JP5177648B2 - 成膜装置 - Google Patents

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Description

本発明は、薄膜形成時に用いる成膜装置に関する。
半導体部品や太陽電池などの製造に利用されている薄膜の形成方法には、イオンプレーティング法やスパッタリング法などがある。中でもプラズマビームを用いて成膜を行うイオンプレーティング法は、酸化膜等の膜形成に多用されている。
イオンプレーティング法とは、成膜装置に取り付けられた電子銃から発せられるプラズマビームを、成膜装置内に設置された蒸着材料に照射することで蒸着材料の粒子を基板上に付着して成膜する方法をいう。その電子銃には、熱電子方式とHCD(ホロカソード)方式の2種類の方式がある。成膜装置内に設置された蒸着材料の周囲には、永久磁石や電磁石(コイル)などを配置することでプラズマビームの向きを蒸着材料の設置位置へ修正することができる。これは、蒸着材料を効率的に蒸発させることで良質な成膜を得ることを目的としている。
例えば、特許文献1では、筒型の永久磁石およびコイルの内側に蒸着材料を配置させてアーク放電を利用することで、蒸着材料を一様に消耗させて、高効率で蒸着材料を使用できる旨が開示されている。また、特許文献2では、コイルと永久磁石を真空チャンバー内に設置することで、プラズマビームの向きを修正して、蒸発材料を効率的に溶解(蒸発)できる旨が開示されている。
しかし、特許文献1に示された方法では、プラズマビームの熱が成膜中の蒸発材料から伝達されて永久磁石とコイルが発熱するため、永久磁石とコイルには冷却水等による冷却機構が必要になる。特に、コイルには通電による発熱も加味すると、永久磁石のみを用いた場合に比べて多量の冷却水が必要になる。また冷却水の不足等によりコイルが断線した場合には、コイル交換が必要であるが、コイル周辺には冷却機構が付設されているので、メンテナンスが困難であるという問題があった。
また、特許文献2による方法も同様に、コイルと永久磁石とが一体化して設置されているため、永久磁石のみを設置する場合に比べて多量の冷却水による冷却機構が必要であり、メンテナンスも困難である。また、コイルと永久磁石が共に真空チャンバー内に設置されているため、一定の成膜領域を確保するには真空チャンバーが大型化するという問題があった。
特開2007−70690号公報 特許第3806834号公報
そこで、本発明においては、蒸着材料の周囲に設置されるコイルの冷却を必要とせず、かつコイルのメンテナンスが容易な成膜装置を提供することを課題とする。
本出願人は、前述の課題を解決するため本発明においては、真空チャンバーと、真空チャンバーに設置したガンと、真空チャンバーとガンとの間に設置した第1のコイルと、から構成されて、真空チャンバー内には成膜を行う基板を保持する基板保持手段と、ダミーアノードと、蒸着材料を溶解および蒸発するハースとを具備する成膜装置において、ハース内部にリング型永久磁石を配置し、かつ真空チャンバー外の底部であって、ハースの外側を取り囲んで第2のコイルを配置して、リング型永久磁石から発生する磁界および第2のコイルへの通電により発生する磁界によって、ハースに設置した蒸着材料に対して、ガンから発生するプラズマビームが均等に照射されるようにしている成膜装置とした。
これにより、蒸着材料が均一に溶解および蒸発して、基板の表面に均質な成膜を施すことができる。また、第2のコイルを真空チャンバー外に配置することで、第2のコイル分の容積に相当するスペースが成膜領域として確保できる。さらに、第2のコイルはプラズマビームによる熱影響を直接受けない。
以下、ハースとリング型永久磁石との位置関係、および真空チャンバーと第2のコイルとの位置関係について説明する。
本発明に係る成膜装置内のハースと、そのハース内部に配置するリング型永久磁石との位置関係は、ハースにて溶解および蒸発する蒸着材料に対するプラズマビームの照射面より下方にリング型永久磁石を配置する。具体的には、リング型永久磁石の中空部が蒸着材料の鉛直下方になるか、またはリング型永久磁石の中空部内に蒸着材料を下方から上方に向けて貫通するように配置する。また、蒸着材料とリング型永久磁石との配置間隔については、リング型永久磁石の有する磁力の大きさにより異なるが、リング型永久磁石から発生する磁界が蒸着材料に影響を及ぼす範囲内とする。そのように配置することで、蒸着材料近傍に発生する磁界を制御して、蒸着材料に対するプラズマビームの照射位置の調節が可能となる。
