上述のように、半田を用いてインナーリード8と太陽電池素子Xのバスバー電極(4a、5a)とを接続するときには、あらかじめバスバー電極(4a、5a)の表面に半田の被覆を設けておき、インナーリード8の半田の被覆と合わせて互いに加熱溶着する場合、インナーリード8のみに半田の被覆を設けておき、フラックスを用いる等して電極部に直接、インナーリード8の半田を加熱溶着させる場合等があるが、これらの従来の太陽電池素子X、又は太陽電池モジュールYにおいて、バスバー電極(4a、5a)の長手方向、即ちインナーリード8との接続方向に沿って割れが発生するという問題があった。
この問題に鑑み、発明者らが鋭意検討を行ったところ、次のような事実が判明した。
図7(a)に、図3(c)のA−A線における断面図を示し、図7(b)には、図7(a)のB部における電極の断面にかかるストレスをシミュレーションした図を示す。なお、断面図は構成をわかりやすくするため、要部の寸法を誇張して描いてあり、実際の寸法比率とは異なる。
図7(a)に示すように、出力取り出し端子部分であるバスバー電極(4a、5a)におけるインナーリード8との接続部分において、バスバー電極(4a、5a)は、その端部まで半田6によって覆われている。このとき、図7(b)に表示されているように、表面バスバー電極5aの端部とシリコン基板1表面との境界線付近に最も大きな引張応力が生じ、ストレスが集中しやすい状態となっていることがわかる。
このストレスが原因となって、バスバー電極(4a、5a)下部のシリコン基板1にマイクロクラック等の欠陥が発生し、後工程において、このマイクロクラックを起点に大きなひびや割れに発展するという問題や、出力が充分に取り出せない・出力が低下するといった問題を引き起こすことが判明した。また、特に、太陽電池モジュールは通常、野外に設置されるため日々の温度サイクルによる収縮、膨張が繰り返される。このときのストレスが加重されて、バスバー電極(4a、5a)端部とシリコン基板1の表面との境界線付近にもかかるため、太陽電池素子Xに割れが発生し長期信頼性が低下するという問題が発生する。
さらに、バスバー電極(4a、5a)の長手方向以外であっても半田6によって電極(銀を主成分とする電極)が完全に被覆されていると、その周縁部に沿って割れが生ずる場合がある。これに関しても発明者らが検討した結果、次のような結論を得た。まず、太陽電池素子を構成する基板のシリコンの0℃での熱伝導率は168W・m−1・K−1、電極を構成する銀は428W・m−1・K−1、アルミニウムは236W・m−1・K−1である。またインナーリードを構成する銅は403W・m−1・K−1である。これに対し、半田の熱伝導率は50W・m−1・K−1前後しかなく、その結果、ホットエア等でスポット的に半田を加熱しても、必要部分の半田が溶融するまでに基板表面の銀は全面で昇温してしまうことになる。よってその後、冷却されたときの熱膨張率の違いにより、特に電極の周縁部において、応力の集中が発生しやすい状況にあったものと考えられる。
また、太陽電池モジュールを作る際に、電極に対して半田を被覆したインナーリード8を溶着するが、このときにインナーリード8がずれて、表面バスバー電極5aに接続された表面フィンガー電極5bまで半田が溶着してしまうと半田とインナーリード8を構成する銅との熱膨張の違いや収縮等を原因とするストレスによってマイクロクラック等がさらにひどく発生するという問題もあった。
なお、近年コスト削減の観点から、シリコン基板1の厚みを薄くして半導体材料の使用量を削減するという試みもなされている。シリコン基板1の厚みが薄くなれば、その分衝撃やストレスに対して弱くなり、このような半田によるストレスがかかると割れやクラックの発生頻度が高くなるという問題もある。
なお、特許文献1には、この問題を回避するため、太陽電池素子の裏面、表面及び側面に補強材をつけることで太陽電池素子及びモジュールの製造工程における素子の割れを削減できるという方法が開示されている。しかし、この方法によれば、半導体基板の薄型化に伴う半導体基板のエッジ部における割れを抑制することはできるものの、バスバー電極端部と半導体基板表面との境界線付近にかかるストレスは低減する効果が低いため、マイクロクラック等の欠陥の発生を抑制する効果に乏しい。
本発明はこのような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、太陽電池素子のバスバー電極の長手方向に沿ったエッジ部と半導体基板の境界付近にかかるストレスを低減し、このストレスに起因するマイクロクラック等の欠陥の発生を抑制して、長期信頼性に優れた太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
また本発明の別の目的は、太陽電池素子において銀を主成分とする銀電極の周縁部と半導体基板の境界付近にかかるストレスを低減し、このストレスに起因するマイクロクラック等の欠陥の発生を抑制して、長期信頼性に優れた太陽電池モジュールを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の太陽電池モジュールは、複数枚の太陽電池素子の受光面側及び/又は非受光面側に、出力を外部へ取り出すためのバスバー電極を設け、これらの太陽電池素子の前記バスバー電極同士をインナーリードで接続し、充填材内に封入して成る太陽電池モジュールであって、前記インナーリードと前記バスバー電極とは半田によって接続されるとともに、前記バスバー電極は、前記インナーリードとの接続方向に沿ったエッジ部が前記充填材と直接接触するように構成されて成る。このようにしたので、バスバー電極の長手方向の端部である、インナーリードとの接続方向に沿ったエッジ部が剛性の高い半田によって被覆される代わりに、充填材によって覆われるので、ストレスが緩和されやすい。そのため、太陽電池素子の基板表面とバスバー電極の境界線のうち、その距離が最も短く、応力の集中がおきやすいインナーリードとの接続方向に沿ったエッジ部付近にかかる引張応力を低減することができるから、バスバー電極下部の基板にマイクロクラック等の欠陥の発生を抑制することができ、後工程におけるひびや割れを抑制することができるようになる。
