JP5170250B2 - 圧電ポンプ - Google Patents

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Description

この発明は、圧電振動子によって屈曲変形するダイヤフラムを備えた圧電ポンプに関する。
圧電振動子によって屈曲変形するダイヤフラムを備えた圧電ポンプは、一般に小型・薄型に構成できるとともに、低消費電力であることから、燃料電池の燃料輸送用ポンプなどとして利用可能である。このような圧電ポンプの特性として、輸送すべき燃料などの液体の吐出圧力や流量のほかに、ポンプ室に入った空気をポンプ室外へ排出する能力も求められている。
ポンプ室に入った空気(気体)をポンプ室外へ排出する能力を高めた圧電ポンプは特許文献1,2に開示されている。
特許文献1の圧電ポンプは、ケーシングの内面形状が、ポンプ圧縮(吐出)工程における圧電振動子の最大振幅時において、ケーシングと圧電振動子との間に間隙が殆ど生じないように構成されている。即ち、最大振幅時の圧電振動子の撓み形状とケーシングの内面とがほぼ同一の形状となるように、ケーシングの内面が加工されている。
次に、特許文献2の圧電ポンプを、図1を参照して説明する。図1は特許文献2の圧電ポンプPの平面図である。この圧電ポンプPは、ポンプ本体と、弾性膜と、圧電素子21と、押え板30とを備えている。ポンプ本体には、流入側弁室の一部を構成する凹部11と、ポンプ室12となる凹部と、排出側弁室を構成する凹部13とが形成されている。流入側凹部11とポンプ室12との間には接続通路(流入口)14が形成されていて、排出側凹部13とポンプ室12との間には接続通路(排出口)15が形成されている。
押え板30には、圧電素子21と対応する箇所に開口穴31が形成されている。流入ポート34には、この流入ポート34を開閉する流入側逆止弁40が設けられている。また、排出ポート35には、この排出ポート35を開閉する排出側逆止弁41が設けられている。
圧電素子21の中央部と対面するポンプ室12の内底面には台部16が形成され、台部16の外周に流入口14及び排出口15へ通じる流路部17が形成されている。圧電素子21を屈曲変形させると、圧電素子21の中央部と台部16との隙間が狭いので、台部16の上に存在する液体が外周側の流路部17へ押し出され、空気は流路部17でトラップされる。さらに、ポンプ室12の容積変化に伴い、流路部17の液体は排出口15へと排出され、空気も一緒に排出される。
特開平03−031589号公報 特開2008−163902号公報
圧電ポンプを薄く構成する場合には、ダイヤフラムやポンプ本体を薄い弾性体シートから構成することになるが、シートが薄いと、特許文献1のように特定の形状に加工することが非常に難しい。そのため、ポンプ室内に気泡が混入してきた場合に、ポンプ自身の発生圧力が低下して、気泡の排出が不可能になり、ポンプ動作が停止する虞がある。
また、特許文献2のように、空気をトラップする流路部をポンプ室の内周に設けた構造では、ポンプ室内が完全に空気であるときに、その空気を外に押し出す場合(ドライスタート時)に効果的である。しかし、圧電ポンプの使用形態は、一旦駆動を開始した後にそのまま継続的に液体を輸送し続ける用途に限らない。液体の輸送を開始した後、一旦駆動を停止し、再度駆動を開始する、といった断続的な駆動を行っても、気体の排出及び液体の輸送を確実に行える能力が求められる。しかし、特許文献2のような構造の圧電ポンプでは断続的な駆動を行った場合、十分な圧力が得られない。
そこで、この発明の目的は、断続的な駆動を行っても、高い圧力及び流量を維持したまま気体の排出及び液体の輸送を確実に行える圧電ポンプを提供することにある。
前記課題を解決するために、この発明は次のように構成する。
(1)交流電圧の印加によって振動する圧電振動子と、
前記圧電振動子によって屈曲変形するダイヤフラムと、
少なくとも1つの壁面が前記ダイヤフラムで構成されたポンプ室と、
