ところで、上述した煙感知器Aにおいては、検知空間への外乱光の入射を防止するラビリンス21の構造が複雑であり、ラビリンス21の製造にかかるコストが煙感知器A全体の低コスト化の妨げとなっているので、ラビリンス21の構造を極力簡素化、あるいはラビリンス21自体を省略することで、煙感知器Aの低コスト化を図ることが要望されている。しかし、ラビリンス21を簡素化あるいは省略すると、フォトダイオードPDで受光される外乱光が強くなり、フォトダイオードPDを流れる電流I1に含まれる低周波成分が大きくなって出力電圧Voutが飽和してしまうことがある。特に、上述のように電池を煙感知器Aの電源とする場合には、演算増幅器OP1の電源電圧が低く演算増幅器OP1のダイナミックレンジが比較的狭いため、出力電圧Voutが飽和しやすくなる。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであって、受光部への外乱光の入射を防止する手段を簡素化あるいは省略することができる煙感知器を提供することを目的とする。
請求項1の発明は、検知空間に向けて所定のセンシング期間にパルス状の光を出力する発光部と、発光部からの直接光は入射せず検知空間内に流入した煙により拡散反射された発光部からの光が入射する位置に配置され、受光強度に相当する大きさの電流を流す受光部と、受光部に接続された接続端子を介して受光部に電流を供給し当該電流の変動に応じて電圧値が変動する出力電圧を出力端子から出力する変換部を有した電流電圧変換回路と、前記出力電圧に基づいて検知空間内の煙の有無を判定する判定処理部とを備え、電流電圧変換回路が、前記出力電圧のうち受光部が発光部からの光を受光したときに生じるパルス状の検出信号の周波数より低いカットオフ周波数以下の低周波成分を抽出し、当該低周波成分に応じた大きさの補正電流を変換部の接続端子を介して受光部に供給する低周波補正手段を有することを特徴とする。
この構成によれば、受光部を流れる電流に低周波成分が含まれている場合に、出力端子と接続端子との間にフィードバックをかけて前記低周波成分による出力電圧の飽和を抑制することができる。つまり、低周波補正手段が、低周波成分に応じた大きさの補正電流を変換部の接続端子を介して受光部に供給することによって、変換部から受光部に供給される電流から前記低周波成分が減算され、出力電圧への低周波成分の影響が抑制される。したがって、受光部で受光される外乱光が強く受光部を流れる電流に含まれる低周波成分が比較的大きい場合でも、変換部の出力端子に生じる出力電圧への前記低周波成分の影響を抑制することができる。その結果、受光部への外乱光の入射を防止する手段を簡素化あるいは省略することが可能になる。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記低周波補正手段が、前記出力電圧のうち前記検出信号の周波数より低い第1カットオフ周波数以下の低周波成分に相当する電圧を出力する第1の帰還回路と、第1の帰還回路の出力と前記接続端子との間に挿入され第1の帰還回路の出力に応じた大きさの前記補正電流を流す補正用抵抗とを具備することを特徴とする。
この構成によれば、第1カットオフ周波数以下の低周波成分が補正用抵抗を通して接続端子にフィードバックされるので、変換部から受光部に供給される電流から前記低周波成分が減算され出力電圧への低周波成分の影響が抑制される。したがって、比較的簡単な構成で、出力電圧の飽和を抑制することができる。
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記低周波補正手段が、前記出力電圧のうち前記検出信号の周波数より低い第2カットオフ周波数以下の低周波成分を出力する第2の帰還回路と、所定電位点と前記接続端子との間に挿入され第2の帰還回路の出力に制御端子が接続されることで、第2の帰還回路の出力に応じた大きさの前記補正電流を流す補正用トランジスタとを具備することを特徴とする。
この構成によれば、第2カットオフ周波数以下の低周波成分が補正用トランジスタを通して接続端子にフィードバックされるので、変換部から受光部に供給される電流から前記低周波成分が減算され出力電圧への低周波成分の影響が抑制される。ここで、補正用トランジスタは、抵抗等に比べて大きな電流を流すことができるので、比較的大きな低周波成分に対応することができる。
請求項4の発明は、請求項2の発明において、前記低周波補正手段が、前記出力電圧のうち前記検出信号の周波数より低い第2カットオフ周波数以下の低周波成分を出力する第2の帰還回路と、所定電位点と前記接続端子との間に挿入され第2の帰還回路の出力に制御端子が接続されることで、第2の帰還回路の出力に応じた大きさの前記補正電流を流す補正用トランジスタとを具備し、第2の帰還回路が、前記センシング期間においては第1カットオフ周波数より低く、センシング期間以外の期間においては第1カットオフ周波数より高くなるように第2カットオフ周波数を切り換える周波数切替手段を有することを特徴とする。
