JP5166482B2 - 透光性樹脂基材の製造方法及び透光性樹脂基材 - Google Patents
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Description
本発明は上記の問題点にかんがみてなされたもので、太陽光のうちの特定領域の波長を効果的に遮断すること、特に800nm〜1000nmの赤外線領域を効果的に遮断することができる眼鏡レンズであって、耐衝撃性に優れるポリカーボネート等の樹脂を使用することができ、製造も安価かつ容易な眼鏡レンズの製造方法及びこの方法により製造された眼鏡レンズの提供を目的とする。
本発明の方法によれば、分光透過率曲線が800nm〜1000nmの波長領域の全体にわたって、透過率5%未満の極小値帯を得ることができる。
請求項2に記載するように、眼鏡レンズに偏光機能及び/又は調光機能を付与する工程を追加してもよい。また、請求項3に記載するように、視力矯正領域の補正機能を付与する工程を追加してもよい。
請求項5に記載するように、前記眼鏡レンズに偏光機能及び/又は調光機能を付与してもよい。
[樹脂]
本発明の眼鏡レンズに使用することのできる樹脂は、溶融して金型内のキャビティに射出成型することで眼鏡レンズを成形することができ、かつ、透明性に優れるものであれば特にその材料は問わない。ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタアクリレート(MMA)等を使用することもできるが、本発明は250℃以上の高温で溶融する樹脂に特に好適である。その代表例として、ポリカーボネート(PC)を挙げることができる。
以下の説明では、ポリカーボネートを例に挙げて説明する。
フタロシアニン系色素は、近赤外線吸収色素として周知でありが、その分子構造の違いによって吸収波長の極値が変化することも知られている。そのため、図1に示すように、用途に応じて吸収波長の極値が異なる種々のフタロシアニン系色素が市販されている。
市販のフタロシアニン系色素の一例としては、株式会社日本触媒製の「イーエクスカラー」(登録商標)を用いることができる。
上記のフタロシアニン系色素は、メチルエチルケトンや2−ブタン、トルエン等を溶媒として溶解させることができ、この溶媒中に溶解させた状態で吸収スペクトルを分析することができるが、図1及び図2は、トルエン溶媒中に分子構造の異なる種々のフタロシアニン系色素を5重量%混合溶解したときの吸収スペクトルである。
本発明に用いることのできるフタロシアニン系色素は、目標とする800nm〜1000nmの波長領域内に透過率10%未満の分光透過率曲線の極小値を有するものである。
このようなフタロシアニン系色素の例を図1及び図2に挙げる。
図1(a)のフタロシアニン系色素は、820nm前後に透過率10%未満の極値を有し、図1(b)のフタロシアニン系色素は、850nm前後に透過率10%未満の極値を有し、図1(c)のフタロシアニン系色素は、880nm前後に透過率10%未満の極値を有する。また、図2(a)のフタロシアニン系色素は、970nm前後に透過率10%未満の極値を有し、図2(b)のフタロシアニン系色素は、980nm前後に透過率10%未満の極値を有する。
図1及び図2に示すような種々のフタロシアニン系色素のうち、異なる極値を有する二種以上を、250℃〜300℃で溶融したポリカーボネートに、ポリカーボネート100kgに対して、それぞれ0.1g〜50gの重量範囲の割合で溶融させつつ混合する。重量の割合が0.1gより小さいと、赤外線吸収効果がほとんど現れず、50gを越えると、可視光まで遮断してサングラスとしての機能を果たさなくなる。可視光領域(概ね500nm〜700nmの波長領域)において許容される透過率の下限値は、おおよそ15%程度である。
組み合わせの例としては、例えば、820nm前後に透過率10%未満の極値を有する図1(a)のフタロシアニン系色素と、980nm前後に透過率10%未満の極値を有する図2(a)又は図2(b)のフタロシアニン系色素と、880nm前後に透過率10%未満の極値を有する図1(c)のフタロシアニン系色素とを挙げることができる。
上記で決定されたフタロシアニン系色素の組み合わせ及び量を、250℃〜300℃で溶融したポリカーボネートに混合し、この混合溶湯を金型のキャビティ内に射出する。このようにすることで、分光透過率曲線が800nm〜1000nmの波長領域で透過率5%未満の平坦な極小値帯を有する透光性樹脂基材を得る。この透光性樹脂基材は、レンズやフィルタ等の光学機器の材料として用いることができるが、前記キャビティの形状を、例えば眼鏡レンズの大きさ及び形状に予め形成しておくことで、透光性樹脂基材を得ると同時に赤外性吸収性に優れた眼鏡レンズを得ることができる。
本発明の透光性樹脂基材においては、偏光機能や調光機能、視力矯正機能を付加してもよい。また、フタロシアニン系色素の他、必要に応じて他の色素や添加剤を添加してもよい。
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。使用した材料は以下のとおりである。