前記ポンプ室へ、液体または液体と気体の混合体である流体が流入する流入口と、
前記ポンプ室から前記流体が排出する排出口と、
前記流入口への前記流体の逆流及び前記排出口からの前記流体の逆流を阻止する逆止弁と、
前記ポンプ室内に設けられ、前記ポンプ室の内面との間に生じる間隙に前記液体を保持する液体保持用部材と、
を備える。
この構造により、液体がポンプ室内に一旦流入した後に動作が停止しても、ポンプ室の内面と液体保持用部材との間隙に液体が保持(トラップ)される。これはポンプ室の内面と液体保持用部材との間隙に毛管現象または表面張力により液体が保持されることによるものである。したがって、この状態では、ポンプ室内がほとんど液体で満たされるため、ポンプ室の等価的な容積が小さくなる。このことにより、再度駆動させた時のポンプ室内に入っている空気などの気体にかかる圧力(以下、「エアー圧力」という。)が向上する。
また、ポンプ室の容積が小さければ小さいほど、一般に流路抵抗が大きくなり、流量は小さくなるが、本願発明は上記液体保持用部材によりトラップされた液体によって見かけ上の容積を小さくしているにすぎず、その液体は搬送すべき液体と同じ液体であるので、流路抵抗の増加を引き起こすことが殆どない。よって、輸送すべき液体の流量が低下することなくエアー圧力が向上する。
(2)前記液体保持用部材は前記ポンプ室内に非固定状態に配置された、1枚または複数枚のシート材とする。
この構造により、ポンプ室内の液体に対して毛管現象または表面張力の作用する領域が増して、液体のトラップ効果が高まる。
(3)前記1枚のシート材、または前記複数枚のシート材のうちの1枚のシート材は、表面に溝などの凹部が形成されたものとする。
この構造により、ポンプ室内の液体に対して毛管現象または表面張力の作用する領域が増して、液体のトラップ効果が高まる。
(4)前記1枚のシート材、または前記複数枚のシート材のうちの1枚のシート材は、周囲に複数の切り込みが形成されたものとする。
この構造により、ポンプ室内の液体に対して毛管現象または表面張力の作用する領域が増して、液体のトラップ効果が高まる。
(5)前記複数のシート材のうち少なくとも1枚のシート材は発泡樹脂の成形体とする。
この構造により、ポンプ室内の液体に対して毛管現象または表面張力の作用する領域が増して、液体のトラップ効果が高まる。
(6)少なくとも前記ポンプ室は、前記ポンプ室の内面に前記流体の流路用溝を設けられたものとする。
この構造により、低背化やポンプ容積低減のためにポンプ室の高さを極力薄くした場合でも、液体が流路用溝による流路が確保されるため、流路抵抗による圧力損失の影響を受けずに流量を確保できる。
(7)前記液体保持用部材は、前記流路用溝に対面する位置に開口が設けられたものとする。
この構造により、前記液体保持用部材の上下面とポンプ室の内面との間に生じる間隙同士が前記開口を通じて連通するので、輸送すべき液体の流れを阻害することなく、流量の低下が抑えられる。
この発明によれば、液体がポンプ室内に一旦流入した後に動作が停止すれば、ポンプ室内がほとんど液体で満たされるため、ポンプ室の等価的な容積が小さくなる。このことにより、エアー圧力が向上する。また、ポンプ室の容積が小さければ小さいほど、一般に流路抵抗が大きくなり、流量は小さくなるが、本願発明は上記液体保持用部材によりトラップされた液体によって見かけ上の容積を小さくしているにすぎず、その液体は搬送すべき液体と同じ液体であるので、流路抵抗の増加を引き起こすことが殆どない。よって、輸送すべき液体の流量が低下することなくエアー圧力が向上する。
特許文献2の圧電ポンプPの平面図である。 第1の実施形態に係る圧電ポンプ101の平面図である。 第1の実施形態に係る圧電ポンプ101の分解斜視図である。 第1の実施形態に係る圧電ポンプ101の断面図である。 図2〜図4に示した圧電ポンプ101のエアー圧力の特性について示す図である。 図2〜図4に示した圧電ポンプ101の駆動周波数と流量との関係を示す図である。 第2の実施形態に係る圧電ポンプ102の断面図である。 第3の実施形態に係る圧電ポンプ103の断面図である。 第4の実施形態に係る圧電ポンプに用いる液体保持用部材の平面図である。
