JP5167867B2 - 表面性状に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

表面性状に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、主に自動車分野に適用されるプレス加工用合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関し、特に表面外観に優れたプレス加工用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に関するものである。
近年、地球の温暖化を防止する観点から、二酸化炭素排出規制策として、新たな自動車燃費改善目標が設定され、低燃費車優遇税制が導入されるなど、自動車の燃費向上が求められている。自動車の燃費向上には、自動車車体の軽量化が有効な手段であり、こうした軽量化の観点から自動車車体用鋼板の薄肉化が要望されている。一方、自動車車体の安全性確保の観点から、自動車車体用鋼板の高強度化も要望されている。
この様な鋼板の薄肉化および高強度化の要望を満たし、複雑な形状にプレスされる自動車車体用鋼板としては、表面耐食性および電着塗装性に優れ、かつ表面外観に優れたプレス成形性の良い合金化溶融亜鉛めっき高張力鋼板が求められている。
一般に、高張力鋼板(ハイテン)においては、鋼板の強度を向上させるため、鋼中に、Si、Mn、P等の固溶強化元素を含有させることが行われている。
上述したSi、Mn、P等の元素を含有する成分組成で製造された溶融亜鉛めっき鋼板はプレス加工後、表面に線状や筋状などの表面欠陥がしばしば見られ、塗装後にも痕跡を残すことがあり、外観上好ましくなく、問題となっている。
この表面欠陥の低減策については、主として熱間圧延前の鋼片(スラブ)の研削やめっき前に熱延鋼板又は冷延鋼板を研削することによって表面欠陥を低減する技術等がこれまで種々提案されている。
たとえば、極低炭Ti添加鋼板を用いた、めっき表面の模様性欠陥の少ない合金化亜鉛めっき鋼板の製造方法として、鋳片溶削や鋼板研削による鉄歩留ロスの少ない製造方法として、連続鋳造時に鋳型内電磁攪拌を実施し、鋳片の成分偏析を防止して、模様状欠陥を防止するために実施していた鋳片溶削量、鋼板研削量を大幅に低減することを特徴とする方法(例えば、特許文献1参照)や、高Si系鋼板または高P系鋼板を基材とする外観およびめっき密着性と加工性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法として、被めっき鋼板の表面を研削してRa:0.3〜0.6とし、溶融亜鉛めっき浴に浸漬した後、加熱合金化処理を行う加工性の優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、鋼板の高強度化のため、Pを添加したP添加鋼が用いられているが、Pは非常に偏析しやすい元素であり、スラブ表面に偏析したPが熱間圧延、冷間圧延によって長手方向に圧延されてコイル表面にPの濃化層が形成され、このPの濃化層においてめっき時に合金化が遅れ、合金化溶融亜鉛めっき鋼板において線状の疵が発生する原因となることが知られていて、P含有量が0.03%以上の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造において、鋼板表面の不均一性を解消するために鋼板中P量に応じた研削量で鋼板表面研削を行い、合金化処理を誘導加熱方式の合金化炉で行う方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
これらの従来技術では、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の線状の模様状欠陥を防止するため、例えばP含有量が0.03%以上の極低炭Ti添加鋼板を用いる場合には、連続鋳造鋳片段階で表面を3mm以上スカーフ除去し、さらにめっき前の鋼板段階で表面を5μm以上研削していた。これにより、めっき後の模様状欠陥発生を防止して表面品質を確保していた。P含有量が少ない極低炭Ti添加鋼板を用いる場合であっても、鋳片段階で表面を3mm以上スカーフ(溶削)し、重研削ブラシにて鋼板表面を2μm以上研削しているのが現状である。
特開2004−149866号公報 特開2004−169160号公報 特許第2576329号公報
本発明は、鋼板成分として、加工性を向上させるために、極低炭素鋼を基本成分とし、強化元素であるPを含有する高張力鋼板を用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板において、めっき厚みにバラツキが少なく、プレス加工後にも美しい表面外観を呈する表面外観に優れたプレス加工用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供するもので、また、めっき厚みのバラツキを少なくするための熱延鋼板の研削量を低減させる表面外観に優れたプレス加工用合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供することを課題とするものである。
