JP5164481B2 - タンパク質生産方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば溶菌が抑制された細菌におけるタンパク質生産方法に関する。
細菌の溶菌は、溶菌酵素(又は、「細胞壁溶解酵素」ともいう)の作用により細胞壁が溶解されることにより生じる。溶菌酵素としては、例えば、リゾチーム(又は、「ムラミダーゼ」ともいう)やグルコサミニダーゼが挙げられる。リゾチームは、細胞壁成分であるペプチドグリカンに存在するN-アセチルムラミン酸(以下、「MurNAc」という)とN-アセチルグルコサミン(以下、「GlcNAc」という)との間のβ1→4結合を加水分解する酵素である。一方、グルコサミニダーゼは、GlcNAcとMurNAcとの間のβ1→4結合を加水分解する酵素である。ここで、ペプチドグリカンは、MurNAc、GlcNAc及びD-アミノ酸を含む糖タンパク質である。
デアセチラーゼ(又は、「脱アセチル化酵素」とも呼ばれる)をコードする遺伝子を欠失した株(すなわち、ペプチドグリカン糖鎖が脱アセチル化されていない株)は、リゾチームにより溶菌することが報告されている(非特許文献1)。ペプチドグリカン糖鎖の脱アセチル化は、ペプチドグリカン糖鎖を脱アセチル化するデアセチラーゼの酵素反応により行われる。ペプチドグリカン糖鎖を脱アセチル化するデアセチラーゼは、ペプチドグリカン糖鎖を構成するMurNAc及びGlcNAcのアセチル基に作用し、脱アセチル化反応を行う。
ゲノム解析及び遺伝子機能解析が進められている細菌において、上述したペプチドグリカン糖鎖を脱アセチル化できるデアセチラーゼ遺伝子としては、肺炎双球菌(Streptococcus pneumoniae)のpgdA(非特許文献1)やリステリア・モノサイトジェネス(Listeria monocytogenes)のpgdA(非特許文献2)等が同定されているが、デアセチラーゼ遺伝子を利用することで細菌における細胞壁溶解耐性を向上できるか否かといった知見は得られていない。また、デアセチラーゼ遺伝子を利用することで細菌におけるタンパク質の生産を向上できるか否かといった知見は得られていない。
一方、本発明者等は、溶菌酵素阻害作用を有するタンパク質(以下、「溶菌酵素阻害タンパク質」という)として枯草菌(Bacillus subtilis)由来のYoeBタンパク質を同定した(特願2006-281768号)。YoeBタンパク質は、CwlEタンパク質及びCwlFタンパク質といった溶菌酵素の細胞壁溶解活性ドメインに結合することによって、当該溶菌酵素の細胞壁溶解活性を抑制する。このYoeBタンパク質の溶菌酵素阻害活性を利用することで、野生株と比較して溶菌しやすい枯草菌株において溶菌が抑制された。しかしながら、YoeBタンパク質をはじめとする溶菌酵素阻害タンパク質を利用することで細菌におけるタンパク質の生産を向上できるか否かといった知見は得られていない。
Vollmer W.及びTomasz A., J. Biol. Chem., 2000年, 第275巻, 第27号, p.20496-20501 Boneca I.G.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 2007年, 第104巻, 第3号, p.997-1002
そこで、本発明は、上述した実情に鑑み、ペプチドグリカン糖鎖の脱アセチル化活性を示す新規なデアセチラーゼをコードする遺伝子を同定するとともに、当該遺伝子を利用した細菌におけるタンパク質生産方法を提供することを目的とする。また、本発明は、溶菌酵素阻害タンパク質をコードする遺伝子を利用した細菌におけるタンパク質生産方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ペプチドグリカン糖鎖の脱アセチル化活性を示す新規なデアセチラーゼをコードする遺伝子を同定することに成功し、当該遺伝子を特定の細菌株で高発現させることで、当該細菌株の溶菌を抑制できると共に、当該細菌株においてタンパク質の生産を向上できることを見出した。また、溶菌酵素阻害タンパク質をコードする遺伝子を特定の細菌株で高発現させることでも、タンパク質の生産を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、ペプチドグリカン糖鎖を脱アセチル化するデアセチラーゼをコードするDNA及び/又は溶菌酵素阻害タンパク質をコードするDNAを宿主に導入した形質転換体を用いてタンパク質を生産する工程を含む、タンパク質生産方法に関する。
本発明において、ペプチドグリカン糖鎖を脱アセチル化するデアセチラーゼをコードするDNAとしては、配列番号2記載のアミノ酸配列から成るタンパク質をコードするDNA、配列番号2記載のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、且つペプチドグリカン糖鎖を脱アセチル化するデアセチラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA、及び配列番号2記載のアミノ酸配列において第1番目〜第29番目のアミノ酸配列から成る膜貫通ドメインを欠失したアミノ酸配列から成るタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
一方、本発明において、溶菌酵素阻害タンパク質をコードするDNAとしては、配列番号4記載のアミノ酸配列から成るタンパク質をコードするDNA、及び配列番号4記載のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、且つ枯草菌由来の溶菌酵素に結合し、当該溶菌酵素による溶菌活性を抑制する活性を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。また、当該溶菌酵素阻害タンパク質により溶菌活性が抑制される溶菌酵素としては、CwlEタンパク質、CwlFタンパク質及びそれらの相同タンパク質が挙げられる。
本発明において、宿主は野生株と比較して溶菌速度が速い細菌株である。当該細菌株としては、溶菌酵素を分解するプロテアーゼ欠失株が挙げられる。当該溶菌酵素としては、リゾチーム及びグルコサミニダーゼが挙げられる。また、溶菌酵素を分解するプロテアーゼ欠失株としては、野生株と比較してspo0A遺伝子又はその相同遺伝子が発現低下されたことにより溶菌酵素を分解するプロテアーゼを欠失した株が挙げられる。さらに、宿主(すなわち、野生株と比較して溶菌速度が速い細菌株)の種としては、枯草菌が挙げられる。
本発明によれば、優れた生産性でタンパク質を製造できる。また、本発明によれば、タンパク質の生産性が向上するので、タンパク質生産の低コスト化を図ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る方法は、ペプチドグリカン糖鎖を脱アセチル化するデアセチラーゼ(以下、単にデアセチラーゼと称す。)をコードするDNA(以下、デアセチラーゼ遺伝子と称す。)及び/又は溶菌酵素阻害タンパク質をコードするDNA(以下、溶菌酵素阻害遺伝子と称す。)を宿主に導入した形質転換体を用いてタンパク質を生産することを含む、タンパク質生産方法である。なお、本発明において、宿主は野生株と比較して溶菌速度が速い細菌株である。本発明における形質転換体は、デアセチラーゼ遺伝子及び/又は溶菌酵素阻害遺伝子を高発現することで、宿主(すなわち、野生株と比較して溶菌速度が速い細菌株)と比較して溶菌速度が遅い。さらに、宿主と比較して、本発明における形質転換体では、タンパク質の生産量が向上する。