《第1の実施形態》
図2は第1の実施形態に係る圧電ポンプ101の平面図である。圧電ポンプ101は、矩形の圧電振動子65と、圧電振動子65によって屈曲変形するダイヤフラムと、1つの壁面が前記ダイヤフラムで構成された円状のポンプ室と、そのポンプ室へ液体、または液体と気体の混合体が流入する流入口51と、ポンプ室から前記流体が排出する排出口53と、前記ポンプ室内の内面との間に間隙を生じさせて前記液体を毛管現象または表面張力で保持する液体保持用部材56とを備えている。
前記ポンプ室の内面には、前記流体の流路用溝59A,59Bが設けられている。
前記液体保持用部材56には、その中央部に開口57が形成されている。この開口57は、前記溝59A,59Bのほぼ中央位置に対面する位置関係に設けられている。
前記圧電振動子65は、交流電圧の印加によって振動し、前記ダイヤフラムを屈曲変形させる。圧電振動子65の2つの電極はコネクタ68に電気的に接続されている。
図3は、前記圧電ポンプ101の分解斜視図である。天板60は剛性の高いステンレススチールを加工したものである。天板60の図における上面には天板シート61が設けられている。なお、組み立てられた圧電ポンプ101を実際に使用する際に、天板60が上面側になるように用いる。そのため、図3においては最下層に位置する部品ではあるが、ここではその名称を「天板」という。
天板シート61の上部には流路板62が配置される。この流路板62には流路用溝59(図2に示した流路用溝59A,59B)が形成されている。
流路板62の上部にはポンプ室板63が配置される。ポンプ室板63にはほぼ円形のくり抜きによるポンプ室52が形成されている。
ポンプ室板63の上部にはダイヤフラム64が配置される。このダイヤフラム64と前記流路板62との間にポンプ室板63が挟み込まれることによって、非常に薄い円筒形のポンプ室52が構成される。
前記ポンプ室52の内部には液体保持用部材56が配置される。液体保持用部材56の中央には開口57が形成されている。
流路板62、ポンプ室板63、ダイヤフラム64、及び液体保持用部材56はそれぞれPETシートを加工したものである。
前記ダイヤフラム64にはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の圧電振動子65が貼着される。
ダイヤフラム64の上部には弁室板66が配置され、この弁室板66のさらに上部に底板67が配置される。なお、上述したとおり、組み立てられた圧電ポンプ101を実際に使用する際に、底板67が下面側になるように用いる。そのため、図3においては最上層に位置する部品ではあるが、ここではその名称を「底板」という。
上述したとおり、圧電ポンプ101は、天板60が上面、底板67が下面、となるようにして使用される。
前記ダイヤフラム64と底板67との間に弁室板66が挟み込まれることによって、弁室板66に形成された2つの開口が弁室Hを構成する。この弁室H,Hの内部に逆止弁54,55がそれぞれ配置(封入)される。
図4は、前記圧電ポンプ101の断面図である。図4(A)は流路用溝59を通る垂直面での断面図、図4(B)はポンプ室52の中心を通り、且つ前記流路用溝59の延びる方向に対してほぼ直交する垂直面での断面図である。
圧電ポンプ101の各部及び全体の寸法は次のとおりである。
ポンプ室52:直径14.5mm×厚さ0.075mm
圧電振動子65:17mm×0.3mm
液体保持用部材56:直径14.0mm×厚さ0.06mm
ダイヤフラム64:19.4mm×28.8mm×厚さ0.075mm
圧電ポンプ101全体:24mm×33mm×1.325mm
