JP4065654B2 - 複数シリンダロータリ圧縮機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば冷蔵庫や空調機等の冷凍サイクルに使用される複数シリンダロータリ圧縮機に係り、クランク軸の曲がり変形を低減し、効率を高めた複数シリンダロータリ圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
空気調和機や冷蔵庫用の圧縮機としては、レシプロ型、ロータリ型、スクロール型、スクリュー型等が使用されている。これらの圧縮機には、従来、HCFC系の冷媒が使用されていた。しかし昨今、HCFC系冷媒も太陽光中の紫外線により分解し、発生した塩素が成層圏中のオゾン層を破壊することが明らかとなり、国連環境計画主導により、1987年「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」が締結され、2004年から段階的にHCFC系冷媒が規制されることとなった。
【0003】
以上の理由から、代替冷媒としてHFC系冷媒や構成分子にフロンを含まない自然系冷媒を使用した圧縮機の開発が取り組まれている。圧縮機にHFC系冷媒や二酸化炭素等の自然冷媒を使用した場合、作動ガスの圧力が高くなるものがあるため、圧縮室の摺動部隙間からの冷媒ガスの漏れが従来のHCFC系の冷媒よりも増える。そのため、隙間からの漏れを小さく設定することが可能なロータリ圧縮機を代替冷媒用に使用する場合がある。
【0004】
ところで、代替冷媒を1シリンダのロータリ圧縮機に使用した場合、作動ガスの吸込み圧力と吐出し圧力の差が大きいため、圧縮に伴うトルク変動幅が大きくなり、特に2〜3馬力程度の圧縮機の場合には、振動が大きくなるといった問題があった。そのために、複数シリンダのロータリ圧縮機を採用することがある。
【0005】
一方、一般的にロータリ圧縮機を設計する場合は、軸受部に発生するクランク軸と軸受との摩擦による回転動力の機械的損失すなわち摩擦損失を低減することを目的として、クランク軸と軸受との接触面積を縮小し、さらに慣性モーメントを小さくするためにクランク軸径を可能な限り小さく設計することが望ましい。また、クランク軸径を小さくすることによりクランク軸とともに構成されるピストン回転体の重量が軽くなり、駆動のためのモータ消費電力を小さくできる。また、さらにクランク軸径が小さくなる分、全体の圧縮機の外径も小さくでき、小スペース化にも有効であるという利点がある。
【0006】
他方、圧縮機に代替冷媒として凝縮圧力が高いHFC系冷媒を使用した場合、従来のHCFC冷媒に比べ蒸発潜熱が大きく、蒸発ガス密度が大きいため、圧縮機の押し除け容積あたりの能力が大きくなる。このような代替冷媒に適した圧縮室のディメンジョンを提案する2シリンダのロータリ圧縮機として、特開平8−144976公報に、シリンダ高さHをシリンダ内径Dsとクランク偏心量eの積で除したH/ ( Ds・e ) の値が0.07〜0.13の範囲の値になることが記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来の方式で製作した複数シリンダのロータリ圧縮機に代替冷媒を使用した場合、作動ガスの吸込み圧力と吐出し圧力との差が大きくなる冷媒があることと、複数シリンダにすることにより、シリンダの両側に設置されている軸受同士の間隔が1シリンダの場合よりも大きくなること、すなわちガス荷重を受ける支点が長くなることと、さらに、クランク軸径を小さく設計することを志向されることから、シリンダの両側に配置された軸受の間におけるクランク軸の曲がり変形が大きくなる。クランク軸の曲がり変形が大きくなると、軸受に対するクランク軸の傾きが大きくなり、片当たりが生じる。この片当たりにより、クランク軸は軸受から押し付け反力を受け摩擦損失となり、駆動力のロスになるという問題がある。さらに、2つの軸受の間で曲がり変形が起こることにより、ピストンも傾くため、各シリンダを密閉する部材端面および仕切板端面と各ピストン端面との間に片当たりが生じ、各ピストン端面は相対する端面から反力を受けて摩擦損失が大きくなるという問題がある。
