JP5168453B2 - 密封装置 - Google Patents

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Description

本発明は、密封技術に係る密封装置に関するものである。本発明の密封装置は例えば、ハブベアリングシールとして自動車関連分野に用いられ、または家電製品、産業機械もしくは自転車等の各関連分野において用いられる。
従来から、図５（Ａ）に示す密封装置５１が知られており、この密封装置５１は、自動車用車輪懸架装置のベアリング部にハブベアリングシールとして用いられるものであって、ベアリング内輪６１の外周側に装着されるスリンガー５２と、ベアリング外輪６２の内周側に装着されるリップシール５４との組み合わせにより構成されている。
スリンガー５２は、断面略Ｌ字形に成形された金属環であって、その軸方向一方（図では右方）の端面に磁気エンコーダー５３が被着されている。リップシール５４は、スリンガー５２に摺動自在に密接するゴム状弾性体製のシールリップ５６を取付環５５に被着したものであって、取付環５５の軸方向他方（図では左方）の端面に同じくゴム状弾性体よりなる製品積み重ね時の吸着防止突起５７が設けられている。吸着防止突起５７は、その名称のとおり吸着防止のために設けられており、すなわち吸着防止突起５７が設けられていないと、複数の製品５１を積み重ねたときに一の製品５１における磁気エンコーダー５３が隣の製品５１におけるリップシール取付環５５に吸着する事態が発生し、その引き剥がしが面倒な作業となることから、予めの吸着防止対策として、スペーサーとして機能する吸着防止突起５７が設けられている。尚、この吸着防止突起５７には、図５（Ｂ）に示す環状タイプと、図５（Ｃ）に示す小突起の点在タイプとがある（特許文献１参照）。
しかしながら、上記従来技術には、以下の不都合がある。
すなわち、図５（Ｂ）の環状タイプの吸着防止突起５７においては、複数の製品５１を積み重ねたときに重量荷重によって突起５７が内周側に倒れる事態が発生することがあり、この場合、突起５７は窄まるように変形することから円周上均等に変形しない。したがって、製品積み重ね時における製品姿勢の安定性に欠けることになる（製品５１を平行に積み重ねてゆくことができない）。
また、図５（Ｃ）の小突起点在タイプの吸着防止突起５７においては、各突起５７が小さく点在していることから、複数の製品５１を積み重ねたときに重量荷重によって突起５７が潰れてしまうことがあり、この場合、突起５７はまったく役に立たなくなることから、上記吸着現象が発生しまうことになる。
特開２００１−１４１０６９号公報
本発明は以上の点に鑑みて、スリンガーおよびリップシールの組み合わせよりなる磁気エンコーダー付きの密封装置において、複数の製品を積み重ねたときに吸着防止突起が内周側に倒れることがなく、もって製品積み重ね時の安定性を確保することができる密封装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の請求項１による密封装置は、相対回転する二部材のうちの一方に装着されるスリンガーと、他方に装着されるリップシールとの組み合わせよりなり、前記スリンガーはその軸方向一方の端面に磁気エンコーダーを有し、前記リップシールは前記スリンガーに摺動自在に密接するシールリップを取付環に被着したものであって、前記取付環の軸方向他方の端面にはゴム状弾性体よりなる製品積み重ね時の吸着防止突起を設けてなる密封装置において、前記吸着防止突起は、その断面形状を先細り状とされ、かつその内周側側面は外周側側面よりも大きな角度で回転軸線に対して傾斜する形状とされ、前記吸着防止突起の先端部には表面粗し加工が施されていることを特徴とするものである。
また、本発明の請求項２による密封装置は、上記した請求項１記載の密封装置において、前記吸着防止突起は、周方向に円弧状の等配とされていることを特徴とするものである。
上記構成を備えた本発明の密封装置においては、吸着防止突起の断面形状が先細り状の形状とされ、かつその内周側側面のほうが外周側側面よりも大きな角度で回転軸線に対して傾斜する形状とされているために、複数の製品を積み重ねたときに重量荷重が作用すると、吸着防止突起は外周側に広がる方向へ変形しようとし、よって吸着防止突起は円周上均等に変形することが可能とされている。したがって、製品積み重ね時における製品姿勢の安定性を確保することができる（製品を平行に積み重ねてゆくことができる）（請求項１）。
またこれに加えて、吸着防止突起の先端部に表面粗し加工を施したり、吸着防止突起を周方向に円弧状の等配としたりすることにより磁気エンコーダーに対する突起の接触面積が縮小することから、エンコーダーに対して突起が粘着しにくくなる。また、突起は環状もしくは円弧状であることから、小突起点在タイプのように完全に潰れてしまうことがない。したがって常時、吸着防止効果を発揮することができる。
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
図１は、本発明の実施例に係る密封装置１の要部断面を示している。当該実施例に係る密封装置１は自動車用車輪懸架装置のベアリング部にハブベアリングシールとして用いられるものであって、以下のように構成されている。
すなわち先ず、当該密封装置１は、ベアリング内輪の外周側に装着されるスリンガー２と、ベアリング外輪の内周側に装着されるリップシール４との組み合わせにより構成されている。