本発明者は、極低炭素鋼を基本成分とし、強化元素であるPを含有する高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板の線状模様の表面欠陥を発生させるP濃度ムラの発生原因について鋭意研究した。その結果、溶融亜鉛めっき鋼板を合金化する際に、Pが鋼板表層に存在するとPが存在する部分では合金化処理で合金化速度を遅らせ、その結果、P濃度の高低が混在する部位では、合金化速度に差異が生じ、めっき厚みにばらつきが生じ、外観上白っぽく、又は黒っぽく縦長の模様の表面欠陥を発生する。そして、この様な表面欠陥のある合金化溶融亜鉛めっき鋼板をプレス加工すると凸部が削れるために模様はより顕著となり、プレス加工製品の外観が損なわれることが判明した。更に熱延板で、スケールと地鉄との界面にP、Ni、Cuが同一箇所に濃化していると、酸洗工程でこの部分が残存し、結果としてPの濃化が大きくなる。そして、このようなP、Ni、Cu濃化部とそうでない箇所が混在すると、Pの濃度ムラとなり、結果としてめっき後の合金化処理時にめっき厚みにバラツキが生じ、プレス加工後に線状模様となる表面欠陥が生じることを知見した。
したがって、めっき後の合金化処理時に線状模様となる表面欠陥が生じないようにするには、熱延鋼板のスケールと地鉄界面のNi、Cuの濃化ムラが少なければ良く、すなわち、意図的にNi、Cuを添加することにより、このムラが低減される知見した。
本発明は、これらの知見に基づいて完成したものにで、その発明の要旨は次の通りである。
(1) 質量%で、
C:0.0005〜0.01%、
Si:0.1%以下、
Mn:0.01〜1.5%、
P:0.021〜0.08%、
S:0.02%以下、
Al:0.01〜0.10%、
N:0.0001〜0.01%、
Ni:0.005〜0.1%、
Cu:0.005〜0.1%
を含有し、加えて
B:0.0001〜0.005%、
Nb:0.008〜0.1%、
Ti:0.01〜0.1%
の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成の鋼
板に、平均の付着量が片面10〜100g/mである合金化溶融亜鉛めっき層を設けた
ことを特徴とする表面性状に優れたプレス用高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
(2) 前記合金化溶融亜鉛めっき層のめっき厚みばらつきが50%以内であることを特徴とする上記(1)に記載の表面性状に優れたプレス用高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
(3) 質量%で、
C:0.0005〜0.01%、
Si:0.1%以下、
Mn:0.01〜1.5%、
P:0.021〜0.08%、
S:0.02%以下、
Al:0.01〜0.10%、
N:0.0001〜0.01%、
Ni:0.005〜0.1%、
Cu:0.005〜0.1%
を含有し、加えて
B:0.0001〜0.005%、
Nb:0.008〜0.1%、
Ti:0.01〜0.1%
の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成の溶鋼を連続鋳造してスラブを得る工程と、前記スラブを1100〜1300℃で加熱する工程と、前記加熱スラブを仕上げ温度800℃以上1050℃以下、巻取り温度500℃以上800℃以下の条件で熱間圧延して熱延コイルを得る工程と、前記熱延コイルを50%以上95%以下の冷延率で冷間圧延して所定の厚さの冷延コイルとする工程と、前記コイルを再結晶温度以上の温度で焼鈍するとともに、その後コイル表面に平均の付着量が片面10〜100g/mである溶融亜鉛めっきし、合金化処理を施す工程とを有することを特徴とする表面性状に優れたプレス用高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(4) 前記合金化処理後のめっき厚みばらつきを50%以内としたことを特徴とする上記(3)に記載の表面性状に優れたプレス用高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