この構成によれば、第2カットオフ周波数以下の低周波成分が補正用トランジスタを通して接続端子にフィードバックされるので、変換部から受光部に供給される電流から前記低周波成分が減算され出力電圧への低周波成分の影響が抑制される。ここで、補正用トランジスタは、抵抗等に比べて大きな電流を流すことができるので、比較的大きな低周波成分に対応することができる。しかも、第2の帰還回路は、第2カットオフ周波数を切り替える周波数切替手段を有するので、センシング期間以外の期間においては、比較的広範囲の低周波成分をフィードバックしながらも、センシング期間においては、検出信号がフィードバックされてしまうことを回避できる。また、センシング期間においても、第1カットオフ周波数以下の低周波成分であれば補正用抵抗を通してフィードバックすることができる。
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記第2の帰還回路が前記出力電圧の積分値成分を出力する積分回路を有し、前記周波数切替手段が、積分回路の出力と前記補正用トランジスタの制御端子との間に挿入された第1のスイッチを有するサンプルホールド回路を具備し、前記センシング期間においては第1のスイッチをオフすることでサンプルホールド回路を作動させ、保持された積分回路の出力電圧を補正用トランジスタの制御端子に印加することを特徴とする。
この構成によれば、センシング期間においては、第1のスイッチがオフすることで積分回路の出力と補正用トランジスタの制御端子との間が遮断されるから、積分回路に発生するフリッカ雑音等の定常雑音が入力に影響することを防止でき、SN比が向上する。
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記変換部の前記接続端子と前記出力端子との間には第2のスイッチが接続されており、第2のスイッチが、前記第1のスイッチがオンのときにオンすることを特徴とする。
この構成によれば、第2のスイッチがオンすることにより変換部の接続端子と出力端子との間の利得が低下し、第1のスイッチがオンすることによる系の発振を抑制することができる。
請求項7の発明は、請求項5の発明において、前記第1のスイッチが、オフ抵抗の値が、前記補正用トランジスタの制御端子と前記所定電位点との間の抵抗値よりも小さく設定されていることを特徴とする。
この構成によれば、第1のスイッチがオフするセンシング期間においても、第1のスイッチのオフ抵抗を通して微小電流を流すことができるから、補正用トランジスタの制御端子と所定電位点との間に生じる漏れ電流により補正用トランジスタの制御端子の電位が低下することを防止することができる。したがって、補正用トランジスタの制御端子の電位が低下することによる出力電圧の変動を抑制することができる。
請求項8の発明は、請求項4の発明において、前記第2の帰還回路が前記出力電圧の積分値成分を出力する積分回路を有し、前記周波数切替手段が、前記補正用トランジスタの制御端子と前記所定電位点との間に接続されたコンデンサと、積分回路の出力と補正用トランジスタの制御端子との間に接続された抵抗および第3のスイッチの並列回路とを有するローパスフィルタ回路を具備し、前記センシング期間においては第3のスイッチをオフすることでローパスフィルタ回路を作動させることを特徴とする。
この構成によれば、第3のスイッチがオフするセンシング期間においても、抵抗を通して電流を流すことができるから、補正用トランジスタの制御端子と所定電位点との間に生じる漏れ電流により補正用トランジスタの制御端子の電位が低下することを防止することができる。したがって、補正用トランジスタの制御端子の電位が低下することによる出力電圧の変動を抑制することができる。また、センシング期間における第2カットオフ周波数を精度よく設定することができるので、検出信号が接続端子にフィードバックされない範囲で、第2カットオフ周波数を高く設定することができ、センシング期間においても、比較的広範囲の低周波成分を接続端子にフィードバックすることが可能になる。
請求項9の発明は、請求項4の発明において、前記第2の帰還回路が、第1の抵抗とコンデンサとで決まる時定数を有する積分回路を有し、前記周波数切替手段が、第1の抵抗と並列に接続された第2の抵抗および第4のスイッチの直列回路を具備し、前記センシング期間においては第4のスイッチをオフすることを特徴とする。
この構成によれば、サンプルホールド回路を設ける場合に比べて、回路の小型化、低消費電力化を図ることができる。また、センシング期間における第2カットオフ周波数を精度よく設定することができるので、検出信号が接続端子にフィードバックされない範囲で、第2カットオフ周波数を高く設定することができ、センシング期間においても、比較的広範囲の低周波成分を接続端子にフィードバックすることが可能になる。
請求項10の発明は、請求項4ないし請求項9のいずれかの発明において、前記第1の帰還回路が、前記変換部から前記受光部に供給される電流に対して同位相の電圧を出力するアクティブフィルタからなり、前記第2の帰還回路が、変換部から受光部に供給される電流に対して逆位相の電圧を出力するアクティブフィルタからなることを特徴とする。
この構成によれば、第1および第2の帰還回路がアクティブフィルタで実現されているので、低周波成分に対して高利得を持つことができ、低周波成分による出力電圧の変動を確実に抑制することができる。