さらに、本発明の太陽電池モジュールは、受光面側及び/又は非受光面側に、銀を主成分とする銀電極を有する複数枚の太陽電池素子と、前記銀電極の少なくとも一部に半田で接続され、前記複数枚の太陽電池素子同士を電気的に接続するインナーリードと、前記複数枚の太陽電池素子と前記インナーリードとをその内部に封入する充填材と、を具備して成る太陽電池モジュールであって、前記銀電極の周縁部は、前記充填材と直接接触するように構成されて成る。このようにすることにより、熱伝導率が高く、インナーリードとの溶着の際の加熱により影響を受けやすい銀を主成分とする銀電極の周縁部が剛性の高い半田によって被覆される代わりに、充填材によって覆われるので、ストレスが緩和されやすい。そのため、太陽電池素子の基板表面と銀電極の周縁部付近にかかる引張応力を低減することができるから、銀電極下部の基板にマイクロクラック等の欠陥の発生を抑制することができ、後工程におけるひびや割れを抑制することができるようになる。また、銀電極が基板表面から剥離することを抑制することができる。
さらに本発明の太陽電池モジュールは受光面側及び/又は非受光面側に、銀を主成分とする銀電極を有する複数枚の太陽電池素子と、前記銀電極の少なくとも一部に半田で接続され、前記複数枚の太陽電池素子と前記インナーリードとをその内部に封入する充填材と、を具備して成る太陽電池モジュールであって、前記銀電極は出力を外部に取り出すバスバー電極と、これに接続される集電用のフィンガー電極とを含んで構成され、前記バスバー電極の周縁部は、前記充填材と直接接触するように構成されて成る。
このように、熱伝導率が高い銀で構成されるうえに、インナーリードとの接続時に加熱されるバスバー電極の周縁部に剛性の高い半田が存在しないことから、太陽電池素子の基板表面と銀電極の周縁部付近にかかる引張応力を低減することができるから、銀電極下部の基板にマイクロクラック等の欠陥の発生を抑制することができ、後工程におけるひびや割れを抑制することができるようになる。また、銀電極が基板表面から剥離することを抑制することができる。
さらに本発明にかかる太陽電池モジュールでは、前記バスバー電極の周縁部が被覆体によって覆われるとともに、この被覆体は充填材と接触するように構成されてなるようにしたので、熱伝導率が高い銀で構成されるうえに、インナーリードとの接続時に加熱されるバスバー電極の周縁部が剛性の高い半田で覆われるかわりに、被覆体で覆われることから、バスバー電極周辺の応力を低減し、バスバー電極付近の基板に発生するクラックの反省を抑制することができる。
さらに、上述の太陽電池モジュールにおいて、前記インナーリードと接続された前記バスバー電極は、そのインナーリードの接続方向に対する中央部の少なくとも一部が半田で被覆されて成るようにすることが望ましい。このようにすれば、特に電極の中央部、具体的には熱溶着すべきポイントに半田が存在してインナーリードと接続されることとなり、接続の信頼性がより高まる。
そして、上述の太陽電池モジュールにおいて、前記インナーリードの幅は、前記バスバー電極の前記インナーリードとの接続方向に対する幅よりも細くして成るようにすることが望ましい。このようにすれば、インナーリードをバスバー電極に熱溶着した際に、バスバー電極の、インナーリードとの接続方向に沿ったエッジ部にインナーリードの半田が流れ込みにくい。したがって、バスバー電極のエッジ部と基板表面との境界線付近におけるストレスの集中を抑制でき、バスバー電極下部の基板にマイクロクラック等の欠陥の発生を抑制することができる。
また、上述の太陽電池モジュールにおいて、前記バスバー電極に対して少なくとも一端部が接続された複数のフィンガー電極をさらに備え、これらのフィンガー電極と前記インナーリードとが半田によって接続されないようにして成るようにすれば、インナーリードとフィンガー電極とが半田によって接続されていない状態となり、フィンガー電極部と基板表面との間におけるストレスの集中を抑制でき、マイクロクラック等の欠陥の発生をさらに抑制することができる。
さらに、上述の太陽電池モジュールにおいて、前記フィンガー電極は、少なくとも前記一端部を被覆する被覆体を備えて成るようにしたので、インナーリードをバスバー電極に熱溶着した際に、インナーリードの接続位置がずれても、被覆体によってフィンガー電極の一端部がカバーされ、フィンガー電極とインナーリードとが半田によって接続されることを防止できる。したがって、フィンガー電極部と基板表面との間におけるストレスの集中を抑制でき、マイクロクラック等の欠陥の発生を抑制することができる。
そして、上述の太陽電池モジュールにおいて、前記被覆体は半田レジストとしたので、ストレスが緩和されやすく、さらに極めて容易に被覆体を形成することができる。
以上説明したように、本発明の太陽電池モジュールは、複数枚の太陽電池素子の受光面側及び/又は非受光面側に、出力を外部へ取り出すためのバスバー電極を設け、これらの太陽電池素子の前記バスバー電極同士をインナーリードで接続し、充填材内に封入して成る太陽電池モジュールであって、前記インナーリードと前記バスバー電極とは半田によって接続されるとともに、前記バスバー電極は、前記インナーリードとの接続方向に沿ったエッジ部が前記充填材と直接接触するか、若しくはこのエッジ部が被覆体によって覆われ、この被覆体は、前記充填材と接触するように構成されて成る。
このようにすることにより、銀を主成分とする電極のうち、インナーリードが接続され、溶着による影響を最も大きく受けるバスバー電極のインナーリードとの接続方向に沿ったエッジ部と半導体基板表面との境界線付近にかかる引張応力を低減することができ、ストレスの集中を抑制できるため、バスバー電極下部の半導体基板にマイクロクラック等の損傷の発生を抑制することができる。よって、後工程におけるひびや割れも低減し、バスバー電極エッジ部と半導体基板表面との境界線付近の引張応力が緩和されているため、日々の温度サイクルストレスによる電極付近における割れを抑制することができる。
