JP5174312B2 - 不溶性凝集体として発現された組み換えタンパク質を精製する方法 - Google Patents

不溶性凝集体として発現された組み換えタンパク質を精製する方法 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、細菌宿主細胞において発現され、不溶性凝集体(封入体)として蓄積する、組み換えタンパク質を可溶化し、精製するための方法に関する。精製は、前述の封入体の可溶性形態への、有機変性試薬を用いての、およびクロマトグラフィー方法を用いての転化に基づいている。ここで、無機、アルカリ性、塩含有溶離剤が選択され、これらにより、精製が完了した後に、組み換えタンパク質を、中和後、医学的使用のために直接用いることができ、生理学的に許容し得る形態で、利用可能にすることができる。この方法は、特に、アレルゲンおよびアレルゲンフラグメントを精製するのに適する。
【0002】
本発明の方法は、医薬に必要な条件(GMP)の下で行われる。医薬活性成分は、可溶化の後に、非経口製剤として、直接用いることができる。本発明の方法により製造された好ましい組み換えアレルゲンまたはアレルゲン変異体を、改善された療法のため、およびまたアレルギー性疾患の診断のための両方に用いることができる。
【0003】
組み換えタンパク質を、細菌または原核(procaryontic)宿主細胞、例えば大腸菌により製造するにあたっての一般的な問題は、発現したタンパク質が、一般的に完全な生物学的活性を示すために必要である正確な、または天然(native)の折り畳みを有しないことである。不正確な折り畳みにより、しばしば、発現媒体に不溶であるか、または凝集体の形態に蓄積した形態のみである一連のタンパク質がもたらされ、これは、いわゆる「封入体」として科学的な文献中で知られるに至った。前述の「封入体」の形成は、精製、および発現された組み換えタンパク質に必要な可溶状態での入手可能性(soluble availability)に悪影響を与える(Marston et al., 1986, Biochem J. 240: 1-12)。細菌中に蓄積した組み換えタンパク質の精製を可能にするために、変性物質、例えば尿素またはグアニジン塩酸塩などが、しばしばクロマトグラフィー溶離剤に加えられる。
【0004】
しかし、これらの添加剤は、すべての分離原理、例えば疎水性相互作用クロマトグラフィーと組み合わせることはできない。さらに、生成物は、例えば尿素溶液中で形成され得るシアン酸塩などによる化学反応により、不都合な方式で修飾され得る。変性剤の除去および従って可能な再生は、通常、透析、ダイアフィルトレーションまたはゲル濾過により行われる。これらのプロセスは、時間がかかるだけでなく、またしばしば生成物の再沈殿をもたらす。最終生成物中の前述の変性剤の完全な除去の分析的検出は、困難である。前記した問題は、特に、組み換えアレルゲンおよびアレルゲン変異体の製造および精製において重要である。
【0005】
1型アレルギーは、最近の10年間で全世界的に劇的に増加した。工業国における人口の20%までが、愁訴、例えばアレルギー性鼻炎、結膜炎または気管支喘息を患っており、これは、空気中に存在するアレルゲン(エアロアレルゲン(aeroallergen))により引き起こされ、これは、種々の給源、例えば植物花粉、ダニ、哺乳類(ネコ、イヌ、ウマ)およびカビ菌類により放出される。重篤なアレルギーはまた、昆虫による刺傷、例えばミツバチおよびスズメバチによるものに誘発され得る。
【0006】
1型アレルギーを誘発する物質は、タンパク質、糖タンパク質またはポリペプチドである。粘膜を介しての取り込みの後、または刺された後に、これらのアレルゲンは、感作されたヒトにおける肥満細胞の表面に結合したIgE抗体と反応する。2つまたは3つ以上のIgE抗体が、アレルゲンを介して互いに結合した場合には、これらの結果、エフェクター細胞によりメディエータ(例えばヒスタミン、プロスタグランジン)およびサイトカインが分泌され、および従ってアレルギー症状が誘発される。cDNA配列の補助により、アレルギーの診断および療法において用いることができる組み換えアレルゲンを製造することが可能である(Scheiner und Kraft, 1995, Allergy 50, 384-391)。
【0007】
