JP5172614B2 - 電気泳動装置およびその構成器具 - Google Patents

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Description

本発明は、被分離物質からの光を検出する光検出手段を備える電気泳動装置およびその構成器具に関するものであり、より具体的には、蛍光標識されたDNA、RNA、またはタンパク質の検出に好適な電気泳動装置およびその構成器具に関するものである。
ヒトゲノムプロジェクトが終了した後、プロテオーム研究が盛んに行われている。プロテオームとは、特定の細胞、器官、臓器の中で翻訳生産されているタンパク質全体が意図され、その研究としては、タンパク質のプロファイリング等が挙げられている。
タンパク質をプロファイリングする方法の一つとして、二次元電気泳動法がよく用いられている(例えば特許文献1および非特許文献1参照)。二次元電気泳動法は、始めにタンパク質の固有の電荷に依存して分離を行い、次にタンパク質の分子量に依存して分離を行う、等電点電気泳動(一次元目)とSDS−PAGE(二次元目)とを組み合わせた手法である。この方法では、タンパク質は最終的にゲル中に二次元的に分離される。
また、タンパク質をプロファイリングする方法として、上述のような電気泳動と抗原抗体反応とを組み合わせた方法であるウェスタンブロッティング法が古くから知られている。ウェスタンブロッティング法は、電気泳動の優れた分解能と抗原抗体反応の高い特異性を組み合わせて、タンパク質混合物から特定のタンパク質を検出する方法である。ウェスタンブロッティング法では、電気泳動により分離されたタンパク質を、抗体と反応させて検出する。この検出法には、酵素を用いる系や、蛍光を用いる系などがある。酵素を用いる系は、AP(Alkaline phosphatase)やHRP(Horse radish peroxidase)などで標識した二次抗体を一次抗体に反応させて、酵素活性による発色や化学発光などにより検出する方法である。化学発光による検出は、露光検出のためのX線フィルムや、化学発光の検出が可能なスキャナなどを必要とするが、発光法に比べて10〜50倍以上も感度が高いため、微量タンパク質の検出を行うことが容易である。また、蛍光を用いる系は、蛍光色素(例えばCy3やCy5)により標識した二次抗体を蛍光検出するため、定量性に優れた方法である。
上述したようなウェスタンブロッティング法は、細胞抽出液などの複雑なタンパク質溶液中に微量に含まれるタンパク質であっても、明瞭に検出することが可能であり、ライフサイエンスの様々な分野において、目的タンパク質の検出や解析のために利用されている。
特開平11−30605号公報(平成11年2月2日公開) アマシャムファルマシアバイオテク編「より高感度・定量的な検出解析のための電気泳動最新プロトコール 汎用操作からゲルノミクスとプロテオミクスまで対応」、羊土社、2000年、p.55〜108
しかしながら、ウェスタンブロッティング法によるタンパク質の解析では、電気泳動等装置の他に、上述したような蛍光や化学発光を検出するために、高価かつ大型である光検出装置を必要とするという問題があった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ウェスタンブロッティング法に替えて用いることができる優れた解析技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、光検出装置と電気泳動装置とを組み合わせることによって、迅速かつ簡易な解析が可能になることを見出し、発明を完成させた。従来の解析に用いられる光検出装置(例えば、Typhoon(GEヘルスケアバイオサイエンス製))はラインスキャンを行うものであるため巨大となり、光検出装置と電気泳動装置とを組み合わせることは困難であると考えられていた。
すなわち、本発明に係る電気泳動装置は、上記課題を解決するために、被分離物質をゲル中で分離する電気泳動装置であって、上記ゲルを支持する平面を有する基板と、上記被分離物質からの光を検出する光検出手段とを備えており、上記光検出手段は、上記平面上に二次元アレイ状に配置された、上記被分離物質からの光を受光する複数の受光部を備えていることを特徴としている。
上記構成では、ゲルを支持する基板の平面上に複数の受光部が二次元アレイ状に配置されている。ここで、二次元アレイ状とは、平面上に縦横に列を成して散在している状態を意味する。
上記構成によれば、ゲル中の被分離物質が蛍光色素によって標識された後であれば、複数の受光部が、基板の支持するゲル中の被分離物質からの光を受光する。よって、複数の受光部を有する光検出手段は、ゲル中の被分離物質分離物質からの光を短時間で検出することができるため、ゲル中の被分離物質の二次元イメージを短時間かつ簡便な作業にて取得することが可能な優れた解析装置を提供できる。
また、本発明に係る電気泳動装置では、上記被分離物質が、蛍光標識されていることが好ましい。
