実施形態で例示する半導体レーザの動作電流制御装置は、半導体レーザをパルス電流駆動してパルス発光させ、半導体レーザが一定発光量となるようにフィードバック制御する。また、この半導体レーザの動作電流制御装置は、パルス電流成分に所望の直流成分を重畳させてパルス電流駆動させることができる。これにより半導体レーザの発光閾値以上の駆動電流領域を用いて、半導体レーザをパルス電流駆動させることができる。
また、この半導体レーザの動作電流制御装置は、直流重畳成分の電流とパルス成分の電流とを独立して、各々制御することができる。そして、所望の基準温度において、所望の消光比や所望の平均光出力となるように、予め直流重畳成分の電流とパルス成分の電流とを決定し設定する。
そして、半導体レーザの動作電流制御装置は、半導体レーザの動作温度がこの基準温度である場合は、設定された直流重畳成分の電流とパルス成分の電流とで、半導体レーザを電流駆動する。また、半導体レーザの動作温度が基準温度から変動する等に起因して半導体レーザの電流平均光出力特性が変動した場合には、半導体レーザの動作電流制御装置は、典型的には動作温度が設定された基準温度から高温側か低温側かに応じて、一定の平均光出力に制御するための電流制御対象を直流重畳成分の電流とパルス成分の電流との間で切り替える。
これにより、半導体レーザの動作電流制御装置は、他の複雑な装置や方法等を用いることなく、また予め多数の温度領域における電流光出力特性(I−L特性)を測定等する事なく、一定の平均光出力となるようにフィードバック制御をするだけで、安定して精度よく消光比を制御し、又は消光比を維持することができる。
実施形態で例示する半導体レーザの動作電流制御装置は、25℃において所望の平均光出力となるように設定した直流重畳成分の電流とパルス成分の電流とを基準として駆動し、半導体レーザの動作温度が25℃より高いか低いかを監視する。
そして、半導体レーザの動作電流制御装置は、半導体レーザの動作温度が25℃よりも高ければパルス成分の電流を制御調整対象として選択し、一定平均光出力になるようにパルス成分の電流をフィードバック制御する。パルス成分の電流をフィードバック制御する場合には、半導体レーザの動作電流制御装置は、直流重畳成分の電流を一定としたままパルス電流高低差、すなわちハイとローの高低間でのパルス高さを変更させる制御を行う。
また、半導体レーザの動作電流制御装置は、半導体レーザの動作温度が25℃よりも低ければ直流重畳成分の電流を制御調整対象として選択し、一定平均光出力になるように直流重畳成分の電流をフィードバック制御する。直流重畳成分の電流をフィードバック制御する場合には、半導体レーザの動作電流制御装置は、パルス成分の電流を一定としたまますなわちパルス電流のハイとロー間の高低差を一定としたまま、直流重畳成分の電流値すなわちパルス成分の電流のロー側の電流値を変更させる制御を行う。
このように半導体レーザの動作電流制御装置がフィードバック電流制御対象を半導体レーザの動作温度に依存して変更し一定平均光出力制御を行うことで、消光比を安定的に維持等することが可能となる。また、半導体レーザの動作電流制御装置は、消光比を精度よく維持等するための他の複雑な制御回路等を設けることなく、消光比を安定的に維持等することが可能となる。
また、光出力モニタ用のフォトダイオード出力値からパルス電流に対応する半導体レーザのパルス発光のピークとボトムとの間の発光差を検出し、直接消光比を求めてフィードバック制御する場合には、フォトダイオードの応答特性や高速性、温度安定性等が懸念される。しかし、実施形態で例示する半導体レーザの動作電流制御装置においては、フォトダイオードの応答特性や高速性、温度安定性等の懸念は払拭されることとなる。
そこで、以下本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
(第一の実施形態)
図1は、第一の実施形態にかかる半導体レーザの動作電流制御装置100の構成概念を例示する図である。半導体レーザの動作電流制御装置100は、図1に示すようにレーザダイオード101と、レーザダイオード101の発光をモニタする平均光出力モニタ用フォトダイオード102とを備える。
平均光出力モニタ用フォトダイオード102で検出したレーザダイオード101の平均光出力は、フィードバックループ制御回路103により、バイアス電流経路105を流れる直流重畳成分のバイアス電流Ibへと帰還制御される。
また、パルス電流駆動部104は、駆動電流のパルス成分であるパルス電流Ipがパルス電流経路106に流れるように駆動する。光ディジタル通信に用いる半導体レーザの動作電流制御装置100は、例えば、25℃等の所定の温度において、所定の一定平均光出力が得られるように、バイアス電流経路105を流れるバイアス電流Ibとパルス電流経路106を流れるパルス電流Ipとを予め調整し、設定する。
予め調整し設定されたパルス電流Ipは、半導体レーザの動作電流制御装置100においては固定値として、パルス電流駆動部104が備える不図示の記憶部等に記憶させておく。また、バイアス電流経路105はコイルL107を備え、パルス電流Ipや各種ノイズ等の変動電流成分をコイルL107で遮断する。
また、抵抗R108は、平均光出力モニタ用フォトダイオード102で生成されるレーザダイオード101の発光量に応じた電流を電圧に変換する。また、電圧変換された平均光出力モニタ用フォトダイオード102の出力値は、基準電圧生成部109で生成される基準電圧と比較される。
そして、電圧変換された平均光出力モニタ用フォトダイオード102の出力値が、基準電圧生成部109で生成される基準電圧と同じであれば、レーザダイオード101の発光量が所定の値であるとして半導体レーザの動作電流制御装置100は、その時の直流重畳成分の電流(バイアス電流Ib)とパルス成分の電流(パルス電流Ip)とを保持して駆動する。
