JP5163175B2 - エキシマランプ - Google Patents

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Description

本発明は、エキシマランプに係わり、特に、シリカガラスよりなる放電容器を備え、該放電容器を形成するシリカガラスが介在する状態で一対の電極が設けられた、前記放電容器の内部にエキシマ放電を発生させるエキシマランプに関する。
近年、金属、ガラス、その他の材料よりなる被処理体に波長200nm以下の真空紫外光を照射することにより、真空紫外光およびこれにより生成されるオゾンの作用によって被処理体を処理する技術、例えば、被処理体の表面に付着した有機汚染物質を除去する洗浄処理技術や、被処理体の表面に酸化膜を形成する酸化膜形成処理技術が開発され、実用化されている。
真空紫外光を照射する装置としては、例えば、エキシマ放電によってエキシマ分子を形成し、該エキシマ分子から放射される、例えば、波長170nm付近の光を利用するエキシマランプを光源として備えるものが用いられている。このようなエキシマランプにおいては、より高強度の紫外線を効率よく放射するために多くの試みがなされている。
図7は、特許文献1に示されるエキシマランプ30の概略構成を示し、図7(a)はエキシマランプの長手方向に沿った断面図、図7(b)は図7(a)のA−Aの切断面から見た断面図である。
同図に示すように、このエキシマランプ30は、紫外線を透過するシリカガラスよりなる外形が竹輪状の放電容器31を備え、放電容器31の外側管32と内側管33にそれぞれ電極34と電極35が設けられている。放電容器31の放電空間Sに曝される表面には、紫外線反射膜37が形成されており、紫外線反射膜37としては、シリカ粒子のみからなるもの、およびアルミナ粒子のみからなるものの実施例が示されている。このエキシマランプ30においては、放電容器31の一部に、紫外線反射膜37が形成されていない光出射部36から、放電空間S内で発生した紫外線を出射する。
このエキシマランプ30によれば、放電容器31の放電空間Sに曝される表面に、紫外線反射膜37が設けられていることにより、紫外線反射膜37が設けられた領域においては、放電空間S内で発生した紫外線が紫外線反射膜37によって反射されるので、シリカガラスには入射しない。それに対して、光出射部36を構成する領域においてのみ紫外線がシリカガラスを透過して外部に放射されるので、放電空間S内で発生した紫外線を有効的に利用することができる。しかも、光出射部36以外の領域を構成するシリカガラスの紫外線歪みによるダメージを小さく抑制することができ、クラックが発生することを防止することができる。
特許第3580233号公報
しかしながら、図7に示すようなエキシマランプにおいては、エキシマランプを点灯していると、紫外線反射膜37の端部38が剥がれ落ちるという問題が発生した。紫外線反射膜37から剥がれ落ちた切片は放電容器31内に留まるため、光出射部36となっている部分の放電容器31の内表面にも溜まってしまう。光出射部36から放射されるエキシマ光が、紫外線反射膜37から剥がれ落ちた切片によって遮られてしまうため、エキシマランプの放射光量が減少してしまう。また、放電容器31の内表面に紫外線反射膜37が形成されている領域が減少することも、エキシマランプの放射光量が減少する原因となる。
本発明の目的は、上記の問題点に鑑み、紫外線反射膜の反射膜形成開始領域が放電容器から剥がれ落ちることを防止し、エキシマ光の放射光量を長時間にわたって維持することを可能にしたエキシマランプを提供することにある。
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような手段を採用した。