本発明の太陽電池モジュールは、受光面側及び/又は非受光面側に、銀を主成分とする銀電極を有する複数枚の太陽電池素子と、前記銀電極の少なくとも一部に半田で接続され、前記複数枚の太陽電池素子同士を電気的に接続するインナーリードと、前記複数枚の太陽電池素子と前記インナーリードとをその内部に封入する充填材と、を具備して成る太陽電池モジュールであって、前記銀電極の周縁部は、前記充填材と直接接触するように構成されて成る。あるいは、前記銀電極の周縁部は、被覆体によって覆われるとともに、この被覆体は、前記充填材と接触するように構成されて成る。
このようにすることにより、熱伝導率が高く、インナーリードとの溶着の際の加熱により影響を受けやすい銀を主成分とする銀電極の周縁部が剛性の高い半田によって被覆される代わりに、充填材によって、直接若しくは半田レジスト等の被覆体を介して覆われるので、ストレスが緩和されやすい。そのため、銀電極の周縁部と半導体基板表面との境界付近にかかる引張応力を低減することができ、ストレスの集中を抑制できるため、銀を主成分とする電極下部の半導体基板にマイクロクラック等の損傷の発生を抑制することができる。よって、後工程におけるひびや割れも低減し、銀電極の周縁部と半導体基板表面との境界線付近の引張応力が緩和されているため、日々の温度サイクルストレスによる電極付近における割れを抑制することができる。さらに、被覆体を用いたときは、インナーリードを熱溶着するときに、半田と濡れ性の良い銀電極の周縁部がこの被覆体によって覆われているので、半田が銀電極の周縁部に流れ込んで、この周縁部を覆う恐れが少ないという利点をも有する。
さらに本発明の太陽電池モジュールは、受光面側及び/又は非受光面側に、銀を主成分とする銀電極を有する複数枚の太陽電池素子と、前記銀電極の少なくとも一部に半田で接続され、前記複数枚の太陽電池素子と前記インナーリードとをその内部に封入する充填材と、を具備して成る太陽電池モジュールであって、前記銀電極は出力を外部に取り出すバスバー電極と、これに接続される集電用のフィンガー電極とを含んで構成され、前記バスバー電極の周縁部は前記充填材と直接接触するように構成されてなる。
このように、熱伝導率が高い銀で構成されるうえに、インナーリードとの接続時に加熱されるバスバー電極の周縁部に剛性の高い半田が存在しないことから、太陽電池素子の基板表面と銀電極の周縁部付近にかかる引張応力を低減することができるから、銀電極下部の基板にマイクロクラック等の欠陥の発生を抑制することができ、後工程におけるひびや割れを抑制することができるようになる。また、銀電極が基板表面から剥離することを抑制することができる。
さらにバスバー電極の周縁部が被覆体によって覆われるとともに、この被覆体は充填材と接触するように構成されれば、熱伝導率が高い銀で構成されるうえに、インナーリードとの接続時に加熱されるバスバー電極の周縁部が剛性の高い半田で覆われるかわりに、被覆体で覆われることから、バスバー電極周辺の応力を低減し、バスバー電極付近の基板に発生するクラックの反省を抑制することができる。またインナーリードを溶着する際に、インナーリードと接続するバスバー電極の周縁が被覆体で覆われていることから、半田が銀電極の周縁部に流れ込んで、この周縁部を覆う恐れが少ないという利点をも有する。
以下、本発明の太陽電池モジュールを添付図面に基づき詳細に説明する。図3(a)は、本発明の太陽電池モジュールにかかる太陽電池素子Xの断面の構造を示す図である。また、図4は、電極形状の一例を示す図であり、(a)は非受光面側(裏面)、(b)は受光面側(表面)である。
図3(a)において、1は半導体基板であるp型のシリコン基板、1aはn型拡散層、2は反射防止膜、3は半導体接合部、4aは裏面バスバー電極、4bは裏面集電用電極、5aは表面バスバー電極を示す。
ここで、太陽電池素子Xの製造工程を説明する。まず、単結晶シリコンや多結晶シリコン等からなるp型半導体のシリコン基板1を準備する。このシリコン基板1は、ボロン(B)等の一導電型半導体不純物を1×1016〜1018atoms/cm3程度含有し、比抵抗1.0〜2.0Ω・cm程度の基板である。単結晶シリコン基板の場合は引き上げ法等によって形成され、多結晶シリコン基板の場合は鋳造法等によって形成される。多結晶シリコン基板は、大量生産が可能であり、製造コスト面で単結晶シリコン基板よりも有利である。引き上げ法や鋳造法によって形成されたインゴットを300μm程度の厚みにスライスして、10cm×10cm又は15cm×15cm程度の大きさに切断してシリコン基板1とする。
その後、基板の切断面を清浄化するために表面をフッ酸やフッ硝酸等でごく微量エッチングする。
次に、シリコン基板1を拡散炉中に配置して、オキシ塩化リン(POCl3)等の不純物元素を含むガス中で熱処理することによって、シリコン基板1の表面部分にリン原子を拡散させてシート抵抗が30〜300Ω/□程度のn型拡散層1aを形成し、半導体接合部3を形成する。
そして、シリコン基板1の表面側のみにn型拡散層1aを残して他の部分を除去した後、純水で洗浄する。このシリコン基板1の表面側以外のn型拡散層1aの除去は、シリコン基板1の表面側にレジスト膜を塗布し、フッ酸と硝酸の混合液を用いてエッチング除去した後、レジスト膜を除去することにより行う。
さらに、シリコン基板1の表面側に反射防止膜2を形成する。この反射防止膜2は例えば窒化シリコン膜等から成り、例えばシラン(SiH4)とアンモニア(NH3)との混合ガスをグロー放電分解でプラズマ化させて堆積させるプラズマCVD法等で形成される。この反射防止膜2は、シリコン基板1との屈折率差等を考慮して、屈折率が1.8〜2.3程度になるように形成され、厚み500〜1000Å程度の厚みに形成される。この窒化シリコン膜は、形成の際に、パッシベーション効果があり、反射防止の機能と併せて、太陽電池の電気特性を向上させる効果がある。
そして、シリコン基板1の表面に銀ペーストを、裏面にはアルミニウムペースト及び銀ペーストを塗布して焼成することにより、表面電極5及び裏面電極4を同時に形成する。
