JP5167829B2 - 圧縮機 - Google Patents

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Description

本発明は、シリンダ室の内部に配置されるローラ、及び、ブレードを有するピストンと
、ブレードの両側に配置されるブッシュとを有するロータリ式の圧縮機に関する。
従来のロータリ式圧縮機は、例えば特許文献1及び特許文献2に記載されているように
、ブレード及びローラから成るピストンと、ブレードの両側に配置される二つのブッシュ
とを含む。そして、特許文献1及び特許文献2に開示されているように、このようなロー
タリ式圧縮機において、ブレード側面に対向するブッシュの対向面はほぼ平面となってい
る。
特許第3156895号公報 特許第3551579号公報
特許文献1及び特許文献2に記載されたブッシュを製造する場合には、対向面が完全な
平面になっているもの(図9参照)を目標としてブッシュを研磨加工することになる。し
かし、ブッシュに対して、平面仕上げを目標として研磨加工をしたとしても、加工精度の
誤差により、完全な平面に比べてブッシュの中央部が落ち込んだ状態になってしまうこと
がある。そして、ブッシュにこのような窪みができると、ブッシュとブレードとの間の摩
擦力が増大する。
以下、図を参照しながらこの現象について説明する。図10(a)〜図10(c)は、
圧縮機の運転状態における、対向面に窪みのあるブッシュ935と、ブレード82との関
係を概略的に示したものである。図10(a)〜図10(c)において、矢印Jはブレー
ド82の移動方向を示している。また、本例の圧縮機においては、シリンダ本体を挟むよ
うに、二つのヘッド部材が配置されており、ブッシュ及びブレードは、二つのヘッド部材
によって挟まれた状態になっているものとする。
まず、ブッシュ935において、ブレード82の進行方向に関して一端側の一端部93
5aがブレード82に接触し、他端部935bがブレード82から離れた状態になってい
るとする(図10(a)参照)。そして、ブッシュ−ブレード間の潤滑のための潤滑油は
、矢印Hで示すように移動し、ブッシュ935とブレード82との間に入り込む。このと
きに、ブレード82が矢印Jの方向に移動しているために、ブレード82の移動に伴って
移動する潤滑油の力によってブッシュ935が押されるので、ブッシュ935は矢印Mの
方向へ回転移動する。
その後、ブッシュ935の他端部935bがブレード82に接触し、一端部935aが
ブレード82から離れた状態になる(図10(b)参照)。そして、潤滑油は、矢印Kで
示すように、ブレード82のJ方向への移動に伴って、ブッシュ935とブレード82と
の間からかき出されて流出する。そして、ブッシュ935とブレードとの間の潤滑油がな
くなっていくので、ブッシュ935は矢印Nの方向へ回転移動する。そのため、ブッシュ
935の一端部935a及び他端部935bの両方がブレード82に対して接触する(図
10(c)参照)。
この接触時には、ブッシュ935とブレード82との間からは、上記のように潤滑油が
流出する一方で、ブッシュ935とブレード82との間に、新たに潤滑油が供給されない
ので、ブッシュ935の対向面935sに形成された窪みと、ブレード82との間に、負
圧の閉空間Sが生じる(より詳細には、ブッシュ、ブレード、及び、二つのヘッド部材に
よって囲まれた負圧の閉空間Sが形成される)。そのため、ブッシュ935はブレード8
2に対して押し付けられた状態となり(図10(c)の矢印L参照)、ブッシュ935と
ブレード82との間の摩擦力が大きくなるので、圧縮機の運転効率が低下する。ブッシュ
の対向面に窪みがあると、以上のような問題が生じる。
そこで、この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ブッシ
ュとブレードとの間の摩擦力が増大するのを防止して、運転効率の低下を抑止できる圧縮
機を提供することを目的とする。
第1の発明にかかる圧縮機は、シリンダに形成されたシリンダ室の内部に配置される筒
状のローラ、及び、前記ローラの外周面に設けられたブレードを有するピストンと、前記
ブレードの両側において前記ブレードの側面に対向した対向面をそれぞれ有する二つのブ
ッシュとを備え、前記二つのブッシュの少なくとも一方の対向面は、当該対向面の全領域が当該対向面における前記ブッシュの高さ方向に沿った二本の端辺を含む仮想平面に対して、前記ブレードの側面に向かって突出した凸形状に構成されている。