図4(A)(B)に示すように、ポンプ室52の内部には、ほぼ円板形状の液体保持用部材56が非固定状態で配置されている。液体保持用部材56の厚み寸法はポンプ室の高さ(厚さ)寸法を定めるポンプ室板63の厚み寸法よりわずかに薄い。したがって、液体保持用部材56の上面とポンプ室52の天面(ダイヤフラム64の下面)との間に間隙が存在する。同様に、液体保持用部材56の下面とポンプ室52の底面(流路板62の上面)との間にも間隙が存在する。さらには、液体保持用部材56の周縁とポンプ室板63に形成された開口の内周面との間にも円筒形状の間隙が存在する。したがって、液体の輸送時にポンプ室52の内部に液体が流入した際、その液体が前記間隙に入り込む。そして、液体の輸送を停止した後も、前記間隙には毛管現象または表面張力により液体が保持されたままとなる。
前記液体保持用部材56は狭空間形成用部材ということもできる。
図2〜図4に示した圧電ポンプ101の作用は次のとおりである。
圧電振動子65は、その圧電振動子65に対する印加電圧に応じてダイヤフラム64をたわませる。これによりポンプ室52の容積が拡張または収縮する方向に屈曲変形する。したがって圧電振動子65に交流電圧を印加することによって、ポンプ室52の容積は拡張/収縮が繰り返されることになる。
逆止弁54は流入口から外部へ液体または液体と気体の混合体が逆流するのを阻止し、逆止弁55は排出口53から内部へ液体または液体と気体の混合体が逆流するのを阻止する。そのため、ポンプ室52の拡張時に流入口51から液体が流入し、ポンプ室52の収縮時にはポンプ室52内の液体が排出口53から排出される。
ポンプ室52に対して初めて液体が流入する場合(ドライスタート時)には、流入口51→ポンプ室52(及び流路用溝59)→排出口53、の経路で気体が吸引され、排出される。
これに伴い、液体が流入口51から流入し、ポンプ室52の内部が液体で充填された後、排出口53から排出される。
その後、圧電振動子65の駆動が一旦停止されても、ポンプ室52内の前記隙間に毛管現象または表面張力により液体が保持されたままとなる。
その後、圧電振動子65の駆動が再開されれば、流入口51→ポンプ室52(及び流路用溝59)→排出口53の経路で直ちに液体を輸送することになる。
ここで、ポンプ室で発生する圧力とポンプ性能との関係を示す。
ダイヤフラム64の振動によってポンプ室52が発生する圧力ΔPは、
ΔP=ポンプ室の剛性K×ポンプ室の容積変化ΔV
で表される。前記ポンプ室の剛性Kは、
K=1/{(1/Ka)+(1/Kp)+(1/Kt)}
で表される。ここで、Kaはダイヤフラム64の剛性、Kpはポンプ室内の気体の剛性、Ktは流路板62及び天板シート61を含めた天板60の剛性である。
また、ポンプ室の容積変化ΔVは、拡張時の容積をVmax、収縮時の容積をVminとすれば、
ΔV=Vmax−Vmin
で表される。
したがって、エアー圧力ΔPaは、
ΔPa=〔1/{(1/Ka)+(1/Kp)+(1/Kt)}〕×ΔV
液体の吐出圧ΔPlは、
ΔPl≒〔1/{(1/Ka)+(1/Kt)}〕×ΔV
で表される。
また、流量はΔV×F(駆動周波数)である。
したがって、ポンプ性能の向上のためには、前記ポンプ室の剛性Kを高め、且つポンプ室の容積変化ΔVを高めればよい。
一方、ポンプ室内の気体の剛性Kpはダイヤフラムの剛性Ka及び天板の剛性Ktより非常に小さい。すなわち、Kp<<Ka,Ktの関係が成り立つので、前記エアー圧力ΔPaは、
ΔPa≒Kp×ΔV
と表される。ポンプ室内の気体の剛性Kpは、定数をCとすると、
Kp=C/V
と表すことができ、ポンプ室内の気体にかかるエアー圧力ΔPaは、
ΔP≒C×ΔV/V
の関係が成り立つ。
したがって、エアー圧力を向上するためにはポンプ室容積を極力小さくすればよい。
上述のとおり、ポンプ室52の内面と液体保持用部材56の外面との間に存在する間隙に、毛管現象または表面張力により液体が保持されるため、気体にとって見かけ上のポンプ室容積が減少して、エアー圧力が向上する。