【0008】
上記の2つの問題となる摩擦損失は、クランク軸の曲がり変形量が大きくなると圧縮機の性能に対して無視できなくなる。これらの摩擦損失は、いずれも片当たりによるものであって、クランク軸が曲がろうとしているにもかかわらず、2つの軸受や、仕切板および上下の端面によって拘束されることにより生じる反力であり、接触面積が小さく、接触面圧が高くなるために、機械的なエネルギー損失が発生する。他方、軸受部に生じる摩擦損失は、平均的にクランク軸と軸受とに働くため、前記の曲がり変形によって生じる摩擦損失よりも小さい。したがって、クランク軸径を小さくすることは、クランク軸と軸受との摩擦損失を低減し、性能に対する効果があるが、曲がり変形が大きくなることによって増加する摩擦損失の圧縮機性能への影響が大きくなるため、クランク軸径の縮小には限りがある。
【0009】
また、クランク軸の曲りによって生じるピストンの傾きが生じることを考慮すると、ピストン端面と仕切板並びに端板との隙間を、生じるピストンの傾きに応じて大きく設定する必要があり、これらの隙間の増大により、圧縮ガスの漏れ量が増え、圧縮室の体積効率が低下するといった問題がある。
【0010】
一方、代替冷媒として作動圧力が高くないHFC系混合冷媒や炭素系自然冷媒を用いた場合においても、軸受間距離が大きくなることにより前述したクランク軸の曲りが生じ、これによってピストンが傾くことになり、軸受や端板面に片当りが生じる。代替冷媒は、従来のHCFC系冷媒のように極圧抑制作用のある塩素分子がないため、接触部分において摩擦損失が増加し、エネルギ損失や摩耗が増加する問題がある。
【0011】
上記2つの問題を解決することは代替冷媒を用いた複数シリンダのロータリ圧縮機を設計する上で課題となる。
【0012】
特開平8−144976公報に記載された技術は、冷媒ガスの排除効率を最適にするための設計基準は記載されているが、クランク軸の曲がり変形による摩擦損失や体積効率の低下に関して記載されておらず、これらを解決することが重要な課題となる。
【0013】
本発明の目的は、クランク軸の曲がり変形を低減する複数シリンダロータリ圧縮機を提供することにある。
【0014】
また、本発明のその他の目的は、組み立て性を維持しつつクランク軸の曲がり変形を低減する複数シリンダロータリ圧縮機を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、
密閉容器内に電動機部と圧縮機部とがクランク軸によって連結され、前記クランク軸が回転軸に対して偏心した第1のクランクピンと第2のクランクピンを備え、前記圧縮機部が、前記クランク軸を支持する主及び副軸受と、前記主および副軸受間に設けられ、前記第1もしくは第2のクランクピンの外径より大きい内径の貫通孔を有する仕切板によって仕切られた第1、第2のシリンダと、前記第1、第2のシリンダ内で前記クランク軸の回転に伴って偏心運動する第1、第2のピストンと、前記クランク軸を備えた複数シリンダロータリ圧縮機において、
前記第1のクランクピンと第2のクランクピンとの間に設けられた複数の接続部であって、前記接続部の各々は前記各クランクピンの偏心方向に張り出し、前記接続部のうちの少なくとも一つは、前記仕切板の貫通孔内に収納される部分に設けることによって達成される。
【0016】
また、上記目的は、
密閉容器内に電動機部と圧縮機部とがクランク軸によって連結され、前記クランク軸が回転軸に対して偏心した第1のクランクピンと第2のクランクピンを備え、前記圧縮機部が、前記クランク軸を支持する主及び副軸受と、前記主および副軸受間に設けられ、前記第1もしくは第2のクランクピンの外径より大きい内径の貫通孔を有する仕切板によって仕切られた第1、第2のシリンダと、前記第1、第2のシリンダ内で前記クランク軸の回転に伴って偏心運動する第1、第2のピストンと、前記クランク軸を備えた複数シリンダロータリ圧縮機において、