本発明におけるデアセチラーゼ遺伝子としては、配列番号2記載のアミノ酸配列から成るタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。当該配列番号2記載のアミノ酸配列から成るタンパク質は、枯草菌由来のデアセチラーゼ(以下、「YjeAタンパク質」という)である。ここで、デアセチラーゼとは、ペプチドグリカン糖鎖であるMurNAc及び/又はGlcNAcのアセチル基に作用し、脱アセチル化を触媒する酵素を意味する。YjeAタンパク質をコードするDNAの一例としては、配列番号1記載の塩基配列から成るDNA(以下では、「yjeA遺伝子」という場合がある)が挙げられる。
また、本発明において使用できるデアセチラーゼ遺伝子としては、上述したYjeAタンパク質のアミノ酸配列において、1又は数個(例えば1〜10個、好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個)のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、且つペプチドグリカン糖鎖を脱アセチル化するデアセチラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
さらに、本発明において使用できるデアセチラーゼ遺伝子としては、上述したYjeAタンパク質のアミノ酸配列において、第1番目〜第29番目のアミノ酸配列から成る膜貫通ドメインを欠失したアミノ酸配列から成るタンパク質をコードするDNAが挙げられる。当該膜貫通ドメインを欠失したタンパク質もまたペプチドグリカン糖鎖を脱アセチル化するデアセチラーゼ活性を有する。
また、本発明において使用できるデアセチラーゼ遺伝子には、上述したYjeAタンパク質をコードするDNA(例えば、配列番号1記載の塩基配列から成るDNA(yjeA遺伝子))と相補的な塩基配列から成るDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つペプチドグリカン糖鎖を脱アセチル化するデアセチラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAも含まれる。
ここで、ストリンジェントな条件とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成される条件をいう。より具体的にストリンジェントな条件は、例えば、ナトリウム濃度が300〜2000mM、好ましくは600〜900mMであり、温度が40〜75℃、好ましくは55〜65℃での条件をいう。
また、本発明において使用できるデアセチラーゼ遺伝子には、上述したYjeAタンパク質のアミノ酸配列(配列番号2)と、例えば70%以上、80%以上、又は90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列から成るタンパク質をコードするDNAも含まれる。例えば、本発明において使用できるデアセチラーゼ遺伝子としては、YjeAタンパク質のアミノ酸配列(配列番号2)と、好ましくは95%以上、さらに好ましくは96%以上、特に好ましくは97%以上、より特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列から成るタンパク質をコードするDNAを挙げることができる。
さらに、デアセチラーゼに対して精製、抽出又は検出等を容易にするタンパク質(例えば、GFP)やペプチド(例えば、Hisタグ)を付加したタンパク質をコードするDNAも、本発明において使用できるデアセチラーゼ遺伝子に含まれる。
デアセチラーゼの活性の確認においては、デアセチラーゼ遺伝子を細胞又は細菌等に導入し、当該細胞又は細菌等を培養することで、当該デアセチラーゼを発現させる。次いで、発現したデアセチラーゼを別途、準備したペプチドグリカンと反応させる。この際、デアセチラーゼが活性を有する場合には、ペプチドグリカン糖鎖の脱アセチル化により酢酸が遊離する。そこで、遊離酢酸量を指標にデアセチラーゼの活性を測定することができる。反応後、遊離酢酸生産量がデアセチラーゼを作用させていないコントロールと比較して有意に大であるか否かを確認することで、デアセチラーゼの活性を確認することができる。
一方、本発明における溶菌酵素阻害遺伝子としては、配列番号4記載のアミノ酸配列から成るタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。当該配列番号4記載のアミノ酸配列から成るタンパク質は、枯草菌由来の溶菌酵素阻害タンパク質(以下、「YoeBタンパク質」という)である。YoeBタンパク質をコードするDNAの一例としては、配列番号3記載の塩基配列から成るDNA(以下では、「yoeB遺伝子」という場合がある)が挙げられる。ここで、溶菌酵素阻害タンパク質とは、溶菌酵素に結合し、当該溶菌酵素による溶菌活性を抑制する活性を有するタンパク質を意味する。
YoeBタンパク質が溶菌活性を抑制する溶菌酵素としては、例えば、CwlEタンパク質及びCwlFタンパク質が挙げられる。CwlEタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号5に示し、CwlEタンパク質のアミノ酸配列を配列番号6に示す。また、CwlFタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号7に示し、CwlFタンパク質のアミノ酸配列を配列番号8に示す。CwlEタンパク質及びCwlFタンパク質は、枯草菌の細胞分裂の最終段階に、細胞分裂面及び菌体の両極に発現する溶菌酵素であることが知られている。CwlEタンパク質及びCwlFタンパク質は、それぞれN末端側から順にシグナルペプチド、細胞壁結合ドメイン及び細胞壁溶解活性ドメイン(D,L-エンドペプチダーゼ・ドメイン)を有している。YoeBタンパク質は、これらCwlEタンパク質及びCwlFタンパク質における細胞壁溶解活性ドメインに結合して、CwlEタンパク質及びCwlFタンパク質の細胞壁溶解活性を抑制することができる。従って、枯草菌以外の細菌においても、YoeBタンパク質は、CwlEタンパク質又はCwlFタンパク質の相同タンパク質における細胞壁溶解活性ドメインに結合して、当該相同タンパク質の細胞壁溶解活性を抑制することができる。CwlEタンパク質又はCwlFタンパク質の相同タンパク質としては、例えば、D,L-エンドペプチダーゼ、N-アセチルムラモイル-L-アラニンアミダーゼが挙げられる。
また、本発明において使用できる溶菌酵素阻害遺伝子としては、上述したYoeBタンパク質のアミノ酸配列において、1又は数個(例えば1〜10個、好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個)のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、且つ枯草菌由来の溶菌酵素に結合し、当該溶菌酵素による溶菌活性を抑制する活性を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加される領域としては、例えば、配列番号4に示すアミノ酸配列において24〜181番目の領域を除く領域を挙げることができる。この24〜181番目の領域は、溶菌酵素に結合する領域と考えられるため、当該領域を除く領域であれば1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたとしても、溶菌酵素の溶菌活性に対する抑制活性を保持できるものと考えられる。