スリンガー２は、断面Ｌ字形ないし略Ｌ字形に成形された金属環であって、その軸方向一方（図では上方）の端面２ａに磁気エンコーダー３が被着されている。磁気エンコーダー３は、磁性体粉を混入したゴム状弾性体によって環状に成形されたものであって円周方向に多磁極化されており、回転時にセンサー部によりパルス信号を読み取られることによって、回転数や回転角度の検出等に用いられる。
リップシール４は、スリンガー２に摺動自在に密接する複数（図では３本）のゴム状弾性体製シールリップ６を取付環５に被着したものであって、取付環５の軸方向他方（図では下方）の端面５ａに同じくゴム状弾性体よりなる製品積み重ね時の吸着防止突起７が設けられている。シールリップ６のゴムと吸着防止突起７のゴムとは取付環４の内周部において一体に繋がっているが、互いに分離して成形されたものであっても良い。
また、当該実施例において、吸着防止突起７は環状に成形されるとともにその断面形状を先細りの三角形ないし略三角形に成形されており、かつその内周側側面（内周面）７ａは先端へ向けて漸次拡径するテーパー面状に成形されるとともにその外周側側面（外周面）７ｂは先端へ向けて漸次縮径するテーパー面状に成形され、更に図２（Ａ）および（Ｂ）に示すように、内周側側面７ａは外周側側面７ｂよりも大きな角度で回転軸線（回転中心軸線）０に対して傾斜する形状とされている（回転軸線０に対する内周側側面７ａの傾き角度をθ１、外周側側面７ｂの傾き角度をθ２として、θ１＞θ２に設定されている）。また更に、吸着防止突起７の先端部は丸みを帯びた断面形状とされている。
上記構成を備えた密封装置１は、上記したように吸着防止突起７が設けられているために、図３に示すように複数の製品１を積み重ねたときに一の製品１における磁気エンコーダー３が隣の製品１におけるリップシール取付環５に吸着する事態が発生するのを防止することができ、しかもそのうえで、突起７の断面形状が先細りの三角形ないし略三角形とされるとともにその内周側側面７ａのほうが外周側側面７ｂよりも大きな角度で回転軸線０に対して傾斜する形状とされているために、複数の製品１を積み重ねたときに重量荷重が作用すると、荷重ベクトルの作用によって突起７は外周側に広がる方向へ変形しようとし、よって突起７は円周上均等に変形することが可能とされている。したがって、製品積み重ね時における製品姿勢の安定性を確保することができ、具体的には複数の製品１を平行に積み重ねてゆくことができる。
また、突起７の先端部が丸みを帯びた断面形状とされているために、磁気エンコーダー３に対する突起７の接触面積は小さく設定されている。したがって、突起７がエンコーダー３に粘着するのを有効に防止することができる。
また、突起７は環状であってボリューム的に比較的大きく成形されていることから、上記従来技術における小突起点在タイプの突起のように荷重が作用したときに完全に潰れてしまうことがない。したがって、突起７による吸着防止効果を常時発揮することができる。
尚、上記突起７の形状は、突起７に対して軸方向一方から重量荷重を作用したときに突起７が外周側へ倒れようとするか、もしくは、拡がろうとすれば良いことから、内周側側面７ａに上記のような向きのテーパーが設定されていれば、反対側の外周側側面７ｂは軸方向ストレートの円筒面状（θ２＝０）であっても良い。また、テーパーは必ずしも断面直線状のものに限られず、曲線状であっても良い。
更にまた、突起７は、以下のように設定しても磁気エンコーダー３に対する接触面積を小さく設定することが可能である。
（１） 図４（Ａ）または（Ｂ）に示すように、環状の突起７の先端部の円周上一部に切欠（溝部とも称する）８を設け、これにより突起７の平面形状を周方向に延びる円弧状とし、かつ突起７を複数等配状に設定する。突起７と切欠８の段差は０．１ｍｍ以上で、幅は０．３ｍｍ以上とするのが好ましい。突起７の等配数は２等配以上とする。
（２） 図４（Ｃ）に示すように、突起７の先端部の全部または一部に表面粗し加工９を施す。粗しは２〜５００μｍの範囲とするのが好ましい。また、上記（１）にて切欠８を設けて突起７を円弧状としたうえで、その先端部に表面粗し加工９を施すことも考えられる。
本発明の実施例に係る密封装置の要部断面図 （Ａ）は同密封装置における外周側テーパー側面の傾き角を示す説明図、（Ｂ）は内周側テーパー側面の傾き角を示す説明図 同密封装置を複数積み重ねた状態の要部断面図 （Ａ）（Ｂ）（Ｃ）ともそれぞれ本発明の他の実施例に係る密封装置の要部説明図 （Ａ）は従来例に係る密封装置の装着状態を示す要部断面図、（Ｂ）は環状タイプの突起の説明図、（Ｃ）は小突起点在タイプの突起の説明図
符号の説明
１ 密封装置
２ スリンガー
２ａ，５ａ 端面
３ 磁気エンコーダー
４ リップシール
５ 取付環
６ シールリップ
７ 吸着防止突起
７ａ 内周側側面
７ｂ 外周側側面
８ 切欠
９ 表面粗し加工
０ 回転軸線

Claims (2)

  1. 相対回転する二部材のうちの一方に装着されるスリンガーと、他方に装着されるリップシールとの組み合わせよりなり、前記スリンガーはその軸方向一方の端面に磁気エンコーダーを有し、前記リップシールは前記スリンガーに摺動自在に密接するシールリップを取付環に被着したものであって、前記取付環の軸方向他方の端面にはゴム状弾性体よりなる製品積み重ね時の吸着防止突起を設けてなる密封装置において、
    前記吸着防止突起は、その断面形状を先細り状とされ、かつその内周側側面は外周側側面よりも大きな角度で回転軸線に対して傾斜する形状とされ、
    前記吸着防止突起の先端部には表面粗し加工が施されていることを特徴とする密封装置。
  2. 請求項１記載の密封装置において、
    前記吸着防止突起は、周方向に円弧状の等配とされていることを特徴とする密封装置。
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