また、電圧変換された平均光出力モニタ用フォトダイオード102の出力値が、基準電圧生成部109で生成される基準電圧より高ければ、レーザダイオード101の発光量が所定の値よりも大きいとして半導体レーザの動作電流制御装置100は、その時の直流重畳成分の電流(バイアス電流Ib)に対してフィードバックループ制御回路103によるフィードバック制御を実行する。具体的には、半導体レーザの動作電流制御装置100は、フィードバックループ制御回路103により、バイアス電流Ibを減少させる制御調整を行う。この場合には、半導体レーザの動作電流制御装置100は、パルス成分の電流(パルス電流Ip)は保持し、パルス成分の電流(パルス電流Ip)を変動させる制御は行わない。
また、電圧変換された平均光出力モニタ用フォトダイオード102の出力値が、基準電圧生成部109で生成される基準電圧より低ければ、レーザダイオード101の発光量が所定の値よりも小さいとして半導体レーザの動作電流制御装置100は、その時の直流重畳成分の電流(バイアス電流Ib)に対してフィードバックループ制御回路103によるフィードバック制御する。具体的には、半導体レーザの動作電流制御装置100は、フィードバックループ制御回路103により、バイアス電流Ibを増大させる制御調整を行う。この場合には、半導体レーザの動作電流制御装置100は、パルス成分の電流(パルス電流Ip)を保持し、パルス成分の電流(パルス電流Ip)を変動させる制御は行わない。
なお、基準電圧は、レーザダイオード101が25℃等の所定の温度において所定の一定平均光出力で発光する場合に、平均光出力モニタ用フォトダイオード102で生成され抵抗R108で変換される電圧に対応する値として、予め基準電圧生成部109で生成するように設定され記憶されている。
半導体レーザの動作電流制御装置100は、一定平均光出力とする為のフィードバック制御対象をバイアス電流Ibとしている。従って、その使用環境温度が例えば25℃よりも低く、レーザダイオード101の動作温度も例えば25℃より低い事が想定される動作環境で使用する場合に、好適である。
次に図2を用いて、半導体レーザの動作電流制御装置100の電流光出力特性(I−L特性)について説明する。図2は、レーザダイオード101の動作温度が変動した場合の電流光出力特性を例示する図である。図2に示すように、基準温度25℃で初期調整設定をした半導体レーザの動作電流制御装置100のレーザダイオード101は、動作温度が25℃であればIL曲線21に示す電流光出力特性を示す。
また、半導体レーザの動作電流制御装置100は、レーザダイオード101の動作温度が25℃であれば、バイアス電流IbはIb25、パルス電流(パルス高低差)はIp25で電流駆動するように予め初期設定されている。すなわち、レーザダイオード101は、パルスのロー電流値がIb25でパルス駆動され、またパルスのハイ電流値が(Ib25+Ip25)でパルス駆動されるように初期設定されている。
また、半導体レーザの動作電流制御装置100が、レーザダイオード101のバイアス電流IbをIb25で電流駆動すると、レーザダイオード101は、パルスのローの時に、IL曲線21の電流値Ib25に対応する光出力P0で発光する。
また、半導体レーザの動作電流制御装置100が、レーザダイオード101のパルス電流(パルス高低差)をIp25で電流駆動すると、レーザダイオード101は、パルスのハイの時に、IL曲線21の電流値(Ib25+Ip25)に対応する光出力P1で発光する。
また、この時に平均光出力モニタ用フォトダイオード102で検出される平均光出力は、ちょうど(P1+P0)/2に相当する平均光出力Paveとなる。そして、半導体レーザの動作電流制御装置100は、レーザダイオード101の動作温度が25℃である場合には、上述の動作駆動とする事で、(P1/P0)の消光比を確保する。ただし、半導体レーザの動作電流制御装置100は温度検出器を備える必要はなく、発光量が一定となるAPC駆動制御等により、(P1/P0)の消光比を確保できる。
ここで、レーザダイオード101の動作温度が、仮に0℃まで低下した場合の電流光出力特性をIL曲線22として図2に示す。図2に示すようにIL曲線22では、レーザダイオード101の温度低下に起因して、IL曲線21よりも閾値電流が小さくなる。また、図2に示すようにIL曲線22では、レーザダイオード101の温度低下に起因して、閾値電流以上、すなわちレーザダイオード101の発振閾値よりも大きな電流領域における線形動作部分の傾きが、IL曲線21よりも大きくなる。すなわち、レーザダイオード101の動作温度が変化する前後では、同じ電流量に対するレーザダイオード101の発光量が異なることとなる。
このため、半導体レーザの動作電流制御装置100は、フィードバックループ制御回路103を用いて、平均光出力Paveを一定にするべく直流重畳成分となるバイアス電流Ibを減少させるフィードバック制御を行う。この結果、図2に示すようにバイアス電流IbはIb0となる。一方、パルス電流Ipは、パルス電流駆動部104によりIp25のままで保持される。
このような制御により、半導体レーザの動作電流制御装置100は、レーザダイオード101の動作温度が25℃から0℃に変化した後においても、バイアス電流Ib0に対応する光出力P0と、パルスのハイの電流値(Ib0+Ip25)に対応する光出力P1との間で、レーザダイオード101をパルス発光させる事ができる。これにより、レーザダイオード101は、その動作温度が25℃から0℃に変化した場合においても、平均光出力をPaveで維持し、かつ(P1/P0)の消光比を確保することが可能となる。
次に、半導体レーザの動作電流制御装置100とは異なり、パルス電流Ipにフィードバック制御する半導体レーザの動作電流制御装置300について、第二の実施形態で例示して説明する。
(第二の実施形態)
図3は、第二の実施形態にかかる半導体レーザの動作電流制御装置300の構成概念を例示する図である。半導体レーザの動作電流制御装置300は、図3に示すようにレーザダイオード301と、レーザダイオード301の発光をモニタする平均光出力モニタ用フォトダイオード302とを備える。
平均光出力モニタ用フォトダイオード302で検出したレーザダイオード301の平均光出力は、フィードバックループ制御回路303により、パルス電流経路306を流れるパルス成分のパルス電流Ipへと帰還制御される。