さらに、本発明において使用できる溶菌酵素阻害遺伝子には、上述したYoeBタンパク質をコードするDNA(例えば、配列番号3記載の塩基配列から成るDNA(yoeB遺伝子))と相補的な塩基配列から成るDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ枯草菌由来の溶菌酵素に結合し、当該溶菌酵素による溶菌活性を抑制する活性を有するタンパク質をコードするDNAも含まれる。なお、ストリンジェントな条件は、デアセチラーゼ遺伝子に関して記載した条件に準じる。
また、本発明において使用できる溶菌酵素阻害遺伝子には、上述したYoeBタンパク質のアミノ酸配列(配列番号4)と、例えば70%以上、80%以上、又は90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列から成るタンパク質をコードするDNAも含まれる。例えば、本発明において使用できる溶菌酵素阻害遺伝子としては、YoeBタンパク質のアミノ酸配列(配列番号4)と、好ましくは95%以上、さらに好ましくは96%以上、特に好ましくは97%以上、より特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列から成るタンパク質をコードするDNAを挙げることができる。
溶菌酵素阻害タンパク質に対して精製、抽出又は検出等を容易にするタンパク質(例えば、GFP)やペプチド(例えば、Hisタグ)を付加したタンパク質をコードするDNAも、本発明において使用できる溶菌酵素阻害遺伝子に含まれる。
上述した溶菌酵素阻害タンパク質が溶菌酵素による溶菌活性を抑制する活性を有するか否かは、以下のようにして判別することができる。すなわち、溶菌酵素阻害遺伝子を野生型yoeB遺伝子と置換した変異株又は野生型yoeB遺伝子を破壊すると共に溶菌酵素阻害遺伝子を導入した変異株を作製する。この変異株を培養して形態観察する。溶菌酵素阻害タンパク質が溶菌酵素の溶菌活性に対する抑制活性を有する場合には、変異株の形態が野生株に比較して丸くなる。一方、溶菌酵素阻害タンパク質が溶菌酵素の溶菌活性に対する抑制活性を有しない場合には、変異株の形態が野生株と同様に桿状となる。このように、溶菌酵素阻害遺伝子を発現する変異株の形態を観察することによって、溶菌酵素阻害タンパク質が溶菌酵素の溶菌活性を抑制する活性を有するか否か判別することができる。
デアセチラーゼ遺伝子又は溶菌酵素阻害遺伝子は、枯草菌のゲノムDNAやcDNAを鋳型とし、特異的なプライマーセットを用いたPCRによって増幅し、調製することができる。また、デアセチラーゼ遺伝子又は溶菌酵素阻害遺伝子は、適当なベクターのマルチクローニングサイト等に導入することで用意することができる。ベクターとしては、細菌への導入(形質転換)に利用できるものであればいずれのものであってもよく、例えば、プラスミドpDG148(Cell, 52, 697, (1988))、pHY300PLK(TAKARA社製)が挙げられる。さらに、デアセチラーゼ遺伝子又は溶菌酵素阻害遺伝子は、発現カセットとして用意することもできる。なお、デアセチラーゼ遺伝子と溶菌酵素阻害遺伝子とを共に形質転換に使用する場合には、デアセチラーゼ遺伝子と溶菌酵素阻害遺伝子とを有する単一のベクター又は発現カセットを準備してもよく、あるいはデアセチラーゼ遺伝子と溶菌酵素阻害遺伝子とを個別に有する2つのベクター又は発現カセットを準備してもよい。
デアセチラーゼ遺伝子又は溶菌酵素阻害遺伝子を含むベクター又は発現カセットは、宿主である細菌において機能的な制御領域(例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター等)を適宜含むことができる。この際、ベクター又は発現カセットにおいて、デアセチラーゼ遺伝子又は溶菌酵素阻害遺伝子は、制御領域の制御下に配置される。
一方、本発明に係る方法における形質転換体は、野生株と比較して溶菌速度が速い細菌株を宿主として作製されたものである。一般に、細菌を培養し続けると、細菌の溶菌が進行に伴って培養液の濁度が減少する。従って、溶菌速度は、培養時間に対する培地濁度の減少率として算出することができる。還元すれば、横軸を培養時間とし、縦軸を培地濁度として得られるグラフの傾きを溶菌速度とすることができる。なお、培地濁度は、例えば600nmにおける吸光度として分光光度計により測定することができる。
ここで、野生株と比較して溶菌速度が速い細菌株とは、MurNAc及び/又はGlcNAcを含むペプチドグリカンを細胞壁成分として含有し、且つ野生株に比べて溶菌速度が速い(例えば、野生株に比べて2〜3倍、好ましくは3〜10倍速い)細菌株を意味する。細菌株としては、例えば、バチルス属、ストレプトコッカス属、リステリア属等の属に属する細菌が挙げられる。バチルス属の細菌としては、枯草菌が特に好ましい。
野生株と比較して溶菌速度が速い細菌株としては、例えば、溶菌酵素を分解するプロテアーゼ欠失株が挙げられる。このような細菌株では、溶菌酵素を分解するプロテアーゼを欠失することにより、野生株と比較し、溶菌酵素の存在量が有意に大となる。その結果、溶菌酵素を分解するプロテアーゼ欠失株は、野生株と比較し、溶菌速度が速い。溶菌酵素を分解するプロテアーゼをコードする遺伝子としては、例えば、枯草菌由来のepr遺伝子、wprA遺伝子、mpr遺伝子、nprB遺伝子、bpr遺伝子、nprE遺伝子、vpr遺伝子及びaprE遺伝子が挙げられる。また、当該プロテアーゼが分解する溶菌酵素としては、例えば、リゾチーム及びグルコサミニダーゼが挙げられる。リゾチームは、ペプチドグリカンに存在するMurNAcとGlcNAcとの間のβ1→4結合を加水分解する酵素である。一方、グルコサミニダーゼは、GlcNAcとMurNAcとの間のβ1→4結合を加水分解する酵素である。
溶菌酵素を分解するプロテアーゼ欠失株の作製方法としては、例えば、溶菌酵素を分解するプロテアーゼをコードする遺伝子を破壊する方法、溶菌酵素を分解するプロテアーゼをコードする遺伝子の転写を抑制する方法、及び溶菌酵素を分解するプロテアーゼをコードする遺伝子の翻訳を抑制する方法が挙げられる。
溶菌酵素を分解するプロテアーゼをコードする遺伝子を破壊する方法では、対立遺伝子として複数存在する当該プロテアーゼをコードする遺伝子のうち少なくとも1の遺伝子を破壊する。遺伝子の破壊は、例えば、遺伝子に変異を導入するか、又は遺伝子を欠失させることにより行われる。遺伝子に変異を導入する方法として、Kunkel法、Gapped duplex法等の公知の手法又はこれに準ずる方法を採用することができる。例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-K(TAKARA社製)やMutant-G(TAKARA社製))などを用いて、あるいは、TAKARA社のLA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを用いて変異の導入が行われる。
