従来から、この種の煙感知器Aとして、図7(a)に示すようにハウジング20内に検知空間を有し、この検知空間に向けて間欠的に光を出力するLED(発光部)5と、LED5からの直接光が入射しない位置に配置され受光した光を電流に変換するフォトダイオード(受光部)PDとを備えたものが知られている(たとえば特許文献1参照)。この煙感知器Aでは、検知空間内に煙が流入すると、LED5からの光が検知空間内の煙で拡散反射されることによりフォトダイオードPDでのLED5からの光の受光量が増加し、フォトダイオードPDから出力される電流量が増加する。
LED5およびフォトダイオードPDは、LED5の前方に配置された投光レンズ23およびフォトダイオードPDの前方に配置された受光レンズ24と共に光学ブロック25を構成する。ハウジング20は、下面に開口部が形成され当該開口部に向けてLED5からの光が出射されるように光学ブロック25を収納したボディ26と、上面開口の有底円筒状であってボディ26の開口部を覆うようにボディ26に結合されるカバー27とを備えている。カバー27の周壁には煙を取り込むための開口窓が形成されており、カバー27内に前記検知空間が形成される。ここでカバー27内には、検知空間への虫の侵入を防止する防虫網28、および検知空間への外乱光の入射を防止するラビリンス21が検知空間を包囲するように配置される。ラビリンス21は、蛍光灯や白熱灯などからの様々な外乱光の入射を防止するとともに、検知空間内に煙がない状態でLED5の光がフォトダイオードPDに入射することを防止するために入り組んだ光路を持つ複雑な構造を採用している。
この種の煙感知器Aにおいては、図7(b)に示すように、ハウジング20内に収納された回路ブロック1に、フォトダイオードPDからの入力電流を電圧に変換して出力する電流電圧変換回路(IV変換回路)2が設けられている。さらに、電流電圧変換回路2の出力電圧を増幅回路12とフィルタ回路13とを通して判定処理部である発報判定回路14に入力し、前記出力電圧の変化量が所定の火災判定レベルを超えると発報回路15(ブザー等)で発報するように構成されている。なお、回路ブロック1には、各回路に電源供給する電源回路16と、他の発報手段等を連動させる連動回路17と、LED5と直列接続されたトランジスタTr1(図8参照)を含みLED5を周期的にパルス発光させるLED駆動回路18とが設けられている。
ここで用いられる電流電圧変換回路2は、たとえば図8に示すように演算増幅器OP21の反転入力端子と出力端子との間に変換抵抗R2を接続してなる変換部8を有し、この反転入力端子に入力電流Iinが入力されると、入力電流Iinの変動に応じて電圧値が変動する出力電圧Voutを出力端子Toutに出力するように構成される。図8の例では、非反転入力端子に基準電圧Vsが印加されているので、変換抵抗R2の抵抗値をr2とすれば出力電圧Voutは、Vout=Vs−(Iin×r2)で表される。要するに電流電圧変換回路2は、フォトダイオードPDがLED5からの光を受光していない定常状態での出力電圧Voutを動作点として、入力電流Iinの変動に応じて動作点を基準に出力電圧Voutを変動させることとなる。
また、近年では、設置が簡単であることから、電池を電源とした煙感知器Aの需要が増えている。電池を煙感知器Aの電源とする場合には、煙感知器Aの平均消費電力を抑えて電池の長寿命化を図るため、煙感知器Aを間欠駆動させる必要がある。この場合には、図9(a)に示す電流電圧変換回路2への電源供給も間欠的に行われることとなる。そのため、LED5は図9(b)のように電流電圧変換回路2への電源供給が行われている間にパルス状の光を出力する。ここで、検知空間に煙が流入してフォトダイオードPDがLED5からの光を受光すると、図9(c)に実線で示すように電流電圧変換回路2の出力電圧Voutの変化量ΔVは大きくなり図中の火災判定レベルに達することとなる。一方、検知空間に煙がなければ、図9(c)に破線で示すように出力電圧の変化量ΔVは小さくなり、火災判定レベルに達することはない。
ところで、図8のような電流電圧変換回路2では、図10(a)に示すように演算増幅器OP21のダイナミックレンジが、演算増幅器OP21の電源電圧VDDとグランドGNDとの間に規定されており、上述した出力電圧Voutはこのダイナミックレンジの範囲内で変動する。そのため、入力電流Iinがある大きさ以上になると出力電圧Voutが飽和してしまう。