前記第1のクランクピンと前記第2のクランクピンとの間に構成された中間軸のうち、前記仕切板の貫通孔内に収納される部分の回転軸に対する垂直断面が、前記第1のクランクピンもしくは前記第2のクランクピンのうち、一方のクランクピンの回転軸に対する垂直断面に含まれ、かつ、他方のクランクピンの回転軸に対する垂直断面の部分に含まれない部分があり、かつ、外形と回転軸心からの距離の最大値が、前記仕切板の貫通孔の内半径よりも小さい接続部を、前記貫通孔内に収納される部分の中間軸に備えることによって達成される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面により説明する。図1は本発明による複数シリンダロータリ圧縮機の一実施形態を示す縦断図面であり、図2は複数シリンダロータリ圧縮機のクランク軸の形状を示す側面図、図3は図2のクランク軸の断面形状を示す断面図である。
【0019】
図1ないし図3において、1は密閉容器、2は電動機部で、2aは電動機のロータ、2bはステータ、40、41はロータ2aに設けたバランス重量、3はクランク軸、4は主軸受、5は圧縮機構部、6aは第1のシリンダ、6bは第2のシリンダ、50は仕切板、8は副軸受、9はカバー、10aは第1のピストン、10bは第2のピストン、11はカバー、12a、12bはベーン、13は第1のクランクピン、14は第2のクランクピン、15は吐出室、16は吐出ガス通路、17は吐出室、18は吐出パイプ、19a、19bは吸込パイプである。この実施形態は、2個のシリンダを備えた2シリンダロータリ圧縮機を対象にしている。
【0020】
クランク軸3を支持する主軸受4が密閉容器1の内壁に溶接などによって固定されている。そして、この主軸受4の一方の空間には、電動機2が収納され、他方には、圧縮機構部5が収納されている。電動機2は、クランク軸3が嵌着されたロータ2aとこれに対向かつ同軸のステータ2bとからなり、ステータ2bは密閉容器1に固定されている。
【0021】
圧縮機構部5では、クランク軸3が主軸受4からさらに続いており、その先端部が副軸受8によって支持されている。これら主軸受4と副軸受8との間には、2つのシリンダ6a、6bと仕切板50によって仕切られ、2組の圧縮室が形成されており、これらシリンダ6a、6b内で夫々クランク軸3にクランクピン部13、14が形成されている。すなわち、仕切板50は、2つのシリンダ6a、6b間に挟まれる構造をなしている。また、これらシリンダ6a、6b内に夫々ピストン10a、10bが収納されており、これらピストン10a、10bは夫々クランクピン部13、14に嵌入されている。電動機部2によってクランク軸3が回転駆動されると、クランクピン部13、14にしたがってピストン10a、10bが互いに180゜の位相差で回転する。
【0022】
これらピストン10a、10bには、バネ部材によってベーン12a、12bが常に圧接されており、シリンダ6aではピストン10aとベーン12aとにより、また、シリンダ6bではピストン10bとベーン12bとにより、夫々圧縮室が形成されるが、クランク軸3の回転によるピストン10a、10bの偏心回転により、シリンダ6a、6b内の圧縮室は縮小と拡大を繰り返す。そこで、シリンダ6a、6bには、そこでの圧縮室が拡大したとき、吸込パイプ19a、19bから供給される冷媒ガスがこれら圧縮室に吸い込まれ、クランク軸3の回転とともに圧縮室が縮小することにより、冷媒ガスは圧縮され、これらの圧力がある大きさになると(吐出圧力)、シリンダ6a内の圧縮冷媒ガスは主軸受4とそのカバー11によって形成される吐出室17に、シリンダ6b内の圧縮冷媒ガスは副軸受8とそのカバー9によって形成される吐出室15にそれぞれ吐出される。冷媒ガスは、シリンダ6a、6bによって交互に圧縮され、密閉容器1から吐出パイプ18を通って冷凍サイクルへ吐出される。
【0023】