組み換えアレルゲンは、慣用の抽出物と比較して、個別のIgE感作スペクトル(IgE sensitisation spectra)の同定を可能にする診断方法において、特別の重要性を達成することができる。さらに、組み換えアレルゲンに対する特定の遺伝子工学的改変が可能であり、これは、減少されたアレルギー誘発能力を、調節Tヘルパー細胞との反応性は変えずに達成することを可能にする(Schramm et al., 1999, J. Immunol. 162(4): 2406-2414; Valenta et al., 1999, Biol. Chem. 380: 815-24; Singh et al., 1999, Int. Arch. Allergy Immunol. 119: 75-85)。このタイプのアレルゲン変異体は、1型アレルギーの特異的な免疫療法についての有望な将来の候補である。特に、後者の改変されたアレルゲンは、本発明の方法の対象である。
【0008】
これに関して、しばしば用いられる細菌発現系における組み換えアレルゲンおよびアレルゲン変異体の生成は、特に重要である。真核(eucaryontic)系と比較して、これらの系は、高い生成物収量が、短い発現時間のみの後に得られるという利点を提供する。さらに、これらは、ウイルス汚染および腫瘍遺伝子に関して、薬理学的観点から実質的に危険を有しない。しかし、細菌発現系におけるこれらの組み換え調製物において、種々の給源からの主なアレルゲン、例えば1群(Vrtala et al., 1996, J. Allergy Clin. Immunol. 97: 781-7)および13群(Suck et al., 2000, Clin. Exp. Allergy 30: 324-332)のイネ科植物花粉アレルゲン、Der f 2ダニアレルゲン(Iwamoto et al., 1996, Int. Arch. Allergy Immunol. 109: 356-61)並びにホスホリパーゼA2およびヒアルロニダーゼ昆虫毒素アレルゲン(Soldatova et al., 1998, J. Allergy Clin. Immunol. 101: 691-8; Kuchler et al., 1989, Eur. J. Biochem. 184: 249-254)は、宿主細胞中に、封入体として蓄積する。アレルゲン変異体、例えばカンバ(birch)花粉主要アレルゲンBet v 1のフラグメントおよび多量体(フラグメントA、フラグメントB、Bet v 1三量体)もまたこのように挙動するが、改変されていない組み換えBet v 1アレルゲンは、実質的に可溶性である(Hoffmann-Sommergruber et al., 1997, Prot. Expr. Purific. 9: 233-39; van Hage-Hansten et al., 1999, J. Allergy Clin. Immunol. 104: 969-7)。
【0009】
従って、目的は、「封入体」の形態での組み換えタンパク質、特にアレルゲン、またはアレルゲン性作用を有するタンパク質の精製を、簡単かつ効率的な方式で可能にし、一方従来技術の方法の前述の欠点を回避する方法を提供することにあった。さらに、目的は、タンパク質を、これらが、精製中および特に精製の終了時に、これらを、直接かつ他の加工を伴わずに、医学的または診断的使用のために利用可能にすることができる形態であるように単離することにあった。
【0010】
本発明は、実質的に緩衝されていないアルカリ性溶離剤を用いて、発現後に封入体の形態にある組み換えタンパク質から、効率的な1工程または多工程の、好ましくは1〜3工程の精製方法を介してタンパク質の純粋な形態を導く生化学的精製方法である。
本発明はまた、組み換えタンパク質がその後、最終的な精製工程の後に迅速な中和により溶液に留まる方法である。同時に、これにより、生理学的媒体が製造される。
【0011】
この方法は、特に、組み換えアレルゲンおよびアレルゲン変異体の製造のために最適化されている。この方法は、これらの本来的な(primary)発現生成物のための一般的な適用を示す。従って、封入体として本来的に(primarily)発現される他の起源からのアレルゲンおよびアレルゲン変異体をまた、この方法により精製し、再生し、形成することができる。
本発明に関して、アレルゲン変異体の用語は、フラグメント、多量体、例えば二量体または三量体など、また元のアレルゲンまたはこのフラグメント/多量体の改変を意味するものと解釈される。本発明に関して、後者は、1個または2個以上のアミノ酸の挿入、欠失または置換を有する。
【0012】
好ましくは、天然に存在せず、IgE活性を有しないかまたはIgE活性が減少しているが、維持されたT細胞活性を有する組み換えアレルゲン変異体を用いる。この方法は、特に、カンバ花粉主要アレルゲンBet v 1のアレルゲン変異体、即ち組み換えフラグメントA(アミノ酸1〜74)およびB(アミノ酸75〜164)並びに組み換え三量体の単離に適する。この方法により製造された組み換えアレルゲンおよびアレルゲン変異体は、アレルギー性疾患の特異的な免疫療法および診断のための使用に、著しく適する。