請求項11の発明は、請求項3ないし請求項10のいずれかの発明において、前記補正用トランジスタが複数個設けられており、各補正用トランジスタと前記接続端子との間にそれぞれ挿入された選択用スイッチと、前記第2の帰還回路の出力が大きくなるほどオンする選択用スイッチの個数が増えるように、第2の帰還回路の出力に応じて選択用スイッチをオンオフ制御するスイッチ制御回路とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、低周波補正手段から接続端子を介して受光部に供給する補正電流が大きくなるほど、フィードバックに使用される補正用トランジスタの個数が増えるので、大電流のフィードバックを可能としながらも、各補正用トランジスタにおけるチャネル幅(W)とチャネル長(L)との比(W/L)を小さく抑えて、補正用トランジスタ1個当たりの定常雑音を小さく抑えることができる。
請求項12の発明は、請求項10の発明において、前記第1の帰還回路と前記第2の帰還回路とが演算増幅器を共用しており、演算増幅器を第1の帰還回路に用いる動作モードと、演算増幅器を第2の帰還回路に用いる動作モードとを切り替えるモード切替手段を備えることを特徴とする。
この構成によれば、第1の帰還回路と第2の帰還回路とが演算増幅器を共用しているから、各帰還回路にそれぞれ演算増幅器を設ける場合に比べて、回路の小型化を図ることができる。
請求項13の発明は、請求項10の発明において、前記第2の帰還回路の電源電圧が他の回路の電源電圧よりも高く設定されていることを特徴とする。
この構成によれば、第2の帰還回路の電源電圧が他の回路の電源電圧と同じである場合に比べて、第2の帰還回路の出力の上限値が高くなり、したがって、補正用トランジスタを通して接続端子にフィードバックできる補正電流の大きさの上限を広げることができる。
本発明は、受光部を流れる電流に低周波成分が含まれていたとしても、出力端子と接続端子との間にフィードバックをかけて前記低周波成分による出力電圧の飽和を抑制することができるので、受光部への外乱光の入射を防止する手段を簡素化あるいは省略することが可能になるという利点がある。
(実施形態1)
本実施形態の煙感知器Aは、図12に示した従来構成と同様にハウジング20内に検知空間を有し、この検知空間に向けて間欠的にパルス状の光を出力する発光部と、発光部からの直接光が入射しない位置に配置され受光した光を電流に変換する受光部と、受光部を流れる電流に基づいて検知空間内の煙を検知する回路ブロック1とを備えている。この煙感知器Aでは、検知空間内に煙が流入すると、発光部からの光が検知空間内の煙で拡散反射されることにより受光部での発光部からの光の受光量が増加し、受光部に流れる電流量が増加する。ここで例示する煙感知器Aは電池を電源としており、平均消費電力を抑えて電池の長寿命化を図るために間欠駆動する。
本実施形態の回路ブロック1は、受光部を流れる電流を当該電流の変動に応じて電圧値が変動する出力電圧に変換して出力する電流電圧変換回路と、電流電圧変換回路の出力電圧に基づいて検知空間内の煙の有無を判定する判定処理部(図11(b)の発報判定回路14)とを備えている。
電流電圧変換回路2は、図2に示すように、接続端子Tinを介して外部に流れ出す電流(以下、出力電流という)I1を当該出力電流I1の変動に応じて電圧値が変動する出力電圧Voutに変換して出力端子Toutから出力する変換部3と、低周波補正手段として、変換部3の出力する出力電圧Voutのうち所定の第1カットオフ周波数fc1以下の低周波成分の大きさに応じた電圧を出力する第1の帰還回路4と、第1の帰還回路4の出力と変換部3の接続端子Tinとの間に挿入された補正用抵抗R1とを備えている。さらに、本実施形態では、出力電圧Voutのうち所定の第2カットオフ周波数fc2以下の低周波成分の大きさに応じた電圧を出力する第2の帰還回路5と、所定電位点Vccと変換部3の接続端子Tinとの間に挿入された補正用トランジスタQ1とが低周波補正手段として設けられている。
変換部3は、図1に示すように、演算増幅器OP1の反転入力端子と出力端子との間に変換抵抗R2が接続され、演算増幅器OP1の非反転入力端子に基準電圧Vsが印加された構成を有する。変換部3の接続端子Tinには、受光部としてのフォトダイオードPD(図2参照)が接続されており、変換部3の出力電流I1は接続端子Tinを介してフォトダイオードPDに供給される。ここに、本実施形態の変換部3は、変換抵抗R2に並列接続されたコンデンサC1を有しローパスフィルタとしても機能しており、所定のカットオフ周波数fc0以下の出力電流I1のみを通すように変換抵抗R2とコンデンサC1との回路定数が設定される。このカットオフ周波数fc0は、変換抵抗R2の抵抗値r2とコンデンサC1の定数c1とを用いてfc0=1/(2π×r2×c1)で表され、少なくともフォトダイオードPDが発光部としてのLED6(図2参照)からの光を受光したときに生じるパルス状の出力電流(以下、検出信号という)I1を通すように設定される。
したがって、電流電圧変換回路2は、変換部3からフォトダイオードPDへの出力電流I1がゼロの状態での出力電圧Vout(ここでは基準電圧Vs)を動作点として、出力電流I1の変動に応じて動作点を基準に出力電圧Voutを変動させることとなる。
第1の帰還回路4は、変換部3の出力電圧Voutを反転増幅する反転増幅回路7と、反転増幅回路7で反転増幅された出力電圧Voutを積分し出力電圧Voutの積分値成分に相当する積分電圧Vdcを出力する第1の積分回路8とを有する。
第1の積分回路8は、反転増幅回路7の出力に抵抗R3を介して演算増幅器OP2の反転入力端子を接続し、この演算増幅器OP2の反転入力端子と出力端子との間にコンデンサC2を接続して構成され、抵抗R3とコンデンサC2とで決まる時定数を有するローパスフィルタとして機能する。この積分回路8は、少なくともフォトダイオードPDがLED6からの光を受光したときに生じる検出信号を遮る(つまり、検出信号の周波数より低い)第1カットオフ周波数fc1を有するように時定数が設定される。