この構成では、ブッシュの対向面に落ち込んだ窪みが生じることがないように、ブッシ
ュの少なくとも一方の対向面の形状が、当該対向面におけるブッシュの高さ方向に沿った二本の端辺を含む仮想平面に対して、ブレードの側面に向かって突出した凸形状となっている。そのため、対向面に窪みがある場合に比べて、ブッシュとブレードとの間の摩擦力が増大するのを防止して、運転効率の低下を抑止できる。
第2の発明にかかる圧縮機においては、前記ブッシュの全ての水平断面において前記対
向面に対応した部分は、同一の多角形状である。これによると、単純な形状により、ブッ
シュとブレードとの間の摩擦力が増大するのを防止して、運転効率の低下を抑止できる。
第3の発明にかかる圧縮機においては、前記対向面は、前記ブレードの側面に対して面
接触する。ブッシュとブレードとの接触部の面積が小さい場合には、ブッシュとブレード
との間において、潤滑油の油膜を維持できないので、ブッシュとブレードとの間の摩擦抵
抗が大きくなる。一方、本構成では、ブッシュの対向面とブレードとが面接触するので、
この面の面積を大きくすることにより、ブッシュとブレードとの間に形成される油膜が維
持でき、ブッシュとブレードとの間の摩擦抵抗を小さくすることができる。そのため、圧
縮機の運転効率がさらに向上する。
第4の発明にかかる圧縮機においては、前記ブッシュの全ての水平断面において前記対
向面に対応した部分は、同一の円弧状である。これによると、単純な形状により、ブッシ
ュとブレードとの間の摩擦力が増大するのを防止して、運転効率の低下を抑止できる。
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
第1の発明では、ブッシュの対向面に落ち込んだ窪みが生じることがないように、ブッ
シュの少なくとも一方の対向面の形状が、当該対向面におけるブッシュの高さ方向に沿った二本の端辺を含む仮想平面に対して、ブレードの側面に向かって突出した凸形状となっている。そのため、対向面に窪みがある場合に比べて、ブッシュとブレードとの間の摩擦力が増大するのを防止して、運転効率の低下を抑止できる。
第2の発明では、単純な形状により、ブッシュとブレードとの間の摩擦力が増大するの
を防止して、運転効率の低下を抑止できる。
第3の発明では、ブッシュの対向面とブレードとが面接触するので、この面の面積を大
きくすることにより、ブッシュとブレードとの間に形成される油膜が維持でき、ブッシュ
とブレードとの間の摩擦抵抗を小さくすることができる。そのため、圧縮機の運転効率が
さらに向上する。
第4の発明では、単純な形状により、ブッシュとブレードとの間の摩擦力が増大するの
を防止して、運転効率の低下を抑止できる。
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、本発明の
第1実施形態にかかる圧縮機を示す断面概略図である。図2は、図1の圧縮機のシリンダ
本体部分を拡大して示す断面概略図である。図3は、図1の圧縮機のブッシュの構造を示
す概略図であり、(a)は上面図、(b)は斜視図を示す。図4は、図1の圧縮機のブッ
シュ及びブレードの面接触状態を説明するための上面視概略図である。図9は、対向面が
ほぼ平面となっている、従来のブッシュを示す参考概略図であり、(a)は上面図、(b
)は斜視図を示す。図10は、対向面に窪みがある、従来のブッシュにおける負圧の閉空
間の発生について説明するための参考概略図であり、(a)は第1段階、(b)は第2段
階、(c)は第3段階の状態(負圧空間発生状態)を示している。なお、図2は、図1の
A−A’矢視断面図であって、一部の構成部材を省略したものである。また、図1は、図
2のG−G’矢視断面の概略図に相当する。
(全体構成)
まず、本実施形態にかかる圧縮機1の全体構成について説明する。圧縮機1は、ロータ
リ式の圧縮機であり、筒状のケーシング2と、シリンダ本体(シリンダ)3と、ピストン
8と、二つのヘッド部材4と、二つのブッシュ35と、を含んで構成されている(図1参
照)。また、ピストン8は、ブレード82及びローラ81を有し、シリンダ本体3に形成
されたシリンダ室30に収容されている(図2参照)。そして、圧縮機1は、吸入管22
から吸入される冷媒ガスを、圧縮室であるシリンダ室30で圧縮して、その後、圧縮後の
冷媒ガスをシリンダ室30からケーシング2の放出空間24に吐出し、さらに吐出管21