第1の手段は、放電空間を有するシリカガラスよりなる放電容器を備え、該放電容器を形成するシリカガラスが介在する状態で一対の電極が設けられると共に、放電空間内にキセノンガスが封入されてなり、前記放電容器の放電空間内においてエキシマ放電を発生させるエキシマランプであって、前記放電容器の放電空間に曝される表面に、シリカ粒子とアルミナ粒子とからなる紫外線反射膜を形成し、前記放電容器における前記紫外線反射膜の反射膜形成開始領域の膜厚が、該反射膜形成開始領域以外の部分の膜厚よりも薄く、前記紫外線反射膜の反射膜形成開始領域におけるアルミナ濃度は、前記反射膜形成開始領域以外の部分におけるアルミナ濃度より小さいことを特徴とするエキシマランプである。
第2の手段は、第1の手段において、前記紫外線反射膜の反射膜形成開始領域におけるアルミナ濃度は、10wt%以下であることを特徴とするエキシマランプである。
第3の手段は、第1の手段または第2の手段において、前記紫外線反射膜の反射膜形成開始領域の膜厚は、21μm以下であることを特徴とするエキシマランプである。
第4の手段は、第1の手段において、前記紫外線反射膜の反射膜形成開始領域における、前記シリカ粒子の中心粒径をAとし、前記アルミナ粒子の中心粒径をBとするとき、A/B<10という関係を満たすことを特徴とするエキシマランプである。
請求項1に記載の発明によれば、紫外線反射膜は反射膜形成開始領域の膜厚を、該反射膜形成開始領域以外の部分の膜厚より薄くすることによって、放電容器との結着性を高めることができる。また、前記反射膜形成開始領域以外の部分において、紫外線反射膜の膜厚が十分に厚く、反射性能が確保されるので、エキシマランプのエキシマ光の放射光量を高めることができる。紫外線反射膜の反射膜形成開始領域におけるアルミナ濃度を、該反射膜形成開始領域以外の部分におけるアルミナ濃度より小さくすることによって、放電容器との接着力を高め、反射膜形成開始領域における紫外線反射膜の放電容器からの剥がれ落ちを防止することができる。また、反射膜形成開始領域以外の部分においては、互いに隣接するシリカ粒子とアルミナ粒子との粒界が維持されるので、長時間点灯した場合でもエキシマ光の放射光量を維持することができる。
請求項2に記載の発明によれば、紫外線反射膜の反射膜形成開始領域におけるアルミナ濃度が10wt%以下であれば、紫外線反射膜のシリカガラスよりなる基材からの剥がれをより一層確実に防止することができる。
請求項3に記載の発明によれば、紫外線反射膜の反射膜形成開始領域の膜厚を21μm以下とすることにより、紫外線反射膜のシリカガラスよりなる基材からの剥がれをより一層確実に防止することができる。
請求項4に記載の発明によれば、紫外線反射膜の反射膜形成開始領域における、シリカ粒子の中心粒径が、アルミナ粒子の中心粒径の10倍以下とすることにより、軽いシリカ粒子が放電容器の短辺面や端面の内表面領域に留まり、重いアルミナ粒子が底面となる長辺面の内表面領域に溜まりやすくなり、紫外線反射膜の短辺面や端面の内表面領域からの剥離を防止することができると共に、長辺面の内表面領域の紫外線反射膜からの反射を確実なものとすることができる。
本発明の一実施形態を図1ないし図6を用いて説明する。
図1は、本実施形態の発明に係るエキシマランプ10の概略構成を示す図であり、図1(a)はエキシマランプ10の長手方向に沿った断面図、図1(b)は図1(a)におけるA−Aの切断面から見た断面図である。
同図に示すように、エキシマランプ10は、両端が気密に封止されて内部に放電空間Sが形成された、断面が矩形状の中空長尺状の放電容器11を備えており、放電容器11の内部には、放電用ガスとして、キセノンガスが封入されている。キセノンガスは、圧力が例えば、10〜60kPa(100〜600mbar)の範囲内となる封入量である。
放電容器11は、真空紫外光を良好に透過するシリカガラス、例えば、合成石英ガラスよりなり、誘電体としての機能を有する。さらに、放電容器11は、長尺状の板ガラスよりなる長辺面12a、12bが互いに向き合うように配置され、長辺面12aと長辺面12bとをつなぐ短辺面13a、13bにより断面矩形状の管が形成されている。長手方向の両端は、端面14a、14bにより閉じられ、放電空間が気密に封止された放電容器11が形成される。