反転増幅回路7は、積分回路8の出力を変換部3の出力電圧Voutに対して同相とするためのものであって、変換部3の出力端子Toutに抵抗R4を介して演算増幅器OP3の反転入力端子を接続し、この演算増幅器OP3の反転入力端子と出力端子との間に抵抗R5を接続して構成される。なお、両演算増幅器OP2,OP3の非反転入力端子には基準電圧Vsが印加される。
しかして、フォトダイオードPDがLED6からの光を受光したときに生じる検出信号と低周波成分とが変換部3の出力電流I1に含まれている場合に、第1の積分回路8から出力される積分電圧Vdcは前記低周波成分に相当する電圧となる。このとき、変換部3の出力端子Toutには出力電流I1と同相の出力電圧Voutが現れ、当該出力電圧Voutは反転増幅回路7および積分回路8でそれぞれ1回ずつ位相が反転されるため、積分回路8の出力には出力電流I1と同相の積分電圧Vdcが現れる。ここで、変換部3の接続端子Tinには基準電圧Vsが印加されているので、補正用抵抗R1の両端間には、積分電圧Vdcから基準電圧Vsを減算した電位差が生じ、積分電圧Vdcの大きさに応じた電流(以下、補正電流という)Ic1が補正用抵抗R1に流れることとなる。
これにより、フォトダイオードPDを流れる電流(以下、供給電流という)I0に第1カットオフ周波数fc1以下の低周波成分が含まれている場合には、この低周波成分が補正電流Ic1として変換部3の接続端子Tinにフィードバックされ、フォトダイオードPDには変換部3の出力電流I1に加えて補正電流Ic1が流れることとなる。したがって、フォトダイオードPDを流れる供給電流I0が一定であれば、変換部3からフォトダイオードPDに供給される出力電流I1から補正電流Ic1が減算され、前記低周波成分が出力電圧Voutから取り除かれる。
なお、補正用抵抗R1として抵抗値の小さいものを用いれば、補正用抵抗R1自体の熱雑音が大きくなり、電流電圧変換回路2の入力換算ノイズも大きくなるため、当該ノイズと検出対象であるフォトダイオードPDの信号成分(供給電流I0)との比であるSN比が低下するという問題があるので、補正用抵抗R1の抵抗値はある程度大きく設定される。
ところで、本実施形態の煙感知器Aにおいては、第2の帰還回路5は、変換部3の出力電圧Voutを積分する第2の積分回路9と、第2の積分回路9の出力をサンプルホールドするサンプルホールド回路10とを有している。
第2の積分回路9は、出力端子Toutに抵抗R6を介して演算増幅器OP4の反転入力端子を接続し、この演算増幅器OP4の反転入力端子と出力端子との間にコンデンサC3を接続して構成され、抵抗R6とコンデンサC3とで決まる時定数を有するローパスフィルタとして機能する。この積分回路9は、上述した第1の積分回路8の第1カットオフ周波数fc1よりも高い第2カットオフ周波数fc2(つまりfc1<fc2)を有するように時定数が設定される。なお、演算増幅器OP4の非反転入力端子には基準電圧Vsが印加される。
補正用トランジスタQ1は、第2の積分回路9の出力に制御端子が接続され、第2の積分回路9の出力に応じた電流を変換部3の所定電位点Vccから接続端子Tinに流すものであって、ここではPチャネルのMOSFETで構成されている。この補正用トランジスタQ1は、ドレインを変換部3の接続端子Tinに接続するとともにソースを所定電位点Vccに接続し、ゲートがサンプルホールド回路10を介して積分回路9の出力(演算増幅器OP4の出力端子)に接続された形で設けられている。
サンプルホールド回路10は、積分回路9の出力と補正用トランジスタQ1のゲートとの間に挿入された常閉形の第1のスイッチSW1と、補正用トランジスタQ1のゲートと回路グランドとの間に接続されたコンデンサC4とを有し、第1のスイッチSW1を所定のタイミングでオフすることにより、当該所定のタイミングでの積分回路9の出力をコンデンサC4の出力電圧として維持する。
上述の構成により、積分回路9が変換部3の出力電圧Voutを積分することで、変換部3の出力電圧Voutのうち第2カットオフ周波数fc2以下の低周波成分が積分回路9の出力に現れることとなる。このとき、変換部3の出力端子Toutには出力電流I1と同相の出力電圧Voutが現れ、当該出力電圧Voutは積分回路9で位相が反転されるため、積分回路9の出力には出力電流I1と逆位相の低周波成分が現れる。ここで、積分回路9の出力はサンプルホールド回路10を介して補正用トランジスタQ1のゲートに印加されるから、サンプルホールド回路10のスイッチSW1がオンの状態では、補正用トランジスタQ1のドレイン−ソース間には積分回路9の出力(出力電圧Voutの低周波成分)の大きさに応じた電流(以下、補正電流という)Ic2が流れることとなる。
これにより、フォトダイオードPDを流れる供給電流I0に第2カットオフ周波数fc2以下の低周波成分が含まれている場合には、この低周波成分が補正電流Ic2として変換部3の接続端子Tinにフィードバックされ、フォトダイオードPDには変換部3の出力電流I1に加えて補正電流Ic2が流れることとなる。したがって、フォトダイオードPDを流れる供給電流I0が一定であれば、変換部3からフォトダイオードPDに供給される出力電流I1から補正電流Ic2が減算され、前記低周波成分が出力電圧Voutから取り除かれる。その結果、電流電圧変換回路2全体としては前記低周波成分の利得を下げることができる。