からケーシング2の外部へと送り出すように構成されている。なお、圧縮機1は、図1に
示すように、駆動軸7の軸方向(図1の矢印D方向参照)が上下方向に沿うように配置さ
れているものとする。
ケーシング2の内部には、モータ9、シリンダ本体3等が配置されている。本実施形態
において、圧縮機1は単段型のものであり、シリンダ本体の数は一つとなっている。また
、ケーシング2の内部において、シリンダ本体3及び二つのヘッド部材4の下方の端部(
すなわち底部)には、潤滑油が溜められる油溜まり部23が形成されている。なお、図1
のドットで示した部分は、油溜まり部23に貯留されている油を示している。
モータ9は、ステータと、ステータの内部に配置されたロータとからなる。そして、モ
ータ9の下方には、シリンダ室30が形成されたシリンダ本体3、二つのヘッド部材4等
が配置されており、モータ9に取り付けられた駆動軸7の回転に伴い、ピストン8のロー
ラ81がシリンダ室30内で回転するようになっている。
また、ケーシング2内部において、シリンダ室30の径方向(図1の矢印C方向参照)
外側に対応した領域には、油溜まり部23と放出空間24とを連絡する、複数のオイル戻
し通路6が形成されている。
(シリンダ本体、シリンダ室)
次に、シリンダ本体(シリンダ)3及びシリンダ室30について説明する。シリンダ本
体3は、ケーシング2内部に収められている(図1、図2参照)。シリンダ本体3は、径
方向に関する断面において、輪郭線が円形となるように形成されている。また、シリンダ
本体3の内側には、シリンダ室30が形成されている。そして、シリンダ本体3は、径方
向に関する断面において、シリンダ室30を区画する内周部の形状が円形となるように形
成されている(図2参照)。
シリンダ本体3には、シリンダ室30へと連通する吸入孔34が形成されている(図1
、2参照)。吸入孔34は、吸入される吸入ガス(冷媒ガス)の流路となるものであり、
シリンダ室30の径方向(図1のC方向参照)に関してシリンダ本体3を貫通するように
形成されている。また、シリンダ本体3には、吸入用開口部が形成され、吸入孔34は、
吸入用開口部においてシリンダ室30に開口している。そして、吸入孔34には、ケーシ
ング2の外部に配置されたアキュムレータ(図示せず)から伸びる吸入管22が接続され
ている(図1、図2参照)。以上のようにして、シリンダ室30とアキュムレータとが接
続されている。
また、シリンダ本体3には、吸入孔34の他に、シリンダ室30に開口する孔状部38
が形成されている(図2参照)。孔状部38は、ブッシュ用潤滑油流路37、及び、二つ
の受け入れ用凹部33を含むように形成されている。二つの受け入れ用凹部33は、後述
する二つのブッシュ35を受け入れるための凹部であり、二つのブッシュ35に沿った形
状を有している。ブッシュ用潤滑油流路37は、駆動軸7の軸方向に沿って形成された潤
滑油のための流路であり、油溜まり部23に接続されている。本実施形態においては、油
溜まり部23の潤滑油が、サイフォン方式により、ブッシュ用潤滑油流路37へと汲み上
げられる。なお、ブッシュ用潤滑油流路に対して、油溜まり部23の潤滑油がポンプ機構
によって汲み上げられてもよい。また、本実施形態の圧縮機1は単段型のものであり、シ
リンダ本体3の数は一つであるが、圧縮機は多段型のものであってもよい。
また、シリンダ本体3には、ボルト孔39a〜39eが貫通形成されている(図2参照
)。後述する二つのヘッド部材4は、シリンダ本体3に対してボルト止めされるものであ
り、ボルト孔39a〜39eは、その二つのヘッド部材4をボルト止めする際に用いられ
る。なお、図2は図1のA−A’矢視断面図であるが、ボルト孔39a〜39eに挿入さ
れたボルトを省略して示している。
(吸入室及び吐出室について)
シリンダ室30は、ピストン8により吸入室30kと吐出室30sとに区画される(図
2参照)。そして、吸入孔34及び吐出孔41は、それぞれ、吸入室30k及び吐出室3
0sに連続している(図2参照)。また、ピストン8のブレード82は、吸入用開口部と
吐出孔41とに挟まれる位置に配置されている(図2参照)。
吐出室30sは、吐出孔41に通じる高圧室であり、吸入室30kは、吸入用開口部に
通じる低圧室である。具体的に図を参照して説明すると、図2において、ブレード82及
びローラ81の右下側が吸入室30kとなり、ブレード82及びローラ81の左上側が吐
出室30sとなる。すなわち、吸入室30k、及び、吐出室30sは、ピストン8の回転