本発明に係る成膜装置の真空チャンバーと、第2のコイルとの位置関係は、真空チャンバーの外部でかつ底部に第2のコイルを配置する。また、第2のコイルの内側には、第2のコイルと同心状もしくは偏心状となるようにハースを配置する。
なお、本発明に係る成膜装置に使用する蒸着材料とは、JIS H0211に規定される蒸着の対象となる材料をいう。具体的には、Ti、Ta、Nbなどの単一元素から成る場合には高純度の溶解インゴットから加工されたもの、ZnO、ITO(酸化インジウムスズ)、AlTi合金などの二以上の元素から成る場合には焼結等されたものを用いることができる。
また、ハースとは成膜中に陽極(アノード)の役割を果たして、ガンから発生するプラズマビームを蒸着材料へ照射させることで蒸着材料を溶解および蒸発させる部品をいう。具体的には、その上部に蒸着材料を静置できる平面を有した椀型や皿型のルツボやハースライナを有しており、銅合金やオーステナイト系ステンレス鋼などの非磁性でかつ導電性を有する材料で作製された塔形状の部品である。
さらに、リング型永久磁石とはJIS C2502に規定される永久磁石材料より成る中空部を有した磁石をいう。具体的には、サマリウム・コバルト磁石やネオジム・鉄・ボロン磁石等の希土類系磁石、酸化鉄を主成分とするフェライト磁石、アルミニウム・ニッケル・コバルトなどを主成分とするアルニコ磁石等が使用可能である。例えば、円柱型磁石の中央部に皿穴を設けた円柱型皿穴付き磁石や角型磁石の中央部に皿穴を設けた角型皿穴付き磁石などが使用できる。また、中空部の形状は円形、楕円形および多角形状などが適用できる。
また、第2のコイルとはJIS C5602に規定される磁心を用いないコイルであり、導線を密に長く巻いた円筒形のコイル(空芯コイル)をいう。導線の大きさ(太さ)、材質および巻数などの諸条件を自由に調節することで、所望する磁界の大きさを得ることができる。
以上述べたように、本発明に係る成膜装置は、ハース内部にリング型永久磁石を配置して、かつ真空チャンバー外の底部であって、ハースの外側を取り囲んで第2のコイルを配置することにより、リング型永久磁石から発生する磁界および第2のコイルへの通電により発生する磁界によって、ハースに設置した蒸着材料に対して、ガンから発生するプラズマビームが均等に照射される。その結果、蒸着材料を構成する元素が均一に溶解、蒸発して、基板の表面に均質な成膜を施すことができる。加えて、第2のコイルはガンから発生するプラズマビームの熱影響を直接受けないので、冷却水等による冷却機構の付設が不要であり、メンテナンスも容易になる。また、真空チャンバー内に一定の成膜領域が確保できるため、真空チャンバーの小型化、ひいては成膜装置の小型化も実現できる。
本発明の実施の形態の一例を、図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る成膜装置全体の縦断面図である。図1より、本発明に係る成膜装置は基板上に成膜を行う真空チャンバー1と、真空チャンバー1の側方に設置されてプラズマビームを発生させるHCD(ホロカソード)ガン2と、真空チャンバー1の底部に設置され、薄膜の成分となる蒸着材料が上部に設置されるハース3と、ハース3内部に配置されるリング型永久磁石101と、真空チャンバー1とHCDガン2との間に設置されて、HCDガン2より発生したプラズマビームの方向をコントロールする第1のコイル4と、真空チャンバー1外の底部でハース3の外側を取り囲んで配置された第2のコイル5(空芯コイル)と、真空チャンバー1の内部に設置されたダミーアノード6と、真空チャンバー1内部に設置されて成膜を行う基板Kを支える基板保持台7(基板保持手段)とから構成されている。
また、真空チャンバー1には、同チャンバー1内の雰囲気を減圧するための真空ポンプ8と、薄膜の成分となる反応ガスを反応ガスボンベ10から真空チャンバー1内へ導入する反応ガス導入管9とが接続されている。さらに、HCDガン2には発生したプラズマビームを真空チャンバー1内部へ送り込む不活性ガスを不活性ガスボンベ20から供給する不活性ガス導入管11が接続されている。反応ガス導入管9および不活性ガス導入管11には、各々流量調節器12、22と、電磁弁13、23とが設けられており、真空チャンバー1内へのガス流量の調整が可能である。その他として、HCDガン2によるプラズマビームの発生を制御するHCDガン電源30と、真空チャンバー1内の減圧復圧調整および反応ガスと不活性ガスの流量調整を行う制御盤31とを備えている。