図5は、図2〜図4に示した圧電ポンプ101のエアー圧力の特性について示す図である。この例では、図2〜図4に示した圧電ポンプ101の液体保持用部材56を流路板62側に固定したものを比較対象としている。図5においてA1は第1の実施形態に係る圧電ポンプの特性、R1は前記比較対象の圧電ポンプの特性である。それぞれ同じ圧電ポンプを用いて3回ずつ計測した。なお、圧電素子は、±6Vの矩形波(駆動周波数1Hz)で駆動した。
比較対象の圧電ポンプでは、ポンプ室52への液体の流入前後でエアー圧力が若干ではあるが向上していることがわかる。一方、第1の実施形態に係る圧電ポンプではエアー圧力が約3kPa以上も向上しており、液体保持用部材を固定しない方が大きなエアー圧力が得られることが分かる。因みに、流量は何れも1.5μl/sであった。
図6は、図2〜図4に示した圧電ポンプ101の圧電振動子65の駆動周波数をパラメータとした、液体の流量と吐出圧力との関係(P−Q特性)を示す図である。ここで、輸送する液体はメタノールである。
液体の流量が0のときの、液体の吐出圧力は42[kPa]である。駆動周波数が1Hzであるとき、直線Aで示すように、液体の吐出圧力が0[kPa]であるときの流量は約1.5μl/sである。駆動周波数が15Hzであるとき、直線Bで示すように、液体の吐出圧力が0[kPa]であるときの流量は、約17μl/sである。このように駆動周波数を高くすることによって大きな流量が得られる。
第1の実施形態によれば次のような効果を奏する。
(a)一旦ポンプ室内に液体が流れるとポンプ室内面と液体保持用部材との間隙に液体が毛管現象または表面張力によりトラップされるので、初期状態(一回も液体を通していない状態)と比較すると、ポンプ室容積が気体にとって見かけ上小さくなり、エアー圧力が向上する。そのため、気泡の排出効率が向上して、ポンプ室内に気泡が混入してきた場合でも、ポンプ動作が停止する不具合が発生しない。また、輸送する液体そのものによりポンプ容積を低減させているため、流路抵抗の増加による流量の減少が生じるという不具合も発生しない。
(b)ポンプ室の内面に流路用溝が設けられていることで、低背化やポンプ容積低減の為にポンプ室高さを極力薄くした場合でも、流路抵抗による圧力損失の影響を受けることなく、必要な流量を確保できる。
(c)ダイヤフラムが変位できるだけの最低限の隙間を残しつつ、ポンプ室の容積が減少するため、エアー圧力が増大し、高い気泡の排出効率が得られる。
(d)液体保持用部材は薄いシート状のもので構成できるので、部材の加工コストが嵩まない。
《第2の実施形態》
図7は、第2の実施形態に係る圧電ポンプ102の断面図である。この図7は、第1の実施形態での図4(B)に相当する図である。すなわち、ポンプ室52の中心を通り、且つ流路用溝59の延びる方向に対してほぼ直交する面での断面図である。
第1の実施形態で示した圧電ポンプ101と異なり、ポンプ室52の内部に2つの液体保持用部材56A,56Bを配置している。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
前記2つの液体保持用部材56Aと56Bを重ねた厚み寸法は、ポンプ室52の高さ(厚み)を定めるポンプ室板63の厚み寸法より僅かに薄い。したがって下部の液体保持用部材56Aの底面と流路板62との間に間隙が存在し、2つの液体保持用部材56Aと56Bとの間に間隙が存在し、上部の液体保持用部材56Bとダイヤフラム64との間に間隙が存在する。さらに液体保持用部材56A,56Bの周縁とポンプ室板63に形成した開口の内周面との間にもそれぞれ間隙が存在する。
このようにして2枚の液体保持用部材56A,56Bを配置することにより、毛管現象または表面張力により液体を保持する間隙部の総合面積を大きく稼ぐことができ、液体保持能力がさらに向上する。
図7の例では2枚の液体保持用部材56A,56Bを配置したが、これをさらに3枚以上にしてもよい。
《第3の実施形態》