【0013】
従って、本発明は、細菌発現の後に得られた、発現培地に不溶性のタンパク質凝集体(「封入体」)からの、可溶性で、生物学的に活性な、直接的な医学的使用に適する生理学的媒体中に存在する形態での精製組み換えタンパク質の製造方法であって、この方法が、以下の工程:
(i)分離除去した不溶性のタンパク質凝集体を有機変性試薬に取り込む工程、
(ii)(i)からの溶液を、本質的に無機の緩衝されていないアルカリ性塩含有溶離剤を用いた少なくとも1つのクロマトグラフィー工程により精製する工程、および
(iii)溶解され、再生され、かつ生物学的に活性なタンパク質を含む、最終的な精製工程の後に得られたアルカリ性溶液を中和する工程
により記載することができる、前記方法に関する。
【0014】
精製のために、本来的に形成された不溶性凝集体を、先ずそれ自体知られている変性試薬に溶解し、これにより変性させる。好ましいのは、尿素、特に5〜10Mの尿素、好ましくは8Mの尿素を用いることである。あるいはまた、他の剤、例えば比較的高度に濃縮された水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム溶液(0.2M〜1M)または前述のグアニジン塩酸塩を、用いることもできる。
他の工程においては、溶解され、変性したタンパク質を、好適なクロマトグラフィー材料に結合させる。ここで、主に好適なのは、イオン交換体、好ましくは陰イオン交換体である。
【0015】
本発明において用いられるクロマトグラフィー溶離剤は、本質的に無機の緩衝されていないアルカリ性塩含有溶液である。好適な溶離剤は、例えば、NaClまたはKClと一緒のNaOHまたはKOHの溶液である。所望により、および好ましい態様において、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムを、pH低下の可能性のために、溶離剤に加える。好ましい溶離剤は、NaOH、NaCl、またはNaOH、NaClおよびNaHCOを含む。水性アルカリ性溶液は、本発明において、5mM〜50mM(mol/l)、好ましくは15〜25mM、特に20mMのNaOHまたはKOHの含量を有する。
【0016】
塩濃度(例えばNaCl)は、タンパク質が、イオン交換体材料に強力に結合するように、最初は比較的低い。本発明の最初の塩濃度は、5〜50mM、好ましくは15〜30mM、特に20mMである。これにより、変性剤およびクロマトグラフィー材料に結合しないかまたは十分強力に結合しない不純物が除去される。NaHCOを加えた場合には、これは、5〜15mM、好ましくは11mMの含量を有する。
【0017】
従って、本発明は、溶解した組み換えタンパク質をクロマトグラフィー材料に結合させ、変性溶液を、タンパク質の前述の交換体材料への結合を確実にする塩濃度を有する、本質的に無機の緩衝されていないアルカリ性溶離剤と交換することにより、変性試薬を変性溶液から除去する、対応する方法に関する。
【0018】
結合した組み換えタンパク質を溶離させるために、一層高い塩濃度(NaClまたはKCl)を、本発明の方法に従って、他の条件は同一にしてグラジエントにより、連続的に提供する。約20mMのNaCl(KCl)(開始値)〜0.5MのNaCl(最終値)のリニアグラジエントを、好ましくは用いる。これにより、所望のタンパク質が回収されるのみならず、またこれは、他の不純物(例えば他のタンパク質)から分離される。
従って、本発明は、結合した組み換えタンパク質が、塩濃度を増加させることにより溶離され、そしてプロセス中の、不純物から遊離され、ここで塩濃度の増大が、好ましくはグラジエントにより達成されることを特徴とする、対応する方法に関する。
【0019】
いくつかの場合においては、これの後に、さらなる精製工程を行わなくても十分であり得る。その理由は、溶離したタンパク質が、要求に従って適切に精製されるからである。このような場合において、以下に一層詳細に記載する中和工程が、すぐに使用できる、活性なタンパク質を得るために、直接続く。
【0020】
他の方法では、さらなるクロマトグラフィー工程を、この方法に従って行う。すべての既知のクロマトグラフィー方法を、ここで一般的に用いることができる。詳細には、これは、精製されるべき特定のタンパク質の化学的/物理的特性に依存する。好ましくは、特に、Bet v 1型のアレルゲンおよびアレルゲン変異体の場合において、さらなる精製は、疎水性相互作用クロマトグラフィーにより行う。あるいはまた、ゲル濾過をこの代わりに行うことができる。
【0021】