図2は、本発明の一実施例を示した2シリンダロータリ圧縮機のクランク軸3の一部分を抜き出した図である。30は、回転軸に対し互いに偏心した第1のクランクピン13及び第2のクランクピン14を接続する中間軸、51は仕切板50に開けた貫通孔、31及び32は中間軸30であって仕切板50の貫通孔51内に収納される第1及び第2の接続部である。第1のクランクピン13、第2のクランクピン14、中間軸30、第1の接続部32及び第2の接続部31を含むクランク軸30は、鋳造により一体に成形されている。
【0024】
第1のクランクピン13及び第2のクランクピン14には、図2には図示しない、第1のピストン10a及び第2のピストン10bの運動によって冷媒が圧縮され、この圧縮荷重がかかる。この圧縮荷重の方向は、それぞれのクランクピンの偏心方向である。すなわち、図2においてクランク軸3を左方向(反時計回り)に回転させる傾転モーメントが働く。また、両クランクピンに働く圧縮荷重の和は、クランク軸3の回転位置によっては大きく変化はしないものの、一方のピストン10の外壁面シリンダ6の内壁面によって形成される作動室の圧力が吐出圧になったときに最も大きな値となる。
【0025】
この圧縮荷重(ガス荷重)がそれぞれのクランクピンにかかるため、シリンダの両側に配置された軸受からは反力を受け、軸受の間におけるクランク軸には曲げが作用する。このため、クランク軸3と同径の従来の中間軸では、この曲げによって中間軸部が変形し主軸受4や副軸受8の片当たりといった問題があった。
【0026】
このような問題を解決するため、図2に示した実施の形態では、クランク軸3とほぼ同径である中間軸30をそれぞれのクランクピンの偏心方向に拡張した接続部を設けた。すなわち、第1のクランクピン13と接する中間軸30にはクランクピン13の偏心方向に拡張した第1接続部32を、第2のクランクピン14と接する中間軸30にはクランクピン14の偏心方向に拡張した第2接続部31を設けた。
【0027】
このとおり、中間軸30に設けられた第2接続部31はクランクピン14の偏心方向に拡張されている。すなわち、中間軸30に形成された接続部31のクランク軸3に対して垂直な断面(例えばAA断面)は第2のクランクピン14の断面に含まれるているが、第1のクランクピン13の断面には含まれない部分に拡張している。同様に、中間軸30に設けられた第1接続部32はクランクピン13の偏心方向に拡張されている。すなわち、中間軸30に形成された接続部32のクランク軸3に対して垂直な断面は第1のクランクピン13の断面に含まれるているが、第2のクランクピン14の断面には含まれない部分に拡張している。
【0028】
このように、拡張された接続部31及び32を中間軸30に形成することにより、図2において、クランクピンが中間軸30に与える荷重を支えることが可能になり、中間軸30の変形が緩和され、各軸受の片当たりが抑制される。
【0029】
次に組み立て法について簡単に説明する。図1において、電動機部2及び主軸受4は既に密閉容器1内に組み込まれているものとする。第1のクランクピン13、第2のクランクピン14、中間軸30、第1の接続部32及び第2の接続部31を含むクランク軸30に、圧縮機構部5を形成する各部品の組み込みに付き説明する。第1クランクピン13に第1ピストン10aを組み込み、その周囲を覆う第1シリンダ6aを配置する。次に、仕切板50を配置する。仕切板50の貫通孔51をクランク軸3に挿入し、第2クランクピン14を通す。この貫通孔51の内径は、第2クランクピン14の外径よりも若干大きく形成されている。そして、仕切板50が第2クランクピン14を通過したところで、仕切板50を第2クランクピン14の反偏心方向に移動させる。すなわち、仕切板50の貫通孔51の中心がクランク軸3の中心と一致する方向に仕切板50を移動する。続いて、第2クランクピン14に第2ピストン10bを嵌め込んでその周囲に第2シリンダを配置し、副軸受8を取り付けてネジ止めすることにより圧縮機構部5の組み立てが完成する。
【0030】