に伴い、その体積が変化する(例として、図2に示す状態においては、一時的に、吸入室
30kの体積と吐出室30sの体積とが一致している)。
(ヘッド部材、マフラー部材)
次に、ヘッド部材4及びマフラー部材36について説明する。二つのヘッド部材4は、
シリンダ本体3に対し、軸方向Dに関してシリンダ本体3を挟むように取り付けられてい
る(図1参照)。二つのヘッド部材4は、具体的には、上方の第1ヘッド部材4a及び下
方の第2ヘッド部材4bからなる。そして、二つのヘッド部材4は、シリンダ本体3に取
り付けられた状態においてシリンダ室30に面し、シリンダ室30の両開放部を遮断する
(図1参照)。また、二つのヘッド部材4のそれぞれにおける中央部には、軸受け孔4h
,4jが貫通形成されており、この軸受け孔4h,4jによって、駆動軸7が軸受け支持
されている(図1参照)。
また、二つのヘッド部材4のうち、一方の第1ヘッド部材4aには、マフラー部材36
がボルト36vによって取り付けられている。また、第1ヘッド部材4aには、シリンダ
室30へと連通する吐出孔41が形成されている(図1、図2参照)。そして、吐出孔4
1は、マフラー部材36の内部とシリンダ室30とを連絡する。また、マフラー部材36
には、吐出孔36bが形成されており、マフラー部材36の内部空間のガスは、吐出孔3
6bを通って、減音作用を受けつつ放出空間24へと放出される。
吐出孔41には、シリンダ室30内の圧力が所定値以上(本実施形態においては、マフ
ラー部材36の内部空間の圧力値よりも少し高い値)になったときに開く吐出弁40vと
、弁押さえ部材40tとが設けられている(図1参照)。弁押さえ部材40tは、吐出弁
40vの最大開き角度を制限するための部材である。
(ピストン)
次に、ピストン8について説明する。ピストン8は、ローラ81、及び、ブレード82
を有して構成される。ローラ81は、筒状に形成されており、シリンダ室30の内部に配
置されている。また、ローラ81は、シリンダ室30に入るような大きさで円筒状に形成
されており、シリンダ室30内で回転移動することにより吸入された冷媒ガスを圧縮する
。ブレード82は、ローラ81の外周面に設けられているものであり、ローラ81の外周
面から半径方向に突出する板状部材である。ブレード82とローラ81とは一体形成され
ている。なお、ブレードとローラとは別部材であってもよく、両者が溶接により連結して
構成されていてもよい。また、ブレードとローラとは、凹凸嵌合構造や、接着剤により連
結されていてもよい。
ローラ81の内側には、クランクピン72が、ローラ81の内部で回転可能となるよう
に嵌め込まれている。そして、駆動軸7及びクランクピン72の回転中心となる潤滑油流
路71は、クランクピン72の円中心に対して偏心した位置に形成されており、駆動軸7
は、クランクピン72と一体に形成されており(図1、図2参照)、クランクピン72と
駆動軸7とは一体として回転するようになっている。
一方、クランクピン72とローラ81とは互いに固定されていない。このため、駆動軸
7の回転に伴ってクランクピン72は回転(一体として自転)するが、ローラ81は、駆
動軸7の回転に伴い、クランクピン72と一体として自転するわけではなく、その外周面
の一部においてシリンダ本体3の内周面に接触(又は近接)しつつ、シリンダ本体3の内
周面に沿って駆動軸7の周囲を公転する。シリンダ室30においては、この公転毎に、吸
入孔34から吸入した冷媒ガスが圧縮されて吐出孔41から吐出される。なお、本実施形
態において、駆動軸7とクランクピン72とは一体に形成されているが、駆動軸は、クラ
ンクピンとは別体であって且つクランクピンに形成された軸孔に対して挿入されていても
よく、この場合において、クランクピン72は、駆動軸7に対して、これらが一体として
回転するように接着等によって取り付けられていてもよい。
また、駆動軸7の中央部には、油溜まり部23に連通している潤滑油流路71が形成さ
れている(図2参照)。この潤滑油流路71の入口側にはポンプ部73が設けられており
、潤滑油は、ポンプ部73によって潤滑油流路71内部へ汲み上げられる。また、潤滑油
流路71からは、図示しない油路が分岐して形成されている。そしてこの油路は、クラン
クピン72とローラ81との接触面(ローラ内部摺動部分とする)に開口している。また
、この油路は、ローラ内部摺動部分を介して、ローラ81と上下のヘッド部材4との間の
摺動部へ連続している。