また、バイアス電流駆動部304は、駆動電流の直流重畳成分であるバイアス電流Ibがバイアス電流経路305に流れるように電流駆動する。光ディジタル通信に用いる半導体レーザの動作電流制御装置300は、例えば、25℃等の所定の温度において、所定の一定平均光出力が得られるように、バイアス電流経路305を流れるバイアス電流Ibとパルス電流経路306を流れるパルス電流Ipとを予め調整し、設定する。
予め調整し設定されたバイアス電流Ibは、半導体レーザの動作電流制御装置300においては固定値として、バイアス電流駆動部304等が備える不図示の記憶部等に記憶させておく。また、バイアス電流経路305はコイルL307を備え、パルス電流Ipや各種ノイズ等の変動電流成分をコイルL307で遮断する。
また、抵抗R308は、平均光出力モニタ用フォトダイオード302で生成されるレーザダイオード301の発光量に応じた電流を、電圧に変換する。また、電圧変換された平均光出力モニタ用フォトダイオード302の出力値は、基準電圧生成部309で生成される基準電圧と比較される。
そして、電圧変換された平均光出力モニタ用フォトダイオード302の出力値が、基準電圧生成部309で生成される基準電圧と同じであれば、レーザダイオードの発光量が所定の値であるとして半導体レーザの動作電流制御装置300は、その時の直流重畳成分の電流(バイアス電流Ib)とパルス成分の電流(パルス電流Ip)とを保持して駆動する。
また、電圧変換された平均光出力モニタ用フォトダイオード302の出力値が、基準電圧生成部309で生成される基準電圧より高ければ、レーザダイオードの発光量が所定の発光量よりも大きいとして半導体レーザの動作電流制御装置300は、その時のパルス成分の電流(パルス電流Ip)に対してフィードバックループ制御回路303によるフィードバック制御を実行する。具体的には、半導体レーザの動作電流制御装置300は、フィードバックループ制御回路103により、パルス電流Ipを減少させる制御調整を行う。この場合には、半導体レーザの動作電流制御装置300は、直流重畳成分の電流(バイアス電流Ib)を保持し、直流重畳成分の電流(バイアス電流Ib)を変動させる制御は行わない。
また、電圧変換された平均光出力モニタ用フォトダイオード302の出力値が、基準電圧生成部309で生成される基準電圧より低ければ、レーザダイオードの発光量が所定の値よりも小さいとして半導体レーザの動作電流制御装置300は、その時のパルス成分の電流(パルス電流Ip)に対してフィードバックループ制御回路303によるフィードバック制御を実行する。具体的には、半導体レーザの動作電流制御装置300は、フィードバックループ制御回路303により、パルス電流Ipを増大させる制御調整を行う。この場合には、半導体レーザの動作電流制御装置300は、直流重畳成分の電流(バイアス電流Ib)を保持し、直流重畳成分の電流(バイアス電流Ip)を変動させる制御は行わない。
なお、基準電圧は、レーザダイオード301が25℃等の所定の温度において所定の一定平均光出力で発光する場合に、平均光出力モニタ用フォトダイオード302で生成され抵抗R308で変換される電圧に対応する値として、予め基準電圧生成部309で生成するように設定され記憶されている。
半導体レーザの動作電流制御装置300は、一定平均光出力とする為のフィードバック制御対象をパルス電流Ipとしている。従って、その使用環境温度が例えば25℃よりも高く、レーザダイオード301の動作温度も例えば25℃より高い事が想定される動作環境で使用する場合に、好適である。
次に図4を用いて、半導体レーザの動作電流制御装置300の電流光出力特性(I−L特性)について説明する。図4は、レーザダイオード301の動作温度が変動した場合の電流光出力特性を例示する図である。図4に示すように、基準温度25℃で初期調整設定をした半導体レーザの動作電流制御装置300のレーザダイオード301は、動作温度が25℃であればIL曲線41に示す電流光出力特性を示す。
また、半導体レーザの動作電流制御装置300は、レーザダイオード301の動作温度が25℃であれば、バイアス電流IbはIb25、パルス電流(パルス高低差)はIp25で電流駆動するように予め初期設定されている。すなわち、レーザダイオード301は、パルスのロー電流値がIb25でパルス駆動され、またパルスのハイ電流値が(Ib25+Ip25)でパルス駆動されるように初期設定されている。
また、半導体レーザの動作電流制御装置300が、レーザダイオード301のバイアス電流IbをIb25で電流駆動すると、レーザダイオード301は、パルスのローの時に、IL曲線41の電流値Ib25に対応する光出力P0で発光する。
また、半導体レーザの動作電流制御装置300が、レーザダイオード301のパルス電流(パルス高低差)をIp25で電流駆動すると、レーザダイオード301は、パルスのハイの時に、IL曲線41の電流値(Ib25+Ip25)に対応する光出力P1で発光する。
また、この時に平均光出力モニタ用フォトダイオード302で検出される平均光出力は、ちょうど(P1+P0)/2に相当する平均光出力Paveとなる。そして、半導体レーザの動作電流制御装置300は、レーザダイオード301の動作温度が25℃である場合には、上述の動作駆動とする事で、(P1/P0)の消光比を確保する。ただし、半導体レーザの動作電流制御装置300は温度検出器を備える必要はなく、発光量が一定となるAPC駆動制御等により、(P1/P0)の消光比を確保できる。
ここで、レーザダイオード301の動作温度が、仮に70℃まで上昇した場合の電流光出力特性をIL曲線42として図4に示す。図4に示すようにIL曲線42では、レーザダイオード301の温度上昇に起因して、IL曲線41よりも閾値電流が大きくなる。また、図4に示すようにIL曲線42では、レーザダイオード301の温度上昇に起因して、閾値電流以上、すなわちレーザダイオード301の発振閾値よりも大きな電流領域における線形動作部分の傾きが、IL曲線41よりも小さくなる。すなわち、レーザダイオード301の動作温度が変化する前後では、同じ電流量に対するレーザダイオード301の発光量が異なることとなる。