ここにおいて、サンプルホールド回路10のスイッチSW1をオフにすると、積分回路9の出力と補正用トランジスタQ1のゲートとの間は遮断されるものの、積分回路9の出力はコンデンサC4の両端電圧として維持されるから、補正用トランジスタQ1のドレイン−ソース間には、スイッチSW1がオフする直前の積分回路9の出力の大きさに応じた補正電流Ic2を流し続けることができる。言い換えれば、サンプルホールド回路10のスイッチSW1がオフすることによりサンプルホールド回路10が作動すると、補正用トランジスタQ1のドレイン−ソース間に流すことができる補正電流Ic2の周波数の上限値(第2カットオフ周波数fc2)は低下するが、直流成分については引き続き補正用トランジスタQ1を通してフィードバックすることで出力電圧Voutから取り除くことができる。
本実施形態においては、サンプルホールド回路10のスイッチSW1をオフするタイミングを、煙感知器AのLED6がパルス状の光を出力し検知空間内に流入した煙の有無を検出する期間(以下、センシング期間という)に合わせて設定してある。すなわち、本実施形態の煙感知器Aは、上記センシング期間中にフォトダイオードPDがLED6からの光を受光したときに生じる検出信号を電圧に変換し、出力電圧Voutとして出力するためのものであるから、上記センシング期間における前記検出信号が補正用トランジスタQ1を通してフィードバックされてしまうことがないように、センシング期間にはスイッチSW1をオフとする。
さらに詳しく説明すると、第2の積分回路9の第2カットオフ周波数fc2は、第1の積分回路8の第1カットオフ周波数fc1に比べると前記検出信号の周波数の近くに設定されているから、スイッチSW1がオンの状態では、前記検出信号が補正用トランジスタQ1を通してフィードバックされ、電流電圧変換回路2全体として前記検出信号の利得が低減する可能性がある。そこで、本実施形態では上記センシング期間にスイッチSW1をオフしてサンプルホールド回路10を作動させることで、前記検出信号が補正用トランジスタQ1を通してフィードバックされることを回避し、電流電圧変換回路2全体として前記検出信号の利得を高く確保する。
ここで、上述したように煙感知器Aを間欠駆動する場合には、電流電圧変換回路2への電源供給も間欠的に行われ、電流電圧変換回路2への電源供給が行われている期間内に上記センシング期間が設定される。サンプルホールド回路10のスイッチSW1をオフするのはセンシング期間のみとし、電流電圧変換回路2への電源供給が開始してからセンシング期間が開始するまでの間、およびセンシング期間が終了してから電流電圧変換回路2への電源供給が停止するまでの間にはスイッチSW1をオンさせる。
しかして、スイッチSW1がオフされるセンシング期間には、第2の帰還回路5の出力はスイッチSW1がオフする直前の値に固定されるので、供給電流I0に含まれる揺らぎのない直流成分に関しては補正用トランジスタQ1にて継続してフィードバックをかけることができるが、供給電流I0に含まれる揺らぎのある低周波成分に関しては、当該低周波成分が第2カットオフ周波数fc2以下の低周波成分であっても、補正用トランジスタQ1にてフィードバックをかけることはできない。
ただし、センシング期間においても、第1カットオフ周波数fc1以下の低周波成分に関しては、第1の帰還回路4の出力として取り出すことにより補正用抵抗R1にてフィードバックをかけることを可能としている。
以上説明した構成の煙感知器Aによれば、センシング期間以外の期間において、フォトダイオードPDを流れる供給電流I0のうち第2カットオフ周波数fc2以下の低周波成分は、補正用トランジスタQ1を通してフィードバックされ、出力電圧Voutから取り除かれることとなるから、たとえ供給電流I0に低周波成分が含まれていても、出力電圧Voutの動作点は基準電圧Vsに落ち着くこととなる。また、センシング期間においては、供給電流I0のうち第1カットオフ周波数fc1以下の低周波成分は、補正用抵抗R1を通してフィードバックされ、出力電圧Voutから取り除かれることとなるから、たとえ供給電流I0に低周波成分が含まれていても、出力電圧Voutの動作点は基準電圧Vsに落ち着くこととなる。このとき、サンプルホールド回路10のスイッチSW1がオフし、第2の帰還回路5の出力がセンシング期間直前の値にホールドされるので、検出信号が補正用トランジスタQ1を通してフィードバックされることはなく、検出信号に相当する出力電圧Voutを出力することができる。
すなわち、供給電流I0の低周波成分をフィードバックして出力電圧Voutから取り除く手段として補正用抵抗R1と補正用トランジスタQ1とを用いたことにより、補正用抵抗R1のみで低周波成分をフィードバックする場合に比べて、より大きな電流成分のフィードバックに対応することができる。しかも、第2カットオフ周波数fc2を高めに設定することで、センシング期間以外の期間においては出力電圧Voutから比較的広範囲の低周波成分を取り除きつつも、サンプルホールド回路10のスイッチSW1のオンオフ切り替えによって、センシング期間においては、検出対象となる検出信号を減衰させないようにすることができる。