たとえば上述した煙感知器Aにおいては、ラビリンス21を設けてあるものの、検知空間を外部から完全には遮断することはできないので、フォトダイオードPDに対して僅かながら外乱光が入射することがある。通常、外乱光は時間的変動が小さく、フォトダイオードPDがこの外乱光を受光することによりフォトダイオードPDからは時間的変動の小さい電流(以下、「直流成分」という)が出力されることになる。そして、入力電流Iinに含まれる直流成分がある大きさ以上になると、出力電圧Voutが飽和する可能性がある。特に、上述のように電池を煙感知器Aの電源とする場合には、演算増幅器OP21の電源電圧が低く演算増幅器OP21のダイナミックレンジが比較的狭いため、出力電圧Voutが飽和しやすい。
すなわち、入力電流Iinに直流成分が含まれていなければ、図10(a)のように出力電圧Voutの動作点は基準電圧Vsとなるから、入力電流Iinの変動があれば出力電圧Voutもこの変動に追従して変動するが、これに対して、入力電流Iinに直流成分が含まれていると、図10(b)に示すように出力電圧Voutの動作点が低下し、入力電流Iinが増加した場合に出力電圧Voutが途中で飽和してしまう可能性がある。特に、直流成分が大きく、図10(c)のように出力電圧Voutの動作点がグランドGND付近にまで低下している場合には、入力電流Iinの変動によらず出力電圧Voutが飽和状態にあり、入力電流Iinの増加を出力電圧Voutが追従することはない。
たとえば変換抵抗R2の抵抗値r2を1MΩ、基準電圧Vsを1Vとすると、入力電流Iinの直流成分が1μAで変換抵抗R2の両端間の電圧降下は1Vとなり、その結果、電流電圧変換回路2の出力電圧Voutが0Vとなって飽和する。この状態では、フォトダイオードPDがLED5からの光を受光して電流電圧変換回路2にパルス状の入力電流Iinが入力されても、電流電圧変換回路2の出力電圧Voutは飽和しているからこれ以上変動することはなく、出力電圧Voutの変化量ΔVが火災判定レベルに達することなく失報となる可能性がある。
そこで、電流電圧変換回路2として、入力電流Iinに直流成分が含まれている場合に、出力端子Toutと入力端子Tinとの間にフィードバックをかけて前記直流成分による出力電圧Voutの飽和を抑制できるようにしたものが提案されている。
この電流電圧変換回路2は、上述した変換部8に加えて、図11に示すように変換部8の出力電圧Voutを受けて出力電圧Voutの積分値成分に相当する積分電圧Vdcを出力する積分回路9と、積分回路9の出力と変換部8の入力端子Tinとの間に挿入された分流用抵抗R3とを備える。これにより、積分電圧Vdcの大きさに応じた電流を入力電流Iinから引き抜いて分流用抵抗R3に流すことにより、出力電圧Voutへの積分値成分の影響を抑制することができるので、入力電流Iinに直流成分が含まれている場合には、この直流成分が入力電流Iinから減算されることによって、出力電圧Voutへの直流成分の影響を抑制できる。
この電流電圧変換回路2において、分流用抵抗R3に流れる電流の大きさは、分流用抵抗R3の両端間の電位差と分流用抵抗R3の抵抗値とで決まる。分流用抵抗R3の両端間の電位差は、入力電流Iinに含まれる直流成分の大きさに応じて変化するので、変換部8の出力電圧Voutが飽和するほど大きな直流成分が入力電流Iinに含まれている場合には、分流用抵抗R3の両端間の電位差も飽和することとなり、それ以上の電流を分流用抵抗R3に流すことができなくなる。このときの電流が、出力電圧Voutへの影響を抑制可能な直流成分の大きさの上限となる。
ただし、上述した煙感知器Aではラビリンス21により検知空間への外乱光の入射が防止されているので、入力電流Iinに含まれる直流成分が前記上限を超えるほど強い外乱光がフォトダイオードPDで受光されることはなく、上記構成の電流電圧変換回路2を採用すれば出力電圧Voutの飽和を十分防止することができる。
特許第2783945号公報(第1−2頁)
(実施形態1)