(ブッシュ)
次に、ブッシュについて説明する。シリンダ本体3に形成された二つの受け入れ用凹部
33には、二つの半円柱状のブッシュ35が配置される(図2参照)。
ピストン8におけるブレード82は、孔状部38内に挿入されており、二つのブッシュ
35は、ブレード82の両側面を両側から挟むように配置される。また、二つのブッシュ
35は、シリンダ本体3の周方向(図2の矢印方向F参照)に関してブレード82を挟み
つつ、二つの受け入れ用凹部33に配置される。また、二つのブッシュ35は、ローラ8
1の動作(クランクピン72の周囲における公転動作)に応じて、二つの受け入れ用凹部
33の壁面に沿って回転移動する。この二つのブッシュ35の回転移動は、一方向に回転
し続けるものではなく、右回り、左回りの回転移動を交互に行なうもの(揺動)である。
また、二つのブッシュ35は、それぞれ、ブレード82の両側において、ブレード82
の側面に対向した対向面35sを有している(図3、図4参照)。そして、二つのブッシ
ュ35のそれぞれにおいて、その対向面35sは、ブレード82の側面に向かって突出し
た凸形状に構成されている(図3、図4参照)。なお、本実施形態では、二つのブッシュ
35の両方において、対向面35sが凸形状に構成されているが、二つのブッシュの少な
くとも一方の対向面が、ブレードの側面に向かって突出した凸形状に構成されていればよ
い。そして、例えば、一方のブッシュの対向面のみが、凸形状に構成されており、他方の
ブッシュの対向面はほぼ平面であってもよい。
また、対向面35sは、ブレード82の側面に対して面接触する。具体的には、対向面
35sには、二つの接触面35fが含まれる。そして、それぞれの接触面35fが、ブレ
ード82の側面に対して面接触できるようになっている(図4参照)。図4には、それぞ
れのブッシュ35において、二つの接触面35fのうち、一方の接触面35fがブレード
82に接触している状態を示しているが、図4においてブレード82の表面から離れてい
る他方の接触面35fが、ブレード82に接触することもある。
また、ブッシュ35の全ての水平断面(軸方向Dに対して垂直な断面)において対向面
35sに対応した部分は、同一の形状を有し、二本の連結した直線によって形成されてい
る。そして、ブッシュ35の一つの水平断面において、対向面35sに対向する部分の形
状は、ブレード82側に向かって突出するように折れ曲がっている。図3(a)は、ブッ
シュ35の上面図(図3(b)において、矢印P方向に沿って見たときの図)であるが、
図3(a)のブッシュ35の輪郭線は、ブッシュ35の全ての水平断面における輪郭線に
等しい。
ブッシュ35の形状についてさらに詳しく説明する。ブッシュ35においては、運転状
態において、ブッシュ35、ブレード82及び二つのヘッド部材4によって囲まれた閉空
間が形成されることがないように、ブッシュ35のブレード82に対向する対向面35s
の全領域が、当該対向面35sにおけるブッシュ35の高さ方向(軸方向D)に沿った二
本の端辺(端辺35c及び端辺35d。図3参照)を含む仮想平面35vに対して、ブレ
ード82側に突出している。ここで、“閉空間”とは、厳密には、(1)オイル通路に充
填されている潤滑油、(2)ブッシュ35、(3)ブレード82、(4)二つのヘッド部
材4、によって、隙間のないように囲まれた空間のことである。なお、仮想平面35vは
、対向面がほぼ平面となっている従来のブッシュ835(図9参照)における、対向面8
35sに相当する。そして、ブッシュ35の対向面35sは、仮想平面35vからブレー
ド82側へ突出形成されており、圧縮機の運転状態において、ブッシュ35、ブレード8
2及び二つのヘッド部材4によって、負圧で且つ閉じられた空間が形成されることがない
なお、本実施形態において、ブッシュ35の対向面35sは、ブレード82に対して面
接触するが、対向面は、ブレードに対して面接触しなくても良い。また、ブッシュの全て
の水平断面において対向面に対応した部分は、同一の多角形状であればよく、ブッシュ3
5のような形状には限られない(後述する変形例(図8)参照)。また、ブッシュ形状に
関して、ブッシュの全ての水平断面において対向面に対向した部分は、同一の円弧状であ
ってもよい(後述する第2実施形態(図5)参照)。また、ブッシュの全ての水平断面の
形状は、同一でなくてもよい(後述する第3、第4実施形態(図6(a)、図6(b))
、第5実施形態(図7)参照)。