図2は、本発明に係る成膜装置内部に設置されたハース3上部の縦断面拡大図である。図2より、ハース3は蒸着材料Jを設置するルツボ100と、ルツボ100の下部にて中空部(内径部)が蒸着材料Jの鉛直下方となるように配置されたリング型永久磁石(マグネット)101と、ルツボ100を下部から支えて内面に中空部を有した支持台102と、から構成されている。また、支持台102の内部には、本発明に係る成膜装置の外部から圧送された冷却水により、通水孔を経由させてルツボ100の中央下部およびリング型永久磁石101を冷却する通水パイプ103が挿入されている。
次に、本発明に係る成膜装置を用いた成膜手順について説明する。図1内に図示しない冷却ポンプより、真空チャンバー1の外壁およびハース3内部の通水パイプ103内部へ通水すると同時に、真空チャンバー1上部の扉から成膜を行う基板Kを挿入し、基板保持台7上に設置する。その後、真空ポンプ8を起動させて、真空チャンバー1内の減圧を開始する。また、制御盤31を操作することで不活性ガスボンベ20から不活性ガス導入管11、流量調節器22、電磁弁23を経由して真空チャンバー1内部へ不活性ガスを供給する。
その後、HCDガン電源30を操作してHCDガン2にプラズマビームを発生させる。プラズマビームの発生が確認できた後、真空チャンバー1内部にプラズマビームを投入させて、HCDガン2が電気的に安定するまで、HCDガン2から発生したプラズマビームをダミーアノード6にのみ照射させながらHCDガン電源30を調整して所定の出力まで高める。HCDガン2が電気的に安定すると、第1のコイル4第2のコイル5(空芯コイル)に通電を行い、プラズマビームの照射先をダミーアノード6からハース3へ完全に切替えて成膜を行う。また、制御盤31を調整しながら反応ガスボンベ10より反応ガス導入管9、流量調節器12、電磁弁13を経由して反応ガスを真空チャンバー1内部へ圧送する。
HCDガン2から発生したプラズマビームは、ハース3内に配置されたリング型永久磁石101から発生する磁界および第2のコイル5(空芯コイル)への通電により発生する磁界により、ハース3に設置された蒸着材料Jに均等に照射される。その結果、蒸着材料Jが均一に溶解および蒸発して、基板Kの表面に均質な成膜を施すことができる。また、反応ガスボンベ10よりOやNなどの反応ガスを真空チャンバー1内部へ圧送することで反応ガスの成分も成膜できる。
本発明に係る成膜装置のハース3内に配置する永久磁石101の形状と永久磁石101の有無により成膜した場合の蒸着材料の形状変化を調査したので、その結果について説明する。図1に示す真空チャンバー1のハース3内に配置する永久磁石101について、(1)リング型永久磁石(外径φ29mm×内径φ22mm×4.5mmH:2742ガウス)を用いた場合、(2)円柱型永久磁石(φ10mm×5mmH:3000ガウス)を用いた場合、(3)永久磁石を用いない場合の計3条件にて、前述した成膜手順に従い基板Kに成膜を行った。
これらの3条件に共通する成膜条件として、蒸着材料Jにはハクスイテック株式会社製の透明導電膜材料酸化亜鉛(ZnO)タブレット(3Gawt%含有:φ20mm×20mmH)を用いた。不活性ガスにはアルゴンガスを用いて、50ccmの流量で真空チャンバー1内へ圧送した。また、HCDガン2に印加してプラズマビームを発生させる電流値は150Aとした。
また、前述した(1)〜(3)の条件毎に異なる成膜条件として、成膜時間は90〜180秒、減圧操作完了時の圧力であるベース圧力は6.3〜9.0×10−4Pa、成膜時の圧力である成膜圧力は1.4〜1.82×10−1Pa、成膜温度は61〜110℃とした。
表1は、前述の(1)〜(3)の成膜条件にて成膜した後のハース3内に設置された蒸着材料Jの形状変化を示したものである。
表1に示すように、本発明に係る成膜装置(前述の成膜条件(1))では、ハース3内のリング型永久磁石101を蒸着材料Jの下方に配置した場合、蒸着材料Jが上部から均一に溶解および蒸発していることがわかる。これは、リング型永久磁石101から発生する磁界が主に蒸着材料Jの端部へ、第2のコイル5(空芯コイル)への通電により発生する磁界が主に蒸着材料Jの中央部へ、それぞれプラズマビーム方向が操作されたことによると考えられる。それらの効果の総和として、蒸着材料Jの近傍に発生する磁界が、蒸着材料表面に一様に形成されるので、結果としてプラズマビームが蒸着材料J表面に均等に照射されて、蒸着材料Jが上部から均一に溶解および蒸発する。