本発明の高張力鋼板を用いたプレス加工用合金化溶融亜鉛めっき鋼板では、線状模様等の表面欠陥のないめっき層を有していて、めっき厚みばらつきを50%以内としてあるため、合金化溶融亜鉛めっき鋼板をプレス加工しても美しい外観表面を保持することができる。また、溶融亜鉛めっき前の熱延鋼板の研削量を従来より低減して合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造できるので、鋼材のロスを少なくすることができる等の顕著な効果を奏するものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
自動車の燃費向上には、自動車車体の軽量化および自動車車体の安全性確保の観点か自動車車体用鋼板の薄肉化および高強度化が要望され、表面外観に優れたプレス成形性の良い高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板が求められている。
鋼板を高強度化するためにPを含有した高張力鋼板が被めっき鋼板として用いられているが、Pは非常に偏析されやすい元素であり、スラブ表面に偏析したPが熱間圧延、冷間圧延によって長手方向に圧延されて鋼板表面にPの濃化部が形成され、合金化溶融亜鉛めっきを施すと、P濃化部で合金化の程度に不均一が生じ、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面に凹凸が生じ、線状模様の表面欠陥が発生する。さらに、プレス加工をすると凸部が削れるために模様はより顕著となる。
本発明者は、極低炭素鋼を基本成分とし、強化元素であるPを含有する高張力熱延鋼板を用いた合金化溶融亜鉛めっき鋼板において、めっき表面欠陥の原因となる熱延鋼板表面のPの濃化ムラの発生原因について鋭意研究した結果、熱延板で、スケールと地鉄との界面にP、Ni、Cuが同一箇所に濃化していると、酸洗工程でこの部分が残存し、結果としてPの濃化が大きくなる。その結果、めっき後の合金化処理時にめっき厚みにバラツキが生じ、線状模様となる表面欠陥が生じることを知見した。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面に線状模様となる表面欠陥が発生する原因となるP、Ni、Cuの濃化機構については、次に説明するような濃化機構が考えられる。
一般に、合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、連続鋳造したスラブを加熱炉で加熱し、脱スケール後に熱間圧延し、熱延コイルとして巻き取られ、そして、この熱延鋼板に、必要に応じて冷間圧延、焼鈍を施して、合金化溶融亜鉛めっき処理を施すことによって製造されている。
スラブの加熱工程において、加熱炉でP、Ni、Cuを含有する連続鋳造スラブを1100〜1300℃で加熱すると、Feは酸化されてスケールとなるが、鋼成分であるNi、CuはFeよりも酸化され難いので、Ni、Cuは酸化されずにスケールと地鉄界面に濃化する。特に、スケール生成に伴いNi、Cu濃化部は地鉄側凸部に多く発生する。
次いで、脱スケール(デスケ)−熱間圧延工程において、脱スケールにより1次スケールは除去されるが、地鉄表面に濃化したNi、Cuは除去されないでスラブ表面に残存する。このスラブを熱間圧延するとNi、Cu濃化部は長手方向に圧延されてNi、Cu濃化部の厚さは薄くなるが、その一方で、熱間圧延中の酸化により2次スケールが生成し、それに伴ってNi、Cuが地鉄表面に更に濃化する。
巻取り工程においては、Pがスケールと地鉄界面や粒界に濃化する。このPがNi、Cuと同位置に混在すると酸洗で除去されず残存する。
この鋼板を冷延、焼鈍後に合金化溶融亜鉛めっき処理を施すと、線状模様の表面欠陥の発生部位は、P、Ni、Cuが混在して濃化している部位であることが分かった。このことから、線状模様の表面欠陥の発生は、Pの濃化の有無に係わらず、表層でのNi、Cu、Pが混在して濃化していることに原因があるものと判断できる。
そこで、本発明では、スラブ表面に偏析したPの濃化部を低減することについて、研究した結果、Pの残存はNi、Cuも濃化している部位であることから、本発明ではスケールと地鉄界面のNi、Cuの濃化に着目し、この濃化ムラが少なければ良く、すなわち、意図的にNi、Cuを添加することにより、このムラが低減される知見した。
本発明は、これらの知見に基づいて完成したものである。
まず、本発明で鋼板の成分を限定した理由について説明する(なお、ここで記載の成分についての%は、特別の断りがなければ質量%を意味する)。
自動車用鋼板としては、高張力化と共に、深絞り性等のプレス成形性を満足するものでなければならない。本発明では、鋼板成分として、加工性を向上させるために、極低炭素鋼を基本成分とし、強化元素であるSi、Mn、P等を添加した高張力鋼板を用いるものである。以下に各成分の添加理由および各成分の成分範囲を限定した理由を説明する。
C:0.0005〜0.01%、
Cは、ブレス加工性に関する伸び及びr値を低減させる元素であり、少ないほうが好ましいが、0.0005%未満に低減させるためには製鋼プロセスからしてコストがかかり操業上現実的でない。一方、0.01%を超えると加工性を害することとなるので、上限を0.01%とした。好ましくは、上限は0.008%である。