また、遺伝子を欠失させる方法の一例を、図1に基づいて説明する。先ず、1回目のPCRにおいて、宿主ゲノムDNA(例えば、細菌ゲノムDNA)において、欠失対象遺伝子(例えば、溶菌酵素を分解するプロテアーゼをコードする遺伝子)に隣接する5'側領域を含むDNA断片(A断片:例えば、0.5〜3kbp)及び欠失対象遺伝子に隣接する3'側領域を含むDNA断片(C断片:例えば、0.5〜3kbp)、並びに薬剤耐性遺伝子を含むDNA断片(B断片)を、それぞれ特異的なプライマーセットを用いたPCRによって増幅し、調製する。また、この際、A断片増幅のPCRでは、A断片の3'末端にB断片の5'末端の相同配列(例えば、10〜30塩基)を付加するように設計したプライマー(図1では、プライマー2)を用いる。同様に、C断片増幅のPCRでは、C断片の5'末端にB断片の3'末端の相同配列(例えば、10〜30塩基)を付加するように設計したプライマー(図1では、プライマー3)を用いる。
次いで、1回目のPCRで調製した3種類のPCR産物(PCR産物A、B、C)を鋳型とし、A断片のPCR増幅に使用したフォワードプライマー(図1では、プライマー1)とC断片のPCR増幅に使用したリバースプライマー(図1では、プライマー4)を用いて2回目のPCR(SOE(splicing by overlap extension)-PCR(Gene, 77, 61, (1989))を行うことによって、PCR産物Aの3'末端とPCR産物Bの5'末端との間にアニールが生じ、また同様にPCR産物Bの3'末端とPCR産物Cの5'末端との間にアニールが生じ、PCR増幅の結果、A断片-B断片-C断片の順に連結したPCR産物Dを得ることができる。
さらに、得られたPCR産物Dを宿主(例えば、細菌)に導入することで、宿主ゲノムDNAとPCR産物Dとの間で相同組換えが生じ、宿主ゲノムDNAの欠失対象遺伝子部位にPCR産物D中の薬剤耐性遺伝子を組み込むと同時に、宿主ゲノムDNA中の欠失対象遺伝子を欠失させることができる。この際、形質転換が行われたか否かの確認は、宿主ゲノムDNA中に組み込まれた薬剤耐性遺伝子に対応した薬剤についての耐性を指標に確認することができる。
溶菌酵素を分解するプロテアーゼをコードする遺伝子の転写を抑制する方法としては、例えば、対象となる細菌における溶菌酵素を分解するプロテアーゼをコードする遺伝子の転写プロモーター領域を転写抑制型プロモーターで置換してなる変異型細菌を調製し、当該変化型細菌を転写抑制条件で培養する方法が挙げられる。
また、溶菌酵素を分解するプロテアーゼをコードする遺伝子の翻訳を抑制する方法としては、いわゆるアンチセンスRNAを用いる方法が挙げられる。具体的には、溶菌酵素を分解するプロテアーゼをコードする遺伝子のmRNAに対するアンチセンスRNAを転写する遺伝子を、細菌ゲノムDNAに組み込み、当該アンチセンスRNAを過剰発現させることで、溶菌酵素を分解するプロテアーゼをコードする遺伝子のmRNAの翻訳が抑制される。
さらに、プロテアーゼ欠失株としては、欠失対象のプロテアーゼの転写を正に制御している転写因子の発現を抑制した株を挙げることができる。例えば、枯草菌において、この転写因子としてはspo0A遺伝子によってコードされる転写因子を挙げることができる。spo0A遺伝子を欠失した枯草菌変異株は、特定のプロテアーゼ(具体的には、aprE、bpr、epr、mpr、nprB、nprE、vpr及びwprA)の生産量が低いといった特徴を有している(J. Biosci. Bioeng. 103, 13 (2007))。従って、枯草菌以外の細菌においても、spo0A遺伝子の相同遺伝子を欠失させることによって、当該細菌由来のプロテアーゼ欠失株を作製することができる。なお、枯草菌由来のspo0A遺伝子(塩基配列:配列番号9)によりコードされるSpo0Aタンパク質(アミノ酸配列:配列番号10)は、スポア形成の主要な転写制御因子である。spoOA遺伝子の相同遺伝子としては、例えば、スポア形成細菌のスポア形成の主要な転写制御因子をコードするspo0A遺伝子が挙げられる。野生株と比較して、細菌株のspo0A遺伝子又はその相同遺伝子の発現を低下させる方法としては、上述の溶菌酵素を分解するプロテアーゼを欠失させる方法と同様の方法が挙げられる。
本発明に係る方法では、デアセチラーゼ遺伝子及び/又は溶菌酵素阻害遺伝子が高発現するように、上述した野生株と比較して溶菌速度が速い細菌株を形質転換する。具体的には、転写活性の高いプロモーターの下流にデアセチラーゼ遺伝子又は溶菌酵素阻害遺伝子を配置したベクター又は発現カセットを用いて定法に従って当該細菌株を形質転換する。ここで、転写活性の高いプロモーターとしては、恒常的に転写活性を示すプロモーターであっても良いが、インデューサーの存在下で転写活性を示すプロモーターであっても良い。或いは、定法に従って細菌株を形質転換したときに多コピー数で導入されるベクターを使用しても、デアセチラーゼ遺伝子又は溶菌酵素阻害遺伝子を高発現させるように形質転換することができる。
形質転換方法としては、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えば、カルシウムイオンを用いる方法、一般的なコンピテントセル形質転換方法(J. Bacterial. 93, 1925 (1967))、プロトプラスト形質転換法(Mol. Gen. Genet. 168, 111 (1979))、エレクトロポレーション法(FEMS Microbiol. Lett. 55, 135 (1990))又はLP形質転換方法(T. Akamatsu及びJ. Sekiguchi, Archives of Microbiology, 1987, 146, p.353-357;T. Akamatsu及びH. Taguchi, Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 2001, 65,4, p.823-829)を用いることができる。
デアセチラーゼ遺伝子又は溶菌酵素阻害遺伝子が細菌株に組み込まれたか否かは、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法及びノーザンハイブリダイゼーション法等により確認することができる。例えば、形質転換体からDNAを調製し、デアセチラーゼ遺伝子又は溶菌酵素阻害遺伝子に特異的なプライマーを設計してPCRを行う。その後は、増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動等を行い、臭化エチジウム、SYBR Green液等により染色し、そして増幅産物をバンドとして検出することにより、形質転換されたことを確認する。また、予め蛍光色素等により標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を検出することもできる。さらに、マイクロプレート等の固相に増幅産物を結合させ、蛍光又は酵素反応等により増幅産物を確認する方法を採用してもよい。
次いで、本発明に係る方法においては、得られた形質転換体を同化性の炭素源、窒素源、その他の必須成分を含む培地に接種し、通常の微生物培養法にて培養することができる。培養終了後、形質転換体を含む培養物又は培養上清から、一般的な方法によってタンパク質の分取、精製、濃縮等を行う。あるいは、分泌タンパク質の場合には、培養上清自体を得られたタンパク質として扱うことができる。ここで、得られるタンパク質は、形質転換体のゲノムDNA及びミトコンドリアDNA等に存在する遺伝子によりコードされるタンパク質であってもよく、あるいは形質転換体中のプラスミド等に存在する遺伝子によりコードされるタンパク質であってもよい。