一方、本発明外である成膜装置、すなわち円柱型永久磁石101を蒸着材料Jの直下に配置した場合(前述の成膜条件(2))、蒸着材料Jの中央部のみが大きく凹状に溶解および蒸発していた。これは、第2のコイル5(空芯コイル)と円柱型永久磁石101とから発生する磁界が共に蒸着材料Jの中央部に集束するため、HCDガン2から発生したプラズマビームが蒸着材料Jの中央部のみに導かれて、プラズマビームが照射された中央部のみが溶解および蒸発したためである。また、本発明外である成膜装置で蒸着材料Jの下方に永久磁石101を配置しない場合(前述の成膜条件(3))、蒸着材料Jは全体的に凹状に溶解および蒸発していた。これは、ハース3内に永久磁石101が配置されていないため、HCDガン2から発生したプラズマビームは第2のコイル5(空芯コイル)によってのみ制御される。そのため、蒸着材料J近傍に存在するプラズマビームが、主に蒸着材料の中央部にのみ照射された結果と考えられる。
以上より、本発明に係る成膜装置のハース内にリング型永久磁石を蒸着材料より下方に配置し、かつハースの外側を取り囲んで第2のコイル(空芯コイル)を真空チャンバー外の底部に配置することにより、リング型永久磁石から発生する磁界および第2のコイルへの通電により発生する磁界によって、ハースに設置された蒸着材料に対して、ガンから発生するプラズマビームが均等に照射される。そして、第2のコイル(空芯コイル)に冷却機構を付設することなく蒸着材料を均一に溶解および蒸発させることができた。
次に、前述の実施例1の(1)〜(3)の成膜条件にて成膜を行った薄膜の比抵抗、移動度および成膜レートを測定したので、その結果について説明する。表2は、前述の(1)〜(3)の成膜条件にて成膜した薄膜の比抵抗、移動度および成膜レートの測定結果を示したものである。ここで本実施例の評価項目に用いた比抵抗、移動度および成膜レートについて説明する。比抵抗(Ω・cm)とは、比電気抵抗の略語であり、電気の流れにくさを表す値である。比抵抗の値が小さいほど、その物質は電気が流れやすいことを示す。移動度(cm/V・s)とは、電子移動度の略語であり、固体物質中の電子の移動のしやすさを表し、物質の電気的特性を示すパラメータである。移動度の値が大きいほど、その物質は電気が流れやすいことを示す。また、成膜レート(nm/min)とは、単位時間当たりに基板上に形成される薄膜の膜厚をいう。この値が大きいほど、短時間で一定膜厚の薄膜を形成できるため、成膜装置として薄膜の生産性が高いことを示す。
表2に示すように、実施例1の(1)リング型永久磁石を用いた場合、(2)円柱型永久磁石を用いた場合および(3)永久磁石を用いない場合において、薄膜の物性としての比抵抗および移動度を比較する。
比抵抗については、本発明に係る成膜装置内でリング型永久磁石を用いた場合の比抵抗は、4.26×10−4(Ω・cm)となった。一方、本発明外の成膜装置内で円柱型永久磁石を用いた場合、および永久磁石を用いない場合の比抵抗が、それぞれ4.29×10−3(Ω・cm)および1.42×10−3(Ω・cm)となり、本発明に係る成膜装置内でリング型永久磁石を用いた場合の比抵抗に比べて約10倍にまで増加した。
また、移動度については、本発明に係る成膜装置内でリング型永久磁石を用いた場合の移動度は17.3(cm/V・s)となった。一方、本発明外の成膜装置内で円柱型永久磁石を用いた場合、および永久磁石を用いない場合の移動度は、それぞれ2.29(cm/V・s)および11.5(cm/V・s)となり、本発明に係る成膜装置内でリング型永久磁石を用いた場合の移動度に対して13〜67%にまで減少した。以上の結果より、本発明に係る成膜装置内でリング型永久磁石を用いた場合には、本発明外の成膜装置内で円柱型永久磁石を用いた場合および永久磁石を用いない場合に比べて、電気伝導に優れた良質な薄膜を形成させることができた。
本発明に係る成膜装置と本発明外の成膜装置による薄膜の物性値が異なる原因は、以下の理由によるものと考える。すなわち、本発明に係る成膜装置では、蒸着材料の下方にリング型永久磁石を配置することで、プラズマビームを蒸着材料表面に均等に照射させて、蒸着材料の均一な溶解を行うことができる。これにより、蒸着材料中に含有されるGaとZnが均等に蒸発して、薄膜の成分においてもGaとZnが一様に分布した結果、比抵抗や移動度などの物性値が向上したためと考えられる。そのため、本発明に係る成膜装置は、二以上の元素を含む蒸着材料を溶解および蒸発する場合に特に有効である。