図8は、第3の実施形態に係る圧電ポンプ103の断面図である。この図8は、第1の実施形態での図4(B)に相当する図である。すなわち、ポンプ室52の中心を通り且つ流路用溝59の延びる方向に対してほぼ直交する面での断面図である。
第1の実施形態で示した圧電ポンプ101と異なり、ポンプ室52の内部に液体保持用部材56,58をそれぞれ配置している。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
一方の液体保持用部材56は、第1の実施形態で示した液体保持用部材56または第2の実施形態で示した液体保持用部材56A,56Bと同様の材料(PETシート)を成形したものである。他方の液体保持用部材58は発砲樹脂シートを円板状に成形したものであり、例えばポリウレタンフォームなどの発泡樹脂の成形体である。液体保持用部材58は多孔質であるので、多数の孔の内部に液体を保持する。また柔軟性があるので、ダイヤフラム64と液体保持用部材56とが直接当接するのを避ける緩衝材として作用する。
このように液体保持用部材が多孔質材であっても毛管現象または表面張力により液体を保持するので、第1・第2の実施形態の場合と同様の作用効果を奏する。
《第4の実施形態》
図9は第4の実施形態に係る圧電ポンプに用いる液体保持用部材の平面図である。図9に示す液体保持用部材69には、その外周部に複数の切り込みSLが形成されている。
前記切り込みSLには液体が毛管現象または表面張力により保持されるため、ポンプ室内での液体保持面積が増大することになる。
図9に示した例では液体保持用部材69の周囲に切り込みSLを形成したが、切り込みの代わりに液体保持用部材の表面に溝等の凹部を形成してもよい。これにより凹部に毛管現象または表面張力により液体が保持される。そのことによってポンプ室内での液体保持の総合面積が増大する。
51…流入口
52…ポンプ室
53…排出口
54,55…逆止弁
56,69…液体保持用部材
56A,56B…液体保持用部材
57…開口
58…液体保持用部材(発泡樹脂シート)
59…流路用溝
59A,59B…流路用溝
60…天板
61…天板シート
62…流路板
63…ポンプ室板
64…ダイヤフラム
65…圧電振動子
66…弁室板
67…底板
68…コネクタ
101,102,103…圧電ポンプ
H…弁室
SL…切り込み

Claims (7)

  1. 交流電圧の印加によって振動する圧電振動子と、
    前記圧電振動子によって屈曲変形するダイヤフラムと、
    少なくとも1つの壁面が前記ダイヤフラムで構成されたポンプ室と、
    前記ポンプ室へ、液体または液体と気体との混合体である流体が流入する流入口と、
    前記ポンプ室から前記流体が排出する排出口と、
    前記流入口への前記流体の逆流及び前記排出口からの前記流体の逆流を阻止する逆止弁と、
    前記ポンプ室内に設けられ、前記ポンプ室の内面との間に生じる間隙に前記液体を保持する液体保持用部材と、
    を備えた圧電ポンプ。
  2. 前記液体保持用部材は前記ポンプ室内に非固定状態に配置された、1枚または複数枚のシート材である、請求項1に記載の圧電ポンプ。
  3. 前記1枚のシート材、または前記複数枚のシート材のうちの1枚のシート材は、表面に凹部が形成された、請求項2に記載の圧電ポンプ。
  4. 前記1枚のシート材、または前記複数枚のシート材のうちの1枚のシート材は、周囲に複数の切り込みが形成された、請求項2または3に記載の圧電ポンプ。
  5. 前記複数のシート材のうち少なくとも1枚のシート材は発泡樹脂の成形体である、請求項2〜4のいずれかに記載の圧電ポンプ。
  6. 少なくとも前記ポンプ室は、前記ポンプ室の内面に前記流体の流路用溝を設けられた、請求項1〜5のいずれかに記載の圧電ポンプ。
  7. 前記液体保持用部材は、前記流路用溝に対面する位置に開口が設けられた、請求項6に記載の圧電ポンプ。
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