また、第1の帰還回路4の第1カットオフ周波数fc1よりも第2の帰還回路5の第2カットオフ周波数fc2を高く設定してあるから、電流電圧変換回路2への電源供給が開始すると、第1の帰還回路4よりも先に第2の帰還回路5の出力が応答する。そのため、第1の帰還回路4を遮断する手段等を付加することなく、第2カットオフ周波数fc2以下の低周波成分の大部分を補正用トランジスタQ1を通してフィードバックでき、結果的に、電流電圧変換回路2の小型化を図ることができる。
しかも、センシング期間に第2の帰還回路5の第2カットオフ周波数fc2を低下させる周波数切替手段としてサンプルホールド回路10を用いることで、センシング期間には、積分回路9の出力と補正用トランジスタQ1との間が遮断されるから、積分回路9で発生する雑音(フリッカ雑音等)が供給電流I0に影響することはなく、SN比の向上を図ることができるという利点もある。
なお、本実施形態で補正用トランジスタQ1として用いているPチャネルのMOSFETは、NチャネルのMOSFETに比べてホールの移動度が小さいので、NチャネルのMOSFETを補正用トランジスタQ1に用いる場合に比べて補正用トランジスタQ1から出るノイズ成分は小さくなる。特に、Si/SiO2界面にある未結合手に電子が捕獲、放出されることによって発生するフリッカノイズは、PチャネルではNチャネルに比べて1/3程度に低減することが知られている。したがって、補正用トランジスタQ1としてPチャネルのMOSFETを用いることは、SN比の向上に有用である。
上記構成の電流電圧変換回路2の具体例を示すと、銅鉄形安定器を用いて商用電源(60Hzの交流電源とする)で点灯する蛍光灯からの光をフォトダイオードPDが受光しても、前記蛍光灯の光の点滅の影響で電流電圧変換回路2の出力電圧Voutが変動することがないように、第2の帰還回路5の第2カットオフ周波数fc2は少なくとも120Hzより高く設定される。さらに、第1の帰還回路4の第1カットオフ周波数fc1も120Hzより高く設定することで、スイッチSW1がオフとなるセンシング期間においても、前記蛍光灯の光の影響を受けた120Hz以下の低周波成分が、補正用抵抗R1を通してフィードバックされ出力電圧Voutから取り除かれるようにしてある。
ところで、図1においては、変換部3の変換抵抗R2に並列接続された第2のスイッチSW2が設けられている。このスイッチSW2は、第1のスイッチSW1と同一のタイミングでオフする常閉形のスイッチであって、以下に説明する機能を有する。
すなわち、仮に第1のスイッチSW1のみが設けられていると、第1のスイッチSW1がオンしたときに、第2の帰還回路5のカットオフ周波数fc2が高周波側にシフトするので、図3(a)に示す電流電圧変換回路2全体の利得の周波数特性においては、第1のスイッチSW1がオンしたときに実線で示すように低周波側の利得がつぶれ、変換部3のカットオフ周波数fc0と第2の帰還回路5の第2カットオフ周波数fc2との間に利得のピークが生じ、系が発振しやすい状態となる。つまり、出力電圧Voutが発振しやすい状態にあるので、図4(c)に破線で示すように出力電圧Voutが低いときに第1のスイッチSW1がオフされてしまうと、結果的に出力電圧Voutの立ち上がりが遅れるという問題がある。
これに対して、変換抵抗R2と並列に接続される第2のスイッチSW2を設けた本実施形態では、第2のスイッチSW2を第1のスイッチSW1と共に電源投入時からセンシング期間開始時点までオンすることで、図3(b)に示すように第1のスイッチSW1がオンしている間には変換抵抗R2の両端が接続されて変換部3の利得がつぶされ、上述した利得のピークをなくすことができる。これにより、第1のスイッチSW1がオンすることによる系の発振を抑制することができる。
さらにまた、本実施形態では、第1および第2の各帰還回路4,5の積分回路8,9としてパッシブ回路ではなく演算増幅器OP2,OP4を有したアクティブ回路を採用しているので、低周波成分に対して高利得を持つことができ、演算増幅器OP2,OP4のオープンゲインまで帰還をかけることができる。すなわち、パッシブフィルタを用いた構成では、第2の帰還回路5が作動したときに、出力電圧Voutには電圧降下(降下量は利得によって異なる)が発生し、その後、サンプルホールド回路10が作動すると、第1の帰還回路4が作動して出力電圧Voutが同様に変動し、結果的に、当該変動が最終出力にも現れる。そのため、当該変動中に検出信号の誤検出を生じることがある。なお、前記変動を抑えるために検出信号の発生するタイミングの直前までサンプルホールド回路10を作動させないことも考えられるが、この場合、回路全体の消費電流が増加する。これに対して、本実施形態ではアクティブフィルタを用いているから、低周波成分による出力電圧Voutの変動を抑制し、出力電圧Voutの飽和を確実に回避することができる。
ここで、第2の帰還回路5の電源電圧は、電流電圧変換回路2における帰還回路5以外の回路の電源電圧よりも高くすることが望ましい。これにより、第2の帰還回路5の出力電圧(つまり、補正用トランジスタQ1のゲート電圧)の絶対値を大きくとることができ、したがって、比較的大きな補正電流Ic2を補正用トランジスタQ1に流すことが可能となる。その結果、比較的大きな振幅の低周波成分が供給電流I0に含まれる場合でも、当該低周波成分を出力電圧Voutから取り除くことができ、出力電圧Voutへの影響を抑制可能な低周波成分の大きさの上限が一層大きくなるという利点がある。