一方、本発明外の成膜装置を用いて成膜した薄膜では、成膜装置のルツボ内に配置した円柱型永久磁石から発生する磁界により、HCDガンから発生したプラズマビームは蒸着材料表面の中央部など局所的に照射される。そのため、本実施例で使用した蒸着材料の構成元素であるGaの融点がZnよりも低いために、Gaが先に蒸発してから、Znが後から蒸発する。その結果、薄膜中の含有成分にGaとZnがそれぞれ局所的に偏在するために電気伝導性の指標となる比抵抗や移動度などの物性値が低下したと考えられる。また、成膜装置のハース内に永久磁石を配置しない場合においても、同様の理由により薄膜の物性値が低下したと考えられる。
次に、表2中の(1)リング型永久磁石を用いた場合、(2)円柱型永久磁石を用いた場合、および(3)永久磁石を用いない場合における成膜レートを比較した。本発明に係る成膜装置内でリング型永久磁石を用いた場合の成膜レートは196.6(nm/min)であった。これに対して、本発明外の成膜装置内で円柱型永久磁石を用いた場合、および永久磁石を用いない場合の成膜レートが、それぞれ13.7(nm/min)および65(nm/min)となり、本発明に係る成膜装置内でリング型永久磁石を用いた場合の成膜レートに対して7〜33%にまで減少した。これにより、本発明に係る成膜装置は、本発明外のルツボ内に円柱型永久磁石を配置する場合および永久磁石を配置しない場合の成膜装置に比べて、薄膜の生産効率が高いことを示すものとなった。
よって、本発明に係る成膜装置のハース内にリング型永久磁石を配置し、かつハースの外側を取り囲んで第2のコイル(空芯コイル)を真空チャンバー外の底部に配置することにより、リング型永久磁石から発生する磁界および第2のコイルへの通電により発生する磁界によって、ハースに設置された蒸着材料に対して、ガンから発生するプラズマビームが均等に照射される。加えて、第2のコイル(空芯コイル)に冷却機構を付設することなく、電気伝導特性に優れた良質な薄膜を形成することができた。また、薄膜の生産効率(成膜レート)も向上することができた。さらに、成膜温度が200℃以下の雰囲気においても、電気伝導特性に優れた良質な薄膜を得ることもできた。
なお、本実施例で使用した蒸着材料は、酸化亜鉛(ZnO)タブレットであるが、Ti、Ta、Nbなどの単一元素から成るインゴットやITO、AlTi合金などのタブレットを使用した場合でも、同様の作用効果が得られることは言うまでもない。また、蒸着材料の形状はタブレットの成形体以外にも、粉状体や粒状体の蒸着材料も使用可能である。
さらに、本発明に係る成膜装置を構成する基板保持部材の方式として、本実施例で用いた方式の他に、真空チャンバー内の上方から基板を吊り下げて保持する方式または基板の支持部材にローラー等の搬送手段を設けて、真空チャンバー内で基板を垂直方向または平行方向に移動できる方式なども用いることができる。真空チャンバー内で基板を垂直方向または平行方向に移動できる方式により基板を保持する場合は、例えばシート状の基板を巻き出し及び巻き取りながら搬送することにより、シート状の基板面に連続的に成膜が行える点で有効である。
本発明に係る成膜装置全体の縦断面図である。 本発明に係る成膜装置内部に設置されたハース3上部の縦断面拡大図である。
符号の説明
1 真空チャンバー
2 HCD(ホロカソード)ガン
3 ハース
第1のコイル
第2のコイル(空芯コイル)
ダミーアノード
7 基板保持台(基板保持手段)
101 リング型永久磁石(マグネット)
J 蒸着材料

Claims (1)

  1. 真空チャンバーと、前記真空チャンバーに設置されたガンと、前記真空チャンバーと前記ガンとの間に設置された第1のコイルと、から構成されて、前記真空チャンバー内には成膜を行う基板を保持する基板保持手段と、ダミーアノードと、蒸着材料を溶解および蒸発させるハースとを具備する成膜装置において、前記ハースの内部にはリング型永久磁石が配置され、かつ前記真空チャンバー外の底部であって、前記ハースの外側を取り囲んで第2のコイルが配置されており、前記リング型永久磁石から発生する磁界および前記第2のコイルへの通電により発生する磁界によって、前記ハースに設置された前記蒸着材料に対して、前記ガンから発生するプラズマビームが均等に照射されるようにされていることを特徴とする成膜装置。
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