以上に説明したように、本発明に係る方法によれば、野生株と比較して溶菌しやすい細菌株におけるタンパク質生産と比較して、タンパク質の生産性を向上させることができる。また、本発明に係る方法によれば、プラスミド等に存在する遺伝子によってコードされる生産対象のタンパク質の生産性も向上させることができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
以下の実施例及び参考例におけるDNA断片増幅のためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)には、GeneAmp 9700 PCR System(アプライドバイオシステムズ)及びPwo Super Yield DNA Polymerase(ロッシュアプライドサイエンス)と付属の試薬類を用いた。PCRの反応液組成は、適宜希釈した鋳型DNA 1μL、センス及びアンチセンスプライマーを各々20pmol及びPwo Super Yield DNA Polymerase 2.5Uを含み、反応液総量を50μLとした。PCRは、95℃で30秒間、60℃で1分間及び72℃で1〜5分間(目的増幅産物に応じて調整。目安は1kbあたり1分間)の3段階の温度変化を30回繰り返した後、72℃で5分間反応させることにより行った。なお、PCRにおいて用いたプライマーは、以下の表1に示すプライマーである。
Figure 0005164481
〔実施例1〕YjeAタンパク質又はYoeBタンパク質を高発現するspo0A遺伝子欠失変異株におけるアミラーゼ生産性評価
本実施例では、YjeAタンパク質又はYoeBタンパク質を高発現するspo0A遺伝子欠失変異株において、アミラーゼ生産性を評価した。なお、当該アミラーゼは、spo0A遺伝子欠失変異株のゲノムDNAに存在するアミラーゼ遺伝子によってコードされるものである。
(1) YjeAタンパク質(アミノ酸配列:配列番号2)高発現用組換えプラスミドDNA(pDG-YjeA)の構築
図2は、YjeAタンパク質高発現用組換えプラスミドDNA(pDG-YjeA)(以下では、「プラスミドDNA(pDG-YjeA)」という)を示す。
表1に示すプライマーyjeA-22FとプライマーyjeA+1401Rとのプライマーセットを用いて、枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、yjeA遺伝子のシャイン・ダルガーノ配列(SD配列)からストップコドンまでを含むyjeA遺伝子のDNA断片をPCRにより増幅し、調製した。なお、プライマーyjeA-22Fの5'末端側には、SalIの制限酵素認識配列(表1において、下線を引いた塩基配列)を含む10 bpが付加されている。一方、プライマーyjeA+1401Rの5'末端側には、SphIの制限酵素認識配列(表1において、下線を引いた塩基配列)を含む10 bpが付加されている。そこで、得られたDNA断片をSalI及びSphIで処理した。
次いで、制限酵素処理後に得られたDNA断片を、プラスミドpDG148(Cell, 52, 697, (1988))のIPTG(isopropyl 1-thio-β-D-galactoside)誘導型Pspacプロモーター(図2における「Pspac」)下流に位置するSalI制限酵素切断点とSphI制限酵素切断点との間に挿入した。この結果、得られたプラスミドDNA(pDG-YjeA)を、spo0A遺伝子欠失変異株の形質転換に使用した。
(2) YoeBタンパク質(アミノ酸配列:配列番号4)高発現用組換えプラスミドDNA(pDG148YB)の構築
図3は、YoeBタンパク質高発現用組換えプラスミドDNA(pDG148YB)(以下では、「プラスミドDNA(pDG148YB)」という)を示す。
表1に示すプライマーYoeBSalF2とプライマーyoeBSph-Rとのプライマーセットを用いて、枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、yoeB遺伝子のSD配列からストップコドンまでを含むyoeB遺伝子のDNA断片をPCRにより増幅し、調製した。なお、プライマーYoeBSalF2の5'末端側には、SalIの制限酵素認識配列(表1において、下線を引いた塩基配列)を含む10 bpが付加されている。一方、プライマーyoeBSph-Rの5'末端側には、SphIの制限酵素認識配列(表1において、下線を引いた塩基配列)を含む10 bpが付加されている。そこで、得られたDNA断片をSalI及びSphIで処理した。
次いで、上記(1)に記載のプラスミドDNA(pDG-YjeA)の構築方法に準じて、制限酵素処理後に得られたDNA断片を、プラスミドpDG148に挿入した。この結果、得られたプラスミドDNA(pDG148YB)を、spo0A遺伝子欠失変異株の形質転換に使用した。
(3) spo0A遺伝子(塩基配列:配列番号9)欠失変異株の構築
spo0A遺伝子破壊用プラスミド及び該遺伝子破壊用プラスミドを用いたspo0A遺伝子欠失変異株の構築方法を図4に示す。図4に示す(A)、(B)及び(C)は、それぞれ下記の断片(A)、断片(B)及び断片(C)を示す。
表1に示すプライマーspo0A-260FとプライマーSPO-1-RXとのプライマーセットを用いて、枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、spo0A遺伝子の上流を含む5'末端側の699bp断片(A)をPCRにて増幅し、調製した。なお、プライマーspo0A-260Fの5'末端側には、ApaIの制限酵素認識配列(表1において、下線を引いた塩基配列)を含む10bpが付加されている。一方、プライマーSPO-1-RXの5'末端側には、XhoIの制限酵素認識配列(表1において、下線を引いた塩基配列)を含む10bpが付加されている。
同様に、表1に示すプライマーSPO-2-FとプライマーSPO-2-RBとのプライマーセットを用いて、枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、spo0A遺伝子の3'末端側の348bp断片(B)をPCRにて増幅し、調製した。なお、プライマーSPO-2-Fの5'末端側には、PstIの制限酵素認識配列(表1において、下線を引いた塩基配列)を含む10bpが付加されている。一方、プライマーSPO-2-RBの5'末端側には、BamHIの制限酵素認識配列(表1において、下線を引いた塩基配列)を含む10bpが付加されている。
次いで、得られた断片(A)をApaI及びXhoIで処理し、また断片(B)をPstI及びBamHIで処理した。一方、プラスミドpDG1727(Gene, 167, 335, (1995))のBamHI制限酵素切断点とXhoI制限酵素切断点との間に配置されるスペクチノマイシン耐性遺伝子領域(以下、「断片(C)」という)を、当該プラスミドより切り出した。