放電容器11における長辺面12a、12bの外表面には、一対の格子状の電極15、16が放電容器11の長尺方向に伸びるよう対向して形成されている。長辺面12aの外表面には高電圧給電電極として機能する一方の電極15が配置され、長辺面12bの外表面には接地電極として機能する他方の電極16が配置されている。これにより、一対の電極15、16間に誘電体として機能する放電容器11が介在された状態となる。電極15、16は、例えば、金属よりなる電極材料を放電容器11にペースト塗布することにより、または、プリント印刷することによって形成される。一方の電極15に点灯電力が供給されると、誘電体として機能する放電容器11の壁を介して放電空間Sに放電が生成され、これにより、エキシマ分子が形成されると共にこのエキシマ分子から真空紫外光が放射されるエキシマ放電が生じる。
このエキシマランプ10においては、エキシマ放電によって発生した真空紫外光を効率良く利用するために、放電容器11の放電空間Sに曝される表面に、シリカ粒子とアルミナ粒子とから構成される紫外線散乱粒子よりなる紫外線反射膜18が形成されている。紫外線反射膜18は、放電容器11における長辺面12aの一方の電極15に対応する内表面領域と、この領域に連続する短辺面13a、13bおよび端面14a、14bの内表面領域にわたって形成されている。また、放電容器11における長辺面12bの他方の電極16に対応する内表面領域において紫外線反射膜18が形成されていないことによって光出射部17が形成される。
図2は、図1(b)に示した放電容器11の短辺面13bに形成された紫外線反射膜18の一部を拡大して示した一部拡大断面図である。
放電容器11の管軸に垂直な断面における長辺面12a、12bの長さは40mmであり、短辺面13a、13bの長さは10mmである。紫外線反射膜18は、図1(a)、(b)に示すように、一方の電極15に対応する長辺面12aの内表面領域の全体と、この領域に連続する2つの短辺面13a、13bの内表面領域および2つの端面14a、14bの内表面領域の全体に形成されている。
図2において、紫外線反射膜18の境界先端aから0.5mm離間した位置bまでの反射膜形成開始領域19においては、紫外線反射膜18の膜厚が傾斜直線的に大きくなっている。例えば、境界先端aでは紫外線反射膜18の膜厚は0μmであるが、位置bでは紫外線反射膜18の膜厚は5μmである。位置bから長辺面12aに向かって徐々に膜厚が大きくなるように形成されている。具体的な一例を挙げると、位置bから1mm離間した位置cにおける紫外線反射膜18の膜厚は10μmであり、位置bから2mm離間した位置dにおける膜厚は15μmであり、位置bから3mm離間した位置eにおける膜厚は18μmとなっている。なお、長辺面12aにおける紫外線反射膜18の膜厚は30μmとなるように形成されている。なお、図示されていないが、短辺面13a、端面14a、14bにおいても、短辺面13bと同様に、紫外線反射膜18が形成される。
紫外線反射膜18は、それ自体が高い屈折率を有する真空紫外光透過性を有するシリカ粒子とアルミナ粒子とからなり、紫外線散乱粒子に到達した真空紫外光の一部が粒子の表面で反射されると共に他の一部が屈折して粒子の内部に入射され、さらに、粒子の内部に入射される光の多くが透過され(一部が吸収)、再び、出射される際に屈折される。紫外線反射膜18は、このような反射、屈折が繰り返し起こる「拡散反射(散乱反射)」をさせる機能を有する。また、紫外線反射膜18を構成するシリカ粒子とアルミナ粒子とは、セラミックスにより構成されていることにより、不純ガスを発生せず、また、放電に耐えられる特性を有する。