樹脂:ポリカーボネート(三菱合成化学株式会社製H3000U)クリア
100kg
フタロシアニン系色素
(A):株式会社日本触媒製イーエクスカラー(登録商標)IR14
(クロロホルム溶媒に5重量%溶解したときの最大吸収波長 832nm、
図4(a)参照)
16.0g〜17.0gの範囲内で適量
(B): 同 IR910
(クロロホルム溶媒に5重量%溶解したときの最大吸収波長 977nm、
図4(b)参照)
18.5g〜19.5gの範囲内で適量
(C): 同 IR20
(クロロホルム溶媒に5重量%溶解したときの最大吸収波長 904nm、
図4(c)参照)
16.0g〜17.0gの範囲内で適量
以上を300℃の温度下で溶融・混合したものを、射出成形して透光性樹脂基材を得た。
図5は、上記(A),(B),(C)のそれぞれを、各適量範囲のほぼ中央の16.5g,19.0g,16.5gとした場合の透光性樹脂基材(眼鏡レンズ)の透過スペクトルである。図示するように、この透光性樹脂基材は、分光透過率曲線が800nm〜1000nmの波長領域で透過率5%未満(ほぼ0)の平坦な極小値帯を有する。
図6は、偏光機能を有する透光性樹脂基材(眼鏡レンズ)に本発明を適用した実施例である。
通常の偏光機能付き透光性樹脂基材の分光透過率曲線を点線で示す。偏光機能は、透光性樹脂基材の少なくとも片面に偏光シートを貼付することで設けることができる。通常の偏光機能付き透光性樹脂基材は赤外線の透過抑制機能を有さず、800nm〜1000nmの領域の波長を90%以上透過させている。
この偏光機能付き透光性樹脂基材に本願発明の赤外線吸収機能を適用すると、分光透過率曲線が800nm〜1000nmの波長領域で透過率5%未満(ほぼ0)の平坦な極小値帯を有する偏光機能付き透光性樹脂基材を得ることができる。
例えば、本発明の透光性樹脂基材には、偏光機能のほか調光機能を付与することが可能であり、特に眼鏡レンズの場合には、視力矯正機能を付与することも可能である。
また、800nm〜850nmの波長領域の範囲内に透過率10%未満の分光透過率曲線の極小値を有するフタロシアニン系色素(A)、950nm〜1000nmの波長領域の範囲内に透過率10%未満の分光透過率曲線の極小値を有するフタロシアニン系色素(B)、875nm〜925nmの波長領域の範囲内に透過率10%未満の分光透過率曲線の極小値を有するフタロシアニン系色素(C)は、総量が前記0.1g〜50gの重量範囲の割合でそれぞれ一種類でも複数種類でもよい。
さらに、樹脂には、フタロシアニン系色素の他、調色のための他の色素やその他の添加剤を添加してもよい。
Claims (5)
- 溶融した樹脂を金型内に射出成型することで形成される眼鏡レンズの製造方法において、
前記樹脂がポリカーボネートで、この樹脂100kgに対して、800nm〜850nmの波長領域の範囲内に透過率10%未満の分光透過率曲線の極小値を有するフタロシアニン系色素(A)を16.0g〜17.0g、950nm〜1000nmの波長領域の範囲内に透過率10%未満の分光透過率曲線の極小値を有するフタロシアニン系色素(B)を18.5g〜19.5g、875nm〜925nmの波長領域の範囲内に透過率10%未満の分光透過率曲線の極小値を有するフタロシアニン系色素(C)を16.0g〜17.0gの重量範囲の割合で混合し、前記樹脂とともに溶融して射出したこと、
を特徴とする眼鏡レンズの製造方法。 - 請求項1記載の眼鏡レンズの製造方法において、前記眼鏡レンズに偏光機能及び/又は調光機能を付与する工程を設けたことを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
- 請求項1又は2記載の眼鏡レンズの製造方法において、視力矯正領域の補正機能を付与する工程を設けたことを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
- 溶融した樹脂を金型内に射出成型することで形成される眼鏡レンズにおいて、
前記樹脂がポリカーボネートで、この樹脂100kgに対して、800nm〜850nmの波長領域の範囲内に透過率10%未満の分光透過率曲線の極小値を有するフタロシアニン系色素(A)を16.0g〜17.0g、950nm〜1000nmの波長領域の範囲内に透過率10%未満の分光透過率曲線の極小値を有するフタロシアニン系色素(B)を18.5g〜19.5g、875nm〜925nmの波長領域の範囲内に透過率10%未満の分光透過率曲線の極小値を有するフタロシアニン系色素(C)を16.0g〜17.0gの重量範囲の割合で混合し、前記樹脂とともに溶融して射出することで、分光透過率曲線が800nm〜1000nmの波長領域の全体にわたって、透過率5%未満の極小値帯を有すること、
を特徴とする眼鏡レンズ。 - 請求項4記載の眼鏡レンズに偏光機能及び/又は調光機能を付与したことを特徴とする眼鏡レンズ。
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