また、第1のスイッチSW1がオフしてサンプルホールド回路10が作動しているセンシング期間内であっても、補正用トランジスタQ1のゲートと所定電位点Vccとの間に生じる漏れ電流の影響により補正用トランジスタQ1のゲート電圧が時間経過に伴って徐々に低下することがある。このとき、補正用トランジスタQ1のドレイン−ソース間に流れる電流も徐々に低下するので、これに伴い出力電圧Voutが変動する可能性がある。この対策として、第1のスイッチSW1に、オフ抵抗が補正用トランジスタQ1のゲート−ソース間の抵抗値よりも小さくなる素子(たとえばアナログスイッチ)を用いることが考えられる。これにより、スイッチSW1がオフであるセンシング期間においても、スイッチSW1のオフ抵抗を介して流れる微小電流によって、前記漏れ電流によるゲート電圧の低下を抑制することができ、出力電圧Voutの変動を抑制することができる。
以上説明したように本実施形態の煙感知器Aは、フォトダイオードPDに対して強い外乱光が入射することにより大きな低周波成分を含んだ供給電流I0がフォトダイオードPDに流れた場合でも、変換部3の出力端子Toutに生じる出力電圧Voutへの前記低周波成分の影響を抑制することができる。したがって、ラビリンス21を簡素化し、図5に示すように煙感知器Aの薄型化等を図ることが可能となる。図5の煙感知器Aは、ハウジング20の前方(ハウジング20を天井に取り付けた場合の下方)を検知空間として、フォトダイオードPDがこの検知空間に流入する煙で拡散反射したLED6からの光を受光することで煙を感知する。
(実施形態2)
本実施形態の煙感知器Aは、図6に示すように補正用トランジスタQ1を複数個設けた点が実施形態1の煙感知器Aと相違する。
すなわち、本実施形態では、接続端子Tinと所定電位点Vccとの間に複数個の補正用トランジスタQ1が並列に接続され、第2の帰還回路5の出力は各補正用トランジスタQ1のゲートにそれぞれ接続されている。ここで、各補正用トランジスタQ1のドレインと接続端子Tinとの間には、選択用スイッチSW11,SW12,・・・がそれぞれ挿入されており、各選択用スイッチSW11,SW12,・・・のオンオフ制御はスイッチ制御回路11にて行うように構成されている。
スイッチ制御回路11は、補正用トランジスタQ1のゲートに印加される第2の帰還回路5の出力を監視し、帰還回路5の出力の絶対値が大きくなるほどオンする選択用スイッチSW11,SW12,・・・の個数が増えるように、帰還回路5の出力の大きさに応じて選択用スイッチSW11,SW12,・・・をオンオフ制御する。したがって、接続端子Tinを介してフォトダイオードPDに供給する補正電流Ic2が大きくなるほど、接続端子Tinと所定電位点Vccとの間に並列接続される補正用トランジスタQ1の個数が増え、電流のフィードバックに使用される補正用トランジスタQ1の個数が多くなる。
要するに、補正電流Ic2をフィードバックする補正用トランジスタQ1において、対応可能な電流値を大きくするためには、チャネル幅(W)とチャネル長(L)との比(W/L)を大きくとる必要があるが、W/Lを大きくすると、フィードバックする電流量が同じであっても補正用トランジスタQ1の熱雑音が大きくなってしまう。これに対して、本実施形態では、各補正用トランジスタQ1のW/Lを小さく抑え、熱雑音を小さく抑えながらも、大電流を補正電流Ic2としてフィードバックする際には複数個の補正用トランジスタQ1を並列接続することによって、比較的大きい電流に対応できるという利点がある。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
(実施形態3)
本実施形態の煙感知器Aは、第2の帰還回路5の第2カットオフ周波数fc2を切り替える周波数切替手段として、図7に示すようにサンプルホールド回路10に代えてローパスフィルタ回路10’を設けた点が実施形態1の煙感知器Aと相違する。
ローパスフィルタ回路10’は、第2の積分回路9の出力と補正用トランジスタQ1のゲートとの間に挿入された抵抗R7と、補正用トランジスタQ1のゲートと回路グランドとの間に接続されたコンデンサC5と、抵抗R7に並列接続された常閉形の第3のスイッチSW3とを有している。このローパスフィルタ回路10’は、抵抗R7とコンデンサC5とで決まる所定のカットオフ周波数以下の低周波成分を通過させるものである。
上記構成により、第3のスイッチSW3がオンの状態では、積分回路9の出力が補正用トランジスタQ1に直接印加され、一方、第3のスイッチSW3がオフの状態では、積分回路9の出力がローパスフィルタ回路10’を通して補正用トランジスタQ1に印加されることとなる。したがって、第2の帰還回路5の第2カットオフ周波数fc2は、第3のスイッチSW3がオフすることで低下する。
本実施形態においては、ローパスフィルタ回路10’のスイッチSW3をオフするタイミングを、煙感知器AのLED6がパルス状の光を出力し検知空間内に流入した煙の有無を検出する期間(センシング期間)に合わせて設定してある。すなわち、本実施形態の煙感知器Aは、上記センシング期間中にフォトダイオードPDがLED6からの光を受光したときに生じる検出信号を電圧に変換し、出力電圧Voutとして出力するためのものであるから、上記センシング期間における前記検出信号が補正用トランジスタQ1を通してフィードバックされてしまうことがないように、センシング期間にはスイッチSW3をオフとする。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