紫外線反射膜18の剥がれは、紫外線反射膜18が形成されている部分と形成されてない部分との境界から発生する。また、紫外線反射膜18の膜厚の薄い方が、放電容器11と反射膜表面の温度差が低減できるため、結着性を高めることができる。したがって、紫外線反射膜18の反射膜形成開始領域19における膜厚を薄くすることにより、放電容器11との結着性を高めることができる。
一方、紫外線反射膜18の反射特性は膜厚に比例して変動するため、紫外線反射膜18の膜厚を薄くすると反射性能が低下する。そのため、紫外線反射膜18の反射性能を確保するためには、膜厚が一定以上あることが必要である。したがって、紫外線反射膜18の剥がれの問題が生じない反射膜形成開始領域19以外の領域では、紫外線反射膜18の膜厚を厚くして反射性能を確保して、エキシマ光の放射光量を高める。その結果、紫外線反射膜18の反射膜形成開始領域19の膜厚は、反射膜形成開始領域19以外の部分の膜厚より薄くすることによって、放電容器11との結着性を高め、反射膜形成開始領域19以外の部分においては、紫外線反射膜18の膜厚を十分に厚くして反射性能を確保することにより、エキシマランプ10のエキシマ光の放射光量を高めることができる。
紫外線反射膜18は、シリカ粒子とアルミナ粒子から構成される。紫外線反射膜18に用いられるシリカ粒子は、例えば、シリカガラスを粉末状に細かい粒子としたもの等を用いる。このシリカ粒子は、以下のように定義される粒子径が、例えば、0.01〜20μmの範囲内にあるものであって、中心粒径(数平均粒子径のピーク値)が、例えば、0.1〜10μmであるものが好ましく、より好ましくは0.3〜3μmである。また、紫外線反射膜18に含まれるシリカ粒子の粒径の分布は広範囲に広がらない方が好ましく、粒径が中心粒径の値となるシリカ粒子が半数以上となるように選別されたシリカ粒子を用いることが好ましい。
また、紫外線反射膜18に用いられるアルミナ粒子は、以下のように定義される粒子径が、例えば、0.1〜10μmの範囲内にあるものであって、中心粒径(数平均粒子径のピーク値)が、例えば0.1〜3μmであるものが好ましく、より好ましくは0.3〜1μmであるものである。また、紫外線反射膜18に含まれるアルミナ粒子の粒径の分布も広範囲に広がらない方が好ましく、粒径が中心粒径の値となるアルミナ粒子が半数以上となるように選別されたアルミナ粒子を用いることが好ましい。
通常、光は、粒径が比較的大きな粒子に当たると反射するが、粒怪が小さくなると、粒子に光が当たっても反射はせず、散乱が起きる。光の散乱は、粒子の大きさにより3つに分類され、粒子径が波長より小さいときはレイリー散乱が起こり、粒子径が波長と同じ程度のときはミー散乱が起こり、粒子径が波長より大きいときは非選択的散乱が起こる。特に、レイリー散乱は、散乱された光の強度が入射した光の波長に依存する特徴がある。具体的には、入射光の波長が短いと散乱光の強度が大きくなり、入射光の波長が長いと散乱光の強度が小さくなる。このレイリー散乱を紫外線反射膜18において起こせば、紫外線や真空紫外線といった波長の短い光を、光の強度が大きい散乱光とすることができる。エキシマランプ10の放電容器11の内部に発生する光の波長は150 nm〜380nmの範囲にあるので、シリカ粒子およびアルミナ粒子の粒子径を0.01μm〜20μmの範囲内、中心粒径を0.3μm〜3μmとすることにより、紫外線反射膜18においてレイリー散乱が起こるようにすることができる。なお、シリカ粒子の粒子径を上記範囲よりさらに小さくしてレイリー散乱が起きやすくなるように構成しても、シリカ粒子の焼結が進んで粒界が消滅してしまい、逆に光の散乱性能を失ってしまう。