本実施形態の煙感知器Aは、図7に示した従来構成と同様にハウジング20内に検知空間を有し、点灯期間と消灯期間とを交互に繰り返すことで検知空間に向けて間欠的に光を出力する発光部と、発光部からの直接光が入射しない位置に配置され受光した光を電流に変換する受光部と、受光部からの入力電流に基づいて検知空間内の煙を検知する回路ブロック1とを備えている。この煙感知器Aでは、検知空間内に煙が流入すると、発光部からの光が検知空間内の煙で拡散反射されることにより受光部での発光部からの光の受光量が増加し、受光部から出力される電流量が増加する。ここで例示する煙感知器Aは電池を電源としており、平均消費電力を抑えて電池の長寿命化を図るために間欠駆動する。
本実施形態の回路ブロック1は、図2に示すように、受光部としてのフォトダイオードPDから入力される入力電流Iinを当該入力電流Iinの変動に応じて電圧値が変動する出力電圧に変換して出力する電流電圧変換回路2と、電流電圧変換回路2の出力電圧に基づいて検知空間内の煙の有無を判定する判定処理部としての発報判定回路3と、火災発生を報知する発報回路(ブザー等)4とを備えている。すなわち、検知空間内の煙濃度が高くなれば、発光部としてのLED5がパルス状の光を出力することによる出力電圧の変動量が大きくなるので、発報判定回路3では当該変動量を所定の閾値と比較し、前記変動量が閾値を超えると検知空間内に煙有り(火災と判断できる煙濃度に達している)と判定し、発報回路4から火災発生を報知する。なお、電流電圧変換回路2の後段に電圧増幅回路(図示せず)を設け、電流電圧変換回路2の出力電圧を電圧増幅回路で増幅してから発報判定回路3に入力するようにしてもよい。
ここにおいて、電流電圧変換回路2は、図1に示すように入力端子Tinから入力される入力電流Iinで充放電されるコンデンサC1と、コンデンサC1の充放電経路を切り替える経路切替手段と、出力電圧Voutを出力端子Toutから取り出すためのバッファ回路とを有している。
すなわち、入力端子Tinと基準電圧Vsを出力する直流電源E1との間には、コンデンサC1に入力電流Iinを供給するための充放電経路が形成されており、当該充放電経路は、経路切替手段を構成する複数のスイッチSW1〜SW4によって切替可能とされている。具体的に説明すると、コンデンサC1の一端は、スイッチSW1を介して入力端子Tinに接続されるとともにスイッチSW2を介して直流電源E1に接続されており、コンデンサC1の他端は、スイッチSW3を介して直流電源E1に接続されるとともにスイッチSW4を介して入力端子Tinに接続されている。
これにより、スイッチSW1,SW3の組み合わせがオン、スイッチSW2,SW4の組み合わせがオフの状態では、コンデンサC1には前記一端側から入力電流Iinが流れ込み、前記一端側を正極とする電荷が蓄積される。一方で、スイッチSW1,SW3の組み合わせがオフ、スイッチSW2,SW4の組み合わせがオンの状態では、コンデンサC1には前記他端側から入力電流Iinが流れ込み、前記他端側を正極とする電荷が蓄積される。なお、スイッチSW1,SW3の組み合わせとスイッチSW2,SW4の組み合わせとは同時にオンすることがないため、図1に例示するように、2個のc接点スイッチを用い、各スイッチのa接点をスイッチSW1,SW3とし、b接点をスイッチSW2,SW4としてもよい。
ここで、入力端子TinとスイッチSW1,SW4との間にはスイッチSW0が挿入されている。したがって、スイッチSW0をオフすれば入力電流Iinが遮断されることとなり、スイッチSW0がオンの期間にのみ入力電流IinによるコンデンサC1の充放電が行われる。
バッファ回路は、演算増幅器OP1からなり、その入力(演算増幅器OP1の非反転入力端子)をスイッチSW0と前記スイッチSW1,SW4との接続点に接続した構成を有する。このバッファ回路は、入力インピーダンスが極めて大きいものであるから、スイッチSW1,SW3の組み合わせがオン、スイッチSW2,SW4の組み合わせがオフの状態では、基準電圧Vsに前記一端側を正とするコンデンサC1の両端電圧を加算した電圧を、出力電圧Voutとして出力端子Toutに出力する。一方、スイッチSW1,SW3の組み合わせがオフ、スイッチSW2,SW4の組み合わせがオンの状態では、基準電圧Vsに前記他端側を正とするコンデンサC1の両端電圧を加算した電圧を、出力電圧Voutとして出力端子Toutに出力する。なお、演算増幅器OP1にて、バッファ回路ではなく電圧増幅の機能を持つ電圧増幅回路を構成するようにしてもよい。