次に、得られた3断片を、オープンリーディングフレームにおいて断片(A)と断片(C)と断片(B)とを5'側よりこの順で含むように、プラスミドpBluescript II SK(+)(Stratagene)に、断片(A)をApaI制限酵素切断点とXhoI制限酵素切断点との間に、断片(C)をXhoI制限酵素切断点とPstI制限酵素切断点との間に、断片(B)をPstI制限酵素切断点とBamHI制限酵素切断点との間に、それぞれ挿入した。この結果、得られた組換えプラスミドDNA(図4で示す「spo0A遺伝子破壊用プラスミド」)を制限酵素ScaIで処理することで、直鎖状DNAにし、枯草菌168株の形質転換に使用した。
得られた直鎖状DNAを枯草菌168株に、コンピテント法によって形質転換した。形質転換後、菌株をスペクチノマイシン(100μg/mL)含有LB寒天培地上で生育させた。生育後、コロニーを形成した菌株を形質転換体として分離した。
得られた形質転換体のゲノムDNAを抽出し、PCRによって形質転換体のゲノムDNAにおいて、spo0A遺伝子が欠失し、且つスペクチノマイシン耐性遺伝子に置換していることを確認した。構築された菌株を「Spo0Add株」と命名した。
(4) YjeAタンパク質又はYoeBタンパク質を高発現するspo0A遺伝子欠失変異株におけるアミラーゼ生産性評価
プラスミドDNA(pDG-YjeA)をSpo0Add株に、コンピテント法によって形質転換した。形質転換後、菌株をカナマイシン(20μg/mL)含有LB寒天培地上で生育させた。生育後、コロニーを形成した菌株を形質転換体として分離した。以下では、得られた形質転換体を「Spo0Add(pDG-YjeA)」という。
同様の方法により、プラスミドDNA(pDG148YB)をSpo0Add株に形質転換し、菌株を生育させ、形質転換体を分離した。以下では、得られた形質転換体を「Spo0Add(pDG148YB)」という。
さらに、プラスミドpDG148をSpo0Add株に形質転換し、菌体を生育させ、形質転換体を分離した。以下では、得られた形質転換体を「Spo0Add(pDG148)」という。なお、Spo0Add(pDG148)は、陰性対照として用いた。
次いで、Spo0Add(pDG-YjeA)、Spo0Add(pDG148YB)及びSpo0Add(pDG148)を、それぞれカナマイシン(20μg/mL)含有LB培地(5 mL)において、30℃で一晩振盪培養した。
振盪培養後、Spo0Add(pDG-YjeA)及びSpo0Add(pDG148YB)の各培養液(0.6mL)を、それぞれ2×L-マルトース培地(30 mL;2%トリプトン、1%酵母エキス、1%NaCl、7.5%マルトース、7.5 ppm硫酸マンガン4-5水和物、20 ppmカナマイシン及び2 mM IPTG)に接種し、30℃で56時間振盪培養した。この際、培養24時間後に、新たに2 mM IPTGを培地に添加した。当該IPTGの添加により、Spo0Add(pDG-YjeA)におけるYjeAタンパク質の発現を持続させ、同様に、Spo0Add(pDG148YB)におけるYoeBタンパク質の発現を持続させた。
一方、上記の振盪培養後、Spo0Add(pDG148)の培養液(0.6mL)を、IPTG非含有2×L-マルトース培地(30 mL)に接種し、30℃で56時間振盪培養した。
2回目の振盪培養の24時間及び48時間後に、各培養物を遠心分離に供し、菌体を除去した。次いで、得られた各培養上清中のアミラーゼ活性を測定した。当該アミラーゼ活性は、菌体外に分泌生産されたアミラーゼの生産量に相当する。
結果を図5に示す。図5は、振盪培養の24時間及び48時間後における、Spo0Add(pDG148)、Spo0Add(pDG-YjeA)及びSpo0Add(pDG148YB)の各培養上清中のアミラーゼ活性を示したグラフである。図5の縦軸は、Spo0Add(pDG148)のアミラーゼ活性(100%)に対する相対値を示す。また、図5の横軸は、振盪培養時間を示している。
図5に示すように、YjeAタンパク質を高発現するSpo0Add(pDG-YjeA)及びYoeBタンパク質を高発現するSpo0Add(pDG148YB)では、振盪培養24時間後の培養上清中のアミラーゼ活性値(すなわち、アミラーゼ分泌生産量)が陰性対照(Spo0Add(pDG148))と比較して約2倍、また振盪培養48時間後で3倍前後を示した。
〔比較例1〕YjeAタンパク質を高発現する枯草菌168株(野生株)におけるアミラーゼ生産性評価
本比較例では、YjeAタンパク質を高発現する枯草菌168株において、アミラーゼ生産性を評価した。なお、当該アミラーゼは、枯草菌168株のゲノムDNAに存在するアミラーゼ遺伝子によってコードされるものである。
実施例1に記載のSpo0Add(pDG-YjeA)の作製方法に準じて、プラスミドDNA(pDG-YjeA)を枯草菌168株に形質転換し、菌株を生育させ、形質転換体を分離した。得られた形質転換体を「168(pDG-YjeA)」という。
同様に、プラスミドpDG148を枯草菌168株に形質転換し、菌株を生育させ、形質転換体を分離した。得られた形質転換体を「168(pDG148)」という。なお、168(pDG148)は、対照として用いた。
実施例1に記載のSpo0Add(pDG-YjeA)の培養方法及び培養上清中のアミラーゼ活性測定方法に準じて、168(pDG-YjeA)を培養し、また168(pDG-YjeA)の培養上清中のアミラーゼ活性を測定した。
一方、実施例1に記載のSpo0Add(pDG148)の培養方法及び培養上清中のアミラーゼ活性測定方法に準じて、168(pDG148)を培養し、また168(pDG148)の培養上清中のアミラーゼ活性を測定した。
結果を図6に示す。図6は、振盪培養の24時間及び48時間後における、168(pDG148)及び168(pDG-YjeA)の各培養上清中のアミラーゼ活性を示したグラフである。図6の縦軸は、168(pDG148)のアミラーゼ活性(100%)に対する相対値を示す。また、図6の横軸は、振盪培養時間を示している。
図6に示すように、YjeAタンパク質を高発現する168(pDG-YjeA)では、培養上清中のアミラーゼ活性値が対照(168(pDG148))と比較してほぼ同程度の値を示した。このことにより、YjeAタンパク質の高発現は枯草菌168株においてタンパク質の生産に影響を及ぼさないことが示された。
〔参考例1〕YjeAタンパク質の相同性検索
YjeAタンパク質(アミノ酸配列:配列番号2)は、467アミノ酸残基で構成されている。YjeAタンパク質の機能を類推するため、FASTAプログラムにてYjeAタンパク質の相同性検索を行った。相同性検索の結果を表2に示す。
Figure 0005164481
表2において、各略号は以下の意味を示す。
「initn」:下記のinit1で選んだ領域について、ギャップを考慮して付けたスコア。
「init1」:ある一定の連続したマッチ領域についてだけ調べ、ギャップをいれないで付けたスコア。
「opt」:optimization, 最適化を行ったスコア。initnの段階でスコアの高かった領域付近について省力のない完全な比較を行って付けたスコア。
「Z-score」:Z-スコア=スコア−平均/標準偏差。
「bits」:見つかった局所配列の長さを示す値で、この値が大きい場合には、相同性の高い領域が長いことを示す。
「E()」:E値。E値は、局所配列と検索配列の組み合わせが偶然に見つかる個数で、E値がゼロであれば、完全一致しており、一方、1e-9から1e-10以下ならば機能的に類似の配列の可能性が高い。