紫外線反射膜18の反射膜形成開始領域19においては、シリカ粒子の中心粒径をAとし、アルミナ粒子の中心粒径をBとするとき、A/B<10という関係を満たすことが好ましい。シリカ粒子の中心粒径が、アルミナ粒子の中心粒径の10倍以下であることにより、シリカ粒子の一粒子当りの重さが、アルミナ粒子の一粒子当りの重さの一定重量より小さくなる。その結果、シリカ粒子がアルミナ粒子に比べて一定水準より小さく、そして軽いことにより、紫外線反射膜18においてアルミナ粒子が下に沈みやすくなる。後述する紫外線反射膜18の製造方法においては、放電容器11の長辺面12aを底面として水平な姿勢を保ったまま乾燥させることにより、軽いシリカ粒子が放電容器11の短辺面13a、13bの内表面領域、および端面14a、14bの内表面領域に留まり、重いアルミナ粒子が長辺面12aの内表面領域に溜まりやすくなる。
ここで、紫外線反射膜18を構成する粒子の粒子径と中心粒径について述べると、紫外線反射膜18を構成する紫外線散乱粒子の「粒子径」とは、紫外線反射膜18をその表面に対して垂直方向に破断したときの破断面における、厚み方向におけるおよそ中間の位置を観察範囲として、走査型電子顕微鏡(SEM)によって拡大投影像を取得し、この拡大投影像における任意の粒子を一定方向の2本の平行線で挟んだときの該平行線の間隔であるフェレー(Feret)径をいう。
図3(a)、(b)は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察された粒子の拡大投影像の一例を示す図である。図3(a)に示すように、略球状の粒子Aおよび粉砕粒子形状を有する粒子B等の粒子が単独で存在している場合には、これらの粒子を一定方向(例えば、紫外線反射膜18の厚み方向)に伸びる2本の平行線で挟んだときの該平行線の間隔である粒径DA、DBが「粒子径」である。また、図3(b)に示すように、出発材料の粒子が溶融して接合した形状を有する粒子Cについては、出発材料である粒子C1、C2と判別される部分における球状部分のそれぞれについて、一定方向(例えば、紫外線反射膜18の厚み方向)に伸びる2本の平行線で挟んだときの該平行線の間隔であるDC1,DC2が「粒子径」である。
紫外線反射膜18を構成する紫外線散乱粒子の「中心粒径」とは、上記のようして得られる各粒子の粒子径についての最大値と最小値との粒子径の範囲を、例えば、0.1μmの範囲で複数の区分、例えば、15区分程度に分け、それぞれの区分に属する粒子の個数(度数)が最大となる区分の中心値をいう。
また、一般に、エキシマランプ10においては、プラズマが発生することが知られているが、プラズマが紫外線反射膜18に対して略直角に入射して作用することになるため、紫外線反射膜18の温度が局所的に急激に上昇する。紫外線反射膜18が、例えば、シリカ粒子のみからなるものであれば、プラズマの熱によって、シリカ粒子が溶融して粒界が消失されて、真空紫外光を拡散反射させることができなくなって反射率が低下することがある。
それに対して、紫外線反射膜18を構成する粒子として、シリカ粒子だけでなくアルミナ粒子も含ませることにより、プラズマによる熱に曝された場合であっても、シリカ粒子より高い融点を有するアルミナ粒子は溶融しないため、互いに隣接するシリカ粒子とアルミナ粒子との粒子同士の結合が防止されて粒界が維持される。したがって、エキシマランプを長時間点灯した場合であっても、真空紫外光を効率よく拡散反射させることができて初期の反射率を実質的に維持させることができる。そのため、長時間点灯した場合でも紫外線反射膜18の反射性能を保ち、エキシマ光の反射効率を維持するためには、紫外線反射膜18に含有されるアルミナ濃度は高い方が好ましい。
紫外線反射膜18と放電容器11との接着性については、紫外線反射膜18に含有されるシリカ粒子が一部溶融すること等によって、紫外線反射膜18が放電容器11に付着される。一般に、線膨張係数の値が等しいまたは近似するものは、接着しやすいという性質がある。シリカ粒子は、シリカガラスからなる放電容器11と線膨張係数の値が等しいため、放電容器11との接着力が高められ、紫外線反射膜18が放電容器11から剥離することが抑制されるように働く。