(ブッシュの対向面とブレード側面との関係について)
次に、圧縮機1の動作中における、ブッシュ35の対向面35sとブレード82の側面
との関係について説明する。圧縮機1においては、シリンダ本体3を挟むように、二つの
ヘッド部材4が配置されており、ブッシュ35及びブレード82は、二つのヘッド部材4
によって挟まれた状態になっているものとする。
図10に示したように、ブッシュ935の対向面935sに窪みがある場合には、運転
状態において、ブッシュ935の対向面935sに形成された窪みと、ブレード82との
間に、負圧の閉空間Sが生じる(より詳細には、ブッシュ、ブレード、及び、二つのヘッ
ド部材によって囲まれた負圧の閉空間Sが形成される)ことがある。そのため、ブッシュ
935とブレード82との間の摩擦力が大きくなるので、圧縮機の運転効率が低下する。
一方、図4から分かるように、本実施形態のブッシュ35を圧縮機に使用する場合には、
ブッシュ35とブレード82との間に負圧の閉空間が形成されることがない。より詳細に
は、ブッシュ35の上面視(図3(b)のP参照)または底面視において、ブッシュ35
の対向面35sとブレード82との間に、閉領域が形成されることがなく、また、ブッシ
ュ35の側面視においても、ブッシュ35の対向面35sとブレード82との間に閉領域
が形成されることがない。そのため、圧縮機の動作中において、対向面35sとブレード
82との間に、負圧の閉空間が形成されない。
[本発明の特徴]
本実施形態にかかる圧縮機1には、以下のような特徴がある。
本実施形態の圧縮機1は、シリンダ本体3に形成されたシリンダ室30の内部に配置さ
れる筒状のローラ81、及び、ローラ81の外周面に設けられたブレード82を有するピ
ストン8と、ブレード82の両側においてブレード82の側面に対向した対向面35sを
それぞれ有する二つのブッシュ35とを備え、二つのブッシュ35のそれぞれの対向面3
5sは、対向面35sの全領域が対向面35sにおけるブッシュ35の高さ方向(軸方向D)に沿った二本の端辺35c、35dを含む仮想平面35vに対して、ブレード82の側面に向かって突出した凸形状に構成されている。
この構成では、ブッシュの対向面に落ち込んだ窪みが生じることがないように、二つの
ブッシュ35のそれぞれの対向面35sの形状が、対向面35sにおけるブッシュ35の高さ方向(軸方向D)に沿った二本の端辺35c、35dを含む仮想平面35vに対して、ブレード82の側面に向かって突出した凸形状となっている。そのため、対向面に窪みがある場合に比べて、ブッシュ35とブレード82との間の摩擦力が増大するのを防止して、運転効率の低下を抑止できる。
本発明においては、対向面の形状を積極的に凸形状に設定することで、加工誤差の範囲
内で、最も深く研磨してしまった場合においても、対向面に窪みが確実に生じないように
する。このことに関連して、仮想平面35vに対して突出した部分の最大高さD1(図3
(a)参照)が1μm以上になるように、加工目標値を設定するのが望ましい。
ここで、D1=0であれば対向面が完全な平面になり、D1が正であれば対向面が凸形
状になり、D1が負になると対向面に窪みができ、ブッシュの表面研磨において、加工誤
差範囲が、X≦D1≦Yの範囲になるとする。この場合に、負圧の閉空間ができないよう
にするためには、Xが0よりも確実に大きくなるようにすれば良い。ブッシュの突出高さ
(D1)の基準となる加工目標値については、このような考え方で設定する。このように
することにより、製品ごとに形状にばらつきがあっても、全ての製品において窪みをなく
すことができる。
また、本実施形態にかかる圧縮機1においては、ブッシュ35の全ての水平断面におい
て対向面35sに対応した部分は、同一の多角形状である。このため、単純な形状により
、ブッシュ35とブレード82との間の摩擦力が増大するのを防止して、運転効率の低下
を抑止できる。
また、本実施形態にかかる圧縮機1においては、対向面35sは、ブレード82の側面
に対して面接触する。ブッシュとブレードとの接触部の面積が小さい場合には、ブッシュ
とブレードとの間において、潤滑油の油膜を維持できないので、ブッシュとブレードとの
間の摩擦抵抗が大きくなる。一方、本構成では、ブッシュ35の対向面35sとブレード
82とが面接触するので、この面の面積を大きくすることにより、ブッシュ35とブレー
ド82との間に形成される油膜が維持でき、ブッシュ35とブレード82との間の摩擦抵