この組み立てに関しての留意点を以下に示す。まず第1に、仕切板50の貫通孔51が第2クランクピン14を通過可能である径であること。第2に、貫通孔51の内径内に中間軸30が配置されるのであるが、中間軸30に設けられた各接続部がクランク軸3が回転しても、貫通孔51の内壁に当接しないこと。第3に、第1接続部32、第2接続部31及び仕切板50の厚さの関係が、第2のクランク軸14を通過した仕切板50が中間軸30近傍で、貫通孔51の中心がクランク軸3の中心に一致するように仕切板50が移動可能であるような関係となっていること。
【0031】
第1については、貫通孔51の内径を第2クランクピン14の外径よりも大きくすることで解決される。複数シリンダロータリ圧縮機では、ピストン端面と仕切板端面との間は圧縮室を仕切る密閉要素になっている。偏心運動するピストンの外径の軌跡と仕切板の貫通孔内径の距離が大きいほど、密閉性が高くなるため、この貫通孔内径は小さい方が望ましい。一方、クランクピン間に仕切板を組込むためには、仕切板の貫通孔の内径は、少なくとも一方のクランクピンの外径より大きくなければならないが、その差はクランクピンが通過可能な最小限にすることが望ましい。
【0032】
第2について、図3を用いて説明する。この図は、図2のクランク軸3の接続部31の断面形状を示すAA断面図である。図3において、RP2は第2のクランクピン14(実線)の中心軸を中心とした外半径、RHは仕切板50の貫通孔51(点線)の内半径、RJはクランク軸3を回転させたとき、クランク軸3の中心から最も離れた中間軸30の接続部31の軌跡を示す円(2点鎖線部が1個所ある円)の外半径で、RHより小さい。なお2点鎖線部が2個所ある円はクランクピン13である。
【0033】
すなわち、2つの接続部のうち最も中間軸30の中心から離れている部分の回転軌跡が貫通孔51内径よりも内部にあれば両者は接触しない。本実施の形態では図3に示すごとく、接続部の最外径の回転軌跡が貫通孔51の内径よりも小さく設定してあるので、支障なくクランク軸3を回転させることができる。
【0034】
第3について説明する。ここで、もし、第1の接続部32の厚さと第2の接続部31の厚さが同じであり、かつ中間軸の高さの半分であり、さらに仕切板50の厚さが第1の接続部32及び第2の接続部31の厚さよりも厚いと仮定する。クランクピン14を通過した仕切板50は、第2の接続部32に当接する。この時、貫通孔51はまだ第2のクランクピン14を抜けていないので、第2のクランクピン14によって横方向の移動が規制されてしまう。このため、中間軸30の位置に貫通孔51を配置することはできない。本実施形態では、組み立て時に仕切板50の貫通孔51を通過させないクランクピン(本例では第1のクランクピン13)側の接続部(本例では第1接続部32)のクランクピン(第1のクランクピン13)とは反対の面と、貫通孔51を通過させるクランクピン(本例では第2クランクピン14)の仕切板50に対向する面の基準線迄の距離を、仕切板50の厚さよりも大きくした(この時、貫通孔51を通過させるクランクピン(本例では第2クランクピン14)側の接続部(本例では第2接続部31)の厚さは自由に設定可能)。この構成によって、貫通孔51を第2クランクピン14を通過させた後、予定の位置に仕切板50を移動させることが可能となる。
【0035】
本実施の形態によれば、中間軸30の接続部31の断面形状は、第2のクランクピン14と仕切板50の貫通孔51が重なった範囲にあり、かつ、第1のクランクピン13の断面とは重ならない部分がある構成である。したがって、組立て時、第2のクランクピン14と中間軸30の接続部31を仕切板50の貫通孔51が通過可能であり、運転中は接触せずに回転できる。また、中間軸30の大部分を占める接続部31の断面形状を、組立て時仕切板50の貫通孔51が通過しない第1のクランクピン13の断面に含まれない部分に拡張しているため、この部分の断面積を増加し、中間軸30の曲がり変形が小さくなる。
【0036】