一方、アルミナ粒子は、放電容器11とは材質が異なるため接着しにくい。また、溶融せずに粒子として存在するため、バラバラに離れて飛散しやすい。そのため、紫外線反射膜18が放電容器11から剥がれ落ちることを防止するためには、放電容器11と同質のシリカ濃度を高め、紫外線反射膜18に含有されるアルミナ濃度は低い方が好ましい。したがって、紫外線反射膜18の剥がれの問題が生じやすい反射膜形成開始領域19においては、紫外線反射膜18のアルミナ濃度を低くなるように構成することによって、放電容器11との接着力を高め、紫外線反射膜18の反射膜形成開始領域19が放電容器11から剥がれ落ちる問題を解決することができる。
また、反射膜形成開始領域19以外の部分については、紫外線反射膜18に含有するアルミナ濃度を相対的に高くなるように構成することによって、互いに隣接するシリカ粒子とアルミナ粒子との粒界を維持し、長時間点灯した場合でもエキシマ光の放射光量を維持させることができる。
図2を用いて具体的に説明すると、紫外線反射膜18全体のアルミナ濃度は10wt%であっても、反射膜形成開始領域19におけるアルミナ濃度が2wt%になるように構成して、放電容器11から剥がれ落ちることを防止する。一方、位置bから1mm離間した位置cにおける紫外線反射膜18のアルミナ濃度は8wt%であり、位置bから2mm離間した位置dにおけるアルミナ濃度は9wt%であり、位置bから3mm離間した位置eにおけるアルミナ濃度は11wt%であり、長辺面12aに形成された紫外線反射膜18のアルミナ濃度は11wt%となっている。このように反射膜形成開始領域19以外の部分において紫外線反射膜18のアルミナ濃度を高くすることによって、長時間点灯された場合であっても、真空紫外光を効率よく拡散反射させることができ、初期の反射率を実質的に維持することができる。
シリカ粒子およびアルミナ粒子の製造は、固相法、液相法、気相法のいずれの方法も利用することができるが、これらのうちでも、サブミクロン、ミクロンサイズの粒子を確実に得ることができることから、気相法、特に化学蒸着法(CVD)が好ましい。具体的には、シリカ粒子は、塩化ケイ素と酸素を900〜1000℃で反応させることにより、また、アルミナ粒子は、原料の塩化アルミニウムと酸素を1000〜1200℃で加熱反応させることにより、合成することができ、粒子径は、原料濃度、反応場での圧力、反応温度を制御することにより調整することができる。
紫外線反射膜18の放電容器11への形成は、まず、放電容器11内に流し込むコート液を調合し、調合されたコート液を、例えば、「流下法」と呼ばれる方法により行う。コート液は、(1)紫外線散乱粒子、(2)結着剤、(3)分散剤、および(4)溶剤が調合されている。
(1)紫外線散乱粒子は、シリカ粒子とアルミナ粒子から構成される。(2)結着材は、オルトケイ酸テトラエチルを含み、これに起因するシリカが、溶融付着紫外線散乱粒子同士または紫外線散乱粒子とシリカガラスよりなる放電容器との結着力を高める。(3)分散剤は、シランカップリング剤を用い、シランカップリング剤を含有することにより、コート液をゲル化して放電容器形成材料に付着させやすくすると共に、コート液中で均等に分散された紫外線散乱粒子を定着させることができる。(4)溶剤は、エタノールを用い、これによってコート液の紫外線散乱粒子の含有濃度を調整することができる。
次に、調合されたコート液は、放電容器11の反射膜形成開始領域19の膜厚が反射膜形成開始領域19以外の部分の膜厚より薄くなるように、紫外線反射膜18の膜厚が傾斜構造とするために、数回重ねて塗布される。
図4はコート液を流し込む状態を説明するための説明用断面図である。