また、コンデンサC1の両端間には、コンデンサC1に蓄積された電荷を完全に放電する放電経路を形成するために、抵抗R1およびスイッチSW5の直列回路が接続されている。これにより、スイッチSW5をオンすることでコンデンサC1に蓄積された電荷は抵抗R1を通して放電され、適当な時間が経過すればコンデンサC1の両端電圧はゼロにリセットされる。
上述した各種のスイッチSW0〜SW5は、制御部6によって個別にオンオフ制御される。制御部6は、LED5を周期的にパルス発光させるLED駆動回路18(図7(b)参照)にも接続されており、LED5を発光させるタイミングに同期してスイッチSW0〜SW5のオンオフ状態を切り替える。ここでは、LED5を発光させることで検知空間内に流入した煙の有無を検出する期間外、つまりLED5の消灯期間に設定された第1の検出期間T1(図3参照)と、第1の検出期間T1と同じ時間長であってLED5の点灯期間に設定された第2の検出期間T2(図3参照)とで、コンデンサC1の充放電経路が切り替わるようにスイッチSW0〜SW5を制御する。
本実施形態においては、第2の検出期間T2をLED5の点灯期間と一致させており、第1の検出期間T1を点灯期間(つまり、第2の検出期間T2)の直前に設定してある。そして、第1の検出期間T1には、スイッチSW1,SW3の組み合わせをオン、スイッチSW2,SW4の組み合わせをオフとし、第2の検出期間T2には、スイッチSW1,SW3の組み合わせをオフ、スイッチSW2,SW4の組み合わせをオンとすることにより、各検出期間T1,T2でコンデンサC1の充放電経路を切り替える。スイッチSW0に関しては、第1および第2の両検出期間T1,T2でオンさせる。
次に、上記構成の煙感知器Aの動作について、図3のタイムチャートを参照して説明する。図3では、フォトダイオードPDに対して外乱光が入射することにより、直流成分Idcを含んだ入力電流Iinが電流電圧変換回路2の入力端子Tinに入力されている場合を例示する。
回路ブロック1に電源が投入されると、制御部6はスイッチSW5をオンしコンデンサC1の電荷をリセットするとともに、スイッチSW1,SW3をオンすることで抵抗R1を介してバッファ回路の入力に直流電源E1を接続する。これにより、出力端子Toutには出力電圧Voutとして基準電圧Vsが発生する。
そして、第1の検出期間T1においては、制御部6は、リセット用のスイッチSW5をオフするとともに、入力端子Tinに接続されたスイッチSW0をオンすることにより、入力電流IinでコンデンサC1を充電する。このとき、コンデンサC1の両端電圧が入力電流Iinの大きさに応じて時間経過に伴って上昇するので、出力端子Toutに生じる出力電圧Voutは、コンデンサC1の両端電圧の上昇に伴い基準電圧Vsから上昇する。
その後、第2の検出期間T2においては、制御部6は、スイッチSW1,SW3をオフするとともに、スイッチSW2,SW4をオンすることで、コンデンサC1の充放電経路を切り替える。このとき、コンデンサC1の両端電圧が入力電流Iinの大きさに応じて時間経過に伴って低下する。ただし、第1の検出期間T1と第2の検出期間T2とでは、バッファ回路の入力に対するコンデンサC1の極性が反転しているので、出力端子Toutに生じる出力電圧Voutは、コンデンサC1の両端電圧の低下に伴い上昇する。したがって、第1の検出期間T1の終了時点でのコンデンサC1の両端電圧をVdcとしたときに、第2の検出期間T2においては、出力電圧Voutは(Vs−Vd)から時間経過に伴って上昇することになる。
第2の検出期間T2が終了すると、制御部6は、スイッチSW0をオフすることで入力電流Iinを遮断し、コンデンサC1の充放電を停止する。しかして、第2の検出期間T2の終了時点での出力電圧Voutとしては、第1の検出期間T1にコンデンサC1に出入りした電荷量と、第2の検出期間T2にコンデンサC1に出入りした電荷量との差分に相当する電圧が出力される。言い換えれば、検出期間T2の終了時点では、第1の検出期間T1での充電電荷量と第2の検出期間T2での放電電荷量との差分がコンデンサC1に残ることとなり、当該電荷量に相当する電圧がコンデンサC1の両端間に発生する。