Si:0.1%以下、
Siは、鋼中に不可避的に含有され、鋼の強度を改善する元素であるが、Siが多くなると鋼板表面にSi酸化物が形成され溶融亜鉛めっきの際に不めっきやめっき密着性を低下させることとなるので、Siの上限を0.1%とした。
Mn:0.01〜1.5%、
Mnは、鋼の強度を改善する元素であり、他の強化元素と組み合わせて使用するが、0.01%未満では精錬コストが高くなるため、下限を0.01%とする。一方、1.5%を超えて含有すると鋼板が硬化して加工性を低下させることとなり、また鋼板の表面にMn酸化物が生成し、溶融めっき性が損なわれるので、Mnの上限を1.5%とした。
P:0.021〜0.08%、
Pは、鋼の強度を改善する能力の大きな元素であり、加工性に対する悪影響もSi、Mn等に比較して少なく、鋼の強化には有用であるが、0.005%未満ではその効果が得られないが、下限は実施例に示す0.021%にした。一方、Pは溶融亜鉛めっきの合金化反応を遅くさせる元素であり、めっき表面に線状模様を発生させ表面性状を劣化させたり、スポット溶接性にも悪影響を与えたりする元素であるので、その上限を0.08%とした。
S:0.02%以下、
Sは、鋼中に不可避的に含有される不純物であり、深絞り性の観点からも少ないほうが好ましいが、0.02%以下であれば、実質的な悪影響はなく、許容できる範囲である。
Al:0.01〜0.10%、
Alは、鋼の脱酸元素として含有される元素であって、0.01%未満では十分な脱酸効果が得られない。しかし、0.1%を超えると加工性の低下を招くので、上限を0.1%とした。
N:0.0001〜0.01%
Nは加工性を低下させるため0.01%以下が好ましい。一方で0.0001%より低減することは製造上困難でコスト上昇となるため、下限を0.0001%とした。
Ni:0.005〜0.1%、
Niは酸洗の時にPを残存させるために有効な元素であり、0.005%以上でこの効果が得られる。一方、Niは高価な元素であり、0.1%を超えた添加はコスト上昇を招くため0.1%を上限とした。
Cu:0.005〜0.1%、
CuもNiと同様に酸洗の時にPを残存させるために有効な元素であり、0.005%以上でこの効果が得られる。一方、0.1%を超えた添加はコスト上昇に加え粒界脆化を招くため0.1%を上限とした。
B:0.0001〜0.005
Bは、Nとの親和力が強く、凝固時または熱間圧延時に窒化物を形成し、鋼中に固溶しているNを低減して加工性を高める効果がある。しかしながら含有量が0.005%を超えると溶接時に溶接部及びその熱影響部が硬質化し靭性が劣化する。また、熱延板での強度も高くなり、冷間圧延時の負荷が高くなる。更に、再結晶温度が高くなることにより、加工性の指標であるr値の面内異方性が大きくなりプレス成形性が劣化する。よってB含有量は0.005%以下とするが、好ましくは0.0001〜0.004%である。
Nb:0.008〜0.1
Nbは、C及びNとの親和力が強く、凝固時または熱間圧延時に炭窒化物を形成し、鋼中に固溶しているC及びNを低減して加工性を高める効果がある。しかしながら含有量が0.1%を超えると再結晶温度が高くなることにより、加工性の指標であるr値の面内異方性が大きくなりプレス成形性が劣化する。また、溶接部の靭性も劣化する。よって、Nb含有量は0.1%以下とするが、好ましくは0.008〜0.015%である。
Ti:0.01〜0.1
Tiは、鋼中のNをTiNとして固定し、固溶N量を低減することにより、加工性を改善する元素であり、0.1%を超えて添加してもその効果は飽和し、むしろTiCを形成して加工性を劣化させる。Tiを添加する場合には0.015%以上添加することが加工性改善のため、好ましは0.01〜0.1%、更に好ましくは0.015〜0.1%である。
次に製造方法について説明する。
スラブを1100〜1300℃で加熱する理由は、1100℃未満では、熱延での負荷が高くなり、また所望する熱延仕上げ温度を確保できない。一方で、1300℃を超える加熱はエネルギーを過剰に使用しコスト増を招く。
熱間圧延で仕上温度が800℃未満となると、混粒組織となり、材質バラツキ原因となる。一方で1050℃以上の仕上がり温度にするためには、加熱温度を高温にする必要があり、コスト増につながる。また、強度低下原因ともなる。よって、熱延仕上げ温度は500℃以上800℃以下に限定した。
巻取り温度は500℃未満だと形状不良の原因となる。一方で、800℃を超えて巻き取るとスケール疵が生成し易くなる。また冷延焼鈍後の強度低下につながる。したがって、本発明では、巻取り温度を500℃以上800℃以下と限定した。