製造手順は、まず、(1)放電容器11を傾斜させて固定する。(2)コート液を流し込み、液面の揺れや波立ちが収まるまで静止させる。(3)放電容器11の傾斜姿勢を保ったまま流し込んだコート液を排出、乾燥させる。(4)乾操後、先とは傾斜角度を変えて固定する(反射膜形成開始領域19にコート液が馴染まないようにする)。(5)再びコート液を流し込み、排出、乾燥させる。この作業を繰り返すことにより、短辺面13bの内表面領域に、反射膜形成開始領域19の膜厚が反射膜形成開始領域19以外の部分の膜厚より薄くなる傾斜構造を有する紫外線反射膜18を形成することができる。もう一方の短辺面13aの内表面領域にも同様の方法で紫外線反射膜18を形成する。最後に、放電容器11を水平に固定してコート液を流し込み、長辺面12aの内表面領域に紫外線反射膜18を形成すると共に、先の短辺面13bの内表面領域と同様にして、端面14a、14bの内表面領域に紫外線反射膜18を形成する。
実験例1
放電容器11の内表面領域に紫外線反射膜18を形成し、紫外線反射膜18の反射膜形成開始領域19におけるアルミナ濃度と剥がれの有無の関係について調べた。なお、ここで、紫外線反射膜18の位置bは、図2に示すように、紫外線反射膜18と短辺面13bとの境界先端aから0.5mm内側に離間した位置をいう。
(1)エキシマランプ10の仕様
(a)放電容器11:合成石英ガラス製、寸法10×42×150mm、肉厚18mm、(b)封入ガス:キセノンガス、30kPa、(c)電極15,16:寸法法30×100mm、
(2)紫外線反射膜18の仕様
(a)反射膜形成開始領域19の位置bにおける膜厚:5μm、(b)シリカ粒子:中心粒径0.3μm、粒径が中心粒径となる粒子の割合が50%、(c)アルミナ粒子:中心粒径0.4μm、粒径が中心粒径となる粒子の割合が50%、(d)中心粒径:出発材料の中心粒径ではなく、紫外線反射膜18における中心粒径であって、日立製電界放出型走査電子顕微鏡「S4100」を用いて、加速電圧を20kVとし、拡大投影像における観察倍率を、粒子径が0.05〜1μmである粒子については20000倍、粒子径が1〜10μmである粒子については2000倍として、測定した。
(3)アルミナ濃度測定
紫外線反射膜18に含まれるアルミナ濃度は、電子顕微鏡とそれに付属しているエネルギー分散型X線分析装置を用いて定量分析することによって求めた。図2に示す、紫外線反射膜18の位置bを放電空間側から、数100〜1000倍の倍率で電子顕微鏡により観測しながら、エネルギー分散型X線分析装置を用いた定量分析を行うことにより、紫外線反射膜18に含まれるシリカの含有量とアルミナの含有量を求めた。アルミナ濃度(wt%)を、アルミナ質量(アルミナ密度×含有量)/(シリカ質量(シリカ密度×含有量)+アルミナ質量(アルミナ密度×含有量))×100と表す。
(4)膜剥がれ耐久性
シリカガラスよりなる基材上に形成された紫外線反射膜18の表面に、6Hの芯の硬度(JIS規格)の鉛筆を突き当てて10回摺動させた。紫外線反射膜18の基材からの剥がれの有無を目視にて確認した。
実験例1の結果を、図5の表に示す。
同図は、反射膜形成開始領域19のアルミナ濃度(wt%)に対する膜剥がれの関係を示しており、剥がれなかったものを○、剥がれたものを×とした。
同図に示すように、紫外線反射膜18の反射膜形成開始領域19におけるアルミナ濃度が10wt%以下であれば、紫外線反射膜18とシリカガラスよりなる基材との剥がれを防止できることがわかった。
実験例2
放電容器11の反射膜形成開始領域19におけるアルミナ濃度が10wt%である紫外線反射膜18を形成し、紫外線反射膜18の反射膜形成開始領域19における膜厚と剥がれの有無の関係について調べた。なお、反射膜形成開始領域19のアルミナ濃度が10wt%である紫外線反射膜10とは、実験例1の結果より、使用可能ではあるが最も剥がれやすい条件であることがわかっている。また、紫外線反射膜の反射膜形成開始領域19およびエキシマランプの仕様は、実験例1と同様である。
(1)紫外線反射膜18の仕様