上記構成によれば、あらかじめ蛍光標識された被分離物質がゲル中で分離される。このため、分離後のゲルを基板上に置いたままの状態で、光検出手段が被分離物質からの光を検出することができる。したがって、被分離物質の評価を迅速に行うことができる。
また、本発明に係る電気泳動装置では、上記受光部は、フォトダイオードであることが好ましい。
上記構成によれば、分離後の被分離物質の蛍光を高感度で検知することができる。
また、本発明に係る電気泳動装置では、上記受光部は、連続粒界結晶シリコン、低温ポリシリコン、高温ポリシリコン、またはアモルファスシリコンを含んでなることを特徴とすることが好ましい。
上記構成によれば、ガラスまたはフィルム等から成る基板に対して、受光部を形成することが容易となる。
また、本発明に係る電気泳動装置では、上記光検出手段はCMOSイメージセンサまたはCCDイメージセンサであることが好ましい。
上記構成によれば、光検出手段からデジタル信号を直接出力することでき、データ処理にかかる時間を短縮することができる。
また、本発明に係る電気泳動装置は、励起光を上記ゲルに照射する励起照射手段をさらに備えていることが好ましい。
上記構成によれば、サンプルからの光を直接検出するだけでなく、励起光によって発光したサンプルの蛍光を検出することもできる。
また、本発明に係る電気泳動装置は、上記ゲルと上記受光部との間に、ダイクロイックミラーが設けられていることが好ましい。
上記構成によれば、サンプルの蛍光以外の波長を有する光がカットされるため、光検出手段は、サンプルの蛍光が微弱であっても、この蛍光を検出することができる。
本発明に係る電気泳動装置の構成器具は、上述の電気泳動装置電気泳動装置に用いられる、電気泳動装置の構成器具であって、上記基板および上記光検出手段を備えていることを特徴としている。
上記構成によれば、光検出手段を備える構成器具を電気泳動装置に対して脱着可能に設けることができる。
本発明に係る電気泳動装置によれば、二次元アレイ状に配置された受光部を有しているので、ゲル中に二次元的に分離された被分離物質の蛍光であっても迅速に検出し、ゲルイメージを短時間かつ簡便な作業にて取得することが可能な優れた解析装置を提供できる。
本発明の一実施形態について図1から図3に基づいて説明すると以下の通りである。なお、本実施形態では、電気泳動装置10が、二次元電気泳動装置100に組み込まれているものとして説明するが、本発明はこれに限られず、単体で利用されるものであってもよい。
(二次元電気泳動装置100)
まず、二次元電気泳動装置100の概略構成について、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態に係る二次元電気泳動装置100を示す模式図である。
図2に示すように、二次元電気泳動装置100は、等電点によりサンプルを分離する一次元目電気泳動領域101と、分子量によりサンプルを分離する二次元目電気泳動領域102(電気泳動装置10)と、抗原抗体反応を用いてサンプルを検出する免疫反応領域103とから構成されている。
一次元目電気泳動領域101には、サンプル導入および膨潤槽106、等電点電気泳動槽107、ならびにSDS平衡化槽108が設けられている。サンプル導入および膨潤槽106では、支持体104の先端に支持された固定化pH勾配(Immobilized pH Gradient、IPG)ゲル105に対してサンプルが導入される。
等電点電気泳動槽107では等電点電気泳動が行われ、固定化pH勾配ゲル105中のサンプルは、タンパク質の等電点の違いによって分離(Isoelectric Focusing、IEF)される。また、SDS平衡化槽108では、分離された固定化pH勾配ゲル105中のサンプルにSDSが導入される。
SDS平衡化槽108における処理が終わった後、固定化pH勾配ゲル105は、電気泳動装置1に運ばれ、ゲル(SDS−PAGE用ゲル)6のサンプル導入領域に配置される。電気泳動装置10では、SDS−PAGEが行われる。その後、そのまま電気泳動装置1の備える光検出手段によって、ゲル6中のサンプルが直ちに検出される。
なお、本実施形態におけるサンプル(被分離物質)は、タンパク質抽出物であればよいが、本発明はこれに限定されず、電気泳動によって分析すべき物質であればよい。具体的には、生物材料(例えば、生物個体、体液、細胞株、組織培養物、または組織断片)からの調製物を好適に用いることができ、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドをより好適に用いることができる。
また、本発明におけるサンプルは、転写膜への転写工程を行わずにゲル6から検出できる蛍光色素によって染色されればよい。さらに、電気泳動装置1において分離後のサンプルを迅速に検出するためには、電気泳動前に、サンプルがあらかじめ蛍光色素によって標識されていることが好ましい。
サンプルの染色には、例えばシアニン系色素であるCy2、Cy3、またはCy5などを用いればよい。