「Smith-Waterman score」:配列相同検索法の1つであるSmith-Waterman法により得られた相同性を表すスコア。
また、表2に示す各同一性%(相同性%)は、それぞれ以下のオーバーラップする配列間の値である。
「CDA1_YEAST」:YjeAタンパク質の第280番目〜第447番目のアミノ酸配列に対するCDA1_YEAST(アミノ酸配列:配列番号21)の第110番目〜第284番目のアミノ酸配列(オーバーラップするアミノ酸数:179アミノ酸)
「CDA2_YEAST」:YjeAタンパク質の第280番目〜第446番目のアミノ酸配列に対するCDA2_YEAST(アミノ酸配列:配列番号22)の第120番目〜第292番目のアミノ酸配列(オーバーラップするアミノ酸数:178アミノ酸)
「CDA_MUCRO」:YjeAタンパク質の第275番目〜第455番目のアミノ酸配列に対するCDA_MUCRO(アミノ酸配列:配列番号23)の第154番目〜第347番目のアミノ酸配列(オーバーラップするアミノ酸数:196アミノ酸)
「PDAA_BACSU」:YjeAタンパク質の第237番目〜第464番目のアミノ酸配列に対するPDAA_BACSU(アミノ酸配列:配列番号24)の第33番目〜第259番目のアミノ酸配列(オーバーラップするアミノ酸数:235アミノ酸)
表2に示すように、相同性検索の結果、アミノ酸レベルで高い相同性を示す複数のデアセチラーゼ遺伝子が判明した。検索された公知のデアセチラーゼとYjeAタンパク質との間において高度に保存された領域についてアライメントした結果を図7に示した。表2及び図7に示すように、YjeAタンパク質の相同タンパク質として、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のキチンデアセチラーゼ1及び2(それぞれ、表2及び図7においてCDA1_YEAST及びCDA2_YEAST;Yeast, 30, 327, (1997))、ムコール・ルキシー(Mucor rouxii)のキチンデアセチラーゼ(表2及び図7において、CDA_MUCRO;Proc. Natl. Acad. Sci. U S A, 90, 8005, (1993))、枯草菌の胞子形成期に機能する多糖デアセチラーゼ(表2及び図7において、PDAA_BACSU;J. Bacteriol., 184, 6007, (2002))などを含む様々な多糖デアセチラーゼが該当した。図7に示すYjeAタンパク質と相同性を示したタンパク質は全て、全長において30%以上のアミノ酸配列でYjeAタンパク質との相同性を示し、またオーバーラップしている170〜240アミノ酸残基中で60%以上のアミノ酸配列でYjeAタンパク質との相同性を示した。このことから、YjeAタンパク質は多糖デアセチラーゼである可能性が示唆された。
〔参考例2〕YjeAタンパク質のペプチドグリカン糖鎖に対するデアセチラーゼ活性
本参考例では、YjeAタンパク質のペプチドグリカン糖鎖に対するデアセチラーゼ活性について検討した。
(1) His-ΔYjeAタンパク質(Hisタグと膜貫通ドメインを欠くYjeAタンパク質との融合タンパク質)の精製
膜貫通ドメイン(配列番号2において、第1番目〜第29番目のアミノ酸配列)に相当する5'末端DNA配列を欠損したyjeA遺伝子を、表1に示すプライマーyjeA+87F及びyjeA+1383R(表1において、下線の塩基配列はそれぞれSphI及びSalI制限酵素認識配列を示す)を用いて、枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、PCRにより増幅した。増幅後、得られたPCR産物を制限酵素SphI及びSalIで処理し、インサートを得た。
次いで、プラスミドpQE30をSphI及びSalIで処理し、上記のインサートと連結し、プラスミドpQE30ΔyjeAを構築した。なお、プラスミドpQE30は、大腸菌においてHisタグ融合タンパク質を発現させるために開発されたプラスミドである。
インサート部分のDNA配列が正しく挿入されたか否かをシーケンスにより確認した。正しく挿入されたことを確認できたプラスミドpQE30ΔyjeAを、コンピテント法により大腸菌JM109株に導入した。以後、プラスミドpQE30ΔyjeAが導入された大腸菌JM109株を「JM109(pQE30ΔyjeA)」と呼ぶ。
JM109(pQE30ΔyjeA)を、50ppmのアンピシリンを含むLB培地(5ml)にて一夜30℃で振盪培養した。振盪培養後、得られた培養液(1ml)を50ppmのアンピシリンを含むLB培地(100ml)に植菌し、37℃で培養した。培養液のOD600が0.5のとき、最終濃度が1mMになるようにIPTGを培地に添加し、さらに1時間培養した。培養後、培養物を遠心分離(8000rpm, 10分, 4℃)に供することで集菌し、菌体を開始バッファー(5 ml;10 mM imidazoleを含む1×リン酸バッファー(pH7.4))に懸濁した。
次いで、菌体を含む懸濁液に、最終濃度が1mMになるようにPMSF(phenylmethanesulphonylfluoride又はphenylmethylsulphonyl fluoride)を加え、超音波破砕(on:0.5秒, off:1秒/on:30秒, off:30秒, 計7分)に供した後、さらに遠心分離(8000rpm, 10分, 4℃)に供した。得られた上清を0.45μmフィルターにて濾過した。
濾過により抽出したHis-ΔYjeAタンパク質の精製は、GEヘルスケアバイオサイエンス社のHis-Trapカラム精製の定法に従い行った。精製したHis-ΔYjeAタンパク質溶液を20 mMのリン酸バッファー(pH 7.4)でさらに透析し、His-ΔYjeAタンパク質溶液を調製した。
(2) 枯草菌ペプチドグリカンの調製
枯草菌168株をLB培地(5ml)にて一夜30℃で振盪培養した。振盪培養後、得られた培養液(0.6 mL)を、2×L-マルトース培地(150 mL;2%トリプトン、1%酵母エキス、1%NaCl、7.5%マルトース、7.5 ppm硫酸マンガン4-5水和物)に接種し、37℃で菌体の増殖が定常期に入るまで培養した。
培養後、培養物を遠心分離(10000rpm, 10分, 20℃)に供することで集菌し、菌体を3M LiCl(20ml)で懸濁した。菌体懸濁液を10分間煮沸処理した後、直径0.1 mmのガラスビーズを菌体懸濁液に加え、ホモジナイズ処理(NISSEI Ace Homogenizer AM-8)に供することで、菌体を破砕した。なお、菌体の破砕は顕微鏡観察により確認した。その後、菌体破砕物にイオン交換水(約1 L)を加えた後、上清を遠心分離(KUBOTA KR-2000c ローター:RA-6, 3000rpm, 20分, 4℃)に供した。
次いで、得られた上清をさらに遠心分離(KUBOTA KR-2000c ローター:RA-3, 15000rpm, 10分, 4℃)に供した。遠心分離により得られた沈殿物を、イオン交換水(20ml)に懸濁した後、8%SDS(20ml)を加え、10分間煮沸処理した。その後、遠心分離(BECKMAN COULTER Allegra 64R centrifuge ローター:F0650, 20000rpm, 10分, 室温)し、得られた沈殿物を1M NaCl(10ml)に懸濁し、さらに遠心分離(BECKMAN COULTER Allegra 64R centrifuge ローター:F0650, 20000rpm, 10分, 室温)に供した。上記条件で懸濁及び遠心分離操作を5回程繰り返し、沈殿物の洗浄を行った。