図4(a)に示されるように裏面電極4は裏面から出力を取り出すための裏面バスバー電極4aと裏面集電用電極4bからなる。また、図4(b)に示されるように表面電極5は表面から出力を取り出すための表面バスバー電極5aと、これに直交するように設けられた集電用の表面フィンガー電極5bとから構成される。
裏面集電用電極4bはアルミニウム粉末と有機ビヒクルとガラスフリットをアルミニウム100重量部に対してそれぞれ10〜30重量部、0.1〜5重量部を添加してペースト状にしたアルミニウムペーストを、例えばスクリーン印刷法で印刷し、乾燥後に同時に600〜800℃で1〜30分程度焼成することにより焼き付けられる。このときにシリコン基板1中にアルミニウムが拡散して、裏面で発生したキャリアが再結合することを防ぐ裏面電界層が形成される。
また、裏面バスバー電極4a、表面バスバー電極5a、表面フィンガー電極5bは、銀粉末と有機ビヒクルとガラスフリットを銀100重量部に対してそれぞれ10〜30重量部、0.1〜5重量部を添加してペースト状にした銀ペーストを、例えばスクリーン印刷法で印刷、乾燥後に同時に600〜800℃で1〜30分程度焼成することにより焼き付けられる。なお、表面電極5は、反射防止膜2の電極に相当する部分をエッチング除去して形成しても良いし、もしくは反射防止膜2の上から、ファイアースルーという手法によって直接形成しても良い。
出力取り出し用の裏面バスバー電極4aを形成した後、裏面集電用電極4bを裏面バスバー電極4aの一部を覆わないように形成する。なお、この裏面バスバー電極4aと裏面集電用電極4bを形成する順番はこの逆でも良い。また、裏面電極4においては上記構造をとらず、表面電極5と同様の銀を主成分とするバスバー電極とフィンガー電極で構成された構造としても良い。
太陽電池素子一枚では発生する電気出力が小さいため、複数の太陽電池素子を直並列に接続して、実用的な電気出力が取り出せるようにする必要がある。太陽電池モジュールの一例として、図3(b)に、図3(a)の太陽電池素子Xを組み合わせて構成した太陽電池モジュールYを示す。
図3(b)に示すように、複数の太陽電池素子Xは、インナーリード8によって電気的に接続され、透光性パネル9と裏面保護材11の間にエチレンビニルアセテート共重合体(EVA)等を主成分とする充填材10で気密に封入されて、太陽電池モジュールYを構成している。太陽電池モジュールYの出力は、出力配線12を経て端子ボックス13に接続されている。図3(c)に、図3(b)の太陽電池モジュールYの内部構造の部分拡大図を示す。
図3(c)に示すように、太陽電池素子X1の表面バスバー電極5aと、隣接する太陽電池素子X2の裏面バスバー電極4aとをインナーリード8によって接続して、複数の太陽電池素子X同士が電気的に接続されている。インナーリード8を裏面バスバー電極4aと表面バスバー電極5aの全長もしくは複数箇所、あるいは部分的にホットエア等の熱溶着により接続して、太陽電池素子X同士を接続配線されている。インナーリード8としては、例えば、その表面全体に20〜70μm程度の半田を被覆した厚さ100〜300μm程度の銅箔を所定の長さに切断したものを用いる。
本発明においては、あらかじめ太陽電池素子Xのバスバー電極(4a、5a)の表面には半田を被覆しておかず、インナーリード8に被覆されている半田を溶融させることにより、太陽電池素子Xとインナーリード8を接続することが望ましい。
図1に、図3(c)のA−A線における断面図を示す。なお、断面図は構成をわかりやすくするため、要部の寸法を誇張して描いてあり、実際の寸法比率とは異なる。
この断面図に示すように、本発明においては、裏面バスバー電極4a及び/又は表面バスバー電極5aの長手方向の端部、即ちインナーリードとの接続方向に沿ったエッジ部が充填材10と接する構造になっている。従来は、バスバー電極(4a、5a)のエッジ部が剛性の高い半田6によって被覆されていたが、その代わりに、充填材10によって覆われるので、ストレスが緩和されやすい。したがって、バスバー電極(4a、5a)のエッジ部とシリコン基板1表面との境界線付近にかかる引張応力を低減することができ、ストレスの集中を抑制できるため、バスバー電極(4a、5a)下部のシリコン基板1にマイクロクラック等の欠陥の発生を抑制することができ、後工程におけるひびや割れを抑制することができるようになる。
また屋外に設置した場合の日々の温度サイクルによるストレスが電極付近に集中することが少ないため、長期間使用してもバスバー電極(4a、5a)のインナーリードの接続方向に沿ったエッジ部近傍での割れが発生することを抑制することができる。
本発明において、充填材と直接接触するバスバー電極(4a、5a)のインナーリードの接続方向に沿ったエッジ部領域には、電極のエッジ部と、このエッジ部から所定長さ分内側の領域が含まれる。具体的にはこの所定長さ分内側の領域には、電極のエッジ部から50μm内側の箇所が含まれるようにすることが望ましい。なお、印刷焼成法を用いて形成した電極等のように、電極のエッジ部が薄くなり基板と電極との境界を明確に判定することが難しい場合がある。このような場合は、最表面の主成分が電極を形成する材料の主成分となる箇所をエッジ部と見なして上述の範囲とすれば良い。また、このエッジ部の上限値については、バスバー電極のサイズ等によって異なり、一義的に定められるものではないが、バスバー電極とインナーリードとの接続強度が十分得られるように設定すれば良い。例えば、後述する実施例に示すバスバー電極(幅2mm程度)の場合、この幅の1/4(幅2mmの場合、500μm)を上限の目安とすれば良い。
なお、バスバー電極(4a、5a)は、インナーリードの接続方向の中央部の少なくとも一部が半田6で被覆されるようにすることが望ましい。例えば、あらかじめ半田でバスバー電極(4a、5a)の中央部を被覆しておいても良いし、インナーリード8で接続するときに、電極との中央部を溶着するようにしても良い。このようにすれば、特にバスバー電極(4a、5a)の中央部に必ず半田6が存在してインナーリード8と接続されることとなり、接続の信頼性が高まる。