このため、半導体レーザの動作電流制御装置300は、フィードバックループ制御回路303を用いて、平均光出力Paveを一定にする為にパルス成分となるパルス電流Ipを増大させるフィードバック制御を行う。この結果、図4に示すようにパルス電流IpはIp70となる。一方、バイアス電流Ibは、バイアス電流駆動部304によりIb25のままで保持される。
このような制御により、半導体レーザの動作電流制御装置300は、レーザダイオード301の動作温度が70℃に変化した後においても、バイアス電流Ib25に対応する光出力P0と、パルスのハイの電流値(Ib25+Ip70)に対応する光出力P1との間で、レーザダイオード301をパルス発光させる事ができる。これにより、レーザダイオード301は、その動作温度が70℃となった場合においても、平均光出力をPaveで維持し、かつ(P1/P0)の消光比を確保することが可能となる。
また、一般に半導体レーザダイオードは、図5に示すように動作温度の上昇と共に、発振閾値電流が大きくなり、かつ閾値電流より大きい線形動作部分の傾きが大きくなる。また、一般に半導体レーザダイオードは、図5に示すように動作温度の低下と共に、発振閾値電流が小さくなり、かつ閾値電流より大きい線形動作部分の傾きが小さくなることが知られている。図5は、半導体レーザダイオードのIL温度特性を例示する概念図である。 このため、図5に示すように閾値電流近傍の電流値をIbとして設定すると、Ib0<Ib25<Ib70の関係となる。また、図5において光出力をP0からP1にする為の電流量に相当するIpは、Ip0<Ip25<Ip70の関係となる。
また、半導体レーザダイオードの動作温度が変動する場合に、所望の光出力Paveを維持するようにフィードバック制御しつつ、消光比も基準温度である例えば動作温度25℃における消光比に概ね保持しようとすると、図5に例示するようにバイアス電流Ibの値とパルス電流Ipの値との双方を適宜調整する必要があり制御が複雑となる。
また、図5に示すようにバイアス電流Ibの値とパルス電流Ipの値との双方を適宜調整する場合には、予め各温度に対する複数の電流光出力特性(I−L特性)を測定したりシミュレーションする等を行ったりすることにより、予め半導体レーザダイオードの温度特性を把握することが必要である。
半導体レーザの動作電流制御装置100と半導体レーザの動作電流制御装置300とにおいては、上述するような複雑な制御や事前の各温度に対する電流光出力特性(I−L特性)を測定したり、シミュレーション等を行ったりする必要がない。このため、半導体レーザの動作電流制御装置100と半導体レーザの動作電流制御装置300とを簡易かつ小型軽量な装置とすることができるので、維持管理やメンテナンスの観点からも好ましい。
次に、半導体レーザの動作電流制御装置100と半導体レーザの動作電流制御装置300との両方の制御が可能であり、動作温度状況によって適宜パルス電流Ip又はバイアス電流Ibにフィードバック制御する事が選択可能な半導体レーザの動作電流制御装置600について、第三の実施形態で例示して説明する。
(第三の実施形態)
図6は、第三の実施形態にかかる半導体レーザの動作電流制御装置600の構成概念を例示する図である。半導体レーザの動作電流制御装置600は、図6に示すようにレーザダイオード601と、レーザダイオード601の発光をモニタする平均光出力モニタ用フォトダイオード602とを備える。
平均光出力モニタ用フォトダイオード602で検出したレーザダイオード601の平均光出力は、フィードバックループ制御回路603により一定平均光出力となるように、パルス電流経路606を流れるパルス成分のパルス電流Ip又はバイアス電流経路605を流れる直流重畳成分のバイアス電流Ibへと帰還制御される。
これを実現するため、半導体レーザの動作電流制御装置600は、パルス成分のパルス電流Ip又は直流重畳成分のバイアス電流Ibへと選択的に帰還制御することができる電流駆動部604を備える。電流駆動部604は制御対象選択部612を備えており、フィードバックループ制御回路603からの帰還制御先を、パルス成分のパルス電流Ip又は直流重畳成分のバイアス電流Ibのいずれとするかを選択する。
また、電流駆動部604は、直流重畳成分であるバイアス電流Ibを制御駆動するバイアス電流駆動部613と、パルス成分であるパルス電流Ipを制御駆動するパルス電流駆動部614とを備える。バイアス電流駆動部613が制御対象選択部612で帰還制御先として選択されると、フィードバックループ制御回路603からの帰還制御は、バイアス電流駆動部613によりバイアス電流Ibに対して実行される。また、パルス電流駆動部614が制御対象選択部612で帰還制御先として選択されると、フィードバックループ制御回路603からの帰還制御は、パルス電流駆動部614によりパルス電流Ipに対して実行される。
また、バイアス電流駆動部613は、駆動電流の直流重畳成分である所望のバイアス電流Ibがバイアス電流経路605に流れるように電流駆動する。光ディジタル通信に用いる半導体レーザの動作電流制御装置600は、例えば、25℃等の所定の温度において、所定の一定平均光出力が得られるように、バイアス電流経路605を流れるバイアス電流Ibとパルス電流経路606を流れるパルス電流Ipとを予め調整し、設定している。
また、半導体レーザの動作電流制御装置600は、レーザダイオード601の動作温度をリアルタイムで検出する温度センサ611を備えている。温度センサ611で検出したレーザダイオード601の動作温度は、制御対象選択部612に入力される。制御対象選択部612は、温度センサ611から入力されるレーザダイオード601の動作温度が25℃より高ければ、パルス電流駆動部614を選択する。
また、制御対象選択部612は、温度センサ611から入力されるレーザダイオード601の動作温度が25℃より低ければ、バイアス電流駆動部613を選択する。また、所定の温度である25℃において、所定の発光量で所定の消光比となる駆動電流値は、予め記憶部610に記憶されている。ここで、予め記憶部610に記憶されている駆動電流値は、基準駆動電流となるバイアス電流Ib25とパルス電流Ip25である。