さらに沈殿物をイオン交換水(10ml)に2回ほど置換処理した後、新しいイオン交換水に懸濁した。この溶液を細胞壁懸濁液とした。当該細胞壁懸濁液の細胞壁濃度は、OD540=1で2.62mg/mlであった。
細胞壁7mgに相当する細胞壁懸濁液を10%TCA(トリクロロ酢酸;800μl)と混合し、さらに37℃で10時間以上インキュベートした。
その後、遠心分離(BECKMAN COULTER Allegra 64R centrifuge ローター:F0650, 20000rpm, 10分, 室温)し、上清を捨て、沈殿物を10%TCA(800μl)に懸濁し、37℃で10時間以上インキュベートした。その後、上記条件の遠心分離を再度行い、沈殿物をイオン交換水で2回置換処理した。このようにして得られたペプチドグリカン懸濁液中のペプチドグリカン濃度は、OD540=1で7.34mg/mlであった。
(3) YjeAタンパク質のペプチドグリカン糖鎖に対するデアセチラーゼ活性
図8は、枯草菌ペプチドグリカンの構造及びデアセチラーゼの作用部位を示す。図8に示すように、ペプチドグリカン糖鎖を構成するGlcNAc及びMurNAcのアセチル基がデアセチラーゼにより脱アセチル化されると酢酸を遊離する。本参考例では、この酢酸の遊離を指標にYjeAタンパク質のデアセチラーゼ活性を検討した。なお、本参考例では、YjeAタンパク質としてHis-ΔYjeAタンパク質を使用した。
以下の表3に示した反応溶液を37℃で、1、2、3、4、5及び16時間それぞれインキュベートした後、遠心分離に供し、上清中の酢酸をF-kit酢酸(J.K.インターナショナル)で定量した。実験操作はF-kit酢酸の説明書に従った。
結果を図9に示す。図9は、枯草菌ペプチドグリカン糖鎖を基質とし、YjeAタンパク質のデアセチラーゼ活性を酢酸の遊離を指標に測定した結果を示す。図9の縦軸は遊離酢酸量を示す。また、図9の横軸はインキュベーション時間を示す。
図9に示すように、時間の経過に伴い遊離酢酸量が増加することから、YjeAタンパク質がペプチドグリカン糖鎖を脱アセチル化することが示された。すなわち、本参考例において、YjeAタンパク質がデアセチラーゼであることが明らかとなった。
Figure 0005164481
〔参考例3〕YjeAタンパク質高発現によるspo0A遺伝子欠失変異株の溶菌防止
図10は、リゾチームのペプチドグリカンへの作用部位を示す。
肺炎双球菌のペプチドグリカンN-アセチルグルコサミンデアセチラーゼ遺伝子(pgdA)を破壊した株では、リゾチーム感受性を示すことが報告されている(非特許文献1)。これはペプチドグリカン糖鎖のアセチル基がリゾチームの基質認識に関わっているためと考えられる(図10)。
一方、本発明者等は、枯草菌ペプチドグリカン糖鎖を脱アセチル化するデアセチラーゼとしてYjeAタンパク質を同定した。そこで、YjeAタンパク質を高発現させ、ペプチドグリカン糖鎖の脱アセチル化効率を高めることで、枯草菌の溶菌を防止することができるか否かについて、spo0A遺伝子欠失変異株(Spo0Add株)の溶菌防止を指標に検討を行った。
実施例1に記載の培養方法に準じて、Spo0Add(pDG-YjeA)及びSpo0Add(pDG148)をそれぞれ培養した。その際に、それぞれの培養液の濁度(OD600nm)を経時的に測定した。結果を図11に示す。図11の縦軸は分光光度計を用いて測定したOD600nmの値であり、培養液の濁度を示している。また、図11の横軸は培養時間を示している。なお、図11の横軸において0時間は、IPTG含有2×L-マルトース培地又はIPTG非含有2×L-マルトース培地を用いた振盪培養の開始時間を意味している。
図11に示すように、Spo0Add(pDG148)では、溶菌により培養2日目以降の培養液濁度が大幅に低下した。これに対して、YjeAタンパク質の発現を強化したSpo0Add(pDG-YjeA)では、培養2日目以降の濁度の減少は見られず、溶菌が抑えられることが明らかになった。
遺伝子を欠失させる方法の一例を示す模式図である。 YjeAタンパク質高発現用組換えプラスミドDNA(pDG-YjeA)を示す模式図である。 YoeBタンパク質高発現用組換えプラスミドDNA(pDG148YB)を示す模式図である。 spo0A遺伝子破壊用プラスミド及び該遺伝子破壊用プラスミドを用いたspo0A遺伝子欠失変異株の構築方法を示す模式図である。 振盪培養の24時間及び48時間後における、Spo0Add(pDG148)、Spo0Add(pDG-YjeA)及びSpo0Add(pDG148YB)の各培養上清中のアミラーゼ活性を示したグラフである。 振盪培養の24時間及び48時間後における、168(pDG148)及び168(pDG-YjeA)の各培養上清中のアミラーゼ活性を示したグラフである。 検索された公知のデアセチラーゼとYjeAタンパク質との間において高度に保存された領域についてのアライメントである。 枯草菌ペプチドグリカンの構造及びデアセチラーゼの作用部位を示す模式図である。 枯草菌ペプチドグリカン糖鎖を基質とし、YjeAタンパク質のデアセチラーゼ活性を酢酸の遊離を指標に測定した結果を示すグラフである。 リゾチームのペプチドグリカンへの作用部位を示す模式図である。 Spo0Add(pDG-YjeA)及びSpo0Add(pDG148)のそれぞれの培養液の濁度(OD600nm)を経時的に測定した結果を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 以下の(a)〜(c)のいずれか1記載のDNA及び/又は以下の(d)若しくは(e)記載のDNAを宿主に導入した形質転換体を用いてタンパク質を生産する工程を含み、前記宿主は野生株と比較してspo0A遺伝子が発現低下されたバチルス属細菌であることを特徴とする、タンパク質生産方法。
    (a)配列番号2記載のアミノ酸配列から成るタンパク質をコードするDNA
    (b)配列番号2記載のアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、且つペプチドグリカン糖鎖を脱アセチル化するデアセチラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
    (c)配列番号2記載のアミノ酸配列において、第1番目〜第29番目のアミノ酸配列から成る膜貫通ドメインを欠失したアミノ酸配列から成るタンパク質をコードするDNA
    (d)配列番号4記載のアミノ酸配列から成るタンパク質をコードするDNA
    (e)配列番号4記載のアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成り、且つ枯草菌由来の溶菌酵素に結合し、当該溶菌酵素による溶菌活性を抑制する活性を有するタンパク質をコードするDNA
  2. 上記宿主が枯草菌である、請求項1記載のタンパク質生産方法。
  3. 上記(d)又は(e)記載のDNAによりコードされるタンパク質により溶菌活性が抑制される溶菌酵素がCwlEタンパク質又はCwlFタンパク質である、請求項1又は2記載のタンパク質生産方法。
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