本発明の方法の好ましい態様は、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびゲル濾過を、好ましくは述べた順序で含む、3工程の方法である。しかし、これは、本発明の方法の限定を意味しない。
従って、本発明はさらに、少なくとも1つのさらなるクロマトグラフィー工程、好ましくは疎水性相互作用クロマトグラフィーおよび/またはゲル濾過を有する、対応する方法に関する。
【0022】
これらのすべての精製工程において、これらが、すでに前に詳細に記載したのと同一の定性的および定量的組成:NaOH、NaClおよび好ましくはNaHCOまたは対応するカリウム誘導体、の溶離剤により行われることが、本発明に必須である。塩化ナトリウム成分の濃度のみを、種々の工程において可変的に調整することができる。従って、例えば、疎水性相互作用クロマトグラフィーにおいて、高濃度(1〜3M、好ましくは2M)から低濃度(30〜10mM、好ましくは20mM)へのNaCl(KCl)グラジエントを用いる。ここで、最終濃度は、最終的に、最後の精製工程の後の所望の塩濃度に依存する。
【0023】
この濃度は、本発明において、生理学的に耐用される溶液の濃度であるべきである。例えば、ゲル濾過が、好ましい3工程の精製方法における最終的な精製工程である場合には、約150mMのNaClを用いる。最後に、最終工程の後の塩の所望の最終濃度を、塩の希釈または添加により制御することができ、これは次に、クロマトグラフィー分離される標的タンパク質の量に依存する。
【0024】
最終的な精製工程(この方法の好ましい態様においてはゲル濾過)の後に、溶液を中和するか、またはタンパク質を、希酸、好ましくはHClを加え、pHを6.5〜8.0に設定することにより再生させる。活性な組み換えタンパク質を有する溶液を、ここで、所要に応じて塩含量(例えばNa)およびタンパク質含量のさらなる調整の後に、製剤化された形態で直接用いることができる。
従って、本発明は、中和を、精製が完了した後に、希酸、特に希HClを好ましくは用いて、6.5〜8.0のpH範囲において実施することを特徴とする、対応する方法に関する。
【0025】
本発明の方法を、以下に、カンバ花粉主要アレルゲンBet v 1、即ち組み換えフラグメントA(アミノ酸1〜74)およびB(アミノ酸75〜164)、および組み換え三量体のアレルゲン変異体の単離の例を用いて、一層詳細に記載する:
精製のために、本来的に不溶性の凝集体を、好ましくは8Mの尿素中で変性させる。あるいはまた、他の剤、例えば0.2Mの水酸化ナトリウム溶液を用いることもできる。
【0026】
第1のクロマトグラフィー精製工程を、陰イオン交換クロマトグラフィーにより、例えばソース(Source)Qにおいて実施する。これにおいて、ほとんどのアレルゲンまたはアレルゲン変異体が、支持体に結合し、最初の変性溶液により溶離剤中に移される。アルカリ性溶離剤により、タンパク質が、溶液に留まる。NaClグラジエント溶離により、細菌不純物および活性成分フラグメントの部分的な除去がもたらされる。
【0027】
2つのさらなる精製工程、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびゲル濾過において、予め精製され、平衡化されたアレルゲンまたはアレルゲン変異体は、実質的に、尚残留する細菌性不純物から分離される。この目的ために、基本的に、低分子量塩基および変化する割合の無機塩からなる同一の溶離剤物質が用いられる。
従って、本発明は、精製されるべき組み換えタンパク質が、温和な条件の下で、精製中に溶液に保持され、効果的な精製をもたらす、特定の溶離剤系に関する。
【0028】
最終的なクロマトグラフィー工程の後に、精製された組み換えタンパク質を、本発明に従って、可溶性形態で単離するか、または対応する酸を用いて溶離剤中に存在する塩基の単純な中和により再生することができる。溶離剤添加剤の濃度を適切に選択した場合には、非経口製剤に適する生理学的溶液が形成される。精製された組み換えアレルゲンまたはアレルゲン変異体は、これらの既知の物理学的、化学的、免疫学的または生物学的特性により、特に等電点電気泳動、SDS−PAGE並びにアレルギー患者の特異的なモノクローナル抗体およびIgE抗体により、同定する。溶媒を、pH測定並びに、NaおよびClおよび所望によりCO3−濃度の定量により試験する。これらの方法は、一般的に知られており、記載されている。本発明において精製され、可溶化された組み換えアレルゲンまたはアレルゲン変異体の収率は、本来的な出発タンパク質を基準として、75〜95%である。
【0029】