換言すれば、レーザダイオード601の動作温度が25℃であればフィードバック制御を行わず、半導体レーザの動作電流制御装置600は記憶部610に予め記憶される駆動電流値に基づいて、レーザダイオード601を電流駆動する。また、レーザダイオード601の動作温度が25℃より高ければ、半導体レーザの動作電流制御装置600は、パルス電流Ipに対して一定発光量となるフィードバック制御を実行する。また、レーザダイオード601の動作温度が25℃より低ければ、半導体レーザの動作電流制御装置600は、バイアス電流Ibに対して一定発光量となるフィードバック制御を実行する。
予め調整し設定されたバイアス電流Ibは、半導体レーザの動作電流制御装置600においてはレーザダイオード601の動作温度が25℃より高ければ、固定値としてこのバイアス電流Ibで一定駆動に用いられる。また、バイアス電流経路605はコイルL607を備え、パルス電流Ipや各種ノイズ等の変動電流成分をコイルL607で遮断する。
また、抵抗R608は、平均光出力モニタ用フォトダイオード602で生成されるレーザダイオード601の発光量に応じた電流を、電圧に変換する。また、電圧変換された平均光出力モニタ用フォトダイオード602の出力値は、基準電圧生成部609で生成される基準電圧と比較される。
そして、電圧変換された平均光出力モニタ用フォトダイオード602の出力値が、基準電圧生成部609で生成される基準電圧と同じであれば、レーザダイオードの発光量が所定の値であるとして半導体レーザの動作電流制御装置600は、その時の直流重畳成分の電流(バイアス電流Ib)とパルス成分の電流(パルス電流Ip)とを記憶部610に記憶・保持してその値で電流駆動する。なお、記憶部610は、半導体レーザの動作電流制御装置600の電源が遮断されても記憶保持できることが好ましく、例えばEEPROM等で構成する。
また、電圧変換された平均光出力モニタ用フォトダイオード602の出力値が、基準電圧生成部609で生成される基準電圧より高ければ、レーザダイオードの発光量が所定の発光量よりも大きいとして半導体レーザの動作電流制御装置600は、その時の動作温度に応じてパルス成分の電流(パルス電流Ip)又は直流重畳成分(バイアス電流Ib)に対してフィードバックループ制御回路603によるフィードバック制御を実行する。
具体的には、半導体レーザの動作電流制御装置600は、レーザダイオード601の動作温度が25℃より高く、かつレーザダイオードの発光量が所定の発光量よりも大きい場合には、フィードバックループ制御回路603の帰還に基づきパルス電流駆動部614が、パルス電流Ipを減少させる制御調整を行う。レーザダイオード601の動作温度が25℃より高い場合には、半導体レーザの動作電流制御装置600は、直流重畳成分の電流(バイアス電流Ib)を保持し、直流重畳成分の電流(バイアス電流Ib)を変動させる帰還制御は行わない。
また、レーザダイオード601の動作温度が25℃より高い場合に、電圧変換された平均光出力モニタ用フォトダイオード602の出力値が、基準電圧生成部609で生成される基準電圧より低ければ、レーザダイオード601の発光量が所定の値よりも小さいとして半導体レーザの動作電流制御装置600は、その時のパルス成分の電流(パルス電流Ip)に対してフィードバックループ制御回路603によるフィードバック制御を実行する。
具体的には、半導体レーザの動作電流制御装置600は、レーザダイオード601の発光量が所定の値よりも小さい場合には、フィードバックループ制御回路603の帰還に基づきパルス電流駆動部614が、パルス電流Ipを増大させる制御調整を行う。この場合には、半導体レーザの動作電流制御装置600は、直流重畳成分の電流(バイアス電流Ib)を保持し、直流重畳成分の電流(バイアス電流Ip)を変動させる帰還制御は行わない。
また、レーザダイオード601の動作温度が25℃より低い場合に、電圧変換された平均光出力モニタ用フォトダイオード602の出力値が、基準電圧生成部609で生成される基準電圧より高ければ、レーザダイオード601の発光量が所定の値よりも大きいとして半導体レーザの動作電流制御装置600は、その時の直流重畳成分の電流(バイアス電流Ib)に対してフィードバックループ制御回路603によるフィードバック制御を実行する。
具体的には、半導体レーザの動作電流制御装置600は、フィードバックループ制御回路603の帰還に基づきバイアス電流駆動部613が、バイアス電流Ibを減少させる制御調整を行う。この場合には、半導体レーザの動作電流制御装置600は、パルス成分の電流(パルス電流Ip)は保持し、パルス成分の電流(パルス電流Ip)を変動させる制御は行わない。
また、レーザダイオード601の動作温度が25℃より低い場合に、電圧変換された平均光出力モニタ用フォトダイオード602の出力値が、基準電圧生成部609で生成される基準電圧より低ければ、レーザダイオード601の発光量が所定の値よりも小さいとして半導体レーザの動作電流制御装置600は、その時の直流重畳成分の電流(バイアス電流Ib)に対してフィードバックループ制御回路603によるフィードバック制御する。
具体的には、半導体レーザの動作電流制御装置600は、フィードバックループ制御回路603の帰還に基づきバイアス電流駆動部613が、バイアス電流Ibを増大させる制御調整を行う。この場合には、半導体レーザの動作電流制御装置600は、パルス成分の電流(パルス電流Ip)を保持し、パルス成分の電流(パルス電流Ip)を変動させる制御は行わない。
なお、基準電圧は、レーザダイオード601が25℃等の所定の温度において所定の一定平均光出力で発光する場合に、平均光出力モニタ用フォトダイオード602で生成され抵抗R608で変換される電圧に対応する値として、予め基準電圧生成部609で生成するように設定され記憶されている。
半導体レーザの動作電流制御装置600は、一定平均光出力とする為のフィードバック制御対象をパルス電流Ipとバイアス電流Ibとの間で適宜選択可能である。従って、その使用環境温度が例えば25℃よりも高いのか低いのか不明であったり、レーザダイオード601の動作環境温度の変動が不確定であったりする場合等の使用環境下で用いる場合に、特に好適である。