(a)紫外線反射膜の反射膜形成開始領域19におけるアルミナ濃度:10wt%、(b)シリカ粒子:中心粒径0.3μm、粒径が中心粒径となる粒子の割合が50%、(c)アルミナ粒子:中心粒径0.4μm、粒径が中心粒経となる粒子の割合が50%である。
(2)膜厚の測定
紫外線反射膜18が形成されている放電容器11の断面を顕微鏡で拡大して見ることにより、図2に示す紫外線反射膜18の反射膜形成開始領域19の位置bおける膜厚を測定した。拡大画像状の紫外線反射膜18の膜厚の長さと拡大率を考慮することにより、実際の紫外線反射膜18の膜厚を知ることができる。顕微鏡は、キーエンス製デジタルマイクロスコープを用いた。紫外線反射膜の膜厚のバラツキによる数値誤差は±8%であった。
(3)膜剥がれ耐久性
シリカガラスよりなる基材上に形成された紫外線反射膜18の表面に、6Hの芯の硬度(JIS規格)の鉛筆を突き当てて10回摺動させた。紫外線反射膜18の基材からの剥がれの有無を目視にて確認した。剥がれなかったものを○、剥がれたものを×とした。
実験例2の結果を、図6の表に示す。
同図は、反射膜形成開始領域19の膜厚(μm)に対する膜剥がれの関係を示しており、剥がれなかったものを○、剥がれたものを×とした。
同図に示すように、紫外線反射膜18の反射膜形成開始領域19の位置bにおける膜厚が21μm以下であれば、紫外線反射膜18とシリカガラスよりなる基材との剥がれを防止できることがわかった。
一実施形態の発明に係るエキシマランプ10の概略構成を示す断面図である。 図1に示した放電容器11の短辺面13bに形成された紫外線反射膜18の一部を拡大して示した一部拡大断面図である。 走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察された粒子の拡大投影像の一例を示す図である。 放電容器11の内表面領域に紫外線反射膜18を形成するための、コート液を流し込む状態を説明するための説明用断面図である。 実験例1の結果を示す表である。 実験例2の結果を示す表である。 従来技術に係るエキシマランプ30の概略構成を示す断面図である。
符号の説明
10 エキシマランプ
11 放電容器
12a、12b 長辺面
13a、13b 短辺面
14a、14b 端面
15、16 電極
17 光出射部
18 紫外線反射膜
19 反射膜形成開始領域

Claims (4)

  1. 放電空間を有するシリカガラスよりなる放電容器を備え、該放電容器を形成するシリカガラスが介在する状態で一対の電極が設けられると共に、放電空間内にキセノンガスが封入されてなり、前記放電容器の放電空間内においてエキシマ放電を発生させるエキシマランプであって、
    前記放電容器の放電空間に曝される表面に、シリカ粒子とアルミナ粒子とからなる紫外線反射膜を形成し、前記放電容器における前記紫外線反射膜の反射膜形成開始領域の膜厚が、該反射膜形成開始領域以外の部分の膜厚よりも薄く、
    前記紫外線反射膜の反射膜形成開始領域におけるアルミナ濃度は、前記反射膜形成開始領域以外の部分におけるアルミナ濃度より小さいことを特徴とするエキシマランプ。
  2. 前記紫外線反射膜の反射膜形成開始領域におけるアルミナ濃度は、10wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
  3. 前記紫外線反射膜の反射膜形成開始領域の膜厚は、21μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエキシマランプ。
  4. 前記紫外線反射膜の反射膜形成開始領域における、前記シリカ粒子の中心粒径をAとし、前記アルミナ粒子の中心粒径をBとするとき、A/B<10という関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
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