本発明では、熱延コイルを50%以上95%以下の冷延率で冷間圧延して所定の厚さの冷延コイルとする。冷延率を50%以上としたのは、r値を確保して加工性を確保するためである。また、50%未満であると熱延で長くする必要があり、設備的にもコスト増加につながる。一方、冷延率95%を超えるには、高荷重に耐える冷延機を必要としコスト増加につながる。したがって、本発明では、冷延率を50%以上、95%以下とした。
また、冷延コイルを再結晶温度以上の温度で焼鈍することによって圧延によって生じた歪が除去され、軟質化して加工性を向上させることができる。焼鈍後に鋼板表面に溶融亜鉛めっきを施し、合金化処理を行なって合金化溶融亜鉛めっき鋼板とする。この焼鈍と溶融亜鉛めっき工程は、連続焼鈍炉を用いて行なうことが好ましい。また、めっきの平均の付着量を片面10g/m未満とすることは製造上困難でありコスト上昇となることに加え、耐食性も低下する。一方で100g/mを超えるとめっき厚のムラとなるため、めっき平均付着量は片面10〜100g/mとした。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき厚みにバラツキがあると、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のプレス加工時にめっきが厚い箇所が削れて表面に模様が発生する欠陥が生じる。本発明では、プレス加工による模様発生を防止するために、めっき厚みばらつきを50%以内とした。めっき厚みバラツキは、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の断面を研磨し、めっき厚みを測定して、(最高厚み−最低厚み)÷最高厚み×100(%)で求めた。この際、圧延方向と垂直方向に10点以上測定することが好ましい。
以下実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
連続鋳造により表1に示す鋼組成(質量%)の供試材鋳片(スラブ)を製造した。このスラブを表2に示すように、加熱炉で1150〜1260℃に加熱保持した後、抽出して脱スケール(デスケ)を行ない、熱延仕上温度が860〜910℃、巻き取り温度が630〜795℃での条件で熱間圧延に供した。熱間圧延後の熱延鋼板の表面を酸洗によってスケールを除去した後、酸洗によって表面を清浄した。この熱延鋼板を冷間圧延して所定の厚さの冷延鋼板とした後、連続焼鈍炉で780〜850℃の焼鈍を行ない、溶融亜鉛めっき浴に浸漬して表2に示す付着量で溶融亜鉛めっきをし、合金化処理を行なって、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得た。表3に得られた合金化溶融亜鉛めっきの性質を記載した。なお、下記表1に示す鋼組成における残部はFeおよび不可避的不純物である。また、下記表1における下線は、本発明の範囲外であることを示す。
次に、上述の方法で作製した発明例および比較例の各合金化溶融亜鉛めっき鋼板について、引張り特性、深絞り加工の指標であるr値、表面性状を評価した。以下、その評価方法について説明する。
引張り特性は、各溶融亜鉛めっき鋼板から引張り方向が圧延方向と並行になるようにして採取したJIS5号試験片を使用して引張り試験を行ない、その伸びElにより評価した。そして、伸びElが25%以上のものを合格とした。
r値の評価は、各溶融亜鉛めっき鋼板から圧延方向に平行方向、45°方向、直角方向の3方向について夫々JIS5号引張り試験片を採取し、各試験片のr値を測定した。そして、圧延方向に平行なr値をr、45°方向のr値をr45、直角方向のr値をr90としたとき、下記(C)式により求められる各方向のr値の平均値raveにより評価した。なお、本実施例においてはraveが1.2以上のものを合格とした。
ave=(r+2×r45+r90)/4 ・・・・(C)
表面性状の評価は上述の方法によるめっき厚みのバラツキ調査および表面模様有無で行った。めっき厚み調査は、圧延方向に垂直方向に15点測定し、最高厚みと最低厚みから(最高厚み−最低厚み)÷最高厚み×100(%)の式で厚みバラツキとした。表面模様有無判定は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面に砥石をかけた後に実施した。この砥石かけはプレス加工での摩擦を想定したものであり、この方法により実際のプレス加工において模様が発生するか否かおおよそ判定が可能である。この方法により模様が発生しなかった合金化溶融亜鉛めっき鋼板は○、模様が発生した合金化溶融亜鉛めっき鋼板を×とした。
以上の結果を下記表に示す。表3は機械特性である引張強さ、伸び、r値を示す。そして表4にめっき厚のばらつき、模様有無の結果を示す。
表2〜4に示すように、発明例の鋼No.F、鋼No.G、鋼No.J、鋼No.K、鋼No.N、鋼No.Pのめっき鋼板、は、いずれも優れた加工性と有するとともに、めっき厚のばらつきも少なく、表面の模様発生もなかった。なお、鋼No.A、鋼No.B、鋼No.Cは参考例である。