ただし、電気泳動装置1における電気泳動後、ゲル6の処理を必要とする場合には、反応層109を有する免疫反応領域103にゲル6を移動し、好適なサンプル解析(抗原抗体反応等)を行った後に、サンプル検出を行ってもよい。
(電気泳動装置10)
次に、電気泳動装置10の構成について以下に説明する。
図2に示すように、電気泳動装置10は、緩衝液槽2および3、分離電極(第1電圧印加手段)4および5、上部基板7、ならびに下部基板8を備えている。緩衝液槽2および3は緩衝液を充填するために用いられる。緩衝液としては、一般に電気泳動に用いられる組成の緩衝液を用いればよい。緩衝液槽2内には分離電極4が設けられており、また、緩衝液槽3内には分離電極5が設けられている。
上部基板7および下部基板8は、緩衝液槽2および3の間に配置され、上部基板7と下部基板8との間にはゲル6が配置される。下部基板8におけるゲル6と接する面には、後述にて詳細に説明するが、光検出手段としてイメージセンサが設けられている。
なお、ゲル6としては、タンパク質の分離に好適なポリアクリルアミドゲルであることが好ましいが、本発明はこれに限られず、アガロースゲルなど一般な電気泳動に用いられるゲルであってもよい。また、シャープな分離パターンを得るために濃縮ゲルが用いられてもよい。
分離電極4をマイナス(−)の電位にし、分離電極5をプラス(+)の電位にすることによって、SDSによって平衡化されたサンプルはゲル6中でマイナスからプラス方向に向けて移動し、好適に分離される。電気泳動後は、下部基板8上にゲル6を配置したままの状態で、サンプルの分離パターンの検出を直ちに行うことができる。
次に、本実施形態に係る光検出手段について図1(a)(b)を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る光検出手段は、下部基板8上のゲル6と接する面に形成されたイメージセンサを備える。本実施形態では、イメージセンサとしてCMOS(Complementary metal oxide semiconductor、相補性金属酸化膜半導体素子)イメージセンサを用いている。ここで、CMOSイメージセンサが形成された下部基板8を構成器具1とする。構成器具1は、電気泳動装置10の脱着可能な部品である。イメージセンサとしてCMOSイメージセンサを用いた場合には、構成器具1をCMOSロジック半導体製造プロセスの応用によって大量生産することが可能である。ただし、本発明はこれに限られず、イメージセンとして、CCD(Charge Coupled devices、電荷結合素子)イメージセンサを用いてもよい。
図1(a)に示すように、CMOSイメージセンサは単位セル毎にフォトダイオード(受光部)9を備えている。図1(a)は、下部基板8およびゲル6を示す斜視図である。
フォトダイオード9は下部基板8上に2次元アレイ状に配列されている。フォトダイオード9はPN接合を用いた光検出センサであり、ゲル6からの蛍光を受光し、電気信号に変換する。
フォトダイオード9を形成する材料としては、種々の半導体材料を用いることができるが、フォトダイオード9をCMOSロジック半導体製造プロセスの応用によって形成する場合、CGS(Continuous Grain Silicon、連続粒界結晶シリコン)、低温ポリシリコン、高温ポリシリコン、またはアモルファスシリコン等の半導体材料を用いることが好ましい。また、フォトダイオード9が形成される下部基板8としては、透明な素材を用いることが好ましく、具体的には、無アルカリガラスおよび石英等のガラス基板、PET(Polyethylene Terephthalate、ポリエチレンテレフタラート)等のフィルム、またはアクリル等のプラスチック板を用いればよい。
上述の材料を用いれば、従来のシリコン半導体製造プロセスを用いることによって、下部基板8にフォトダイオード9を形成することが容易にできる。また、構成器具1と、ダイオード9とをモノリシックに構成することができるだけでなく、高解像度を有する二次元イメージを取得することができる。
また、図1(b)に示すように、CMOSイメージセンサは、単位セル毎に、フォトダイオード9に対して増幅回路11とTFTスイッチ12とを有する。図1(b)は、下部基板8に形成されたCMOSイメージセンサの回路図である。各単位セルは、ゲート線13およびデータ線14に接続されており、ゲート線13およびデータ線14は、横列変換回路15および縦列変換回路16によってそれぞれ制御される。フォトダイオード9による電気信号変換後、ゲート線13に順に読み出し信号が送られるとTFTスイッチ12が開き、変換された電気信号はデータ線14に取り出され、二次元画像データが取得される。なお、読み出しによる電気ノイズは、増幅回路11によって発生を抑えられる。
次に、CMOSイメージセンサの単位セルの断面構造について図3を参照して以下に説明する。図3は、フォトダイオード9およびその周辺の断面構造を示す模式図である。