このようにして製造されたアレルゲン成分は、患者特異的な感作スペクトルのアレルゲン成分分解同定(allergen component-resolving identification)の一部として、インビボおよびインビトロ診断に、ならびにアレルギーの特異的免疫療法に用いることができる。さらに、貯蔵製剤の形態の医薬製剤を、精製された組み換えタンパク質の転化により製造することができる。
本発明の方法の好ましい態様を、以下に図式的形態で示す(表1):
【0030】
Figure 0005174312
【0031】
従って、まとめると、以下のことを観察することができる:本発明は、このように、実施可能な本発明の方法によって、即ちクロマトグラフィー溶離剤の特定の組成、労力および時間をほとんど要しない、クロマトグラフィー媒体の選択、およびpHの特定の設定、即ち、塩濃度の特定の設定を介して、高度に純粋で、可溶性の組み換えアレルゲンおよびアレルゲン変異体であって、本来的に不溶性凝集体として生成されるものを単離するための、技術的および薬理学的に実施可能で、労力および時間をほとんど要しない製造方法を可能にする。組み換えタンパク質が精製され、再生されるかまたは可溶化される条件が、既知の方法と比較して、温和であり、薬理学的に好適であるため、活性成分を、アレルギー性疾患の診断および非経口療法の両方のために用いることができる。
【0032】
例:
Bet v 1の可溶性アレルゲン変異体の単離
(組み換えBet v 1の治療的に有効なアレルゲン変異体である、フラグメントAおよびB並びにBet v 1三量体)
標準的な方法により精製されたアレルゲン変異体の封入体を、好ましくは、8Mの尿素、20mMのトリス/HCl中で変性させた。完全な変性の後に、濾過、好ましくは0.22〜0.45μmのもの、または遠心分離、好ましくは10,000〜20,000×gでの5〜15分のものを行った。透明にした溶液を、ソース15Q(ファーマシア(Pharmacia))でのイオン交換クロマトグラフィーに用い、支持体材料を、アルカリ性溶液、好ましくは20mMのNaOH、11mMのNaHCOおよび20mMのNaClで平衡化した。支持体材料は、12.0までのpH値において安定でなければならない。
【0033】
出発溶液の比較的高いpHにより、事実上すべての標的タンパク質が、陰イオン交換体に結合する。例外は、等電点が11.0より高い、極めてまれなタンパク質である。固定化されたタンパク質を出発溶液で洗浄することにより、変性溶液(例えば8Mの尿素)および薬理学的に不所望な緩衝物質(例えばトリス)が有効に除去される。この方法により、その後の分離工程を容易にする溶媒への変化が、組み換えタンパク質の可溶性の保持と共に生じることが確実になる。その後の溶離を、例えば20mMのNaOH、11mMのNaHCO、20mMのNaClから20mMのNaOH、11mMのNaHCO、0.5MのNaClへの上昇するNaClグラジエントを用いて行い、不純物(宿主細胞タンパク質)および活性成分フラグメントの分離が達成される。
【0034】
次の、クロマトグラフィー工程は、疎水性相互作用クロマトグラフィーである(フラグメントについてのみ)。この目的ために、工程1からの溶離液を、高モル濃度塩溶液、例えば5MのNaClおよび20mMのNaOH、11mMのNaHCOで、標的タンパク質が結合するように調整した。結合した標的タンパク質の溶離を、低塩または塩非含有アルカリ性溶液、例えば20mMのNaOHを用いて行った。疎水性相互作用クロマトグラフィーに用いる支持体は、同様に、pH12までアルカリ性に安定であり、例えばソースPHEでなければなれない。
【0035】
第3の工程として、ゲル濾過、例えばスーパーデックス75を、アルカリ性条件下で行う。クロマトグラフィー溶液を、溶離剤中に加えられた塩基の中和により、所望の最終的な配合、例えば10mMのNaOH、11mMのNaHCOおよび148.4mMのNaClがもたらされるように選択する。
【0036】
ゲル濾過からの溶離液を、用いられている塩基に対応する酸を用いて最終的に中和し、それにより一方で中性のpHが達成され、従ってタンパク質が可溶化形態に転化されるかまたは再生され、他方で所望の塩含量が中和により達成される。こうして、例えば、10mMのNaOH、11mMのNaHCOおよび148.4mMのNaClを含むゲル濾過溶液は、1/10(v/v)の100mMのHClを加えることにより、生理的食塩水溶液に転化される。溶媒は、pHの簡単な測定およびNaの定量によりテストする。本発明において、この方法は、このように、最小限の試料処理、短い試料放置時間、専ら薬理学的に適合性である物質の使用、単一の溶離剤の多種多様な分離原理との適合性および、時間がかかり、ある状況の下では妥当でない(invalidatable)、例えば透析などの方法の回避を伴う。