すなわち、コンデンサC1の静電容量をc1、第1および第2の各検出期間T1,T2にコンデンサC1に充電、あるいはコンデンサC1から放電された電荷量をそれぞれQ1,Q2とすれば、第2の検出期間T2終了時点での出力電圧Voutは、Vout=Vs+(Q2−Q1)/c1で表される。そして、各電荷量Q1,Q2は、それぞれ各検出期間T1,T2における入力電流Iinを同一時間長で時間積分した値であるから、各検出期間T1,T2における入力電流Iinの大きさをそれぞれ反映する。ここで、第1の検出期間T1には入力電流Iinとして直流成分Idcのみが入力され、一方、第2の検出期間T2には直流成分Idcに信号成分(つまり、フォトダイオードPDがLED5からのパルス状の光を受光したことにより発生する電流成分)Iacを加えた入力電流Iinが入力される。
したがって、直流成分Idcに相当する電圧Vdcは第1および第2の両検出期間T1,T2を通して相殺されることとなり、第2の検出期間T2終了時点においては、前記信号成分Iacに相当する電圧Vacを基準電圧Vsに加えた出力電圧Voutが出力される。
発報判定回路3では、このとき(つまり、第2の検出期間T2終了時点)の出力電圧Voutに基づいて検知空間内の煙の有無を判定する。そこで、第2の検出期間T2の終了後、所定時間は出力電圧Voutの値を維持(サンプルホールド)するように、検出期間T2の終了時点から所定時間が経過するまではリセット用のスイッチSW5をオフし続け、発報判定回路3での判定が終了してからスイッチSW5をオンしてコンデンサC1の両端電圧のリセットをかける構成とする。また、スイッチSW2,SW4に関しても、検出期間T2終了後、オン状態を継続させている。
以上説明した構成によれば、発報判定回路3は、直流成分Idcの影響を除いた入力電流Iinの大きさに基づいて検知空間内の煙の有無を判定することができるので、フォトダイオードPDに入射する外乱光の強度が比較的大きく大きな直流成分Idcを含んだ入力電流Iinが入力された場合でも、当該外乱光の影響を受けて失報を生じることを防止できるという効果がある。その結果、フォトダイオードPDへの外乱光の入射を防止する手段(図7(a)のラビリンス21)を簡素化し、図4に示すように煙感知器Aの薄型化等を図ることが可能となる。図4の煙感知器Aは、ハウジング20の前方(ハウジング20を天井に取り付けた場合の下方)を検知空間として、フォトダイオードPDがこの検知空間に流入する煙で拡散反射したLED5からの光を受光することで煙を感知する。
また、本実施形態の構成では、第1および第2の両検出期間T1,T2において1つのコンデンサC1を共用しているから、各検出期間T1,T2で個別のコンデンサを用いる場合に比べると、部品点数の削減を図ることができるという利点もある。さらに、変換抵抗を用いて電流を電圧に変換する従来構成に比べると、SN比が向上するという利点もある。
(実施形態2)
本実施形態の煙感知器Aは、電流電圧変換回路2について、入力電流Iinで充電されるコンデンサを2個設け、第1の検出期間と第2の検出期間とで充電するコンデンサをコンデンサ切替手段にて切り替える構成とした点が実施形態1の煙感知器Aと相違する。
すなわち、電流電圧変換回路2は、図5に示すように一対のコンデンサC11,C12を備え、各コンデンサC11,C12と入力端子Tinとの間にコンデンサ切替手段を構成するスイッチSW11,SW12がそれぞれ挿入された構成を有する。ここで用いるコンデンサC11,C12は回路定数(静電容量)が同一のものとする。各コンデンサC11,C12は、それぞれ演算増幅器OP11,OP12の反転入力端子−出力端子間に接続されている。各演算増幅器OP11,OP12の非反転入力端子には、それぞれバイアス電圧Vbを出力する直流電源E11,E12が接続されている。しかして、各演算増幅器OP11,OP12の出力端子には、それぞれバイアス電圧Vbから各コンデンサC11,C12の両端電圧を差し引いた電圧V1,V2が発生する。
両演算増幅器OP11,OP12の出力V1,V2は、演算手段としての差分演算回路7に入力される。差分演算回路7は、演算増幅器OP11の出力V1と演算増幅器OP12の出力V2との差分に相当する電圧を出力電圧Voutとして出力する。具体的には、差分演算回路7は、演算増幅器OP11の出力V1から演算増幅器OP12の出力V2を減算した電圧を基準となる基準電圧Vsに加算した出力電圧Voutを、出力端子Toutに生じる。
上述したスイッチSW11,SW12は、制御部6’によって個別にオンオフ制御される。本実施形態では、第1の検出期間T1にのみスイッチSW11をオンし、第2の検出期間T2にのみスイッチSW12をオンするものとする。これにより、第1の検出期間T1においては、スイッチSW11側のコンデンサC11が入力電流Iinで充電され、第2の検出期間T2においては、スイッチSW12側のコンデンサC12が入力電流Iinで充電される。
