JP6784914B2 - 透光性樹脂基材の製造方法、透光性樹脂基材及び透光性成形体 - Google Patents
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特許文献1に記載の眼鏡では、波長域が770nm〜1800nmの範囲の近赤外線を透過率15%以下、より好ましくは5%以下にカットすることができる(図3及び段落0033等の記載参照)。この文献に記載の眼鏡のように、近赤外線遮光フィルムを眼鏡レンズの片面又は両面に積層する眼鏡では、積層数を増やすなどしてフィルムの膜厚を大きくすることで、近赤外線のカット率をさらに高めることはできるものの、膜厚を一定以上に大きくすると透光性など眼鏡レンズの機能を阻害するという不具合が生じる。また、この文献に記載の眼鏡では1800nmを越える近赤外線はあまりカットできないという問題がある(特許文献1の例えば図3参照)。
また、特許文献2の赤外線遮蔽フィルムにおいても2500nm前後の波長領域の近赤外線を遮蔽することは困難であるという問題がある。
[樹脂基材]
樹脂基材としては、公知の種々のものを用いることができる、例えば眼鏡レンズに適用をする場合は、ハードコート膜を形成するためのハードコート剤や、紫外線照射によって透光性樹脂基材を硬化させるUV硬化樹脂などを挙げることができる。
このような樹脂基材は市販のものを用いることができる。
近赤外線吸収剤としては、インジウム錫酸化物(ITO)又はアンチモン錫酸化物(ATO)を用いることができる。近赤外線吸収剤としてフィルタ用に市販されているものを用いることができ、例えば、ITOとしては三菱マテリアル電子化成株式会社製ITOを、ATOとしては三菱マテリアル電子化成株式会社製ATO粒子(商品名:T−1)を用いることができる。
黄色色素としては黄色波長範囲570nm〜590nmを含むものであればよく、透明な樹脂基材に均一に分散できる色素であれば特に問わない。例えば、ニトロソ色素、ニトロ色素、アゾ色素、スチルベンアゾ色素、ケトイミン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素、アクリジン色素、キノリン色素、メチン色素、ポリメチン色素、チアゾール色素、インダミン色素、インドフェノール色素、アジン色素、オキサジン色素、チアジン色素、硫化色素、アミノケトン色素、オキシケトン色素、アントラキノン色素、インジゴイド色素、フタロシアニン色素などが挙げられる。
市販のものとしては例えば日本化薬製色素(商品名;Kayaset YellowEG)を用いることができる。
樹脂基材の粒子を有機溶剤に溶かして樹脂基材溶液を得るとともに、近赤外線吸収剤の粒子を溶剤に溶かして近赤外線吸収剤溶液を得る。また、黄色の色素を溶剤に溶かして黄色色素溶液を得る。そして、これらを適量ずつ混合して透光性樹脂基材溶液を得る。
本発明の透光性樹脂基材においては、偏光機能や調光機能、視力矯正機能を付加してもよい。必要に応じて他の色素や添加剤を添加してもよい。
樹脂基材の粒子を有機溶剤に溶かして樹脂基材溶液を得るとともに、近赤外線吸収剤の粒子を溶剤に溶かして近赤外線吸収剤溶液を得る。また、黄色の色素を溶剤に溶かして黄色色素溶液を得る。そして、これらを適量ずつ混合して透光性樹脂基材溶液を得る。この透光性樹脂基材溶液に透光性成形体を浸漬するか透光性樹脂基材溶液を透光性成形体の表面に塗布するかして硬化させることで、透光性樹脂基材の層を透光性成形体の表面に形成することができる。
透光性成形体に使用できる材料としては、透光性に優れるものであればその種類は限定されない。例えば眼鏡レンズ用としては、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。使用した材料は以下のとおりである。
(1) 樹脂基材溶液(A)
UV硬化樹脂粒子の含有量が15重量%と35重量%の樹脂基材溶液を準備した。
(2)近赤外線吸収剤溶液(B)
三菱マテリアル製ITO粒子を40重量%含有する近赤外線吸収剤溶液を準備した。
日本化薬製色素(商品名;Kayaset YellowEG)を0.2重量%含有する色素溶液を準備した。
なお、樹脂基材溶液、近赤外線吸収剤溶液及び色素溶液に用いられる各溶剤は同種類のものであるか、異種類であっても互いに混合が可能なものを用いる。
(4) 透光性樹脂基材の形成
溶液(A),(B),(C)を混合してよく攪拌することで得られた混合溶液(透光性樹脂基材溶液)は、一回の浸漬で眼鏡用のレンズの表面に膜厚20〜30μmの無色の透光性樹脂層を形成できる粘性を有するものであった。この混合溶液にポリカーボネート製の眼鏡用のレンズを浸漬しUV硬化させて、前記レンズの表面に膜厚20〜30μmの透光性樹脂層を形成した。