抗を小さくすることができる。そのため、圧縮機の運転効率がさらに向上する。
なお、このようにブッシュとブレードとが面接触する構成は、潤滑油が十分に摺動部に
供給されていない場合(圧縮機の起動時など)に特に有効となる。例えば起動時には、こ
の構成により、摩擦抵抗を小さくして起動トルク増加を抑制できる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態にかかるブッシュについて、上記の実施形態と異なる部分
を中心に説明する。図5は、本発明の第2実施形態にかかるブッシュの構造を示す概略図
であり、(a)は上面図、(b)は斜視図を示す。なお、図5(a)は、第2実施形態に
かかるブッシュの上面図であるが、図5(a)ブッシュの輪郭線は、第2実施形態にかか
るブッシュの全ての水平断面における輪郭線に等しい。また、以下においては、上記の実
施形態と同様の部分については同一の符号を付して説明する。
本実施形態にかかるブッシュ135においては、その全ての水平断面において対向面1
35sに対応した部分は、同一の円弧状となっている。ブッシュは、このように形成され
ていてもよい。
本実施形態にかかる圧縮機においては、ブッシュ135の全ての水平断面において対向
面135sに対応した部分は、同一の円弧状である。このため、単純な形状により、ブッ
シュ135とブレード82との間の摩擦力が増大するのを防止して、運転効率の低下を抑
止できる。
(第3、第4実施形態)
次に、本発明の第3、第4実施形態にかかるブッシュについて、上記の実施形態と異な
る部分を中心に説明する。図6は、第3、第4実施形態にかかるブッシュを説明するため
の斜視概略図であり、(a)は第3実施形態にかかるブッシュ、(b)は第4実施形態に
かかるブッシュを示す。
第3実施形態にかかるブッシュ235、及び、第4実施形態にかかるブッシュ335に
おいては、それぞれ、その上面図は、ブッシュ35の上面図(図3(a))と同様である
が、その水平断面の形状については、上記のブッシュ35とは異なり、全ての水平断面に
おいて同一ではなく、軸方向位置によって変化する。そして、この構成によると、上面視
(図3(b)のP参照)または底面視において、対向面235s(または対向面335s
)とブレード82との間に、閉領域が形成されることがなく、また、側面視においても、
対向面235s(または対向面335s)とブレード82との間に閉領域が形成されるこ
とがない。そして、圧縮機の運転状態において、対向面235s(または対向面335s
)とブレード82との間に、負圧の閉空間が形成されない。ブッシュは、例えばこのよう
に形成されていてもよい。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態にかかるブッシュについて、上記の実施形態と異なる部分
を中心に説明する。図7は、本発明の第5実施形態にかかるブッシュの構造を示す概略図
であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は斜視図を示す。なお、以下において
は、上記の実施形態と同様の部分については同一の符号を付して説明する。
第5実施形態にかかるブッシュ435においては、それぞれ、その上面図は、第2実施
形態にかかるブッシュ135の上面図(図5(a))と同様であるが、その水平断面の形
状については、上記のブッシュ135とは異なり、全ての水平断面において同一ではなく
、軸方向位置によって変化する。そして、この構成によると、上面視(図3(b)のP参
照)または底面視において、対向面435sとブレード82との間に、閉領域が形成され
ることがなく、また、側面視においても、対向面435sとブレード82との間に閉領域
が形成されることがない。そして、圧縮機の運転状態において、対向面435sとブレー
ド82との間に、負圧の閉空間が形成されない。ブッシュは、例えばこのように形成され
ていてもよい。
(変形例)
次に、変形例にかかるブッシュについて、上記の第1実施形態と異なる部分を中心に説
明する。図8は、ブッシュの変形例を説明するための上面視概略図である。なお、以下に
おいては、上記の実施形態と同様の部分については同一の符号を付して説明する。
なお、図8は、本変形例にかかるブッシュの上面図であるが、図8のブッシュ輪郭線は
、本変形例にかかるブッシュの全ての水平断面における輪郭線に等しい。
本変形例にかかるブッシュ535においては、その全ての水平断面において、対向面5