図4は、他の変形例を示す図である。図5は、図4の中間軸300の仕切板50の貫通孔51に収納される第1接続部310の断面形状を示すBB断面図である。クランク軸3の中間軸300の第1接続部310の回転軸に対する垂直断面の形状は、2つのクランクピンのうち電動機2に近い第1のクランクピン13の断面に含まれ、かつ、第2のクランクピン14の断面に含まれない部分があるように拡大している。図5において、RP1は第1のクランクピン13の中心軸を中心とする外半径、RHは仕切板50の貫通孔51の内半径、RJは中間軸300の第1接続部310の外半径で、RHより小さい。
【0037】
第1の実施の形態と同様に、中間軸300の第1接続部310の断面積を仕切板50が組立可能な範囲で最大に拡大することにより、剛性を大きくでき、軸の曲がり変形が小さい構造とすることができる。また、第1接続部310は回転軸に対し偏心アンバランス重量を有している。二つのクランクピンとピストンによるアンバランス重量を電動機2のロータ2a上下に設けたバランス重量40、41で平衡させる構造において、電動機2に近い方に偏心重量を設けることにより、ロータ2aの下部に設けるバランス重量40を小さくできる。これによりバランス重量の材料の低減、必要スペースの縮小、さらには、バランス重量の遠心力による軸の曲り変形を低減することができるため、軸受摩擦損失の低減、振動の低減に対する効果がある。
【0038】
なお、この場合の組み立ては、第1クランクピン13が貫通孔51を通過させるクランクピンとなる。
【0039】
図6は、他の変形例を示し、第7図は、第6図の中間軸300の第1のクランクピン13に接続する第1の接続部311と第2のクランクピン14に接続する第2の接続部312の接続部の断面形状を示すDD断面図である。第1のクランクピン13と第2の接続部312との最小距離LP1は仕切板50の厚さBSよりも大きい。第1、第2の接続部311、312の回転軸に対する垂直断面はそれぞれ接続しているクランクピンの回転軸に対する垂直断面に含まれ、かつ、他方のクランクピンの回転軸に対する垂直断面に含まれない部分に拡張している。
【0040】
さらに、前記二つの接続部の断面形状を同心の同外径の円とすればこの部分を含め両者の接続部の断面形状を最大かつ加工容易に形成できる。
【0041】
本実施の形態によれば、図2に示したものに比べて、貫通孔が通過しない側のクランクピン(本例では第2クランクピン14)側の接続部(本例では第2接続部312)の厚さを大きくすることができる。中間軸300の接続部311、312の断面形状は、一方のクランクピンと仕切板50の貫通孔51が重なった範囲にあり、かつ、他方のクランクピンの断面とは重ならない部分がある構成である。したがって、組立て時、クランクピンとの距離が仕切板50の厚さより大きい一方の接続部に対し、他方の接続部とこの接続部が接続しているクランクピンを仕切板50の貫通孔51が通過可能であり、かつ、両者の接続部は運転中貫通孔51とは接触せずに回転できる。したがって、接続部の断面形状は、仕切板50の組立て可能な範囲で拡張しているため、この部分の断面積を増加し、中間軸300の曲がり変形を小さくした構造である。
【0042】
【発明の効果】
以上本発明によれば、複数シリンダを有するロータリ圧縮機において、クランク軸径を小さく設計することを志向するなかで、クランクピン間の曲がり変形を低減でき、クランク軸と軸受、クランクピンとピストン内面あるいは各シリンダを密閉する端板および仕切板端面とピストン端面の片当たりが少なくなるため、摩擦損失が小さくなり、機械効率の損失が低減する。さらに、クランク軸と軸受、ピストンと端板や仕切板端面との余分な隙間も小さくできるため、漏れが少なくなり、体積効率の低減を抑えられる。これらの効果により、クランク軸の変形による性能の低下を抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示した2シリンダロータリ圧縮機の圧縮機部と電動機部を示す縦断面図。