【0037】
さらに、有効な静菌剤であることが知られている水酸化ナトリウム溶液は、この中に存在するタンパク質が、微生物により分解されるかまたは汚染されるのを防止する。細菌発現において問題を生じ得る内毒素は、同様に、有効に除去されるかまたは分解される。前記したクロマトグラフィー工程の順序および数は、標的タンパク質の特定の生理化学的特性に依存して変化させることができる。溶液の概略を、表2に示す。
【0038】
ゲル濾過の後の中和/可溶化:
−1/10容積(最初の混合物を基準として)の100mMのHClのゆっくりとした添加。
例えば100mlの出発溶液中には、以下のものが含まれる:
10mMのNaOH、148.4mMのNaCl、11mMのNaHCO
中和後の110ml:
11mMのNaHCO 10/11=10mMのNaHCO
10mMのNaOH/HCl(NaCl)10/11=9.1mMのNaCl
148.4mMのNaCl10/11=134.9mMのNaCl
従って、完成した溶液は、154mMのNa、144mMのClおよび10mMのCO3−から構成される。
【0039】
【表1】
Figure 0005174312
【0040】
すべての溶液およびフラクションは、RTで貯蔵した。(CV=カラム容積。)

Claims (10)

  1. 細菌発現の後に得られた、発現培地に不溶性のタンパク質凝集体からの、可溶性で、アレルギー性疾患の特異的な免疫療法および診断のための使用において活性な、直接的な医学的使用に適する生理学的媒体中に存在する形態でのカンバ花粉主要アレルゲンBet v1精製組み換え変異体;
    Bet v 1三量体
    − Bet v 1のアミノ酸1〜74を含むフラグメントA、または
    − Bet v 1のアミノ酸75〜164を含むフラグメントB
    の製造方法であって、
    以下の工程:
    (i)分離除去した不溶性のタンパク質凝集体を有機変性試薬に導入する工程、
    (ii)(i)からの溶液を、無機の緩衝されていないアルカリ性塩含有溶離剤を用いた少なくとも1つのクロマトグラフィー工程により精製する工程、ここで少なくとも1つのクロマトグラフィー工程が、アルカリ溶液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーである、および
    (iii)溶解され、再生され、かつ生物学的に活性なタンパク質を含む、最終的な精製工程の後に得られたアルカリ性溶液を中和する工程
    を行うことを特徴とする、前記方法。
  2. 用いる変性試薬が、尿素またはグアニジン塩酸塩であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 溶解した組み換えタンパク質をクロマトグラフィー材料に結合させ、変性溶液を、タンパク質の前記クロマトグラフィー材料への結合を確実にする塩濃度を有する、無機の緩衝されていないアルカリ性溶離剤と交換することにより、変性試薬を変性溶液から除去することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
  4. 結合した組み換えタンパク質を、塩濃度を増大させることにより溶離し、プロセス中の不純物から遊離させることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
  5. 塩濃度の増大が、グラジエントにより行われることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
  6. 少なくとも1つのさらなるクロマトグラフィー精製工程を行うことを特徴とする、請求項3〜のいずれかに記載の方法。
  7. 行われるさらなるクロマトグラフィー工程が、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよび/またはゲル濾過であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
  8. 用いるクロマトグラフィー溶離剤が、NaOH、NaHCOおよびNaClであることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  9. 中和を、精製が完了した後に、6.5〜8.0のpH範囲において行うことを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  10. HClを、中和のために用いることを特徴とする、請求項に記載の方法。
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