図3に示すように、フォトダイオード9は、下部基板8に作り込まれている。具体的には、フォトダイオード9は、下部基板8上にはp−ウエル17が形成されている。p−ウエル17上には、フォトダイオード(n+拡散層)20、転送ゲート19、および信号検出部(n+拡散層)22が形成されている。また、CMOSイメージセンサの単位セルは、素子分離18によって各単位セルに分割されている。
また、下部基板8上には、さらに、CGS(Continuous Grain Silicon 、連続粒界結晶シリコン)、低温ポリシリコン、高温ポリシリコン、またはアモルファスシリコン等によって下部基板8上に形成された、ロジック回路やメモリ回路等が形成されていてもよい。本実施形態に係る光検出手段がロジック回路やメモリ回路等を備えることによって、検出されたサンプルの画像データを外部機器に出力することができ、データ処理の短時間化を可能にする。
本発明に係る電気泳動装置10は、サンプルからの光を検出するだけでなく、励起光によって発光したサンプルの蛍光を検出することも可能である。このためには、電気泳動装置10に対し、蛍光励起のための蛍光励起システムを設ければよい。蛍光励起システムとしては、蛍光励起のための光源と、蛍光物質の励起に必要な波長の光を抽出するための光学素子である励起フィルタとを組み合わせたものであればよい。光源としては水銀ランプが好ましく、励起フィルタは水銀ランプに設けられればよい。
なお、水銀ランプより照射された励起光は、励起されたサンプルの蛍光と共に、ゲル6直下に設けられたフォトダイオード9に対して照射され得る。サンプルの蛍光は励起光よりも微弱である場合、ゲル6とフォトダイオード9との間にダイクロイックミラーを挿入することが好ましい。本実施形態では、ダイクロイックミラーとして誘電体多層膜を用いることが好ましい。誘電体多層膜とは、屈折率の異なる2つ以上の薄膜を積層したもの(例えばダイクロイックミラーコート)であり、真空蒸着法によって製膜することができる。これによって、サンプルの蛍光以外の波長を有する光をカットし、微弱な蛍光をフォトダイオード9によって検出することができる。
上述の蛍光励起システムおよびダイクロイックミラーを用いて、ゲル6表面におけるサンプル分離領域に対して励起光を照射すれば、標識されたサンプルから二次元的な蛍光を得ることができる。
以上のように、電気泳動装置10は、サンプルからの光を検出する光検出手段を備えることによって、高価で大型な光検出装置を別途準備する必要がなくなる。また上記光検出手段が二次元アレイ状に配置されたダイオード9を有しているので、ゲル6から直接、サンプルの検出結果(画像データ)を情報機器に迅速に入力することができる。したがって、検出結果を容易に観察することが可能な電気泳動装置を提供することができる。
本発明に係る電気泳動装置は、サンプルの光を検出する光検出手段を備える電気泳動装置として好適に利用することができる。
本発明の一実施形態に係る装置構成器具を示す(a)斜視図、(b)回路図である。 本発明の一実施形態に係る二次元電気泳動装置の構造を示す側面図である。 本発明の一実施形態に係るフォトダイオードの断面構造図である。
符号の説明
1 構成器具
4、5 分離電極
6 ゲル
7 上部基板
8 基板(下部基板)
9 フォトダイオード
10 電気泳動装置

Claims (7)

  1. 被分離物質をゲル中で分離する電気泳動装置であって、
    上記ゲルを支持する平面を有する基板と、
    上記被分離物質からの光を検出する光検出手段とを備えており、
    上記光検出手段は、上記平面上に二次元アレイ状に配置された、上記被分離物質からの光を受光する複数の受光部を備えており、
    上記光検出手段は、上記基板における上記ゲルと接する面に設けられていることを特徴とする電気泳動装置。
  2. 上記被分離物質が、蛍光標識されていることを特徴とする請求項1に記載の電気泳動装置。
  3. 上記受光部は、フォトダイオードであることを特徴とする請求項1または2に記載の電気泳動装置。
  4. 上記受光部は、連続粒界結晶シリコン、低温ポリシリコン、高温ポリシリコン、またはアモルファスシリコンを含んでなることを特徴とする請求項3に記載の電気泳動装置。
  5. 上記光検出手段はCMOSイメージセンサまたはCCDイメージセンサであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電気泳動装置。
  6. 励起光を上記ゲルに照射する励起照射手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電気泳動装置。
  7. 請求項1からのいずれか1項に記載の電気泳動装置に用いられる、電気泳動装置の構成器具であって、
    上記基板および上記光検出手段を備えていることを特徴とする電気泳動装置の構成器具。
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