【図2】図1における2シリンダロータリ圧縮機のクランク軸3の一部分を抜き出した図。
【図3】図2のクランク軸3の中間軸30の接続部31を、回転軸に垂直な平面に投影した断面図。
【図4】図2に示した例の変形例を示した2シリンダロータリ圧縮機のクランク軸3の一部分を抜き出した図。
【図5】図4のクランク軸3の中間軸300の接続部310を、回転軸に垂直な平面に投影した断面図。
【図6】図2に示した例の変形例を示した2シリンダロータリ圧縮機のクランク軸3の一部分を抜き出した図。
【図7】図6のクランク軸3の中間軸300の第1の接続部311と第2の接続部312の接続部を、回転軸に垂直な平面に投影した断面図。
【符号の説明】
1…密閉容器、2…電動機部、2a…ロータ、2b…ステータ、3…クランク軸、30、300…中間軸、31、310…接続部、311…第1の接続部、312…第2の接続部、4…主軸受、5…圧縮機構部、6a、6b…シリンダ、50…仕切板、51…貫通孔、8…副軸受、9…カバー、10a、10b…ピストン、11…カバー、12a、12b…ベーン、13…第1のクランクピン、14…第2のクランクピン、15…吐出室、16…吐出ガス通路、17…吐出室、…吐出パイプ、19a、19b…吸込みパイプ。
Claims (8)
- 密閉容器内に電動機部と圧縮機部とがクランク軸によって連結され、前記クランク軸が回転軸に対して偏心した第1のクランクピンと第2のクランクピンを備え、前記圧縮機部が、前記クランク軸を支持する主及び副軸受と、前記主および副軸受間に設けられ、前記第1もしくは第2のクランクピンの外径より大きい内径の貫通孔を有する仕切板によって仕切られた第1、第2のシリンダと、前記第1、第2のシリンダ内で前記クランク軸の回転に伴って偏心運動する第1、第2のピストンと、前記クランク軸を備えた複数シリンダロータリ圧縮機において、
前記仕切板の厚さは、前記第1のクランクピンと第2のクランクピンとの間の寸法よりも小さく、
前記第1のクランクピンと第2のクランクピンとの間に設けられた複数の接続部であって、前記接続部の各々は前記各クランクピンの偏心方向に張り出し、前記接続部のうちの少なくとも一つは、前記仕切板の貫通孔内に収納される部分に設けられている複数シリンダロータリ圧縮機。 - 請求項1において、
前記接続部の最外径の回転軌跡は前記仕切板の貫通孔の内径よりも小さく設定した複数シリンダロータリ圧縮機。 - 請求項1において、
前記仕切板の貫通孔内に収納される部分に設けられている接続部の、前記クランク軸における軸方向の寸法は、前記仕切板の当該寸法よりも大きいことを特徴とする複数シリンダロータリ圧縮機。 - 密閉容器内に電動機部と圧縮機部とがクランク軸によって連結され、前記クランク軸が回転軸に対して偏心した第1のクランクピンと第2のクランクピンを備え、前記圧縮機部が、前記クランク軸を支持する主及び副軸受と、前記主および副軸受間に設けられ、前記第1もしくは第2のクランクピンの外径より大きい内径の貫通孔を有する仕切板によって仕切られた第1、第2のシリンダと、前記第1、第2のシリンダ内で前記クランク軸の回転に伴って偏心運動する第1、第2のピストンと、前記クランク軸を備えた複数シリンダロータリ圧縮機において、
前記第1のクランクピンと前記第2のクランクピンとの間に構成された中間軸のうち、前記仕切板の貫通孔内に収納される部分の回転軸に対する垂直断面が、前記第1のクランクピンもしくは前記第2のクランクピンのうち、一方のクランクピンの回転軸に対する垂直断面に含まれ、かつ、他方のクランクピンの回転軸に対する垂直断面の部分に含まれない部分があり、かつ、外形と回転軸心からの距離の最大値が、前記仕切板の貫通孔の内半径よりも小さい接続部を、前記貫通孔内に収納される部分の中間軸に備えた複数シリンダロータリ圧縮機。 - 請求項4において、前記第1のクランクピンと前記第2のクランクピンとの間に構成された中間軸において、前記第1のクランクピンに接続し、回転軸に対する垂直断面が、この第1のクランクピンの回転軸に対する垂直断面に含まれ、かつ第2のクランクピンの回転軸に対する垂直断面に含まれない部分を有し、かつ、外形と回転軸心からの距離の最大値が、前記仕切板の貫通孔の内半径よりも小さい第1の接続部と、前記第2のクランクピンに接続し、回転軸に対する垂直断面が、該第2のクランクピンの回転軸に対する垂直断面に含まれ、かつ、第1のクランクピンの回転軸に対する垂直断面の部分に含まれない部分あり、かつ、外形と回転軸心からの距離の最大値が、前記仕切板の貫通孔の内半径よりも小さい第2の接続部とを備え、前記第1の接続部と前記第2のクランクピンの最小距離もしくは、前記第2の接続部と前記第1のクランクピンの最小距離のうち、少なくとも一方の最小距離が前記仕切板の厚さより大きく設定した複数シリンダロータリ圧縮機。
- 密閉容器内に電動機部と圧縮機部とがクランク軸によって連結され、前記クランク軸が回転軸に対して偏心した第1のクランクピンと第2のクランクピンを備え、前記圧縮機部が、前記クランク軸を支持する主及び副軸受と、前記主および副軸受間に設けられ、前記第1もしくは第2のクランクピンの外径より大きい内径の貫通孔を有する仕切板によって仕切られた第1、第2のシリンダと、前記第1、第2のシリンダ内で前記クランク軸の回転に伴って偏心運動する第1、第2のピストンと、前記クランク軸を備えた複数シリンダロータリ圧縮機において、
前記第1のクランクピンと第2のクランクピンとの間に設けられた複数の接続部であって、前記接続部の各々は前記各クランクピンの偏心方向に張り出し、前記接続部の最外径の回転軌跡は前記仕切板の貫通孔の内径よりも小さく、前記接続部のうちの少なくとも一つは、その前記クランク軸における軸方向の寸法が前記仕切板の厚さより大きく、且つ、当該接続部の一部が前記シリンダ内径内に収納される部分があるような接続部を有する複数シリンダロータリ圧縮機。 - 密閉容器内に電動機部と圧縮機部とがクランク軸によって連結され、前記クランク軸が回転軸に対して偏心した第1のクランクピンと第2のクランクピンを備え、前記圧縮機部が、前記クランク軸を支持する主及び副軸受と、前記主および副軸受間に設けられ、前記第1もしくは第2のクランクピンの外径より大きい内径の貫通孔を有する仕切板によって仕切られた第1、第2のシリンダと、前記第1、第2のシリンダ内で前記クランク軸の回転に伴って偏心運動する第1、第2のピストンと、前記クランク軸を備えた複数シリンダロータリ圧縮機において、
前記第1のクランクピンと前記第2のクランクピンとの間に構成された中間軸において、
前記第1のクランクピンに接続し、回転軸に対する垂直断面が、この第1のクランクピンの回転軸に対する垂直断面に含まれ、かつ、第2のクランクピンの回転軸に対する垂直断面に含まれない部分を有し、かつ、外形と回転軸心からの距離の最大値が、前記仕切板の貫通孔の内半径よりも小さい第1の接続部と、
前記第2のクランクピンに接続し、回転軸に対する垂直断面が、この第2のクランクピンの回転軸に対する垂直断面に含まれ、かつ、第1のクランクピンの回転軸に対する垂直断面の部分に含まれない部分があり、かつ、外形と回転軸心からの距離の最大値が、前記仕切板の貫通孔の内半径よりも小さい第2の接続部とを、備え、
前記第1の接続部または前記第2の接続部のうちの少なくとも一つは、その前記クランク軸における軸方向の寸法が前記仕切板の厚さより大きく、且つ、その一部がシリンダ内径内に収納される部分があり、
他方の接続部とこれに相対するクランクピンとの最小距離は前記仕切板の厚さより大きく設定した複数シリンダロータリ圧縮機。 - 請求項7において、
前記第1の接続部と前記第2のクランクピンとの最小距離、若しくは、前記第2の接続部と前記第1のクランクピンとの最小距離のうち、一方の最小距離が前記仕切板の厚さより大きく、他方の最小距離が前記仕切板の厚さより小さく設定した複数シリンダロータリ圧縮機。
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