これに対して、それ以外の鋼のめっき鋼板は、本発明の範囲から外れた比較例である。すなわち、鋼No.D、鋼No.I、鋼No.OはNi、Cuの含有量が本発明の下限以下である。そのため、めっき厚のばらつきが50%を超え模様が発生した。鋼No.EはNb、Ti、Bの含有量が本発明の下限以下である。そのため、r値が1.0と加工性が確保できなかった。鋼No.MはSi含有量が本発明の上限を超えている比較例である。この溶融亜鉛めっき鋼板は、めっきのはじきが一部に認められ、めっき性が良好ではなかった。鋼No.QはP含有量が本発明の上限を超え、Nb、Ti、Bの含有量が本発明の下限以下の比較例である。この溶融めっき鋼板は合金化速度が遅くなった結果、表面性状にバラツキを生じ、一部が模様のように認められ、また加工性も確保できなかった。鋼No.RはMn含有量が本発明の上限を超えている比較例である。この溶融亜鉛めっき鋼板は、r値が1.1と低値であった。また、溶融亜鉛めっき性が悪化したために、一部に不めっき部が認められた。鋼No.SはC含有量が本発明の上限を超えている比較例である。この溶融亜鉛めっき鋼板は、r値が1.0、伸びが24%と加工性に劣っていた。鋼No.TはTi含有量が本発明の上限を超えている比較例である。この溶融亜鉛めっき鋼板は、r値が0.9と加工性に劣っていた。鋼No.UはNi含有量が本発明の上限を超えている比較例である。また、鋼No.VはCu含有量が本発明の上限を超えている比較例である。鋼No.WはNb含有量が本発明の上限を超えている比較例である。この溶融亜鉛めっき鋼板は、r値が1.1と加工性に劣っていた。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.0005〜0.01%、
    Si:0.1%以下、
    Mn:0.01〜1.5%、
    P:0.021〜0.08%、
    S:0.02%以下、
    Al:0.01〜0.10%、
    N:0.0001〜0.01%、
    Ni:0.005〜0.1%、
    Cu:0.005〜0.1%
    を含有し、加えて
    B:0.0001〜0.005%、
    Nb:0.008〜0.1%、
    Ti:0.01〜0.1%
    の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成の鋼
    板に、平均の付着量が片面10〜100g/mである合金化溶融亜鉛めっき層を設けた
    ことを特徴とする表面性状に優れたプレス用高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  2. 前記合金化溶融亜鉛めっき層のめっき厚みばらつきが50%以内であることを特徴とする請求項1に記載の表面性状に優れたプレス用高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  3. 質量%で、
    C:0.0005〜0.01%、
    Si:0.1%以下、
    Mn:0.01〜1.5%、
    P:0.021〜0.08%、
    S:0.02%以下、
    Al:0.01〜0.10%、
    N:0.0001〜0.01%、
    Ni:0.005〜0.1%、
    Cu:0.005〜0.1%
    を含有し、加えて
    B:0.0001〜0.005%、
    Nb:0.008〜0.1%、
    Ti:0.01〜0.1%
    の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成の溶鋼を連続鋳造してスラブを得る工程と、前記スラブを1100〜1300℃で加熱する工程と、前記加熱スラブを仕上げ温度800℃以上1050℃以下、巻取り温度500℃以上800℃以下の条件で熱間圧延して熱延コイルを得る工程と、前記熱延コイルを50%以上95%以下の冷延率で冷間圧延して所定の厚さの冷延コイルとする工程と、前記コイルを再結晶温度以上の温度で焼鈍するとともに、その後コイル表面に平均の付着量が片面10〜100g/mである溶融亜鉛めっきし、合金化処理を施す工程とを有することを特徴とする表面性状に優れたプレス用高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  4. 前記合金化処理後のめっき厚みばらつきを50%以内としたことを特徴とする請求項3に記載の表面性状に優れたプレス用高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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