35sに対応した部分は、同一の多角形状となっている。より詳細には、ブッシュ535
の全ての水平断面において対向面535sに対応した部分は、同一の形状を有し、四本の
連結した直線によって形成されている。その結果、対向面535sには、ブレード82の
側面に対して面接触できる四つの接触面が形成されている。そして、対向面535sは、
ブレード82の側面に向かって突出した凸形状を有している。なお、対向面の形状はこれ
以外の形状であってもよく、例えば、ブッシュの全ての水平断面において対向面に対応し
た部分は、同一の形状を有し、五本以上の連結した直線によって形成されていてもよい。
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これら
の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
本発明を利用すれば、ブッシュとブレードとの間の摩擦力が増大するのを防止して、運
転効率の低下を抑止できる圧縮機が得られる。
本発明の第1実施形態にかかる圧縮機を示す断面概略図である。 図1の圧縮機のシリンダ本体部分を拡大して示す断面概略図である。 図1の圧縮機のブッシュの構造を示す概略図であり、(a)は上面図、(b)は斜視図を示す。 図1の圧縮機のブッシュ及びブレードの面接触状態を説明するための上面視概略図である。 本発明の第2実施形態にかかるブッシュの構造を示す概略図であり、(a)は上面図、(b)は斜視図を示す。 第3、第4実施形態にかかるブッシュを説明するための斜視概略図であり、(a)は第3実施形態にかかるブッシュ、(b)は第4実施形態にかかるブッシュを示す。 本発明の第5実施形態にかかるブッシュの構造を示す概略図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は斜視図を示す。 ブッシュの変形例を説明するための上面視概略図である。 対向面がほぼ平面となっている、従来のブッシュを示す参考概略図であり、(a)は上面図、(b)は斜視図を示す。 対向面に窪みがある、従来のブッシュにおける負圧の閉空間の発生について説明するための参考概略図であり、(a)は第1段階、(b)は第2段階、(c)は第3段階の状態(負圧空間発生状態)を示している。
1 圧縮機
2 ケーシング
21 吐出管
22 吸入管
23 油溜まり部
24 放出空間
3 シリンダ本体(シリンダ)
30 シリンダ室
30k 吸入室
30s 吐出室
33 受け入れ用凹部
34 吸入孔
35 ブッシュ
35c、35d 端辺
35f 接触面
35s 対向面
35v 仮想平面
36 マフラー部材
36b 吐出孔
36v ボルト
37 ブッシュ用潤滑油流路
38 孔状部
39a〜39e ボルト孔
4,4a,4b ヘッド部材
4h,4j 軸受け孔
40t 弁押さえ部材
40v 吐出弁
41 吐出孔
6 オイル戻し通路
7 駆動軸
71 潤滑油流路
72 クランクピン
73 ポンプ部
8 ピストン
81 ローラ
82 ブレード
9 モータ

Claims (4)

  1. シリンダ(3)に形成されたシリンダ室(30)の内部に配置される筒状のローラ(81)、及び、前記ローラの外周面に設けられたブレード(82)を有するピストン(8)と、
    前記ブレードの両側において前記ブレードの側面に対向した対向面(35s)をそれぞ
    れ有する二つのブッシュ(35)とを備え、
    前記二つのブッシュの少なくとも一方の対向面は、当該対向面の全領域が当該対向面における前記ブッシュの高さ方向に沿った二本の端辺(35c、35d)を含む仮想平面(35v)に対して、前記ブレードの側面に向かって突出した凸形状に構成されていることを特徴とする圧縮機(1)。
  2. 前記ブッシュの全ての水平断面において前記対向面に対応した部分は、同一の多角形状
    であることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
  3. 前記対向面は、前記ブレードの側面に対して面接触することを特徴とする請求項2に記
    載の圧縮機。
  4. 前記ブッシュの全ての水平断面において前記対向面に対応した部分は、同一の円弧状で
    あることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
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