次に、上記構成の煙感知器Aの動作について、図6のタイムチャートを参照して説明する。図6では、フォトダイオードPDに対して外乱光が入射することにより、直流成分Idcを含んだ入力電流Iinが電流電圧変換回路2の入力端子Tinに入力されている場合を例示する。
回路ブロック1に電源が投入されると、演算増幅器OP11の出力V1および演算増幅器OP12の出力V2は、いずれもバイアス電圧Vbとなる。そのため、出力端子Toutには出力電圧Voutとして基準電圧Vsが発生する。
そして、第1の検出期間T1においては、制御部6’がスイッチSW11をオンすることにより、入力電流IinでコンデンサC11を充電する。このとき、コンデンサC11の両端電圧が入力電流Iinの大きさに応じて時間経過に伴い上昇するので、演算増幅器OP11の出力V1並びに出力端子Toutに生じる出力電圧Voutは、コンデンサC11の両端電圧の上昇に伴い低下する。
その後、第2の検出期間T2においては、スイッチSW11をオフするとともにスイッチSW12をオンすることで、コンデンサC11に代えてコンデンサC12を入力電流Iinで充電する。このとき、コンデンサC12の両端電圧が入力電流Iinの大きさに応じて時間経過に伴い上昇するので、演算増幅器OP12の出力V2はコンデンサC12の両端電圧の上昇に伴い低下する。したがって、第1の検出期間T1の終了時点でのコンデンサC11の両端電圧をVdcとしたときに、第2の検出期間T2においては、出力端子Toutに生じる出力電圧Voutは(Vs−Vdc)から時間経過に伴って上昇することとなる。
そして、第2の検出期間T2が終了すると、制御部6’は、スイッチSW12をオフすることで入力電流Iinを遮断し、コンデンサC12の充電を停止する。しかして、第2の検出期間T2の終了時点での出力電圧Voutとしては、第1の検出期間T1にコンデンサC11に蓄積された電荷量と、第2の検出期間T2にコンデンサC12に蓄積された電荷量との差分に相当する電圧が出力される。
すなわち、両コンデンサC11,C12で共通の静電容量をc1、第1および第2の各検出期間T1,T2にコンデンサC11,C12に蓄積された電荷量をそれぞれQ11,Q12とすれば、第2の検出期間T2終了時点での出力電圧Voutは、Vout=Vs+(Q12−Q11)/c1で表される。なお、電流電圧変換回路2にはコンデンサC11,C12の電荷を放電するための放電回路(図示せず)が設けられており、第2の検出期間T2終了後、所定時間は出力電圧Voutの値を維持し、発報判定回路3での判定が終了してから放電回路を駆動しコンデンサC11,C12の両端電圧をリセットする構成とする。
以上説明した本実施形態の構成によれば、第1および第2の両検出期間T1,T2で同一のコンデンサC1を用いる実施形態1の構成に比較すると、コンデンサの充電経路上に挿入されているスイッチの個数を少なくすることができ(実施形態1ではSW0〜SW4、本実施形態ではSW11,SW12)、コンデンサの充電経路上で発生するスイッチングノイズを低減することができる。その結果、電流電圧変換回路2のSN比(検出対象である信号成分とスイッチングノイズとの比)が向上し、発報判定回路3における火災判定の確度が向上する。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
なお、上記各実施形態では、フォトダイオードPDが光を受光したときに電流電圧変換回路2の入力端子Tinに対して入力電流Iinが流れ込む構成を前提として説明したが、入力端子Tinに対する入力電流Iinの向きを逆向きとし、フォトダイオードPDが光を受光したときに入力端子Tinから入力電流Iinが流れ出す構成(つまり、入力端子Tinに負の入力電流Iinが入力される構成)を前提としてもよい。
さらに、上記実施形態では、受光部としてフォトダイオードPDを例示したが、この例に限るものではなく、たとえばCdSやサーミスタなどの素子を受光部に用いることもできる。すなわち、本発明の煙感知器Aは、フォトダイオードPDのように自ら光起電力を生じる素子だけでなく、CdSやサーミスタのように自ら光起電力を生じない受動素子からなる受光部にも対応可能である。