なお、通常は太陽電池素子の電極部には出力を外部に取り出したり、電極の耐久性を維持したりするために、あらかじめディップ法、噴流式等によって半田を被覆する場合が多いが、本発明の太陽電池モジュールに係る太陽電池素子Xの電極部に半田を被覆しなくても構わない。
また、半田を被覆する場合でも、図1に示すように、太陽電池素子Xの裏面バスバー電極4a及び/又は表面バスバー電極5aの各々のエッジ部が、半田6によって覆われないようにすることが必要である。その方法の一例としては、例えば、裏面バスバー電極4a及び/又は表面バスバー電極5aの中央部にはフラックスを塗布し、端部にはフラックスを塗布しないことによって、バスバー電極(4a、5a)の中央部には半田6が被覆され、端部には半田6が被覆されない本発明の構造にすることができる。
次に、図2に本発明に係る他の実施形態を示す。図2も図1と同様に図3(c)のA−A線における断面図を示す。この実施形態では、裏面バスバー電極4a及び/又は表面バスバー電極5aのインナーリードとの接続方向に沿ったエッジ部は被覆体7の一例である、半田レジストを間に介した状態で充填材10と接触するような構成となっている。このように被覆体7を介して充填材10と接触しており、上述のように、バスバー電極(4a、5a)のエッジ部が剛性の高い半田6によって被覆される代わりに、被覆体7と充填材10によって覆われている。したがって、境界線付近におけるストレスの集中を緩和して抑制でき、バスバー電極(4a、5a)下部のシリコン基板1にマイクロクラック等の損傷の発生を抑制することができる。
このような被覆体7をあらかじめ設けておき、その後、半田被覆されたインナーリード8をバスバー電極(4a、5a)に熱溶着することによって、インナーリード8側から半田6が流れ込んでもバスバー電極(4a、5a)の端部を覆うことを抑制できる。
また、太陽電池素子Xの裏面バスバー電極4a及び/又は表面バスバー電極5aの各々のエッジ部をあらかじめ被覆体7を塗布・硬化させた状態で、ディップ法、噴流式等によって半田を被覆すれば、バスバー電極(4a、5a)のエッジ部を半田6が覆わない構造とすることができる。
このような被覆体7としては、太陽電池モジュールの形成工程において熱がかかることから、耐熱性の樹脂によって構成することが望ましく、その中でも、半田レジストを用いれば、ストレスが緩和されやすく、さらに、印刷やフォトリソグラフィ等によって極めて容易に所定形状の被覆体7を形成することができ、半田に対する耐性を備えていることから望ましい。なお、半田レジストとしては、例えば、エポキシ系の有機硬化樹脂が用いられ、有機硬化樹脂には紫外線硬化型、熱硬化型のものがあり、いずれを用いても良い。
以上のようにして、本発明の太陽電池モジュールを実現することができる。
なお、インナーリード8の幅を、裏面バスバー電極4a及び/又は表面バスバー電極5aの幅よりも細くしておけば、インナーリード8をバスバー電極(4a、5a)に熱溶着した際に、バスバー電極(4a、5a)の端部をインナーリード8の半田によって覆われにくくすることができる。
次に本発明の太陽電池モジュールにつき、好ましい態様について説明する。
本発明の太陽電池モジュールは、図4(b)において説明したように表面バスバー電極5aに対して少なくとも一端部が接続された複数の表面フィンガー電極5bを有しているが、これらの表面フィンガー電極5bとインナーリード8とが半田によって接続されないようにすることが望ましい。
図5は、太陽電池素子の表面側にインナーリード8を接続した場合の図4(b)のD−D方向から見た部分断面図であり、表面フィンガー電極5bを長手方向に縦断した表面側の断面構造を示し、インナーリード8が図の正面から見て左にずれた状態をなっている。
図5(a)に示すように、インナーリード8と太陽電池素子の電極とを電気的に接続している半田6は、インナーリード8と表面バスバー電極5aとの間に存在し、インナーリード8と表面フィンガー電極5bとは半田で接続されていない。インナーリード8を半田によって接続する装置(タブ付け装置)の位置決め精度によっては、このようにインナーリード8が表面フィンガー電極5bの上にはみ出すことがしばしば発生する可能性があるが、ここで説明したように、インナーリード8と表面フィンガー電極5bとが相互に半田で接続されていない状態となっていれば、表面フィンガー電極5bとシリコン基板1の表面との間におけるストレスの集中を抑制でき、マイクロクラック等の欠陥の発生を抑制することができる。
なお、インナーリード8は半田によって被覆されていたり、表面フィンガー電極5bに半田が付着したりしていても、相互に半田で接続されていなければ本発明の効果を奏する。具体的には、この領域Eにおいて、インナーリード8と表面フィンガー電極5bとが単に接触したり(半田による接続を伴わず)、各部材の形状と配置状態によって定まる所定距離をおいて離間したりした状態となっている。なお、太陽電池モジュールの形成時に充填材10によって気密に封入する工程で、流れ込んだEVA等の充填材10を介して離間していても構わない。
このようにインナーリード8と表面フィンガー電極5bとが相互に半田で接続されないような状態とするためには、例えば、複数の太陽電池素子同士をインナーリード8によって半田を溶かして熱溶着する際に、あらかじめ接続したい表面バスバー電極5aにフラックスを塗布し、表面フィンガー電極5bにはフラックスを塗布しないようにしておけば良い。フラックスが塗布された箇所は、加熱によって表面が活性化し、酸化膜が除去されて半田との濡れ性が向上するが、表面フィンガー電極5bを構成する銀において、フラックスがないと表面酸化膜を除去できず、半田との濡れ性が悪い。したがって、表面フィンガー電極5bの箇所にフラックスを塗布しないようにしておけば、上述のインナーリード8と表面フィンガー電極5bとが相互に半田で接続されていない本発明の構成を容易に得ることができる。特に、電極表面に半田を被覆していないいわゆる半田レス型の太陽電池素子同士の接続で明確な効果を奏する。
また、図5(b)に示すように、表面フィンガー電極5bが表面バスバー電極5aに接続した一端部を被覆する被覆体14を設けて、インナーリード8と表面フィンガー電極5bとが相互に半田で接続されない本発明の構成を得るようにしても良い。