上記の条件で実験を繰り返し、透光性樹脂層の白濁の抑制度、着色性、可視光の透光率及び近赤外線領域の透過率を総合的に検討した。その結果を以下の表にまとめた。
表中の「◎」は眼鏡レンズとして非常に優れていることを、「○」は優れていることを、「×」は不適であることをそれぞれ示している。
表1は、混合した各溶液の量(g)と判定結果を示し、表2は黄色の色素を添加したNo3〜7の実験例における透光性樹脂基材溶液の総量と各材料の含有量との関係を示し、表3は表2の実験結果に基づいて透光性樹脂基材溶液100重量部における各材料の含有量を換算したものである。
実施例1の実験例No.6で用いた透光性樹脂基材溶液に、本願出願人による特許第5166482号の眼鏡レンズを浸漬させ、UV照射によって硬化させて前記眼鏡レンズの表面に膜厚30μmの透光性樹脂基材の膜を形成した。その結果が上記表1〜3の実験例No.7である。
この実施例2では、800nm〜1000nmの領域で赤外線を効果的に遮断することができ、1500nm〜2500nmの領域で近赤外線を効果的に遮断することのできる高付加価値の眼鏡レンズを得ることができた。
例えば、本発明の透光性樹脂基材には、偏光機能のほか調光機能を付与することが可能であり、特に眼鏡レンズの場合には、視力矯正機能を付与することも可能である。
Claims (4)
- 近赤外線吸収剤をUV硬化樹脂に添加するとともに、膜厚20μm以上30μm以下の予め設定された膜厚で、前記近赤外線吸収剤の添加による白濁を抑制して無色透明状態で75%以上の可視光透光率を有するまで黄色の色素を添加し、1600nm〜1700nmの波長領域における近赤外線の透過率を5%以下、1700nm〜2500nmの波長領域における近赤外線の透過率を2%以下とした近赤外線遮蔽性を有する眼鏡レンズ用の透光性樹脂基材の製造方法において、
前記近赤外線吸収剤としてインジウム錫酸化物(ITO)を準備するとともに、前記黄色の色素として、前記近赤外線吸収剤の添加による白濁を抑制して無色透明状態で75%以上の可視光透光率を得られるものであって、ニトロソ色素、ニトロ色素、アゾ色素、スチルベンアゾ色素、ケトイミン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素、アクリジン色素、キノリン色素、メチン色素、ポリメチン色素、チアゾール色素、インダミン色素、インドフェノール色素、アジン色素、オキサジン色素、チアジン色素、硫化色素、アミノケトン色素、オキシケトン色素、アントラキノン色素、インジゴイド色素又はフタロシアニン色素のいずれかを準備し、
前記UV硬化樹脂、前記近赤外線吸収剤及び前記黄色の色素を25.2:11.4:0.00045、25.2:28.8:0.00028又は25.9:25.7:0.0025の重量比率で添加したこと、
を特徴とする眼鏡レンズ用の透光性樹脂基材の製造方法。 - 近赤外線吸収剤をUV硬化樹脂に添加するとともに、20μm以上30μm以下の膜厚で、前記近赤外線吸収剤の添加による白濁を抑制して無色透明状態で75%以上の可視光透光率を有するまで黄色の色素を添加し、1600nm〜1700nmの波長領域における近赤外線の透過率を5%以下、1700nm〜2500nmの波長領域における近赤外線の透過率を2%以下とした近赤外線遮蔽性を有する眼鏡レンズ用の透光性樹脂基材において、
前記近赤外線吸収剤がインジウム錫酸化物(ITO)であり、
前記黄色の色素が、前記近赤外線吸収剤の添加による白濁を抑制して無色透明状態で75%以上の可視光透光率を得られるものであって、ニトロソ色素、ニトロ色素、アゾ色素、スチルベンアゾ色素、ケトイミン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素、アクリジン色素、キノリン色素、メチン色素、ポリメチン色素、チアゾール色素、インダミン色素、インドフェノール色素、アジン色素、オキサジン色素、チアジン色素、硫化色素、アミノケトン色素、オキシケトン色素、アントラキノン色素、インジゴイド色素又はフタロシアニン色素のいずれかであり、
前記UV硬化樹脂、前記近赤外線吸収剤及び前記黄色の色素を25.2:11.4:0.00045、25.2:28.8:0.00028又は25.9:25.7:0.0025の重量比率で含有すること、
を特徴とする眼鏡レンズ用の透光性樹脂基材。 - 請求項2に記載の前記透光性樹脂基材の膜を表面に形成したことを特徴とする眼鏡レンズ。
- 800nm〜1000nmの波長領域の赤外線の分光透過率を、その両側の波長領域の分光透過率よりも小さくする機能を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の眼鏡レンズ。
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