(実施形態4)
本実施形態の煙感知器Aは、第2の帰還回路5の第2カットオフ周波数fc2を切り替える周波数切替手段として、図8に示すようにサンプルホールド回路10に代えて第2の積分回路9に第2の抵抗R8および第4のスイッチSW4の直列回路を設けた点が実施形態1の煙感知器Aと相違する。
抵抗R8と常閉形の第4のスイッチSW4との直列回路は、第2の積分回路9の第1の抵抗R6と並列に接続されている。これにより、第4のスイッチSW4がオンの状態では、積分回路9の第2カットオフ周波数fc2は抵抗R6および抵抗R8とコンデンサC3とで決まる時定数によって決定し、一方、第4のスイッチSW4がオフの状態では、積分回路9の第2カットオフ周波数fc2は抵抗R6とコンデンサC3とで決まる時定数によって決定する。したがって、第2の帰還回路5の第2カットオフ周波数fc2は、第4のスイッチSW4がオフすることで低下する。
本実施形態においては、第2の積分回路9のスイッチSW4をオフするタイミングを、煙感知器AのLED6がパルス状の光を出力し検知空間内に流入した煙の有無を検出する期間(センシング期間)に合わせて設定してある。すなわち、本実施形態の煙感知器Aは、上記センシング期間中にフォトダイオードPDがLED6からの光を受光したときに生じる検出信号を電圧に変換し、出力電圧Voutとして出力するためのものであるから、上記センシング期間における前記検出信号が補正用トランジスタQ1を通してフィードバックされてしまうことがないように、センシング期間にはスイッチSW4をオフとする。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
(実施形態5)
本実施形態の煙感知器Aは、図9に示すように第1の帰還回路4と第2の帰還回路5とで、演算増幅器OP2を兼用するようにした点が実施形態1の煙感知器Aと相違する。
すなわち、本実施形態では、第1の帰還回路4の演算増幅器OP2を第2の帰還回路5に兼用したものであって、第1の帰還回路4を作動させる動作モードと第2の帰還回路5を作動させる動作モードとを切り替えるための複数のスイッチ(モード切替手段)SW5〜SW10を備えている。具体的に説明すると、演算増幅器OP2の出力端子と補正用抵抗R1との間にはスイッチSW5が挿入され、出力端子Toutと抵抗R3との間にはスイッチSW6が挿入され、出力端子Toutと反転増幅回路7の入力(抵抗R4)との間にはスイッチSW7が挿入され、反転増幅回路7の出力と抵抗R3との間にはスイッチSW8が挿入されている。さらに、演算増幅器OP2の反転入力端子に接続されている抵抗R3と並列に、抵抗R6’とスイッチSW9との直列回路が接続されており、演算増幅器OP2の反転入力端子と出力端子との間にはコンデンサC3が接続され、当該コンデンサC3と並列に、コンデンサC2’とスイッチSW10との直列回路が接続されている。
ここで、スイッチSW6,SW9は、図10に示すように第1のスイッチSW1と同時にオンすることで第2の帰還回路5を作動させるものであって、このとき、その他のスイッチSW5,SW7,SW8,SW10はオフする。この状態では、出力端子Toutは、抵抗R3と抵抗R6’との並列回路を介して演算増幅器OP2の反転入力端子に接続され、演算増幅器OP2の出力端子は、補正用トランジスタQ1のゲートに接続され、演算増幅器OP2の反転入力端子と出力端子との間にはコンデンサC3が接続されることとなる。
一方、スイッチSW5,SW7,SW8,SW10は、図10に示すように同時にオンすることで第1の帰還回路4を作動させるものであって、このとき、その他のスイッチSW1,SW6,SW9はオフする。この状態では、出力端子Toutは反転増幅回路7と抵抗R3とを介して演算増幅器OP2の反転入力端子に接続され、演算増幅器OP2の出力端子は、補正用抵抗R1に接続され、演算増幅器OP2の反転入力端子と出力端子との間にはコンデンサC3およびコンデンサC2’の並列回路が接続されることとなる。
要するに、いずれの状態でも、反転増幅回路OP2は積分回路を構成するものの、そのカットオフ周波数は、スイッチSW1,SW6,SW9がオンの状態では抵抗R3および抵抗R6’の並列回路とコンデンサC3とで第2カットオフ周波数fc2に設定され、スイッチSW5,SW7,SW8,SW10がオンの状態ではコンデンサC3およびコンデンサC2’の並列回路と抵抗R3とで第1カットオフ周波数fc1に設定される。
以上説明した本実施形態の構成によれば、演算増幅器OP2を第1の帰還回路4と第2の帰還回路5とで兼用しているから、各帰還回路4,5にそれぞれ個別に演算増幅器を設ける場合に比べて、小型化、低消費電力化を図ることが可能になる。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
ところで、上記各実施形態では、受光部としてフォトダイオードPDを例示したが、この例に限るものではなく、たとえばCdSやサーミスタなどの素子を受光部に用いることもできる。すなわち、本発明の煙感知器Aは、電流電圧変換回路2を受光部に電流を供給する電流供給源として用いるものであるから、フォトダイオードPDのように自ら光起電力を生じる素子だけでなく、CdSやサーミスタのように自ら光起電力を生じない受動素子からなる受光部にも対応可能である。