次に、図7を用いて半導体レーザの動作電流制御装置600の動作について説明する。図7は、半導体レーザの動作電流制御装置600の動作フロー概要を例示するフロー図である。
(ステップS51)
半導体レーザの動作電流制御装置600は、基準温度で所定の発光量かつ所定の消光比を確保できるパルス駆動電流値を調整設定されて記憶部610に記憶する。半導体レーザの動作電流制御装置600は、例えば25℃において1.1ミリワットの平均発光量で消光比が10デシベルとなるように、バイアス電流Ib25とパルス電流Ip25とを調整設定され記憶部610に記憶する。このようなバイアス電流Ib25とパルス電流Ip25との初期調整設定は、オペレータが手動で行ってもよいし、半導体レーザの動作電流制御装置600が規格値に自動調整してもよい。
(ステップS52)
半導体レーザの動作電流制御装置600は、レーザダイオード601の動作を開始させるか否かを判断する。半導体レーザの動作電流制御装置600がレーザダイオード601の動作を開始させる場合には、ステップS53へと進む。また、半導体レーザの動作電流制御装置600がレーザダイオード601の動作を開始させない場合には、ステップS52で待機する。
(ステップS53)
半導体レーザの動作電流制御装置600は、まず記憶部610に記憶された初期設定値(バイアス電流Ib25とパルス電流Ip25)でレーザダイオード601の動作を開始する。上述するように、半導体レーザの動作電流制御装置600はフィードバックループ制御回路603により、一定平均光出力のフィードバック制御を行う構成となっている。
(ステップS54)
半導体レーザの動作電流制御装置600は、フィードバックループ制御回路603等により所定の光出力であるか否かを判断する。半導体レーザの動作電流制御装置600は、所定の光出力であれば、記憶部610に記憶される初期設定値のバイアス電流Ib25とパルス電流Ip25とによるレーザダイオード601の駆動を維持する。
また、半導体レーザの動作電流制御装置600のレーザダイオード601が所定の光出力でなければ、ステップS55へと進む。具体的には例えば、半導体レーザの動作電流制御装置600は、レーザダイオード601の光出力が1.1ミリワットであればバイアス電流Ib25とパルス電流Ip25とでレーザダイオード601を継続してパルス駆動する。また、レーザダイオード601の光出力が1.1ミリワットでなければ、ステップS55へと進む。
(ステップS55)
半導体レーザの動作電流制御装置600は、所定の光出力1.1ミリワットの一定平均光出力とするフィードバック制御対象を決定するために、温度センサ611でレーザダイオード601の動作温度をリアルタイムに検出する。
(ステップS56)
半導体レーザの動作電流制御装置600は、温度センサ611で検出したレーザダイオード601の動作温度が所定の設定温度25℃より高いか低いかを制御対象選択部612で判断する。温度センサ611で検出したレーザダイオード601の動作温度が所定の設定温度25℃より高ければ、ステップS57へと進む。また、温度センサ611で検出したレーザダイオード601の動作温度が所定の設定温度25℃より高くなければ、ステップS58へと進む。
なお、このステップS56ではレーザダイオード601の動作温度が所定の設定温度25℃より高くない場合にはステップS58へと進むこととして説明したが、レーザダイオード601の動作温度が所定の設定温度25℃である場合にはステップS54で所定の光出力となっていると考えられることから、ステップS58へと進む場合は実質的にはレーザダイオード601の動作温度が所定の設定温度25℃より低い場合である。
(ステップS57)
半導体レーザの動作電流制御装置600は、制御対象選択部612がフィードバックループ制御回路603の帰還制御をパルス電流駆動部614に選択し、パルス電流Ipに対して一定平均光出力フィードバック制御を実行する。
例えば、半導体レーザの動作電流制御装置600は、平均光出力モニタ用フォトダイオード602の出力値が所定値より小さい場合には、パルス電流Ipを増大させる制御を実行する。また、半導体レーザの動作電流制御装置600は、平均光出力モニタ用フォトダイオード602の出力値が所定値より大きい場合には、パルス電流Ipを低減させる制御を実行する。なお、この場合にはバイアス電流Ibへの制御は行わず、バイアス電流Ibは一定に維持される。
(ステップS58)
半導体レーザの動作電流制御装置600は、制御対象選択部612がフィードバックループ制御回路603の帰還制御をバイアス電流駆動部613に選択し、バイアス電流Ibに対して一定平均光出力フィードバック制御を実行する。
例えば、半導体レーザの動作電流制御装置600は、平均光出力モニタ用フォトダイオード602の出力値が所定値より小さい場合には、バイアス電流Ibを増大させる制御を実行する。また、半導体レーザの動作電流制御装置600は、平均光出力モニタ用フォトダイオード602の出力値が所定値より大きい場合には、バイアス電流Ibを低減させる制御を実行する。なお、この場合にはパルス電流Ipへの制御は行わず、パルス電流Ipは一定に維持される。
(ステップS59)
半導体レーザの動作電流制御装置600は、ステップS57又はステップS58において実行したフィードバック制御の結果、平均光出力モニタ用フォトダイオード602で検出するレーザダイオード601の発光量が、所定の光出力1.1ミリワットであるか否かを判断する。所定の光出力1.1ミリワットであればステップS5aへと進み、所定の光出力1.1ミリワットでなければステップS55へと戻る。
(ステップS5a)
半導体レーザの動作電流制御装置600は、レーザダイオード601の動作を終了させるか否かを判断する。半導体レーザの動作電流制御装置600は、不図示の操作部等から電源遮断等レーザダイオード601の駆動動作を終了させる指示入力があれば、動作終了することとできる。レーザダイオード601の動作を終了させない場合には、ステップS54へと戻る。
以上説明したように半導体レーザの動作電流制御装置600は、レーザダイオード601のリアルタイムの動作温度によって、適宜制御対象をバイアス電流Ibとパルス電流Ipとの間で適宜切り替え制御する。これにより、容易な制御回路を用いて安定した消光比を実現することが可能となる。