図6に図4(b)のC部の部分拡大図を示す。図6(a)に示すように、表面フィンガー電極5bが表面バスバー電極5aに接続した一端部を被覆体14によって覆うようにすれば良いし、図6(b)に示すように、被覆体14’は表面バスバー電極5aの長手方向の端部と表面フィンガー電極5bが表面バスバー電極5aに接続した一端部とを同時に覆うようにしても良い。
このような被覆体14を設けることによって、インナーリード8を表面バスバー電極5aに熱溶着した際に、図に示すようにインナーリード8の接続位置がずれても、この被覆体14によって表面フィンガー電極5bの一端部がカバーされているので、表面フィンガー電極5bとインナーリード8とが半田によって接続されることを防止できる。したがって、表面フィンガー電極5bと基板1の表面との間におけるストレスの集中を抑制でき、マイクロクラック等の欠陥の発生を抑制することができる。
なお、被覆体14は、太陽電池モジュールの形成工程において熱がかかることから、耐熱性の樹脂によって構成することが望ましく、その中でも、半田レジストを用いれば、表面フィンガー電極5bが半田レジストの被覆体14を介して充填材によって覆われた構成となる。その結果、ストレスが緩和されやすく、さらに、印刷やフォトリソグラフィ等によって極めて容易に所定形状の被覆体を形成することができ、半田に対する耐性も備えていることから望ましい。また、図6(b)に示す形状で被覆体14’を形成する場合、図2の説明において詳述した半田レジストを兼ねて同時形成することができるので、工程数を減らすことができ、コストの点からも望ましい。
また被覆体14、14’を設ける領域は、表面フィンガー電極5bが表面バスバー電極5aに接続された一端部から5mm以下の範囲とすることが望ましい。この範囲を超えると光照射領域を遮って変換効率を下げてしまう作用が顕著となるからである。なお、下限については、インナーリード8を半田によって接続する装置(タブ付け装置)の位置決め精度の範囲、すなわちインナーリード8がずれてはみ出す可能性のある範囲について、確実に被覆体によって被覆するように下限値を設定すれば良い。
以上、図5、図6において説明した本発明の太陽電池モジュールに係るフィンガー電極としては、表面側に限定して説明したが、また、裏面側においても、表面側の電極と同様に銀を主成分とするバスバー電極とフィンガー電極で構成された構造とし、表面側と全く同様にして、フィンガー電極とインナーリードとが半田によって接続されない構造としても構わない。
次に、本発明の太陽電池モジュールの別の態様について説明する。
図8は、本発明の請求項3若しくは請求項4に記載した太陽電池モジュールに係る太陽電池素子の一実施例を示す模式図であり、(a)は非受光面側(裏面)の一例、(b)は受光面側(表面)の一例を示す。また、図9(a)、(b)に、図8に図示された太陽電池素子にインナーリードを半田で接続した状態における断面構造を示す。
図に示した例では、シリコン基板21の表面に銀を主成分とした銀電極として、バスバー電極24a、25a、フィンガー電極25bが形成され、これらの銀電極の周縁部24c、25cに充填材28と直接接触する領域(図9(a)参照)、若しくは半田レジスト等の被覆体27(図9(b)参照)を介して充填材28に被覆される領域が形成されている。
図9の断面図に示すように、本発明においては、銀を主成分とする銀電極(24a、25a、25b)の周縁部(24c、25c)が充填材28と接する構造になっている。従来は、例えば、図7に示すように、この領域が剛性の高い半田26によって被覆されていたが、その代わりに、充填材28によって覆われるので、ストレスが緩和されやすい。したがって、銀電極の周縁部24c、25cとシリコン基板21表面との境界線付近にかかる引張応力を低減することができ、ストレスの集中を抑制できるため、銀電極下部のシリコン基板21におけるマイクロクラック等の欠陥の発生を抑制することができ、後工程におけるひびや割れを抑制することができるようになる。
また屋外に設置した場合、日々の温度サイクルによるストレスが電極のエッジ部付近に集中することが少ないため、長期間使用した場合に銀電極近傍での割れが発生することを抑制することができる。
このように銀電極(24a、25a、25b)の周縁部(24c、25c)が充填材28と直接接触している構造とするためには、例えば、銀電極24a、25a、25bの中央部にはフラックスを塗布し、周縁部24c、25cにはフラックスを塗布しないことによって、銀電極24a、25a、25bの中央部には半田が被覆され、周縁部24c、25cには半田が被覆されない本発明の構造にすることができる。また、銀電極(24a、25a、25b)の周縁部(24c、25c)が充填材28と直接接触した被覆体27によって覆われる構造とするためには、あらかじめ被覆体27、例えば半田レジスト等をこの領域上に塗布・硬化させた状態で、半田を被覆すれば良い。被覆体27は、太陽電池モジュールの形成工程において熱がかかることから、耐熱性の樹脂によって構成することが望ましい。さらに、印刷やフォトリソグラフィ等によって極めて容易に所定形状の被覆体を形成することができ、半田に対する耐性も備えていることから半田レジストを用いることが望ましい。
なお、本実施形態に係るバスバー電極24a、25aとは、インナーリード30と接続する電極のことであり、その形状や本数に影響されるものではない。図10は本実施形態に係る太陽電池素子において、非受光面側(裏面)の変形例を示した図である。図10(a)、(b)に示したように、矩形のドット状のバスバー電極であっても、本発明の効果を有効に発揮することができる。また矩形以外に、多角形、楕円、円等の形状であっても良い。さらに図10(c)に示すように、ライン部から突出させた突出部を設けた、櫛歯を変形させた電極形状であっても、インナーリード30と接続される電極部分をバスバー電極と見なし、このバスバー電極24a、25aの周縁部24c、25cが充填材28と直接、若しくは被覆体27を介して充填材28に覆われていれば、本発明の構成と見なしうる。例えば、図10(c)の場合、インナーリード30と接続する部分がライン部であれば、そのライン部が本発明に係るバスバー電極の構造を有していれば良く、突出部にインナーリード30を接続するのであれば、その突出部が本発明に係るバスバー電極の構造を有していれば良い。また本数も図示した2本(組)にとらわれるものでなく、1本(組)であっても、また3本(組)もしくはそれ以上であっても構わない。
