となっているので、その補強構造のために屈曲不可能な部分が生じることがなく、よって良好な観察性能が確保される。
なお、以上説明した第1の実施形態においては、内視鏡用ライトガイド10の一端部11aおよび他端部11b双方がテーパ形状とされているが、それらのうちの一方だけをテーパ形状とした場合も、その部分では前述の効果が得られることは勿論である。
また、全長のうち一部が複数のマルチモード光ファイバを束ねた構成となっていない内視鏡用ライトガイドにおいても、その一端部および/または他端部が複数のマルチモード光ファイバを束ねて形成されている場合は、その端部をテーパ形状とする構成を採用することができ、それにより前述の効果を得ることができる。
さらに、上述のようにテーパ状に形成された一端部および/または他端部のみを形成し、それを既存の内視鏡用ライトガイドの一端部および/または他端部と置き換えて用いることにより、既存の内視鏡用ライトガイドを上述のような効果を奏するように改良することも可能である。
次に図4を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。図4は、本発明の第2の実施形態による内視鏡用ライトガイド20の一部破断側面形状を示すものである。なおこの図4において、図1および図2中の要素と同等の要素には同番号を付してあり、それらについての説明は特に必要のない限り省略する(以下、同様)。
本実施形態の内視鏡用ライトガイド20は、図1および図2に示した第1の実施形態の内視鏡用ライトガイド10と比べると、他端部11bの端面に、凹面形状の透明部材21が密着配置されている点が異なるものである。このような透明部材21が密着配置されていることにより、他端部11bの端面から出射した照明光が上記凹面の作用によって発散し、より広い範囲を照明可能となる。
次に、本発明によって得られる別の効果について説明する。図5および図6はそれぞれ、照明光の出射部となる前端部に、照射された観察部位を撮像する例えばCCDからなる撮像素子30が配設され、その上で本発明によるライトガイド10が適用されてなる内視鏡用の側断面形状、正面形状を示している。なお図中の31は、撮像素子30と図示外の回路とを接続する配線類である。それに対して図7および8は、上述のような撮像素子30が配設され、出射部がテーパ形状とされていない従来のライトガイド5が適用されてなる内視鏡用の側断面形状、正面形状を示している。
上記の図5および図6と、図7および図8とを比較すれば明らかであるように、複数のマルチモード光ファイバが束ねられてなる内視鏡用ライトガイド10の前端部が先細りのテーパ状とされていれば、その前端部と干渉しない分だけ撮像素子30として比較的大径のものを適用可能となり、さらにはその撮像素子30のレイアウトも容易化される。
また、撮像素子30以外の要素が内視鏡の前端部に配設される場合も、ライトガイドの前端部をテーパ形状としておけば、この場合も、その要素を配置するためのスペースがより広く確保されるので、その要素としてより大型のものが適用可能となる、そのレイアウトが容易化される、といった効果が得られる。
次に、本発明の内視鏡用ライトガイドにおける入射部および出射部の好ましいテーパ形状について説明する。図9に示すように、外径が125μm、長さが1.5mの1本のマルチモード光ファイバ11の一端部をレーザ光学系40に接続し、他端部を光検出器41に接続して評価系を作製した。マルチモード光ファイバ11は、その中央部分を約30mmの範囲に亘って加熱した後に延伸して、テーパ部が形成されたものである。その場合の延伸長さを0(ゼロ:延伸無し)、1,3,6,9mmとして、5種の評価系を作製した。
評価は次のようにして行った。各評価系においてレーザ光学系40から波長633nmのレーザ光をマルチモード光ファイバ11に入射させ、そこを伝搬してから出射したレーザ光の強度を光検出器41で検出し、光ファイバ11における伝搬損失を求めた。その結果を下の表1に示す。なお、ここに示す「ファイバ外径」は、テーパ化により最も細径となった部分のクラッド外径を示す。またテーパ率は、(テーパ化によって減少したクラッド外径分)/(テーパ化前のクラッド外径=125μm)とする。通常、光ファイバのクラッド外径に対するコア外径の比率は0.84が目安とされ、本例の場合も各光ファイバにおいてその通りの比率とされているので、このテーパ率は、結局、コア径のテーパ率を表すものとなる。
Figure 0005180693
この表1から分かるように、テーパ率が36%のとき損失は2%であるが、それを上回ると損失が3%に増大する可能性がある。一般に、光ファイバを接続するコネクタの損失としては、0.1〜0.5dB(2.3〜10.9%)が許容値として認められている。そこで、テーパ部による損失は多くても2%程度に抑えることが望まれるので、本発明の内視鏡用ライトガイドにおいて、入射部のテーパ形状のテーパ率は36%未満とすることが好ましい。それに対して出射部においては、通常、照明光の照射範囲をできるだけ広くすることが強く望まれているので、テーパ率は上記の値にとらわれずにそれよりも大きく設定されても構わない。
本発明の第1の実施形態による内視鏡用ライトガイドを示す側面図 上記内視鏡用ライトガイドの一部の形状を示す断面図 上記内視鏡用ライトガイドを作製する方法を説明する図 本発明の第2の実施形態による内視鏡用ライトガイドを示す一部破断側面図 本発明のライトガイドが適用された内視鏡の端部の形状例を示す側断面図 図5に示す内視鏡の端部形状を示す正面図 従来のライトガイドが適用された内視鏡の端部の形状例を示す側断面図 図7に示す内視鏡の端部形状を示す正面図 本発明の内視鏡用ライトガイドを評価する系を示す概略側面図 従来の内視鏡用ライトガイドの一部を示す断面図 従来の内視鏡用ライトガイドの一例を示す側面図 本発明の効果を説明する図 従来の内視鏡用ライトガイドの一部を示す断面図
符号の説明
10、20 内視鏡用ライトガイド
11 マルチモード光ファイバ
11a 内視鏡用ライトガイドの一端部(入射部)
11b 内視鏡用ライトガイドの他端部(出射部)

Claims (3)

  1. 少なくとも一部が束ねられた複数のマルチモード光ファイバから構成され、一端面から入射した照明光を伝搬させて他端面から観察部位に向けて出射させる内視鏡用ライトガイドにおいて、
    束ねられた複数のマルチモード光ファイバからなる入射部および/または束ねられた複数のマルチモード光ファイバからなる出射部が、その他の部分と光ファイバの本数は同じとしたまま、先細りのテーパ形状とされていて、
    テーパ形状とされている前記入射部および/または前記出射部における前記複数のマルチモード光ファイバのそれぞれがテーパ形状とされていることを特徴とする内視鏡用ライトガイド。
  2. 前記入射部のテーパ率が36%未満とされていることを特徴とする請求項1記載の内視鏡用ライトガイド。
  3. 前記他端面に、凹面形状の透明部材が密着配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の内視鏡用ライトガイド。
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