なお、上述した半導体レーザの動作電流制御装置600の基準動作温度や基準発光量等は、典型的な例示に過ぎずこれに限定されるものではない。
次に、図8を用いて半導体レーザの動作電流制御装置600が動作制御するレーザダイオード601の電流光出力特性例について、さらに詳細に説明する。図8は、レーザダイオード601の動作温度が極端に低下した場合について、電流光出力特性を例示する概念図である。
半導体レーザの動作電流制御装置600は、図8のIL曲線81に示すようにレーザダイオード601の動作温度が0℃に低下している状況では、パルス電流IpをIp25に維持し、バイアス電流IbをIb0へと一定光出力フィードバックバイアス電流制御する。この制御により、半導体レーザの動作電流制御装置600は、動作温度が0℃においても消光比(P1/P0)を安定的に精度よく保持する事ができる。
しかし、さらにレーザダイオード601の動作温度が低下して例えば−100℃となると、電流光出力特性はIL曲線82に示すような関係となる。レーザダイオード601の動作温度が−100℃では、半導体レーザの動作電流制御装置600は、バイアス電流Ibをゼロとする制御を行っても、なおIp25に対応するレーザダイオード601の光出力P2により、消光比が(P2/P0)となり平均光出力Paveも所望の値から上昇することとなる。いわば、半導体レーザの動作電流制御装置600は、一定光出力制御可能範囲を逸脱した制御不可能のような状況が生じる。
従って、半導体レーザの動作電流制御装置600は、動作温度が基準温度25℃より低い場合であっても、バイアス電流Ibのフィードバック制御によっては、もはや一定光出力制御が実行できないような場合(制御限界の場合)には、フィードバック制御対象をバイアス電流Ibからパルス電流Ipへと切り替えて制御する事が好ましい。これにより、非常に幅広い温度レンジに対して、さらにフレキシブルに対応可能な半導体レーザの動作電流制御装置600とできる。
また、図8に示すような制御限界となる状況を避けるために、半導体レーザの動作電流制御装置600は、想定される動作環境温度内において、レーザダイオード601の発振閾値電流より電流値が大きな線形動作部分を主として利用してレーザダイオード601をパルス動作させる事が好ましい。次に、図9及び図10を用いて主としてレーザダイオード601の線形動作部分を用いる制御例について説明する。
図9は、半導体レーザの動作電流制御装置600の動作温度が上昇する場合のIL曲線を示す概念図であり、図10は、半導体レーザの動作電流制御装置600の動作温度が下降する場合のIL曲線を示す概念図である。そして、図9又は図10のいずれの場合において、主としてレーザダイオード601の線形動作部分を用いる制御を示すものである。
図9においてレーザダイオード601は、IL曲線91のバイアス電流Ib25に対応する発光量Pbと電流値(Ib25+Ip25)に対応する発光量P1との間でパルス発光する。このため、レーザダイオード601の平均光出力値は発光量Paveとなり、この時の消光比は、(P1/Pb)となる。
具体的には例えば、光ディジタル通信に用いる半導体レーザの発光量としてPave1.1ミリワットが要求される場合に、バイアス電流Ib25に対応する発光量Pbは0.2ミリワットとし、電流値(Ib25+Ip25)に対応する発光量P1は2ミリワットとすることができる。そして、この場合の消光比は、10デシベルとなる。
また、IL曲線92に示すようにレーザダイオード601の動作温度が上昇すると、半導体レーザの動作電流制御装置600は、一定光出力Pave1.1ミリワットを維持するようにパルス電流Ipの電流値を増大させる制御を実行する。従って、レーザダイオード601は、IL曲線92のバイアス電流Ib25に対応する発光量P0と電流値(Ib25+Ip70)に対応する発光量P170との間でパルス発光する。
具体的には例えば、バイアス電流Ib25に対応する発光量P0は0.1ミリワットとし、パルス電流のハイの電流値(Ib25+Ip70)に対応する発光量P170は2.1ミリワットとすることができる。そして、この場合の消光比は21デシベルとなる。
このように、半導体レーザの動作電流制御装置600は、レーザダイオード601の平均光出力値を発光量Paveで維持できる。また、この時の消光比は、(P170/P0)となるので、半導体レーザの動作電流制御装置600は線形動作部分を用いる制御により、消光比の制御を別途行わなくても25℃の時の消光比(Ib25+Ip25)よりも消光比を増大させることができる。
また、図10のIL曲線93に例示するようにレーザダイオード601の動作温度が下降すると、半導体レーザの動作電流制御装置600は、一定光出力Pave1.1ミリワットを維持するようにバイアス電流Ibの電流値を低減させる制御を実行する。従って、レーザダイオード601は、IL曲線93のバイアス電流Ib0に対応する発光量Pb0と電流値(Ib0+Ip25)に対応する発光量P10との間でパルス発光する。
具体的には例えば、バイアス電流Ib0に対応する発光量Pb0は0.1ミリワットとし、電流値(Ib0+Ip25)に対応する発光量P10は2.1ミリワットとすることができる。そして、この場合の消光比は21デシベルとなる。
このように、半導体レーザの動作電流制御装置600は、レーザダイオード601の平均光出力値を発光量Paveに維持できる。また、この時の消光比は、(P10/Pb0)となるので、半導体レーザの動作電流制御装置600は線形動作部分を用いる制御により、消光比の制御を別途行わなくても、25℃の時の消光比(Ib25+Ip25)よりも消光比を増大させることができる。
上述した半導体レーザの動作電流制御装置600を用いる場合の消光比の温度に対する関係を図11に示す。図11は、半導体レーザの動作電流制御装置600のレーザダイオード601の動作温度が変動する場合の消光比の変動を例示する図である。図11に例示するように、半導体レーザの動作電流制御装置600を用いて制御すると、温度の増減に拘わらず安定的に精度よく初期調整設定温度におけるイニシャル値を下限消光比(Ini)とした一定光出力制御を実現できる。