なお、本実施形態に係るバスバー電極において、充填材と直接接触するバスバー電極24a、25aの周縁部24c、25cの領域は、電極のエッジ部と、このエッジ部から所定長さ分内側の領域が含まれる。具体的にはこの所定長さ分内側の領域には、電極のエッジ部から50μm内側の箇所が含まれるようにすることが望ましい。なお、印刷焼成法を用いて形成した電極等のように、電極のエッジ部が薄くなり基板と電極との境界を明確に判定することが難しい場合がある。このような場合は、最表面の主成分が電極を形成する材料の主成分となる箇所をエッジ部と見なして上述の範囲とすれば良い。また、このエッジ部の上限値については、バスバー電極のサイズ等によって異なり、一義的に定められるものではないが、バスバー電極とインナーリードとの接続強度が十分得られるように設定すれば良い。例えば、後述する実施例に示すバスバー電極(幅2mm程度)の場合、この幅の1/4(幅2mmの場合、500μm)を上限の目安とすれば良い。
なお、本発明の実施形態は上述の例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得る。
例えば上述の説明では、表面バスバー電極5aに対して、表面フィンガー電極5bの一端部が略直交して接続された例によって説明したが、直交せずに斜め方向から接続していても構わないし、さらに表面フィンガー電極5bの両端部が表面バスバー電極5aに接続され、閉じた形状となっていても構わない。
さらに、上述の説明では、フィンガー電極として、太陽電池素子の受光面側に設けられた表面フィンガー電極5bとして説明したが、これに限るものではなく、本発明でいうフィンガー電極とは、インナーリードと接続されるバスバー電極に接続された集電用の電極を指し、非受光面側に設けられていても良い。また、フィンガー電極の本数や形状についても、上述の説明に制限されるものではない。図11に受光面側に設けたフィンガー電極とバスバー電極の一例を示す。例えば、図11(a)に示すように二本のバスバー電極に接続されたフィンガー電極の長さは、バスバー電極よりも短くても構わないし、図11(b)に示すように複数のバスバー電極と直交する形状であっても良い。またバスバー電極に直交せず、バスバー電極と鋭角もしくは鈍角を形成して接続されても良い。また、フィンガー電極の形状は、直線状に限るものでもなく曲線状であっても良い。
また上述の説明では、p型シリコン基板を用いた太陽電池について説明したが、n型シリコン基板を用いた場合にも、説明中の極性を逆にすれば同様のプロセスによって本発明の効果を得ることができる。さらに上述の説明では、シングル接合の場合について説明したが、半導体多層膜からなる薄膜接合層をバルク基板使用接合素子に積層して形成した多接合型であっても、本発明を適用することができる。
そして上述の説明では、キャスティング法を用いた多結晶シリコン基板を例にとったが、基板はキャスティング法によるものに限る必要はなく、また多結晶シリコンに限る必要はない。また、半導体基板に限定されることもなく、半導体薄膜であっても良い。またシリコン材料に限定されることもなく、半導体一般に適用できる。すなわち、化合物系や有機物系の太陽電池にも適用できる。
以下、本発明の実施例を説明する。
図3(a)に示すように、外形が15cm×15cmで、抵抗1.5Ω・cmの多結晶のp型のシリコン基板1表面のダメージ層をアルカリでエッチングして洗浄した。次に、このシリコン基板1を拡散炉中に配置して、オキシ塩化リン(POCl3)の中で加熱することによって、シリコン基板1の表面にリン原子を1×1017atoms/cm3の濃度となるように拡散させて、n型拡散層1aを形成した。その上にプラズマCVD法によって反射防止膜2となる厚み850Åの窒化シリコン膜を形成した。
このシリコン基板1の裏面側に裏面集電用電極4bを形成するために、アルミニウム粉末と有機ビヒクルとガラスフリットをアルミニウム100重量部に対してそれぞれ20重量部、3重量部を添加してペースト状にしたアルミニウムペーストをスクリーン印刷法によって塗布して乾燥させた。そして、裏面側に裏面バスバー電極4aを、表面側に表面電極5(表面バスバー電極5a、表面フィンガー電極5b)を形成するために、銀粉末と有機ビヒクルとガラスフリットを銀100重量部に対してそれぞれ20重量部、3重量部を添加してペースト状にした銀ペーストをスクリーン印刷法で塗布して乾燥させた。その後、750℃で15分間焼き付けて、表面バスバー電極5a及び裏面バスバー電極4aの幅をそれぞれ2mmで、表裏面に同時に電極を形成した。
ここで、試料No.1として、表面バスバー電極5aの端部に被覆体7として半田レジストを印刷して乾燥させたものに、ディップ法で電極に半田6を被覆し、本発明の太陽電池モジュールに係る太陽電池素子を形成した。また、試料No.2として、半田レジストの被覆体7を用いずに、同様にディップ法で電極の全面に半田6を被覆し、図7(a)に示した従来の形態の太陽電池素子を形成した。なお、半田はSn−3Ag−0.5CuのPbフリー半田を用いた。
また、試料No.3として半田レジストの被覆体7を用いずに、バスバー電極(4a、5a)の長手方向の中央部のみにディスペンサーを用いて半田ペーストを塗布し、半田6で被覆部を作製した本発明の太陽電池モジュールに係る太陽電池素子を作製した。
さらに、試料No.4、5として電極を半田6で被覆しない試料も作製した。
次に、約30μmの厚みを有する半田層を設けた幅1.8mm、厚さ200μmの銅箔製のインナーリード8を、それぞれのバスバー電極(4a、5a)の全長にわたってホットエアの熱溶着により貼り付けて、上述の太陽電池素子同士を接続配線した。このとき、試料No.3と4は、インナーリード8の中央部のみ熱溶着で固定するようにした。また、試料No.5は、インナーリード8の幅が2.2mmと接続する電極の幅よりも大きいものを用い、電極とは全面を熱溶着するようにした。
その後、上述のようにして太陽電池素子同士を接続配線したものを図3(b)に示すように、透光性パネル9と裏面保護材11との間に充填材10として、EVA(エチレンビニルアセテート共重合体)を用いて封入して図2に示した断面構造を有する太陽電池モジュールを形成した。
これらの太陽電池素子について、4点曲げによる破壊強度試験を行い、破壊強度(N)を求めた。また、太陽電池モジュールにおいて3000N/m2の圧力をかける静荷重試験において封入した太陽電池素子のマイクロクラック発生率を調べた。マイクロクラック発生率は、倍率40倍の双眼顕微鏡を用いて調べ、静荷重試験に用いた全ての太陽電池モジュールYの太陽電池素子Xの全枚数に対するマイクロクラックが発生した太陽電池素子Xの枚数を割合で示したものである。
これらの結果を表1に示す。
試料No.1は、表面バスバー電極5aの長手方向の端部と充填材10であるEVAとの間に半田レジストの被覆体7を介在した本発明の試料となり、破壊強度は25N、マイクロクラック発生率は0%となり、発明の効果が確認された。
一方、試料No.2は、すべてのバスバー電極(4a、5a)の端部が半田6によって被覆された状態となり、充填材10であるEVAと直接あるいは半田レジストの被覆体7を介して接触していない本発明の範囲外の試料となった。破壊強度は15N、マイクロクラック発生率は50%となり、不満足な結果となった。
試料No.3は、バスバー電極(4a、5a)の中央部にのみ半田6を被覆し、インナーリード8の中央部を溶着するようにした結果、完成した太陽電池モジュールは、電極の端部と充填材10とが直接接触した本発明に係る形態となっている。そして、この場合、太陽電池素子の破壊強度は23N、マイクロクラック発生率は0%であり、発明の効果が確認された。
また、試料No.4は、バスバー電極(4a、5a)に半田6を被覆しない試料であり、インナーリード8に被覆された半田を利用し、インナーリード8の中央部を溶着するようにした結果、完成した太陽電池モジュールは、電極の端部と充填材10とが直接接触した本発明に係る形態となっている。そして、この場合、太陽電池素子の破壊強度は24N、マイクロクラック発生率は0%であり、発明の効果が確認された。
試料No.5は、バスバー電極(4a、5a)に半田6を被覆しない試料であるが、バスバー電極(4a、5a)の幅よりも大きい幅2.2mmのインナーリード8を用いて全面をホットエアで溶着したところ、バスバー電極(4a、5a)の端部に半田6が被覆されてしまい、電極の端部と充填材10とが接触しない本発明の範囲外の構成となった。その結果、破壊強度は15N、マイクロクラック発生率は40%となり、不満足な結果であった。
このように、本発明によって、バスバー電極(4a、5a)の端部に半田6が被覆されず、充填材10と直接あるいは半田レジストの被覆体7を介して接触しているように構成したことによって、バスバー電極の端部と基板表面との境界線付近におけるストレスの集中を抑制でき、そのため破壊強度は高くなり、またバスバー電極下部の基板へのマイクロクラックの発生を抑制することができることを確認した。
実施例1と全く同様にして、図3(a)に示す太陽電池素子を形成した。その後、表面バスバー電極5aに対して表面フィンガー電極5bが接続した一端部から1mmまでのフィンガー電極側の領域に半田レジストを図6(b)に示すパターンで印刷塗布して熱硬化させ、被覆体14’を形成した。その後、半田を銅箔に被覆したインナーリード8の熱溶着を行った。この際、わざとインナーリード8の位置をずらして、インナーリード8を表面バスバー電極5aからはみ出させて、これらを半田により意図的に接続しようとしたが、半田レジストの被覆体14’を設けた試料については、どのようにしても相互に接続されることはなかった。また、被覆体を設けない試料については、表面フィンガー電極5bにフラックスを塗布した場合に相互に接続された。銅箔の半田はSn−3Ag−0.5CuのPbフリー半田を用いている。
このようにして作製した試料について、実施例1に記載したマイクロクラック発生率により評価を実施した。結果を表2に示す。
表2に示す通り、試料No.6、7はインナーリード8が表面バスバー電極5aからずれていない場合であり、半田レジストの被覆体14’の有無に関わらず、インナーリード8と表面フィンガー電極5bとの間に半田による接続は発生せずクラックは発生しなかった。
インナーリード8が表面フィンガー電極5b側に0.3mmずれた場合(試料No.8〜10)は、半田レジストの被覆体14’が設けられている場合(試料No.8)は、インナーリード8と表面フィンガー電極5bとの間に半田による接続は発生せず、クラックは発生しなかった。半田レジストの被覆体14’がない場合は、表面フィンガー電極5bにフラックスを塗布してインナーリード8との間に半田による接続を意図的に発生させた場合(試料No.9)はマイクロクラックの発生率が30%となったが、フラックスを塗布しない場合(試料No.10)は、インナーリード8と表面フィンガー電極5bとの間に半田による接続は発生せずクラックは発生しなかった。
インナーリード8が表面フィンガー電極5b側に0.3mmずれた場合(試料No.11〜13)は、半田レジストの被覆体14’が設けられている場合(試料No.11)は、インナーリード8と表面フィンガー電極5bとの間に半田による接続は発生せず、クラックは発生しなかった。半田レジストの被覆体14’がない場合は、表面フィンガー電極5bにフラックスを塗布してインナーリード8との間に半田による接続を意図的に発生させた場合(試料No.12)はマイクロクラックの発生率が50%となったが、フラックスを塗布しない場合(試料No.13)は、インナーリード8と表面フィンガー電極5bとの間に半田による接続は発生せずクラックは発生しなかった。