光ディジタル通信の送信装置等においては、一般に一定光出力を維持するだけでなく所望の消光比以上の消光比(典型的には8.2デシベル以上)を確保できる事が、信頼性の高い通信を実現する上で好ましいとされる。従って、半導体レーザの動作電流制御装置600は、様々な動作温度環境下においてもフレキシブルに対応可能であり、信頼性の高い通信を実現可能なレーザダイオード駆動装置となる。
(第四の実施形態)
第四の実施形態で例示する半導体レーザの動作電流制御装置は、第三の実施形態で示す半導体レーザの動作電流制御装置600において、動作温度に対する制御対象を差し替えて動作させる制御装置である。
すなわち、第四の実施形態では、半導体レーザの動作電流制御装置600の制御対象選択部612は、レーザダイオード601の動作温度が25℃よりも高ければバイアス電流Ibへのフィードバック制御を選択して適用する。また、半導体レーザの動作電流制御装置600の制御対象選択部612は、レーザダイオード601の動作温度が25℃よりも低ければパルス電流Ipへのフィードバック制御を選択して適用する。
また、その他の第四の実施形態にかかる制御回路ブロック等は、第三の実施形態で既に説明した内容と重複するので、ここでは説明を省略する。また、以下の第四の実施形態の説明においては、第三の実施形態で図6に示す回路ブロック概念図と同じ記号を用いて説明することとする。
図12は、第四の実施形態にかかるレーザダイオード601の動作温度上昇時のIL曲線を例示する概念図である。図12に示すように、レーザダイオード601の動作温度が25℃から70℃に上昇すると、レーザダイオード601は、一定光出力Paveを保ったまま、バイアス電流(パルスロー電流)Ib70と電流値(Ib70+Ip25)との間でパルス駆動される。
この駆動電流の変更制御に伴いレーザダイオード601は、図12に示すようにバイアス電流Ib70に対応するPb70と電流値(Ib70+Ip25)に対応するP170との間でパルス発光する。このため、消光比は、25℃の時の(P125/P0)から70℃の時の(P170/Pb70)へと減少する。このように、半導体レーザの動作電流制御装置600は線形動作部分を用いる制御により、消光比の制御を別途行わなくても消光比を低下させる一定光出力制御を行う事が可能である。
また、図13は、第四の実施形態にかかるレーザダイオード601の動作温度下降時のIL曲線を例示する概念図である。図13に示すように、レーザダイオード601の動作温度が25℃から20℃に下降すると、レーザダイオード601は、一定光出力Paveを保ったまま、バイアス電流(パルスロー電流)Ib25と電流値(Ib25+Ip20)との間でパルス駆動される。
この駆動電流の変更制御に伴いレーザダイオード601は、図13においてバイアス電流Ib25に対応するPb20と電流値(Ib25+Ip20)に対応するP120との間でパルス発光する。このため、消光比は、25℃の時の(P125/P0)から20℃の時の(P120/Pb20)へと減少する。このように、半導体レーザの動作電流制御装置600は線形動作部分を用いる制御により、消光比の制御を別途行わなくても消光比を低下させる一定光出力制御を行う事が可能である。
上述した半導体レーザの動作電流制御装置600を用いる場合の消光比の温度に対する下降特性を図14に示す。図14は、半導体レーザの動作電流制御装置600のレーザダイオード601の動作温度が変動する場合の消光比の変動を例示する図である。図14に例示するように、半導体レーザの動作電流制御装置600を用いて制御すると、温度の増減に拘わらず消光比を安定的に精度よく初期調整設定温度におけるイニシャル値を上限消光比(ini)とする一定光出力制御を実現できる。
光ディジタル通信の送信装置等において、一定光出力を維持するだけでなく所望の消光比以下の消光比を確保する事が求められるような利用環境において、半導体レーザの動作電流制御装置600はフレキシブルに対応可能であるので好ましい。
また、図15は、第四の実施形態に示す半導体レーザの動作電流制御装置600において、レーザダイオードの発振閾値以下である線形動作部分ではない部分を積極的に用いてパルス駆動した場合に、温度上昇時のIL曲線を例示する概念図である。また、図16は、第四の実施形態に示す半導体レーザの動作電流制御装置600において、レーザダイオードの発振閾値以下である線形動作部分でない部分を積極的に用いてパルス駆動した場合に、温度下降時のIL曲線を例示する概念図である。
図15に示すように、レーザダイオード601は、動作温度が25℃の場合と動作温度が70℃の場合とで、平均光出力はPaveで一定にフィードバックバイアス電流制御される。図15から明らかなように消光比は、25℃の時も70℃の時も(P125/P0)で一定となり、消光比は上昇も下降もしない。また、Ip25が変化しないのでパルス動作幅が増大せず動作遅延の懸念を低減できる。
また、図16に示すように、レーザダイオード601は、動作温度が25℃の場合と動作温度が10℃の場合とで、平均光出力はPaveで一定にフィードバックパルス電流制御される。図16から明らかなように消光比は、25℃の時も10℃の時も(P125/P0)で一定となり、消光比は上昇も下降もしない。
すなわち、第四の実施形態で示す半導体レーザの動作電流制御装置600を用いた動作制御においては、線形動作部分でない動作領域を積極的に用いることで、レーザダイオード601の動作温度の変動に伴う一定光出力制御を実行するだけで、消光比の変動を抑制し、消光比を一定に保持することが可能となる制御を行えるので好ましい。従って、長距離通信などでチャープが問題となる場合などに好適である。
なお、本発明にかかる半導レーザの電流駆動装置は、実施形態での例示構成と例示動作に限定される事はなく、自明な範囲で適宜その構成と動作を変更して使用することができる。
100・・動作電流制御装置、101・・レーザダイオード、102・・平均光出力モニタ用フォトダイオード、103・・フィードバックループ制御回路、104・・パルス電流駆動部、105・・バイアス電流経路、106・・パルス電流経路、109・・基準電圧生成部。